(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242364
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ドット方式にコーティングされた厨房器具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 36/02 20060101AFI20171127BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20171127BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20171127BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20171127BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
A47J36/02 B
B05D1/02 Z
B05D1/36 Z
B05D5/06 104H
B05D7/00 K
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-89474(P2015-89474)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-2455(P2016-2455A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年11月17日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0072910
(32)【優先日】2014年6月16日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505260844
【氏名又は名称】金 玲
(74)【代理人】
【識別番号】100066061
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(74)【代理人】
【識別番号】100143340
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 美良
(72)【発明者】
【氏名】金 玲
【審査官】
西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−521450(JP,A)
【文献】
特開2010−064487(JP,A)
【文献】
特開2007−014895(JP,A)
【文献】
特開平07−008387(JP,A)
【文献】
特表2014−503281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 36/02
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマーコーティング液を10〜12μmの厚さで厨房器具の表面に塗布してプライマーコーティング層形成した後、100〜200℃で乾燥するプライマーコーティング層形成ステップ、
前記プライマーコーティング層の表面全体に反復的な点噴射でコーティング液をスプレーしてドット状を形成させるドット層形成ステップ及び
400〜420℃で熱処理するステップを含み、
前記ドット粒子は点噴射によってプライマーコーティング層の上に個々に接着されて表面を形成し、前記ドット粒子は、点噴射によるプライマーコーティング層に接着される際の平均直径は5μm乃至10mmであり、
前記プライマー層の上のドット層の面積は60乃至98%の面積割合を示し、
前記ドット層は点噴射方式で吹き付けたものであって、前記ドット粒子が0〜20層に重なって形成され、多様な色を有する複数のノズルを介して点噴射を同時に又は個別的に噴射してドット層に多様な色を具現し、
液体形態に点噴射されたドット粒子は乾燥の際に液体成分が乾燥されて前記ドット粒子それぞれに区分されて、全体のドット層からみるとドット層の上端部分に凸凹が発生し、
前記ドット層形成ステップの後で100〜200℃で乾燥し、トップコーティング液を8〜12μmの厚さで塗布してから400〜420℃で熱処理してトップコーティング層を形成するステップを更に含むことを特徴とするドット方式にコーティングされた厨房器具の製造方法。
【請求項2】
前記ドット層の厚さは、20〜150μmであることを特徴とする請求項1に記載のドット方式にコーティングされた厨房器具の製造方法。
【請求項3】
前記ドット層は0.2〜1.0MPの圧力で点噴射されることを特徴とする請求項1に記載のドット方式にコーティングされた厨房器具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドット方式にコーティングされた厨房器具及びその製造方法に関し、より詳しくは、厨房器具の表面全体がドット方式にコーティングされた厨房用器具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、厨房器具とはフライパン、鍋などのような飲食物を入れて調理する容器をいう。
【0003】
図1は、従来の厨房器具を示す図である。
図1を参照して従来の厨房器具を説明すると以下のようである。図面に示したように、前記厨房器具10は飲食物の調理が行われる本体と取っ手13で構成され、本体には飲食物が焦げ付くことを防止すると共に洗浄の際に焦げ目が容易に除去されるように調理面11aに一層以上の保護皮膜層12を形成する。
【0004】
一般に厨房器具とはフライパン、鍋などのような飲食物を入れて調理する容器をいい、その構成はボウル(bowl)状の本体と前記本体を便利に取り扱うための取っ手が一側又は両側に形成されているか脱着可能な取っ手で形成されており、厨房器具に表面11を保護する保護皮膜層12をコーティングする。
【0005】
一方、厨房器具のデザインに対する購入者の要求が多様になるにつれ、厨房器具の表面のデザイン、即ち、イメージ皮膜層及び新たな視覚効果を形成しようとする試みが多様に行われており、このような試みの例として鍋の表面にシルクプリントを利用したユニークな文様を示す方式などで多様な模様を厨房器具の表面に造成している。
【0006】
しかし、上述した従来の方法で厨房器具を製作する際には以下のような問題点があった。
【0007】
第一に、このような従来の厨房器具は調理面の色が大体暗くて単色であるため、主な購入者であり、使用者である女性の製品購入に対する欲求や製品の商品的な特性を向上させるのに限界があるという問題があった。
【0008】
第二に、従来の厨房器具の側面は垂直方向に湾曲した面を成すため底面にスクリーン印刷、転写或いはパッドスタンピングするなどの方法で内部に文様を構成して単純な色に変化を与えているが、これは別途の器具を必要とするか追加の作業を必要としていた。
【0009】
最後に、従来の厨房器具の製作方法では通常高圧で顔料を噴射するため多量な飛散損失が発生するとともにコーティングされる塗膜の厚さを選択的に調節することが難しいという問題があった。
【0010】
また、厨房器具に色効果を形成するに当たって、厨房器具の表面全体ではなく一部分に表示されて厨房器具の美感向上に限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記のような問題を解決するための本発明の目的は、厨房器具の表面を選択的にコーティングして望みの厚さで従来より厚いコーティング層を形成しながら耐久性のある厨房器具を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、厨房器具の表面をコーティングする際にコーティング液の損失を最小化する厨房器具の製造方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、厨房器具の表面にコーティングされるコーティング層はコーティング液を色別に設けて多様な色の厨房器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、厨房器具の表面に形成されたプライマーコーティング層及び前記プライマーコーティング層の表面にドット粒子のコーティング液が繰り返し点噴射されてドット状に形成されたドット層を含み、前記ドット粒子は点噴射でプライマーコーティング層の上に個別的に接着されて表面を形成し、前記ドット粒子は、点噴射によるプライマーコーティング層に接着される際の平均直径は5μm乃至10mmであり、前記プライマー層の上のドット層の面積は60乃至98%の面積割合を示し、前記ドット層は点噴射方式で吹き付けたものであって、前記ドット粒子が0〜20層に重なって形成され、多様な色を有する複数のノズルを介して点噴射を同時に又は個別的に噴射してドット層に多様な色を具現し、液体形態に点噴射されたドット粒子は乾燥の際に液体成分が乾燥されて前記ドット粒子それぞれに区分されて、全体のドット層からみるとドット層の上端部分に凸凹が発生することを特徴とするドット方式にコーティングされた厨房器具を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記ドット層の厚さは20〜150μmであることを特徴とするドット方式にコーティングされた厨房器具を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記ドット層上にトップコーティング層を追加的に形成することを特徴とするドット方式にコーティングされた厨房器具を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記ドット層は0.2〜1.0MPの圧力で点噴射されることを特徴とするドット方式にコーティングされた厨房器具を提供する。
【0018】
また、本発明は、プライマーコーティング液を10〜12μmの厚さで前記厨房器具の表面に塗布してプライマーコーティング層形成した後、100〜200℃で乾燥するプライマーコーティング層形成ステップ、前記プライマーコーティング層の表面全体に反復的な点噴射でコーティング液をスプレーしてドット状を形成させるドット層形成ステップ及び400〜420℃で熱処理するステップを含み、前記ドット粒子は点噴射によってプライマーコーティング層の上に個々に接着されて表面を形成し、前記ドット粒子は、点噴射によるプライマーコーティング層に接着される際の平均直径は5μm乃至10mmであり、前記プライマー層の上のドット層の面積は60乃至98%の面積割合を示し、前記ドット層は点噴射方式で吹き付けたものであって、前記ドット粒子が0〜20層に重なって形成され、多様な色を有する複数のノズルを介して点噴射を同時に又は個別的に噴射してドット層に多様な色を具現し、液体形態に点噴射されたドット粒子は乾燥の際に液体成分が乾燥されて前記ドット粒子それぞれに区分されて、全体のドット層からみるとドット層の上端部分に凸凹が発生することを特徴とするドット方式にコーティングされた厨房器具の製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記ドット層を形成するステップの後で100〜200℃で乾燥し、トップコーティング液を8〜12μmの厚さで塗布してから400〜420℃で熱処理してトップコーティング層を形成するステップを更に含むドット方式にコーティングされた厨房器具の製造方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記ドット層の厚さは、20〜150μmであることを特徴とするドット方式にコーティングされた厨房器具の製造方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記ドット層は0.2〜1.0MPの圧力で点噴射されることを特徴とするドット方式にコーティングされた厨房器具の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるドット方式にコーティングされた厨房器具及びその製造方法はコーティング層を50〜150μmの厚さで形成してもクラックが発生しない耐久性があり、不良率が低下する厨房器具の製造が可能な効果がある。
【0023】
本発明によるドット方式にコーティングされた厨房器具及びその製造方法はプライマーコーティング層、ドット層及びトップコーティング層を厨房器具の表面に選択的にコーティングするが、ドット層を形成する際に低圧の点噴射でコーティングすることで低圧噴射を介したコーティング液の飛散液滴による損失を最小化する効果がある。
【0024】
また、本発明によるドット方式にコーティングされた厨房器具及びその製造方法は、厨房器具の表面にコーティングされるドット層は複数個のノズルに異なる色相のコーティング液を設けて点噴射を噴射させるようにし、単色又は多色を表現することで厨房器具の美感を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】本発明のドット方式にコーティングされた厨房器具の第1の実施例を示す断面図
【
図3】本発明のドット方式にコーティングされた厨房器具の第2の実施例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に添付された図面を参照して本発明の好ましい一実施例を詳細に説明する。
【0027】
まず、図面のうち同じ構成要素又は部品はなるべく同じ参照符号で示していることに留意すべきである。本発明を説明するに当たって、関連する公知機能又は構成に対する具体的な説明は本発明の要旨を不明確にしないために省略する。
【0028】
本明細書で使用される程度に関する用語「約」、「実質的に」などは言及された意味に固有の製造及び物質の許容誤差が提示される際にその数値で又はその数値に近接した意味で使用されるが、本発明の理解を助けるために正確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を比良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0029】
図2は本発明のドット方式にコーティングされた厨房器具の第1実施例を示す断面図であり、
図3は本発明のドット方式にコーティングされた厨房器具の第2実施例を示す断面図である。
【0030】
図2及び
図3に示したように、本発明のドット方式にコーティングされた厨房器具及びその製造方法は厨房器具の表面にプライマーコーティング層110及びドット層120で形成されるか、プライマーコーティング層110、ドット層120及びトップコーティング層130が選択的に適用されてコーティングされる。
【0031】
まず、本発明は厨房器具の表面100にプライマーコーティング層110が形成されるが、このようなプライマーコーティング層110はコーティングされる液を厨房器具の表面によくコーティングさせるために形成する層である。
【0032】
前記プライマーコーティング層110の造成は特に制限されないが、ポリアミドイミドのnmp溶解混合物、PTFE分散液、カーボンブラック分散液及びシリカ分散液などを利用してもよい。その例としては、ポリアミドイミドのnmp溶解混合物63〜74重量%、水3〜5重量%、PTFE分散液15〜18重量%、カーボンブラック分散液2〜4重量%及びシリカ分散液6〜10重量%であることが好ましい。
【0033】
プライマーコーティング液を10〜12μmの厚さで前記厨房器具の表面に塗布してプライマーコーティング層110形成し、温度は100〜200℃で約5分乃至20分間乾燥させる。
【0034】
プライマーコーティング層110の乾燥は作業性と作業時間などを考慮した温度である。プライマーコーティング層110の乾燥時間が5分より短ければ乾燥時間の不足によってコーティングの際に厨房器具を均一にコーティングする作業が難しくなる恐れがあり、20分より長く乾燥すれば作業時間の増大をもたらす。
また、前記プライマーコーティング層110の上にはドット層120が形成されるが、前記ドット層120はプライマーコーティング層110を形成した厨房器具の表面全体に反復的な点噴射でコーティング液を吹き付けて形成されるドット層120を形成する。
【0035】
前記ドット層120はコーティング液を点噴射で吹き付ける場合にはコーティング液がドット粒子状に一つ一つ離れてそれぞれ個別的に表面を形成する。即ち、点噴射によってドット粒子のコーティング液が個別的にプライマーコーティング層110の上に接着されて表面を形成する。
【0036】
点噴射される前記ドット粒子は平均直径が5μmから10mmまでその大きさは多様である。このように、前記ドット粒子は表現しようとするドットの大きさを自由に選択することができるが、これは点噴射されるノズルの制御によって可能になる。
【0037】
前記ドット層120のドット粒子は点噴射でプライマーコーティング層110の上に形成される際に0乃至20層に重なる。点噴射によって繰り返しドット粒子が多数の層に重なるようにすることでドット層120を形成する。このような点噴射でドット層120を形成する場合、他のコーティング構造より厚さを厚く形成しても前記ドット層120でクラックが発生しない長所がある。
【0038】
クラックが発生しない理由は、液体形態に点噴射されたドット粒子は乾燥の際に液体成分が乾燥されて前記ドット粒子それぞれに収縮が起こり、全体のドット層からみるとドット層の上端部分に凸凹が発生するようになる。これは一般に50μm以上にコーティング層を形成した際に乾燥の際にクラックが発生することとは異なる部分であるとともに、50μm以上の厚いコーティング層が形成されてもクラックが発生しない本発明の効果であるといえる。
【0039】
また、前記ドット層120は多様な色のコーティング液で形成されるが、これはドット層120を形成する際にコーティング液を色別に設けて複数個のノズルで同時に又は個別的に噴射してドット層120を形成する。
【0040】
前記ドット層120の造成はPFTE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤及び無機顔料などで形成される。より詳しい例としては、PTFE分散液86〜92重量%、水5.5〜6.53重量%、芳香族炭化水素0.5〜1.5重量%、トリエチルアミン0.2〜0.5重量%、オレイン酸0.2〜0.5重量%、界面活性剤0.1〜0.4重量%、無機顔料1.5〜3.5重量%であることが好ましい。
【0041】
また、前記ドット層120の形成は低圧の点噴射を成すことで0.2〜1.0MPの圧力で点噴射してコーティング液の飛散液滴による損失を最小化し、ドット層120の厚さを20〜150μmにしてコーティングする。
【0042】
即ち、一般的なスプレー方式で噴射が行われる場合には気体形態に形成されて噴射されたコーティング液の30乃至60%の損失が発生するが、本発明のドット層を形成する際には点噴射形態に粒子を大きくして落とす方式であるため低圧に点噴射されれば損失率が殆ど発生しない。
【0043】
また、本発明は前記ドット層120を形成してから400〜420℃で5〜20分間器具を熱処理する。
【0044】
また、前記熱処理ステップは400〜420℃の温度で約5乃至20分間乾燥する。これは前記熱処理温度を高い温度にして乾燥することでコーティング効率を増大するためである。400℃より低い温度に熱処理すればPTFE樹脂の溶融焼結が足りなくて塗膜を堅固にコーティングすることが難しい。
【0045】
本発明はまた、前記ドット層120を形成してから熱処理ステップを行う前に前記ドット層120の上にトップコーティング層130を更に形成する。
【0046】
前記トップコーティング層130は前記ドット層120の上にトップコーティング液を8〜12μmの厚さで塗布してから400〜420℃で約5乃至20分間熱処理してトップコーティング層130を形成する。
【0047】
ここで、乾燥するステップは作業性と作業時間などを考慮した温度であり、5分より短く乾燥すれば乾燥時間の不足でコーティングの際に厨房器具を均一にコーティングする作業が難しくなる恐れがある。また、乾燥時間を20分より長くすることは作業時間の増大をもたらす。
【0048】
トップコーティング層130の造成は特に制限されないが、PFTE分散液、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、雲母及び水などが利用される。その例としては、PTFE分散液86〜92重量%、水5.5〜6.53重量%、芳香族炭化水素0.5〜1.5重量%、トリエチルアミン0.2〜0.5重量%、オレイン酸0.2〜0.5重量%、界面活性剤0.1〜0.4重量%、雲母1.5〜3.5重量%に形成されることが好ましい。
【0049】
これまで説明した本発明は上述した実施例及び添付した図面によって限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であることは本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明白になるはずである。
【符号の説明】
【0050】
10 厨房器
11 表面
11a 調理面
12 保護皮膜層
13 取っ手
100 厨房器具の表面
110 プライマーコーティング層
120 ドット層
130 トップコーティング層