特許第6242340号(P6242340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242340積層フィルターカートリッジのための耐用期間終了指示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242340
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】積層フィルターカートリッジのための耐用期間終了指示システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20171127BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20171127BHJP
   F24F 3/16 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B01D53/04 110
   B01D53/02 100
   F24F3/16
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-547274(P2014-547274)
(86)(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公表番号】特表2015-505731(P2015-505731A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】US2012067703
(87)【国際公開番号】WO2013090052
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】61/569,342
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】フランケル, ケヴィン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ゼリンスキー, マリア エル.
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−255127(JP,A)
【文献】 特開2008−159281(JP,A)
【文献】 特表2008−519173(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0015023(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0083896(US,A1)
【文献】 特開昭59−066324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00−53/96
B01D 46/00−46/54
F24F 3/16
A61L 9/00−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体媒体から汚染物質を除去することが可能なフィルターカートリッジであって、
気体入口と、
フィルター媒体と、
気体出口と、を備える封止されたカートリッジハウジングを具備し、
前記フィルター媒体が、
標的有機蒸気を吸着する第1吸着層と、
前記第1吸着層よりも前記気体出口に近接する、前記標的有機蒸気を吸着する第2吸着層と、
検出要素であって、前記検出要素の指示要素が前記第1吸着層と前記第2吸着層との間の境界面に位置するように、前記第1及び第2吸着層に隣接する、検出要素と、を含む多層構造を有し、
前記検出要素が、前記標的有機蒸気を検出する、
フィルターカートリッジ。
【請求項2】
前記第1吸着層についての吸着係数Aに対する、前記第2吸着層についての吸着係数Aの比が、A/A>1であるように構成されており、それぞれの吸着層についての吸着係数が、式:
A=k×SL
(式中、A=前記標的有機蒸気に対する吸着係数であり、
前記標的有機蒸気に対する有効吸着速度係数(分−1)であり、
SL=耐用期間(分)、標準温度及び圧力において前記標的有機蒸気が1%突破に到達するのに要する時間である)、から決定される、請求項1に記載のフィルターカートリッジ。
【請求項3】
前記第1吸着層が活性炭を含み、前記第2吸着層が異なる活性炭を含む、請求項1に記載のフィルターカートリッジ。
【請求項4】
気体から汚染物質を濾過する方法であって、
フィルターカートリッジを提供する工程であって、前記フィルターカートリッジが、
気体入口と、
フィルター媒体と、
気体出口と、を備える封止されたカートリッジハウジングを具備し、
前記フィルター媒体が、
標的有機蒸気を吸着する第1吸着層と、
前記第1吸着層よりも前記気体出口に近接する、前記標的有機蒸気を吸着する第2吸着層と、
検出要素であって、前記検出要素の指示要素が前記第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に位置するように、前記第1及び第2の吸着層に隣接する、検出要素と、を含む多層構造を有する、工程、
気体を、前記フィルターカートリッジを通して流す工程、
前記検出要素中の検出応答を検知する工程、及び
前記フィルターカートリッジを取り換える工程、を備え、
前記検出要素が、前記標的有機蒸気を検出する、方法。
【請求項5】
前記フィルターカートリッジは、前記第1吸着層についての吸着係数Aに対する、前記第2吸着層についての吸着係数Aの比が、A/A>1であるように構成されており、それぞれの吸着層についての吸着係数が、式:
A=k×SL
(式中、A=前記標的有機蒸気に対する吸着係数であり、
前記標的有機蒸気に対する有効吸着速度係数(分−1)であり、
SL=耐用期間(分)、標準温度及び圧力において前記標的有機蒸気が1%突破に到達するのに要する時間である)から決定される、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、フィルターカートリッジを用いて気体から汚染物質を濾過するための方法と、該フィルターカートリッジの有効期間の終了を決定するための耐用期間終了インジケータとに関する。
【背景技術】
【0002】
有害な空気汚染物質から人々を保護するために様々な空気清浄機が開発されてきた。これらの空気清浄機には、空気中に存在する汚染物質を濾別又は収着するように設計された広範な空気清浄化レスピレーターがある。典型的には、これらの空気清浄化レスピレーターは、フィルター媒体、フィルター本体、又はフィルター媒体及びフィルター本体の一部の組み合わせを含む。レスピレーターの使用時、汚染物質は、フィルター本体により吸収されるか、又は付着又は捕捉されるようになる。最終的に、フィルター媒体又はフィルター本体は飽和し、レスピレーターの有害な空気汚染物質の除去能力は減少し始める。
【0003】
有害な空気汚染物質を含有する環境への長期の暴露、例えば、このような環境への連続的又は反復的な作業者暴露時には、レスピレーターの有用な耐用期間を決めるための方法が必要である。開発された1つの方法は、レスピレーターに対する使用時間に基づくものである。この技術においては、レスピレーター又は空気清浄化フィルターは、例えば、Woodら、the Journal of the American Industrial Hygiene Association、第55(1)巻、頁11〜15、(1994)のもの等の数学モデルに基づき、しかるべき期間の使用期間の後に取り換えられる。しかしながら、この方法は、レスピレーターを通った汚染物質の量又は流量の変動を考慮に入れず、それゆえレスピレーター又はフィルター要素の交換が早すぎる(無駄である)又は遅すぎる(使用者に危険をもたらすことがある)という結果を招き得る。
【0004】
異なる吸着材料の層又は混合物を含有するフィルターカートリッジの例としては、錘台形状の炭素ベッドと炭素ベッド内の異なる寸法の炭素粒子の積層配列とを含むガスマスクと共に使用するための円筒状キャニスターを開示する米国特許第5,660,173号(Newton)が挙げられる。米国特許第5,714,126号(Frund)は、含浸されていない活性炭の層、サルフェート、モリブデン、及び銅又は亜鉛で含浸された活性炭の層、並びにHEPAフィルターを含有するカートリッジを含む、毒物を濾過するためのレスピレーターフィルターシステムを記載する。米国特許第6,344,071号(Smithら)は、少なくとも2種類のフィルター媒体、遷移金属含浸剤を含有する第1の複数のフィルター媒体粒子と、第三級アミン含浸剤を含有する第2の複数のフィルター媒体粒子とを含む、フィルター媒体を記載する。
【0005】
広範な耐用期間終了インジケータ(ESLI)が、レスピレーターのフィルターカートリッジに伴う使用のために開発されている。概して、ESLIは受動的又は能動的として記載される。受動的ESLIは、インジケータにおける変化(色変化であることが多い)が、その検体に対する吸着剤が枯渇に近づいたときに、検体への暴露によって引き起こされるものである。能動的ESLIは、検体に関して気体流を観察して、吸着剤枯渇に起因する検体の検出に際して、警告信号を生成するための電子センサーを組み込んだものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
積層フィルター式カートリッジシステムのための耐用期間終了インジケータを本明細書に開示する。気体入口と、フィルター媒体と、気体出口と、を備える封止されたカートリッジハウジングを具備し、気体媒体から汚染物質を除去することが可能なフィルターカートリッジが含まれる。フィルター媒体が、第1吸着層と、第1吸着層よりも気体出口に近接する第2吸着層と、検出要素であって、該検出要素の指示要素が第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に位置するように、第1及び第2吸着層に隣接する、検出要素と、を含む多層構造を有する。幾つかの実施形態では、検出要素は電子検出要素であり、他の実施形態では、検出要素は比色検出要素である。幾つかの実施形態では、第2吸着層は、第1吸着層より高い吸着容量及び/又はより高い収着速度を有する。
【0007】
同様に、気体から汚染物質を濾過する方法も含まれる。これらの方法は、フィルターカートリッジを準備する工程と、気体を、フィルターカートリッジを通して流す工程と、検出要素中の検出応答を検知することと、フィルターカートリッジを取り換える工程と、を含む。フィルターカートリッジは、気体入口と、フィルター媒体と、気体出口とを含む封止されたカートリッジハウジングを備える。フィルター媒体は、第1吸着層と、第1吸着層よりも気体出口に近接する第2吸着層と、検出要素であって、該検出要素の指示要素が第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に位置するように、第1及び第2吸着層に隣接する、検出要素と、を含む多層構造を有する。幾つかの実施形態では、検出要素は電子検出要素であり、他の実施形態では、検出要素は比色検出要素である。幾つかの実施形態では、第2吸着層は、第1吸着層より高い収着容量及び/又はより高い収着速度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本出願は、添付図面と関連させて、本開示の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮すると、更に完全に理解できると思われる。
図1】本開示のフィルターカートリッジの実施形態の断面図を示す。
図2】本開示のフィルターカートリッジの実施形態の断面図を示す。
図3】本開示のフィルターカートリッジの実施形態の断面図を示す。
【0009】
以下の例示的実施形態の説明においては、本開示を実施することが可能な異なる実施形態を実例として示す添付図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく実施形態を利用することが可能であり、構造上の変更が行われうる点は理解されるべきである。図は必ずしも原寸に比例していない。図中、用いられる同様の番号は同様の構成要素を示すものとする。しかしながら、特定の図中のある要素を示す数字の使用は、同じ数字によって示される別の図中のその要素を限定しようとするものではないことは理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
有害な空気汚染物質から人々を保護するために様々な空気清浄機が開発されてきた。これらの空気清浄機には、空気中に存在する汚染物質を濾別又は収着するように設計された広範な空気清浄化レスピレーターがある。この吸着は、物理的又は化学的であり得る。これらの空気清浄機は、受動的であり得、これは使用者の呼吸がレスピレーターを通して空気を引き込むという意味であり、又は動力付であり得、これらはファン等の機械的デバイスがレスピレーターを通して空気を引き込むという意味である。典型的には、これらの空気清浄化レスピレーターは、フィルターカートリッジを利用する。概して、これらのフィルターカートリッジは、フィルター媒体、フィルター本体、又はフィルター媒体及びフィルター本体のいくつか組み合わせを含有する。レスピレーターの使用時、汚染物質は、フィルター本体により吸収されるか、又は付着又は捕捉されるようになる。最終的に、フィルター媒体又はフィルター本体は飽和し、レスピレーターの有害な空気汚染物質の除去能力は減少し始める。
【0011】
有害な空気汚染物質を含有する環境への長期の暴露、例えば、このような環境への連続的又は反復的な作業者暴露時には、レスピレーターの有用な耐用期間を決めるための方法が必要である。開発されている1つの技術は、Woodら、the Journal of the American Industrial Hygiene Association、第55(1)巻、頁11〜15、(1994)に記載されるように数学モデルを用いて、レスピレーターに関する使用時間を基準とする。この方法においては、レスピレーター又は空気清浄化フィルターは、しかるべき使用期間の後取り換えられる。しかしながら、この方法は、レスピレーターを通った汚染物質の量又は流量の変動を考慮に入れず、それゆえレスピレーター又はフィルター要素の交換が早すぎる(無駄である)又は遅すぎる(使用者に危険をもたらすことがある)という結果を招き得る。
【0012】
広範な耐用期間終了インジケータ(ESLI)が、レスピレーターのフィルターカートリッジに伴う使用のために開発されている。概して、ESLIは受動的又は能動的として記載されている。受動的ESLIは、インジケータにおける変化(色変化であることが多い)が、その検体に対する吸着剤が枯渇に近づいたときに、検体への暴露によって引き起こされるものである。能動的ESLIは、検体に関して気体流を観察して、吸着剤枯渇に起因する検体の検出に際して、警告信号を生成するための電子センサーを組み込んだものである。
【0013】
カートリッジ吸着剤のほとんどが消耗しているが、カートリッジ吸着剤が完全に消耗する前に、カートリッジが取り換えられるべきであることを指示することが可能なESLIに対する必要性が存在する。このことは、カートリッジが、全有効期間にわたって使用されることを可能にし(カートリッジ内の使用可能な吸着剤の無駄な部分を削減する)、また依然として使用者に対して安全域を提供する(インジケータが作動されるときに、使用者を保護するための使用可能な吸着剤の層が依然存在する)。
【0014】
積層フィルターカートリッジと、積層フィルターカートリッジ内に位置する検出要素とを含む、ガス状媒体の清浄化のためのフィルターカートリッジが本明細書に開示される。検出要素は、1つの層又は層群の枯渇に際して検出要素がトリガーされて、第2層又は層群がガス状媒体を清浄し始めるように、フィルターカートリッジ内に位置づけされる。第2層又は層群は、第1層又は層群より小さいが、第2層又は層群は、第1吸着層より高い吸着容量及び/又はより高い吸着速度を有する。この第2層又は層群は、第1層又は層群より小さいが、カートリッジが交換され得るまで使用者に保護を提供することが可能である。
【0015】
特に断りがないかぎり、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用される構造のサイズ、量、及び物理的特性を表わす数字はすべて、いずれの場合においても「約」なる語によって修飾されているものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の「特許請求の範囲」で示される数値パラメーターは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。終点による数の範囲の記述は、その範囲内(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲に包含される全ての数を含む。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、その内容に別段の明確な指示がない限り、「a」、「an」、及び「the」という単数形には、複数の指示物を有する実施形態が包含される。例えば、「層」は、1つ又は2つ又はそれ以上の層を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用されるとき、用語「又は」は、その内容によって別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0017】
本明細書において使用するとき、用語「検出要素」は、検体への暴露時に、例えばその光学特性(比色的変化、輝度変化、反射光の強度等によって明らかであり得るように)の少なくとも1つの変化を受けることによって、検体に光学的に応答する要素又は要素の集合を指す。検出要素は、少なくとも1つの「インジケータ要素」を含み、また同様に他の要素類を含んでもよい。本明細書において使用するとき、用語「インジケータ要素」は、例えば、有機蒸気又は酸等の検体への暴露に際して、検出可能な変化、典型的には光学変化を受ける要素を指す。視覚的変化が色の変化である場合、インジケータは「比色的」であると言われる。検出要素がインジケータ要素のみを備える場合、それらの用語は互換的に使用される。
【0018】
本明細書において使用するとき、用語「吸着波面」は、吸着層を通過した、汚染物質を含有する気体の層を指す。吸着層を通過した汚染物質を含有しない層は、吸着波面ではない。
【0019】
本明細書において使用するとき、用語「隣接する」は、層又は他の要素に言及する場合、該層又は他の要素が、それらの間にいかなる空隙も伴わずに互いに近接していることを意味する。層又は他の要素は、接触していてもよく、又は介在する層又は他の要素が存在してもよい。
【0020】
本明細書において使用するとき、用語「呼吸用ヘッドピース」は、レスピレーターに言及する場合、例えば、人の少なくとも呼吸通路(鼻及び口)にぴったりとフィットするフェイスピース及びゆったりと覆うフェイスピース等のフェイスピースを含む呼吸用ヘッドピース等、人によって着用される、それに対して清浄化された空気が供給される装置を意味する。呼吸用ヘッドピースの例としては、弾性フェイスピースレスピレーター、フルフェイスレスピレーター、例えば、軟性フード又は剛性ヘッドトップ等のヘッドカバー、及び他の好適なレスピレーターシステムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書において使用するとき、用語「ホース」は、動力付レスピレーターに言及する場合、きれいな空気の供給源(フィルターカートリッジ等)から呼吸用ヘッドピースへと濾過された空気を送達するための、それを通して空気が移動可能である流体不透過性壁部(単数又は複数)を有する導管を含むデバイスを意味する。
【0022】
本開示のフィルターカートリッジは、気体媒体から汚染物質を取り除くことが可能であり、また封止されたカートリッジハウジングを備える。このハウジングは、フィルターカートリッジの要素を含有し、要素を適切な構成に保持し、また要素が、フィルターカートリッジを通る気体媒体の方向付けられた流れ以外の気体媒体の汚染物質に暴露されることを防ぐ。封止されたカートリッジハウジング内に含有されるフィルターカートリッジの要素は、少なくとも気体入口と、フィルター媒体と、気体出口とを含む。フィルター媒体は、少なくとも第1吸着層と、第1吸着層よりも気体出口に近接する第2吸着層と、検出要素であって、該検出要素の指示要素が第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に位置するように第1及び第2吸着層に隣接する、検出要素と、を含む、多層構造を有する。これらの要素のそれぞれは、以下でより詳細に説明される。
【0023】
封止されたカートリッジハウジングの使用は、フィルターカートリッジの構成要素が、互いに流体連通して保持されることを可能にし、また構成要素を衝撃、損傷等から保護する。ハウジングは典型的には、フィルターカートリッジが使用される条件下において、濾過されるべき流体に対して不透過性であるように設計される。ハウジング用に潜在的に好適な材料としては、プラスチック、金属、複合材料などが挙げられる。
【0024】
概して、封止されたカートリッジハウジング内の唯一の開口は、外部環境と流体連通する気体入口及び使用者と直接的又は間接的に流体連通する気体出口である。
【0025】
気体入口は、単純な1つの開口部であっても一連の開口部であってもよく、又はより複雑な装置であってもよく、例えば、フィルターカートリッジ内への粒子の流入を低減するためのプレフィルタ若しくはスクリーンを含有してもよい。プレフィルタの例としては、例えば、繊維状ウェブ、メッシュ、発泡体、不織布等が挙げられる。プレフィルタは、取り外して掃除する又は交換することが可能なように取り外し可能であってもよい。好適なフィルタースクリーンの例としては、例えば、金属又はプラスチックの格子が挙げられ、それらは気体入口に恒久的に装着されてもよく、又は取り外し可能であってもよい。特定のフィルターカートリッジ構成においては、1つ以上の気体入口がそこに存在可能であってもよい。
【0026】
フィルターカートリッジハウジング内の他の開口は、気体出口である。フィルターカートリッジと共に使用される空気清浄機の種類に応じて、気体出口は、種々の形状及び構成を有してよい。フィルターカートリッジが受動的レスピレーターシステムにおいて使用される場合、気体出口は、単一の開口部であってもよく、又は一連の開口部であってもよい。それに加えて、出口は、フィルター媒体からの微粒子又は粉塵の流れが使用者に到達するのを防ぐためのフィルター又はスクリーンを含有してもよい。好適なフィルターの例としては、例えば、繊維状ウェブ、メッシュ、発泡体、不織布等が挙げられる。フィルターは、取り外して掃除する又は取り換えることが可能なように取り外し可能であってもよい。好適なフィルタースクリーンの例としては、例えば、金属又はプラスチックの格子が挙げられ、それらは気体入口に恒久的に装着されてもよく、又は取り外し可能であってもよい。フィルターカートリッジが動力付レスピレーターシステムにおいて使用される場合、気体出口は典型的には、単一の開口であるが、幾つかの実施形態では一連の開口を備えてもよい。幾つかの実施形態では、気体出口は、清浄化された空気を呼吸用ヘッドピース又は他のデバイスに供給するために、フィルターカートリッジハウジングをホース又は他の接続装置に接続し得る排出口である。気体出口は、円筒状の開口であることが多いが、他の形状及び輪郭が使用されてもよい。開口はまた、フィルターカートリッジを、例えば、ホース又は他の接続装置に取り外し可能に付着するように設計される構造体を含んでもよい。
【0027】
フィルター媒体は、少なくとも第1吸着層と、第1吸着層よりも気体出口に近接する第2吸着層と、第1及び第2吸着層に隣接する、検出要素と、を含む、多層構造を有する。検出要素の少なくとも1つのインジケータ要素は、第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に位置する。第1及び第2吸着層のそれぞれは、単一層であってもよく、又は種々の下位層を備えてもよい。同様に、これらの2つの吸着層に加えて、追加の層が存在してもよい。存在し得る好適な追加の層の例としては、例えば、追加の吸着層、及び繊維状ウェブ、メッシュ、発泡体、不織布等の微粒子フィルターが挙げられる。
【0028】
第1吸着層は、少なくとも1つの吸着材料を含む。本明細書において使用するとき、用語「吸着材料」は、有機蒸気を吸収又は吸着することが可能な物質を指す。この吸収又は吸着は、物理的(有機蒸気が吸着材料上又は吸着材料内に物理的に捕捉されることになる)か、又は化学的(有機蒸気が吸着材料と化学的に相互反応して、捕捉されることになる)であり得る。
【0029】
広範な材料が、吸着材料としての使用に好適であり得る。吸着媒体は、望ましくは空気又は他の気体が滞りなく流れて通過するのを可能にするほど充分に多孔質であり、微粉固体の形状(例えば、粉、ビーズ、フレーク、粒剤、又は粒塊)又は多孔質の固体(例えば、連続気泡発泡体又は多孔質のモノリシック材料)であってもよい。典型的には、吸着材料は粒状である。
【0030】
吸着材料は、単一の材料であってもよく、又は材料の混合物を含んでもよい。好適な吸着材料の例としては、例えば、活性炭、処理された活性炭、アルミナ、シリカゲル、ホプカリット、モレキュラーシーブ、金属有機骨格、鋳型材料、若しくはその他の既知の吸着材料、又はこれらの組み合わせが挙げられる。それに加えて、上述の通り、第1吸着層は、種々の下位層を備えてもよい。これらの下位層のそれぞれは、同一の吸着材料であってもよく、又は異なる吸着材料であってもよい。
【0031】
特に望ましい吸着媒体材料としては、活性炭;アルミニウム及び収着によって関心の蒸気を除去し得る他の金属酸化物;粘土及び酢酸等の酸性溶液又は水性酸化ナトリウム等のアルカリ性溶液で処理された他の鉱物;モレキュラーシーブ及び他のゼオライト;シリカ等の他の無機吸着剤;「Styrosorbs」(例えば、V.A.Davankov and P.Tsyurupa、Pure and Appl.Chem.,第61巻、頁1881〜89(1989)、及びL.D.Belyakova、T.I.Schevchenko,V.A.Davankov and M.P.Tsyurupa,Adv.in Colloid and Interface Sci.、第25巻、頁249〜66、)(1986)に記載される)として知られる高度に架橋されたスチレンポリマー等の超架橋システムを含む有機吸着剤が挙げられる。活性炭及びアルミナは、特に好ましい吸着媒体である。例えば、目的の蒸気の混合を吸収するために、吸着媒体の混合物が使用され得る。微粉化した形態の場合、吸着剤の粒径は大きく変えることができ、通常は、意図される使用条件に一部基づいて選択される。一般的なガイドとして、微粉化した吸着媒体粒子のサイズは、平均直径約4〜約5000マイクロメートルまで、例えば、平均直径約30〜約1500マイクロメートルまで変化し得る。異なる寸法範囲の吸着媒体粒子の混合物を、(例えば、吸着媒体粒子の二峰性混合物で又は上流の層に大きい方の吸着剤粒子を利用し、下流の層に小さい方の吸着粒子を用いた多層配列で)利用することもできる。例えば、米国特許第3,971,373号(Braunら)、同第4,208,194号(Nelson)、及び同第4,948,639号(Brookerら)、及び米国特許出願公開第US 2006/0096911 A1(Breyら)に記載されている、好適な結合剤(例えば、結合カーボン)と組み合わせた吸着媒体、又は好適な支持体の上又は内に捕捉された吸着媒体を使用してもよい。それに加えて、固定化炭素も有用であり得る。炭素は、例えば、結合カーボン、炭素充填ウェブ、炭素片等の種々の様式で固定化されてよい。固定化炭素の例としては、PCT国際公開第WO 2006/052694号(Breyら)に記載される粒子含有繊維状ウェブが挙げられる。活性炭は、特に有用な吸着材料である。市販されている活性炭の例としては、Kuraray Chemical Co.のGG(General Gas)グレード、及びGCグレード(触媒担体として使用される高純度及び高硬度活性炭)とされるものが挙げられる。Kuraray GGグレード活性炭は、第1吸着層にとって特に好適である。
【0032】
フィルター媒体はまた、第2吸着層を備える。この第2吸着層は、第1吸着層より気体出口に近接して位置し、また典型的には第1吸着層より小さい。第2吸着層が第1吸着層より小さいということは即ち、第2吸着層の断面の厚さが第1吸着層の断面の厚さより少ないか、第2吸着層が占めるフィルターカートリッジ内の体積が第1吸着層が占めるフィルターカートリッジ内の体積より少ないか、又はその双方を意味する。
【0033】
第2吸着層は第1吸着層より小さいが、第2吸着層は、第1吸着層より高い吸着容量及び/又はより高い吸着速度を有する。一般的用語として、これは、第2吸着剤が有機蒸気の吸着において第1吸着層よりも効率的な層であることを意味する。第2吸着層は第1吸着層より小さいため、この増大された吸着効率は、第2吸着層がフィルターカートリッジを機能し続けるように保つことを可能にし、また使用者に、汚染物質の突破が生じる前に汚染された領域から去る、又はフィルターカートリッジを取り換えるための時間を与える。
【0034】
幾つかの実施形態では、第1吸着層についての吸着係数Aに対する、第2吸着層についての吸着係数Aの比が、A/A>1である。吸着層についての吸着係数は、式:A=k×SL(式中、A=吸着係数であり、k=有効吸着速度係数(分−1)であり、SL=耐用期間(分)であり、すなわち標準温度及び圧力において所与の課題蒸気が1%突破に到達するのに要する時間である)によって決定される。
【0035】
この吸着係数決定は、Wood、the Journal of the American Industrial Hygiene Association、第55(1)巻、頁11〜15、(1994)によって記載される方法論を用いて行われる。
【0036】
第2吸着層内の吸着材料は、第1吸着層の吸着材料と異なる。好適な吸着材料の例としては、例えば、活性炭、処理された活性炭、アルミナ、シリカゲル、ホプカリット、モレキュラーシーブ、金属有機骨格、鋳型材料、若しくはその他の既知の吸着材料、又はこれらの組み合わせが挙げられる。活性炭は、特に有用な吸着材料である。市販されている活性炭の例としては、Kuraray Chemical Co.のGG(General Gas)グレード、及びGCグレード(触媒担体として使用される高純度及び高硬度活性炭)とされるものが挙げられる。Kuraray GCグレード活性炭は、第2吸着層にとって特に好適である。幾つかの実施形態では、第1吸着層と第2吸着層との双方が活性炭を含む。幾つかの特定の実施形態では、第1吸着層は、Kuraray GGグレード活性炭を含み、また第2吸着層は、Kuraray GCグレード活性炭を含む。
【0037】
第1及び第2吸着層は、互いに流体連通する。幾つかの実施形態では、第1及び第2吸着層は、互いに直接隣接している。他の実施形態では、第1及び第2吸着層は別個の層であり、また多孔質膜又はスクリーンによって分離されてもよい。
【0038】
第1及び第2吸着層は、方形、円形、楕円形等の任意の好適な形状であってよい。典型的には、第1及び第2吸着層の形状は、フィルターカートリッジハウジングの形状及び構成によって制御される。第1及び第2吸着層が等しい又は類似の長さ及び幅を有することが望ましい場合があり、又は第2吸着層がより短い長さ及び/若しくは幅を有し、フィルター媒体が略テーパ形状を有することが望ましい場合もある。
【0039】
フィルターカートリッジは、第1吸着層と第2吸着層とに隣接して位置する検出要素を更に備える。検出要素は、第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に位置する少なくとも1つのインジケータ要素を含む。検出要素は、フィルターカートリッジを通って吸着波面の通過を示す。広範な検出要素が、本開示のフィルターカートリッジにおける使用に好適である。検出要素は、収着波面が第1吸着層を通過するとき、例えば、その光学特性(比色的変化、輝度変化、反射光の強度等によって明らかであり得るように)の少なくとも1つの変化を受けることによって、検体に光学的に応答する。幾つかの実施形態では、検出要素は比色検出要素であり(光学変化が人の眼によって検知可能であることを意味する)、他の実施形態では、検出要素は電子検出要素である(光学変化が電子デバイスによって検知可能であることを意味する)。幾つかの実施形態では、第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に位置するインジケータ要素は、検出要素全体を含んでもよく、他の実施形態では、検出要素は、より大型又はより複雑であり、インジケータ要素のみが第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に位置する。
【0040】
幾つかの実施形態では、検出要素はフィルムである。フィルムは多層を有してもよく、及び比色フィルム(すなわち、このフィルムは有機検体への暴露時に色を変える)であってもよく、又は有機検体への暴露時にある他の検出可能な光学変化を受けてもよい。好適なセンサーフィルムの例は、米国特許第7,449,146号(Rakowら)及び米国特許公告第2008/0063575号及び第2008/0063874号(Rakowら)に記載されている。
【0041】
検出要素はまた、米国特許公開第2011/0094514号(Rakowら)に記載されるもののような、パターン型化学センサーであってもよい。これらのパターン型センサーは、検出層、及びフィルム体に結合し、この検出層の一部分を閉塞する閉塞層を含むフィルム体を含むフィルムを含む。検出層は有機化合物に対して応答性である、すなわち、検出層は有機化合物への暴露時に色を変える。閉塞層は、検出対象の化合物の閉塞領域への接近及び色変化の発生を妨げる。この配列の正味の効果は、フィルム単体においては、有機化合物への暴露時に検出層の「古い」色(すなわち、初期の色の状態)及び「新しい」色(すなわち、この検出層の変化した色の状態)が並列に存在し、変化が起こったかどうかの使用者による容易な決定を可能とさせるということである。
【0042】
検出要素の複雑さに応じて、検出要素全体がフィルターカートリッジ内に位置してもよく、又は検出要素の一部分がフィルターカートリッジ内に位置してもよく、かつ検出要素の一部分がフィルターカートリッジ外に位置してもよい。これは特に、電子検出要素に関して当てはまる。
【0043】
幾つかの実施形態では、検出要素全体が、フィルターカートリッジ内に位置する。典型的には、これらの実施形態では、封止されたフィルターカートリッジハウジングは、使用者が検出要素を観察することを可能にするための窓又は他の観察デバイスを含有する。窓又は他の観察デバイスは、ガラス又は透明プラスチックで作製されてよい。かかる構成例は、米国特許公開第2010/0294272号(Holmquist−Brownら)に記載されている。
【0044】
検出要素は、少なくとも一部分が第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に存在する限り、フィルターカートリッジ内の任意の場所に位置してよいが、幾つかの実施形態では、検出要素が、封止されたフィルターカートリッジハウジングの壁部上に位置することが望ましい場合がある。この方式では、検出要素信号は、光学的にも電子的にも、使用者に容易に伝えられる。比色検出要素を伴う幾つかの実施形態では、比色検出要素は、窓又は他の観察デバイスに直接隣接して封止されたフィルターカートリッジハウジングの壁部上に位置する。
【0045】
本開示のフィルターカートリッジの3つの実施形態を、図1、2、及び3に示す。図1において、フィルターカートリッジ100は、気体入口110と、第1吸着層120と、第2吸着層130と、気体出口140と、検出要素150とを含む。図2は、類似の実施形態であり、気体入口210と、第1吸着層220と、第2吸着層230と、気体出口240と、検出要素250と、を含むフィルターカートリッジ200を示す。フィルターカートリッジ200において、第2吸着層230は、第1吸着層220より狭く、フィルター媒体に略テーパ形状構造を付与する。図3は、分流フィルターカートリッジ、300の実施形態を示す。フィルターカートリッジ300において、気体入口310は、フィルターカートリッジ300の上部及び底部に位置する。気体入口310は、第1吸着層320、第2吸着層330、気体出口340、及び検出要素350と流体連通する。
【0046】
気体から汚染物質を濾過するための方法も開示される。該方法は、積層吸着層及び検出要素を有する封止されたカートリッジハウジングを含む上述の種類のフィルターカートリッジを提供することと、気体を、フィルターカートリッジを通して流すことと、検出要素中の検出応答を検知することと、フィルターカートリッジを取り換えることと、を含む。
【0047】
気体汚染物質は典型的には、有機蒸気、酸性気体、又はこれらの組み合わせを含む。本明細書で使用される用語「有機蒸気」は、呼吸する空気中に存在する場合、人々に有害であり得る広範な揮発性の空中浮遊有機化合物を指す。有機蒸気の例としては、イソプロパノール及びブタノールなどのアルコール;ヘキサン及びオクタンなどのアルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、及びスチレンなどの芳香族;クロロホルム及びメチレンクロリドなどのハロカーボン;アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン;テトラヒドロフランなどのエーテル;エチルアセテート及びエトキシエチルアセテートなどのエステル;メチルアクリレートなどのアクリレート;アセトニトリルなどのニトリル;トルエン−2,4−ジイソシアネートなどのイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において使用するときには、「酸性気体」なる用語は、一定の酸性成分を含む気体のことを指す。この酸性成分は、例えば塩化水素ガスのようにそれ自体気体でありうるが、酸性成分はそれ自体が気体である必要はなく、気体又は気体混合物中に単に存在している場合もある。更に、酸性気体はそれ自体は酸ではない場合もあるが、大気中に存在する他の物質と組み合わされることによって酸が生じる場合もある。
【0048】
上述の通り、フィルターカートリッジは、少なくとも第1吸着層と、第1吸着層よりも気体出口に近接する第2吸着層と、第1及び第2吸着層に隣接する、検出要素と、を有する。検出要素の少なくとも1つのインジケータ要素は、第1吸着層と第2吸着層との間の境界面に位置する。
【0049】
フィルターカートリッジを通して気体を流すことは、フィルターカートリッジが付着されるレスピレーターデバイスの種類に応じて種々の方式で達成され得る。レスピレーターデバイスが受動的レスピレーターである場合、気体を、フィルターカートリッジを通して流す工程は、レスピレーターを着用して呼吸することを含み得る。フィルターカートリッジ気体入口は、フィルターカートリッジを保護するために使用されるまで封止される又は覆われていてよく、したがってフィルターカートリッジを通して気体を流す工程は、フィルターカートリッジ入口を開封する又は開放する工程を含んでもよい。それに加えて、レスピレーター及びフィルターカートリッジは、分離して維持されてもよく、したがってフィルターカートリッジをレスピレーター装置に付着することを伴う組み立て工程が存在してもよい。同様に、レスピレーターは、1つ以上のフィルターカートリッジを含有してもよく、これらのフィルターカートリッジは同一であってもよく、又は異なっていてもよい。
【0050】
レスピレーターが電動レスピレーターである場合、気体を、フィルターカートリッジを通して流す工程は、レスピレーターを着用して、ファンに対する電源又はレスピレーターに電力供給するために使用される他のデバイスをオンにする工程を含み得る。受動的レスピレーターシステムと同様に、気体を、フィルターカートリッジを通して流す工程は、フィルターカートリッジ気体入口を開封する若しくは開放する工程、又はレスピレーターの組み立て工程も含んでよい。
【0051】
本開示のフィルターカートリッジを含有するレスピレーターデバイスが使用される際、第1吸着層がその有効期間の終了に到達する時点に到達する。この時点において、第1吸着層と第2吸着層との境界面に位置するインジケータ要素が作動され、また検出要素中の応答を引き起こす。検出要素応答は典型的には、光学的である。検出要素が比色検出要素である場合、使用者によって検知可能な色変化が生じる。検出要素が電子的である場合、使用者によって検知可能な電子信号が生成される。
【0052】
幾つかの実施形態では、プロトタイプのフィルターカートリッジを代表的な有機蒸気に対して試験して、検出要素が作動される時点に対する耐用期間の終了(有機蒸気突破によって決定される)の比を決定することが有用であり得る。このプロセスは、実施例の章においてより完全に記載されている。この比は0.90以下であることが望ましくなり得、検出要素の作動時において、フィルターカートリッジの吸着容量の10%が残っていることを意味する。残留吸着容量に関するこの10%値は、フィルターカートリッジを取り換えるための使用者への事前警告に関する現在のNIOSH基準に相当する。
【0053】
使用者による検出応答の検知は、フィルターカートリッジを取り換えるための使用者に対する指示である。本発明のフィルターカートリッジシステム、及び気体からの汚染物質の濾過のための方法の利点は、使用者によって検出応答が検知されるとき、吸着波面が第2吸着層に丁度到達しているということである。第2吸着層は、第1吸着層より高い吸着容量及び/又はより高い吸着速度を有するため、第2吸着層は、第1吸着層の有効期間の終了にもかかわらず、汚染物質を吸着し続けることが可能である。第2吸着層は、したがって、フィルターカートリッジが取り換えられ得るまで、更なる安全域を提供する。
【実施例】
【0054】
以下の実施例はあくまで例示を目的としたものにすぎず、付属の「特許請求の範囲」に対して限定的であることを意図するものではない。特に断りがないかぎり、以下の実施例及び明細書の残りの部分に記載される部、パーセンテージ(%)、比などはすべて重量基準のものである。使用した溶媒類及びその他の試薬類は、特段の規定がない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)から入手した。
【0055】
【表1】
【0056】
試験方法
フィルターカートリッジ耐用期間決定
32L/分の流れ及び50%の相対湿度にて500ppmオクタンの課題に対してカートリッジを検証することによって、耐用期間を測定した。耐用期間を、出口上で5ppmのオクタンを観察することとして測定した。出口濃度は、GowMac Instrument Co.製のGOWMAC Series 23〜550 Total Cardrocarbon analyzer FIDを用いて測定した。FID設定は、範囲2、気圧22、燃料圧12、スパン1.1であった。
【0057】
比較例C1:
カートリッジC1の調製:
サンプルフィルターカートリッジを、カートリッジ本体を用いて組み立て、スノーフレークカラムを用いて140立方センチメートル(cm)のSM−1で充填した。
【0058】
カートリッジC1の試験:
上述の組み立てたカートリッジを、上述の試験方法を用いて耐用期間の終了に関して試験した。フィルターカートリッジ内のセンサーが作動された時点も記録した。センサーが作動された時点に対する耐用期間終了の比も算出した。比は、センサー作動と突破との間の時間を測定する。比は、カートリッジ使用者に対して10%の事前警告時間を提供するために、0.90以下であることが望ましい(現在のNIOSH要件)。これらのデータを表1に提示する。
【0059】
【表2】
【0060】
(実施例1〜4):
カートリッジ1〜4の調製:
サンプルフィルターカートリッジを、カートリッジ本体を用いて組み立て、スノーフレークカラムを用いて表2に示す量の吸着材料で充填した。比較例C1は、参照として挙げられる。
【0061】
【表3】
【0062】
カートリッジ1〜4の試験:
上述の組み立てたカートリッジを、上述の試験方法を用いて耐用期間の終了に関して試験した。フィルターカートリッジ内のセンサーが作動された時点も記録した。センサーが作動された時点に対する耐用期間終了の比も算出した。比は、センサー作動と突破との間の時間を測定する。比は、カートリッジ使用者に対して10%の事前警告時間を提供するために、0.90以下であることが望ましい(現在のNIOSH要件)。これらのデータを表3に提示する。
【0063】
【表4】
図1
図2
図3