(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓋部材の周縁には、周方向に間隔を空けて複数の凹部が形成されており、前記第1欠損部に面する前記周縁に形成されている前記凹部の数は、前記第2欠損部に面する前記周縁に形成されている前記凹部の数よりも多いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のハウジング。
前記第1欠損部および前記第2欠損部のうちの少なくとも一方は、三角形状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のハウジング。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的にハウジングは、マスタシリンダ装置とともにレイアウトの制約の大きいエンジンルーム内に配置される。このため、エンジンルーム内の構造物や周辺機器とのクリアランスを確保する必要から、さらなる省スペース化を図りたいという要請がある。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、省スペース化を図ることができ、周辺の構造物や周辺機器とのクリアランスを好適に確保することができるハウジングおよびマスタシリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために創案された本発明のハウジングは、車両に搭載される基体の一面に組み付けられるハウジングであって、前記基体の一面に圧着されるフランジ部から立設され、前記基体に備わる部品を囲繞する周壁部と、前記基体の一面の側方において、前記周壁部の開口に装着される蓋部材と、を備え、前記蓋部材は、2組の対向する2辺で形成される四角形に内接する外形を有するとともに、前記四角形の2組の対角のうちの一方の対角を同じ大きさで欠損させてなる一対の第1欠損部、および他方の対角を同じ大きさで欠損させてなる一対の第2欠損部を有しており、前記蓋部材の外形が前記開口の中心に対して点対称形状に形成されてなり、前記第1欠損部は、前記第2欠損部よりも面積が大きくなっており、一対の
前記第1欠損部の一方が前記基体の車両搭載時における車両前進方向でかつ鉛直方向下部に配置されており、前記周壁部の開口縁は、前記蓋部材の外形に対応した形状とされており、前記第1欠損部に対応する第1傾斜縁部と、前記第2欠損部に対応する第2傾斜縁部とを備えており、前記周壁部の鉛直方向下部は、開口に近い側に段部を有し、前記段部により内側にオフセットされた形状とされて
おり、前記基体は、前記車両に設けられたブレーキ操作子の操作が入力されるマスタシリンダ装置に備わることを特徴とする。
ここで、部品としては、電磁弁や圧力センサ、電磁弁を制御する制御装置(電子制御ユニット)、機械部品等が挙げられる。
【0008】
本発明のハウジングによれば、第1欠損部は第2欠損部よりも面積が大きくなっているので、その分、省スペース化を図ることができる。一対の第1欠損部の一方が基体の車両搭載時における車両前進方向でかつ鉛直方向下部に配置されるので、例えば、エンジンルーム内において、第1欠損部の下方にクリアランスを確保しつつ周辺の構造物や周辺機器に近付けてハウジング(蓋部材)を配置することができる。これにより、エンジンルーム内のレイアウトの自由度を高めることができる。
また、蓋部材の外形が周壁部の開口の中心に対して点対称形状に形成されているので、第1欠損部と第2欠損部とで面積が異なっていても、蓋部材の組付時に方向性を生じることがなく、蓋部材の組付性がよい。
また、本発明のハウジングは、前記基体が、前記車両に設けられたブレーキ操作子の操作が入力されるマスタシリンダ装置に備わるので、エンジンルーム内のレイアウトの自由度を高めることができる。
つまり、エンジンルーム内には、構造物として、ブレーキ関係の装置だけではなく、駆動源(エンジンおよび/または走行モータ)、トランスミッション、ラジエータ等の冷却系、低圧バッテリなど各種の装置が搭載されるため、必然的に大きな空スペース(設置スペース)を確保することが難しくなる。しかし、本発明のようにマスタシリンダ装置に備わるハウジングの省スペース化が図られているので、狭くてレイアウトの制約の大きいエンジンルーム内において、クリアランスを確保しつつ周辺の構造物や周辺機器に近付けてハウジングを配置することができ、マスタシリンダ装置を好適に配置することができる。
【0009】
また、本発明のハウジングは、ネジ挿通孔が形成された複数のボス部を備え、前記ネジ挿通孔の少なくとも一部が、前記第1欠損部および前記第2欠損部のうちの少なくとも1つに配置されていることを特徴とする。
【0010】
このハウジングによれば、ネジ挿通孔をハウジングに近付けて設けることができる。これにより省スペース化を図ることができる。また、ネジ挿通孔をハウジングに近付けて設けることができるので、ボス部の突出量を小さくすることができ、基体の小型化も図れる。
【0011】
また、本発明のハウジングは、前記周壁部には複数のコネクタ部が突設されており、前記コネクタ部のそれぞれの中心軸線が前記辺のうちのいずれか1辺に対して直交するように配置されていることを特徴とする。
【0012】
このハウジングによれば、複数のコネクタ部が、四角形の辺のうちのいずれか1辺に対してまとめて設けられているので、第1欠損部および第2欠損部に複数のコネクタ部が干渉しにくくなり、第1欠損部および第2欠損部により形成されるスペースを有効に利用することができる。また、複数のコネクタ部が、辺のうちのいずれか1辺に対してまとめて設けられているので、複数のコネクタ部に対するソケットの着脱も行い易い。
【0013】
また、本発明のハウジングは、前記コネクタ部は前記周壁部から2つ突設されており、2つの前記コネクタ部は、前記基体の車両搭載時における車両前進方向でかつ鉛直方向下部に配置される前記第1欠損部と、鉛直方向上部に配置される前記第2欠損部と、の間において前記基体の車両搭載時における車両前進方向へ突設されており、前記第1欠損部に近い側に設けられる一方の前記コネクタ部は、他方の前記コネクタ部よりも前記周壁部からの突出量が小さいことを特徴とする。
【0014】
このハウジングによれば、2つのコネクタ部のうちの小さい方のコネクタ部が欠損量の大きい第1欠損部の近くに配置されるので、第1欠損部およびその周辺に空きスペースを確保し易くなり、例えばエンジンルーム内の構造物や周辺機器にハウジングを近付けて配置することができる。したがって、エンジンルーム内のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0015】
また、本発明のハウジングは、前記蓋部材の周縁には、周方向に間隔を空けて複数の凹部が形成されており、前記第1欠損部に面する前記周縁に形成されている前記凹部の数は、前記第2欠損部に面する前記周縁に形成されている前記凹部の数よりも多いことを特徴とする。
【0016】
このハウジングによれば、例えば、溶着等による蓋部材の固着時に、蓋部材の周縁に反りや歪みが生じるのを防止することができる。特に、第1欠損部および第2欠損部において反りや歪みが生じるのを好適に防止することができ、蓋部材の密閉性を高めることができる。また、凹部により蓋部材の周縁の肉抜きを図ることもできる。
【0017】
また、本発明のハウジングは、前記第1欠損部および前記第2欠損部のうちの少なくとも一方は、三角形状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
このハウジングによれば、欠損部に面する周縁が直線状となるので、欠損部に面する周縁が曲線状に膨出するように形成されている場合に比べて、欠損部の面積が大きくなり、その分、省スペース化を図ることができる。
【0021】
また、本発明のマスタシリンダ装置は、マスタシリンダの一部がエンジンルームに配置され、前記エンジンルームに配置された前記マスタシリンダに部品を収容するハウジングを設け、前記ハウジングは、
車両に搭載される基体の一面に圧着されるフランジ部から立設され、前記基体に備わる部品を囲繞する周壁部と、前記周壁部の開口に装着される蓋部材と、を備え、前記蓋部材は、2組の対向する2辺で形成される四角形に内接する外形を有するとともに、前記四角形の2組の対角のうちの一方の対角を同じ大きさで欠損させてなる一対の第1欠損部、および他方の対角を同じ大きさで欠損させてなる一対の第2欠損部を有しており、前記蓋部材の外形が前記開口の中心に対して点対称形状に形成されてなり、前記第1欠損部は、前記第2欠損部よりも面積が大きくなっており、一対の
前記第1欠損部の一方が前記基体の車両搭載時における車両前進方向でかつ鉛直方向下部に配置されており、前記周壁部の開口縁は、前記蓋部材の外形に対応した形状とされており、前記第1欠損部に対応する第1傾斜縁部と、前記第2欠損部に対応する第2傾斜縁部とを備えており、前記周壁部の鉛直方向下部は、開口に近い側に段部を有し、前記段部により内側にオフセットされた形状とされていることを特徴とする。
【0022】
このマスタシリンダ装置によれば、エンジンルーム内のレイアウトの自由度を高めることができる。
つまり、マスタシリンダ装置に備わるハウジングの省スペース化が図られているので、狭くてレイアウトの制約の大きいエンジンルーム内において、クリアランスを確保しつつ周辺の構造物や周辺機器に近付けてハウジングを配置することができ、マスタシリンダ装置を好適に配置することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、省スペース化を図ることができ、周辺の構造物や周辺機器とのクリアランスを好適に確保することができるハウジングおよびマスタシリンダ装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す車両用ブレーキシステムAは、原動機(エンジンやモータ等)の起動時に作動するバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、非常時や原動機の停止時などに作動する油圧式のブレーキシステムの双方を備えるものであり、ブレーキペダル(ブレーキ操作子)Pの踏力によってブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ装置A1と、電動モータ(図示略)を利用してブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置A2と、車両挙動の安定化を支援するビークルスタビリティアシスト装置A3(以下「液圧制御装置A3」という。)と、を備えている。マスタシリンダ装置A1、モータシリンダ装置A2および液圧制御装置A3は、別ユニットとして構成されており、外部配管を介して連通している。
【0026】
車両用ブレーキシステムAは、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車のほか、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車などにも搭載することができる。
【0027】
マスタシリンダ装置A1は、タンデム式のマスタシリンダ1と、ストロークシミュレータ2と、リザーバ3と、常開型遮断弁(電磁弁)4,5と、常閉型遮断弁(電磁弁)6と、圧力センサ7,8と、メイン液圧路9a,9bと、連絡液圧路9c,9dと、分岐液圧路9eとを備えている。
【0028】
マスタシリンダ1は、ブレーキペダルPの踏力をブレーキ液圧に変換するものであり、第一シリンダ穴11aの底壁側に配置された第一ピストン1aと、プッシュロッドRに接続された第二ピストン1bと、第一ピストン1aと第一シリンダ穴11aの底壁との間に配置された第一リターンスプリング1cと両ピストン1a,1bの間に配置された第二リターンスプリング1dとを備えている。第二ピストン1bは、プッシュロッドRを介してブレーキペダルPに連結されている。両ピストン1a,1bは、ブレーキペダルPの踏力を受けて摺動し、圧力室1e,1f内のブレーキ液を加圧する。圧力室1e,1fは、メイン液圧路9a,9bに通じている。
【0029】
ストロークシミュレータ2は、擬似的な操作反力を発生させるものであり、第二シリンダ穴11b内を摺動するピストン2aと、ピストン2aを付勢する大小二つのリターンスプリング2b,2cとを備えている。ストロークシミュレータ2は、メイン液圧路9aおよび分岐液圧路9eを介して圧力室1eに通じており、圧力室1eで発生したブレーキ液圧によって作動する。
【0030】
リザーバ3は、ブレーキ液を貯溜する容器であり、マスタシリンダ1に接続される給油口3a,3bと、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される管接続口3cと、を備えている。
【0031】
常開型遮断弁4,5は、メイン液圧路9a,9bを開閉するものであり、いずれもノーマルオープンタイプの電磁弁からなる。一方の常開型遮断弁4は、メイン液圧路9aと分岐液圧路9eとの交差点からメイン液圧路9aと連絡液圧路9cとの交差点に至る区間においてメイン液圧路9aを開閉する。他方の常開型遮断弁5は、メイン液圧路9bと連絡液圧路9dとの交差点よりも上流側においてメイン液圧路9bを開閉する。
【0032】
常閉型遮断弁6は、分岐液圧路9eを開閉するものであり、ノーマルクローズタイプの電磁弁からなる。
【0033】
圧力センサ7,8は、ブレーキ液圧の大きさを検知するものであり、メイン液圧路9a,9bに通じるセンサ装着穴(図示略)に装着されている。一方の圧力センサ7は、常開型遮断弁4よりも下流側に配置されており、常開型遮断弁4が閉じられた状態(=メイン液圧路9aが遮断された状態)にあるときに、モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧を検知する。他方の圧力センサ8は、常開型遮断弁5よりも上流側に配置されており、常開型遮断弁5が閉じられた状態(=メイン液圧路9bが遮断された状態)にあるときに、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧を検知する。圧力センサ7,8で取得された情報は、図示せぬ電子制御ユニット(ECU)に出力される。
【0034】
メイン液圧路9a,9bは、マスタシリンダ1を起点とする液圧路である。メイン液圧路9a,9bの終点である出力ポート15a,15bには、液圧制御装置A3に至る管材Ha,Hbが接続されている。
【0035】
連絡液圧路9c,9dは、入力ポート15c,15dからメイン液圧路9a,9bに至る液圧路である。入力ポート15c,15dには、モータシリンダ装置A2に至る管材Hc,Hdが接続されている。
【0036】
分岐液圧路9eは、一方のメイン液圧路9aから分岐し、ストロークシミュレータ2に至る液圧路である。
【0037】
マスタシリンダ装置A1は、管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に連通しており、常開型遮断弁4,5が開弁状態にあるときにマスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、メイン液圧路9a,9bおよび管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に入力される。
【0038】
モータシリンダ装置A2は、図示は省略するが、スレーブシリンダ内を摺動するスレーブピストンと、電動モータおよび駆動力伝達部を有するアクチュエータ機構と、スレーブシリンダ内にブレーキ液を貯溜するリザーバとを備えている。
電動モータは、図示せぬ電子制御ユニットからの信号に基づいて作動する。駆動力伝達部は、電動モータの回転動力を進退運動に変換したうえでスレーブピストンに伝達する。スレーブピストンは、電動モータの駆動力を受けてスレーブシリンダ内を摺動し、スレーブシリンダ内のブレーキ液を加圧する。
モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧は、管材Hc,Hdを介してマスタシリンダ装置A1に入力され、連絡液圧路9c,9dおよび管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に入力される。リザーバには、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される。
【0039】
液圧制御装置A3は、車輪のスリップを抑制するアンチロックブレーキ制御(ABS制御)、車両の挙動を安定化させる横滑り制御やトラクション制御などを実行し得るような構成を具備しており、管材を介してホイールシリンダW,W,…に接続されている。なお、図示は省略するが、液圧制御装置A3は、電磁弁やポンプ等が設けられた液圧ユニット、ポンプを駆動するためのモータ、電磁弁やモータ等を制御するための電子制御ユニットなどを備えている。
【0040】
次に車両用ブレーキシステムAの動作について概略説明する。
車両用ブレーキシステムAが正常に機能する正常時には、常開型遮断弁4,5が弁閉状態となり、常閉型遮断弁6が弁開状態となる。かかる状態でブレーキペダルPを操作すると、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダWに伝達されずにストロークシミュレータ2に伝達され、ピストン2aが変位することにより、ブレーキペダルPのストロークが許容されるとともに、擬似的な操作反力がブレーキペダルPに付与される。
【0041】
また、図示しないストロークセンサ等によってブレーキペダルPの踏み込みが検知されると、モータシリンダ装置A2の電動モータが駆動され、スレーブピストンが変位することによりシリンダ内のブレーキ液が加圧される。
図示せぬ電子制御ユニットは、モータシリンダ装置A2から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ7で検知されたブレーキ液圧)とマスタシリンダ1から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ8で検知されたブレーキ液圧)とを対比し、その対比結果に基づいて電動モータの回転数等を制御する。
【0042】
モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧は、液圧制御装置A3を介してホイールシリンダW,W,…に伝達され、各ホイールシリンダWが作動することにより各車輪に制動力が付与される。
【0043】
なお、モータシリンダ装置A2が作動しない状況(例えば、電力が得られない場合や非常時など)においては、常開型遮断弁4,5がいずれも弁開状態となり、常閉型遮断弁6が弁閉状態となるので、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダW,W,…に伝達されるようになる。
【0044】
次に、マスタシリンダ装置A1の具体的な構造を説明する。
本実施形態のマスタシリンダ装置A1は、
図2(a)(b)の基体10の内部あるいは外部に前記の各種部品を組み付けるとともに、電気によって作動する電気部品(常開型遮断弁4,5、常閉型遮断弁6および圧力センサ7,8(
図1参照)をハウジング20で覆うことによって形成されている。なお、ハウジング20内には、機械部品等が収納されてもよい。
【0045】
基体10は、アルミニウム合金製の鋳造品であり、シリンダ部11(
図2(b)参照、以下同じ)と、車体固定部12と、リザーバ取付部13(
図2(b)参照、以下同じ)と、ハウジング取付部14と、配管接続部15とを備えている。また、基体10の内部には、メイン液圧路9a,9bや分岐液圧路9eとなる孔(図示略)などが形成されている。
【0046】
シリンダ部11には、マスタシリンダ用の第一シリンダ穴11aと、ストロークシミュレータ用の第二シリンダ穴11b(いずれも
図2(b)に破線で図示)とが形成されている。両シリンダ穴11a,11bは、いずれも有底円筒状であり、車体固定部12に開口するとともに、配管接続部15に向けて延在している。第一シリンダ穴11aには、マスタシリンダ1(
図1参照)を構成する部品(第一ピストン1a、第二ピストン1b、第一リターンスプリング1cおよび第二リターンスプリング1d)が挿入され、第二シリンダ穴11bには、ストロークシミュレータ2を構成する部品(ピストン2aおよびリターンスプリング2b,2c)が挿入される。
【0047】
車体固定部12は、トーボード50(
図8(a)参照)などの車体側固定部位に固定される。車体固定部12は、基体10の後面部に形成されており、フランジ状を呈している。車体固定部12の周縁部(シリンダ部11から張り出した部分)には、図示しないボルト挿通孔が形成され、ボルト12aが固定されている。
【0048】
図2(b)に示すように、リザーバ取付部13は、リザーバ3の取付座となる部位であり、基体10の上面部に2つ(一方のみ図示)形成されている。リザーバ取付部13には、リザーバユニオンポートが設けられている。なお、リザーバ3は、基体10の上面に突設された図示しない連結部を介して基体10に固定されている。
リザーバユニオンポートは、円筒状を呈しており、その底面から第一シリンダ穴11aに向かって延びる孔を介して第一シリンダ穴11aと連通している。リザーバユニオンポートには、リザーバ3の下部に突設された図示しない給液口が接続され、リザーバユニオンポートの上端には、リザーバ3の容器本体が載置される。
【0049】
基体10の側面には、ハウジング取付部14が設けられている。ハウジング取付部14は、ハウジング20の取付座となる部位である。ハウジング取付部14は、フランジ状を呈している。ハウジング取付部14の上端部および下端部には、図示しない雌ネジが形成されており、この雌ネジに、
図2(a)に示すように、取付ネジ16を螺合させることで、ハウジング20がハウジング取付部14(基体10の側面)に固定されるようになっている。
【0050】
図示は省略するが、ハウジング取付部14には、三つの弁装着穴と二つのセンサ装着穴とが形成されている。三つの弁装着穴には、常開型遮断弁4,5および常閉型遮断弁6(
図1参照)が組み付けられ、二つのセンサ装着穴には、圧力センサ7,8(
図1参照)が組み付けられる。
【0051】
配管接続部15は、管取付座となる部位であり、
図2(a)に示すように、基体10の前面部に形成されている。配管接続部15には、
図2(b)に示すように、二つの出力ポート15a,15bと、二つの入力ポート15c,15dが形成されている。出力ポート15a,15bには、液圧制御装置A3に至る管材Ha,Hb(
図1参照)が接続され、入力ポート15c,15dには、モータシリンダ装置A2に至る管材Hc,Hd(
図1参照)が接続される。
【0052】
ハウジング20は、ハウジング取付部14に組み付けられた部品(常開型遮断弁4,5、常閉型遮断弁6および圧力センサ7,8、
図1参照、以下同じ)を液密に覆うハウジング本体21と、基体10の側面の側方において、ハウジング本体21の開口21a(
図3参照)に装着される蓋部材30とを有している。
ハウジング本体21は、
図3に示すように、フランジ部22と、フランジ部22に立設された周壁部23と、周壁部23の周壁面から突設されたコネクタ部としての2つのコネクタ24,25と、を有している。
【0053】
ハウジング本体21の周壁部23の内側には、図示は省略するが、常開型遮断弁4,5および常閉型遮断弁6を駆動するための電磁コイルが収容されているほか、電磁コイルや圧力センサ7,8に至るバスバーなどが収容されている。
【0054】
フランジ部22は、ハウジング取付部14(
図2(b)参照、以下同じ)に圧着される部位である。フランジ部22は、
図5(a)に示すように、取付ネジ部としてのボス部22a〜22dに連続するようにして、ハウジング本体21の外側へ張り出すように形成されている。
【0055】
各ボス部22a〜22dは、ハウジング取付部14の雌ネジの位置に合わせてハウジング本体21の四隅に設けられている。各ボス部22a〜22dには、金属製のカラーが埋設されており、その内側に、挿通孔として機能するネジ挿通孔27(ネジ孔)が形成されている。ネジ挿通孔27には、締結部材としての取付ネジ16(
図2(a)参照、以下同じ)がそれぞれ挿通される。基体10(
図2(a)参照)のハウジング取付部14にハウジング20を固着する際には、各取付ネジ16を均等に締め付けることによって行うことができる。
【0056】
図5(a)に示すように、フランジ部22のうち、ボス部22bに連続するフランジ部22b1は、下面が傾斜状とされている。このフランジ部22b1の傾斜は、周壁部23の後記する第1傾斜縁部232の傾斜に対応したものとなっている。これによって、省スペース化が図られている。
【0057】
なお、フランジ部22のハウジング取付部14に対向する面には、図示しない周溝が形成されており、この周溝には、合成ゴム性のシール部材が装着される。このシール部材は、取付ネジ16の締め付けによりハウジング取付部14に密着してハウジング本体21の液密性を保持する役割をなす。
【0058】
周壁部23の外周面には、
図5(a)に示すように、適所にリブ23aが設けられている。リブ23aは、
図5(b)に示すように、周壁部23からフランジ部22に亘って形成されている。
【0059】
周壁部23の内側には、
図3,
図5(a)に示すように、隔壁26が形成されている。隔壁26には、
図5(a)に示すように、圧力センサ7,8が接続されるセンサ接続孔261やコイル接続孔263、さらには電磁弁挿通孔(常開型遮断弁4,5や常閉型遮断弁6の挿通孔)265が開口形成されている。センサ接続孔261およびコイル接続孔263には、ターミナル262,264が配置されている。
【0060】
図3に示すように、周壁部23の開口縁234には、蓋部材30が取り付けられる。蓋部材30は、接着剤、超音波溶着等の接着手段によって開口縁234に固着される。
開口縁234は、蓋部材30の外形に対応した形状とされている。
【0061】
蓋部材30は、
図4(a)に示すように、外形が八角形状とされており、周壁部23の開口21a(
図5(a)参照)の中心に対応する中心Oに対して、点対称形状に形成されている。
蓋部材30は、2組の対向する2辺で形成される四角形(一点鎖線で図示した長方形)に内接する外形を有している。蓋部材30は、この四角形の2組の対角のうちの一方の対角を同じ大きさで欠損させてなる一対の第1欠損部32,32、および他方の対角を同じ大きさで欠損させてなる一対の第2欠損部33,33を有している。第1欠損部32,32および第2欠損部33,33は、ともに三角形状を呈している。
【0062】
蓋部材30は、前記四角形の辺に沿う直線縁301と、第1欠損部32,32に面している第1傾斜縁302,302と、第2欠損部33,33に面している第2傾斜縁303,303と、を備えている。
【0063】
直線縁301は、前記四角形の4辺に対応して4つ形成されており、長さがともに等しい。直線縁301は、対向する2辺が平行となっている。
第1傾斜縁302,302は、隣接する直線縁301,301同士を繋いでおり、互いに平行である。第2傾斜縁303,303は、隣接する直線縁301,301同士を繋いでおり、互いに平行である。
【0064】
第1欠損部32,32は、第2欠損部33,33よりも面積(欠損量)が大きくなっており、
図2(a)に示すように、基体10の側方において、一方の第1欠損部32が基体10の前側下部(基体の車両搭載時における車両前進方向でかつ鉛直方向下部、以下同じ)に位置し、他方の第1欠損部32が基体10の後側上部に位置するように配置されている。
なお、第1欠損部32(第1傾斜縁302)、第2欠損部33(第2傾斜縁303)の辺の長さは、第1欠損部32(第1傾斜縁302)の方が長くなっており、第1欠損部32は、第2欠損部33よりも面積(欠損量)が大きくなっている。
ここで、後記するようにマスタシリンダ装置A1は、
図8(a)に示すように、エンジンルームER内において基体10の前側を車両の前側へ向けて搭載されるようになっており、これにより、一方の第1傾斜縁302は、基体10の前側下部に形成されるようになっている。つまり、一方の第1傾斜縁302は、エンジンルームER内において、構造物や周辺機器Mが存在し易いスペースに向けて配置されるようになっている。
【0065】
第2欠損部33,33は、第1欠損部32,32よりも面積(欠損量)が小さくなっており、
図2(a)に示すように、基体10の側方において、一方の第2欠損部33が基体10の前側上部(基体の車両搭載時における車両前進方向でかつ鉛直方向上部、以下同じ)に位置し、他方の第2欠損部33が基体10の後側下部に位置するように配置されている。前側上部の第2欠損部33には、側面視でボス部22aのネジ挿通孔27の一部が位置している。つまり、ネジ挿通孔27は、一方の第2欠損部33を利用して第2傾斜縁303(周壁部23)に近付けて形成されている。
なお、前側上部の第2欠損部33にネジ挿通孔27の中心が位置することが望ましく、さらに望ましくは、ネジ挿通孔27の全体が第2欠損部33に位置するとよい。
【0066】
なお、
図2(a)に示すように、前側下部の第1欠損部32には、側面視でボス部22bのネジ挿通孔27の全体が位置している。
【0067】
蓋部材30の表面の周縁には、
図4(a)に示すように、周方向に間隔を空けて複数の凹部30bが形成されている。
ここで、1つの第1傾斜縁302に形成されている凹部30bの数は2個であり、また、1つの第2傾斜縁303に形成されている凹部30bの数は1個である。つまり、第1欠損部32に面する周縁に設けられる凹部30bの数は、第2欠損部33に面する周縁に設けられる凹部30bの数よりも多くなっている。
なお、4つの直線縁301には、それぞれ4個の凹部30bが設けられている。
【0068】
蓋部材30の周縁の内側には、周溝30cが形成されている。なお、周溝30cと各凹部30bとは溝が連通している。
また、蓋部材30の裏面における周縁の内側には、
図4(b)に示すように、周縁部に沿う溶着部34が膨出形成されている。溶着部34の内側には、周溝30eが形成されている。
【0069】
図3,
図5(a)に示すように、ハウジング本体21の周壁部23の開口縁234は、前記した蓋部材30の外形に対応した形状とされており、4つの直線縁部231と、隣接する直線縁部231,231同士を繋ぐ第1傾斜縁部232,232および第2傾斜縁部233,233と、を有している。
4つの直線縁部231は、蓋部材30の直線縁301にそれぞれ対応しており、第1傾斜縁部232,232は、蓋部材30の第1傾斜縁302,302に対応しており、また、第2傾斜縁部233,233は、蓋部材30の第2傾斜縁303,303に対応している。
開口縁234は平らな面とされており、蓋部材30の裏面の溶着部34が当接して溶着される。なお、開口縁234の外周縁には、周リブ235が形成されている。
【0070】
このような周壁部23は、側面視でフランジ部22よりも内側に立設されており、
図7(b)に示すように、フランジ部22に近い側の断面形状が略正方形状とされている。また、
図5(a)に示すように、周壁部23は、開口21aに近い側に段部23cを有しており、この段部23cを境にして周壁部23の下部が内側にオフセットされた形状とされている。
これにより、フランジ部22に近い側において、コイル等の比較的大径の部品も周壁部23の内側に好適に収容することが可能となっている(
図7(b)参照)。また、開口21aに近い側において、周壁部23の下部が内側にオフセットされているので、周壁部23の下部周りの省スペース化を図ることができる。
【0071】
コネクタ24,25は、
図3,
図6(a)(b),
図7(a)に示すように、周壁部23の周方向に2つ並設されている。コネクタ24,25は、いずれも筒状であり、ハウジング本体21の前方に向けて周壁部23から一体的に突設されている。コネクタ24,25には、電磁コイルに通じる図示しないケーブルと、圧力センサ7,8に通じる図示しないケーブルとが接続されている。
【0072】
本実施形態では、
図5(a)に示すように、2つのコネクタ24,25のそれぞれの中心軸線X1,X2が、周壁部23の直線縁部231に直交するように配置されている。
そして、第1欠損部32(
図4(a)参照)に近い側(上下方向下側)に設けられる一方のコネクタ25は、他方のコネクタ24よりも周壁部23からの突出量が小さくなっている。
また、コネクタ25は、
図7(a)に示すように、前方から見た形状においても、コネクタ24より小さくなっている。
【0073】
リザーバ3は、給油口3a,3b(
図1参照)のほか、
図2(a)に示すように、管接続口3cと、図示しない連結フランジとを備えている。管接続口3cは、ブレーキ液を貯溜する容器本体3eから前方に向けて突出している。管接続口3cには、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される。連結フランジは、容器本体3eの下面に突設され、リザーバ取付部13(
図2(b)参照)に重ねられ、図示しないスプリングピンによって基体10の連結部に固定される。
【0074】
以上のようなハウジング20を備えるマスタシリンダ装置A1は、
図8(a)に示すように、車体固定部12から後方に向かって延出するボルト12aを介してトーボード50に固定される。この場合、車体固定部12から後方に延びるプッシュロッドRの一部は、トーボード50を貫通して車室C内に延在することとなる。
【0075】
そして、エンジンルームER内において、面積の大きい第1欠損部32,32のうちの1つの第1欠損部32が、基体10の前側下部に配置される。これにより、エンジンルームER内において、第1欠損部32の下方にクリアランスを確保しつつ周辺の構造物や周辺機器Mに近付けてハウジング20を配置することができる(
図8(a)(b)参照)。つまり、ハウジング20が周辺の構造物や周辺機器Mに対して邪魔にならない。
【0076】
また、メンテナンス時等において、トーボード50からマスタシリンダ装置A1を取り外す際に、第1欠損部32の傾斜(第1欠損部32により形成されるスペース)を利用してマスタシリンダ装置A1を取り外す操作を行うことも可能であり、メンテナンス性に優れる。
なお、構造物や周辺機器Mとしては、エンジンに備わる電動機やその他の構造物、例えば、ブレーキ関係の装置だけではなく、トランスミッション、ラジエータ等の冷却系、低圧バッテリなど各種の装置が挙げられる。このような構造物や周辺機器Mに対しても、ハウジング20を近付けて配置することができる。
【0077】
以上説明した本実施形態のハウジング20によれば、第1欠損部32,32は第2欠損部33,33よりも面積が大きくなっているので、その分、省スペース化を図ることができる。第1欠損部32,32のうちの一方が、基体10の前側下部に配置されるので、例えば、エンジンルームER内において、第1欠損部32の下方にクリアランスを確保しつつ周辺の構造物や周辺機器Mに近付けてハウジング20(蓋部材30)を配置することができる。これにより、エンジンルームER内のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0078】
また、蓋部材30の外形が周壁部23の開口21aの中心Oに対して点対称形状に形成されているので、第1欠損部32と第2欠損部33とで面積が異なっていても、蓋部材30の組付時に方向性を生じることがなく、蓋部材30の組付性がよい。
【0079】
また、ネジ挿通孔27をハウジング20(周壁部23)に近付けて設けることができる。これにより省スペース化を図ることができる。また、マスタシリンダ装置A1の基体10において、対応するネジの穴の位置を、基体10の内側に寄せることができる。これにより、基体10の小型化も図れる。
【0080】
また、2つのコネクタ24,25が、1つの直線縁部231に位置するようにまとめて設けられているので、第1欠損部32および第2欠損部33にコネクタ24,25が干渉しにくくなり、第1欠損部32および第2欠損部33により形成されるスペースを有効に利用することができる。また、2つのコネクタ24,25が、1つの直線縁部231に位置するようにまとめて設けられているので、コネクタ24,25に対するソケットの着脱も行い易い。
【0081】
また、2つのコネクタ24,25のうちの小さい方のコネクタ25が欠損量の大きい第1欠損部32の近くに配置されるので、第1欠損部32およびその周辺に空きスペースを確保し易くなり、例えばエンジンルームER内の構造物や周辺機器Mにハウジング20(蓋部材30)を近付けて配置することができる。したがって、エンジンルームER内のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0082】
また、蓋部材30の周縁には、凹部30bが設けられているので、溶着等による蓋部材30の固着時に、蓋部材30の周縁に反りや歪みが生じるのを防止することができる。また、凹部30bにより蓋部材30の周縁の肉抜きを図ることもできる。
また、第1欠損部32に形成されている凹部30bの数は、第2欠損部33,33に形成されている凹部30bの数よりも多いので、特に、第1欠損部32,32および第2欠損部33,33において反りや歪みが生じるのを好適に防止することができ、蓋部材30の密閉性を高めることができる。
【0083】
また、第1欠損部32,32および第2欠損部33,33は、三角形状に形成されているので、第1欠損部32、第2欠損部33に面する第1傾斜縁302、第2傾斜縁303が直線状となるので、欠損部に面する周縁が曲線状に膨出するように形成されている場合に比べて、欠損部の面積が大きくなり、その分、省スペース化を図ることができる。
【0084】
また、ハウジング20が、エンジンルームER内に設けられることの多いマスタシリンダ装置A1に備わるので、大きな空スペース(設置スペース)を確保することの難しいエンジンルームER内において、レイアウトの自由度を好適に高めることができる。
【0085】
前記実施形態では、第1欠損部32,32および第2欠損部33,33の全てを三角形状に形成したが、第1欠損部32,32のみを三角形状に形成してもよい。
【0086】
また、第1欠損部32に形成されている凹部30bの数は、第2欠損部33に形成されている凹部30bの数よりも多ければよく、その数は任意に設定することができる。
【0087】
前記実施形態では、マスタシリンダ装置A1に取り付けられるハウジング20について説明したが、これに限られることはなく、ブレーキ液圧制御装置を構成する基体に取り付けられるハウジングに対しても好適に適用することができる。