【文献】
JOURNAL OF ORTHOPAEDIC RESEARCH,2010年,Vol.28, No.3,pp.279-283
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、疼痛の治療での使用のため、または、疼痛および/または疼痛の症状の予防および/または治療のため、または、疼痛および/または疼痛の症状の発生を改善、制御、減少させ、または、疼痛および/または疼痛の症状の発達または進行を遅らせるための、p75NTRニューロトロフィン結合タンパク質(p75NTR(NBP))が提供される。好ましくは、p75NTRニューロトロフィン結合タンパク質p75NTR(NBP)は、ペグ化されており、さらに好ましくは、グリコシル化されている。
【0011】
p75NTRニューロトロフィン結合タンパク質p75NTR(NBP)は、好ましくは、(a)ニューロトロフィン結合ドメイン1[配列番号4]、ニューロトロフィン結合ドメイン2[配列番号5]、ニューロトロフィン結合ドメイン3[配列番号6]、ニューロトロフィン結合ドメイン4[配列番号7]またはニューロトロフィン結合ドメイン5[配列番号8]の1つまたは複数を含む。さらに好ましくは、p75NTR(NBP)は、(b)ニューロトロフィン結合ドメイン1[配列番号4]、ニューロトロフィン結合ドメイン2[配列番号5]、ニューロトロフィン結合ドメイン4[配列番号7]およびニューロトロフィン結合ドメイン5[配列番号8]のそれぞれ、または、(c)ニューロトロフィン結合ドメイン1[配列番号4]、ニューロトロフィン結合ドメイン3[配列番号6]、ニューロトロフィン結合ドメイン4[配列番号7]およびニューロトロフィン結合ドメイン5[配列番号8]のそれぞれを含む。さらに好ましくは、p75NTR(NBP)は、細胞外ドメイン2[配列番号3]、または、上記の(a)、(b)または(c)を含むその部分を含む。さらに好ましくは、p75NTR(NBP)は、細胞外ドメイン1[配列番号2]、または、上記の(a)、(b)または(c)を含むその部分を含む。
【0012】
好ましくは、p75NTR(NBP)は、ニューロトロフィンNGF、NT3、BDNFおよびNT4/5、好ましくはヒトNGF、NT3、BDNFおよびNT4/5のそれぞれに結合する。さらに好ましくは、p75NTR(NBP)は、好ましくは天然のp75NTR配列全長[配列番号1]と同等または同一の結合定数で、ニューロトロフィンNGF、NT3、BDNFおよびNT4/5、好ましくはヒトNGF、NT3、BDNFおよびNT4/5のそれぞれに結合する。結合定数は、本明細書に記載のアッセイを用いて、例えば、20℃での表面プラズモン共鳴の使用により決定することができ、天然のタンパク質の結合定数のためのアッセイは公知であり、当技術分野で知られている細胞に基づくアッセイを含む。好ましくは、p75NTR(NBP)は、インビトロまたはインビボで、1つまたは複数の前述のニューロトロフィンが血漿中または他の体液中で分解されることから守り、および/または、それらの生物学的に自由な形態と比較して、1つまたは複数の前述のニューロトロフィンの恒常性バランスを維持する。
【0013】
本発明のp75NTR(NBP)は、好ましくは、NGF、BDNF、NT3またはNT4/5のうちの任意の1つまたは複数と、約0.1nM〜約50nMの間の結合親和性(K
d)で結合する。一部の好ましい実施態様では、結合親和性(K
d)は、本明細書に記載のNGF、BDNF、NT3またはNT4/5に関するインビトロ結合アッセイにより測定すると、好ましくは20℃での表面プラズモン共鳴により測定すると、約0.1nMと、約0.2nM、0.5nM、1nM、1.5nM、2nM、2.5nM、3nM、3.5nM、4nM、4.5nM、5nM、5.5nM、6nM、6.5nM、7nM、7.5nM、8nM、8.5nM、9nM、9.5nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、35nM、40nM、45nMまたは50nMのいずれかとの間である。一部のさらに好ましい実施態様では、結合親和性(K
d)は、本明細書に記載のニューロトロフィンとのp75NTR(NBP)に関するインビトロ結合アッセイで測定すると、好ましくは20℃での表面プラズモン共鳴により測定すると、約250pM、300pM、350pM、400pM、450pM、500pM、550pM、600pM、650pM、700pM、750pM、800pM、850pM、950pMまたは1nMのいずれか、またはそれ未満である。さらにより好ましい実施態様では、結合親和性(K
d)は、本明細書に記載のニューロトロフィンとp75NTR(NBP)に関するインビトロ結合アッセイで測定すると、好ましくは20℃での表面プラズモン共鳴により測定すると、約0.3nMまたは約1nMである。
【0014】
さらに好ましくは、p75NTR(NBP)は、前述のニューロトロフィンNGF、BDNF、NT3またはNT4/5の機能性活性(ニューロトロフィンの機能性活性の調節または上方制御または下方制御として定義される)、例えば、それらのそれぞれの受容体とのそれらの相互作用により結果として生じる前述のニューロトロフィンの機能性活性をもたらす。
【0015】
好ましくは、p75NTR(NBP)は、神経細胞およびシナプスの増殖および分化、神経細胞培養での生存および分化、Trkシグナリング、軸索伸長の刺激(インビトロまたはインビボ)のいずれかの機能性アッセイにより評価されるように、BDNFの機能性活性をもたらす。
【0016】
好ましくは、p75NTR(NBP)は、NGFの、TrkAに対する結合および活性化を測定することにより評価され、古典的な神経細胞生存アッセイ(例えば、Cowan,W.M.,Hamburger,V.,Levi−Montalcini,R.Annu.Rev.Neurosci.2001;24:551−600に記載される)に示されるように、NGFの機能性活性をもたらす。
【0017】
好ましくは、p75NTR(NBP)は、NT3の、内因性Trk受容体に対する結合および内因性Trk受容体活性の活性化を測定することにより評価され、Trk受容体リン酸化、分裂促進因子により活性化されるタンパク質キナーゼリン酸化レポーターアッセイ、または、細胞生存および軸索伸長のアッセイに示されるように、NT3の機能性活性をもたらす。
【0018】
好ましくは、p75NTR(NBP)は、例えばミエリン塩基性タンパク質(MBP)リン酸化アッセイにおいて、または代わりに、インビボの血管内皮成長因子(VEGF)/塩基性線維芽細胞増殖因子により誘導される血管新生のマトリゲル血管新生アッセイにおいて、NT4/5のインビトロまたはインビボのリン酸化および活性化アッセイを測定することにより評価されるように、NT4/5の機能性活性をもたらす。
【0019】
好ましくは、p75NTR(NBP)は、He and Garcia(2001)Science,301,870〜805頁に示される、ニューロトロフィンNGF、NT3、BDNFおよびNT4/5のうちの1つまたは複数の接触残基に結合する。
【0020】
好ましくは、p75NTR(NBP)は可溶性であり、好ましくは水性溶液に可溶性であり、好ましくは生物学的流体、例えば血清、血漿、血液に可溶性である。
【0021】
本発明の第2態様によれば、第1態様による使用のためのp75NTR(NBP)が提供され、ここで、前記p75NTR(NBP)は、p75NTR(NBP)、好ましくは1つまたは複数の補助分子に結合された第1態様のp75NTR(NBP)を含む。好ましくは、前記p75NTR(NBP)は、1つまたは複数のリンカーを介して、前記の1つまたは複数の補助分子に結合されている。
【0022】
好ましくは、前記の1つまたは複数の補助分子は;(a)トランスフェリンまたはその部分、好ましくは、トランスフェリンはヒトトランスフェリンであり、好ましくは配列番号9である、(b)アルブミンまたはその部分、好ましくは、アルブミンはヒトアルブミンであり、好ましくは配列番号10である、(c)免疫グロブリンFcまたはその部分、好ましくは、免疫グロブリンFcはヒト免疫グロブリンFcである、(d)ポリエチレングリコールポリマー鎖、(e)糖鎖、から選択される。
【0023】
本明細書において用いられる用語、「免疫グロブリンFc」または「Ig Fc」は、免疫グロブリン鎖定常領域のカルボキシル末端部分、好ましくは免疫グロブリン重鎖定常領域、またはその部分を意味すると理解される。好ましくは、免疫グロブリンFcは、1)場合により免疫グロブリンヒンジ領域を伴う、CH1ドメイン、CH2ドメイン、および、CH3ドメイン、2)場合により免疫グロブリンヒンジ領域を伴う、CH1ドメインおよびCH2ドメイン、3)場合により免疫グロブリンヒンジ領域を伴う、CH1ドメインおよびCH3ドメイン、4)場合により免疫グロブリンヒンジ領域を伴う、CH2ドメインおよびCH3ドメイン、または、5)場合により免疫グロブリンヒンジ領域と組み合わされた、CH1、CH2およびCH3から選択される2またはそれ以上のドメインの組み合わせを含む。好ましくは、免疫グロブリンFcは、少なくとも、免疫グロブリンヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン、および場合によりCH1ドメインを含む。好ましくは、免疫グロブリンFcは、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、さらに好ましくは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、sIgA、さらに好ましくはIgG2またはIgG4、最も好ましくはIgG2から選択されるアイソタイプの免疫グロブリンのFcまたはFc部分を含む、またはからなる。場合により、免疫グロブリンFcはまた、補体結合または抗体依存性の細胞の細胞毒性を最小限化する働きをする、またはFc受容体に対する結合の親和性を改善する、アミノ酸変異、欠失、置換または化学修飾も含む。
【0024】
さらに好ましくは、免疫グロブリンFcは、(a)CH2ドメインまたはその部分、および、CH3ドメインまたはその部分、(b)CH2ドメインまたはその部分、または、(c)CH3ドメインまたはその部分のいずれかを含み、またはからなり、ここで、前記免疫グロブリンFcまたはその部分は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、さらに好ましくは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、sIgA、さらに好ましくはIgG2またはIgG4、最も好ましくはIgG2から選択されるアイソタイプである。
【0025】
好ましくは、免疫グロブリンFcは、免疫グロブリン重鎖のカルボキシ末端領域を含み、またはからなり、IgG、IgAまたはIgD抗体アイソタイプ由来のCH2および/またはCH3ドメイン、またはそれらの部分、または、IgMまたはIgE由来のCH2および/またはCH3および/またはCH4ドメイン、またはそれらの部分を含んでよい。好ましくは、免疫グロブリンFcは、主としてCH3を含みCH2をごく一部含むFcのフラグメントを含み、またはからなり、免疫グロブリンのペプシン消化により生じさせることができる。好ましくは、免疫グロブリンFcは、Fc全領域を含み、またはからなり、CH2およびCH3を含み、さらに無傷の免疫グロブリンにおいてCH1およびCH2領域を連結する重鎖の短いセグメントであるヒンジ領域に結合され、免疫グロブリンのパパイン消化により生産され得る。好ましくは、免疫グロブリンヒンジ領域は、IgG、好ましくはヒトIgG、さらに好ましくはIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される、最も好ましくはIgG1に由来する、ヒンジ領域またはヒンジ領域部分を含む、またはからなる、または代わりに、前述のヒンジ領域の具体例の種または対立遺伝子多型である。ヒンジ領域または免疫グロブリンのヒンジ領域部分は、Fc領域のC末端またはN末端、好ましくはN末端に存在してよい。
【0026】
本発明の好ましい実施態様によれば、免疫グロブリンFcは、好ましくはFcのエフェクター機能を減少させる、CH2領域の野生型配列の1つまたは複数のアミノ酸変異を含む免疫グロブリンのFcまたは免疫グロブリンのFcの一部分を、含む、またはからなる。好ましくは、これらの変異は、A330、P331〜S330、S331である(野生型IgG2配列に関するアミノ酸のナンバリングであり、CH2領域はヒト重鎖IgG2定常領域に存在する:[Eur.J.Immunol.(1999)29:2613−2624]。好ましくは、免疫グロブリンFcはグリコシル化されて生理学的pHで高電荷であり、それ故に、p75NTR(NBP)を可溶化するのを助ける。また、Fc領域は、例えば診断目的での、抗−FcのELISAによるp75NTR(NBP)の検出を可能にする。本発明のp75NTR(NBP)は、好ましくは通常のグリコシル化部位でIg Fcをグリコシル化する細胞内で、好ましくは合成される。
【0027】
好ましくは、免疫グロブリンFcは、配列番号11、12、13、14、15または16から選択されるアミノ酸配列のヒト免疫グロブリンFc領域またはそれらの種または対立遺伝子多型、または、配列番号11、12、13、14、15または16に由来するCH2およびまたはCH3ドメインまたはそれらの部分を含む、またはからなる。
【0028】
本発明によれば、1つまたは複数の補助分子に結合されたp75NTR(NBP)は、好ましくは、p75NTR(NBP)の溶解性および/またはp75NTR(NBP)の安定性の改善、および/または、p75NTR(NBP)の血清半減期の改善の、有利な生物学的特性を示す。溶解性の改善は、p75NTR(NBP)の生物学的利用性が投与の際に最大化されて、p75NTR(NBP)の正確な用量を決定および実行することができるため、望ましい。溶解性の改善は、インビボの送達において望ましくない疼痛を引き起こしかつ潜在的炎症につながる凝集体の問題を、克服するのに有利である。血清半減期の改善は、送達されるp75NTR(NBP)の同等または維持された治療効果を達成するために、治療のための使用の間、必要投与量のレベルの低減または頻度の低減を容易にする、利点を有する。血液中または血清中での延長された半減期およびより高い安定性は、より低い頻度の投与および/またはより少ない投与レベルの用量計画を可能にする利点を有し、それ故に、インビボでの潜在的な毒性または副作用を減少させる。この場合、p75NTR(NBP)はその治療効果においてより強力であり、および/または、循環においてより安定である。結果として生じる、より低い、または、より少ない頻度の投与量は、p75NTR(NBP)投与と関連する可能性のある任意の潜在的な毒性作用または副作用を最小限化する点で有利である。1つまたは複数の補助分子に結合したp75NTR(NBP)の分子量は、p75NTR(NBP)単独よりも増加しており、このこともまた、静脈内投与されたときに分子が血液循環中に良く維持されて、中枢神経系などの望ましくない部位への透過性の危険を減らし、分子が標的組織中に維持または集中されるのを適切にするという利点を有する。
【0029】
好ましくは、1つまたは複数の補助分子に結合されたp75NTR(NBP)は、そのように結合されていないp75NTR(NBP)と比較して、p75NTR(NBP)の溶解性の改善、および/または、p75NTR(NBP)の安定性の改善、および/または、血清半減期の改善を示す。好ましくは、溶解性の改善は、バッファーなど、好ましくは賦形剤および/または好ましくは生理学的pH、好ましくはpH5〜pH8の間、好ましくは約pH7の塩を有する、水などの水性溶液中での溶解性であり、または、血清または血液などの生物学的流体中での溶解性である。好ましくは、安定性の改善は、保管期間またはその後の凍結融解の間の、長年にわたる変性、酸化、フラグメント化、または凝集の効果に起因する、p75NTR(NBP)タンパク質の活性または構造的一体性の安定性である。構造的安定性は、変性、酸化、凝集または凝集の標準的な測定により判定することができ、活性の安定性は、本明細書に記載の結合または機能性アッセイにより測定することができ、タンパク質の血清半減期を測定する方法は公知である。
【0030】
好ましくは、1つまたは複数の補助分子に結合されたp75NTR(NBP)は、様々な哺乳類の宿主細胞から高レベルで発現させて単一種を生産することができ、アフィニティクロマトグラフィーにより、例えば黄色ブドウ球菌プロテインAに対する結合により、効率的に精製することができる。好ましくは、1つまたは複数の補助分子に結合されたp75NTR(NBP)は、二量体化することができ、好ましくは、その二量体は、そのように結合されていないp75NTR(NBP)と比較して、ニューロトロフィンNGF、BDNF、NT3またはNT4/5に対する親和性が増加する。よりタイトな結合は、例えば本明細書に記載のニューロトロフィン機能性アッセイにより判定されるp75NTR(NBP)の効果により判断されるように、より高い効能およびより高い治療有効性の利点を有する。より高い効能は、より低い用量でp75NTR(NBP)を使用して同一の治療有効性を達成することができ、それ故に、インビボでの潜在的な毒性または副作用を減少させるという利益を有する。
【0031】
好ましくは、本発明のp75NTR(NBP)は、インビボで、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、62、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208または210時間+/−1時間のいずれか、またはこれを超える半減期を有し、さらに好ましくは、本発明のp75NTR(NBP)は、インビボで、約24時間またはこれを超える半減期を有する。
【0032】
さらに好ましくは、本発明のp75NTR(NBP)はインビトロで、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、62、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208または210日+/−1日のいずれか、またはこれを超える半減期を有し、さらに好ましくは、本発明のp75NTR(NBP)は、インビトロで、約6日またはこれを超える半減期を有する。好ましくは、安定性は、だいたい生理学的なpHでの緩衝水溶液中で、好ましくは20℃または37℃で測定される。
【0033】
前述の好ましい実施態様によれば、好ましくは、インビボの半減期は、ラットでの半減期またはヒトでの半減期、さらに好ましくはヒトでの半減期である。好ましくは、半減期は、例えば静脈内または皮下注入によるインビボでの投与の後に、本発明のp75NTR(NBP)のレベルの血清測定より決定される。
【0034】
−さらに本発明の第2態様によれば、リンカーは、好ましくは、(a)共有結合、(b)非共有結合、(c)ペプチド結合、(d)1アミノ酸、またはペプチドを含む複数アミノ酸から選択される。好ましくは、p75NTR(NBP)は、1つよりも多い補助分子に結合しており、場合により、各補助分子は、同一または異なるもののいずれか、または同一および異なるものの混合物である。さらに好ましくは、前記の1つよりも多い補助分子は、リンカーを介してp75NTR(NBP)に結合された多量体または複数の補助分子を含み、各分子は、同一または異なるもの、または、同一および異なるものの混合物であり得る。
【0035】
好ましくは、リンカーは、1つまたは複数のアミノ酸を含み、またはからなり、または、アミノ酸、好ましくは約1〜約25アミノ酸、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、または9アミノ酸のいずれか、さらに好ましくは約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21 22、23または24アミノ酸のいずれか、最も好ましくは13アミノ酸のポリペプチド配列を含む、またはからなる。
【0036】
好ましくは、リンカーは、αへリックス、β鎖、3
10へリックスおよびpiへリックス、ポリプロリンヘリックス、αシートなどの任意の安定な二次構造が欠損した、アミノ酸のポリペプチド配列を含む、またはからなる。好ましくは、リンカー領域は、可動性または動的または不定形のポリペプチド、例えばフレキシブルループ、ランダムコイルまたはフレキシブルターンなどを定義するアミノ酸のポリペプチド配列を含み、またはからなり、そのような不定形のポリペプチドは、大きなタンパク質分子における二次構造の結合領域にしばしば見られる。
【0037】
好ましくは、リンカーは、p75NTR(NBP)中の約50%またはそれより多いグリシンおよび/またはアラニンおよび/またはセリン、さらに好ましくは、p75NTR(NBP)中の約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%またはそれより多いグリシンおよび/またはアラニンおよび/またはセリンを含む、アミノ酸のポリペプチド配列である。好ましくは、リンカー領域は、グリシンおよびセリンの両方を、好ましくはセリンよりもグリシンが多い比率で含む、アミノ酸のポリペプチド配列を含み、またはからなり、好ましくは、リンカー領域は、可動性リンカー、配列番号17(GGGGS)n(n=1〜4)、またはらせん状のリンカー、配列番号18(EAAAK)n(n=2〜5)、または、グリシン、セリン、アラニン、およびトレオニンから選択されるアミノ酸残基の各アミノ酸の1から10までの繰り返しおよびそれらの任意の組み合わせを主に含む、ポリペプチドリンカーを含む、またはからなる。
【0038】
好ましくは、リンカーは、補助分子に結合されていないp75NTR(NBP)と比較して、前述のニューロトロフィンの結合能力またはp75NTR(NBP)の生物学的活性を妨げる可能性のある、補助分子による立体障害を、克服または防ぐ。それ故に、リンカー領域は、例えば本明細書に記載の結合アッセイを用いたニューロトロフィンに対する結合により判定すると、そのように結合されていないフリーまたは天然のp75NTR(NBP)と比較して、好ましくは、p75NTR(NBP)と補助分子との間の自由度を与え、前述のp75NTR(NBP)の生物学的活性を維持または改善させる。
【0039】
さらに好ましくは、リンカーは免疫学的に不活性であり、したがって、補体媒介性の溶解を引き起こさず、抗体依存−細胞媒介細胞傷害性(ADCC)を刺激せず、ミクログリアまたはT細胞を活性化しない。好ましくは、リンカー領域は、これらの活性の1つまたは複数が低下している。
【0040】
さらに好ましくは、リンカーは、構造分析または構造予測から、可動性または動的または不定形のポリペプチドであるか、または安定な二次構造を欠くと知られ、または予測されるポリペプチドを含む、またはからなる。
【0041】
最も好ましくは、リンカーは、配列番号19(GGGGS)の配列のポリペプチドを含む、またはからなる。
【0042】
本発明のp75NTR(NBP)はまた、タンパク質分解の切断部位を、場合によりp75NTR(NBP)と補助分子の間に挟んで含んでもよい。タンパク質分解の切断部位は、リンカー中、または、リンカーとp75NTR(NBP)または/および補助分子のいずれかとの接合部に存在してよい。p75NTR(NBP)は、場合により、治療目的のための製剤化およびまたは投与の前に、補助分子から切断されてよい。
【0043】
好ましくは、リンカーおよび/または1つまたは複数の補助分子は、p75NTR(NBP)について以下を害さないか、または著しく害さない:
(a)ニューロトロフィンNGF、BDNF、NT3またはNT4/5の機能性活性に対する効果(ニューロトロフィンの機能性活性の調節または上方制御または下方制御として定義される)、
(b)約0.1nM〜約50nMの間の結合親和性での、NGF、BDNF、NT3またはNT4/5のいずれかに対する結合親和性、
(c)ニューロトロフィンNGF、NT3、BDNFおよびNT4/5、好ましくはヒトNGF、NT3、BDNFおよびNT4/5のそれぞれに対する結合能力。
【0044】
本発明の1および2の態様の好ましい実施態様によれば、本発明のp75NTR(NBP)が提供され、疼痛の治療に用いるためのp75NTR(NBP)が提供され、ここで、前記p75NTR(NBP)は、(A)配列番号3の配列のP75NTR(NBP)、および場合により、(B)免疫グロブリンFc(さらに場合により、配列番号11の配列からなる)、および場合により(C)リンカー(場合により配列番号19からなる)からなる。
【0045】
−本発明の第3態様によれば、p75NTR(NBP)、または、第1または第2態様による1つまたは複数の補助分子に結合されたp75NTR(NBP)をコードする核酸分子が提供される。好ましくは、核酸分子は、疼痛の治療に用いるためのものである。
【0046】
本発明の好ましい実施態様によれば、核酸分子は、シグナル配列、好ましくはp75NTRシグナル配列をコードする領域、例えばDNAまたはRNA配列をさらに含んでよい。
【0047】
−本発明の第4態様によれば、細胞をトランスフェクトするための複製可能な発現ベクターが提供され、前記ベクターは、第3態様の核酸分子を含み、好ましくは、前記ベクターはウイルスベクターである。好ましくは、前記ベクター疼痛の治療で用いるためのものである。
【0048】
−さらに本発明の第3または第4態様によれば、p75NTR(NBP)または1つまたは複数の補助分子に結合されたp75NTR(NBP)を生産または分泌するために、本発明の核酸分子またはベクターを発現する方法が提供される。好ましくは、前記方法は、核酸分子またはベクターを細胞内に導入すること、および、その中で核酸を発現させて、p75NTR(NBP)、または、1つまたは複数の補助分子に結合されたp75NTR(NBP)を、生産または分泌させることを含む。好ましくは、核酸分子またはベクターは、細胞インビトロあるいはインビボで細胞内に導入される。好ましくは、発現されるp75NTR(NBP)または1つまたは複数の補助分子に結合されたp75NTR(NBP)は、インビトロで発現されて、場合によりさらに分離および精製され、あるいは好ましくは、発現されるp75NTR(NBP)または1つまたは複数の補助分子に結合されたp75NTR(NBP)は、インビボで発現され、好ましくは、インビボでの発現は、遺伝子治療を構成する。好ましくは、ベクターは、複製可能な発現ベクターであり、場合により哺乳類の細胞をトランスフェクトするためのものであり、好ましくは、ベクターはウイルスベクターである。
【0049】
−本発明の第5態様によれば、第3または第4態様のいずれかの核酸分子またはベクターを保有する宿主細胞が提供され、好ましくは、前記細胞は哺乳類の細胞である。
【0050】
−本発明の第6態様によれば、第1または第2態様またはそれらの好ましい実施態様による使用のためのp75NTR(NBP)、または、第3および第4態様による使用のための核酸またはベクターが提供され、前記疼痛または疼痛の症状は:
(a)急性疼痛および/または自発痛、
(b)慢性疼痛およびまたは進行中の疼痛、
(c)関節痛、変形性関節症または関節リウマチから生じる疼痛、炎症性腸疾患、乾癬および湿疹から生じる疼痛のいずれかを含む炎症性疼痛、
(d)侵害受容性疼痛、
(e)有痛性糖尿病性神経障害または帯状疱疹後神経痛と関連する疼痛を含む、神経障害性疼痛
(f)痛覚過敏、
(g)アロディニア、
(h)中枢痛、中枢性卒中後痛、多発性硬化症から生じる疼痛、脊髄損傷から生じる疼痛、またはパーキンソン病またはてんかんから生じる疼痛、
(i)癌性疼痛、
(j)術後疼痛、
(k)消化性内臓痛および非消化性内臓痛を含む内臓痛、胃腸(GI)障害に起因する疼痛、機能性腸疾患(FBD)から生じる疼痛、炎症性腸疾患(IBD)から生じる疼痛、月経困難、骨盤痛、膀胱炎、間質性膀胱炎または膵炎から生じる疼痛、
(l)筋骨格痛、筋肉痛、線維筋痛、脊椎炎、血清陰性(非リウマチ性)関節障害、関節外リウマチ、ジストロフィン異常症、グリコーゲン分解、多発性筋炎、化膿性筋炎、
(m)心臓または血管性疼痛、狭心症、心筋梗塞、僧帽弁狭窄、心膜炎、レイノー現象、浮腫性硬化症(scleredoma)、浮腫性硬化症または骨格筋虚血に起因する疼痛、
(n)片頭痛、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛を含む、頭痛、
(o)歯痛、顎関節筋膜痛または耳鳴りを含む、口腔顔面痛、または、
(p)背痛、滑液包炎、月経痛、片頭痛、関連痛、三叉神経痛、超増感、脊椎の外傷および/または変性または脳卒中から生じる疼痛、
から選択される。
【0051】
−本発明の第7態様によれば、第1または第2態様またはそれらの好ましい実施態様による使用のためのp75NTR(NBP)、または、第3および第4態様による使用のための核酸分子またはベクターが提供され、前記のp75NTR(NBP)または核酸分子またはベクターは、第2の薬理学的に活性の化合物と組み合わせて、別々に、連続して、または同時に使用するためのものである。好ましくは、組み合わせる前記の第2の薬理学的に活性の化合物は;
・オピオイド鎮痛薬、例えばモルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィンまたはペンタゾシン;
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えばアスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル(diflusinal)、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサル、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチンまたはゾメピラック;
・バルビツレート鎮静剤、例えばアモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール(butabital)、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール(phenobartital)、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール(theamylal)またはチオペンタール;
・鎮静作用を有するベンゾジアゼピン、例えばクロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパムまたはトリアゾラム;
・鎮静作用を有するH1拮抗薬、例えばジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニラミンまたはクロルシクリジン;
・鎮静剤、例えばグルテチミド、メプロバメート、メタカロンまたはジクロラルフェナゾン;
・骨格筋弛緩薬、例えばバクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモールまたはオルフレナジン;
・NMDA受容体拮抗薬、例えばデキストロメトルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)またはその代謝物デキストロルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキニン、シス−4−(ホスホノメチル)−2−ピペリジンカルボン酸、ブジピン、EN−3231(MorphiDex(登録商標)、モルヒネおよびデキストロメトルファンの組み合わせ製剤)、トピラマート、ネラメキサン、または、NR2B拮抗薬を含むペルジンホテル、例えばイフェンプロジル、トラキソプロジルまたは(−)−(R)−6−{2−[4−(3−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−1−ピペリジニル]−1−ヒドロキシエチル−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノン;
・α−アドレナリン作用薬、例えばドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、グアンファシン、デキスメタトミジン(dexmetatomidine)、モダフィニル、または4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタン−スルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン;
・三環系抗うつ薬、例えばデシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリンまたはノルトリプチリン;
・抗痙攣薬、例えばカルバマゼピン、ラモトリジン、トピラマート(topiratmate)またはバルプロエート;
・タキキニン(NK)拮抗薬、特にNK−3、NK−2またはNK−1拮抗薬、例えば(αR,9R)−7−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]−8,9,10,11−テトラヒドロ−9−メチル−5−(4−メチルフェニル)−7H−[1,4]ジアゾシノ[2,1−g][1,7]−ナフチリジン−6−13−ジオン(TAK−637)、5−[[(2R,3S)−2−[(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ−3−(4−フルオロフェニル)−4−モルホリニル]−メチル]−1,2−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾル−3−オン(MK−869)、アプレピタント、ラネピタント、ダピタントまたは3−[[2−メトキシ−5−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−メチルアミノ]−2−フェニルピペリジン(2S,3S);
・ムスカリン拮抗薬、例えばオキシブチニン、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロスピウム(tropsium chloride)、ダリフェナシン、ソリフェナシン、テミベリンおよびイプラトロピウム;
・COX−2選択的阻害剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、またはルミラコキシブ;
・コールタール鎮痛剤、特にパラセタモール;
・神経遮断薬、例えばドロペリドール、クロルプロマジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、チオリダジン、メソリダジン、トリフルオペラジン、フルフェナジン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、クエチアピン、セルチンドール、アリピプラゾール、ソネピプラゾール、ブロナンセリン、イロペリドン、ペロスピロン、ラクロプリド、ゾテピン、ビフェプルノックス、アセナピン、ルラシドン、アミスルプリド、バラペリドン、パリンドール、エプリバンセリン、オサネタント、リモナバン、メクリネルタント、Miraxion(登録商標)またはサリゾタン;
・バニロイド受容体アゴニスト(例えばレシニフェラトキシン)または拮抗薬(例えばカプサゼピン);
・β−アドレナリン作用薬、例えばプロプラノロール;
・局部麻酔薬、例えばメキシレチン;
・コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン;
・5−HT受容体アゴニストまたは拮抗薬、特に5−HT
1B/1Dアゴニスト、例えばエレトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタンまたはリザトリプタン;
・5−HT
2A受容体拮抗薬、例えばR(+)−α−(2,3−ジメトキシ−フェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニルエチル)]−4−ピペリジンメタノール(MDL−100907);
・コリン作用性(ニコチン性)鎮痛剤、例えばイスプロニクリン(TC−1734)、(E)−N−メチル−4−(3−ピリジニル)−3−ブテン−1−アミン(RJR−2403)、(R)−5−(2−アゼチジニルメトキシ)−2−クロロピリジン(ABT−594)またはニコチン;
・トラマドール(登録商標);
・PDEV阻害剤、例えば5−[2−エトキシ−5−(4−メチル−1−ピペラジニル−スルホニル)フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(シルデナフィル)、(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−ピラジノ[2’,1’:6,1]−ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(IC−351またはタダラフィル)、2−[2−エトキシ−5−(4−エチル−ピペラジン−1−イル−1−スルホニル)−フェニル]−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4−オン(バルデナフィル)、5−(5−アセチル−2−ブトキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−エチル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン、5−(5−アセチル−2−プロポキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−イソプロピル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン、5−[2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−[2−メトキシエチル]−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン、4−[(3−クロロ−4−メトキシベンジル)アミノ]−2−[(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル]−N−(ピリミジン−2−イルメチル)ピリミジン−5−カルボキサミド、3−(1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−6、7−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−N−[2−(1−メチルピロリジン−2−イル)エチル]−4−プロポキシベンゼンスルホンアミド;
・カンナビノイド;
・代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ1(mGluR1)拮抗薬;
・セロトニン再取り込み阻害剤、例えばセルトラリン、セルトラリン代謝物デメチルセルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン(フルオキセチンデスメチル代謝物)、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラム代謝物デスメチルシタロプラム、エスシタロプラム、d,l−フェンフルラミン、フェモキセチン、イフォキセチン、シアノドチエピン、リトキセチン、ダポキセチン、ネファゾドン、セリクラミンおよびトラゾドン;
・ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害剤、例えばマプロチリン、ロフェプラミン、ミルタザピン(mirtazepine)、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン、ミアンセリン、ブプロプリオン、ブプロプリオン代謝物ヒドロキシブプロプリオン、ノミフェンシンおよびビロキサジン(Vivalan(登録商標))、特に選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、例えばレボキセチン、特に(S,S)−レボキセチン;
・二重セロトニン−ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、例えばベンラファキシン、ベンラファキシン代謝物O−デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン、クロミプラミン代謝物デスメチルクロミプラミン、デュロキセチン、ミルナシプランおよびイミプラミン;
・誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤、例えばS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−L−ホモシステイン、S−[2−[(1−イミノエチル)−アミノ]エチル]−4,4−ジオキソ−L−システイン、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン、(2S,5Z)−2−アミノ−2−メチル−7−[(1−イミノエチル)アミノ]−5−ヘプテン酸、2−[[(1R,3S)−3−アミノ−4−ヒドロキシ−1−(5−チアゾリル)−ブチル]チオ]−5−クロロ−3−ピリジンカルボニトリル;2−[[(1R,3S)−3−アミノ−4−ヒドロキシ−1−(5−チアゾリル)ブチル]チオ]−4−クロロベンゾニトリル、(2S,4R)−2−アミノ−4−[[2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]チオ]−5−チアゾールブタノール、2−[[(1R,3S)−3−アミノ−4−ヒドロキシ−1−(5−チアゾリル)ブチル]チオ]−6−(トリフルオロメチル)−3ピリジンカルボニトリル、2−[[(1R,3S)−3−アミノ−4−ヒドロキシ−1−(5−チアゾリル)ブチル]チオ]−5−クロロベンゾニトリル、N−[4−[2−(3−クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン−2−カルボキサミジン、またはグアニジノエチルジスルフィド;
・アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル;
・プロスタグランジンE
2サブタイプ4(EP4)拮抗薬、例えばN−[({2−[4−(2−エチル−4,6−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)フェニル]エチル}アミノ)−カルボニル]−4−メチルベンゼンスルホンアミドまたは4−[(1S)−1−({[5−クロロ−2−(3−フルオロフェノキシ)ピリジン−3−イル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸;
・ロイコトリエンB4拮抗薬;例えば1−(3−ビフェニル−4−イルメチル−4−ヒドロキシ−クロマン−7−イル)−シクロペンタンカルボン酸(CP−105696)、5−[2−(2−カルボキシエチル)−3−[6−(4−メトキシフェニル)−5E−ヘキセニル]オキシフェノキシ]−吉草酸(ONO−4057)またはDPC−11870、
・5−リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばジレウトン、6−[(3−フルオロ−5−[4−メトキシ−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル])フェノキシ−メチル]−1−メチル−2−キノロン(ZD−2138)、または2,3,5−トリメチル−6−(3−ピリジルメチル)、1,4−ベンゾキノン(CV−6504);
・ナトリウムチャンネルブロッカー、例えばリドカイン;または
・5−HT3拮抗薬、例えばオンダンセトロン;
および、それらの薬学的に許容できる塩および溶媒和物、
から選択される。
【0052】
−本発明の第8態様によれば、個体での、疼痛または任意の前述の疼痛および/または疼痛の症状の発生を治療する、予防する、改善する、制御する、減少させる、または、疼痛または任意の前述の疼痛および/または疼痛の症状の発達または進行を遅らせる方法であって、第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または、第3および第4態様による核酸分子またはベクターの有効量での個体への投与を含む方法が提供される。
【0053】
好ましくは、前記個体は、哺乳類、例えばウマ、ネコまたはイヌなどのコンパニオン動物、または、ヒツジ、ウシまたはブタなどの家畜である。最も好ましくは、前記哺乳類はヒトである。
【0054】
−本発明の第9態様によれば、疼痛または任意の前述の疼痛/または症状の発生を治療する、予防する、改善する、制御する、減少させる、または疼痛または任意の前述の疼痛/または症状の発達または進行を遅らせる、いずれか1つまたは複数のための医薬組成物であって、第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または、第3および第4態様による核酸分子またはベクターおよび薬学的に許容できる担体および/または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0055】
好ましくは、第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または、第3および第4態様による核酸分子またはベクター、または、第9態様の医薬組成物は、経口、舌下、口腔内、局所、直腸内、吸入、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、骨内、皮内、腹腔内、経粘膜、膣内、硝子体内、関節内、関節周囲、局所または皮膚上の投与のために調製され、またはそれらの投与に適切である。
【0056】
好ましくは、第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または、第3および第4態様による核酸分子またはベクター、または、第9態様の医薬組成物は、疼痛発症前および/または疼痛発症中および/または疼痛発症後の投与のために、または、そのような使用のために、調製され、またはそれらの投与に適切である。
【0057】
好ましくは、第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または第3および第4態様による核酸分子またはベクターまたは第9態様の医薬組成物は、1週間あたり1回〜7回、さらに好ましくは1ヶ月あたり1回〜4回、さらに好ましくは6ヶ月の期間で1回〜6回、さらに好ましくは1年あたり1回〜12回の投与のためであり、またはそのような投与のために調製される。好ましくは、薬剤は、1日に1回、2日、3日、4日、5日または6日ごとに1回、毎週、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、毎月、2ヶ月ごとに1回、3ヶ月ごとに1回、4ヶ月ごとに1回、5ヶ月ごとに1回、6ヶ月ごとに1回、7ヶ月ごとに1回、8ヶ月ごとに1回、9ヶ月ごとに1回、10ヶ月ごとに1回、11ヶ月ごとに1回または毎年から選択される期間で、末梢に投与されるものであり、または、投与されるために調製される。
【0058】
さらに好ましくは、第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または第3および第4態様による核酸分子またはベクター、または第9態様の医薬組成物は、経口で、舌下に、口腔に、局所的に、直腸に、吸入を介して、経皮的に、皮下で、静脈内に、動脈内に、または筋肉内に、心臓内投与を介して、骨内に、皮内に、腹腔内に、経粘膜的に、経膣的に、硝子体内に、皮膚上に、関節内に、関節周囲に、または局所的に、1つまたは複数から選択される経路を介して末梢に投与されるものであり、または投与されるために調製される。
【0059】
好ましくは、第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または第3および第4態様による核酸分子またはベクター、または第9態様の医薬組成物は、約0.1〜約200mg/mlの間;好ましくは約0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200mg/ml+/−約10%誤差のいずれか、最も好ましくは約50mg/mlの濃度での投与のためであり、または、投与のために調製される。
【0060】
好ましくは、第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または第3および第4態様による核酸分子またはベクター、または第9態様の医薬組成物は、約0.1〜約200mg/kg体重の間;好ましくは約0.5、1、5、10、1520、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または約200mg/kg体重+/−約10%誤差のいずれか、最も好ましくは約10mg/kgの濃度での投与のためであり、または、投与のために調製される。
【0061】
−本発明の第10態様によれば:
(a)第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または第3および第4態様による核酸分子またはベクター、または第9態様の医薬組成物;および、
(b)疼痛および/または疼痛の症状の予防または治療のいずれか1つまたは複数のための、または、疼痛および/または疼痛の症状の発生を改善する、制御する、減少させる、または、疼痛および/または疼痛の症状の発達または進行を遅らせるための、個体への有効量の前記p75NTR(NBP)、核酸分子、ベクターまたは医薬組成物の投与に関する指示書
を含むキットが提供される。
【0062】
キットは、本明細書に記載のp75NTR(NBP)、核酸、ベクターまたは医薬組成物を含んだ1つまたは複数の容器、および、本発明の方法および用途のいずれかによる使用に関する指示書を含んでよい。キットは、個体が疼痛または疼痛の兆候を有する、または、そのようなものを有するリスクがあるかどうかの同定に基づいて、治療に適切な個体を選択する説明書をさらに含んでよい。医薬組成物の投与に関する指示書は、用量、投与スケジュール、および、意図する治療のための投与経路に関する情報を含んでよい。
【0063】
本発明の第11態様によれば、予防または治療の任意の1または複数での使用のための、または、ニューロトロフィンNGF、BDNF、NT−3、NT−4/5のいずれか1つまたは複数と関連する状態または状態の症状の発生を改善する、制御する、減少させるための、または、ニューロトロフィンNGF、BDNF、NT−3、NT−4/5のいずれか1つまたは複数と関連する状態または状態の症状の発達または進行を遅らせるための、第1、第2または第7態様またはそれらの好ましい実施態様によるp75NTR(NBP)、または、第3および第4態様による核酸分子またはベクター、または第9態様の医薬組成物が提供される。
【0064】
−NGF(神経成長因子)は、少なくとも2つのクラスの受容体:p75NTRおよびTrkA、膜貫通チロシンキナーゼと結合し、軸索の成長、分岐および伸長に関与する。NGFと関連する状態および症状は公知である。NGFは、炎症性疾患および疼痛において発現されて、炎症性疾患および疼痛と関連する[タンパク質配列NP_002497.2、NP_038637]。また、NGFは、数々の心血管系の疾患、例えば冠動脈アテローム性動脈硬化、肥満、2型糖尿病、およびメタボリック症候群において、および多発性硬化症において、役割を果たすことが示されている。NGFの血漿レベルの減少は(およびBDNFの血漿レベルの減少もまた)、急性冠動脈症候群およびメタボリック症候群と関連している。NGFはまた、様々な神経障害、例えば認知症、うつ病、神経分裂症、自閉症、レット症候群、神経性食欲不振、および神経性過食症とも関連し、そして、アルツハイマー病および神経変性疾患の発達にも関与している。NGFはまた、創傷治癒を促進することも示されており、皮膚の潰瘍および角膜の潰瘍の治療に役立ち得ることができる証拠が存在し、ラットにおいて、神経変性を減らし、末梢神経の再生を促進することが示されている。
【0065】
−BDNF(脳由来神経栄養因子)はニューロトロフィンであり、神経系の発達中の神経の生存および伸長をサポートする[タンパク質配列NP_001137277.1、NP_001041604]。BDNFは、細胞表面受容体TrkBおよびp75NTRに結合し、また、α−7ニコチン性受容体の活性を調節する。BDNFと関連する状態および症状は公知である。BDNFは、生理学的および病理学的疼痛の伝達において、特に、BDNFの合成が非常に増加することが認められている急性痛、炎症性疼痛および神経障害性疼痛のモデルにおいて、重大な役割を果たすことが示されていて;また、BDNFは、慢性痛の症状において、およびさらに湿疹および乾癬などの症状において、上方制御されることが示されている。BDNFの下方制御は、うつ病、神経分裂症、強迫性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、レット症候群、および認知症、ならびに、神経性食欲不振および神経性過食症でみられる。
【0066】
−ニューロトロフィン−5(NT−5)としても知られるニューロトロフィン−4(NT−4)は、主にp75NTRおよびTrkB受容体を介してシグナル伝達して、末梢知覚交感神経細胞の生存を促進する神経栄養因子である。このタンパク質の成熟ペプチドは、ヒト、ブタ、ラットおよびマウスを含む調べられた全ての哺乳類において同一である[タンパク質配列NP_006170、NP_937833]。NT−4は、後根神経節(DRG)の主な神経細胞、および、傍脊椎および椎前の交感神経節、背側および腹角の脊椎の神経細胞により生成され、前立腺、胸腺、胎盤および骨格筋を含む多くの組織において発現が見られる。NT−4/5と関連する状態および症状は公知である。NT4/5における異常は、原発性開放隅角緑内障に対する感受性と関連する。また、ニューロトロフィン4は、乳がん細胞の生存に寄与することも示されており、腫瘍増殖を阻害する標的である。NT−4/5は、疼痛とシグナリング系、例えば侵害受容性疼痛に関与することが知られており、また、NT−4/5の上方制御は、皮膚の慢性炎症性疾患、例えば皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎の痒疹病変にも見られる。NT−4/5の下方制御は、アルツハイマー病、ハンチントン病に見られる。
【0067】
−ニューロトロフィン−3(NT−3)は、構造的に、β−NGF、BDNF、およびNT−4に関連し、哺乳類の神経細胞の生存と分化および成人の神経系の維持を調節するニューロトロフィンであり、ヒト胎盤で発現されると、胚での神経細胞の発達に影響し得る。NT3と関連する状態および症状は公知である。遺伝子ターゲッティングにより生産されたNTF3−欠損マウスは、手足の重度な運動障害を示す。NT−3は、Trk受容体を介してシグナル伝達し、神経およびグリア細胞の増殖および生存を促進する[タンパク質配列NP_001096124.1およびNP_032768]。ヒト、マウスおよびラットのNT−3アミノ酸配列は同一である。NT3およびその同起源受容体、チロシンキナーゼC(TrkC)は、神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛、および、侵害受容と自己受容性感覚(proporioception)の機能を調節することが知られており、例えば、NT3発現は、神経障害性動物の小型DRG細胞内で増加している。また、NT3発現は、神経障害、例えば糖尿病性多発性神経障害およびHIV関連の神経障害、萎縮を含む大径繊維神経障害(large fiber neuropathy)とも関連し、さらに、痛覚過敏の進行(通常の侵害性刺激の閾値が減少する)、アロディニア(非侵害性刺激が侵害性になる)、および自発痛(明らかに刺激が不存在下での疼痛)に関与し、公知の筋肉痛のモジュレーターである。
【0068】
ここで、本発明は、本発明を説明するために提供されるが制限はしない以下の実施例を参照することにより、記載される。
【0069】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供され、本発明を制限しない。
【実施例】
【0070】
(実施例1)内因性p75NTR(NBP)−神経栄養(Neurotrophic)複合体は、ヒト血漿に対して検出される。
磁気ビーズを土台としたNGF(Millipore Corp;MA)を用いたアッセイおよびビオチン化ヤギポリクローナル抗ヒトNGF抗体(Novus Biologicals;CO)を用いた免疫沈降の後に、SISCAPA(Siscapa
http://siscapa.com/home.html)を行ない、それから続けて、LC−MS/MS(LLOQ 7pg/ml)中で判定して、ヒト血漿中にp75NTR/NGF複合体が存在することの直接の証拠が得られた。ポリクローナル抗NGF抗体は、ヒト血清/血漿におけるフリーのNGFを定量するために用いた。
【0071】
p75NTRの細胞外ドメインのペプチド配列(CAYGYYQDETTGR(配列番号4) VCEAGSGLVFSCQDK(配列番号6) WADAECEEIPGR(配列番号7))(
図2に示す)を、p75NTRのキメラ消化の後に、LC−MS/MSにより、p75NTRのスタンダードとして選択した。全てのNGFアッセイ(上述のとおり)で検出されたp75NTRの共免疫沈降は、p75NTRコントロールペプチドの存在を示すことができ、ヒト血清における可溶性p75−NGF複合体の証拠を提供した。p75NTR(NBP)と、BDNF、NT−3およびNT4/5の同様の相互作用もまた、BDNF、NT−3およびNT4/5それぞれの抗体との共免疫沈降を用いて判定した。これらの試験は、NGF、BDNF、NT−3およびNT4/5のいずれかに結合したヒト血漿中の可溶性p75神経栄養(Neurotrophic)結合タンパク質の存在を示す。
【0072】
図2に示すデータは、可溶性p75NTR(NBP)ペプチドのスタンダードフラグメント、および、ヒト血漿におけるp75NTR(NBP)−NGF複合体を示すp75NTR(NBP)とNGFの共免疫沈降を示す。ニューロトロフィン−p75NTR(NBP)複合体での結合に関与するキーとなるペプチドは、WADAECEEIPGR(配列番号7)、CAYGYYQDETTGR(配列番号4)、VCEAGSGLVFSCQDK(配列番号6)であることが、ヒト血漿でのp75NTR(NBP)−NGF共免疫沈降試験の知見から明らかであり、加えて我々は、配列LDSVTSDVVSATEPCKP(配列番号8)もまた、結合に重要であると決定した。
【0073】
BDNFおよびNT−3でこの試験を繰り返したところ、p75NTR(NBP)の同一のキーとなる結合領域の重要性が示され、そして、BDNFおよびNT−3とのp75NTR(NBP)の共免疫沈降が証明され、これはヒト血漿でのp75NTR(NBP)−BDNFおよびp75NTR(NBP)−NT−3複合体を示している。
【0074】
(実施例2)可溶性p75NTR(NBP)は、TrkAを発現するU20S細胞株において、および、TrkAおよびp75NTRを共発現するU20S細胞株において、NGF機能を阻害する。
NGF機能に対するp75NTR(NBP)の効果を、TrkAを発現するU20S細胞において、および、TrkAおよびp75NTRを共発現するU20S細胞において、調べた(Discoverx Corp CA)。アッセイは、PathHunterの方法論(Discoverx Corp CA)に従って実施し、要するに、TrkAおよびTrkA+p75NTRを発現するU20S細胞を、DiscoveRx Corporationから購入した。TrkAを発現するU20S細胞、および、TrkA+p75NTRを共発現する細胞を、最小必須培地(MEM;Sigma Aldrich)+0.5%ウマ血清(Sigma Aldrich)に、40,000細胞/ウェルの密度で蒔いて、37℃で一晩培養した。プレートを、使用の30分前にインキュベーターから取り出して、室温で保管した。
【0075】
NGFα(Sigma Aldrich)およびp75NTR(NBP)−Fc(p75NTR(NBP)(配列番号2)をIgG−Fc(配列番号12)にリンカー(配列番号17)を用いてつなげる)、またはp75NTR(NBP)(p75NTR(NBP)(配列番号2)、またはアルブミン(配列番号10)に結合されたp75NTR(NBP)、またはトランスフェリン(配列番号9)に結合されたp75NTR(NBP)(p75NTR(NBP)(配列番号2))を、ハンクス平衡食塩水バッファー(HBSS Sigma Aldrich)+0.25% BSA中に希釈した。NGFを連続的に希釈して、0nM〜200nMの範囲の濃度を得た。Fc IgG、アルブミンまたはトランスフェリンのいずれかに結合されたP75NTR(NBP)をHBSS中に希釈して、100ng/mlの濃度のp75NTRを得た。
【0076】
それぞれの濃度(0〜200nM)のNGFを5μlと、p75NTR(NBP)+/−担体を5μlとを、各ウェルに加えた。事前のインキュベーションに対する影響を理解するために、この混合物10μlを各ウェルに加える前に、p75NTR(NBP)+/−担体およびNGFを室温で20分間インキュベートした。NGFおよびp75NTR(NBP)+/−担体を加えた直後に、12μlの検出溶液(Discoverx Corp CA)を各ウェルに加えて、Parkard Victor 2 プレートリーダーで読み取る前に、プレートを室温で60分間インキュベートした。用量反応曲線およびp75NTR(NBP)の添加に応答した曲線変動を観測した。用いた担体にかかわらず、担体無しのp75NTR(NBP)、p75NTR(NBP)−Fc、p75NTR(NBP)−アルブミンまたはp75NTR(NBP)−トランスフェリンの、NGF用量反応曲線における抑制および変動が観測された(
図4参照)。
【0077】
(実施例3)p75NTR(NBP)は、TrkBを発現するU20S細胞株において、および、TrkBおよびp75NTRを共発現するU20S細胞株において、BDNF機能を阻害する。
BDNF機能に対するp75NTR(NBP)の効果を、TrkBを発現するU20S細胞において、および、TrkBおよびp75NTRを共発現するU20S細胞において、調べた(Discoverx Corp CA)。アッセイは、PathHunterの方法論(DiscoverxCorpCA)に従って実施し、要するに、TrkBおよびTrkB+p75NTRを発現するU20S細胞を、DiscoveRx Corporationから購入した。TrkBを発現するU20S細胞、および、TrkB+p75NTRを共発現する細胞を、最小必須培地(MEM;Sigma Aldrich)+0.5%ウマ血清(Sigma Aldrich)に、40,000細胞/ウェルの密度で蒔いて、37℃で一晩培養した。プレートを、使用の30分前にインキュベーターから取り出して、室温で保管した。
【0078】
BDNFα(Sigma Aldrich)およびp75NTR(NBP)−Fc(p75NTR(NBP)(配列番号2)をIgG−Fc(配列番号12)にリンカー(配列番号17)を用いてつなげる)、またはp75NTR(NBP)(p75NTR(NBP)(配列番号2)、またはアルブミン(配列番号10)に結合されたp75NTR(NBP)、またはトランスフェリン(配列番号9)に結合されたp75NTR(NBP)(p75NTR(NBP)(配列番号2))を、ハンクス平衡食塩水バッファー(HBSS Sigma Aldrich)+0.25% BSA中に希釈した。BDNFを連続的に希釈して、0nM〜200nMの範囲の濃度を得た。Fc−IgG、アルブミンまたはトランスフェリンのいずれかに結合されたP75NTR(NBP)をHBSS中に希釈して、100ng/mlの濃度のp75NTR(NBP)を得た。
【0079】
それぞれの濃度(0〜200nM)のBDNFを5μlと、p75NTR(NBP)+/−担体を5μlとを、各ウェルに加えた。事前のインキュベーションに対する影響を理解するために、この混合物10μlを各ウェルに加える前に、p75NTR(NBP)+/−担体およびBDNFを室温で20分間インキュベートした。BDNFおよびp75NTR(NBP)+/−担体を加えた直後に、12μlの検出溶液(Discoverx Corp CA)を各ウェルに加えて、Parkard Victor 2 プレートリーダーで読み取る前に、プレートを室温で60分間インキュベートした。用量反応曲線およびp75NTR(NBP)の添加に応答した曲線変動を観測した。用いた担体にかかわらず、担体無しのp75NTR(NBP)、p75NTR(NBP)−Fc、p75NTR(NBP)−アルブミンまたはp75NTR(NBP)−トランスフェリンの、BDNF用量反応曲線における抑制および変動が観測された(
図5参照)。
【0080】
(実施例4)BDNFに対するp75NTR(NBP)の結合、および、抗BDNFとp75NTR(NBP)との間の競合を示す、バイオコアデータ。P75−Fc(p75NTR(NBP)−Fc)、(500μg/ml)を、10mM 酢酸pH5.0中に25μg/mlの濃度まで希釈して、ランニングバッファーHBS−P(0.005% P20)+1mg/ml BSAを用いてバイオコアチップ上に固定した。HBS−P(0.005% P20)+1mg/ml BSAバッファー中に、BDNF(R and D systems由来)2μMのストック溶液を調製した。BDNFの競合実験を、p75および以下の濃度でのMAB248(BDNF anti−body RandD systems)の存在下または不存在下で実施した:i)MAB248(500nM)のみ、ii)BDNF(20nM)+MAB248(500nM)、iii)BDNF(20nM)のみ、およびiv)BDNF(20nM)+MAB248(100nM)。全てのサンプルはストック溶液から調製して、ランニングバッファー;HBS−P(0.005% P20)+1mg/ml BSAに希釈した。全てのサンプルは、注入前に室温で30分間放置した。手動センサーグラムを、50μl/分の流速でバイオコアチップ全体にわたって開始した。各サンプルは、別々のセンサーグラムのサイクルで、上記に挙げた順番で30秒間注入した。必要な場合は、5mM NaOHで、12秒間(10μl)サイクルで再生を行なった。
図6に示すように、p75NTR(NBP)はBDNFに結合する。
【0081】
(実施例5)PC12細胞における、p75NTR(NBP)によるNGF活性の阻害
p75NTR(NBP)は、細胞表面上にTrkAおよび/またはTrkA+p75を発現するPC−12およびN2OS細胞において、NGFの活性を著しく阻害することが示された(
図7)。
【0082】
低継代培養PC12細胞(継代培養数20〜24)を、5%ウシ胎児血清および10%熱不活化ウマ血清およびペニシリン−ストレプトマイシン(10U/ml〜0.1mg/ml)で補充されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で、96ウェルプレート上で直接増殖して、5% CO2を含む加湿雰囲気中で、37℃でインキュベートした。NGF(50ng/ml)を増殖培地に加えて、PC12細胞を分化させた。200、100、50、25、12.5、6.25、3.1、1.5、0.78、0.39、0.2、0.1ng/mlの投与濃度のP75NTR(NBP)を、プレート全体にわたって各ウェルに加えた。プレートを37℃で24時間インキュベートして、続いて、細胞数を細胞カウンターにより判定した。
図8に示すように、培地へのp75NTR(NBP)の添加は、PC−12細胞がそれらの軸索表現型に分化するのを著しく阻害した。NGFの存在下では、PC−12細胞は、分化して神経様の表現型を形成する。これは、p75NTR(NBP)に応じた用量依存的な様式で阻害された。これらの試験から、p75NTR(NBP)はNGFの作用を阻害することが結論付けられた。
【0083】
(実施例6)神経栄養(Neurotrophic)結合タンパク質p75NTR(NBP)は、神経興奮性モデルでの無意識の痛覚過敏において、BDNFの効果を阻害する。
雄のSprague Dawleyラットを、イソフルラン(誘導には酸素中に5%、管理には酸素中に1.5〜2.0%)で麻酔した。腰部椎弓切除術により脊髄を露出して、脊髄のL4〜L6領域を露出させて、タングステン微小電極を背角に挿入して、分離された広ダイナミックレンジの神経細胞から記録した。記録ユニットのスパイク振幅がベースラインノイズのレベルの少なくとも3倍であるように、それぞれのWDR神経細胞を分離した。応答は、neurolog AC結合型増幅器を用いて増幅して、CED spike 2 ソフトウェアを用いて記録した。薬適用の前に、3つの安定したベースラインの応答(10%未満の変動)を、自然な刺激(ブラシ、フォンフレイ(von Frey)、ピンチおよび熱)の範囲まで取得した。ブラシ刺激は、きめの細かい綿の束で、末梢受容野の中央をストロークすることにより与えた。フォンフレイフィラメントおよび熱(43度に設定した持続的なウォータージェットを用いる)は、10秒間与えた。ピンチは5秒間与えた。安定したベースラインの応答が得られた時点で、BDNFのみ(0.1% BSA中に500ng)またはBDNF(500ng)+p75NTR(NBP)(500ng、注入の前に40分間、事前インキュベート)を、インスリンシリンジを用いて、25μlの容量で受容野の中央にアプライした。薬の効果を150分間フォローして、10分間隔で試験を行なった。実験の終了時に、ラットを頚椎脱臼により屠殺した。
【0084】
図8に示すように、BDNFは神経の興奮性を有意に増大させて、これは、後の刺激で増幅された。p75NTR(NBP)の添加は、全ての刺激;生理食塩水、BDNF、ブラシおよびピンチに応答して、神経の興奮性を有意に減少させた。p75NTR(NBP)は、神経の興奮性およびその後の疼痛を減少させることが明らかである。
【0085】
(実施例7)神経栄養(Neurotrophic)結合タンパク質P75NTR(NBP)は、UVIHモデルでの痛覚過敏を阻害する。
<動物のUV曝露>
Charles Riverの雄のSprague Dawleyラット(175〜200g)を、2%イソフルラン(isofluorane)O
2混合物で麻酔した。右後足の足底面が300mJ/cm
2のUVで照射される間、(Saalmann CupCube system,Saalmann GmbH,Germany;λ=280−400nm)ノーズコーンを介して麻酔を維持した。UV源に取り付けられた成形デリバリーカラー(8×12mm)を用いて、ラットの後足の足底面に照射源を取り付けた(Pfizer施設管理およびエンジニアリングチーム)。UV源の強度は、SEL005/WBS320/TDフィルターを備えたABLE 1400Aラジオメーターを用いて較正した(ABLE Instruments and Controls Ltd)。使用したUV曝露は、ナイーブラットにおいて皮膚の紅斑を生じさせ、他の有害事象は生じない(体重減少無し、ストレスの兆候または明らかな不快感無し)。
【0086】
<温痛覚過敏の評価>
Hargreavesら(1988)の改変法の後にラット足底テスト(Ugo Basile,Italy)を用いて、温痛覚過敏を評価した。テストの前にラットを装置に慣れさせた(15〜30分)。足底テストは、高架式ガラステーブル上の3つの個々のパースペックスのボックスで構成された。装置あたり6匹のラットを同時にテストできるように、2匹のラットを各ボックス内で飼った。
【0087】
モバイル赤外線熱源を、ラット後足の足底面の真下に当てた。足引込み潜伏時間(paw withdrawal latency)(PWL)を、ラットが熱源からその後足を退けるのにかかる時間(秒)として定義した。源は、未治療の動物に8〜12秒の応答を与えるように調整した(105−120mW/cm
2)。組織ダメージを防ぐために、20秒の自動カットオフポイントを設定した。
【0088】
ベースラインの測定(UV曝露前のナイーブラット、0日目)および痛覚過敏発症の確認(1日目)の間に、各ラットの後足から5つの記録を取った。1日あたり2セッションを、0日目および1日目に実施した。
【0089】
ベースライン、および、2日目、3日目および4日目(それぞれ、UV曝露後48時間、72時間および96時間)での薬剤の効能の評価中の各テストポイントについては、代わりに、足ごとに3つの記録を収集した。無傷の足を常に最初に評価した。
【0090】
温痛覚過敏は、PWLの平均が5秒以下を示す動物として定義され、試験のために選択される。
【0091】
<静的アロディニアの評価>
アロディニアの評価の前に、底が針金のテストケージに動物を慣れさせる。フルアップダウンの測定が行われる前に、馴化の第1日目に15g、8g+4gのフィラメント、第2日目に4gのフィラメントの適用により、動物をフォンフレイヘアー(von Frey Hairs)に慣れ親しませる。静的アロディニアは、後足の足底面に対して、昇順の力(0.6、1、1.4、2、4、6、8、10、15および26グラム)で、フォンフレイヘアー(Stoelting,Wood Dale,Illinois,U.S.A.)の適用により評価する。各フォンフレイヘアーは、最大で6秒間、または引込み応答が起きるまで、足に適用する。フォンフレイヘアーに対する引込み応答が実証された時点で、引込みを生じたものより低いフィラメントでスタートして、続いて、残りのフィラメントで、降順の力で、引込みが生じなくなるまで、足を再試験する。最も強い力の26gが足を持ち上げて応答を生じさせるので、カットオフポイントを示す。各動物は、この様式で両後足を試験される。応答を生じさせるために必要とされる最低量の力は、足引込み閾値(paw withdrawal threshold)(PWT)としてグラムで記録される。静的アロディニアは、通常のラットでは刺激とならない4gまたはそれ未満の刺激に動物が反応する場合に、有りと定義される。
【0092】
テスト前に動物をベースライン化して、包含基準を満たすアロディニアを示すものをPWLに基づいてランダム化して投与する。試験化合物を投与して、所定の時間に(試験化合物の薬物動態特性に依存する)、その後の投与測定を投与後の選択時間に行ない、全データを分析のために集める。
図9に示されるように、p75NTR(NBP)10mg/kg皮下に関するPWLデータ(NBPP−Fcと表す)が、コントロール、イブプロフェン100mg/kg経口投与(po)および抗NGF抗体10mg/kg皮下と比較して示され、温痛覚過敏の評価に関するデータは、各場合において同等の程度を示した。
[参考文献]