(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(SEM)や、走査透過電子顕微鏡(STEM)等において、試料のドリフトが発生すると、一度目のスキャンと二度目のスキャンとで観察対象物がずれているように観察される。
【0003】
この試料のドリフトは、例えば、基準となる画像(基準画像)と観察や分析を行っている際にドリフトした画像(比較画像)とから、相互相関関数(もしくは位相限定相関関数)を求め、基準画像と比較画像との間のズレ量(ドリフト量)を計算して、装置にフィードバックすることで補正される。ドリフト量は、相互相関関数(もしくは位相限定相関関数)において、最大の強度位置と関数の中心との相対的な位置に対応する。
【0004】
図13は、一般的なドリフト補正の処理の一例を示すフローチャートである。ドリフト補正の処理は、
図13に示すように、基準画像を取得するステップS10と、観察・分析を行うステップS12と、比較画像を取得するステップS14と、ドリフト量を計算するステップS16と、電子顕微鏡に計算したドリフト量の情報をフィードバックしてドリフト量を補正するステップS18と、を有している。ステップS12において、観察・分析を行わない場合(ステップS12でNoの場合)、処理を終了する。
【0005】
図14は、一般的なドリフト量を計算する処理(ステップS16)の一例を示すフローチャートである。ドリフト量の計算する処理は、
図14に示すように、基準画像と比較画像をそれぞれフーリエ変換するステップS162と、基準画像と比較画像の相互相関関数を求めるステップS164と、相互相関関数の最大強度位置を検索するステップS166と、を有している。
【0006】
ここで、原子配列のように観察・分析する対象の画像が周期構造の場合、相互相関関数において、基準画像と比較画像とが周期構造の一周期分ずれたのか、それとも一周期分以上ずれたのかを判別することは難しい。例えば、像のブレやノイズの影響により、実際にはドリフトは一周期分よりも小さいにも関わらず、相互相関関数では、一周期以上ドリフトされたと計算される場合がある。
【0007】
図15は、周期構造を含む基準画像と周期構造を含む比較画像を重ねた重複画像Dを模式的に示す図である。
図15では、斜め左下線でハッチングされた丸は基準画像の粒子を表し、斜め右下線でハッチングされた丸は比較画像の粒子を表している。
図15に示す重複画像Dでは、基準画像と比較画像とではドリフトは生じていないが、基準画像および比較画像には像ブレを生じさせており周期がずれている箇所がある。
【0008】
図16は、像ブレがある基準画像と像ブレがある比較画像との相互相関関数の一例を示す図である。
図16に示す「×」印は、最大強度位置を示している。なお、
図16では、基準画像と比較画像との間にはドリフトは生じていない。
【0009】
基準画像および比較画像に像ブレがない場合、ドリフト量は零となり、相互相関関数の中心が最大強度となる。しかしながら、基準画像および比較画像に像ブレがある場合、
図16に示すように、ドリフトは生じていないにも関わらず、相互相関関数の最大強度位置
は、中心からずれてしまう。例えば、
図16に示す例では、基準画像と比較画像との間にはドリフトがないにも関わらず、最大強度位置が中心からX軸方向に一周期分ずれている。このような場合には、ドリフトは生じていないにも関わらず、相互相関関数では像ブレの影響により一周期分ずれたことになってしまう。したがって、過大にドリフト補正がなされてしまうことになる。
【0010】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、複数の画像信号間にてマッチング処理を行う際に、画像信号に含まれるパターンに周期性がありと判定される場合には、2以上の同一形状のパターンが含まれないような範囲に画像信号領域を狭めている。これにより、繰り返しパターンを含む画像を取得する場合であっても、適切な積算信号を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0041】
1. ドリフト量計算装置
まず、本実施形態に係るドリフト量計算装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るドリフト量計算装置100を含む荷電粒子線装置1000の構成を模式的に示す図である。ここでは、
図1に示すように、ドリフト量計算装置100が荷電粒子線装置に含まれている例について説明する。
【0042】
荷電粒子線装置1000は、ドリフト量計算装置100に加えて、さらに、荷電粒子線装置本体10と、画像生成部20と、を含む。荷電粒子線装置1000は、図示の例では
、走査透過電子顕微鏡(STEM)である。走査透過電子顕微鏡は、電子プローブで試料上を走査し、試料Sを透過した電子を検出して走査像を得るための装置である。
【0043】
荷電粒子線装置本体10は、電子線源11と、集束レンズ12と、走査部13と、対物レンズ14と、試料ステージ15と、試料ホルダー16と、中間レンズ17と、投影レンズ18と、検出器19a,19bと、を有している。
【0044】
電子線源11は、電子線を発生させる。電子線源11は、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する。電子線源11としては、例えば、電子銃を用いることができる。電子線源11として用いられる電子銃は特に限定されず、例えば熱電子放出型や、熱電界放出型、冷陰極電界放出型などの電子銃を用いることができる。
【0045】
集束レンズ12は、電子線源11の後段(電子線の下流側)に配置されている。集束レンズ12は、電子線源11で発生した電子線を集束するためのレンズである。集束レンズ12は、図示はしないが、複数のレンズ(コンデンサーレンズ、コンデンサーミニレンズ等)を含んで構成されていてもよい。
【0046】
走査部13は、集束レンズ12の後段に配置されている。走査部13は、電子線を偏向させて、集束レンズ12および対物レンズ14で集束された電子線(電子プローブ)で試料S上を走査する。走査部13は、電子線を偏向させる走査コイルを有している。走査部13は、走査信号生成部(図示せず)で生成された走査信号に基づいて、電子線(電子プローブ)の走査を行う。
【0047】
対物レンズ14は、走査部13(走査コイル)の後段に配置されている。対物レンズ14は、電子線を集束して試料Sに照射するためのレンズである。
【0048】
試料ステージ15は、試料Sを保持する。図示の例では、試料ステージ15は、試料ホルダー16を介して、試料Sを保持している。試料ステージ15は、例えば、対物レンズ14の上部磁極と下部磁極との間に試料Sを位置させる。試料ステージ15は、試料ホルダー16を移動および静止させることにより、試料Sの位置決めを行うことができる。試料ステージ15は、試料Sを水平方向(電子線の進行方向に対して直交する方向)や鉛直方向(電子線の進行方向に沿う方向)に移動させることができる。試料ステージ15は、さらに、試料Sを傾斜させることができる。
【0049】
試料ステージ15は、図示の例では、対物レンズ14のポールピース(図示せず)の横から試料Sを挿入するサイドエントリーステージである。なお、図示はしないが、試料ステージ15は、対物レンズ14のポールピースの上方から試料Sを挿入するトップエントリーステージであってもよい。
【0050】
中間レンズ17は、対物レンズ14の後段に配置されている。投影レンズ18は、中間レンズ17の後段に配置されている。中間レンズ17および投影レンズ18は、試料Sを透過した電子線を検出器19a,19bに導く。例えば、中間レンズ17および投影レンズ18は、対物レンズ14の像面もしくは後焦点面(回折図形が形成される面)を投影して検出器19a,19b上に結像する。
【0051】
暗視野像検出器19aは、投影レンズ18の後段に配置されている。なお、暗視野像検出器19aの位置は、試料Sよりも後段(後方)であれば特に限定されない。暗視野像検出器19aは、暗視野像を検出するための検出器である。暗視野像検出器19aは、例えば、円環状の検出器であり、試料Sで高角度に散乱された電子を検出する。なお、試料Sで散乱されずに透過した電子、および試料Sで低角度に散乱された電子は、暗視野像検出
器19aで検出されずに、暗視野像検出器19aを通過する。
【0052】
明視野像検出器19bは、暗視野像検出器19aの後段に配置されている。明視野像検出器19bは、暗視野像検出器19aを通過した電子を検出する。
【0053】
荷電粒子線装置本体10は、図示の例では、除振機2を介して架台4上に設置されている。
【0054】
画像生成部20は、検出器19a,19bからの検出信号(電子線の強度信号)を、走査信号に同期させて画像化する処理を行う。これにより、走査透過電子顕微鏡像(STEM像、走査像)が生成される。ここで、走査透過電子顕微鏡像とは、検出信号と、走査信号とを同期させて得られた、試料位置に対応した信号量(電子線の強度)の分布を示す像である。なお、画像生成部20は、暗視野像検出器19aの検出信号から、高角度散乱暗視野像(high−angle annular dark−field scanning microscope image:HAADF−STEM像)を生成することができる。画像生成部20は、生成した画像(STEM像、HAADF−STEM像)の情報をドリフト量計算装置100に出力する。
【0055】
画像生成部20は、CPU(Central Processing Unit)が記憶部(図示せず)等に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、上記処理を行うようにしてもよい。また、画像生成部20の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)により実現して上記の処理を行うようにしてもよい。
【0056】
ドリフト量計算装置100は、2つの画像間のドリフト量を計算するための装置である。なお、ドリフト量は、ベクトル量であり、大きさと方向を持つ量である。ドリフト量は、2つの画像間の位置ずれ量とも言える。例えば、ドリフト量計算装置100は、荷電粒子線装置本体10で撮像されて画像生成部20で生成された基準画像(第1画像)と、基準画像を撮像してから一定時間経過後に撮像されて画像生成部20で生成された比較画像(第2画像)と、の間のドリフト量を計算する処理を行う。ドリフト量計算装置100は、処理部110と、操作部120と、表示部122と、記憶部124と、情報記憶媒体126と、を含む。
【0057】
操作部120は、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得し、処理部110に送る処理を行う。操作部120は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどである。
【0058】
表示部122は、処理部110によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。表示部122は、例えば、処理部110で計算されたドリフト量の情報やドリフト補正量の情報を表示することができる。また、表示部122は、例えば、画像生成部20で生成された画像(STEM像、HAADF−STEM像)を表示することができる。
【0059】
記憶部124は、処理部110のワーク領域となるもので、その機能はRAMなどにより実現できる。記憶部124は、処理部110が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部124は、処理部110の作業領域として用いられ、処理部110が各種プログラムに従って実行した算出結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
【0060】
情報記憶媒体126(コンピューターにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディ
スク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部110は、情報記憶媒体126に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体126には、処理部110の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムを記憶することができる。
【0061】
処理部110は、記憶部124に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理を行う。処理部110は、記憶部124に記憶されているプログラムを実行することで、以下に説明する、相関関数演算部112、極大位置探索部114、極大位置決定部116、ドリフト量算出部118、ドリフト補正量算出部119として機能する。処理部110の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。なお、処理部110の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。処理部110は、相関関数演算部112と、極大位置探索部114と、極大位置決定部116と、ドリフト量算出部118と、ドリフト補正量算出部119と、を含む。
【0062】
相関関数演算部112は、基準画像と比較画像との相関関数を求める。なお、相関関数としては、例えば、相互相関関数または位相限定相関関数を用いることができる。以下、相関関数として、相互相関関数を用いる例について説明する。
【0063】
図2は、基準画像の一例を示す写真である。
図3は、比較画像の一例を示す写真である。なお、
図2に示す標準画像と
図3に示す比較画像は、連続して撮像されたSTEM−HAADF像である。相関関数演算部112は、まず、基準画像および比較画像をそれぞれフーリエ変換する。相関関数演算部112は、フーリエ変換された基準画像とフーリエ変換された比較画像から、相互相関関数を求める。
【0064】
図4は、基準画像と比較画像の相互相関関数の一例を示す図である。
図4に示す直交する2本の直線は、中心線である。なお、
図4は、
図2に示す標準画像と
図3に示す比較画像との相互相関関数である。
【0065】
極大位置探索部114は、相関関数演算部112で求められた相互相関関数から極大をとる極大位置を探索する。極大位置探索部114は、例えば、相互相関関数において、着目する位置の強度が隣接する各位置の強度よりも大きい場合、当該着目する位置を極大位置とし、その極大位置の情報(極大位置の座標、およびその強度(極大値))を極大位置決定部116に出力する。
【0066】
極大位置探索部114は、例えば、
図4に示す相互相関関数の左上端から順に右下端まで、極大を探索する。なお、極大位置探索部114が相互相関関数において極大位置を探索する順序は特に限定されない。極大位置探索部114は、極大位置が検出されると、極大をとる位置での強度(極大値)の情報と、極大が探索された位置(座標)の情報と、を極大位置決定部116に出力する。
【0067】
極大位置決定部116は、極大位置探索部114で探索された複数の極大位置において、各極大位置の強度を相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけて比較し、ドリフト量に対応する極大位置を決定する。
【0068】
極大位置決定部116は、例えば、極大位置探索部114で探索された2つの極大位置(第1極大位置、第2極大位置)の強度の情報を取得すると、第1極大位置と相互相関関数の中心との間の距離、および第2極大位置と相互相関関数の中心との間の距離を求める。そして、極大位置決定部116は、第1極大位置の強度と第2極大位置の強度とを相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけて比較し、比較結果に基づいて2つの極大位置
の一方をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。
【0069】
図5は、極大位置決定部116において、2つの極大位置(第1極大位置P1
1,P1
2,P1
3、第2極大位置P2)を、相互相関関数の中心Oからの距離に応じた重みをつけて比較する処理の一例を説明するための図である。
【0070】
まず、第1極大位置P1
1の強度Aと第2極大位置P2の強度Bとを比較する場合について説明する。
図5に示すように、第1極大位置P1
1と中心Oとの間の距離は、第2極大位置P2と中心Oとの間の距離よりも大きい。
【0071】
極大位置決定部116は、第1極大位置P1
1と中心Oとの間の距離が第2極大位置P2と中心Oとの間の距離よりも大きい場合、B×α<A(ただしα>1)を満たす場合に第1極大位置P1
1をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。極大位置決定部116は、B×α<Aを満たさない場合には第2極大位置P2をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。
【0072】
ここで、係数αは、1より大きい固定値である。係数αは、例えば、α=1.1である。なお、係数αの値は、1より大きい値であれば特に限定されない。係数αは、任意に変更することができる。
【0073】
次に、第1極大位置P1
2の強度Aと第2極大位置P2の強度Bとを比較する場合について説明する。
図5に示すように、第1極大位置P1
2と中心Oとの間の距離は、第2極大位置P2と中心Oとの間の距離よりも小さい。
【0074】
極大位置決定部116は、第1極大位置P1
2と中心Oとの間の距離が第2極大位置P2と中心Oとの間の距離よりも小さい場合、B<A×αを満たす場合に第1極大位置P1
2をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。極大位置決定部116は、B<A×αを満たさない場合には第2極大位置P2をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。
【0075】
次に、第1極大位置P1
3の強度Aと第2極大位置P2の強度Bとを比較する場合について説明する。
図5に示すように、第1極大位置P1
3と中心Oとの間の距離は、第2極大位置P2と中心Oとの間の距離と等しい。
【0076】
極大位置決定部116は、第1極大位置P1
3と中心Oとの間の距離が第2極大位置P2と中心Oとの間の距離と等しい場合、B<Aを満たす場合に第1極大位置P1
3をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。極大位置決定部116は、B<Aを満たさない場合には第2極大位置P2をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。
【0077】
このようにして、極大位置決定部116は、極大位置間の強度を、相互相関関数の中心Oからの距離に応じた重みをつけて比較し、比較結果に基づいて2つの極大位置の一方(例えば第1極大位置)をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。極大位置決定部116は、ドリフト量に対応する極大位置の候補の情報(その強度(極大値)および座標)を記憶部124に記憶する。
【0078】
極大位置決定部116は、例えば、極大位置探索部114で極大位置が探索されるごとに、当該探索された極大位置の強度と、記憶部124に記憶されているドリフト量に対応する極大位置の候補の強度とを、上記のように相互相関関数の中心Oからの距離に応じた重みをつけて比較する。そして、極大位置決定部116は、探索された極大位置の強度がドリフト量に対応する極大位置の候補となった場合には、記憶部124に記憶されているドリフト量に対応する極大位置の候補の情報を更新する。
【0079】
極大位置決定部116は、極大位置探索部114で極大位置が探索されるごとに上記の処理を行い、極大位置探索部114で探索されたすべての極大位置について上記の処理を行った結果、最終的に記憶部124に残ったドリフト量に対応する極大位置の候補を、ドリフト量に対応する極大位置と決定する。
【0080】
ドリフト量算出部118は、極大位置決定部116で決定されたドリフト量に対応する極大位置に基づいて、基準画像と比較画像との間のドリフト量(位置ずれ量)を算出する。ドリフト量算出部118は、ドリフト量に対応する極大位置と相互相関関数の中心Oとを結ぶベクトルから、基準画像と比較画像との間のドリフト量(ドリフトの大きさおよびドリフトの方向)を算出する。ドリフト量算出部118が算出したドリフト量の情報は、ドリフト補正量算出部119に出力される。
【0081】
ドリフト補正量算出部119は、ドリフト量算出部118で算出されたドリフト量に基づいて、第1画像と前記第2画像との間のドリフトを補正するドリフト補正量を求める。ここで、ドリフト補正量は、ドリフト量と大きさが同じであり、かつドリフトの方向と向きが反対方向であるベクトル量である。
【0082】
処理部110は、例えば、ドリフト補正量算出部119で求められたドリフト補正量の情報を、走査部13に出力する。走査部13は、このドリフト補正量の情報に基づいて、試料Sを走査する領域を変更して、ドリフトを補正する。
【0083】
なお、処理部110は、荷電粒子線装置本体10の電子線偏向部(図示せず)にドリフト補正量の情報を出力してもよい。電子線偏向部は、このドリフト補正量の情報に基づいて、電子線を偏向し、試料Sを走査する領域を変更して、ドリフトを補正してもよい。
【0084】
また、処理部110は、ドリフト量の情報およびドリフト補正量の情報を表示部122に表示させる制御を行ってもよい。これにより、例えば、ユーザーは、表示部122に表示されたドリフト量の情報およびドリフト補正量の情報を見て試料Sのドリフトの状況を確認することができる。
【0085】
ドリフト量計算装置100および荷電粒子線装置1000は、例えば、以下の特徴を有する。
【0086】
ドリフト量計算装置100では、極大位置探索部114は、基準画像と比較画像との相関関数から極大をとる極大位置を探索し、極大位置決定部116は、極大位置探索部114で探索された複数の極大位置において各極大位置の強度を相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけて比較してドリフト量に対応する極大位置を決定し、ドリフト量算出部118は、ドリフト量に対応する極大位置に基づいてドリフト量を算出する。そのため、ドリフト量計算装置100では、周期構造を含み、かつ像ブレやノイズの影響がある画像に対しても、ドリフト量が過剰に計算される可能性を低減させることができる。したがって、ドリフト量計算装置100では、例えば周期構造を含む画像であっても、正確にドリフト量を計算することができる。
【0087】
例えば、周期構造を含み、かつ像ブレやノイズの影響がある2つの画像のドリフト量を求める際に、相互相関関数の極大値に重みをつけずに単純に極大値の大きさを比較して最大極大値を決定しドリフト量を算出した場合、実際にはドリフトは一周期分よりも小さいにも関わらず、相互相関関数では、一周期以上ドリフトされたと計算される場合がある。これに対して、ドリフト量計算装置100では、各極大位置の強度(極大値)を相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけて比較してドリフト量に対応する極大位置を決定す
るため、ドリフト量が過剰に計算される可能性を低減させることができる。
【0088】
また、ドリフト量計算装置100では、周期構造を含まない画像に対しても、周期構造を含む画像と同様に、ドリフト量を計算することができる。したがって、ドリフト量計算装置100では、例えばパターンに周期性がありと判定される場合に2以上の同一形状のパターンが含まれないような範囲に画像信号領域を狭めてドリフト量を計算する場合に比べて、周期性を判断する必要がなく、周期性の有無に関わらず容易にドリフト量を求めることができる。
【0089】
ドリフト量計算装置100では、極大位置探索部114で探索された2つの極大位置のうちの一方の極大位置の強度をAとし、他方の極大位置の強度をBとしたときに、極大位置決定部116は、第1極大位置と相関関数の中心Oとの間の距離が第2極大位置と相関関数の中心Oとの間の距離よりも大きい場合、B×α<A(ただしα>1)を満たす場合に第1極大位置をドリフト量に対応する極大位置の候補とし、第1極大位置と相関関数の中心Oとの間の距離が第2極大位置と相関関数の中心Oとの間の距離よりも小さい場合、B<A×αを満たす場合に第1極大位置をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。そのため、ドリフト量計算装置100では、極大位置の強度を相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけて比較することができ、例えば周期構造を含む画像であっても、ドリフト量が過剰に計算される可能性を低減させることができる。さらに、ドリフト量計算装置100では、周期構造を含まない画像に対しても、周期構造を含む画像と同様に、ドリフト量を計算することができる。以下、その理由について説明する。
【0090】
図6は、
図4に示す相互相関関数の極大位置のリストである。なお、
図6に示すリストでは、極大値の大きい順に並べている。ここで、
図4に示す相互相関関数は、連続して撮像された2つの画像(
図2に示す標準画像および
図3に示す比較画像)の相互相関関数である。2つの画像間のドリフト量に対応する極大位置は、相互相関関数の中心に最も近い極大位置(0,−2)(順位6、極大値0.95193761)である。しかしながら、像ブレやノイズ等の影響により、
図6に示すリストに示すように、極大位置(0,−2)の強度よりも大きな強度を持つ極大位置は5つある。したがって、
図4に示す相互相関関数では、像ブレやノイズ等の影響によって極大値は5%程度大きさが変わってしまっていることがわかる。
【0091】
図7は、周期性の低い周期構造を含む基準画像である。
図8は、
図7に示す基準画像を27ピクセル横方向にシフトさせた比較画像である。
図9は、
図7に示す基準画像と
図8に示す比較画像の相互相関関数を示す図である。
図10は、
図9に示す相互相関関数の極大位置のリストである。なお、
図10に示すリストでは、極大値の大きい順に並べている。
【0092】
図10に示すように、
図9に示す相互相関関数でも複数の極大値がある。しかしながら、最も大きい極大値(順位1)と次に大きい極大値(順位2)とは、20%程度の差がある。
【0093】
そのため、係数αの値をα=1.1程度とすれば、
図4に示す相互相関関数、および
図9に示す相互相関関数ともに、ドリフト量に対応する極大位置を選ぶことができる。このように、周期構造がある画像間の相互相関関数における極大値のリスト、および周期構造がない画像間の相互相関関数における極大値のリストから係数αを決定することで、周期構造の有無に関わらずドリフト量に対応する極大値を選択することができる係数αを決定することができる。
【0094】
したがって、ドリフト量計算装置100では、上述のように、周期構造を含まない画像
に対しても、周期構造を含む画像と同様に、ドリフト量を計算することができ、周期性の有無に関わらず容易にドリフト量を求めることができる。
【0095】
ドリフト量計算装置100では、ドリフト補正量算出部119は、ドリフト量算出部118で算出されたドリフト量に基づいて、基準画像と比較画像との間のドリフト補正量を求めるため、例えば、容易にドリフト補正を行うことができる。
【0096】
荷電粒子線装置1000は、正確にドリフト量を補正することができるドリフト量計算装置100を含むため、ドリフトを正確に補正することができる。
【0097】
2. ドリフト量計算方法
次に、本実施形態に係るドリフト量計算装置100を用いたドリフト量計算方法について図面を参照しながら説明する。
図11は、本実施形態に係るドリフト量計算方法の一例を示すフローチャートである。
【0098】
例えば、ユーザーが操作部120を介してドリフト量計算処理を要求すると、処理部110は、操作部120からの操作信号を受け付けて、処理を開始する。
【0099】
まず、相関関数演算部112は、基準画像および比較画像をそれぞれフーリエ変換する(ステップS100)。
【0100】
次に、相関関数演算部112は、フーリエ変換された基準画像とフーリエ変換された比較画像から、相互相関関数を求める(ステップS102)。
【0101】
次に、極大位置探索部114は、相関関数演算部112で求められた相互相関関数から極大をとる極大位置の探索を開始する(ステップS104)。極大位置探索部114は、例えば、
図4に示す相互相関関数の左上端から探索を開始する。このとき、極大位置決定部116は、探索を開始する始点の位置をドリフト量に対応する極大位置の候補として、その位置および強度(極大値)Bを記憶部124に記録する。
【0102】
極大位置探索部114は、相互相関関数の探索の始点から探索を開始し、各座標が極大をとる位置(極大位置)か否かの判定を行う(ステップS108)。極大位置探索部114は、極大位置ではないと判定した場合(ステップS108でNOの場合)、次の座標に移動し(ステップS110)、当該座標が極大位置か否かの判定を行う(ステップS108)。
【0103】
極大位置探索部114がその座標が極大位置であると判定した場合(ステップS108でYesの場合)、極大位置決定部116は、探索された極大位置(極大値A)と相互相関関数の中心Oとの間の距離D1と、ドリフト量に対応する極大位置の候補とした極大位置と中心Oとの間の距離D2と、を比較する(ステップS112)。極大位置決定部116は、極大位置探索部114からの探索された極大位置の情報、および記憶部124に記憶されている極大位置の候補の情報を用いて、距離D1と距離D2との比較を行う。
【0104】
距離D1が距離D2よりも大きい場合(ステップS114でD1>D2の場合)、極大位置決定部116は、B×α<Aを満たす場合(ステップS116でYesの場合)に、探索された極大位置をドリフト量に対応する極大位置(極大位置の候補)とする(ステップS122)。そして、極大位置決定部116は、記憶部124に記憶されている極大位置の候補の情報を更新する。
【0105】
極大位置決定部116が探索された極大位置をドリフト量に対応する極大位置としたス
テップS122の処理の後、またはB×α<Aを満たさない場合(ステップS116でNoの場合)、極大位置探索部114は、その位置が終点か否か、すなわち、相互相関関数のすべての位置を探索したか否かの判定を行う(ステップS124)。
【0106】
また、距離D1が距離D2よりも小さい場合(ステップS114でD1<D2の場合)、極大位置決定部116は、B<A×αを満たす場合(ステップS118でYesの場合)に、探索された極大位置をドリフト量に対応する極大位置(極大位置の候補)とする(ステップS122)。そして、極大位置決定部116は、記憶部124に記憶されている極大位置の候補の情報を更新する。
【0107】
極大位置決定部116が探索された極大位置をドリフト量に対応する極大位置としたステップS122の処理の後、またはB<A×αを満たさない場合(ステップS118でNoの場合)、極大位置探索部114は、その位置が終点か否かの判定を行う(ステップS124)。
【0108】
また、距離D1と距離D2とが等しい場合(ステップS114でD1=D2の場合)、極大位置決定部116は、B<Aを満たす場合(ステップS120でYesの場合)、探索された極大位置をドリフト量に対応する極大位置(極大位置の候補)とする(ステップS122)。そして、極大位置決定部116は、記憶部124に記憶されている極大位置の候補の情報を更新する。
【0109】
極大位置決定部116が探索された極大位置をドリフト量に対応する極大位置としたステップS122の処理の後、またはB<Aを満たさない場合(ステップS120でNoの場合)、極大位置探索部114は、その位置が終点か否かの判定を行う(ステップS124)。
【0110】
その位置が終点でないと判定された場合(ステップS124でNoの場合)、極大位置探索部114は、次の座標に移動し(ステップS110)、当該座標が極大位置か否かの判定を行う(ステップS108)。
【0111】
極大位置探索部114および極大位置決定部116は、上述したステップS108〜S124の処理を繰り返し、極大位置探索部114が探索した位置を終点と判定した場合(ステップS124でYesの場合)、極大位置決定部116は、最終的に記憶部124に残ったドリフト量に対応する極大位置の候補を、ドリフト量に対応する極大位置と決定する。
【0112】
そして、ドリフト量算出部118は、極大位置決定部116で決定されたドリフト量に対応する極大位置に基づいて、基準画像と比較画像との間のドリフト量を算出する(ステップS126)。
【0113】
次に、ドリフト補正量算出部119は、ドリフト量算出部118で算出されたドリフト量に基づいて、第1画像と前記第2画像との間のドリフトを補正するドリフト補正量を求める(ステップS128)。そして、処理部110は、例えば、ドリフト補正量の情報を走査部13に出力し、処理を終了する。
【0114】
本実施形態に係るドリフト量計算方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0115】
本実施形態に係るドリフト量計算方法では、基準画像と比較画像との相関関数から極大をとる極大位置を探索する極大位置探索工程と、探索された複数の極大位置において各極大位置の強度を相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけて比較してドリフト量に対
応する極大位置を決定する極大位置決定工程と、当該ドリフト量に対応する極大位置に基づいてドリフト量を算出するドリフト量算出工程と、を含む。そのため、本実施形態に係るドリフト量計算方法では、周期構造を含み、かつ像ブレやノイズの影響がある画像に対しても、ドリフト量が過剰に計算される可能性を低減させることができる。したがって、本実施形態に係るドリフト量計算方法では、例えば周期構造を含む画像であっても、正確にドリフト量を計算することができる。
【0116】
また、本実施形態に係るドリフト量計算方法では、周期構造を含まない画像に対しても、周期構造を含む画像と同様に、ドリフト量を計算することができる。したがって、周期性の有無に関わらず容易にドリフト量を求めることができる。
【0117】
本実施形態に係るドリフト量計算方法では、探索された2つの極大位置のうちの一方の極大位置の強度をAとし、他方の極大位置の強度をBとしたときに、極大位置決定工程では、第1極大位置と相関関数の中心Oとの間の距離が第2極大位置と相関関数の中心Oとの間の距離よりも大きい場合、B×α<A(ただしα>1)を満たす場合に第1極大位置をドリフト量に対応する極大位置の候補とし、第1極大位置と相関関数の中心Oとの間の距離が第2極大位置と相関関数の中心Oとの間の距離よりも小さい場合、B<A×αを満たす場合に第1極大位置をドリフト量に対応する極大位置の候補とする。そのため、本実施形態に係るドリフト量計算方法では、極大位置の強度を相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけて比較することができ、例えば周期構造を含む画像であっても、ドリフト量が過剰に計算される可能性を低減させることができる。さらに、周期構造を含まない画像に対しても、周期構造を含む画像と同様に、ドリフト量を計算することができる。
【0118】
本実施形態に係るドリフト量計算方法では、算出されたドリフト量に基づいて、基準画像と比較画像との間のドリフト補正量を求めるドリフト補正量算出工程を含むため、例えば、容易にドリフト補正を行うことができる。
【0119】
3. 変形例
3.1. 第1変形例
次に、本実施形態に係るドリフト量計算装置の第1変形例について説明する。本変形例に係るドリフト量計算装置の構成は、上述した
図1に示すドリフト量計算装置100と同様でありその説明を省略する。以下では、本変形例について、ドリフト量計算装置100との相違点について説明する。
【0120】
上述したドリフト量計算装置100では、極大位置探索部114が、
図4に示す相互相関関数の左上端から順に右下端まで、極大を探索する例について説明した。
【0121】
これに対して、本変形例では、極大位置探索部114は、相互相関関数の中心から探索を開始する。そして、極大位置探索部114は、中心からの距離が小さい位置から順に極大位置を探索する。極大位置決定部116は、極大位置探索部114で探索された極大位置の順に、極大位置の強度を相互相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけて比較する。
【0122】
本変形例では、上述したドリフト量計算装置100と同様の作用効果を奏することができる。
【0123】
さらに、本変形例では、極大位置決定部116には、相互相関関数の中心からの距離が小さい順に極大位置の情報が入力されるため、極大位置間の相互相関関数の中心からの距離の比較が容易であり、処理を簡略化することができる。
【0124】
なお、本変形例に係るドリフト量計算方法は、上述した
図11に示すドリフト量計算方法と同様であり、その説明を省略する。
【0125】
3.2. 第2変形例
次に、本実施形態に係るドリフト量計算装置の第2変形例について説明する。本変形例に係るドリフト量計算装置の構成は、上述した
図1に示すドリフト量計算装置100と同様でありその説明を省略する。以下では、本変形例について、ドリフト量計算装置100との相違点について説明する。
【0126】
上述したドリフト量計算装置100では、2つの極大位置のうち相互相関関数との間の距離が小さい方に係数αをかけることで、極大位置の強度に相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけていた。
【0127】
これに対して、本変形例では、極大位置決定部116は、相互相関関数に窓関数をかけて、相互相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけている。
【0128】
具体的には、極大位置決定部116は、例えば、相互相関関数の中心からの距離が大きくなるほどその値が小さくなり、最外の位置では零となるような窓関数(sin関数など)を相互相関関数にかける。すなわち、極大位置決定部116は、相互相関関数の中心付近に重みを設定した窓関数を相互相関関数にかける。これにより、相互相関関数の強度(極大値)に相互相関関数の中心からの距離に応じた重みをつけることができる。
【0129】
本変形例では、上述したドリフト量計算装置100と同様の作用効果を奏することができる。
【0130】
次に、第2変形例に係るドリフト量計算装置を用いたドリフト量の計算方法について説明する。
図12は、第2変形例に係るドリフト量計算方法の一例を示すフローチャートである。以下、
図12に示すフローチャートにおいて、
図11に示すフローチャートのステップと同様の処理を行うステップについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0131】
例えば、ユーザーが操作部120を介してドリフト量計算処理を要求すると、処理部110は、操作部120からの操作信号を受け付けて、処理を開始する。
【0132】
まず、相関関数演算部112は、基準画像および比較画像をそれぞれフーリエ変換する(ステップS100)。
【0133】
次に、相関関数演算部112は、フーリエ変換された基準画像とフーリエ変換された比較画像から、相互相関関数を求める(ステップS102)。
【0134】
次に、極大位置決定部116は、相関関数演算部112で求められた相互相関関数に窓関数をかけて、相互相関関数の中心からの距離に応じた重みをつける(ステップS200)。
【0135】
次に、極大位置探索部114は、窓関数がかけられた相互相関関数から極大をとる極大位置の探索を開始する(ステップS104)。極大位置決定部116は、探索を開始する始点の位置をドリフト量に対応する極大位置の候補として、その位置および強度(極大値)Bを記憶部124に記録する。
【0136】
極大位置探索部114は、窓関数がかけられた相互相関関数の探索の始点から探索を開
始し、各座標が極大をとる位置(極大位置)か否かの判定を行う(ステップS108)。極大位置探索部114は、極大位置ではないと判定した場合(ステップS108でNOの場合)、次の座標に移動し(ステップS110)、当該座標が極大位置か否かの判定を行う(ステップS108)。
【0137】
極大位置探索部114は、その座標が極大位置であると判定した場合(ステップS108でYesの場合)、極大位置決定部116は、探索された極大位置の強度(極大値)Aと、ドリフト量に対応する極大位置と設定された極大位置の強度(極大値)Bとを比較する(ステップS202)。
【0138】
極大値Aが極大値Bよりも大きい場合(ステップS204でYesの場合)、極大位置決定部116は、探索された極大位置をドリフト量に対応する極大位置(極大位置の候補)とする(ステップS122)。そして、極大位置決定部116は、記憶部124に記憶されているドリフト量に対応する極大位置の候補の情報を更新する。
【0139】
極大位置決定部116が探索された極大位置をドリフト量に対応する極大位置としたステップS122の処理の後、または極大値Aが極大値Bよりも大きくない場合(ステップS204でNoの場合)、極大位置探索部114は、その位置が終点か否か、すなわち、相互相関関数のすべての位置を探索したか否かの判定を行う(ステップS124)。
【0140】
その位置が終点でないと判定された場合(ステップS124でNoの場合)、極大位置探索部114は、次の座標に移動し(ステップS110)、当該座標が極大位置か否かの判定を行う(ステップS108)。
【0141】
極大位置探索部114および極大位置決定部116は、上述したステップS108、S202、S204、S122、S124、S110の処理を繰り返し、極大位置探索部114が探索した位置が終点と判定した場合(ステップS124でYesの場合)、極大位置決定部116は、最終的に記憶部124に残ったドリフト量に対応する極大位置の候補を、ドリフト量に対応する極大位置と決定する。
【0142】
そして、ドリフト量算出部118は、極大位置決定部116で決定されたドリフト量に対応する極大位置に基づいて、基準画像と比較画像との間のドリフト量を算出する(ステップS126)。
【0143】
次に、ドリフト補正量算出部119は、ドリフト量算出部118で算出されたドリフト量に基づいて、第1画像と前記第2画像との間のドリフトを補正するドリフト補正量を求める(ステップS128)。そして、処理部110は、例えば、ドリフト補正量の情報を走査部13に出力し、処理を終了する。
【0144】
本変形例に係るドリフト量計算方法では、上述した本実施形態に係るドリフト量計算方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0145】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0146】
例えば、上述した実施形態および各変形例では、荷電粒子線装置が走査透過電子顕微鏡(STEM)である例について説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、電子やイオン等の荷電粒子線を試料に照射して画像を得る装置であれば特に限定されない。すなわち、本発明に係る荷電粒子線装置は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、集束イオンビーム装置(FIB)などであってもよい。本発明に係るドリフ
ト量計算装置は、このような荷電粒子線装置に組み込まれて、当該荷電粒子線装置で得られる画像間のドリフト量を計算することができる。
【0147】
また、例えば、上述した実施形態および各変形例では、ドリフト量計算装置100が荷電粒子線装置1000に含まれている例について説明したが、本発明に係るドリフト量計算装置は、荷電粒子線装置に含まれていなくてもよい。例えば、本発明に係るドリフト量計算装置は、例えば、情報記憶媒体126を介して、ドリフト量を計算する対象となる基準画像および比較画像を取得して、ドリフト量を計算する処理を行ってもよい。
【0148】
また、例えば、本発明に係る荷電粒子線装置は、本発明に係るドリフト量計算方法によってドリフト量を計算するモードと、本発明に係るドリフト量計算方法とは異なる従来のドリフト量計算方法によってドリフト量を計算するモードと、を有していてもよい。例えば、本発明に係る荷電粒子線装置は、ユーザーが操作部を介してモードを選択することができるユーザーインターフェースを備えていてもよい。
【0149】
なお、上述した実施形態および各変形例は、一例であってこれらに限定されるわけではない。例えば、実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0150】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。