特許第6242331号(P6242331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242331亜鉛結合部分を有するホスホイノシチド3−キナーゼインヒビター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242331
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】亜鉛結合部分を有するホスホイノシチド3−キナーゼインヒビター
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20171127BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C07D495/04 105Z
   C07D495/04CSP
   A61K31/5377
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 111
【請求項の数】9
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2014-502821(P2014-502821)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2014-509653(P2014-509653A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】US2012031361
(87)【国際公開番号】WO2012135571
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月20日
【審判番号】不服2016-11958(P2016-11958/J1)
【審判請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】61/559,489
(32)【優先日】2011年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/470,849
(32)【優先日】2011年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501188889
【氏名又は名称】キュリス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,シオン
(72)【発明者】
【氏名】チャイ,ハイシャオ
(72)【発明者】
【氏名】ライ,チェンチュン
(72)【発明者】
【氏名】チアン,チャンクン
(72)【発明者】
【氏名】バオ,ルディー
【合議体】
【審判長】 中田 とし子
【審判官】 冨永 保
【審判官】 加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/080996(WO,A1)
【文献】 特表2010−512338(JP,A)
【文献】 特表2010−512337(JP,A)
【文献】 特許第5452617(JP,B2)
【文献】 特表2012−514650(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0222343(US,A1)
【文献】 特表2007−531793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
請求項1記載の化合物および薬学的に許容され得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項3】
請求項1記載の化合物および薬学的に許容され得る担体を含む、経口投与用の医薬組成物。
【請求項4】
PI3Kに関連する疾患または障害の治療を必要とする被験体におけるPI3Kに関連する疾患または障害の治療のための、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記PI3Kに関連する疾患または障害が、細胞増殖性障害である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
細胞増殖性障害が癌である、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
細胞増殖性障害が、乳頭腫、神経膠芽腫、カポジ肉腫、メラノーマ、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、星状細胞腫、頭部癌、頚部癌、膀胱癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、膵臓癌、胃癌、肝細胞癌、白血病、リンパ腫およびホジキン病からなる群より選択される、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項8】
HDAC媒介性疾患の治療のための、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項9】
PI3KおよびHDACの両方によって媒介される疾患の治療のための、請求項2記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2011年4月1日に出願された米国仮特許出願第61/470,849号および2011年11月14日に出願された米国仮特許出願第61/559,489号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ホスファチジルイノシトールのリン酸化誘導体であるホスホイノシチド(PI)は、真核生物細胞に必須であり、核プロセス、細胞骨格動力学、シグナル伝達および膜輸送を調節する。PI代謝に関与する酵素の中で、PI3-キナーゼ(PI3K)は、その発癌性の性質および薬物標的としての潜在性のための注目を特に集めている。PI3-キナーゼは、ホスファチジルイノシトールまたはPIをイノシトール環の3位でリン酸化する(Lindmo et. al. Journal of Cell Science 119, 605-614, 2006)。PI3K活性により生成された3リン酸化リン脂質は、プロテインキナーゼB(PKB)のプレックストリン相同(pleckstrin homology)(PH)ドメインに結合し、PKBの細胞膜への転流、続いてPKBのリン酸化を引き起こす。リン酸化PKBは、FKHR、Badおよびカスパーゼなどのアポトーシス誘導タンパク質を阻害し、癌の進行に重要な役割を果たしていると考えられている。PI3Kは、クラスI〜IIIに分類され、クラスIはさらに、クラスIaとIbに下位分類される。これらのアイソフォームの中で、クラスIa酵素は、増殖因子-チロシンキナーゼ経路活性化に応答する細胞増殖において最も重要な役割を果たすと考えられる(Hayakawa et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry 14 6847-6858, 2006)。癌における3つの頻度の高い変異は、細胞中で発現した場合にPI3Kαを活性化し、これらの変異は、癌細胞中に共通して見られるPKB、S6Kおよび4E bp1などの分子による癌性トランスフォーメーションおよび下流シグナル伝達の慢性的な活性化を誘導する(Stephens et al., Current Opinion in Pharmacology, 5(4) 357-365, 2005)。このように、PI3キナーゼは、増殖性疾患の治療のための魅力的な標的である。
【0003】
ウォルトマンニンおよびLY294002などのいくつかの公知のPI3-キナーゼインヒビターがある。ウォルトマンニンは、低いナノモルIC50値を有する強力なPI3Kインヒビターであるが、インビボ抗腫瘍活性は低い(Hayakawa et al., Bioorg. Med. Chem. 14(20)、6847-6858(2006))。最近、一群のモルホリン置換キナゾリン、ピリドピリミジンおよびチエノピリミジン化合物がPI3キナーゼp110αの阻害に有効であることが報告されている(Hayakawa、6847-6858)。モルホリン置換チエノピリミジン化合物(GDC-0941)の経口投薬では、神経膠芽腫異種移植片において、インビボで腫瘍抑制が示された(Folkes et. al.,Journal of Medicinal Chemistry、51、5522-5532、2008)。以下の刊行物:WO 2008/073785;WO 2008/070740;WO 2007/127183;米国特許出願公開公報第20080242665号には、一連のチエノピリミジン、ピリドピリミジンおよびキナゾリン系PI3キナーゼインヒビターが開示されている。
【化1】
【0004】
ヒストンのアセチル化は可逆的な修飾であり、脱アセチル化は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)と称される一群の酵素によって触媒される。HDACは、ヒトでは18個の遺伝子で表され、4つの異なるクラスに分けられる(J Mol Biol、2004、338:1、17-31)。哺乳動物では、クラスI HDAC(HDAC1〜3、およびHDAC8)は、酵母RPD3 HDACと関連し、クラス2(HDAC4〜7、HDAC9およびHDAC10)は、酵母HDA1と関連し、クラス4(HDAC11)、ならびに、クラス3(酵母Sir2に関連しているサーチュインを包含する異なるクラス)がある。
【0005】
Csordas、Biochem. J、1990、286:23-38には、ヒストンは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT1)によって触媒される反応であるN末端リジン残基のε-アミノ基の翻訳後アセチル化に供されることが教示されている。アセチル化により、リジン側鎖の正電荷が中和され、クロマチン構造に影響を及ぼすと考えられている。実際、クロマチン鋳型への転写因子の接近は、ヒストンの過剰アセチル化によって促進され、アセチル化が不充分なヒストンH4の富化が、ゲノムの転写サイレント領域に見られる(Taunton et al., Science、1996、272:408-411)。腫瘍サプレッサー遺伝子の場合、ヒストン修飾による転写サイレンシングにより、癌性トランスフォーメーションおよび癌がもたらされ得る。
【0006】
HDACインヒビターのいくつかのクラスは、現在、臨床研究者によって現在評価中である。例としてはヒドロキサム酸誘導体が挙げられ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、PXD101およびLAQ824が、現在、臨床開発中である。HDACインヒビターのベンズアミドクラスである、MS-275、MGCDO103およびCI-994は、臨床試験までに達した。Mourne et al.(Abstract #4725、AACR 2005)により、ベンズアミドのチオフェニル修飾が、HDAC1に対するHDAC阻害活性を有意に増加することが実証されている。
【0007】
特定の癌は、かかる組合せアプローチ(combinatorial approach)で有効に治療されたが、細胞毒性薬物のカクテルを用いた治療養生法は、しばしば、用量制限毒性および薬物-薬物相互作用によって制限される。分子標的化薬物のごく最近の進歩により、癌の併用治療に対する新たなアプローチが提供されており、複数の標的化薬剤を同時に使用することが可能になり、または用量制限毒性に達することなく、成果を改善するために、これらの新たな治療法を標準的な化学療法剤または放射線と併用している。しかしながら、かかる組合せを使用できる能力は、現在、適合性のある薬理学的性質および薬力学的性質を示す薬物に限定されている。また、併用療法の安全性および有効性を示すための規制要件により、対応する単独薬剤の治験よりもコストがかかり、長期となり得る。また、いったん承認されると、併用ストラテジーは、患者に対するコストの増大、および必要とされる複雑な投与模範のために患者のコンプライアンスの減少を伴い得る。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、式I:
【化2】
(式中、Rは水素またはアシル基である)の化合物および薬学的に許容され得るその塩に関する。アシル基は、好ましくはR1C(O)-であり、ここでR1は、置換もしくは非置換C1-C24アルキル、好ましくはC1-C10アルキル、より好ましくはC1-C6アルキル;置換もしくは非置換C2-C24アルケニル、好ましくはC2-C10アルケニル、より好ましくはC2-C6アルケニル;置換もしくは非置換C2-C24アルキニル、好ましくはC2-C10アルキニル、より好ましくはC2-C6アルキニル;置換もしくは非置換アリール、好ましくは置換もしくは非置換フェニル;または置換もしくは非置換ヘテロアリールである。
【0009】
本発明はまた、式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る賦形剤または担体を組み合わせて含む医薬組成物に関する。
【0010】
式Iの化合物、特に化合物1は、癌ならびにPI3キナーゼ活性および/またはHDAC活性に関連する他の疾患および障害の治療のためなどの治療剤としての使用について、有利な特性を有する。例えば、化合物1は、分子標的PI3KおよびHDACに対する強力な阻害活性、ならびにインビトロで種々の癌細胞株に対して強力な抗増殖活性を有する。化合物1は、動物モデルにおいて観察される場合、有意な経口バイオアベイラビリティーを有する。異種移植片腫瘍保有マウスにおける経口投与または静脈内投与のいずれかの際に、該化合物は、腫瘍組織による有意な取り込みおよび腫瘍組織における薬物動力学的な活性を示す。また、化合物1は、マウスの異種移植片腫瘍モデルにおいて、経口投与または静脈内投与後に、実質的な抗腫瘍活性を示す。該化合物はまた、例えばエームズ試験を使用した遺伝毒性の試験により示されるように、好ましい安全性プロフィールを有する。
【0011】
本発明はさらに、癌などのPI3Kが関連する疾患および障害の治療における本発明の化合物の使用に関する。これらの化合物はさらに、その亜鉛イオンへの結合能力のためにHDACインヒビターとして作用し得る。該化合物は、複数の治療標的に活性であり、種々の疾患の治療に有効である。さらに、いくつかの場合において、PI3キナーゼ阻害活性およびHDAC阻害活性を個々に有する別々の分子の組み合わせの活性と比較した場合に、これらの化合物は高い活性を有することが見出された。言い換えると、単一分子中のPI3キナーゼ阻害活性およびHDAC阻害活性の組み合わせは、PI3キナーゼインヒビターとHDACインヒビターとを別々に比較すると、相乗的な効果を提供し得る。
【0012】
さらに、単一薬剤のPI3K経路インヒビターの効力は、本来の/後天性の遺伝的改変の存在ならびに複数の前生存(pro-survival)経路および成長経路の活性化により制限される(Engelman (2009) Nature Reviews Cancer, 9: 550-562)。単一薬剤のPI3K経路インヒビターによるPI3Kの阻害は、実際に、ネガティブフィードバックループの開放によりRAF-MEK-ERK経路のシグナル伝達を上方制御し得る。本発明の化合物は、その一体化されたPI3K/HDAC阻害活性のために、単一標的PI3Kインヒビターによる癌の治療における制限を克服する可能性を提供する。本発明の化合物は、インビボおよびインビトロの実験において、PI3K-AKT-mTOR経路の持続的な阻害、RAF-MEK-ERK経路の阻害および受容体チロシンキナーゼ(RTK)タンパク質レベルの下方制御により、癌ネットワークを妨害する。また、本発明の化合物は、インビトロにおいて、腫瘍細胞株中の腫瘍抑制因子p53およびp21の上方制御により、細胞周期の停止およびアポトーシスを誘導する。したがって、本発明の化合物は、本来のおよび後天性の薬物耐性を克服する可能性を有し、臨床適用において、単一薬剤PI3K経路インヒビターによる単一治療よりも効果的であり得る。
【0013】
本発明の別の局面は、PI3キナーゼを式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩の有効阻害量と接触させることによりPI3キナーゼ活性を阻害する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、H2122異種移植片腫瘍保有ヌードマウスへの経口投与後の、血漿および腫瘍組織中の時間に対する化合物1の濃度のグラフである。
図2-1】図2Aは、Daudi異種移植片腫瘍保有Scidマウスにおける、25、50および100mg/kgでの経口投与後の、時間に対する化合物1の血漿濃度のグラフである。図2Bは、Daudi異種移植片腫瘍保有Scidマウスにおける、25、50および100mg/kgでの経口投与後の、時間に対する化合物1の腫瘍濃度のグラフである。
図2-2】図2Cは、Daudi異種移植片腫瘍保有Scidマウスの血漿および腫瘍における、100mg/kgでの経口投与後の、時間に対する化合物1の濃度のグラフである。
図3図3は、対照および化合物1処理(25、50および100mg/Kg)Daudi腫瘍異種移植片を保有するScidマウスからの腫瘍組織抽出物のウェスタンブロットを示す。
図4図4は、経口投与または静脈内投与後のビーグル犬における、時間に対する化合物1の血漿濃度のグラフである。
図5-1】図5Aは、化合物1またはビヒクルで処理したH2122異種移植片腫瘍保有ヌードマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。図5Bは、化合物1またはビヒクルで処理したDaudi異種移植片腫瘍保有ヌードマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図5-2】図5Cは、化合物1またはビヒクルで処理したOPM2異種移植片腫瘍保有ヌードマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図6図6は、化合物1またはビヒクルでの治療後のTリンパ球およびBリンパ球の循環血液レベルを示すグラフである。
図7図7A〜7Gは、対照および化合物1処理H460(Kras、PI3K)細胞由来の抽出物のウェスタンブロットを示す。GDCはGDC-0941であり、LBHはLBH-589である。
図8図8A〜8Cは、対照および化合物1処理H1975(EGFR、PI3K)、BT474(HER2、PI3K)、H1975(EGFR、PI3K)、A375(B-Raf)およびRPMI-822(p53-)細胞由来の抽出物のウェスタンブロットを示す。
図9図9は、化合物1またはビヒクルで経口処理したDaudi異種移植片腫瘍保有Scidマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図10図10は、ビヒクル、化合物1、SAH、GDC-0941またはSAHAとGDC-0941の組み合わせで処理したDaudi異種移植片腫瘍保有Scidマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図11図11は、化合物1またはビヒクルで経口処理したSU-DHL4異種移植片腫瘍保有ヌードマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図12図12は、化合物1またはビヒクルで処理したOPM2異種移植片腫瘍保有ヌードマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図13図13は、化合物1またはビヒクルで処理したMM1S異種移植片腫瘍保有SCIDマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図14図14は、化合物1またはビヒクルで処理したMM1R異種移植片腫瘍保有SCIDマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図15図15は、Daudi、SuDHL-4、HS-Sultan、DOHH-2、OPM-2、MM1RまたはMM1S異種移植片腫瘍を保有する化合物1処理SCIDマウス由来の腫瘍抽出物のウェスタンブロットを示す。
図16図16は、化合物1、CAL-101またはビヒクルで処理したDaudi腫瘍保有SCIDマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図17図17は、化合物1、シクロホスファミド、化合物1とシクロホスファミドの組み合わせまたはビヒクルで処理したDaudi腫瘍保有SCIDマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
図18図18は、化合物1、レナリドマイド、化合物1とレナリドマイドの組み合わせまたはビヒクルで処理したMM1S腫瘍保有SCIDマウスにおける、時間に対する腫瘍増殖のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
好ましい態様において、式Iの化合物は以下:
【化3】
(以降、「化合物1」はN-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドとも称される)であるか、またはその薬学的に許容され得る塩である。
【0016】
本発明はさらに、細胞の異常な増殖、分化もしくは生存に関連する疾患もしくは状態の予防または治療のための方法を提供する。一態様において、本発明はさらに、細胞の異常な増殖、分化もしくは生存に関連する疾患を停止または減少するための医薬の製造における本発明の1つ以上の化合物の使用を提供する。好ましい態様において、該疾患は癌である。一態様において、本発明は、治療の必要な被験体に治療有効量の本発明の化合物を投与する工程を含む、治療の必要な被験体における癌の治療方法に関する。
【0017】
用語「癌」は、悪性新形成細胞の増殖により引き起こされる任意の癌、例えば腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫等のことをいう。例えば、癌としては、限定されないが、中皮腫、白血病およびリンパ腫、例えば皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞性リンパ腫、ヒトT細胞性リンパ栄養ウイルス(HTLV)と関連するリンパ腫、例えば成体T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)、B細胞リンパ腫、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、成体T細胞性白血病リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、または肝細胞癌が挙げられる。さらなる例としては、骨髄異形成症候群、小児期固体腫瘍、例えば脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、骨腫瘍、および軟組織肉腫、成体の一般的な固体腫瘍、例えば頭部および頚部癌(例えば口、咽頭、鼻咽頭および食道)、尿生殖器癌(例えば前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣)、肺癌(例えば小細胞および非小細胞)、乳癌、膵臓癌、メラノーマおよび他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、ゴーリン症候群と関連する腫瘍(例えば髄芽細胞腫、髄膜腫など)、ならびに肝臓癌が挙げられる。主題の化合物により治療され得るさらなる具体的な形態の癌としては、限定されないが、骨格筋または平滑筋の癌、胃癌、小腸の癌、直腸癌、唾液腺の癌、子宮内膜癌、副腎癌、肛門癌、直腸癌、副甲状腺癌および下垂体癌が挙げられる。
【0018】
予防、治療および研究において本明細書に記載される化合物が有用であり得るさらなる癌は、例えば結腸癌、家族性腺腫性ポリポーシス癌および遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、またはメラノーマである。さらに、癌としては、限定されないが、口唇癌、咽頭癌、下咽頭癌、舌癌、唾液腺癌、胃癌、腺癌、甲状腺癌(髄質および乳頭甲状腺癌)、腎臓癌、腎臓実質癌、頚部癌、子宮体癌、子宮内膜癌、柔毛膜癌、精巣癌、尿路癌、メラノーマ、脳腫瘍、例えば神経膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽細胞腫および末梢神経外胚葉腫瘍、胆嚢癌、気管支癌、多発性骨髄腫、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜メラノーマ、精上皮腫、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫、ならびに形質細胞腫が挙げられる。本発明の一局面において、本発明は癌の治療のための医薬の製造における本発明の1つ以上の化合物の使用を提供する。
【0019】
一態様において、本発明の化合物は、血液癌または血液学的前癌状態を治療するために使用される。血液癌としては、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫が挙げられる。例としては、リンパ性白血病、例えば前駆B急性リンパ芽球性白血病、前駆T急性リンパ性白血病、バーキット白血病および2形質白血病などの急性リンパ性白血病;ならびにB細胞前リンパ性白血病などの慢性リンパ性白血病;ならびに骨髄性(myologenous)白血病、例えば急性前骨髄性(acute promyelocytic)白血病、急性骨髄芽球性白血病および急性巨核球性白血病などの急性骨髄性白血病;ならびに慢性単球性白血病などの慢性骨髄性白血病;急性単球性白血病が挙げられる。他の白血病としては、毛様細胞白血病、T細胞前リンパ性白血病;大顆粒球リンパ性白血病;および成人T細胞白血病が挙げられる。リンパ腫としては、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、例えばB細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫およびNK細胞リンパ腫などのT細胞リンパ腫が挙げられる。血液学的前癌状態としては、骨髄異形成症候群および骨髄増殖性障害、例えば原発性骨髄線維症、真性赤血球増加症および本態性血小板血症が挙げられる。
【0020】
本発明の化合物は、可逆的なリンパ球減少症を誘導することが示されており、そのため、リンパ球系統癌細胞の循環レベルの除去または減少に有用である。かかる化合物はまた、自己免疫障害の治療または免疫応答の調節にも有用である。
【0021】
一態様において、本発明は、被験体に、有効量の本発明の化合物を投与する工程を含む、被験体における循環リンパ球数を低減するための方法を提供する。好ましい態様において、低減された循環リンパ球数は可逆的であり、すなわち循環リンパ球数は本発明の化合物を投薬を停止した後、正常レベルに戻る。一態様において、低減した循環リンパ球数は、正常範囲未満であり、被験体はリンパ球減少状態(lymphopenic)にある。好ましくは、被験体は、低減した循環リンパ球数から治療的または予防的な利益を得る。かかる被験体としては、血液癌などの血液学的疾患を患うもの、自己免疫疾患に苦しむもの、および糖尿病に苦しむ患者または臓器移植のレシピエントなどの免疫応答の調節を必要とするものが挙げられる。ヒト被験体において、循環リンパ球数、例えばBリンパ球、Tリンパ球またはその両方は、正常範囲からリンパ球減少範囲まで低下し得る。特定の疾患において、循環リンパ球数は異常に高い。かかる疾患において、循環リンパ球数は、正常範囲またはリンパ球減少状態まで低減され得る。
【0022】
一態様において、本発明は、さらなる細胞の異常な増殖、分化または生存を予防する医薬の製造における本発明の1つ以上の化合物の使用を含む。例えば、本発明の化合物は、腫瘍の大きさの増大または転移状態への到達を防ぐことに有用であり得る。主題の化合物は、癌の進行もしくは進化を停止するため、または腫瘍アポトーシスを誘導するため、または腫瘍血管形成を阻害するために投与され得る。また、本発明は、癌の再発を防ぐための主題の化合物の使用を含む。
【0023】
本発明はさらに、過形成、異形成および前癌性病変などの細胞増殖障害の治療または予防を包含する。異形成は、病理学者により生検中で認識され得る前癌性病変の最も初期の形態である。主題の化合物は、前記過形成、異形成または前癌性病変が広がり続けることまたは癌性になることを防ぐために投与され得る。前癌性病変の例は、皮膚、食道組織、乳房および子宮頚部上皮内組織に生じ得る。
【0024】
「併用療法」は、他の生物学的に活性な成分(例えば、限定されないが第2のおよび異なる抗腫瘍性剤)および非薬物療法(例えば、限定されないが、手術または放射線治療)とさらに組み合わせた、主題の化合物の投与を含む。例えば、本発明の化合物は、他の薬学的に活性な化合物、好ましくは本発明の化合物の効果を増強し得る化合物と組み合わせて使用され得る。本発明の化合物は、他の薬物療法と同時に(単一調製物または別々の調製物として)または順次投与され得る。一般的に、併用療法は、2つ以上の薬物の投与を治療の1サイクルまたは1過程中のに行うことを構想する。
【0025】
本発明の一局面において、主題の化合物は、種々の疾患状態に関連するプロテインキナーゼを調節する1つ以上の別の薬剤と組み合わせて投与され得る。かかるキナーゼの例としては、限定されないが、セリン/トレオニン特異的キナーゼ、レセプターチロシン特異的キナーゼおよび非レセプターチロシン特異的キナーゼが挙げられ得る。セリン/トレオニンキナーゼとしては、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、減数分裂特異的キナーゼ(MEK)、RAFおよびオーロラキナーゼが挙げられる。レセプターキナーゼファミリーの例としては、上皮増殖因子レセプター(EGFR)(例えば、HER2/neu、HER3、HER4、ErbB、ErbB2、ErbB3、ErbB4、Xmrk、DER、Let23);線維芽細胞成長因子(FGF)レセプター(例えば、FGF-R1、GFF-R2/BEK/CEK3、FGF-R3/CEK2、FGF-R4/TKF、KGF-R);肝細胞成長/散乱因子レセプター(HGFR)(例えば、MET、RON、SEA、SEX);インスリンレセプター(例えば、IGFI-R);Eph(例えば、CEK5、CEK8、EBK、ECK、EEK、EHK-1、EHK-2、ELK、EPH、ERK、HEK、MDK2、MDK5、SEK);Axl(例えば、Mer/Nyk、Rse);RET;および血小板由来成長因子レセプター(PDGFR)(例えば、PDGFα-R、PDGβ-R、CSF1-R/FMS、SCF-R/C-KIT、VEGF-R/FLT、NEK/FLK1、FLT3/FLK2/STK-1)が挙げられる。非レセプターチロシンキナーゼファミリーとしては、限定されないが、BCR-ABL(例えば、p43abl、ARG);BTK(例えば、ITK/EMT、TEC);CSK、FAK、FPS、JAK、SRC、BMX、FER、CDKおよびSYKが挙げられる。
【0026】
本発明の別の局面において、主題の化合物は、非キナーゼ性の生物学的標的または生物学的プロセスを調節する1つ以上の別の薬剤と組み合わせて投与され得る。かかる標的としては、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)、熱ショックタンパク質(例えば、HSP90)、ヘッジホッグ経路関連タンパク質(例えば、ソニックヘッジホッグ、patched、smoothened)およびプロテオソームが挙げられる。
【0027】
好ましい態様において、主題の化合物は、ゾリンザ、タルセバ、イレッサ、タイカーブ、グレベック、スーテント、スプリセル、ネクサバール、ソラフェニブ(Sorafinib)、CNF2024、RG108、BMS387032、アフィニタック、アバスチン、ハーセプチン、アービタックス、AG24322、PD325901、ZD6474、PD184322、オバトダックス(Obatodax)、ABT737、GDC-0449、IPI-926、BMS833923、LDE225、PF-04449913およびAEE788などの、1つ以上の生物標的を阻害する抗腫瘍性剤(例えば、小分子、モノクローナル抗体、アンチセンスRNA、および融合タンパク質)と組み合わされ得る。かかる組合せは、いずれかの薬剤単独により達成される効力よりも治療効力を増強し得、耐性変異バリアントの出現を予防または遅延し得る。
【0028】
特定の好ましい態様において、本発明の化合物は、化学療法剤と組み合わせて投与される。化学療法剤は、腫瘍学の分野の広範囲な治療的処置剤を包含する。これらの薬剤は、腫瘍を縮小させる、手術後の残存癌細胞を破壊する、寛解を誘導する、寛解を維持するおよび/または癌もしくはその治療に関連する症状を緩和するために、疾患の種々の段階で投与される。かかる薬剤の例としては、限定されないが、アルキル化剤、例えば、マスタードガス誘導体(メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、イホスファミド)、エチレンイミン(チオテパ、ヘキサメチルメラニン)、アルキルスルホネート(ブスルファン)、ヒドラジンおよびトリアジン(アルトレタミン、プロカルバジン、ダカルバジンおよびテモゾロミド)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチンおよびストレプトゾシン)、イホスファミドおよび金属塩類(カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチン);植物アルカロイド類、例えば、ポドフィロトキシン(エトポシドおよびテニソピド(Tenisopide))、タキサン類(パクリタキセルおよびドセタキセル)、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン)、ならびにカンプトテカンアナログ(イリノテカンおよびトポテカン);抗腫瘍抗生物質、例えばクロモマイシン(ダクチノマイシンおよびプリカマイシン)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、バルルビシンおよびイダルビシン)、ならびに種々雑多な抗生物質、例えばマイトマイシン、アクチノマイシンおよびブレオマイシン;代謝拮抗物質、例えば葉酸アンタゴニスト(メトトレキサート、ペメトレキシド、ラルチトレキシド、アミノプテリン)、ピリミジンアンタゴニスト(5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、カペシタビン、およびゲムシタビン)、プリンアンタゴニスト(6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニン)ならびにアデノシンデアミナーゼインヒビター(クラドリビン、フルダラビン、メルカプトプリン、クロファラビン、チオグアニン、ネララビンおよびペントスタチン);トポイソメラーゼインヒビター、例えばトポイソメラーゼIインヒビター(イロノテカン、トポテカン)ならびにトポイソメラーゼIIインヒビター(アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド);モノクローナル抗体(アレムツズマブ、ゲムツズマブ オゾガミシン、リツキシマブ、トラスツズマブ、イブリツモマブ チオキセタン、セツキシマブ、パニツムマブ、トシツモマブ、ベバシズマブ);ならびに種々雑多な抗腫瘍性薬剤、例えばリボヌクレオチドレダクターゼインヒビター(ヒドロキシ尿素);副腎皮質ステロイドインヒビター(ミトタン);酵素(アスパラギナーゼおよびペガスパルガーゼ);抗微小管薬剤(エストラムスチン);ならびにレチノイド類(ベキサロテン、イソトレチノイン、トレチノイン(ATRA))およびレナリドマイドが挙げられる。
【0029】
特定の好ましい態様において、本発明の化合物は、化学保護剤と組み合わせて投与される。化学保護剤は、身体を保護するまたは化学療法の副作用を最小限にするように作用する。かかる薬剤の例としては、限定されないが、アムホスチン、メスナ、およびデキスラゾザンが挙げられる。
【0030】
本発明の一局面において、主題の化合物は放射線療法と組み合わせて投与される。放射線は一般的に、光子(x線もしくはγ線)もしくは粒子放射線を使用する機械から、内部に(癌部位の近位の放射線材料の埋め込み)または外部に送達される。併用療法がさらに放射線治療を含む場合、放射線治療は、治療剤と放射線治療の組合せによる共作用の有益な効果が達成される限り、任意の適当な時点で行われ得る。例えば、適当な場合、有益な効果は、放射線治療が治療剤の投与から一時的に除かれる場合、おそらくは数日またはさらには数週間、さらに達成される。
【0031】
本発明の化合物は、免疫治療剤と組み合わせて使用され得ることが認識される。免疫療法の1つの形態は、腫瘍から離れた部位にワクチン組成物を投与することによる、宿主起源の全身性の腫瘍特異的能動免疫応答の生成である。単離腫瘍抗原ワクチンおよび抗イディオタイプワクチンなどの様々な種類のワクチンが提唱されている。別のアプローチは、治療される被験体由来の腫瘍細胞、またはかかる細胞の派生物の使用である(Schirrmacher et al., (1995) J. Cancer Res. Clin. Oncol. 12 1:487に概説される)。米国特許第5,484,596号において、Hanna Jr.らは、腫瘍を外科的に除去する工程、コラゲナーゼにより細胞を分散させる工程、細胞に放射線照射する工程、および約107細胞の少なくとも3回連続した用量を患者にワクチン接種する工程を含む、再発または転移を予防するための一部切除可能な癌腫を治療する方法を特許請求している。
【0032】
本発明の化合物は、1つ以上の補助的治療剤と合わせて有利に使用され得ることが認識されよう。補助療法のための適切な薬剤の例としては、5HT1アゴニスト、例えばトリプタン(例えばスマトリプタンまたはナラトリプタン);アデノシンA1アゴニスト;EPリガンド;NMDAモジュレーター、例えばグリシンアンタゴニスト;ナトリウムチャンネル遮断薬(例えばラモトリジン);サブスタンスPアンタゴニスト(例えばNK1アンタゴニスト);カンナビノイド;アセトアミノフェンまたはフェナセチン;5-リポキシゲナーゼインヒビター;ロイコトリエンレセプターアンタゴニスト;DMARD(例えばメトトレキサート);ガバペンチンおよび関連化合物;三環状抗鬱剤(例えばアミトリプチリン);神経安定化抗痙攣薬;モノアミン作動性取り込みインヒビター(例えばベンラファキシン);マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビター;一酸化窒素シンターゼ(NOS)インヒビター、例えばiNOSまたはnNOSインヒビター;腫瘍壊死因子αの放出または作用のインヒビター;抗体療法、例えばモノクローナル抗体療法;抗ウイルス剤、例えば、ヌクレオシドインヒビター(例えばラミブジン)または免疫系モジュレーター(例えばインターフェロン);オピオイド鎮痛薬;局所麻酔薬;興奮剤、例えばカフェイン;H2-アンタゴニスト(例えばラニチジン);プロトンポンプインヒビター(例えばオメプラゾール);制酸薬(例えば水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム);抗膨満薬(例えばシメチコン);うっ血除去薬(例えば、フェニルエフリン、フェニルプロパノールアミン、シュードエフェドリン、オキシメタゾリン、エピネフリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、またはレボ-デスオキシエフェドリン);鎮咳薬(例えば、コデイン、ヒドロコドン、カルミフェン、カルベタペンタンまたはデキストラメトルファン);利尿薬;または鎮静性もしくは非鎮静性抗ヒスタミンが挙げられる。
【0033】
該化合物はまた、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の異常制御を伴うか、それに関するか、またはそれに関連する障害の治療においても使用され得る。HDAC活性により影響され得るかまたは少なくとも部分的にHDAC活性により媒介されることが知られる多くの障害があり、HDAC活性は、疾患の発症またはその症状がHDACインヒビターにより緩和されることが公知であるかもしくは緩和されると示されている疾患の誘発に重要な役割を果たすことが知られている。本発明の化合物を用いた治療に従順であると予期されるこの種類の障害としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:抗増殖障害(例えば癌);神経変性疾患、例えばハンチントン病、ポリグルタミン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、線条体黒質変性、進行性核上麻痺、ねじれ失調症、痙性斜頚およびジスキネジー、家族性振せん、ジル・ド・ラ・ツレット症候群、びまん性レヴィー小体病、進行性核上麻痺、ピック病、脳内出血、原発性側索硬化症、脊髄筋肉萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、肥厚性間質性多発性神経障害、色素性網膜炎、遺伝性眼萎縮症、遺伝性痙性対麻痺、進行性運動失調およびシャイ-ドレーガー症候群;代謝性疾患、例えば2型糖尿病;眼の変性疾患、例えば緑内障、老化性黄斑変性、ルーベオシス緑内障;炎症性疾患および/または免疫系障害、例えば関節リウマチ(RA)、炎症性骨関節炎、若年性慢性関節炎、移植片対宿主病、乾癬、喘息、脊椎関節症、クローン病、炎症性大腸疾患 潰瘍性大腸炎、アルコール性肝炎、糖尿病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、強直性脊椎炎、膜性糸球体症、椎間板起因痛および全身性エリテマトーデス;血管形成に関連する疾患、例えば癌、乾癬、関節リウマチ;精神障害、例えば双極性疾患、統合失調症、躁病、鬱病および認知症;心臓血管疾患、例えば虚血関連または再灌流関連の血管および心筋の組織損傷、心不全、再狭窄ならびに動脈性硬化症の予防および治療;線維性疾患、例えば肝臓線維症、嚢胞性線維症および血管線維腫;感染性疾患、例えば真菌感染、例えばカンジダ症またはカンジダアルビカンス、細菌感染、例えば単純ヘルペス、ポリオウイルス、ライノウイルスおよびコクサッキーウイルスなどのウイルス感染、原生動物感染、例えばマラリア、リーシュマニア属感染、ブルーストリパノソーマ感染、トキソプラスマ症およびコクシジウム症(coccidlosis)ならびに造血障害、例えばサラセミア、貧血および鎌状赤血球貧血が挙げられる。
【0034】
また、本発明の化合物は、PI3キナーゼの調節異常を伴う、該調節異常に関する、または該調節異常に関連する障害の治療においても使用され得る。PI3キナーゼ活性は、種々の障害に影響しているか、または関与していることが示されている。特定の場合において、PI3キナーゼ活性は、疾患発症の誘発に関与しているが、他の場合では、症状は、PI3キナーゼ活性のインヒビターによって軽減されることが知られているか、または軽減されることが示されている。本発明化合物での治療に従順なことが期待され得るこの型の障害としては、限定されないが、癌、例えば、白血病、皮膚癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、胃癌および脳の癌;再狭窄、アテローム性動脈硬化、骨障害、関節炎、糖尿病性網膜症、乾癬、良性前立腺肥大、アテローム性動脈硬化、炎症、新血管形成、免疫学的障害、膵炎ならびに腎臓疾患が挙げられる。
【0035】
一態様において、本発明の化合物を使用して、正常発生およびホメオスタシスに重要な生理学的細胞死プロセスであるアポトーシスを誘導または阻害し得る。アポトーシス経路の変更は種々のヒトの疾患の病因の一因となる。本発明の化合物は、アポトーシスのモジュレーターとして、アポトーシスの異常を伴う種々のヒトの疾患、例えば癌(特に、限定されないが、濾胞性リンパ腫、p53変異を伴った癌腫、乳房、前立腺および卵巣のホルモン依存性の腫瘍、ならびに家族性腺腫様ポリポーシスなどの前癌性病変)、ウイルス感染(例えば、限定されないが、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタインバールウイルス、シンドビスウイルスおよびアデノウイルス)、自己免疫疾患(例えば、限定されないが、全身性狼瘡、エリテマトーデス、免疫媒介性糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、および自己免疫真性糖尿病)、神経変性障害(例えば、限定されないが、アルツハイマー病、AIDS関連認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄性筋萎縮および小脳変性)、AIDS、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、虚血性傷害関連心筋梗塞、脳卒中および再灌流傷害、不整脈、アテローム動脈硬化症、毒素誘導もしくはアルコール誘導肝臓疾患、血液疾患(例えば、限定されないが、慢性貧血および再生不良性貧血)、骨格筋系の変性疾患(例えば、限定されないが、骨粗しょう症および関節炎)、アスピリン感受性鼻副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎臓疾患、ならびに癌痛の治療に有用である。
【0036】
一局面において、本発明は、免疫応答または免疫媒介性応答および疾患の治療および/または予防、例えば心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、血管、肺、膵臓、腸、足、筋肉、神経組織、十二指腸、小腸、膵臓島細胞、異種移植片等の組織の機能の全てまたは一部を置換するための合成または有機移植物片、細胞、器官または組織の移植後の拒絶の予防または治療;移植片対宿主病、自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、甲状腺炎、ハシモト甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病ブドウ膜炎、若年発症または最近発症真性糖尿病、ブドウ膜炎、グレーブス病、乾癬、アトピー性皮膚炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、脈絡炎、自己抗体媒介疾患、再生不良性貧血、エヴァンズ症候群、自己免疫溶血性貧血等の治療または予防;および外傷性または病原体誘導性免疫調節異常のような異常な免疫応答および/または活性化を生じる感染性疾患、例えばB型肝炎感染およびC型肝炎感染、HIV、スタフィロコッカスオレウス感染、ウイルス脳炎、敗血症、寄生性疾患によって生じ、損傷が炎症性応答によって誘導される疾患(例えばらい病)のさらなる治療;ならびに循環性疾患、例えば動脈性硬化症、アテローム性動脈硬化症、脈絡炎、結節性多発性動脈炎および心筋炎の予防または治療のための本発明の化合物の使用を提供する。また、本発明は、遺伝子治療処置、例えば自己細胞への外来遺伝子の導入およびコードされる産物の発現に関連する免疫応答を予防/抑制するために使用され得る。したがって、一態様において、本発明は、治療の必要な被験体に治療有効量の本発明の化合物を投与する工程を含む、治療の必要な被験体における、免疫応答疾患もしくは障害または免疫媒介性応答もしくは障害を治療する方法に関する。
【0037】
一局面において、本発明は、種々の神経変性疾患の治療における本発明の化合物の使用を提供し、その非完全なリストとしては:I. 他の顕著な神経学的兆候がない進行性認知症を特徴とする障害、例えばアルツハイマー病;アルツハイマー型の老人性認知症;およびピック病(葉萎縮症);II. 進行性認知症と他の顕著な神経学的異常との混合型症候群、例えば、A)主に成体で現れる症候群(例えばハンチントン病、認知症と運動失調および/またはパーキンソン病の症状との混合型多発性全身萎縮症、進行性核上麻痺(スティール-リチャードソン-オルゼウスキー)、びまん性レヴィー小体病、および皮質歯状核黒質(corticodentatonigral)変性症);ならびにB)主に子供または若年性成体で現れる症候群(例えばハレルフォルデン-シュパッツ病および進行性家族性ミオクローヌス癲癇);III. 姿勢および運動の異常を徐々に発現する症候群、例えば振せん麻痺(パーキンソン病)、線状体黒質変性、進行性核上麻痺、ねじれ失調症(ねじれ痙攣;変形性筋失調症)、痙性斜頚および他のジスキネジー、家族性振せん、およびジル・ド・ラ・トゥーレット症候群;IV. 進行性運動失調の症候群、例えば小脳変性(例えば小脳皮質変性およびオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA));および脊髄小脳変性(フリードライヒ失調症および関連障害);V. 中枢自律神経系機能不全の症候群(シャイ-ドレーガー症候群);VI. 知覚変化のない筋肉衰弱および低下の症候群(運動ニューロン疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症、脊髄筋肉萎縮症(例えば幼児脊髄筋肉萎縮症(ヴェルドニッヒ-ホフマン)、若年性脊髄筋肉萎縮症(ヴォールファルト-クーゲルベルク-ヴェランデル)および他の形態の家族性脊髄筋肉萎縮症)、原発性側索硬化症、および遺伝性痙性対麻痺;VII. 筋肉衰弱および減少と感覚変化との混合型症候群(進行性神経筋肉萎縮症;慢性家族性多発性神経障害)、例えば腓骨筋肉萎縮症(シャルコー-マリー-ツース)、肥厚性間質性多発性神経障害(ドゥジュリーヌ-ソッタ)、および種々雑多な形態の慢性進行性神経障害;VIII. 進行性視力低下の症候群、例えば網膜色素変性(色素性網膜炎)、および遺伝性眼萎縮症(レーバー病)が挙げられる。さらに、本発明の化合物は、クロマチンリモデリングに影響し得る。
【0038】
本発明は、上述されるような本発明の化合物の薬学的に許容され得る塩を含む医薬組成物を包含する。本発明はまた、本発明の化合物の溶媒和物および水和物、メタノレートまたはエタノレートなどのかかる溶媒和物を含む医薬組成物を包含する。用語「溶媒和物」とは、結晶格子内に溶媒分子の存在を含む、化合物の固体、好ましくは結晶性形態をいう。所定の溶媒を含む化合物の溶媒和物は、典型的に、該溶媒からの該化合物の結晶化によって調製される。溶媒和物は、種々の溶媒、例えば、水、メタノールおよびエタノールを含み得る。用語「水和物」は、溶媒が水である溶媒和物をいい、限定されないが、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物等が挙げられる。本発明はさらに、本発明の化合物の任意の固体または液体の物理的形態、例えば結晶形態および結晶性の溶媒和形態を含む医薬組成物を包含する。例えば、該化合物は、結晶形態、非晶質形態であり得、任意の粒径を有し得る。該粒子は微細化された、または凝集された粒状顆粒、粉末、油、油状懸濁物または固体もしくは液体物理形態の任意のその他の形態であり得る。
【0039】
本発明の化合物およびその誘導体、断片、アナログ、ホモログ、薬学的に許容され得る塩または溶媒和物は、薬学的に許容され得る担体または賦形剤と一緒に投与するのに適した医薬組成物に混ぜ合わされ得る。かかる組成物は、典型的に、治療有効量の上述の化合物のいずれか、および薬学的に許容され得る担体を含む。好ましくは、癌を治療する場合、有効量は、適当な新形成細胞の最終分化を選択的に誘導するのに有効であり、患者において毒性を生じる量よりも少ない量である。
【0040】
本発明の化合物は、任意の適切な手段、例えば、限定されることなく、非経口、静脈内、筋内、皮下、埋め込み、経口、舌下、口内、鼻腔、肺、経皮、局所、膣、直腸、および経粘膜投与等により投与され得る。また、局所投与は、経皮パッチまたはイオン導入デバイスなどの経皮投与の使用を伴い得る。医薬製剤としては、選択される投与形態に適切な、活性成分として本発明の化合物を含む固体、半固体または液体製剤(錠剤、ペレット、トローチ、カプセル、坐剤、クリーム、軟膏、エーロゾル、粉末、液体、エマルジョン、懸濁液、シロップ、注射等)が挙げられる。一態様において、医薬組成物は、経口投与され、したがって、経口投与に適した形態、すなわち固体または液体製剤として調製される。適切な固体経口製剤としては、錠剤、カプセル、丸薬、顆粒、ペレット、サシェおよび発泡剤、粉末等が挙げられる。適切な液体経口製剤としては、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、油等が挙げられる。本発明の一態様において、組成物はカプセル中に調製される。この態様によれば、本発明の組成物は、活性化合物および不活性担体または希釈剤に加えて、硬いゼラチンカプセルを含む。
【0041】
担体または希釈剤として一般的に使用される、例えばガム、デンプン、糖、セルロース材料、アクリレート、またはそれらの混合物などの任意の不活性賦形剤が本発明の製剤に使用され得る。好ましい希釈剤は微細結晶セルロースである。該組成物はさらに、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)および滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含み得、さらに、結合剤、バッファ、プロテアーゼインヒビター、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、乳化剤、安定化剤、増粘剤、甘味剤、膜形成剤、またはそれらの任意の組合せから選択される1つ以上の添加剤を含み得る。さらに、本発明の組成物は、徐放製剤または即時放出製剤の形態であり得る。
【0042】
液体製剤に関して、薬学的に許容され得る担体は、水性もしくは非水性溶液、懸濁液、エマルジョンまたは油であり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば生理食塩水および緩衝化培地が挙げられる。油の例は、石油、動物、植物、または合成起源の油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油および魚肝油である。また、溶液または懸濁液は以下の成分:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などのバッファ、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性の調整剤を含み得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整され得る。
【0043】
また、組成物はさらに、結合剤(例えば、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアールガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアールガム、デンプングリコール酸ナトリウム、プリモゲル(Primogel))、種々のpHおよびイオン強度のバッファ(例えばtris-HCI.、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸着を防ぐアルブミンまたはゼラチンなどの添加剤、界面活性剤(例えばTween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼインヒビター、界面活性剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、浸透促進剤、可溶化剤(例えばグリセロール、ポリエチレングリセロール、ポリエチレングリコール)、流動化剤(例えばコロイド二酸化ケイ素)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定化剤(例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えばカルボマー、コロイド二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアールガム)、甘味剤(例えばスクロース、アスパルテーム、クエン酸)、調味剤(例えばペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバー)、保存剤(例えばチメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、滑剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例えばコロイド二酸化ケイ素)、可塑剤(例えばフタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えばカルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)、コーティングおよび膜形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)および/またはアジュバントを含み得る。
【0044】
一態様において、活性化合物は、体内からの迅速な排除に対して化合物を保護する担体と共に、例えばインプラントおよびマイクロカプセル送達システム用の徐放製剤を調製する。エチレンビニル酢酸、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性のポリマーが使用され得る。かかる製剤の調製方法は、当業者に明らかである。また、材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Incから市販され得る。リポソーム懸濁液(例えば、ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞に標的化されるリポソーム)も、薬学的に許容され得る担体として使用し得る。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されるような、当業者に公知の方法にしたがって調製され得る。
【0045】
投与の簡易化および用量の均一化のために、経口組成物を用量単位形態で調製することが特に有利である。本明細書で使用する場合、投薬単位形態は、治療される被験体に対して、単一の用量として適した物理的に別々の単位のことをいい、それぞれの単位が、必要とされる医薬担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の用量単位形態についての詳細は、活性化合物および達成される特定の治療効果の特有の性質、ならびに個体の治療のためのかかる活性化合物の調製の技術分野に固有の制限により規定されるか、それらに直接依存する。
【0046】
経口投与を意図する本発明の製剤は、1つ以上の透過促進剤、例えば長鎖脂肪酸またはその塩、例えばデカン酸およびデカン酸ナトリウムを含み得る。
【0047】
1つの好ましい態様において、該化合物は、静脈内注射のための水溶液中で調製され得る。一態様において、可溶化剤が適切に使用され得る。特に好ましい可溶化剤としては、シクロデキストリンおよび修飾シクロデキストリン、例えばスルホン酸置換β-シクロデキストリン誘導体またはその塩、例えばスルホブチル誘導体化-β-シクロデキストリン、例えばCyDex, Inc.により商標名CAPTISOL(登録商標)で販売されるスルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリンが挙げられる。
【0048】
該医薬組成物は、投与のための指示書と共に、容器、パック、またはディスペンサー中に含まれ得る。
【0049】
毎日の投与は数日から数年の期間、継続して反復され得る。経口治療は、1週間から患者の一生の間継続され得る。好ましくは、投与は、さらなる投与が必要かどうか、患者が評価されて決定され得るときから5日間連続で行われ得る。投与は連続または断続であり得、例えば数日間連続の治療の後に休息期間を続ける。本発明の化合物は、治療の1日目に静脈内投与され得、2日目以降は経口投与され得る。
【0050】
例えば、混合、顆粒化または錠剤形成プロセスによる活性成分を含む医薬組成物の調製は、当該技術分野で周知である。活性治療成分はしばしば、薬学的に許容され得、活性成分と適合性のある賦形剤と混合される。経口投与のために、活性剤は、この目的に慣例の添加剤、例えばビヒクル、安定化剤または不活性希釈剤と混合され、慣例の方法により、投与に適切な形態、例えば詳細に上述される錠剤、被覆錠剤、硬化もしくは軟化ゼラチンカプセル、水性、アルコール性、または油性溶液等に転換される。
【0051】
患者に投与される化合物の量は、患者において毒性を生じる量よりも少ない。特定の態様において、患者に投与される化合物の量は、患者の血漿中で化合物の濃縮を引き起こし、化合物の毒性レベルと同等またはそれを超える量よりも少ない。好ましくは、患者の血漿中の化合物の濃度は、約10nMで維持される。一態様において、患者の血漿中の化合物の濃度は、約25nMで維持される。一態様において、患者の血漿中の化合物の濃度は、約50nMで維持される。一態様において、患者の血漿中の化合物の濃度は、約100nMで維持される。一態様において、患者の血漿中の化合物の濃度は、約500nMで維持される。一態様において、患者の血漿中の化合物の濃度は、約1000nMで維持される。一態様において、患者の血漿中の化合物の濃度は、約2500nMで維持される。一態様において、患者の血漿中の化合物の濃度は、約5000nMで維持される。本発明の実施において患者に投与されるべき化合物の最適量は、使用される特定の化合物および治療される癌の種類に依存する。
【0052】
定義
本発明を説明するために使用される種々の用語の定義が以下に列挙される。これらの定義は、他に具体的に限定されない限り、個々に、または大きな群の一部のいずれかとして本明細書および特許請求の範囲を通して使用される際の用語に適用される。
【0053】
用語「アシル」とは、水素、アルキル、部分飽和または完全飽和シクロアルキル、部分飽和または完全飽和複素環、アリールおよびヘテロアリール置換カルボニル基のことをいう。例えば、アシルとしては、(C1〜C6)アルカノイル(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、カプロイル、t-ブチルアセチル等)、(C3〜C6)シクロアルキルカルボニル(例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル等)、複素環式カルボニル(例えば、ピロリジニルカルボニル、ピロリド-2-オン-5-カルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピペラジニルカルボニル、テトラヒドロフラニルカルボニル等)、アロイル(例えば、ベンゾイル)およびヘテロアロイル(例えば、チオフェニル-2-カルボニル、チオフェニル-3-カルボニル、フラニル-2-カルボニル、フラニル-3-カルボニル、1H-ピロイル-2-カルボニル、1H-ピロイル-3-カルボニル、ベンゾ[b]チオフェニル-2-カルボニル等)などの基が挙げられる。また、アシル基のアルキル、シクロアルキル、複素環、アリールおよびヘテロアリール部分は、それぞれの定義に記載される基のいずれか1つであり得る。「任意に置換される」と示される場合、アシル基は、非置換であり得るか、もしくは独立して、「置換」についての定義で以下に列挙される置換基の群から選択される1つ以上の置換基(典型的には1〜3個の置換基)で任意に置換され得るか、またはアシル基のアルキル、シクロアルキル、複素環、アリールおよびヘテロアリール部分はそれぞれの好ましいおよびより好ましい置換基の一覧において上述されるように置換され得る。
【0054】
用語「アルキル」は、1〜約20個の炭素原子、好ましくは1〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の基を包含する。より好ましいアルキル基は、1〜約10個の炭素原子を有する「低級アルキル」基である。1〜約8個の炭素原子を有する低級アルキル基が最も好ましい。かかる基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル等が挙げられる。
【0055】
用語「アルケニル」は、2〜約20個の炭素原子、好ましくは2〜約12個の炭素原子の少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐の基を包含する。より好ましいアルケニル基は、2〜約10個の炭素原子、より好ましくは約2〜約8個の炭素原子を有する「低級アルケニル」基である。アルケニル基の例としては、エテニル、アリル、プロペニル、ブテニルおよび4-メチルブテニルが挙げられる。用語「アルケニル」および「低級アルケニル」は「シス」および「トランス」配置、または代替的に「E」および「Z」配置を有する基を包含する。
【0056】
用語「アルキニル」は、2〜約20個の炭素原子、好ましくは2〜約12個の炭素原子の少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分岐の基を包含する。より好ましいアルキニル基は、2〜約10個の炭素原子、より好ましくは約2〜約8個の炭素原子を有する「低級アルキニル」基である。アルキニル基の例としては、プロパルギル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチン、2-ブチニルおよび1-ペンチニルが挙げられる。
【0057】
用語「アリール」は、単独または組合せで、1、2または3個の環を含有する炭素環式芳香族系を意味し、ここで、かかる環は、吊り下げ様式で先に結合され得るか、または縮合され得る。用語「アリール」は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダンおよびビフェニルなどの芳香族基を包含する。
【0058】
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」、「複素環式」または「ヘテロシクロ」は、飽和、部分不飽和および不飽和ヘテロ原子含有環形状の基を包含し、これらは、相応じて「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロアルケニル」および「ヘテロアリール」と呼ばれることもあり得、ヘテロ原子は、窒素、硫黄および酸素から選択され得る。飽和ヘテロシクリル基の例としては、1〜4個の窒素原子を含有する飽和3〜6員単環式複素環式基(例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニルなど);1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する飽和3〜6員単環式複素環式基(例えば、モルホリニルなど);1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する飽和3〜6員単環式複素環式基(例えば、チアゾリジニルなど)が挙げられる。部分不飽和ヘテロシクリル基の例としては、ジヒドロチオフェン、ジヒドロピラン、ジヒドロフランおよびジヒドロチアゾールが挙げられる。ヘテロシクリル基としては、テトラゾリウムおよびピリジニウム基などの5価窒素が挙げられ得る。用語「複素環」はまた、ヘテロシクリル基がアリールまたはシクロアルキル基と縮合された基を包含する。かかる縮合二環式基の例としては、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンなどが挙げられる。
【0059】
用語「ヘテロアリール」は、不飽和ヘテロシクリル基を包含する。ヘテロアリール基の例としては、1〜4個の窒素原子を含有する不飽和3〜6員、好ましくは5または6員単環式複素環式基、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル(例えば、4H-1,2,4-トリアゾリル、1H-1,2,3-トリアゾリル、2H-1,2,3-トリアゾリルなど)テトラゾリル(例えば、1H-テトラゾリル、2H-テトラゾリルなど)など;1〜5個の窒素原子を含有する不飽和縮合ヘテロシクリル基、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル(例えば、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニルなど)など;酸素原子を含有する不飽和3〜6員、好ましくは5または6員単環式複素環式基、例えば、ピラニル、フリルなど;硫黄原子を含有する不飽和3〜6員単環式複素環式基、例えば、チエニルなど;1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和3〜6員、好ましくは5または6員単環式複素環式基、例えば、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリルなど)など;1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合ヘテロシクリル基(例えば、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリルなど);1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和3〜6員、好ましくは5または6員単環式複素環式基、例えば、チアゾリル、チアジアゾリル(例えば、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリルなど)など;1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合ヘテロシクリル基(例えば、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリルなど)などが挙げられる。
【0060】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、ヘテロシクロ置換アルキル基を包含する。より好ましいヘテロシクロアルキル基は、ヘテロシクロ基内に1〜6個の炭素原子を有する「低級ヘテロシクロアルキル」基である。
【0061】
用語「置換」は、所定の構造内の1つ以上の水素基の、特定の置換基の基、例えば、限定されないが、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアルキル、アリールスルホニルアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロアルキル、アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアミノアルキル、アリールアミノアルキル、アミノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノカルボニルアルキル、アシル、アラルコキシカルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルホニル、ホスホン酸、アリール、ヘテロアリール、複素環および脂肪族による置き換えをいう。置換基がさらに置換され得ることが理解される。
【0062】
簡単にするため、全体を通して定義され言及される化学部分は、当業者に明白な、適切な構造状況下において、一価の化学部分(例えば、アルキル、アリールなど)または多価部分であり得る。例えば、「アルキル」部分は、一価の基(例えば、CH3-CH2-)を指し得、または他の場合では、二価の連結部分が「アルキル」であり得、この場合、当業者は、アルキルが、用語「アルキレン」と同等である二価の基(例えば、-CH2-CH2-)であると理解する。同様に、2価の部分が必要とされ、「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、「アリールオキシ」、「アルキルチオ」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「複素環」、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「脂肪族」、または「シクロアルキル」であると記載されている状況において、当業者は、用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、「アリールオキシ」、「アルキルチオ」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「複素環」、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「脂肪族」、または「シクロアルキル」が、対応する2価の部分をいうと理解する。
【0063】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、本明細書で使用される場合、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子をいう。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「異常増殖」は、異常な細胞増殖をいう。
【0065】
句「補助療法」は、本発明の併用療法に関連する副作用を低減または回避する薬剤、例えば限定されないが、例えば、抗癌薬の毒性効果を低減する薬剤、例えば、骨吸収インヒビター、心臓保護剤;化学療法、放射線療法もしくは手術に関連する吐気および嘔吐の発生を予防もしくは低減する薬剤;または骨髄抑制性抗癌薬の投与に関連する感染の発生を低減する薬剤での被験体の治療を包含する。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「新脈管形成」は、血管の形成のことをいう。具体的には、新脈管形成は、内皮細胞が病巣的に(focally)自身の基底膜を分解して侵入し、間隙性ストロマを介して脈管形成刺激に向かって移行し、移行の先端の近位で増殖し、血管を組織して、新たに合成された基底膜に再度接着する多段階プロセスである(Folkman et al., Adv. Cancer Res., Vol. 43, pp. 175-203 (1985)参照)。抗脈管形成剤はこのプロセスを妨害する。これらの段階のいくつかを妨害する剤の例としては、トロンボスポンジン-1、アンギオスタチン、エンドスタチン、インターフェロンα、および経路から障害物を除き、引き続き血管を新たに形成するための経路を作製する酵素の作用を阻害するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)インヒビターなどの化合物;親血管と腫瘍を橋渡しするために血管細胞が用いる分子を妨害するαvβ3インヒビターなどの化合物;新たな血管を形成する細胞の成長を防ぐ特異的COX-2インヒビターなどの剤;ならびにこれらの標的のいくつかを同時に妨害するタンパク質系化合物が挙げられる。
【0067】
用語「アポトーシス」は、本明細書で使用される場合、年齢または細胞の健康状態および条件により規定する際に、正常に機能しているヒトおよび動物細胞の核によってシグナル伝達されるプログラムされた細胞死をいう。「アポトーシス誘導剤」は、プログラムされた細胞死のプロセスを誘発する。
【0068】
用語「癌」は、本明細書で使用される場合、制御されない細胞分裂、およびこれらの細胞が、侵入を介した隣接組織内への直接増殖または転移による遠位部位への移植のいずれかによって他の組織に侵入する能力を特徴とする疾患または障害の種類を表す。
【0069】
用語「化合物」および「本発明の化合物」は、本明細書で使用される場合、式Iの化合物およびその薬学的に許容され得る塩のことをいう。本発明の化合物は、結晶形態および非晶質形態などの異なる形態で得られ得る。また、該化合物は、溶媒和物、例えば水和物、または有機溶媒、好ましくは薬学的に許容され得る溶媒の溶媒和物として生じ得る。また、該化合物は、複数の結晶の形態、または多形の形態で生じ得る。本発明の化合物はさらに、式Iの化合物の薬学的に許容され得るプロドラッグおよびエステルを含む。
【0070】
用語「デバイス」は、特定の機能を行うように設計された通常機械的または電気的である任意の器具をいう。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「形成異常」は、異常な細胞増殖をいい、典型的に、病理学者が生検材料において認識可能な前癌性病変の最も初期の形態をいう。
【0072】
本明細書で使用される場合、主題の治療方法に関する用語「主題の化合物の有効量」は、所望の投与計画の一部として送達された場合、例えば細胞増殖速度および/または分化の状態および/または細胞の生存の比の、臨床的に許容され得る標準への変化をもたらす主題の化合物の量をいう。この量は、さらに、新形成障害の症状の1つ以上をある程度まで緩和し得、例えば限定されないが、1)癌細胞の数を低減;2)腫瘍サイズを縮小;3)末梢器官内への癌細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度まで遅延、好ましくは停止);4)腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度まで遅延、好ましくは停止);5)腫瘍増殖をある程度まで阻害;6)該障害に関連する症状の1つ以上をある程度まで軽減もしくは低減;および/または7)抗癌剤の投与に関連する副作用を軽減もしくは低減し得る。
【0073】
用語「過形成」は、本明細書で使用される場合、過剰な細胞分裂または増殖をいう。
【0074】
句「免疫療法剤」は、接種によって、免疫ドナー、例えば、別の人または動物の免疫性を宿主に移すために使用される薬剤をいう。該用語は、別の個体または動物によって産生された実行された(performed)抗体を含有する血清またはγグロブリン;非特異的全身刺激;補助剤;能動特異的免疫療法;および養子免疫療法の使用を包含する。養子免疫療法は、感作リンパ球、転移因子、免疫RNA、または血清中抗体もしくはγグロブリンの宿主接種を含む療法または薬剤による疾患の治療をいう。
【0075】
新形成、腫瘍増殖または腫瘍細胞増殖の文脈における用語「阻害」は、とりわけ、原発性または続発性腫瘍の出現の遅延、原発性または続発性腫瘍の発生の遅延、原発性または続発性腫瘍の発現の減少、疾患の副次効果の重症度の遅延または減少、腫瘍増殖の停止および腫瘍の後退によって評価され得る。極端には、本明細書において、完全な阻害は、予防または化学的予防をいう。
【0076】
用語「転移」は、本明細書で使用される場合、元の腫瘍部位から血管およびリンパ管を介して癌細胞が移行し、他の組織において癌を産生することをいう。また、転移は、遠位部位で増殖する続発性癌に対して使用される用語である。
【0077】
用語「新生物」は、本明細書で使用される場合、過剰な細胞分裂により生じる異常な組織塊をいう。新生物は、良性(癌性でない)、または悪性(癌性)であり得、腫瘍とも呼ばれ得る。用語「新形成」は、腫瘍形成をもたらす病理学的過程である。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「前癌性」は、悪性ではないが、治療せずに放置していると悪性となりやすい状態をいう。
【0079】
用語「増殖」は、有糸分裂している細胞をいう。
【0080】
句「PI3キナーゼに関連する疾患または障害」は、不適切なホスホイノシチド-3-キナーゼ活性またはホスホイノシチド-3-キナーゼの過剰活性を特徴とする疾患または障害をいう。不適切な活性は、(i)通常PI3キナーゼを発現しない細胞におけるPI3キナーゼ発現;(ii)好ましくない細胞増殖、分化および/または成長をもたらすPI3キナーゼ発現の増大;あるいは(iii)細胞増殖、分化および/または成長の好ましくない低減をもたらすPI3キナーゼ発現の減少のいずれかをいう。PI3キナーゼの過剰活性は、特定のPI3キナーゼをコードする遺伝子の増幅または細胞増殖、分化および/または成長障害と相関し得るあるレベルのPI3キナーゼ活性の生成(すなわち、PI3キナーゼレベルが増大するにつれて、細胞障害の症状の1つ以上の重症度が増大する)のいずれかをいう。
【0081】
句「放射線療法剤」は、新形成の治療における電磁放射線または粒状放射線の使用をいう。
【0082】
用語「再発」は、本明細書で使用される場合、寛解の期間後の癌の戻りをいう。これは、最初の癌からの細胞の不完全な除去によるものであり得、局所(最初の癌の同じ部位)、限局(最初の癌の近傍、おそらくはリンパ節または組織)、および/または転移の結果として遠位で起こり得る。
【0083】
用語「治療」は、ヒトを含む哺乳動物が、哺乳動物の状態を直接または間接的に改善する目的で医療補助に供される任意のプロセス、作用、用途、療法などをいう。
【0084】
用語「ワクチン」は、腫瘍関連抗原(Tea)を発現する細胞を攻撃することにより、患者の免疫系が腫瘍に対する免疫応答を示すように誘導する薬剤を含む。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容され得る塩」は、論理的に正しい医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などなく、ヒトおよび下等動物の組織との接触における使用に適し、妥当な利益/リスク比に見合った塩をいう。薬学的に許容され得る塩は当該技術分野で周知である。例えば、S. M. Bergeらは、J. Pharmaceutical Sciences,66:1-19 (1977)において、薬学的に許容され得る塩を詳細に記載する。該塩は、本発明の化合物の最終の単離および精製中にインサイチュで、または遊離塩基官能基と好適な有機酸もしくは無機酸とを反応させることにより別々に調製され得る。薬学的に許容され得る無毒性の酸付加塩の例としては、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸により、または酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、ラクトビオン酸もしくはマロン酸などの有機酸により形成されるか、あるいはイオン交換などの当該技術分野で使用される他の方法を使用することにより形成されるアミノ基の塩が挙げられる。他の薬学的に許容され得る塩としては、限定されないが、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容され得る塩としては、適宜、無毒性のアンモニウム、第4級アンモニウム、ならびにハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、1〜6個の炭素原子を有するアルキルスルホン酸塩、スルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成されるアミンカチオンが挙げられる。ナトリウム塩、カリウム塩およびコリン塩基塩などの特定の塩、ならびに硫酸塩およびメタンスルホン酸塩などの酸性塩は、薬学的に許容され得る水性培地内で式Iの化合物の溶解性を向上させることが知られている。一態様において、化合物1の薬学的に許容され得る塩はコリン塩である。化合物1の好ましい塩としては、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。他の好ましい塩としては、硫酸塩およびメタンスルホン酸塩が挙げられる。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容され得るエステル」は、インビボで加水分解するエステルをいい、ヒト体内で容易に分解して親化合物またはその塩を残すものが挙げられる。好適なエステル基としては、例えば、薬学的に許容され得る脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカンジオン酸に由来するものであって、各アルキル部分またはアルケニル部分が有利には6個以下の炭素原子を有するものが挙げられる。特定のエステルの例としては、限定されないが、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステルおよびエチルコハク酸エステルが挙げられる。
【0087】
用語「薬学的に許容され得るプロドラッグ」は、本明細書で使用される場合、論理的に正しい医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などなく、ヒトおよび下等動物の組織との接触における使用に適し、妥当な利益/リスク比に見合い、その意図される使用に有効な本発明の化合物のプロドラッグ、ならびに可能な場合は本発明の化合物の両性イオン形態をいう。「プロドラッグ」は、本明細書で使用される場合、代謝的手段によって(例えば、加水分解によって)インビボで本発明の化合物に変換可能な化合物を意味する。プロドラッグの種々の形態は、例えば、Bundgaard(編),Design of Prodrugs,Elsevier (1985);Widder,et al. (編),Methods in Enzymology,第4巻,Academic Press (1985);Krogsgaard-Larsen,et al.(編)."Design and Application of Prodrugs,Textbook of Drug Design and Development,第5章,113-191 (1991);Bundgaard,et al., Journal of Drug Deliver Reviews,8:1-38(1992);Bundgaard,J. of Pharmaceutical Sciences,77:285 以下参照 (1988);HiguchiおよびStella (編)Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems,American Chemical Society (1975);ならびにBernard Testa & Joachim Mayer,"Hydrolysis In Drug And Prodrug Metabolism:Chemistry,Biochemistry And Enzymology," John Wiley and Sons,Ltd. (2002)に記載のように、当該技術分野で公知である。
【0088】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」は、滅菌発熱物質無含有水などの医薬投与と適合する任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含むことが意図される。好適な担体は、参照により本明細書に援用される当該技術分野の標準的な参考教科書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。かかる担体または希釈剤の好ましい例としては、限定されないが、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームおよび固定油などの非水性ビヒクルもまた使用され得る。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合性でない場合を除き、該組成物におけるその使用が企図される。補助活性化合物もまた該組成物中に組み込まれ得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「前癌性」は、悪性ではないが、治療せずに放置していると悪性となりやすい状態をいう。
【0090】
用語「被験体」は、本明細書で使用される場合、動物をいう。好ましくは、動物は哺乳動物である。より好ましくは、哺乳動物はヒトである。被験体とは、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、モルモット、魚類、鳥類などもいう。
【0091】
本発明の化合物は、選択的な生物学的性質を増強させるために適切な官能基を付加することにより修飾され得る。かかる修飾は当該技術分野で公知であり、所定の生物系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)内への生物学的浸透を増大させるもの、経口アベイラビリティを増大させるもの、注射による投与を可能にするために溶解性を増大させるもの、代謝を変化するもの、および排出速度を変化するものが挙げられ得る。
【0092】
合成された化合物は、反応混合物から分離され得、カラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、または再結晶化などの方法によってさらに精製され得る。当業者によって認識され得るように、本明細書の式の化合物のさらなる合成方法は、当業者に明白である。さらに、種々の合成工程は、所望の化合物を得るために、代替的なシーケンスまたは順序で行なわれ得る。本明細書に記載の化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基の方法論(保護および脱保護)は当該技術分野で公知であり、例えば、R. Larock,Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989);T.W. GreeneおよびP.G.M. Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第2版, John Wiley and Sons (1991);L. FieserおよびM. Fieser,Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons (1994);ならびにL. Paquette編,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons (1995)、ならびにその後続版などに記載のものが挙げられる。
【0093】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、1種類以上の薬学的に許容され得る担体または賦形剤とともに製剤化された、治療有効量の本発明の化合物を含む。
【0094】
好ましくは、薬学的に許容され得る担体または賦形剤は、無毒性で不活性な固形、半固形または液体充填剤、希釈剤、カプセル化材料または任意の型の製剤化補助剤である。薬学的に許容され得る担体として働き得る物質のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;アルファ-(α)、ベータ-(β)およびガンマ-(γ)シクロデキストリンなどのシクロデキストリン;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤用ワックスなどの賦形剤;ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質無含有水;等張性生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の無毒性の適合性潤滑剤であり、加えて、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、矯味剤および香料剤、保存剤ならびに酸化防止剤もまた、調製者の判断に従って組成物中に存在し得る。
【0095】
本発明の医薬組成物は、経口、非経口、吸入スプレーにより、局所、直腸、鼻腔内、口内、膣または埋め込みレザバーにより、好ましくは経口投与または注射による投与によって投与され得る。本発明の医薬組成物は、任意の従来の無毒性の薬学的に許容され得る担体、補助剤またはビヒクルを含有し得る。いくつかの場合において、製剤化された化合物またはその送達形態の安定性を増強させるため、薬学的に許容され得る酸、塩基またはバッファで製剤のpHが調整され得る。本明細書で使用される場合、非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、鞘内、病変内および頭蓋内の注射または注入技術を含む。
【0096】
経口投与のための液体剤型としては、薬学的に許容され得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性化合物に加え、液体剤型は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実、ラッカセイ、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシおよびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含有し得る。不活性な希釈剤の他に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味剤および香料剤などの補助剤を含み得る。
【0097】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて公知の技術に従って調製され得る。また、滅菌注射用製剤は、無毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液またはエマルジョン、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液であり得る。許容され得るビヒクルおよび溶媒のうち、使用され得るものは、水、リンゲル液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液である。また、滅菌の固定油は、溶媒または懸濁媒体として従前より使用されている。この目的のため、任意の無刺激固定油、例えば、合成モノ-またはジグリセリドが使用され得る。また、オレイン酸などの脂肪酸が注射用剤の調製に使用される。
【0098】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、または使用前に、滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散され得る滅菌剤を滅菌固形組成物の形態で組み込むことによって滅菌され得る。
【0099】
薬物の効果を延長するため、しばしば、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性の乏しい結晶性または非晶質物質の懸濁液の使用によって達成され得る。したがって、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、これは、結晶サイズおよび結晶性形態に依存し得る。あるいは、非経口投与薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することにより達成される。注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより作製される。ポリマーに対する薬物の比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。注射用デポー製剤はまた、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を閉じ込めることにより調製される。
【0100】
直腸または膣投与用の組成物は、好ましくは、ココアバター、ポリエチレングリコールなどの適当な非刺激性賦形剤もしくは担体または常温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸もしくは膣腔で融解し、活性化合物を放出する坐剤用ワックスと本発明の化合物を混合することにより調製され得る坐剤である。
【0101】
経口投与用の固形剤型としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒が挙げられる。かかる固形剤型において、活性化合物は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な薬学的に許容され得る賦形剤もしくは担体および/または:a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤もしくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアラビアゴムなどの結合剤、c)グリセロールなどの湿潤剤、d)寒天-寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、ならびにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤、ならびにそれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤型は緩衝剤も含み得る。
【0102】
類似した型の固形組成物はまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールのような賦形剤を使用する軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用され得る。
【0103】
腸溶性コーティングおよび医薬製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよび殻を用いて錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒の固形剤型が調製され得る。これらは、任意に、不透明化剤を含有し得、また、活性成分(1種類または複数種)のみを、または優先的に、腸管の特定部分に任意に遅延様式で放出する組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0104】
本発明の化合物の局所または経皮投与用の剤型としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性成分は、滅菌条件下で薬学的に許容され得る担体および必要に応じて任意の必要とされる保存剤またはバッファと混合される。眼科用製剤、点耳剤、眼用軟膏、粉末および溶液も、本発明の範囲内にあることが企図される。
【0105】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有し得る。
【0106】
粉末およびスプレーは、本発明の化合物の他に、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含み得る。スプレーはさらに、クロロフルオロヒドロカーボンなどの通例のプロペラントを含み得る。
【0107】
経皮パッチは、体内への化合物の制御送達を提供するというさらなる利点を有する。かかる剤型は、化合物を適切な媒体に溶解または分散することにより作製することができる。また、吸収促進剤を使用して、皮膚に浸透する化合物の流入を高めることができる。速度制御膜を設けるかまたは化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させるかのいずれかにより速度を制御することができる。
【0108】
肺系送達のためには、本発明の治療組成物を、固体または液体粒状形態で調製し、直接投与(例えば呼吸器系への吸入)によって患者に投与する。本発明を実施するために調製された活性化合物の固体または液体粒状形態は吸入可能な大きさの粒子:つまり、吸入時に口および咽頭を通過し、ならびに肺の気管支および肺胞に侵入するほど充分に小さいサイズの粒子を含む。エーロゾル化治療剤、特にエーロゾル化抗生物質の送達は当該技術分野に公知である(例えば、その全てが本明細書中で参照により援用される、VanDevanterらの米国特許第5,767,068号、Smithらの米国特許第5,508,269号、およびMontgomeryによるWO 98/43650参照)。抗生物質の肺系送達の記載は、参照により本明細書中に援用される米国特許第6,014,969号にも見られる。
【0109】
本発明の化合物の「治療有効量」は、任意の医学的治療に適用可能な妥当な利益/リスク比で、治療される被験体に治療効果を付与する化合物の量を意味する。治療効果は客観的であり得る(つまり、いくつかの試験またはマーカーにより測定可能)か、または主観的であり得る(つまり、被検体が効果の兆候を示すかまたは効果を感じる)。上述の化合物の有効量は、約0.1mg/Kg〜約500mg/Kg、好ましくは約1〜約50mg/Kgの範囲であり得る。有効用量は、投与経路および他の薬剤の併用の可能性によっても変化する。しかしながら、本発明の化合物および組成物の1日当たりの全使用量は、適正な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解される。任意の特定の患者についての具体的な治療有効投与レベルは、治療される障害および障害の重症度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事;使用される具体的な化合物の投与時間、投与経路および排泄速度;治療期間;使用される具体的な化合物と併用されるかまたは同時に使用される薬物;ならびに医学分野に周知の同様の要素などの種々の要素に依存する。
【0110】
ヒトまたは他の動物に単回または分割用量で投与される本発明の化合物の1日当たりの全用量は、例えば0.01〜50mg/体重kgまたはより通常的には0.1〜25mg/体重kgの量であり得る。単回用量組成物はかかる量、または1日当たりの用量をなすかかる量の約数用量を含み得る。一般的に、本発明による治療養生法は、かかる治療が必要な患者に、単回または複数回用量で1日あたり約10mg〜約1000mgの本発明の化合物(1つまたは複数)の用量を含む。
【0111】
本明細書に記載される式の化合物は、例えば、静脈内、動脈内、皮下(subdermal)、腹腔内、筋肉内もしくは皮下(subcutaneous)の注射により;または経口、口内、鼻腔、経粘膜、局所、眼用製剤で、または吸入により、約0.1〜約500mg/体重kgの範囲の投薬量、あるいは1mg〜1000mg/投与の投薬量で、4〜120時間毎に、または特定の薬物の要件に従って投与され得る。本明細書における方法は、所望のまたは規定の効果を達成するための、有効量の化合物または化合物組成物の投与を企図する。典型的に、本発明の医薬組成物は、1日当たり約1〜約6回投与されるか、または代替的に連続点滴として投与される。かかる投与は慢性または急性治療法として使用され得る。単一剤型を作製するために医薬賦形剤または担体と合わされ得る活性成分の量は、治療される宿主および特定の投与形態に応じて変化する。典型的な製剤は、約5%〜約95%の活性化合物(w/w)を含む。あるいは、かかる製剤は約20%〜約80%の活性化合物を含み得る。
【0112】
上述のものよりも低いかまたは高い用量が必要とされ得る。任意の特定の患者についての具体的な用量および治療養生法は、使用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物組合せ、疾患の重症度および経過、状態または症状、疾患に対する患者の素質、状態または症状、ならびに治療する医師の判断などの種々の要素に依存する。
【0113】
患者の状態の改善の際に、必要に応じて本発明の化合物、組成物または組合せの維持用量を投与してもよい。その後、症状が所望のレベルまで改善された場合には、改善された状態が維持されるレベルまで、症状に応じて投与の用量もしくは頻度、またはその両方を減らしてもよい。しかしながら、患者は、疾患症状の任意の再発時には長期ベースで間欠的な治療を必要とし得る。
【実施例】
【0114】
実施例
本発明の化合物および方法は、以下の実施例に関連してより理解されるであろうが、これらは単なる例示として意図され、本発明の範囲を限定しない。開示される態様に対する種々の変更および改変は当業者に明らかであり、限定されることなく、本発明の化学構造、置換基、誘導体、製剤および/または方法に関するものなどのかかる変更および改変は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲から逸脱することなくなされ得る。
【0115】
化合物1およびそのメタンスルホン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびコリン塩の合成を以下のスキームに図示する。
【化4】
【化5】
【0116】
中間体107-1または107-2は、106をR-2-1またはR-2-2のいずれかとそれぞれ反応させることにより調製され得る。R-2-1およびR-2-2の合成のための合成スキームを以下に図示する:
【化6】
【0117】
または、代替的な方法による:
【化7】
【0118】
中間体108-1および108-2は、107-1または107-2を、R-3-1またはR-3-2のいずれかとのカップリング反応により調製され得、R-3-1およびR-3-2は、以下のスキームに従って調製され得る:
【化8】
【0119】
実施例1:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物1)の調製
工程a:(Z)-エチル-2-(エトキシメチル)-3-メトキシアクリレート(化合物202)
ナトリウム(40.9g、1.78mol)をエタノール(750mL)に部分的に注意深く添加し、溶液を濃縮し、全てのナトリウム金属が消失した後でNaOEt粉末を得た。撹拌しながら、ヘキサン(1.0L)を添加して、混合物を氷水浴で冷却した。201(130g、0.89mol)およびギ酸エチル(131g、1.78mol)の混合物を0〜5℃で滴下した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。氷水浴で冷却しながら硫酸ジメチル(224g、1.78mol)を滴下した。得られた混合物を50℃で2時間加熱した。混合物に塩化トリエチルアンモニウム(122g)および水酸化ナトリウム(20g)を添加した。次いで混合物を室温で4時間撹拌してろ過した。濾液を水で洗浄してNa2SO4で乾燥させた。これを濃縮して、無色油状物の表題の化合物を得て(140g、37%)、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0120】
工程b:エチル2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキシレート(化合物203)
エタノール(500mL)中の化合物202(140g、0.745mol)、尿素(40.0g、0.697mol)および濃塩酸(34mL)の混合物を還流で一晩加熱した。反応液の体積の約50%を蒸発させた後、得られた懸濁物を濾過して、少量のエタノールで洗浄し、乾燥させて、白色固体の化合物203を得た(47g、37%)。LCMS: 171 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.19 (t, J = 7.2 Hz , 3H), 3.92 (s, 2H), 4.08 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 7.0 (s, 1H), 7.08 (d, J = 6.0 Hz , 1H), 8.83 (d, br, J = 4.8 Hz, 1H).
【0121】
工程c:エチル2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-5-カルボキシレート(化合物204)
酢酸(500mL)中の化合物203(47g、280mmol)の溶液に、臭素(49.0g、307mmol)を添加した。混合物を還流で2時間加熱して、室温に冷却し、さらに0〜5℃で冷却して、ろ過し、黄色固体の表題の化合物204を得た(38g、54%)。LCMS: 169 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, D2O): δ 1.28 (t, J = 7.2 Hz , 3H), 4.32 (q, J = 7.2 Hz , 2H), 9.00 (br, s, 2H).
【0122】
工程d:エチル2-クロロピリミジン-5-カルボキシレート(化合物R-2-1)
化合物204(38.0g、153mmol)およびホスホリルトリクロライド(300mL)およびN,N-ジメチルアニリン(3mL)の混合物を還流で2時間加熱して、室温に冷却し、濃縮した。残渣を氷水で注意深く急冷し、炭酸ナトリウムでpHを7〜8に調整し、EtOAcで抽出した。合わせた有機物を氷水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮して、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン、10%で溶出)で精製し、白色固体の化合物R-2-1を得た(15g、52%)。LCMS: 187 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.36 (t, J = 7.5 Hz , 3H), 4.39 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 9.08 (s, 2H).
【0123】
工程e:ナトリウム(Z)-2-(ジメトキシメチル)-3-メトキシ-3-オキソプロプ-1-エン-1-オレート(化合物206)
無水1,2-ジメトキシエタン(300mL)中のNaH(27g、鉱物油中60%、0.675mol)の混合物を40〜50℃に加熱し、メチル3,3-ジメトキシプロピオネート(205)(100g、0.675mol)を滴下した。得られた混合物を0.5時間撹拌して、無水ギ酸メチル(81g、1.35mol)を40〜50℃で滴下した。得られた混合物を40〜50℃(内部温度)で2時間撹拌し、その後これを0℃に冷却した。反応混合物をゆっくり25℃に温めて、一晩撹拌した。Et2O(150mL)を添加して、30分間撹拌した。得られた懸濁液を濾過した。固体をEt2O(100mL)で洗浄し、回収して、乾燥させ、オフホワイト固体の表題の化合物206を得た(82g、61%)。LCMS (m/z): 130.8 [M+1]+. 1HNMR (400 MHz, CD3OD): δ 3.36 (s, 6H), 3.60 (s, 3H), 5.34 (s, 1H), 8.92 (s, 1H).
【0124】
工程f:2-アミノ-ピリミジン-5-カルボン酸メチルエステル(化合物207)
DMF(300mL)中の塩酸グアニジン(42.2g、0.44mol)の混合物に、化合物206(80g、0.40mol)を添加した。得られた混合物を100℃で1時間加熱した。反応混合物をろ過して、その後冷却した。ろ過ケーキを50mLのDMFで洗浄し、合わせた濾液を濃縮すると、残渣が残り、これを冷EtOHに懸濁して、冷EtOH (50mL)で洗浄し、黄色固体の化合物207を得た(38g、61.5%)。LCMS (m/z): 154.2 [M+1]+, 195.1[M+42]+. 1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 3.88 (s, 3H), 8.77 (s, 2H).
【0125】
工程g:メチル2-クロロピリミジン-5-カルボキシレート(化合物R-2-2)
化合物207(7g、0.046mol)を、濃塩酸(15.2mL)およびCH2Cl2(60mL)の混合物に添加した。冷却後、ZnCl2(18.6g、0.138mol)を15〜20℃で添加した。混合物を15〜20℃で0.5時間撹拌して、5〜10℃に冷却した。内部温度を5〜10℃に維持しながらNaNO2(9.5g、0.138mol)を分割して添加した。反応を約2時間続けた。反応混合物を氷水(50mL)に注いだ。有機層を分離して、水層をCH2Cl2(30mL*2)で抽出した。合わせた有機抽出物を濃縮して、粗生成物(4.2g)を得た。粗製の化合物をヘキサン(20mL)中に懸濁して、60℃で30分間撹拌し、ろ過した。濾液を濃縮して、オフホワイト固体の表題の化合物R-2-2を得た(3.5g、44.4%)。LCMS (m/z): 214.1[M+42]+. 1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ 4.00 (s, 3H), 9.15 (s, 2H).
【0126】
工程h:5-ブロモ-2-メトキシピリジン(化合物303)
アセトニトリル(1.0L)中の2-メトキシ-ピリジン(100g、0.92モル)、NBS(180g、1.0モル)の溶液を還流で21時間撹拌した。TLCは、反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、濃縮した。約900mlの溶媒を回収した。得られた懸濁物をろ過して、n-ヘキサン(約400mL)で洗浄した。濾液を再度濃縮して、粗生成物を得た。減圧下(30℃/約0.3mmHg)で粗生成物を蒸留し、透明油状物の表題の化合物を得た(146g、84%)。LCMS (m/z): 190.0 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 3.90 (s, 3H), 6.65 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.62 (dd, J = 8.8 Hz, 2.4Hz, 1H), 8.19 (s, 1H).
【0127】
工程i:6-メトキシピリジン-3-イルホウ素酸(R-3-1):
無水THF(180ml)中の化合物303(20g、0.11モル)の溶液に、n-BuLi(59mL、THF中2M)を-78℃で滴下して、得られた混合物を1時間撹拌した。トリイソプロピルボレート(37mL)を-78℃で添加して、反応混合物を室温に温め、一晩撹拌を続けた。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)は、反応の完了を示した。4N HCl(90ml)で、混合物をpH3〜4に調整した。沈殿物をろ過して回収し、粗製化合物R-3-1を得た(21g、128%)。粗製化合物R-3-1(21g)を水(200ml)に溶解し、濃アンモニア溶液で溶液をpH8〜9に調整し、沈殿物をろ過して回収し、白色固体の純粋な表題の化合物R-3-1を得た(11g、67%)。LCMS (m/z): 154.1 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 3.86 (s, 3H), 6.76 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.99 (dd, J = 8.4 Hz, 2.0 Hz, 1H), 8.05 (br, 2H), 8.52 (d, J = 2.0 Hz, 1H).
【0128】
工程j:2-メトキシ-5-(4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン(化合物R-3-2)
無水ジオキサン(500mL)中の化合物303(55g、0.29mol)、4,4,4',4',5,5,5',5'-オクタメチル-2,2'-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(90g、0.35mol)、酢酸カリウム(57g、0.58mol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド(2.2g、3mmol)の混合物を、N2雰囲気下、108℃で一晩加熱した。反応混合物を濃縮して、ヘキサン/酢酸エチルで溶出されるカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物R-3-2を得た(58g、84%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 1.30 (s, 12H), 3.88 (s, 3H), 6.81 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.88 (dd, J = 8.0 Hz, 2.0Hz, 1H), 8.41 (d, J = 2.0Hz, 1H).
【0129】
工程k:チエノ[3,2-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(化合物102)
尿素法:メチル3-アミノチオフェン-2-カルボキシレート(101)(90.0g、573mmol、1.0等量)および尿素(277.6g、4.6mol、8.0当量)の混合物を、190℃で3〜4時間加熱し、室温に冷却した。反応混合物に水性NaOH(10%、800mL)を添加した。常温で1時間撹拌した後、ろ過して固体を除去した。HClを用いて濾液をpH3〜4に酸性化し、沈殿した固体をろ過して回収し、水で洗浄して、真空下で乾燥させ、オフホワイト固体の所望の生成物化合物102を得た(87g、89%)。m.p.:280〜285℃. LCMS (m/z): 169.0 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO- d6): δ 6.92 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.05 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 11.0-11.5 (br, 2H).
【0130】
KOCN法:3-アミノチオフェン-2-カルボキシレート(101)(100.0g、636.9mmol、1.0当量)、酢酸(705mL)および水(600mL)の混合物にシアン酸カリウム(154.8g、1.91mol、3.0等量)の水溶液(326mL)を、1時間かけてゆっくり添加した。得られた混合物を室温で20時間撹拌し、ろ過して水(500mL)ですすいだ。ケーキを適切な大きさの反応器に詰めて、2M水酸化ナトリウム水溶液(1.65L)を添加して、スラリーを2時間撹拌して、LCMSで所望の生成物の形成を確認した。混合物を10℃に冷却し、3Mの塩酸水溶液(1.29L)を、pH=5.0〜6.0まで添加した。スラリーをろ過して、水(700mL)ですすぎ、真空オーブン中、50℃で24時間かけて乾燥させ、オフホワイト固体の化合物102を得た(100g、94%)。LCMS (m/z): 169.1 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 6.92 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 11.14 (s, 1H), 11.51 (s, 1H).
【0131】
工程l:2,4-ジクロロチエノ[3,2-d]ピリミジン(化合物103)
温度を20℃未満に維持しながら、酸塩化リン(152mL、1.67mol、7.0当量)をアセトニトリル(250mL)中の化合物102(40g、238mmol、1.0当量)およびN,N-ジメチルアニリン(22.5mL、179mmol、0.75当量)の冷溶液にゆっくり添加した。混合物を85℃に加熱して、24時間撹拌した。反応混合物を15℃に冷却して、氷冷水の混合物(360mL)にゆっくり注いだ。得られたスラリーをろ過して、冷水(200mL)ですすいだ。ケーキを真空オーブン中、40℃で24時間かけて乾燥させ、オフホワイト固体の化合物103を得た(40.5g、83%)。M.p.:245〜250℃. LCMS (m/z): 205.0 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 7.75 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.71 (d, J = 5.2 Hz, 1H).
【0132】
工程m:2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン(化合物104)
化合物103(34.2g、167mmol、1.0当量)およびメタノール(500mL)の混合物にモルホリン(31.2mL、367mmol、2.2当量)をゆっくり添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。沈殿物をろ過して回収し、メタノールで洗浄して、真空下で乾燥させ、明黄色固体の所望の生成物化合物104を得た(39g、91%)。M.p.: 250〜255℃. LCMS (m/z): 256.0 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 3.76 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.92 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 7.42 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.32 (d, J = 5.2 Hz, 1H).
【0133】
工程n:2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド(化合物105)
THF(無水、320mL)中の化合物104(20g、78.4mmol、1.0当量)の懸濁物に、窒素下、-78℃でn-BuLi(ヘキサン中2.4M、40.8mL、102mmol、1.3当量)をゆっくり添加した。得られたスラリーを-60℃まで温めると、茶色透明溶液になった。反応混合物を再度-78℃に冷却して、DMF(無水、9.1mL、118mmol、1.5当量)をゆっくり添加した。得られた溶液を-78℃で0.5時間撹拌して、1時間かけて0℃まで温め、HCl水溶液(0.25M、660mL)および氷水(320mL)の混合物にゆっくり注いだ。得られたスラリーを0〜10℃で0.5時間撹拌し、ろ過して、冷水で洗浄し、真空下で乾燥させ、黄色固体の化合物105を得た(22g、98%)。M.p.:260〜265℃. LCMS (m/z): 284.0 [M+1]+ 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 3.77 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.96 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 8.30 (s, 1H), 10.21 (s, 1H).
【0134】
工程o:(2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イルメチル)-メチル-アミン(化合物106)
メタノール(125mL)中の化合物105(20.0g、70.4mmol、1.0等量)の溶液に、メチルアミンのメタノール溶液(27%v/v、75mL、563.2mmol)を窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、真空下で溶媒を除去し、粗製の固体生成物を得て、これを窒素下でメタノール(550mL)およびTHF(220mL)に溶解した。臭化水素ナトリウム(8g、211.2mmol)を分割して添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。真空下で反応混合物を蒸発させ、水(300mL)を添加した。メチレンクロライドで水性混合物を抽出し、合わせた抽出物をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。残渣を6M HCl(230mL)に溶解し、30分間撹拌した。水溶液をメチレンクロライドで数時間洗浄し、NaOH(4N)でpH9〜10に調整した。沈殿した固体をろ過して回収し、乾燥させ(60℃、6時間)、明黄色固体を得た(18g、85%)。M.p.: 240〜245℃. LCMS (m/z): 299 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 2.32 (s, 3H), 3.74 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.88 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.96 (s, 2H), 7.24 (s, 1H).
【0135】
工程p(a):2-[(2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イルメチル)-メチル-アミノ]-ピリミジン-5-カルボン酸エチルエステル(化合物107-1)
CH3CN(400mL)中の106(10g、33.6mmol)およびR-2-1(6.8g、36.4mmol)の混合物に、室温で、ジイソプロピルエチルアミン(220mL、1.26mol)を添加した。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、混合物を蒸発させ、その後メチレンクロライド(300mL)を添加した。有機層を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮すると残渣が残った。残渣に酢酸エチルを添加し、得られた混合物を氷/水浴温度で50分間撹拌した。得られた固体をろ過して回収し、白色固体の表題の生成物107-1を得た(10.6g、70%)。LCMS: 449 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 1.30 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 3.25 (s, 3H), 3.71 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.83 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 4.29 (m, 2H), 5.21 (s, 2H), 7.39 (s, 1H), 8.87 (s, 2H).
【0136】
工程p(b):2-[(2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イルメチル)-メチル-アミノ]-ピリミジン-5-カルボン酸メチルエステル(化合物107-2)
化合物106(25g、84mmol)、CH3CN(500mL)およびR-2-2(16g、92mmol)の混合物を室温で撹拌した。ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(500mL、2.9mol)を添加した。溶液を一晩撹拌して、蒸発させた。メチレンクロライド(500mL)を添加後、有機層を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣に酢酸エチル(200mL)を添加し、混合物を氷/水浴中で50分間撹拌した。白色固体の表題の生成物を回収した(29.4g、81%)。LCMS (m/z): 435.2 [M+1]+. 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6): 3.25 (s, 3H), 3.71 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.82-3.84 (m, 7H), 5.21 (s, 2H), 7.39 (s, 1H), 8.87 (s, 2H).
【0137】
工程q(a):エチル-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキシレート(化合物108-1)
方法A:トルエン(80ml)、エタノール(50ml)および水(10ml)の混合溶媒中の化合物107-1(12g、26.7mmol)、R-3-1(4.9g、32mmol)、NaHCO3(6.7g、80.1mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド(188mg、0.267mmol)の混合物を、N2雰囲気下、108℃で4.5時間加熱した。TLCは、反応が完了したことを示した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、水(20ml)を添加した。得られた固体をろ過して回収し、次いでエタノール(100mL)に懸濁した。懸濁物を室温で30分間撹拌してろ過した。回収した固体をエタノールで洗浄し、真空下で乾燥させ、白色固体の表題の化合物108-1を得た(10g、72%)。
【0138】
方法B:トルエン(24ml)、エタノール(15ml)および水(3ml)の混合溶媒中の化合物107-1(1.5g、3.34mmol)、R-3-2(1.6g、6.68mmol)、NaHCO3(0.84g、10.0mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド(118mg、0.167mmol)の混合物を、N2雰囲気下、108℃で一晩加熱した。反応混合物を、ジクロロメタンと水で分けた。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して、真空下で蒸発させ、残渣を得、これをヘキサン/酢酸エチルで溶出されるカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体の化合物108-1を得た(1.7g、98%)。
m.p.198〜202℃. LCMS: 522.30 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 1.31 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 3.28 (s, 3H), 3.76 (t, J = 4.4 Hz, 4H), 3.93 (t, J = 4.4 Hz, 4H), 3.94 (s, 3H), 4.30 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 5.24 (s, 2H), 6.92 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.47 (s, 1H), 8.57 (dd, J = 8.8 Hz, 2.0Hz, 1H), 8.88 (s, 2H), 9.15 (d, J = 2.0 Hz, 1H).
【0139】
工程q(b):メチル-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキシレート(化合物108-2)
ジオキサン(540mL)中の化合物107-2(20g、46.0mmol)、B-3-1(9.2g、60.2mmol、1.3当量)の混合物に、室温で固体のNaHCO3(11.6g、138.1mmol、3当量)を添加して、その後水(40mL)を添加した。溶液の表面にN2を通過させることにより、得られた混合物を脱気した。次いで、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド(323mg、0.46mmol、0.01当量)を添加して、得られた混合物を108℃で15時間加熱した。TLCおよびLCMSは、反応の完了を示した。反応混合物がまだ熱い(>90℃)うちに、セライトに通してろ過し、ジオキサン(70mL)で洗浄した。濾液を徐々に室温まで冷却し、冷却期間中に白色微結晶が形成された。懸濁物をろ過して、ジオキサン(80mL)で洗浄し、白色固体の表題の化合物108-2を得た(18g, 78%)。LCMS (m/z): 508.3 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 3.28 (s, 3H), 3.76 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 3.82 (s, 3H); 3.92 (m, 4H), 3.93 (s, 3H), 5.20 (s, 2H), 6.91 (d, J = 8.8Hz, 1H), 7.47 (s, 1H), 8.57 (dd, J = 8.8Hz, 2.4Hz, 1H), 8.88 (s, 2H), 9.15 (d, J = 2.0Hz, 1H).
【0140】
工程r:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物1)
ヒドロキシルアミンメタノール溶液の調製
MeOH(400mL)中のNH2OH.HCl(80g、1.12mol)の混合物を60〜65℃で1時間加熱すると、透明な溶液が形成された。次いで、これを氷水浴中で冷却した。反応温度を0〜10℃に維持しつつ、冷混合物にMeOH(240mL)中のKOH(96g、1.68mol)の溶液を滴下した。得られた混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで、無水Na2SO4(700g)を充填した定圧漏斗でろ過した。ろ過物を氷浴下で回収し、その後の使用のために冷蔵庫で保存した。
【0141】
化合物108-1からの化合物1の調製
化合物108-1(10g、19mmol)を、上記の新たに調製したヒドロキシルアミンメタノール溶液(1.79M、350ml)に懸濁した。この混合物にジクロロメタン(100mL)を添加した。反応フラスコを密封して、混合物を室温で5時間撹拌すると、その後、透明な溶液になった。反応をさらに9時間撹拌し、不溶性固体をろ過して除去した。酢酸を添加して、濾液をpH6〜7に調整すると、固体沈殿物が形成された。固体をろ過して回収し、水および最少量のメタノールで洗浄し、真空下、60℃で5時間乾燥させ、白色固体の化合物1を得た(9.2g, 96%)。m.p. 177〜180℃. LCMS: 509.3 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 3.24 (s, 3H), 3.76 (t, J = 5 Hz, 4H), 3.92 (t, J = 5 Hz, 4H), 3.92 (s, 3H), 5.20 (s, 2H), 6.90 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.44 (s, 1H), 8.57 (dd, J = 8.8 Hz, 2.4Hz, 1H), 8.75 (s, 2H), 9.01 (s, 1H), 9.14 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 11.08 (s,1H).
【0142】
化合物108-2からの化合物1の調製
ジクロロメタン(310mL)中の化合物108-2(31g、61.1mmol)の懸濁物に、室温で上述の新たに調製したヒドロキシルアミンメタノール溶液(1.79M、744ml)を添加した。反応フラスコを密封して、反応混合物を室温で5時間撹拌した。反応混合物は透明の溶液になった。反応溶液をろ過して、不溶性の固体を除去した。次いで、濾液に水(310mL)を添加したが、添加中に固体は形成されなかった。撹拌しながら酢酸(18.5mL)を添加し、pHを10.20に調整した(pHメーターにより継続してモニタリング)。酢酸の添加中に内部温度の変化はなかった。得られた反応混合物を継続してさらに4時間撹拌した。徐々に白色固体が形成された。懸濁物をろ過して、最少量のメタノール(100mLx3)で洗浄した。回収した白色固体をメタノール(620mL)および水(124mL)に再懸濁して懸濁物を形成した。上記の懸濁物に、さらに酢酸(11g)を添加し、pHを5〜6に調整した。固体形成の変化を観察した。懸濁物をさらに2時間撹拌し続けて、ろ紙でろ過して、最少量のメタノール(100mLx3)で洗浄した。回収した白色固体をオーブン(50℃)中で12時間乾燥させ、白色固体の表題の化合物1を得た(23.6g, 76.0%)。m. p.: 255〜259℃. LCMS (m/z): 509.3 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 3.24 (s, 3H), 3.76 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.92 (t, J = 5.2Hz, 4H), 3.92 (s, 3H), 5.20 (s, 2H), 6.91 (d, J = 8.4Hz, 1H), 7.45 (s, 1H), 8.57 (dd, J = 8.4Hz, 2.4Hz, 1H), 8.75 (s, 2H), 9.07 (s, 1H), 9.14 (d, J = 2.4Hz, 1H), 11.14 (s,1H).
【0143】
実施例2:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドメタンスルホン酸塩(化合物2)の調製
方法A:化合物1(300mg、0.59mmol)およびMeOH/Et2O(3/1、40mL)の混合物に、MeOH(3mL)中のメタンスルホン酸(114mg、1.18mmol)の溶液を0℃で添加した。得られた混合物を0℃で3時間撹拌した。沈殿物をろ過して回収し、Et2Oで洗浄して、白色固体の化合物2を得た(260mg、73%)。
【0144】
方法B:ジクロロメタン/MeOH(40mL/10mL)中の化合物1(1.5g、2.95mmol)の懸濁物に、2mLのMeOH中のメタンスルホン酸(341mg、3.55mmol)を、室温(15℃)で添加すると、透明の溶液が形成された。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物は依然透明であった。混合物に酢酸エチル(40mL)を添加し、室温で3時間撹拌を継続した。得られた沈殿物をろ過して回収し、白色固体の化合物2を得た(1.45g, 83%)。
m.p.: 179〜185℃. LCMS: 509.3 [M+1] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 2.35 (s, 3H), 3.26 (s, 3H), 3.78 (t, J = 9.6 Hz, 4H), 3.95 (s, 3H), 4.03 (t, J = 9.2 Hz, 4H), 5.24 (s, 2H), 6.99 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.50 (s, 1H), 8.54 (dd, J = 8.8 Hz, 2.4 Hz, 1H), 8.76 (s, 2H), 9.12 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 11.11 (br, 1H).
【0145】
実施例3:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドナトリウム塩(化合物3)の調製
メタノール(30mL)中の化合物1(300mg、0.59mmol)の懸濁物に、0℃でt-BuONa(85mg、0.88mmol)をゆっくり添加した。得られた混合物を室温に温め、継続して2時間撹拌した。反応を濃縮して、残渣を粉砕し、エタノールで洗浄し、その後ろ過し、白色固体の化合物3を得た(230mg、73%)。m.p.: 178〜183℃. LCMS: 509.3 [M+1] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 3.17 (s, 3H), 3.75 (s, 4H), 3.92 (s, 7H), 5.16 (s, 2H), 6.90 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.42 (s, 1H), 8.57 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.65 (s, 2H), 9.14 (s, 1H).
【0146】
実施例4:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドカリウム塩(化合物4)の調製
メタノール(50mL)中の化合物1(400mg、0.78mmol)の混合物に、t-BuOK(132mg、1.17mmol)を、0℃、N2下で添加した。混合物を0℃で1時間撹拌して、室温で1.5時間継続して撹拌した。不溶性の固体をろ過して除去し、濾液を-20℃に冷却した。Et2O(100mL)を濾液に添加した。得られた混合物を-20℃で1時間撹拌した。ヘキサン(70mL)を添加して、混合物を-20℃で2時間継続して撹拌した。固体をろ過して回収し、真空下で乾燥させ、白色固体の化合物4を得た(150mg、35%)。m.p.: 174〜179℃. LCMS: 509.3[M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 3.16 (s, 3H), 3.74-3.76 (m, 4H), 3.90-3.93 (m, 7H), 5.15 (s, 2H), 6.90 (d, J = 8.4Hz, 1H), 7.43 (s, 1H), 8.39 (br, 1H), 8.58 (d, J = 8.8Hz, 1H), 8.62 (s, 2H), 9.15 (s, 1H).
【0147】
実施例5:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドコリン塩(化合物5)の調製
DCM/MeOH(60mL/12mL)中の化合物1(200mg、0.39mmol)の溶液に、水酸化コリン(106mg、0.39mmol、MeOH中45%)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、濃縮して約30mLの溶媒を除去した。酢酸エチル(60mL)を添加して、混合物を室温で2時間撹拌した。少量の沈殿が生じた後、混合物を濃縮して約40mLの溶媒を除去し、さらに酢酸エチル(60mL)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、ろ過し、白色固体の化合物5を得た(180mg、76%)。m.p.: 181〜185℃. LCMS: 509.3[M+1]+. 1H NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 3.11 (s, 9H), 3.17 (s, 3H), 3.40 (t, J = 4.8Hz, 2H), 3.75 (t, J = 4.8Hz, 4H), 3.84 (br, 2H), 3.90-3.93 (m, 7H), 5.15 (s, 2H), 6.89 (d, J = 8.8Hz, 1H), 7.41 (s, 1H), 8.57 (dd, J = 8.8Hz, 2.4Hz, 1H), 8.64 (s, 2H), 9.14 (d, J = 2.0Hz, 1H).
【0148】
実施例6:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド硫酸塩(化合物6)の調製
DCM/MeOH(30mL/7.5mL)中の化合物1(200mg、0.39mmol)の懸濁物に、硫酸(1mLのMeOH中77mg、0.79mmol)を添加すると、透明の溶液が形成された。反応混合物を室温で一晩撹拌した。沈殿が生じて、次いでtert-ブチルメチルエーテル(60mL)を添加した。得られた混合物を室温で1時間継続して撹拌した。固体をろ過して回収し、白色固体の化合物6を得た(180mg、76%)。M.p.: 243〜246℃. LCMS: 509.3 [M+1]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 3.26 (s , 3H), 3.78 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 3.96 (s, 3H), 4.03 (t, J = 4.4 Hz, 4H), 5.24 (s, 3H), 6.98 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.50 (s , 1H), 8.54 (dd, J = 8.8 Hz, 2.4 Hz, 1H), 8.76 (s, 2H), 9.12 (d, J = 2.0 Hz, 1H) , 11.06 (br, 1H).
【0149】
実施例7:PI3キナーゼ活性アッセイ
以下のアッセイを使用して、化合物1がPI3Kの種々のアイソフォームおよび変異体を阻害する能力を決定した。
【0150】
PI3Kα
PI3Kα活性は、ADP-Glo発光キナーゼアッセイを使用して測定した。PI3Kα(N末端GSTタグ付加組み換え全長ヒトp110αとタグ付加されていない組み換え全長ヒトp85αの複合体)を、バキュロウイルスを感染させたSf9細胞発現系中で共発現させた。(p110αについてのGenBank受託番号U79143;p85αについての受託番号XM_043865)。グルタチオン-アガロースを使用した1工程親和性クロマトグラフィーにより、タンパク質を精製した。競合アッセイを行って、精製された組み換えPI3Kα(p110α/p85α)およびPIP2の存在下で、ATPから生じたADPの量を測定した。反応バッファ(50mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、5mM MgCl2、3uM オルトバナジウム酸Na、1mM DTT、10μM超純粋ATPおよび0.5% DMSO)中、30分間、30℃で、PI3Kαを20μM PIP2基質とインキュベートした。次いで、反応中に生じたADPをADP-Gloアッセイにより測定した。該アッセイは2工程で行った;第1に、等容量のADP-GLOTM試薬(Promega)を添加して、キナーゼ反応を終結させ、残存ATPを枯渇させた。第2工程で、ADPをATPに同時に変換するキナーゼ検出試薬を添加した。新たに合成されたATPは、共役ルシフェラーゼ/ルシフェリン反応を使用して測定した。このアッセイにおいて化合物1について測定されたIC50は100nM未満であった。
【0151】
化合物1がPI3Kαの変異体H1047RおよびE545Kを阻害する能力も、上述の一般的な手法を使用して測定した。両方の変異体について測定されたIC50は100nm未満であった。
【0152】
PI3Kβ
PI3Kβの活性は、ホモジニアス時間分解蛍光(homogenous time-resolved fluorescence)(HTRF)技術を利用した時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)アッセイを使用して測定した。P13Kβ(N末端ヒスチジンタグ付加組み換え全長ヒトp110βとタグ付加されていない組み換え全長ヒトp85αの複合体)を、バキュロウイルスを感染させたSf21細胞発現系において共発現させた。(p110βについてのGenBank受託番号NM_006219;p85αについての受託番号XM_043865)。グルタチオン-アガロースを使用した1工程親和性クロマトグラフィーにより、タンパク質を精製した。競合アッセイを行って、精製された組み換えPI3Kβ(p110β/p85α)の存在下でPIP2から生じたPIP3の量を測定した。反応バッファ(20mM HEPES、pH7.5、10mM NaCl、4mM MgCl2、2mM DTT、10μM ATPおよび1% DMSO)中、30分間、30℃で、PI3Kβを10μM PIP2基質とインキュベートした。次いで、反応生成物をPIP3検出体(detector)タンパク質、ユーロピウム標識抗体、ビオチン標識PIP3プローブおよびアロフィコシアニン標識ストレプトアビジンと混合した。センサー複合体(sensor complex)を形成させて、反応混合物中に安定なTR-FRETシグナルを生成する。このシグナル強度は、PIP3検出体に結合したビオチン標識プローブが酵素活性により生成されたPIP3と置き換えられ、混合物中の未結合ビオチン標識PIP3プローブの量が増加すると、減少する。TR-FRETシグナルは、バックグラウンドを差し引いたマイクロプレートリーダーを使用して測定した。
【0153】
このアッセイにおいて化合物1について測定されたIC50は、100〜1000nMであった。
【0154】
PI3Kδ
PI3Kδの活性は、蛍光偏光アッセイを使用して測定した。P13Kδ(N末端ヒスチジンタグ付加組み換え全長ヒトp110δとタグ付加されていない組み換え全長ヒトp85αの複合体)を、バキュロウイルスを感染させたSf9細胞発現系において共発現させた。(p110δについてのGenBank受託番号NM_005026)。グルタチオン-アガロースを使用した1工程親和性クロマトグラフィーにより、タンパク質を精製した。競合アッセイを行って、精製された組み換えPI3Kδ(p110δ/p85α)の存在下でPIP2から生成されたPIP3の量を測定した。反応バッファ(20mM HEPES(pH7.5)、10mM NaCl、4mM MgCl2、2mM DTT、10μM ATPおよび1% DMSO)中、1時間、30℃で、PI3Kδを10μMのPIP2基質とインキュベートした。次いで、反応生成物を、PIP3検出体タンパク質および蛍光PIP3プローブと混合した。偏光(mP)値は、PIP3検出体に結合した蛍光プローブが、酵素活性により生じたPIP3と置き換えられ、混合物中の結合していない蛍光プローブの量が増加すると、減少する。偏光度(mP)値は、バックグラウンドを差し引いたマイクロプレートリーダーを使用して測定した。
【0155】
このアッセイにおいて化合物1について測定されたIC50は100nM未満であった。
【0156】
PI3Kγ
PI3Kγの活性は、ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)技術を利用した時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)アッセイを使用して測定した。N末端ヒスチジンタグ付加ヒトP13Kδを、バキュロウイルスを感染させたSf9細胞発現系中で共発現させた。(GenBank受託番号AF327656)。タンパク質は、グルタチオン-アガロースを使用した1工程親和性クロマトグラフィーにより精製される。競合アッセイを行って、精製された組み換えPI3Kγ(p120γ)の存在下でPIP2から生成されたPIP3の量を測定した。反応バッファ(20mM HEPES、pH7.5、10mM NaCl、4mM MgCl2、2mM DTT、10μM ATPおよび1% DMSO)中、30分間、30℃で、PI3Kγ(2nM)を10μM PIP2基質とインキュベートした。次いで、反応生成物を、PIP3検出体タンパク質、ユーロピウム標識抗体、ビオチン標識PIP3プローブおよびアロフィコシアニン標識ストレプトアビジンと混合した。センサー複合体が形成されると、反応混合物中に安定なTR-FRETシグナルが生じる。このシグナル強度は、PIP3検出体に結合したビオチン標識プローブが、酵素活性により生じたPIP3と置き換えられ、混合物中の結合していないビオチン標識PIP3プローブの量が増加すると、減少する。TR-FRETシグナルは、バックグラウンドを差し引いたマイクロプレートリーダーを使用して測定した。
【0157】
このアッセイにおいて化合物1について測定されたIC50は、100〜1000nMであった。
【0158】
実施例8:HDAC活性アッセイ
HDAC阻害活性は、Biomol Color de Lys system (AK-500, Biomol, Plymouth Meeting, PA)を使用して評価した。簡潔に、HeLa細胞核抽出物をHDACの供給源として使用した。異なる濃度の試験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に逐次希釈して、比色人工基質の存在下でHeLa細胞核抽出物に添加した。最終アッセイ条件は、50mM Tris/Cl、pH8.0、137mM NaCl、2.7mM KClおよび1mM MgCl2を含んだ。反応は、室温(25℃)で1時間行い、その後終結のために顕色剤を添加した。WALLAC Victor II 1420マイクロプレートリーダー中で、蛍光強度として相対酵素活性を測定した(励起:350〜380nm;発光:440〜460nm)。S字状用量応答曲線がIC50計算値に適合するGraphPad Prism (v4.0a)を使用してデータを分析した。このアッセイにおいて化合物1について測定されたIC50は100nM未満であった。
【0159】
HDACアイソタイプに対する化合物1の活性も測定した。HDAC特異性アッセイは、標準的な操作手順に従ってBPS Bioscience (San Diego, CA)で行った。簡潔に、精製したフラッグ-(ヒトHDAC-1)、NCOR2-(ヒトHDAC3)、GST-(ヒトHDAC4、6、7、10および11)またはHis-(ヒトHDAC2、5、8および9)タグ付加酵素を、Sf9昆虫細胞中で発現させ、使用前に精製した。HDAC1、2、3、6、7、8、9および11に使用した基質は、BPS Bioscienceが開発したHDAC Substrate 3であった。他のHDAC酵素についてはHDACクラス2a基質を使用した。HDAC11酵素アッセイ(室温で3時間行った)以外の全ての酵素反応は、37℃で30分間、2重で行った。
【0160】
以下の表は、HDAC1-11のそれぞれについての結果を示し、IC50値は、以下のように示す:I>1000nM;100nM<II<1000nM;10nM<III<100nM;IV<10nM。
【表1】
【0161】
実施例9:細胞増殖アッセイ
ヒト癌細胞株をAmerican Type Culture Collection (Manassas, VA)から購入し、提供者によって提案されるように、96ウェル平底プレートの1ウェルあたり、培養培地と共に5,000〜10,000個で平板培養した。0.5%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)を補充した培養培地中で72時間、細胞を、種々の濃度の化合物とインキュベートした。Promega CellTiter-Gloキットを使用して、増殖阻害をアデノシン三リン酸(ATP)含有量アッセイにより評価した。Promega CellTiter-Gloキットは、ホタルルシフェラーゼに基づくATPモニタリングシステムである。簡潔に、1ウェルあたり16μlの哺乳動物細胞溶解液および基質溶液を、84μlの培養培地に添加して細胞を溶解し、ATPを安定化した。混合物を振盪して、30分間インキュベートし、その後発光を測定した。S字状用量応答曲線が適合するPRISMソフトウェア(GraphPad Software)を使用してIC50値を計算した。
【0162】
表1は、化合物1ならびに参照化合物SAHA、GDC-0941およびSAHAとGDC-0941の組み合わせのこれらの細胞系アッセイにおける抗増殖活性を示す。これらのアッセイにおいて、以下の等級を使用した:IC50についてI>10,000nM、10,000nM≧II≧1000nM、1000nM>III≧100nM、100nM>IV≧10nMおよびV<10nm。
【0163】
【表2-1】
【表2-2】
【0164】
実施例10:化合物1の製剤化
a. 30% Captisol中の化合物1(10mg/mL):
化合物1(10mg)を含むバイアルに30% Captisol(0.937ml)を添加した。混合物を2分間超音波処理した。混合物に水酸化ナトリウム(1N、39.3μl、2当量)を添加して、超音波処理/ボルテックスにかけ、透明な溶液(pH=12)を得た。次いで、該溶液を、塩酸(1N、23.6μl、1.2当量)でpH=10に調整した。
【0165】
b. 30% Captisol中の化合物1(7.5mg/mL):
化合物1(7.5mg)を含むバイアルに30% Captisol(0.941ml)を添加した。混合物を2分間超音波処理した。混合物に水酸化ナトリウム(1N、29.5μl、2当量)を添加して、超音波処理/ボルテックスにかけ、透明な溶液(pH=12)を得た。次いで、該溶液を、塩酸(1N、29.5μl、2当量)でpH=5に調整した。
【0166】
c. C10/PEG1450/PEG400中の化合物1(5mg/mL):
化合物1(5mg)、デカン酸ナトリウム(20mg)、PEG400(40μl)およびPEG1450(40mg)を含むバイアルに、H2O(0.88ml)およびNaOH(1N、24.6μl、2.5当量)を添加した。混合物を超音波処理してボルテックスにかけ、透明な溶液を得て、これをHCl(1N、7.4μl、0.75当量)でpH=10に調整した。
【0167】
実施例11:腫瘍保有マウスにおける薬物動態学的研究および薬力学的研究
H2122腫瘍保有ヌードマウス
H2122(ヒト非小細胞肺癌細胞株)異種移植片腫瘍を保有するヌードマウスを薬物動態学的研究に使用した。デカン酸ナトリウムおよびPEG400(5mg/ml)と共に化合物1を水中で製剤化し、それぞれの動物に50mg/kgの用量で、胃管栄養法により経口(PO)投与した。化合物投与後の種々の時点で、1時点当たり3匹のマウスをCO2で安楽死させて血液および腫瘍組織を採取した。血液はヘパリンナトリウムを含むチューブに回収した。遠心分離により血漿を分離した。血漿および組織をその後の分析のために-80℃で保存した。PE Sciex API-3000 LC-MS/MSシステム(Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA)を使用して、血漿および腫瘍組織中の化合物濃度を分析した。
【0168】
この研究の結果を以下の図1および表2に要約する。図1は、経口投与後の時間に対する血漿および腫瘍組織中の化合物1の濃度のグラフである。結果は、化合物1は腫瘍組織中に優先的に蓄積することを示す。これは、血漿中よりも腫瘍組織中での化合物1の有意に長い半減期および腫瘍組織の化合物1に対する有意に大きな曝露(AUC)を示す、表3に示す結果に支持される。
【0169】
【表3】
【0170】
Daudi腫瘍保有SCIDマウス
Daudi(非ホジキンリンパ腫細胞株)細胞を雌Scid(重症複合型免疫不全)マウスに移植した。腫瘍の定着後に、動物に、30% Captisol、pH10中に調製した25、50または100mg/kgの化合物1を、それぞれ1.875、3.75または7.5mg/mLの濃度で経口胃管栄養法により投与した。
【0171】
化合物投与後の種々の時点で、1時点当たり3匹のマウスをCO2で安楽死させて血液および腫瘍組織を採取した。血液は、ヘパリンナトリウムを含むチューブに回収した。遠心分離により血漿を分離した。血漿および組織は、その後の分析のために-80℃で保存した。PE Sciex API-3000 LC-MS/MSシステム(Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA)を使用して、血漿中の化合物濃度を分析した。
【0172】
この研究の結果を以下の図2A、2Bおよび2Cならびに表3に要約する。図2Aは、経口投与後の時間に対する血漿中の化合物1の濃度のグラフであり、化合物に対する用量依存的曝露を示す。図2Bは、経口投与後の時間に対する腫瘍組織中の化合物1の濃度のグラフである。結果は、化合物1は用量依存的に腫瘍組織中に優先的に蓄積することを示す。100mg/kg投与後の血漿および腫瘍の濃度を図2Cで比較すると、腫瘍組織は優先的に化合物1を取り込むことが示される。これは、血漿中よりも腫瘍組織中での化合物1の有意に長い半減期および化合物1に対する腫瘍組織の有意に大きい曝露(AUC)を示す、表3に示される結果により支持される。
【0173】
【表4】
【0174】
薬力学
25mg/Kg、50mg/kgおよび100mg/kgでの化合物1の単一用量での治療後のPD評価のために腫瘍を回収した。製造業者の指示書に従って、Tissuelyser (Qiagen, Valencia, CA)を使用して、腫瘍組織からタンパク質を抽出した。上述のように、WB分析のために30ugのタンパク質を常套的に使用した。細胞溶解物をNuPAGE Novex 4〜12% Bis-Trisゲル(Invitrogen)で分離して、ニトロセルロース膜(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)に転写した。4℃で一晩かけて、ブロットに種々の一次抗体で、プローブした(probed)。それぞれのアッセイについて、GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、1:30,000、Abcam, Cambridge, MA)を内部対照として使用した。次いで膜を、赤外線標識(infrared labeled)二次抗体(1:10000)のIR Dye-800 (Rockland Immunochemicals, Inc. Gilbertsville, PA)複合体またはAlexa 680(Invitrogen)複合体とインキュベートした。膜を、Odyssey Infrared Imaging System (Li-Cor Biotechnology, Lincoln, NE)で画像化した。
【0175】
この研究の結果を、3つの投与群由来の腫瘍組織抽出物のウェスタンブロットを示す図3に示す。これらの結果は、化合物1は、PI3K-AKT-mTOR経路を阻害し、RAF-MEK-ERK経路を抑制し、RTKタンパク質レベルを下方制御し、腫瘍抑制因子p53およびp21のレベルを上方制御することを示す。
【0176】
実施例12:イヌにおける薬物動態学的研究
デカン酸ナトリウム/PEG400(5mg/ml)と共に水中で5mg/kgでのiv投与およびデカン酸ナトリウム/PEG4000/PEG1450(pH 10)と共に腸溶性カプセル中で5mg/kgでの経口投与を使用して、ビーグル犬における化合物1の薬物動態学的研究も行った。血漿を種々の時点で採取し、化合物1の濃度についてLC-MS/MSにより分析した。該研究の結果を以下の図4および表4に示す。図4は、経口投与およびiv投与の両方についての時間に対する血漿濃度のグラフである。経口投与により化合物1の有意な血漿レベルが達成される。
【0177】
【表5】
【0178】
実施例13:ラットにおける薬物動態学的研究
この研究の目的は、化合物1の経口投与後の雄Sprague-Dawleyラットにおける化合物1の血漿薬物動態学を決定することであった。
【0179】
化合物1を水溶液中の30% Captisolに溶解して、経口投与について10mg/mL(pH=10)の公称濃度を得た。得られた黄色透明溶液は、投与のために選ぶまで、室温で保存した。
【0180】
Charles River Laboratoriesの3匹の雄Sprague-Dawleyラットをこの研究に使用した。Research Diets Inc.の高脂肪食(VHFD、D12492i)を、研究の生存部(in-life portion)を通じて自由に摂取できるように与えた。化合物1は、20mg/kgで、単一経口(PO)胃管栄養法投与により投与した。
【0181】
投与の0.25、0.5、1、3、6および24時間後に、尾静脈から血液試料(およその容量150μL)を採取した。血液試料はヘパリンナトリウムを含むチューブに入れ、8000rpmで、4℃、6分間遠心分離して試料から血漿を分離した。遠心分離後、得られた血漿をきれいなチューブに移し、生体分析まで-80℃で凍結保存した。
【0182】
血漿試料中の化合物1およびその一次代謝物の濃度は、PE Sciex API-3000 LC-MS/MSシステム(PE-Sciex., Foster City, CA)を使用して測定した。
【0183】
薬物動態学的パラメータは、試験対象の平均濃度-時間データから決定した。WINNONLIN(登録商標) Professional 5.2.の区画(compartmental)モデリングを使用して、パラメータを計算した。定量の限界(定量の下限=1ng/mL)未満の任意の濃度は、個々の動物のパラメータの計算から省略した。
【0184】
化合物1の経口投与後、化合物1のCmaxおよびTmaxの平均値は、それぞれ39.5μg/Lおよび0.1時間であった。AUC(0-∞)の平均値は、163.6μg/L*時間であった。半減期(T1/2)の値は11.7時間であった。
【0185】
実施例14:異種移植片腫瘍モデルにおける化合物1の評価
A. SU-DHL4、H2122、DaudiおよびOPM2の異種移植片腫瘍モデル
SU-DHL4(びまん性大B細胞リンパ腫細胞株)、H2122(ヒトNSCLC細胞株)、Daudi(非ホジキンリンパ腫細胞株)およびOPM2(多発性骨髄腫瘍細胞株)の細胞をヌードマウスまたはScid(重症複合型免疫不全)マウスのいずれかに移植した。腫瘍の定着後、十分な腫瘍サイズを有する動物を、無作為に活性(化合物1)群および対照(ビヒクル)群に割り当てた。経口投与のために実施例7(b)と同様に化合物1を調製し、それぞれの個々の動物の体重に基づいて、経口胃管栄養法により送達した。対照群は、対応する活性群と同じ投与スケジュールを使用してビヒクルで処理した。
【0186】
H2122腫瘍群(ヌードマウス)には、化合物1を75mg/kgの用量で、最初に1日に2回、次いで11日目からは75mg/Kgでの体重減少のために、1週間当たり5日間、50mg/Kgを1日に2回与えた。1回の研究において、Daudi腫瘍群(Scidマウス)には、1週間当たり5日間、25、50または100mg/Kgの用量で化合物1を与えた。別の研究において、Daudi腫瘍群に、1週間当たり5日間、1日に2回50mg/Kgを投与した。別の研究では、Daudi腫瘍モデルにおいて経口投与された化合物1の効力を、経口GDC-0941および経口ボリノスタットの両方と個別に、および組合せと比較した。OPM2腫瘍群には、化合物1を、1週間当たり5日間、1日に2回、50mg/kgの用量で与えた。SU-DHL4腫瘍群には、100mg/Kgで経口投与、または50mg/Kgで静脈内投与した。
【0187】
試験期間中に、電子カリパスを用いて腫瘍を測定し1週間に2回体重を測定した。以下の式:
腫瘍体積=(長さX幅2)/2
を使用して腫瘍体積を計算した。
【0188】
腫瘍体積変化のパーセンテージを使用して、治療期間にわたる化合物の活性を説明した。
【0189】
これらの試験の結果を、それぞれの腫瘍の種類についての活性群および対照群の時間に対する腫瘍サイズを示す図5A〜5Cおよび9〜12に要約する。図5A、5B、5Cおよび12は、化合物1はH2122、DaudiおよびOPM2腫瘍モデルにおいて効果的であることを示す。図9に示すように、化合物1は、用量依存にDaudi腫瘍増殖を阻害した。図10は、Daudiモデルにおける100mg/Kgでの化合物1の抗腫瘍活性と、GDC-0941もしくはボリノスタット単独または組み合わせのいずれかの抗腫瘍活性を比較する。示される用量は、それぞれの治療の最大許容用量(MTD)であり、治療前腫瘍サイズは157±65mm3(平均±SE)であった。データは、化合物1が、ボリノスタット、GDC-0941または両方の組み合わせよりも効果的であることを示す。最終的に、化合物1は、50mg/kgでの静脈内(IV)投与または100mg/kgでの経口(PO)投与後に、SU-DHL4びまん性大B細胞リンパ腫異種移植片モデルにおける腫瘍増殖を強く阻害した(図11)。治療前腫瘍サイズは147±21mm3であった。
【0190】
MM1S異種移植片モデル
4週齢の雌SCID/ベージュ(Beige)マウスを、換気されたマイクロ隔離(micro-isolator)ケージ(INNOCAGE(登録商標)IVC, Innovive Inc., San Diego, CA)中、調節された環境下で収容し、滅菌高脂肪食(Problab-RMH 2000)を自由に摂取できるように与え、滅菌水を与えた。SCID/ベージュマウスのための全ての収容物および供給物は、使用前にオートクレーブにより滅菌した。訓練を受けた動物施設職員および研究者が、週末/休日を含む毎日、マウスを検査した。全ての動物手順は、生体安全キャビネット(注射用)または薄流フード(動物管理手順および非侵襲性手順用)内の滅菌条件下で行った。
【0191】
MM1SヒトMM細胞(Goldman-Leikin RE, et al., J Lab Clin Invest. 1980;113:335-345)は、最初、多発性骨髄腫患者の末梢血から得られた。凍結保存された細胞を37℃の水浴中で解凍し、組織培養インキュベーター中5% CO2で、10%ウシ胎仔血清(FBS)を足したRPMI培地中で培養した。(PCRにより)マイコプラズマおよび/または(MAP試験、マウス抗体産生により)ウイルスによる汚染を除外する目的で汚染およびげっ歯類病原菌スクリーニングのために、細胞を外部の業者に送った。培養中の細胞が移植に十分になったところで、細胞を血清非含有ハンクス平衡塩溶液(HBSS)で洗浄した。最終的に、移植のために細胞をHBSS中に希釈した。90%より高い信頼度の単一細胞懸濁物(トリパンブルー排除による)のみを注射に使用して、最低7日の順化期間後に、動物1匹当たり0.2mlのHBSSに懸濁した20,000,000個の細胞を、26Gの皮下注射用の針を有する1ccのシリンジを使用して、注意して血管を避けながら、マウスの右後部脇腹領域に皮下注射した。成功裡の移植は、皮下の球形の膨らんだ(raised)塊の形成を指標とした。移植されたマウスを、一般的な健康および腫瘍の発達について毎日モニタリングした。
【0192】
腫瘍は、移植後約2週間で検出可能であった。腫瘍サイズは、カリパスを用いて測定した。以下の式:
腫瘍体積=(長さX幅2)/2
を使用して、腫瘍体積を計算した。
【0193】
腫瘍移植の3週間後、腫瘍は平均194.6±37.9mm3に達した。許容可能な腫瘍サイズおよび形状を有する動物を、分類ソフトウェアを用いて、動物8匹ずつの2つの群(1つはビヒクル対照、1つは処理群)に無作為に割り当てた。
【0194】
化合物1を製剤化して、以下のように投与した:7.5mg/mlを、2モル当量のNaOHおよびHClそれぞれと共に30% Captisolに溶解し、それぞれのマウスの体重に基づいて、1週間に5回、毎日、経口胃管栄養法により投与した。対照群には、同じ投与範例を使用してビヒクル(30% Captisol)を投与した。
【0195】
それぞれの動物研究の間に、腫瘍をカリパスで計測し、上述の式を用いて腫瘍サイズを決定し、腫瘍サイズの変化のパーセンテージを計算した。スケールを用いて、マウスの体重を1週間当たり2回測定した。研究は、a) 研究設計において予定の最終日(end date)が示されるか;またはb) 健康上の問題が生じるかのどちらかが最初に起こるまで継続した。また、以下の腫瘍関連パラメータにより、安楽死の提供を保証した:(1)腫瘍負荷が2500mm3を超える、および/または(2)開始体重の≧20%が減少する。腫瘍サイズ変化の決定に加えて、異種移植片腫瘍の評価のために国立癌研究所(NCI)により開発された標準測定基準である腫瘍重量変化比(T/C値)を作成するために最後の腫瘍測定値を使用し、以下の式:% T/C=100xΔT/ΔC(ΔT>0の場合)を使用してT/C値を計算した。しかしながら、腫瘍退縮が起こった場合は、以下の式:% T/T0=100xΔT/T0(ΔT<0の場合)を使用した。
【0196】
処置期間は15日であった。研究の最終日に腫瘍サイズおよび体重を再度測定した。
【0197】
図13に示すように、化合物1単一薬剤で、MM1S皮下腫瘍モデルにおける腫瘍の増殖が阻害された。14日目に基づいてT/C値を計算すると、27.37%である(p<0.0001、ANOVA)。化合物1単一薬剤処置群について、体重の減少または他の副作用は観察されなかった。
【0198】
MM1R異種移植片モデル
4週齢の雌SCID/ベージュマウスを、換気されたマイクロ隔離ケージ(INNOCAGE(登録商標)IVC, Innovive Inc., San Diego, CA)中、調節された環境下で収容し、滅菌高脂肪食(Problab-RMH 2000)を自由に摂取できるように与え、滅菌水を与えた。SCID/ベージュマウスのための全ての収容物および供給物は、使用前にオートクレーブにより滅菌した。訓練を受けた動物施設職員および研究者が、週末/休日を含む毎日、マウスを検査した。全ての動物手順は、生体安全キャビネット(注射用)または薄流フード(動物管理手順および非侵襲性手順用)内の滅菌条件下で行った。
【0199】
MM1RヒトMM細胞は、最初、多発性骨髄腫患者の末梢血から得られた(Goldman-Leikin RE, et al., J Lab Clin Invest. 1980;113:335-345)。凍結保存された細胞を37℃の水浴中で解凍し、組織培養インキュベーター中5% CO2で、10%ウシ胎仔血清(FBS)を足したRPMI培地中で培養した。(PCRにより)マイコプラズマおよび/または(MAP試験、マウス抗体産生により)ウイルスによる汚染を除外する目的で汚染およびげっ歯類病原菌スクリーニングのために、細胞を外部の業者に送った。培養中の細胞が移植に十分になったところで、細胞を血清非含有ハンクス平衡塩溶液(HBSS)で洗浄した。最終的に、移植のために細胞をHBSS中に希釈した。90%より高い信頼度の単一細胞懸濁物(トリパンブルー排除による)のみを注射に使用して、最低7日の順化期間後に、動物1匹当たり0.1mlのHBSSに懸濁した15,000,000個の細胞を、26Gの皮下注射用の針を有する1ccのシリンジを使用して、注意して血管を避けながら、マウスの右後部脇腹領域に皮下注射した。成功裡の移植は、皮下の球形の膨らんだ塊の形成を指標とした。移植されたマウスを、一般的な健康および腫瘍の発達について毎日モニタリングした。
【0200】
腫瘍は、移植後約2週間で検出可能であった。腫瘍サイズは、カリパスを用いて測定した。以下の式:
腫瘍体積=(長さX幅2)/2
を使用して、腫瘍体積を計算した。
【0201】
腫瘍移植の3週間後、腫瘍は平均131.7±28.7mm3に達した。許容可能な腫瘍サイズおよび形状を有する動物を、分類ソフトウェアを用いて、動物8匹ずつの2つの群(1つはビヒクル対照、1つは処理群)に無作為に割り当てた。
【0202】
化合物1を製剤化して、以下のように投与した:7.5mg/mlを、2モル当量のNaOHおよびHClそれぞれと共に30% Captisolに溶解し、それぞれのマウスの体重に基づいて、1週間に5回、毎日、経口胃管栄養法により投与した。対照群には、同じ投与範例を使用してビヒクル(30% Captisol)を投与した。
【0203】
それぞれの動物研究の間に、腫瘍をカリパスで計測し、上述の式を用いて腫瘍サイズを測定し、腫瘍サイズの変化のパーセンテージを計算した。体重計を用いて、マウスの体重を1週間当たり2回測定した。研究は、a) 研究設計において予定の最終日が示されるか;またはb) 健康上の問題が生じるかのどちらかが最初に起こるまで継続した。また、以下の腫瘍関連パラメータにより、安楽死の提供を保証した:(1)腫瘍負荷が2500mm3を超える、および/または(2)開始体重の≧20%が減少する。腫瘍サイズ変化の決定に加えて、異種移植片腫瘍の評価のために国立癌研究所(NCI)により開発された標準測定基準である腫瘍重量変化比(T/C値)を作成するために最後の腫瘍測定値を使用した。以下の式:% T/C=100xΔT/ΔC(ΔT>0の場合)を使用してT/C値を計算した。しかしながら、腫瘍退縮が起こった場合には、以下の式:% T/T0=100xΔT/T0(ΔT<0の場合)を使用した。
【0204】
処置期間は18日であった。研究の最終日に、腫瘍サイズおよび体重を再度測定した。
【0205】
図14に示すように、化合物1単一薬剤により、MM1R皮下腫瘍モデルにおける腫瘍増殖が阻害された。17日目に基づいてT/C値を計算すると21.15%である(p<0.0001、ANOVA)。化合物1単一薬剤処置群について、体重減少または他の副作用は観察されなかった。
【0206】
実施例15:循環リンパ球に対する化合物1の効果
CD1野生型マウスにおいて、循環TおよびBリンパ球に対する化合物1の効果を調べる試験を行った。5匹のマウスを、実施例8(b)のように調製された化合物1(5mg/mL)を用いて、5日間連続で、100mg/kgで経口的に処理した。別の5匹のマウスはビヒクルで処置した。種々の時点(投与前、投与中および投与後など)で、下顎静脈から血液を採取した。TおよびB細胞定量化のためにフローサイトメーターを用いて血液を分析した。
【0207】
リンパ系器官(脾臓およびリンパ節)におけるTおよびBリンパ球レベルに対する化合物1の効果も評価した。マウスを100mg/kgの化合物1で5日間連続して経口的に処置した。動物を屠殺して、リンパ系器官を回収した。細胞を物理的に組織から引き離し、フローサイトメーターで分析した。抗CD3抗体および抗CD19抗体を使用して、TおよびB細胞をそれぞれ染色した。
【0208】
これらの研究の結果を、時間経過における血液リンパ球レベルを示すグラフである図6に示す。化合物1は、対照と比較して、TおよびBリンパ球の両方の血液レベルにおいて、有意な可逆的な減少を示す。脾臓およびリンパ節におけるリンパ球レベルにおいて同様の効果が見られる。これらの器官の両方は、対照と比較して、化合物1の投与後に、TおよびBリンパ球の両方の有意な減少を示す。
【0209】
実施例16:骨髄中の造血細胞に対する化合物1の効果
実施例12において屠殺したマウスから骨髄も取り出した。該マウスの長骨から骨髄成分を回収し、フローサイトメーターを用いて分析した。前駆リンパ球および成熟リンパ球についての種々のマーカーを使用した。結果は、化合物1による処理は、対照と比較して、末梢のTおよびBリンパ球数の減少をもたらしながら骨髄リンパ球前駆細胞の代償的な増加を誘導したことを示した。
【0210】
実施例17:Mini-サルモネラ/哺乳動物-ミクロソーム復帰突然変異アッセイ
この研究は、2系統のネズミチフス菌(TA98およびTA100)のゲノム中のヒスチジン座で、哺乳動物ミクロソーム酵素(S9-mix)の存在下または非存在下のいずれかで、化合物1が復帰突然変異を誘導する能力を評価するために行った。
【0211】
突然変異誘発アッセイに使用した試験株は、ネズミチフス菌試験株TA98(フレームシフト復帰突然変異を検出するため)およびTA100(点復帰突然変異を検出するため)であった。ビヒクル(DMSO、20μl/ウェル)と一緒にS9混合物の存在下および非存在下の両方、ならびに陽性対照において、6ウェルプレートを用いて、アッセイを2重に行った。それぞれの化合物について、1000〜62.5μg/ウェル(標準エームズアッセイにおける5000〜312.5μg/プレートと同等)の範囲の2X連続希釈で5種類の濃度を試験した。37℃で48〜72時間のインキュベーション後、プレートを、化合物の不溶性および細胞毒性について観察し、スキャンして復帰突然変異体のコロニーを計測した。毎日の平均対照値に対して復帰突然変異体コロニーの2倍の再現可能な増加(ビヒクル対照の>2x)を、それぞれの株についての遺伝子突然変異の陽性応答とみなす。
【0212】
化合物1をジメチルスルホキシド(DMSO)(これも陰性(ビヒクル)対照とした)に溶解した。2-ニトロフルオレンおよびアジ化ナトリウムは、TA98およびTA100のそれぞれについて、S9の非存在下で陽性対照とした。2-アミノアントラセンは、TA98およびTA100についてS9の存在下で陽性対照とした。
【0213】
結果
化合物1は、50mg/mlの濃度でDMSOに溶解した場合に栗色の溶液を形成し、これを最も濃いストック溶液とした。試験品(test article)は、3.125mg/mlまでの全ての2X連続希釈において、明るい栗色から無色の溶液のままであった。試験品とソフト寒天を250μg/ウェル以上の濃度で一緒に混合した場合、試験品の沈殿が観察された。48〜72時間のインキュベーション後、試験品の沈殿は、S9混合物の非存在下のみでTA98およびTA100を用いて、250μg/ウェルで、解剖用顕微鏡下にわずかに見られ、試験品沈殿およびバックグラウンド菌叢の少量の減少は、S9混合物の存在下および非存在でTA98およびTA100を用いて500および1000μg/ウェルで、わずか〜中程度で見られた。株TA98およびTA100を用いてS9混合物の存在下および非存在下で試験した場合、平均対照と比較して、復帰突然変異体コロニーの平均数の有意な増加の証拠はなかった(表5)。
【0214】
現在の試験の結果から、試験品を1000μg/ウェル(標準エームズアッセイにおける5000μg/ウェルと同等)の最大濃度まで試験した場合、ミクロソーム酵素の存在下および非存在下で化合物1は株TA98およびTA100との陽性の突然変異誘発性の応答を誘導しないことが示された。
【0215】
【表6-1】
【表6-2】
【0216】
実施例18:腫瘍細胞株における薬物動態学的研究
腫瘍細胞株H460(Kras、PI3K)、BT474(HER2、PI3K)、A375(B-Raf)およびH1975(EGFR、PI3K)を培養して、DMSO単独(ビヒクル対照)または0.1μmol/Lの化合物1または参照化合物で16時間処置した。SDSおよび2-メルカプトエタノールの存在下で細胞抽出物を調製し、ポリアクリルアミドゲルで分離した。タンパク質をニトロセルロースフィルターに転写して、示される一次抗体を含むブロッキング溶液(Li-Cor Bioscience)を用いて、標準的な手法を用いてブロッティングを行った。p-EGFR、EGFR、p-HER2、HER2、p-HER3、HER3、p-MET、MET、p-bRaf、p-cRaf、pMEK、MEK、p-ERK、ERKおよびチューブリンに対する一次抗体は、Cell Signaling Technologyから購入した。IRdye 680、800CWと共役した二次抗体を使用して、Li-Cor Odyssey Imagerを用いてシグナルを検出した。
【0217】
該細胞は、図の説明文に示されるように処理して4%(w/v)パラホルムアルデヒド中で固定した、単層培養中で増殖した細胞に対して免疫細胞学を行った。1xPBSで洗浄後、示される一次抗体およびIRDye 680または800CWと共役した二次抗体を含むLi-Corブロッキング溶液中で免疫染色を行った。細胞内ウェスタン(in-cell-western)について、検出および結果の定量化のためにLi-Cor Odyssey infrared imagerを使用した。
【0218】
薬物動態学的マーカーの組織学的検査のために、腫瘍異種移植片を回収してパラフィンに包埋し、次いで4〜5mmの切片を作製した。切片をスライドガラス上に乗せ、一次抗体、次いでセイヨウワサビペルオキシダーゼ共役二次抗体(Envision polymer-HRP, Dako, Glostrup, Denmark)と反応させた。次いで、業者が勧めるように、ジアミノベンジジン(DAB)を使用して発色反応を行った。ヘマトキシリンを用いて切片の交差染色を行った。
【0219】
この試験の結果を図7A〜7gおよび8A〜8Cに要約する。化合物1は、KRAS-およびPI3KCA-変異体H460非小細胞肺癌(NSCLC)細胞中のHDAC活性およびPI3K経路シグナル伝達を阻害する。細胞を、DMSO単独(ビヒクル対照)または試験化合物を含有するDMSOで1時間処理し、その後ウェスタンブロットまたは細胞内ウェスタンを行った。図7Aは、1μmol/Lの化合物1が、アセチル化されたヒストン3(Ac-H3)、チューブリン(Ac-Tub)およびp53(Ac-p53)のレベルを増加することを示す。該化合物はまた、p53およびp21の総含有量を上方制御する。図7B〜7Eに示すデータは、化合物1が、用量依存的にアセチル化チューブリン(図7B)、アセチル化ヒストン3(図7C)、アセチル化p53(図7D)およびアセチル化p21(図7E)のレベルを増加することを示す。得られたIC50値は、試験した癌細胞において、化合物1が、LBH 589と同等のHDAC阻害効力を有することを示唆する。1μmol/Lで、化合物1は、AKTならびに下流シグナル伝達タンパク質4EBP-1およびp70S6の活性化を阻害する(図7F)。化合物1はまた、用量依存的に、Aktのリン酸化を持続的かつ有効に阻害する(図7G)。
【0220】
癌の治療におけるPI3Kインヒビターの1つの大きな制限は、RAF-MEK-ERK経路の活性化である。HDACインヒビターはまた、エピジェネティックな修飾により、癌細胞においてこのシグナル伝達経路のキナーゼレベルを阻害し得る。H460細胞におけるKRASおよびPI3K変異、A375細胞におけるB-Raf変異、BT-474細胞におけるHER2およびPI3K変異、ならびにH1975細胞におけるEGFR変異などの種々の変異を有する腫瘍細胞において、100nMの化合物1は、Raf、MEKおよびERKの活性化を抑制した。有力なHDACインヒビターLBH 589は、これらのウェスタンブロットアッセイのいくつかにおいて、同様の活性を示した(図8A)。
【0221】
PI3KおよびMEK経路の阻害に加えて、1μMの化合物1でのRPMI-8226骨髄腫細胞の16時間の処理は、p-STAT3(Y-705)およびp-Srcを阻害した(図8B)。
【0222】
EGFR-L858R-T790M二重変異体H1975 NSCLC細胞およびHER2過剰発現BT-474乳癌細胞において、化合物1は、16時間のインキュベーション後、リン酸化された全ての受容体チロシンキナーゼEGFR、HER2、HER3およびMETのレベルを低減することが示された。これらの細胞をLBH 589で処理した後、同じキナーゼの同様の下方制御が観察された(図8C)。
【0223】
実施例19. 造血異種移植片腫瘍モデルにおけるPI3K110α、β、γおよびδの発現
6〜8週齢の雌免疫不全マウス(ベージュ/SCID)を、換気したマイクロ隔離ケージ中、調節した環境で収容し、滅菌した高脂肪食(Problab-RMH 2000)を自由に摂取できるように与え、滅菌水を与えた。SCIDベージュマウスのための全ての収容物および供給物は使い捨てであり、使用前に放射線照射したものをInnoviveから購入した。訓練を受けた動物施設職員および研究者が、週末/休日を含む毎日、マウスを検査した。全ての動物手順は、生体安全キャビネット(注射用)または薄流フード(動物管理手順および非侵襲性手順用)内で、滅菌条件下で行った。
【0224】
ヒト造血癌細胞株は最初、ヒト癌患者から得られた。凍結保存された細胞を37℃の水浴で解凍し、組織培養インキュベーター中5% CO2で、10〜15%ウシ胎仔血清(FBS)を足したRPMI培地中で培養した。(PCRにより)マイコプラズマおよび/または(MAP試験、マウス抗体産生により)ウイルスによる汚染を除外することを目的とした汚染およびげっ歯類病原菌スクリーニングのために、細胞を外部の業者に送った。
【0225】
培養中の細胞が所望の数に達した際に、該細胞を回収し、血清非含有Dulbecco’sリン酸緩衝食塩水(DPBS)で洗浄した。最終的に、移植のために細胞をDPBSに希釈した。90%より高い生存率の単一細胞懸濁物(トリパンブルー排除による)のみを注射に使用した。7日間の順化期間後、動物1匹あたり0.1ml DPBSに懸濁した10,000,000〜20,000,000個の細胞を、26Gの皮下注射用の針を有する0.5ccシリンジを使用して、注意して血管を避けながら、動物の右後部脇腹領域に皮下(SC)注射した。成功裡の移植は、皮下の球形の膨らんだ塊の形成を指標とした。一般的な健康および腫瘍の発達について、移植されたマウスを毎日モニタリングした。
【0226】
腫瘍は、移植後約2.5週間で検出可能であった。腫瘍サイズはカリパスを用いて測定した。以下の式:
腫瘍体積=(長さX幅2)/2
を用いて、腫瘍体積を計算した。
【0227】
腫瘍サイズが約150〜300mm3に達したところで、マウスを、3種類の処置群(25mg/kg、50mg/kgおよび100mg/kg)および1種類の対照群を含む4種類の群に分けた。化合物1の投与後、腫瘍を15分、1、3、6、24時間で回収した(各時点について3匹のマウス)。マウスをCO2で安楽死させた後、上述の時点に従って腫瘍を回収した。ウェスタンブロット分析のために、-80℃の冷凍庫に移すまで、試料をドライアイス中に置いた。
【0228】
製造業者の指示書に従いホモジナイザー(Tissuelyser, Qiagen, Valencia, CA)を使用して、腫瘍組織からタンパク質を抽出した。使用前に、組織チューブを保持するためのアダプターを-20℃で凍結し、溶解バッファおよびビーズを4℃で冷蔵した。
【0229】
100〜200μgの組織を、ホスファターゼインヒビター(1:100v/v、Tyr & Ser/Thrホスファターゼインヒビターカクテル、Upstate)を添加した300μlのT-PER哺乳動物組織タンパク質抽出試薬(Pierce, Rockford, IL)中で均質化した。それぞれのサイクル(時間:0.15分;周波数:30Hz)後、組織が完全に均質化されるまで、標本を視覚的に検査した。ほとんどの場合においておよそ4サイクルが必要であった。組織溶解物を、14,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。200μlの上清を回収して、-80℃で維持した。製造業者の指示書に従いBCA Protein Assayキット(Pierce, Rockford, IL)を使用して、タンパク質濃度を測定した。
【0230】
30μgの総タンパク質抽出物をNuPAGE Novex 4〜12% Bis-Trisゲル(Invitrogen)で分離して、Bio-Rad Semi-Dry Transfer Machineを使用してニトロセルロース膜(Bio-Rad)に転写した。ブロットを10mlのブロッキングバッファ(Odyssey Infrared Imaging System)と1時間インキュベートして、次いで振盪器上、4℃で一晩かけて、一次抗体でプローブした。4℃で一晩かけてブロットに一次抗体でプローブした。一次抗体としては、PI3キナーゼp110α(#4249、1:1000、Cell Signaling)、PI3キナーゼp110β(#3011、1:1000、Cell Signaling)、PI3キナーゼp110γ(#5405、1:1000、Cell Signaling)、PI3キナーゼp110δ(SC-7176 (1:1000、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)が挙げられた。それぞれのアッセイについての内部対照として、GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、1/30,000、Abcam, Cambridge, MA)を使用した。
【0231】
Tris緩衝化食塩水Tween-20(TBST;DAKO)で膜を4回リンスし、赤外線共役二次抗体(1:10000):抗ウサギ共役IR Dye 800(Rockland)または抗マウス共役Alexa 680(Molecular Probes)と共に、室温で1時間インキュベートした。膜をTBSTで洗浄し、次いで、画像化および分析のためにOdyssey Infrared Imaging Systemに置いた。
【0232】
結果を、いくつかの非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫異種移植片由来のPI3K p110アイソフォーム、AKTおよびpAKTのウェスタンブロットを示す図15に示す。結果は、多数のPI3K P110アイソフォームによりAKTの活性化が誘導されることを示す。
【0233】
実施例20:Daudi異種移植片腫瘍モデルにおける化合物1とCAL-101の比較
6〜8週齢の雌SCIDベージュマウス(CD-1ベージュSCID)を、換気したマイクロ隔離ケージ中、調節された環境で収容、滅菌高脂肪食(Problab-RMH 2000)を自由に摂取できるように与え、滅菌水を与えた。SCIDベージュマウスについて全ての収容物および供給物は、使い捨てであり、使用前に放射線照射したものをInnoviveから購入した。訓練を受けた動物施設職員および研究者が、週末/休日を含む毎日、マウスを検査した。全ての動物手順は、生体安全キャビネット(注射用)または薄流フード(動物管理手順および非侵襲性手順用)中、滅菌条件下で行った。
【0234】
Daudiヒトバーキットリンパ腫細胞は最初、ヒトバーキットリンパ腫患者から得られた。凍結保存された細胞を37℃の水浴で解凍し、組織培養インキュベーター中、5% CO2で、15%ウシ胎仔血清(FBS)、1% Penstrepおよび1% Glutamaxを足したRPMI-1640培地中で培養した。(PCRにより)マイコプラズマおよび/または(MAP試験、マウス抗体産生により)ウイルスによる汚染を除外することを目的とした病原菌スクリーニングのために、細胞を外部の業者に送った。培養中の細胞が所望の数に達した際に、該細胞を遠心分離して回収した。回収後、細胞を血清非含有Dulbecco’sリン酸緩衝食塩水(DPBS)で洗浄した。最終的に、移植のために細胞をDPBSに希釈した。90%より高い生存率の単一細胞懸濁物(トリパンブルー排除による)のみを注射に使用して、最低7日間の順化期間後、動物1匹あたり0.1mlのDPBSに懸濁した20,000,000個の細胞を、26Gの皮下注射用の針を有する0.5ccシリンジを使用して、注意して血管を避けながら、マウスの右後部脇腹領域に皮下注射した。成功裡の移植は、皮下の球形の膨らんだ塊の形成を指標とした。一般的な健康および腫瘍の発達について、移植されたマウスを毎日モニタリングした。
【0235】
腫瘍は、移植後約2週間で検出可能であった。腫瘍サイズはカリパスを用いて測定した。以下の式:
腫瘍体積=(長さX幅2)/2
を用いて、腫瘍体積を計算した。
【0236】
腫瘍移植の4週間後、腫瘍は、300±126mm3の平均サイズに達した。許容可能な腫瘍サイズおよび形状を有する動物を、分類ソフトウェアを使用して、動物7匹ずつの3つの群(1つはビヒクル対照で2つは処理群)に無作為に割り当てた。
【0237】
【表7】
【0238】
化合物1を調製して、以下のように投与した:化合物1(7.5mg/ml)を、2モル当量のNaOHと共に30% Captisolに溶解し、2モル当量のHClでバランスを取り、月曜日から金曜日まで毎日、経口胃管栄養法により投与した。対照群には、100mg/kg容積(6.67ul/g)と同じ投与範例を使用して、ビヒクル(30% Captisol)を投与した。
【0239】
それぞれの動物試験の間、カリパスを用いて腫瘍を測定し、上述の式を使用して腫瘍サイズを測定し、腫瘍サイズ変化のパーセンテージを計算した。1週間当たり2回、体重計を用いてマウスの体重を測定した。試験は、a) 試験設計において予定の最終日が示されるか;またはb) 健康上の問題が生じるかのどちらかが最初に起こるまで継続した。また、以下の腫瘍関連パラメータにより、安楽死の提供を保証した:腫瘍負荷が2500mm3を超える、および/または開始体重の≧20%が減少する。腫瘍サイズ変化の決定に加えて、異種移植片腫瘍の評価のために国立癌研究所(NCI)により開発された標準測定基準である腫瘍重量変化比(T/C値)を作成するために最後の腫瘍測定値を使用した。以下の式:% T/C=100xΔT/ΔC(ΔT>0の場合)を使用してT/C値を計算した。しかしながら、腫瘍退縮が起こった場合は、以下の式:% T/T0=100xΔT/T0(ΔT<0の場合)を使用した。
【0240】
ビヒクルおよびCAL-101群についての処置期間は15日であり、腫瘍サイズが体重の10%を超えたためにより早い終結が必要となって、化合物1群については18日であった。研究の最終日に、腫瘍サイズおよび体重を再度測定した。
【0241】
試験の結果を、活性群および対照群についての処置時間に応じた腫瘍増殖を示す、図16に示す。化合物1群は、CAL-101および対照群と比較して、腫瘍増殖の有意な減少を示した。
【0242】
実施例21. Daudi異種移植片腫瘍モデルにおける化合物1およびシクロホスファミドの組み合わせ
6〜8週齢の雌SCIDベージュマウス(CD-1ベージュSCID)を、換気したマイクロ隔離ケージ中、調節された環境で収容し、滅菌高脂肪食(Problab-RMH 2000)を自由に摂取できるように与え、滅菌水を与えた。SCIDベージュマウスについての全ての収容物および供給物は、使い捨てであり、使用前に放射線照射したものをInnoviveから購入した。訓練を受けた動物施設職員および研究者が、週末/休日を含む毎日、マウスを検査した。全ての動物手順は、生体安全キャビネット(注射用)または薄流フード(動物管理手順および非侵襲性手順用)中、滅菌条件下で行った。
【0243】
Daudiヒトバーキットリンパ腫細胞は最初、ヒトバーキットリンパ腫患者から得られた。凍結保存された細胞を37℃の水浴で解凍し、組織培養インキュベーター中、5% CO2で、15%ウシ胎仔血清(FBS)、1% Penstrepおよび1% Glutamaxを足したRPMI-1640培地中で培養した。(PCRにより)マイコプラズマおよび/または(MAP試験、マウス抗体産生により)ウイルスによる汚染を除外することを目的とした病原菌スクリーニングのために、細胞を外部の業者に送った。培養中の細胞が所望の数に達した際に、該細胞を遠心分離して回収した。回収後、細胞を血清非含有Dulbecco’sリン酸緩衝食塩水(DPBS)で洗浄した。最終的に、移植のために細胞をDPBSに希釈した。90%より高い生存率の単一細胞懸濁物(トリパンブルー排除による)のみを注射に使用して、最低7日間の順化期間後、動物1匹あたり0.1mlのDPBSに懸濁した20,000,000個の細胞を、26Gの皮下注射用の針を有する0.5ccシリンジを使用して、注意して血管を避けながら、マウスの右後部脇腹領域に皮下注射した。成功裡の移植は、皮下の球形の膨らんだ塊の形成を指標とした。一般的な健康および腫瘍の発達について、移植されたマウスを毎日モニタリングした。
【0244】
腫瘍は、移植後約2週間で検出可能であった。腫瘍サイズはカリパスを用いて測定した。以下の式:
腫瘍体積=(長さX幅2)/2
を用いて、腫瘍体積を計算した。
【0245】
腫瘍移植の4週間後、腫瘍は、189±47mm3の平均サイズに達した。許容可能な腫瘍サイズおよび形状を有する動物を、分類ソフトウェアを使用して、動物8匹ずつの4つの群(1つはビヒクル対照、3つは処理群)に無作為に割り当てた。
【0246】
【表8】
【0247】
化合物1を調製して、以下のように投与した:化合物1(7.5mg/ml)を、2モル当量のNaOHと共に30% Captisolに溶解し、2モル当量のHClでバランスを取り、月曜日から金曜日まで毎日、75mg/kgで経口胃管栄養法により投与した。シクロホスファミド(「CTX」)を、5mg/mlで0.9% NSに溶解し、0日目に50mg/kgで動物にiv(尾静脈注射)投与した。組み合わせ群には、同じ投与スケジュールを使用して、化合物1とCTXの両方を投与した。対照群には、組み合わせと同じ範例を使用して、ビヒクル(30% Captisol)および0.9% NSを投与した。
【0248】
それぞれの動物試験の間、カリパスを用いて腫瘍を測定し、上述の式を使用して腫瘍サイズを測定し、腫瘍サイズ変化のパーセンテージを計算した。1週間当たり2回、体重計を用いてマウスの体重を測定した。試験は、a) 試験設計において予定の最終日が示されるか;またはb) 健康上の問題が生じるかのどちらかが最初に起こるまで継続した。また、以下の腫瘍関連パラメータにより、安楽死の提供を保証した:腫瘍負荷が2500mm3を超える、および/または開始体重の≧20%が減少する。腫瘍サイズ変化の決定に加えて、異種移植片腫瘍の評価のために国立癌研究所(NCI)により開発された標準測定基準である腫瘍重量変化比(T/C値)を作成するために最後の腫瘍測定値を使用した。以下の式:% T/C=100xΔT/ΔC(ΔT>0の場合)を使用してT/C値を計算した。しかしながら、腫瘍退縮が起こった場合は、以下の式:% T/T0=100xΔT/T0(ΔT<0の場合)を使用した。
【0249】
処置期間は2週間であった。試験の最終日に腫瘍サイズおよび体重を再度測定した。
【0250】
この試験の結果を、対照群および処置群についての処理時間に応じた腫瘍増殖を示す、図17に示す。単一薬剤として、化合物1とシクロホスファミドは、このモデルにおいて同様の活性を生じた(ave)。化合物1とシクロホスファミドの組み合わせは、どちらかの薬剤単独よりも実質的に高い効力を示した。
【0251】
実施例22. MM1S異種移植片モデルにおけるレナリドマイドと組み合わせた化合物1
4週齢の雌SCID/ベージュマウスを、換気したマイクロ隔離ケージ(INNOCAGE(登録商標)IVC, Innovive Inc., San Diego, CA)中、調節された環境で収容し、滅菌高脂肪食(Problab-RMH 2000)を自由に摂取できるように与え、滅菌水を与えた。SCID/ベージュマウスについての全ての収容物および供給物は、使用前にオートクレーブにより滅菌した。訓練を受けた動物施設職員および研究者が、週末/休日を含む毎日、マウスを検査した。全ての動物手順は、生体安全キャビネット(注射用)または薄流フード(動物管理手順および非侵襲性手順用)中、滅菌条件下で行った。
【0252】
凍結保存されたMM1SヒトMM細胞を37℃の水浴で解凍し、組織培養インキュベーター中、5% CO2で、10%ウシ胎仔血清(FBS)を足したRPMI培地中で培養した。(PCRにより)マイコプラズマおよび/または(MAP試験、マウス抗体産生により)ウイルスによる汚染を除外することを目的とした汚染およびげっ歯類病原菌スクリーニングのために、細胞を外部の業者に送った。培養中の細胞が移植に十分になった際に、細胞を血清非含有ハンクス平衡塩溶液(HBSS)で洗浄した。最終的に、移植のために細胞をHBSSに希釈した。90%より高い生存率の単一細胞懸濁物(トリパンブルー排除による)のみを注射に使用して、最低7日間の順化期間後、動物1匹あたり0.2mlのHBSSに懸濁した20,000,000個の細胞を、26Gの皮下注射用の針を有する1ccシリンジを使用して、注意して血管を避けながら、マウスの右後部脇腹領域に皮下注射した。成功裡の移植は、皮下の球形の膨らんだ塊の形成を指標とした。一般的な健康および腫瘍の発達について、移植されたマウスを毎日モニタリングした。
【0253】
腫瘍は、移植後約2週間で検出可能であった。腫瘍サイズはカリパスを用いて測定した。以下の式:
腫瘍体積=(長さX幅2)/2
を用いて、腫瘍体積を計算した。
【0254】
腫瘍移植の3週間後、腫瘍は192±32mm3の平均サイズに達した。許容可能な腫瘍サイズおよび形状を有する動物を、分類ソフトウェアを使用して、動物7匹ずつの6つの群(1つはビヒクル対照、6つは処置群)に無作為に割り当てた。
【0255】
【表9】
【0256】
化合物1を製剤化して、以下のように投与した:化合物1(7.5mg/ml)を、2モル当量のNaOHと共に30% Captisolに溶解し、2モル当量のHClでバランスを取り、月曜日から金曜日まで毎日、75mg/kgで経口胃管栄養法により投与した。レナリドマイド(Selleck, 2.5mg/ml)を、MCT(0.5% メチルセルロースおよび0.2% Tween80)中に製剤化して、12.5mg/kgまたは25mg/kgで投与した。2つの組合せ群には、75mg/kgの化合物1および1回用量レベルのレナリドマイド(12.5または25mg/kgのいずれか)を投与した。対照群には、組み合わせについてのものと同じ模範を使用して、ビヒクル(30% Captisol)およびMCTを投与した。
【0257】
それぞれの動物試験の間、カリパスを用いて腫瘍を測定し、上述の式を使用して腫瘍サイズを測定し、腫瘍サイズ変化のパーセンテージを計算した。1週間当たり2回、体重計を用いてマウスの体重を測定した。試験は、a) 研究設計において予定の最終日が示されるか;またはb) 健康上の問題が生じるかのどちらかが最初に起こるまで継続した。また、以下の腫瘍関連パラメータにより、安楽死の提供を保証した:(1)腫瘍負荷が2500mm3を超える、および/または(2)開始体重の≧20%が減少する。腫瘍サイズ変化の決定に加えて、異種移植片腫瘍の評価のために国立癌研究所(NCI)により開発された標準測定基準である腫瘍重量変化比(T/C値)を作成するために最後の腫瘍測定値を使用した。以下の式:% T/C=100xΔT/ΔC(ΔT>0の場合)を使用してT/C値を計算した。しかしながら、腫瘍退縮が起こった場合は、以下の式:% T/T0=100xΔT/T0(ΔT<0の場合)を使用した。
【0258】
処置期間は17日であった。研究の最終日に、腫瘍サイズおよび体重を再度測定した。
【0259】
この研究の結果を、処置時間に応じた腫瘍増殖を示す、図18に示す。該結果は、75mg/Kg POの化合物1は、単一薬剤として、12.5または25mg/Kg POのいずれのレナリドマイドよりも効果的であることを示す。該結果はまた、化合物1とレナリドマイドの組み合わせは、どちらかの化合物単独よりも有意に効果的であることを示す。
【0260】
本明細書に言及される特許および科学文献は当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書に引用される全ての米国特許および公開または未公開米国特許出願は、参照によって援用される。本明細書に引用される全ての公開外国特許および特許出願は、参照によって本明細書に援用される。本明細書に引用される全ての他の公開文献、文書、論文および科学文献は、参照によって本明細書に援用される。
【0261】
本発明は、その好ましい態様に関して具体的に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、本発明中に形態および詳細における種々の変更がなされ得ることを当業者は理解しよう。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
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図10
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図18