(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0016】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る電流生成回路10を示す回路図である。電流生成回路10は、温度上昇に伴って電流値が大きくなる電流経路(即ち、PTAT(proportional to absolute temperature)電流生成ループ)上に、オペアンプに代えてゲート接地回路を備える。それにより、電流生成回路10は、PTAT電流生成ループ上にオペアンプを設ける必要が無くなるため、正の温度依存性を有する出力電流を精度良く生成することができる。以下、具体的に説明する。
【0017】
図1に示すように、電流生成回路10は、電流分配回路11と、Nチャネル型のMOSトランジスタ(第1NMOSトランジスタ)M1と、Nチャネル型のMOSトランジスタ(第2NMOSトランジスタ)M2と、PNP型のバイポーラトランジスタ(第1バイポーラトランジスタ)Q1と、PNP型のバイポーラトランジスタ(第2バイポーラトランジスタ)Q2と、抵抗素子(第1抵抗素子)R1と、オペアンプ(第2オペアンプ)A1と、オペアンプ(第1オペアンプ)A2と、基準バイアス源12と、を備える。
【0018】
バイポーラトランジスタQ1では、ベース及びコレクタが互いに接続されている。バイポーラトランジスタQ2では、ベース及びコレクタが互いに接続されている。より具体的には、バイポーラトランジスタQ1では、ベース及びコレクタが接地電圧GNDの供給される接地電圧端子(以下、接地電圧端子GNDと称す)に共通接続されている。バイポーラトランジスタQ1では、ベース及びコレクタが接地電圧端子GNDに共通接続されている。本実施の形態では、バイポーラトランジスタQ2のサイズ(エミッタ面積)がバイポーラトランジスタQ1のサイズ(エミッタ面積)のn(1以上の正の数)倍である場合について説明する。
【0019】
MOSトランジスタM1では、ソースがバイポーラトランジスタQ1のエミッタに接続され、ドレインがノードN1を介して電流分配回路11に接続され、ゲートにオペアンプA1からの制御電圧V1が供給されている。MOSトランジスタM1は、カスコード(ゲート接地回路)の役割を果たす。
【0020】
MOSトランジスタM2では、ソースが抵抗素子R1の一端に接続され、ドレインがノードN2を介して電流分配回路11に接続され、ゲートにオペアンプA1からの制御電圧V1が供給されている。抵抗素子R1の他端は、バイポーラトランジスタQ1のエミッタに接続されている。MOSトランジスタM2は、カスコード(ゲート接地回路)の役割を果たす。
【0021】
電流分配回路11は、例えば、カレントミラー回路であって、オペアンプA2からの制御電圧V2に応じた電流I1及び当該電流I1に比例する電流I2を、それぞれノードN1,N2に出力する。これら電流I1,I2は、バイポーラトランジスタQ1,Q2のそれぞれのコレクタ−エミッタ間を流れる。
【0022】
(電流分配回路11の詳細)
図2は、電流分配回路11の詳細を示す回路図である。
図2を参照すると、電流分配回路11は、Pチャネル型のMOSトランジスタMP21,MP22,MP23,MP24と、バイアス源14と、を有する。
【0023】
MOSトランジスタMP21では、ソースが電源電圧VDDの供給される電源電圧端子(以下、電源電圧端子VDDと称す)に接続され、ゲートにオペアンプA2からの制御電圧V2が供給されている。MOSトランジスタMP23では、ソースがMOSトランジスタMP21のドレインに接続され、ドレインがノードN1に接続され、ゲートにバイアス源14からのバイアス電圧が供給されている。
【0024】
MOSトランジスタMP22では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ゲートにオペアンプA2からの制御電圧V2が供給されている。MOSトランジスタMP24では、ソースがMOSトランジスタMP22のドレインに接続され、ドレインがノードN2に接続され、ゲートにバイアス源14からのバイアス電圧が供給されている。
【0025】
かかる構成により、ノードN1(即ち、バイポーラトランジスタQ1のコレクタ及びエミッタ間)には、電流I1が流れ、ノードN2(即ち、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ及びエミッタ間)には、電流I1に比例する電流I2が流れる。
【0026】
例えば、制御電圧V2が大きい場合、MOSトランジスタMP21,MP22のそれぞれのオン抵抗が大きくなるため、ノードN1,N2のそれぞれに流れる電流I1,I2は小さくなる。他方、制御電圧V2が小さい場合、MOSトランジスタMP21,MP22のそれぞれのオン抵抗が小さくなるため、ノードN1,N2のそれぞれに流れる電流I1,I2は大きくなる。
【0027】
(電流分配回路11aの詳細)
図3は、電流分配回路11の変形例を電流分配回路11aとして示す回路図である。
図3を参照すると、電流分配回路11aは、Pチャネル型のMOSトランジスタMP21,MP22と、抵抗素子R21,R22と、を有する。
【0028】
MOSトランジスタMP21では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ゲートにオペアンプA2からの制御電圧V2が供給されている。抵抗素子R21では、一端がMOSトランジスタMP21のドレインに接続され、他端がノードN1に接続されている。
【0029】
MOSトランジスタMP22では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ゲートにオペアンプA2からの制御電圧V2が供給されている。抵抗素子R22では、一端がMOSトランジスタMP22のドレインに接続され、他端がノードN2に接続されている。また、MOSトランジスタMP21,MP22のそれぞれのドレインは互いに接続されている。
【0030】
かかる構成により、ノードN1(即ち、バイポーラトランジスタQ1のコレクタ及びエミッタ間)には、電流I1が流れ、ノードN2(即ち、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ及びエミッタ間)には、電流I1に比例する電流I2が流れる。
【0031】
例えば、制御電圧V2が大きい場合、MOSトランジスタMP21,MP22のそれぞれのオン抵抗が大きくなるため、ノードN1,N2のそれぞれに流れる電流I1,I2は小さくなる。他方、制御電圧V2が小さい場合、MOSトランジスタMP21,MP22のそれぞれのオン抵抗が小さくなるため、ノードN1,N2のそれぞれに流れる電流I1,I2は大きくなる。
【0032】
電流分配回路11は、
図2や
図3に示す構成と同等の機能を有する他の構成に適宜変更可能である。
【0033】
図1に戻る。オペアンプA1は、反転入力端子INNに入力された基準バイアス源12からの基準バイアス電圧Vbと、非反転入力端子INPに入力されたMOSトランジスタM1のドレイン電圧(ノードN1の電圧)と、の電位差に応じた制御電圧V1を出力端子OUTAから出力する。
【0034】
オペアンプA2は、反転入力端子INNに入力された基準バイアス源12からの基準バイアス電圧Vbと、非反転入力端子INPに入力されたMOSトランジスタM2のドレイン電圧(ノードN2の電圧)と、の電位差に応じた制御電圧V2を出力端子OUTAから出力する。
【0035】
オペアンプA1の2つの入力端子が仮想接地しており、かつ、オペアンプA2の2つの入力端子が仮想接地しているため、ノードN1,N2のそれぞれの電位は実質的に同じ値を示す。
【0036】
(オペアンプA1,A2の詳細)
図4は、オペアンプA1の詳細を示す回路図である。オペアンプA2はオペアンプA1と同じ構成であるため、ここでは、オペアンプA1のみについて説明する。
【0037】
図4を参照すると、オペアンプA1は、Pチャネル型のMOSトランジスタMP11〜MP13と、Nチャネル型のMOSトランジスタMN11〜MN15と、定電流源13と、を備える。本実施の形態では、入力差動対がNチャネル型のMOSトランジスタである場合を例に説明するが、これに限られない。適切に動作するならば、入力差動対は、Pチャネル型のMOSトランジスタであってもよい。
【0038】
定電流源13及びMOSトランジスタMN14は、電源電圧端子VDDと接地電圧端子GNDとの間に直列に設けられている。より具体的には、定電流源13では、入力端子が電源電圧端子VDDに接続され、出力端子がMOSトランジスタMN14のドレイン及びゲートに接続されている。MOSトランジスタMN14では、ソースが接地電圧端子GNDに接続されている。
【0039】
MOSトランジスタMP11では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン及びゲートがMOSトランジスタMN11のドレインに接続されている。MOSトランジスタMN11では、ソースがMOSトランジスタMN13のドレインに接続され、ゲートが反転入力端子INNに接続されている。
【0040】
MOSトランジスタMP12では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン及びゲートがMOSトランジスタMN12のドレインに接続されている。MOSトランジスタMN12では、ソースがMOSトランジスタMN13のドレインに接続され、ゲートが非反転入力端子INPに接続されている。
【0041】
MOSトランジスタMN13では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ゲートがMOSトランジスタMN14のドレイン及びゲートに接続されている。
【0042】
MOSトランジスタMP13では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインが出力端子OUTAに接続され、ゲートがMOSトランジスタMP12のドレイン及びゲートに接続されている。
【0043】
MOSトランジスタMN15では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ドレインが出力端子OUTAに接続され、ゲートがMOSトランジスタMN14のドレイン及びゲートに接続されている。
【0044】
なお、オペアンプA1,A2の構成は、
図4に示す構成と同等の機能を有する他の構成に適宜変更可能である。
【0045】
ここで、バイポーラトランジスタQ1,Q2のそれぞれのベース−エミッタ間電圧Vbe1,Vbe2は、温度上昇に伴って低くなる負の温度依存性を有する。そのため、バイポーラトランジスタQ2のエミッタ面積をバイポーラトランジスタQ1のエミッタ面積より大きくすると、Vbe1,Vbe2の差電圧ΔVbe(=Vbe1−Vbe2)は、温度上昇に伴って高くなる正の温度依存性を有することになる。
【0046】
このことから、バイポーラトランジスタQ1、MOSトランジスタM1、MOSトランジスタM2、抵抗素子R1、及び、バイポーラトランジスタQ2によって形成される電流経路においても、抵抗素子R1の抵抗値やバイポーラトランジスタQ2のエミッタ面積などを調整することにより、正の温度依存性を有する電流を流すことが可能になる。以下、正の温度依存性を有する電流が流れるこの電流経路をPTAT電流生成ループと称す。
【0047】
このPTAT電流生成ループ上にはオペアンプが設けられていない。そのため、オペアンプのオフセット電圧の影響でPTAT電流生成ループ上を流れる電流に誤差が生じることはない。つまり、電流生成回路10は、正の温度依存性を有する電流(例えば、電流I2)を精度良く生成することができる。
【0048】
また、電流生成回路10は、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2を用いてオペアンプを含まないPTAT電流生成ループを形成している。そのため、電流生成回路10は、NPN型のバイポーラトランジスタを使用できない環境下でも構成されることができる。
【0049】
図5は、トリプルウェルプロセスにて形成されたトランジスタを示す断面図である。
図6は、シングルウェルプロセス(本例はNウェルプロセス)にて形成されたトランジスタを示す断面図である。
【0050】
トリプルウェルプロセスでは、P−sub中にDeepNウェルを形成することで、P−subとPウェルとが分離している。それにより、PNP型のバイポーラトランジスタ以外にも、NPN型のバイポーラトランジスタを形成することが可能である。
【0051】
それに対し、シングルウェルプロセスでは、P−sub中にDeepNウェルが形成されないため、PNP型のバイポーラトランジスタの形成はできるものの、NPN型のバイポーラトランジスタを形成することができない。
【0052】
電流生成回路10は、トリプルウェルプロセスのみならず、NPN型のバイポーラトランジスタを使用できないシングルウェルプロセスにおいても構成されることができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2が設けられた場合を例に説明したが、これに限られず、NPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2aが設けられてもよい。
【0054】
図7は、電流生成回路10の変形例を電流生成回路10aとして示す回路図である。
図7に示すように、電流生成回路10aは、電流生成回路10と比較して、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2に代えてNPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2aを備える。なお、電流生成回路10aは、NPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2aを備えているため、トリプルウェルプロセスにて構成される必要がある。電流生成回路10aのその他の構成については、電流生成回路10と同様であるため、その説明を省略する。
【0055】
電流生成回路10aは、電流生成回路10と同等の効果を奏することができる。
【0056】
<実施の形態2>
図8は、実施の形態2に係るバンドギャップリファレンス回路1を示す回路図である。なお、バンドギャップリファレンス回路1には、電流生成回路10が適用されている。
【0057】
図8に示すように、バンドギャップリファレンス回路1は、電流生成回路10を構成する電流分配回路11、MOSトランジスタM1,M2、バイポーラトランジスタQ1,Q2、オペアンプA1,A2、抵抗素子R1、及び、基準バイアス源12に加えて、固定抵抗である抵抗素子(第2抵抗素子)R2及びバイポーラトランジスタ(第3バイポーラトランジスタ)Q3をさらに備える。電流生成回路10については既に説明しているため、以下では、電流生成回路10以外の構成について説明する。
【0058】
バイポーラトランジスタQ3は、バイポーラトランジスタQ1,Q2と同一導電型であるPNP型のバイポーラトランジスタである。また、本例では、バイポーラトランジスタQ3のサイズ(エミッタ面積)は、バイポーラトランジスタQ1のサイズ(エミッタ面積)と同じである。
【0059】
バイポーラトランジスタQ3では、ベース及びコレクタが互いに接続されている。より具体的には、バイポーラトランジスタQ3では、ベース及びコレクタが接地電圧端子GNDに共通接続されている。
【0060】
抵抗素子R2は、バイポーラトランジスタQ3のエミッタと、電流分配回路11と、の間に設けられている。
【0061】
電流分配回路11は、電流I1,I2に加えて、当該電流I1,I2に比例する電流I3をさらに出力する。この電流I3は、抵抗素子R2、及び、バイポーラトランジスタQ3のコレクタ−エミッタ間を流れる。
【0062】
そして、バンドギャップリファレンス回路1は、電流分配回路11から抵抗素子R2までの電流経路上のノードの電圧を基準電圧Vbgrとして出力端子OUTから外部に出力する。
【0063】
ここで、バンドギャップリファレンス回路1は、電流分配回路11から出力された正の温度依存性を有する電流I3を、ベース−エミッタ間電圧Vbe3が負の温度依存性を有するバイポーラトランジスタQ3に流すことで、温度に依存しない一定の基準電圧Vbgrを生成することができる。
【0064】
さらに、バンドギャップリファレンス回路1は、PNP型のバイポーラトランジスタを用いてオペアンプを含まないPTAT電流生成ループを形成している。そのため、バンドギャップリファレンス回路1は、NPN型のバイポーラトランジスタを使用できないシングルウェルプロセス等においても構成されることができる。
【0065】
続いて、PTAT電流生成ループ上にオペアンプを設けないことにより当該オペアンプのオフセット電圧の影響がどれほど低減されるかについて説明する。なお、バイポーラトランジスタQ1〜Q3のそれぞれのエミッタ面積の比は、1:n:1である。
【0066】
まず、バイポーラトランジスタQ1,Q2のそれぞれのベース−エミッタ間電圧Vbe1,Vbe2は、以下の式(1),(2)のように表される。
【0069】
なお、Jsはバイポーラトランジスタの飽和電流密度を示し、Aは単位面積を示す。また、kをボルツマン定数、Tを絶対温度、qを電荷素量とすると、Vt=kT/qが成り立つ。
【0070】
ここで、接地電圧GNDとオペアンプA1の制御電圧V1との電位差は、接地電圧端子GNDからバイポーラトランジスタQ1を介して当該MOSトランジスタM1のゲートに至るまでの経路と、接地電圧端子GNDからバイポーラトランジスタQ2を介して当該MOSトランジスタM2のゲートに至るまでの経路と、から、以下の式(3)のように表される。
【0072】
なお、Vgs1,Vgs2は、MOSトランジスタM1,M2のそれぞれのゲート−ソース間電圧を示し、R1は、抵抗素子R1の抵抗値を示し、I2は、電流I2の電流値を示す。
【0073】
図9は、MOSトランジスタM1,M2の詳細を示す図である。
図9を参照すると、短チャネル効果によりMOSトランジスタM1のソース−ドレイン間に形成される電流経路の抵抗成分がro1と表され、同じく、短チャネル効果によりMOSM2のソース−ドレイン間に形成される電流経路の抵抗成分がro2と表されている。
【0074】
このとき、MOSトランジスタM1に供給される電流I1のうち、MOSトランジスタM1のソース−ドレイン間には2乗則を仮定したときの電流Iが流れ、抵抗成分ro1には電流I1roが流れる。また、MOSトランジスタM2に供給される電流I2のうち、MOSトランジスタM2のソース−ドレイン間には2乗則を仮定したときの電流Iが流れ、抵抗成分ro2には電流I2roが流れる。つまり、電流I1,I2の電流値I1,I2は、以下の式(4),(5)のように表される。
【0077】
オペアンプA1,A2のそれぞれのオフセット電圧Vos1,Vos2を考慮しない場合、MOSトランジスタM1,M2のそれぞれのソース−ドレイン間電圧Vds1,Vds2は、以下の式(6),(7)のように表される。
【0080】
他方、オペアンプA1,A2のそれぞれのオフセット電圧Vos1,Vos2を考慮した場合、MOSトランジスタM1,M2のそれぞれのソース−ドレイン間電圧Vds1_os,Vds2_osは、以下の式(8),(9)のように表される。
【0083】
また、このとき、電流値I1ro,I2roは、以下の式(10),(11)のように表される。なお、roは、抵抗成分ro1,ro2の抵抗値を示す。
【0086】
ここで、MOSトランジスタM1,M2は同じサイズであるため、Vgs1=Vgs2=Vgs、Vds1=Vds2=Vdsが成り立つ。このとき、式(1),(2),(3),(4),(10),(11)より、以下の式(12)が成り立つ。
【0088】
ここで、I2=I3であるから、基準電圧Vbgrは、以下の式(13)のように表される。
【0090】
ここで、短チャネル効果によりMOSトランジスタM1,M2のソース−ドレイン間に形成される電流経路の抵抗成分ro1,ro2の抵抗値roは、通常、非常に大きくなるように設計される。式(13)を参照すると、roが非常に大きい場合、オフセット電圧Vos1,Vos2は、基準電圧Vbgrにほとんど影響を与えないことがわかる。つまり、バンドギャップリファレンス回路1は、オフセット電圧Vos1,Vos2の影響をほとんど受けることなく、精度の高い基準電圧Vbgrを生成することができる。
【0091】
図10は、比較例に係るバンドギャップリファレンス回路50を示す回路図である。
図10に示すように、バンドギャップリファレンス回路50は、電流分配回路51と、オペアンプA52と、バイポーラトランジスタQ51〜Q53と、抵抗素子R51,R52と、を備える。電流分配回路51、オペアンプA52、バイポーラトランジスタQ51〜Q53、抵抗素子R51,R52、及び、ノードN51,N52は、それぞれ、電流分配回路11、オペアンプA2、バイポーラトランジスタQ1〜Q3、抵抗素子R1,R2、及び、ノードN1,N2に対応する。ここで、オペアンプA52は、ノードN51,N52の電位差に応じた制御電圧V52を生成する。バンドギャップリファレンス回路50のその他の構成については、バンドギャップリファレンス回路1と同様であるため、その説明を省略する。
【0092】
バンドギャップリファレンス回路50では、バイポーラトランジスタQ51、オペアンプA52、抵抗素子R51、及び、バイポーラトランジスタQ52によってPTAT電流生成ループが形成される。このPTAT電流生成ループ上にはオペアンプA52が設けられている。
【0093】
まず、バイポーラトランジスタQ51,Q52のそれぞれのベース−エミッタ間電圧Vbe51,Vbe52は、以下の式(14),(15)のように表される。
【0096】
また、オペアンプA52が正常に帰還動作しているとすると、式(16)が成り立つ。
【0098】
なお、R51は、抵抗素子R51の抵抗値を示し、I52は、電流I52の電流値を示し、Vos50は、オペアンプA52のオフセット電圧を示す。
【0099】
式(14)〜(16)より、電流I52は、以下の式(17)のように表される。
【0101】
ここで、I52=I53であるから、基準電圧Vbgr50は、以下の式(18)のように表される。
【0103】
式(18)に見ると、基準電圧Vbgr50は、オフセット電圧Vos50の影響を受けて変動する可能性があることがわかる。つまり、バンドギャップリファレンス回路50は、オフセット電圧Vos50の影響を受けて、精度の高い基準電圧Vbgr50を生成することができない。
【0104】
図11は、バンドギャップリファレンス回路1,50のそれぞれの基準電圧Vbgr,Vbgr50のばらつき特性を示す図である。なお、バンドギャップリファレンス回路1に設けられたMOSトランジスタM1,M2と、バンドギャップリファレンス回路50のオペアンプA2の入力作動対に用いられるMOSトランジスタと、は同一構成である。
【0105】
図11に示すように、PTAT電流生成ループ上にオペアンプの無いバンドギャップリファレンス回路1のほうが、PTAT電流生成ループ上にオペアンプの有るバンドギャップリファレンス回路50よりも、基準電圧Vbgrのばらつきが小さいことがわかる。
【0106】
本実施の形態では、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2,Q3が設けられた場合を例に説明したが、これに限られず、NPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2a,Q3aが設けられてもよい。
【0107】
図12は、バンドギャップリファレンス回路1の変形例をバンドギャップリファレンス回路1aとして示す回路図である。
図12に示すように、バンドギャップリファレンス回路1aは、バンドギャップリファレンス回路1と比較して、PNP型のバイポーラトランジスタQ1〜Q3に代えてNPN型のバイポーラトランジスタQ1a〜Q3aを備える。なお、バンドギャップリファレンス回路1aは、NPN型のバイポーラトランジスタQ1a〜Q3aを備えているため、トリプルウェルプロセスにて構成される必要がある。バンドギャップリファレンス回路1aのその他の構成については、バンドギャップリファレンス回路1と同様であるため、その説明を省略する。
【0108】
バンドギャップリファレンス回路1aは、バンドギャップリファレンス回路1と同等の効果を奏することができる。
【0109】
<実施の形態3>
図13は、実施の形態3に係るバンドギャップリファレンス回路1bを示す回路図である。なお、バンドギャップリファレンス回路1bには、電流生成回路10が適用されている。
【0110】
図13に示すように、バンドギャップリファレンス回路1bは、バンドギャップリファレンス回路1と比較して、抵抗素子R2及びバイポーラトランジスタQ3に並列に接続された抵抗素子(第3抵抗素子)R3をさらに備える。バンドギャップリファレンス回路1bのその他の構成については、バンドギャップリファレンス回路1と同様であるため、その説明を省略する。
【0111】
バンドギャップリファレンス回路1bは、抵抗素子R3を用いることにより、基準電圧Vbgrを例えば1.2Vから0.8Vに分圧して出力することができる。
【0112】
<実施の形態4>
図14は、実施の形態4に係るバンドギャップリファレンス回路1cを示す回路図である。なお、バンドギャップリファレンス回路1cには、電流生成回路10が適用されている。
【0113】
図14に示すように、バンドギャップリファレンス回路1cは、バンドギャップリファレンス回路1と比較して、抵抗素子R2に代えて可変抵抗VR1を備える。バンドギャップリファレンス回路1cのその他の構成については、バンドギャップリファレンス回路1と同様であるため、その説明を省略する。
【0114】
(バンドギャップリファレンス回路1cの第1具体例)
図15は、バンドギャップリファレンス回路1cの第1具体例を示す回路図である。
図15に示すバンドギャップリファレンス回路1cでは、可変抵抗VR1として可変抵抗VR1aが設けられている。
【0115】
可変抵抗VR1aは、抵抗素子R2と、抵抗素子R2上の複数のノードと抵抗素子R2及び電流分配回路11間のノードとの間にそれぞれ設けられた複数のスイッチSW1と、抵抗素子R2上の複数のノードと出力端子OUTとの間にそれぞれ設けられた複数のスイッチSW2と、を備える。外部からの制御信号により、複数のスイッチSW1のうち何れか一つがオンするとともに、複数のスイッチSW2のうち何れか一つがオンする。
【0116】
かかる構成により、可変抵抗VR1aは、制御信号に基づいてスイッチSW2を制御することで、出力端子OUTとバイポーラトランジスタQ3との間の抵抗値を可変することができる。それにより、
図15に示すバンドギャップリファレンス回路1cは、基準電圧Vbgrの温度依存性を微調整することが可能になる。また、可変抵抗VR1aは、制御信号に基づいてスイッチSW1を制御することで、電流分配回路11とバイポーラトランジスタQ3との間の抵抗値を可変することができる。それにより、抵抗素子R2の上端電圧(電流分配回路11に接続される側の電圧)の上昇を防ぐことができるため、電流分配回路11の動作を正常に保つことができる。
【0117】
(バンドギャップリファレンス回路1cの第2具体例)
図16は、バンドギャップリファレンス回路1cの第2具体例を示す回路図である。
図16に示すバンドギャップリファレンス回路1cでは、可変抵抗VR1として可変抵抗VR1bが設けられている。
【0118】
可変抵抗VR1bは、抵抗素子R2と、抵抗素子R2上の複数のノードと出力端子OUTとの間にそれぞれ設けられた複数のスイッチSW2と、を備える。外部からの制御信号により、複数のスイッチSW2のうち何れか一つがオンする。
【0119】
かかる構成により、可変抵抗VR1bは、制御信号に基づいてスイッチSW2を制御することで、出力端子OUTとバイポーラトランジスタQ3との間の抵抗値を可変することができる。それにより、
図16に示すバンドギャップリファレンス回路1cは、基準電圧Vbgrの温度依存性を微調整することが可能になる。
【0120】
<実施の形態5>
図17は、実施の形態5に係るバンドギャップリファレンス回路1dを示す回路図である。なお、バンドギャップリファレンス回路1dには、電流生成回路10が適用されている。
【0121】
図17に示すように、バンドギャップリファレンス回路1dは、バンドギャップリファレンス回路1と比較して、電流分配回路(第2電流分配回路)15と、Nチャネル型のMOSトランジスタ(第3NMOSトランジスタ)M4と、抵抗素子(第4抵抗素子)R4と、をさらに備える。
【0122】
MOSトランジスタM4では、ソースが抵抗素子R4の一端に接続され、ドレインが電流分配回路15に接続され、ゲートにオペアンプA1からの制御電圧V1が供給されている。抵抗素子R4の他端は、接地電圧端子GNDに接続されている。
【0123】
電流分配回路15は、例えば、カレントミラー回路であって、電流I4及び当該電流I4に比例する電流I5を出力する。電流I4は、MOSトランジスタM4のソース−ドレイン間、及び、抵抗素子R4を流れ、電流I5は、抵抗素子R2を流れる。つまり、抵抗素子R2には、電流分配回路11からの電流I3に加え、電流分配回路15からの電流I5が流れる。
【0124】
そして、バンドギャップリファレンス回路1dは、電流分配回路11,15から抵抗素子R2までの電流経路上のノードの電圧を基準電圧Vbgrとして出力端子OUTから外部に出力する。
【0125】
ここで、接地電圧端子GNDからバイポーラトランジスタQ1、MOSトランジスタM1、MOSトランジスタM4、及び、抵抗素子R4を介して、再び接地電圧端子GNDに至るまでの経路から、以下の式(19)が成り立つ。
【0127】
なお、Vgs4は、MOSトランジスタM4のゲート−ソース間電圧を示し、Vr4は、抵抗素子R4の両端に発生する電圧を示す。
【0128】
式(19)を見ると、MOSトランジスタM1,M4のサイズが同じである場合、Vbe1=Vr4が成り立つように思われるが、MOSトランジスタM1,M4のそれぞれのソース−ドレイン間に流れる電流I1,I4が異なるため、実際にはVbe1とVr4とは異なる値を示す。
【0129】
ここで、ΔVgs=Vgs1−Vgs4とすると、以下の式(20)が成り立つ。
【0131】
1次近似では、Vr4は負の温度依存性を有する。したがって、抵抗素子R4の抵抗値R4及び電圧値Vr4によって決まる電流I4(及びそれに比例する電流I5)は、負の温度依存性を有する。他方、電流I2(及びそれに比例する電流I3)は、既に述べたように、正の温度依存性を有する。
【0132】
バンドギャップリファレンス回路1dは、電流分配回路11から出力された正の温度依存性を有する電流I3と、電流分配回路15から出力された負の温度依存性を有する電流I5と、をともに抵抗素子R2に流すことで、温度に依存しない一定の基準電圧Vbgrを生成することができる。
【0133】
ここで、一般的にバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧は2次の項を含むことが知られている。そのため、例えば、バンドギャップリファレンス回路1のように、正の温度依存性を有する差電圧ΔVbeと、負の温度依存性を有するベース−エミッタ間電圧Vbe3と、で温度依存性を打ち消す構成にしただけでは、ベース−エミッタ間電圧Vbe3の2次の項が残ってしまう。その結果、基準電圧Vbgrは、温度変化に対して不安定になってしまう可能性がある。この不安定さを解消するには、基準電圧Vbgrに3次の特性を持つ信号を含ませると良いことがわかっている。
【0134】
それに対し、バンドギャップリファレンス回路1dでは、電流I4,I5が、Vbe1のみの関数ではなく、Vbe1及びΔVgsの関数である(式(20)参照)。これら電流I4,I5は、シミュレーション等により、3次の項まで含むことが確認されている。したがって、基準電圧Vbgrは、3次の特性を持つ信号が含まれることになるため、温度が変化しても安定する。
【0135】
図18は、2次特性の補償前後の基準電圧Vbgrの特性を示す図である。図中の破線は2次特性補償前の基準電圧Vbgrを示し、実線は2次特性補償後の基準電圧Vbgrを示す。
【0136】
図18に示すように、2次特性補償前の基準電圧Vbgrが温度変化に対して不安定であるのに対し、2次特性補償後の基準電圧Vbgrは、補償前と比較して、温度が変化しても安定している。
【0137】
<実施の形態6>
図19は、実施の形態6に係る電流生成回路10bを示す回路図である。電流生成回路10bは、電流生成回路10と比較して、エンハンスメント型のMOSトランジスタM1,M2に代えて、ディプレション型のMOSトランジスタM1a,M2aを備える。電流生成回路10bのその他の構成については、電流生成回路10と同様であるため、その説明を省略する。
【0138】
電流生成回路10bは、MOSトランジスタM1a,M2aのゲート電位を低くすることができる。それにより、オペアンプA1に対する出力電圧範囲の要求が緩和されるため、電流生成回路10bを低電圧で駆動することが可能となる。
【0139】
このように、電流生成回路10bは、電流生成回路10と同等の効果を奏することができるとともに、低電圧で動作することが可能である。
【0140】
本実施の形態では、エンハンスメント型のMOSトランジスタM1,M2に代えて、ディプレション型のMOSトランジスタM1a,M2aが設けられた場合を例に説明したが、これに限られず、ネイティブ型のMOSトランジスタM1a,M2aが設けられてもよい。
【0141】
また、電流生成回路10bでは、
図7の例のように、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2をNPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2aに置き換えてもよい。
【0142】
(電流生成回路10bが適用されたバンドギャップリファレンス回路1e)
図20は、電流生成回路10bが適用されたバンドギャップリファレンス回路1eを示す回路図である。
【0143】
図20に示すように、バンドギャップリファレンス回路1eは、電流生成回路10bの構成に加えて、抵抗素子R2及びバイポーラトランジスタQ3をさらに備える。つまり、バンドギャップリファレンス回路1eは、バンドギャップリファレンス回路1に設けられた電流生成回路10を電流生成回路10bに置き換えたものである。
【0144】
バンドギャップリファレンス回路1eは、バンドギャップリファレンス回路1と同等の効果を奏することができる。さらに、バンドギャップリファレンス回路1eは、ディプレション型又はネイティブ型のMOSトランジスタM1a,M2aを用いることで、低電圧で動作することができる。
【0145】
なお、バンドギャップリファレンス回路1eは、
図13の例のように、抵抗素子R2及びバイポーラトランジスタQ3に並列に抵抗素子R3をさらに備えたり、
図14の例のように、抵抗素子R2を可変抵抗VR1に置き換えたり、
図17の例のように、電流分配回路15、MOSトランジスタM4及び抵抗素子R4をさらに備えたりしてもよい。
【0146】
また、バンドギャップリファレンス回路1eは、
図12の例のように、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2,Q3をNPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2a,Q3に置き換えてもよい。
【0147】
<実施の形態7>
図21は、実施の形態7に係る電流生成回路10cを示す回路図である。電流生成回路10cは、電流生成回路10と比較して、バイポーラトランジスタQ1,Q2のそれぞれのコレクタ−エミッタ間に抵抗素子(補助抵抗素子)R11,R12をさらに備える。電流生成回路10cのその他の構成については、電流生成回路10と同様であるため、その説明を省略する。
【0148】
電流生成回路10cは、バイポーラトランジスタQ1,Q2のそれぞれのコレクタ−エミッタ間に抵抗素子R11,R12をさらに備えることにより、基準電圧Vbgrのレベルを例えば1.2Vから0.8Vに低く設定することが可能となる。また、抵抗素子R11,R12に負の温度依存性を有する電流が流れ、バイポーラトランジスタQ1,Q2には正の温度依存性を有する電流が流れるため、結果として、温度に依存しない一定の電流I2を生成することができる。
【0149】
このように、電流生成回路10cは、温度に依存しない一定の電流I2を精度良く生成することができる。
【0150】
電流生成回路10cでは、
図7の例のように、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2をNPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2aに置き換えてもよい。
【0151】
(電流生成回路10cが適用されたバンドギャップリファレンス回路1f)
図22は、電流生成回路10cが適用されたバンドギャップリファレンス回路1fを示す回路図である。
【0152】
図22に示すように、バンドギャップリファレンス回路1fは、電流生成回路10cの構成に加えて、抵抗素子R2をさらに備える。つまり、バンドギャップリファレンス回路1fは、バンドギャップリファレンス回路1に設けられた電流生成回路10を電流生成回路10cに置き換え、かつ、バイポーラトランジスタQ3を取り除いたものである。なお、バイポーラトランジスタQ3が取り除かれたのは、電流生成回路10cが温度に依存しない一定の電流I2を生成するため、バイポーラトランジスタQ3を用いて基準電圧Vbgrの温度依存性の調整をする必要がないからである。
【0153】
バンドギャップリファレンス回路1fは、バンドギャップリファレンス回路1と同等の効果を奏することができる。
【0154】
なお、バンドギャップリファレンス回路1fは、抵抗素子R2に並列に抵抗素子R3を備えたり、抵抗素子R2を可変抵抗VR1に置き換えたり、電流分配回路15、MOSトランジスタM4及び抵抗素子R4をさらに備えたりしてもよい。
【0155】
また、バンドギャップリファレンス回路1fは、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2をNPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2aに置き換えてもよい。
【0156】
<実施の形態8>
図23は、実施の形態8に係る電流生成回路10dを示す回路図である。
図23に示すように、電流生成回路10dは、電流分配回路11と、Nチャネル型のMOSトランジスタM1,M2と、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗素子R1と、オペアンプA3と、を備える。
【0157】
バイポーラトランジスタQ1では、ベース及びコレクタが接地電圧端子GNDに共通接続されている。バイポーラトランジスタQ2では、ベース及びコレクタが接地電圧端子GNDに共通接続されている。
【0158】
MOSトランジスタM1では、ソースがバイポーラトランジスタQ1のエミッタに接続され、ドレイン及びゲートがノードN1に接続されている。つまり、MOSトランジスタM1はダイオード接続されている。MOSトランジスタM2では、ソースが抵抗素子R1の一端に接続され、ドレインがノードN2に接続され、ゲートがMOSトランジスタM1のドレイン及びゲートに接続されている。また、抵抗素子R1の他端は、バイポーラトランジスタQ2のエミッタに接続されている。
【0159】
オペアンプA3は、例えばオペアンプA1,A2等と同様の機能を有し、ノードN1,N2の電位差に応じた制御電圧V3を出力する。電流分配回路11は、オペアンプA3からの制御電圧V3に応じた電流I1及び当該電流I1に比例する電流I2をそれぞれノードN1,N2に出力する。
【0160】
MOSトランジスタM1,M2のゲート電位(ノードN1の電位)は、Vbe1+Vgs1となる。なお、ディプレション型やネイティブ型のMOSトランジスタではダイオード接続できないため、MOSトランジスタM1,M2は、エンハンスメント型に限られる。
【0161】
かかる構成により、電流生成回路10dは、電流生成回路10と同等の効果を奏することができる。さらに、電流生成回路10dは、電流生成回路10と比較して、オペアンプの数を一つ減らすことができるため、回路規模を縮小することができる。
【0162】
電流生成回路10dでは、
図7の例のように、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2をNPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2aに置き換えてもよい。
【0163】
(電流生成回路10dが適用されたバンドギャップリファレンス回路1g)
図24は、電流生成回路10dが適用されたバンドギャップリファレンス回路1gを示す回路図である。
【0164】
図24に示すように、バンドギャップリファレンス回路1gは、電流生成回路10dの構成に加えて、抵抗素子R2及びバイポーラトランジスタQ3をさらに備える。つまり、バンドギャップリファレンス回路1gは、バンドギャップリファレンス回路1に設けられた電流生成回路10を電流生成回路10dに置き換えたものである。
【0165】
バンドギャップリファレンス回路1gは、バンドギャップリファレンス回路1と同等の効果を奏することができる。さらに、バンドギャップリファレンス回路1gは、オペアンプの数を一つ減らすことができるため、回路規模を縮小することができる。
【0166】
なお、バンドギャップリファレンス回路1gは、
図13の例のように、抵抗素子R2及びバイポーラトランジスタQ3に並列に抵抗素子R3をさらに備えたり、
図14の例のように、抵抗素子R2を可変抵抗VR1に置き換えたり、
図17の例のように、電流分配回路15、MOSトランジスタM4及び抵抗素子R4をさらに備えたりしてもよい。
【0167】
また、バンドギャップリファレンス回路1gは、
図12の例のように、PNP型のバイポーラトランジスタQ1,Q2,Q3をNPN型のバイポーラトランジスタQ1a,Q2a,Q3aに置き換えてもよい。
【0168】
なお、電流生成回路10b,10c,10dの特徴的な構成は組み合わせて用いられてもよい。ただし、電流生成回路10dに用いられるMOSトランジスタM1,M2は、エンハンスメント型に限られる。
【0169】
<実施の形態9>
図25は、実施の形態9に係る基準電圧&基準電流生成回路2を示す図である。以下では、基準電圧&基準電流生成回路2に、バンドギャップリファレンス回路1cが適用された場合を例に説明するが、当然ながら、上記した他のバンドギャップリファレンス回路が適用されてもよい。
【0170】
図25に示すように、基準電圧&基準電流生成回路2は、バンドギャップリファレンス回路1cと、内部基準電流生成回路16と、バイアス電圧発生回路17と、スタートアップ回路18と、基準電圧&基準電流生成部(基準電圧電流生成部)19と、起動検知回路20と、を備える。内部基準電流生成回路16及びバイアス電圧発生回路17により基準バイアス源12が構成される。
【0171】
内部基準電流生成回路16は、基準電流I0を生成してノードN3に向けて出力する。バイアス電圧発生回路17は、ノードN3を介して供給される基準電流I0と、自己の抵抗成分と、に基づいて基準バイアス電圧Vbを生成する。
【0172】
(内部基準電流生成回路16の詳細)
図26は、内部基準電流生成回路16の詳細を示す回路図である。
【0173】
図26を参照すると、内部基準電流生成回路16は、スタートアップ回路21と、Pチャネル型のMOSトランジスタMP31〜MP33と、Nチャネル型のMOSトランジスタMN31,MN32と、抵抗素子R31と、を備える。
【0174】
MOSトランジスタMP31では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインがノードN31に接続され、ゲートがノードN32に接続されている。MOSトランジスタMP32では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン及びゲートがノードN32に接続されている。MOSトランジスタMN31では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ドレイン及びゲートがノードN31に接続されている。MOSトランジスタMN32では、ソースが抵抗素子R31の一端に接続され、ドレインがノードN32に接続され、ゲートがノードN31に接続されている。抵抗素子R31の他端は、接地電圧端子GNDに接続されている。MOSトランジスタMP33では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインが内部基準電流生成回路16の出力端子に接続され、ゲートがノードN32に接続されている。また、スタートアップ回路21の出力がノードN31に接続されている。なお、スタートアップ回路21は、電源電圧供給開始時にノードN31に対してスタートアップ電流を供給することで、基準電流I0を安定化させる。
【0175】
かかる構成により、内部基準電流生成回路16は、安定した基準電流I0を生成することができる。なお、MOSトランジスタMP33を複数備えることで、異なる値の複数の基準電流I0を生成することも可能である。
【0176】
図25に戻る。バイアス電圧発生回路17は、例えば、ノードN3と接地電圧端子GNDとの間に、ダイオード接続されたNチャネル型のMOSトランジスタM3を備える。MOSトランジスタM3に流れる基準電流I0と、MOSトランジスタM3の抵抗成分と、に基づいて、基準バイアス電圧Vbが発生する。
【0177】
スタートアップ回路18は、電源電圧供給開始時にオペアンプA2の非反転入力端子(ノードN2)に対してスタートアップ電流を供給することで、バンドギャップリファレンス回路1cの動作を開始させる。例えば、スタートアップ回路18は、電源電圧供給開始時にバンドギャップリファレンス回路1cが動作していないことを検知すると、オペアンプA2の非反転入力端子の電圧を制御することで、当該バンドギャップリファレンス回路1cを強制的に動作させる。
【0178】
起動検知回路20は、基準電圧Vbgrが所定レベルに達すると、外部にその情報を伝える。それにより、外部に設けられた回路は、例えば、モードを停止モードから動作モードに移行する。
【0179】
基準電圧&基準電流生成部19は、基準電圧Vbgrに基づいて、外部回路に要求されている複数の基準電圧Vref1〜Vrefp(pは任意の自然数)及び複数の基準電流Iref1〜Irefq(qは任意の自然数)を生成する。
【0180】
(基準電圧&基準電流生成部19の詳細)
図27は、基準電圧&基準電流生成部19の詳細を示す回路図である。
【0181】
図27を参照すると、基準電圧&基準電流生成部19は、Pチャネル型のMOSトランジスタMP40と、Pチャネル型のMOSトランジスタMP41〜MP4qと、オペアンプA40と、抵抗素子R40と、複数のスイッチSWと、を備える。
【0182】
MOSトランジスタMP40では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインがノードN41に接続され、ゲートにオペアンプA40の出力電圧が供給される。抵抗素子R40の一端は、ノードN41に接続され、抵抗素子R40の他端は、接地電圧端子GNDに接続されている。複数のスイッチSWは、抵抗素子R40上の複数のノードと、ノードN42と、の間にそれぞれ設けられ、外部からの制御信号に基づいて何れか一つがオンする。オペアンプA40は、基準電圧VbgrとノードN42の電位との電位差に応じた電圧を出力する。
【0183】
q個のMOSトランジスタMP41〜MP4qでは、それぞれ、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ゲートにオペアンプA40の出力電圧が供給され、ドレインから基準電流Iref1〜Irefqが出力される。また、抵抗素子R40上の複数のノードの電圧がそれぞれ基準電圧Vref1〜Vrefpとして出力される。
【0184】
このように、基準電圧&基準電流生成回路2は、バンドギャップリファレンス回路1cを用いることで、温度に依存しない精度の高い基準電圧Vref1〜Vrefp及び基準電流Iref1〜Irefqを生成することができる。
【0185】
(基準電圧&基準電流生成回路2が搭載された半導体装置3、を備えた電子システム)
図28は、基準電圧&基準電流生成回路2が搭載された半導体装置3、を備えた電子システム4を示す図である。
【0186】
図28に示すように、電子システム4は、半導体装置3と、外付け部品5と、外部LDO(Low Drop Out)レギュレータ6と、コンデンサC1と、を備える。半導体装置3は、基準電圧&基準電流生成回路2と、センサ部7と、LDOレギュレータ8と、ディジタル部9と、を備える。
【0187】
基準電圧&基準電流生成回路2は、外部LDOレギュレータ6からの電源電圧よって駆動され、基準電圧Vref及び基準電流Irefを出力する。LDOレギュレータ8は、外部LDOレギュレータ6からの電源電圧によって駆動され、基準電圧Vrefや基準電流Irefに応じた内部電源電圧を生成する。内部電源電圧はコンデンサC1によってノイズ除去された後、センサ部7やディジタル部9などの内部回路に供給される。
【0188】
センサ部7は、外部LDOレギュレータ6からの電源電圧、及び、LDOレギュレータ8からの内部電源電圧等によって駆動され、例えば、外部入力されたアナログ信号を基準電圧Vrefや基準電流Iref等を用いてディジタル信号に変換して、ディジタル部9に送信する。センサ部7は、外付け部品5との信号の送受信も行う。ディジタル部9は、センサ部7から受け取ったディジタル信号に対して所定の処理を実行し、処理結果を例えば外部回路に出力する。
【0189】
電子システム4は、基準電圧&基準電流生成回路2が搭載されたシステムの一例を示したにすぎず、基準電圧&基準電流生成回路2が搭載される他の回路構成に適宜変更可能である。
【0190】
以上のように、上記実施の形態1,6〜8に係る電流生成回路は、PTAT電流生成ループ上に、オペアンプに代えてゲート接地回路(MOSトランジスタM1,M2)を備える。それにより、上記実施の形態1,6〜8に係る電流生成回路は、PTAT電流生成ループ上にオペアンプを設ける必要がなくなるため、正の温度依存性を有する電流を精度よく出力することができる。
【0191】
また、上記実施の形態1,6〜8に係る電流生成回路は、PNP型のバイポーラトランジスタを用いてオペアンプを含まないPTAT電流生成ループを形成している。そのため、NPN型のバイポーラトランジスタを使用できない環境下でも構成されることができる。
【0192】
さらに、上記実施の形態1,6〜8に係る電流生成回路は、オペアンプA1,A2を用いてMOSトランジスタM1,M2のドレイン電圧を固定している。それにより、MOSトランジスタM1,M2のドレイン電圧を低くバイアスすることができるため、低電圧での動作が可能となる。
【0193】
また、上記実施の形態2〜8に係るバンドギャップリファレンス回路は、上記した電流生成回路を用いることで、温度に依存しない一定の基準電圧Vbgrを生成することができる。さらに、上記実施の形態9に係る基準電圧&基準電流生成回路、及び、それを用いた半導体装置は、上記したバンドギャップリファレンス回路を用いることで、所望の動作を実現することが可能である。
【0194】
(関連技術との差異)
特許文献1及び特許文献2に開示された構成は、何れも、オペアンプのオフセット電圧の影響を低減するための追加の回路が必要になる。そのため、回路規模が増大したり、コストが増大したりしてしまう。
【0195】
さらに、特許文献1の構成では、オフセット量の測定、及び、基準電圧の補正制御が必要になるため、出荷時のテストコストが大きくなる。また、特許文献2の構成では、オペアンプの入力端子及び出力端子の接続先の切り替えを行っているが、この切り替えを後段のローパスフィルタのカットオフ周波数以上で繰り返す必要がある。そのため、基準電圧が供給される外部回路が切り替えタイミングに同期していない場合や連続時間回路の場合、ローパスフィルタで落としきれなかった残留誤差により特性劣化が起きる可能性がある。
【0196】
それに対し、上記実施の形態に係る電流生成回路及びそれを備えたバンドギャップリファレンス回路は、そもそも正の温度依存性を有する電流が流れる電流経路上にオペアンプを有しないため、このような問題は生じない。
【0197】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0198】
例えば、上記の実施の形態に係る半導体装置では、半導体基板、半導体層、拡散層(拡散領域)などの導電型(p型もしくはn型)を反転させた構成としてもよい。そのため、n型、及びp型の一方の導電型を第1の導電型とし、他方の導電型を第2の導電型とした場合、第1の導電型をp型、第2の導電型をn型とすることもできるし、反対に第1の導電型をn型、第2の導電型をp型とすることもできる。