【文献】
齋藤英也、外6名,「2.45GHzマイクロ波が植物の生長へ与える影響について」,電子情報通信学会技術研究報告,社団法人電子情報通信学会,SPS2006−16(2007−02),2007年,pp.7−14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光合成とは、電磁波である光によって環境中の物質(例えば、水(H
20))から還元力を取り出し、その還元力とエネルギーによって二酸化炭素を有機物に固定する反応である。すなわち、例えば、光合成を行う植物等の葉緑体は、電磁波としての光が当たると、光エネルギーを電子エネルギーに変換し、酸化還元反応すなわち電子伝達反応により、二酸化炭素に水素原子を付加して炭水化物を生成している。
【0003】
この光合成により、二酸化炭素が吸収されるとともに酸素が放出され、地球上の酸素濃度が高められることになり、地球環境に影響を与えることになる。また、例えば、光合成により、水と空気中の二酸化炭素から炭水化物が生じ、地球の生態系を維持しているとともに、農業による食料生産を可能にしている。
【0004】
また、光合成は、一般的に食料とされるものを含む地上植物や海藻だけではなく、海藻以外の植物性プランクトン等の藻類や、光合成細菌でも行われており、これらを産業に利用することが考えられている。例えば、浄水処理で生じる汚泥の処理方法として、汚泥に光合成細菌を含む有効微生物を付与し、有効微生物が付与された汚泥に電磁波を照射して腐敗物質分解作用を促進し、最終的に汚泥を肥料とすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上述の汚泥に照射される電磁波は光であるが、光以外の電磁波として、高周波発振器からの高周波を用いて植物を活性化する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の植物を活性化する方法では、高周波を植物としての木の根、幹、枝に照射し、主に根からの養分の吸収性を高めることにより樹木を活性化するものであり、光合成を促進、活性化させるものではない。また、汚泥に光合成細菌を付与して汚泥中に光を照射するのは、汚泥により光合成細菌への光が遮られて光量不足となることへの対応策であると考えられる。
【0008】
植物等の光合成能力のある生物において、光合成の促進および活性化を図ることが可能となれば、地球環境や食料供給に大きな貢献が可能であり、光合成の促進・活性化をする方法が開発されることが求められている。特に、コスト等を考慮した場合に、照明により人工的に光量を増加しなくても、光合成が促進・活性化されることが求められている。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、光合成能力を有する例えば生物にマイクロ波を照射することにより、光合成を促進させる
光合成生物の光合成促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の
酸素生成方法は、
容器内の二酸化炭素を含む溶液内で植物の破砕物を撹拌し、前記容器内の前記植物の前記破砕物にマイクロ波を照射し
、二酸化炭素を消費して酸素を生成することを特徴とする。
【0011】
本発明者は、赤外線より波長が長い電磁波でも光合成が行われる可能性を完全に否定することはできないのではないかとの見解に至り、マイクロ波を植物の葉の粉砕物を含む混合液に照射した場合に、マイクロ波を照射しない場合よりも溶存酸素濃度が高くなるとの知見を得た。
【0012】
一般に植物等の葉緑体の光合成においては、葉緑素が赤と青の光を吸収して緑色に見えることから、赤と青の光に基づいて光合成が行われると思われる場合があるが、実際に光合成の効率を見ると緑の光より青の光の方が、効率が悪いことが知られている。基本的に可視光の範囲内、特に400nm〜700nmの光ならば色に関係なく光合成に寄与することが知れるとともに、赤外や紫外の光は、光合成に寄与しないことが知られている。
【0013】
但し、光合成細菌の光合成色素のバクテリオクロロフィルは赤外線を吸収し、バクテリオクロロフィルを有する光合成細菌では、赤外線により光合成を行うことが可能なことが知られている。
【0014】
これらのことから、光合成を行う部分、例えば、光合成色素を有する葉緑体や、光合成細菌等に対して赤外の波長範囲の波長の長い側に隣接する波長範囲の電磁波であるマイクロ波を照射した場合に、マイクロ波の少なくとも一部が吸収されることになり、マイクロ波に基づいて光合成が行われるか、もしくは、光合成が促進される。すなわち、マイクロ波に基づいて電子が供給されて電子伝達反応である光合成が行われるか、もしくは供給された電子が光合成色素等に間接的に渡されることにより光合成が行われる。いずれにしろ、マイクロ波を照射することにより、光単独の場合よりも光合成を促進することが可能になる。
【0015】
ここで、光(可視光)の照射面では光合成が活発になるが、葉の影では極端に光合成の効率が低くなり、大規模な光合成を行うためには広大な面積が必要である。光より周波数が低いマイクロ波では、直進性が光より低いとともに、葉を透過する透過率が光より高くなり、マイクロ波により光合成が促進される場合に、光だけを照射した場合に比較してスペース効率を高めることができる。
【0016】
また、人工光で光合成を行うには、電力から光を作ることとなりエネルギー効率が高くなく、例えば、変換効率が良いとされるLEDでも変換効率が約15%程度である。それに対して電力からマイクロ波への変換は、変換効率90%以上となり、エネルギーコストの低減を図ることができる。
【0017】
また、例えば、クロレラ、ユーグレナなどの単細胞の藻類(光合成細菌を含む)、各種植物(種子植物、胞子植物、海藻等の多細胞生物である藻類を含む)、動物に分類される光合成を行う生物の光合成を様々な状況下で促進することができる。
【0018】
光合成を行う植物等にマイクロ波を照射することにより、光の照射面以外でも光合成を促進させるこができ、極めて省スペースなだけでなくエネルギー効率も極めて高い状況で光合成生物の成長を促すことができる。マイクロ波が照射される光合成生物を利用して、バイオ燃料、ビタミンなどの医薬品、食料、酸素等の製造や、二酸化炭素の消費を効率的に行うことができる。
また、光量が弱い場合に、光合成が行われる部分にマイクロ波を照射することが有効である。また、光が無い場合でも、光合成が行われる部分にマイクロ波を照射することが有効である。
【0020】
また、光合成を行う生物、例えば、光合成生物である農作物を、光量が不足しても育成することが可能になる。すなわち、農業は、気候により生産量が左右されるが、気候不順による日照量不足をマイクロ波の照射により補うことができる。これにより、農作物の生産性の向上を図ることができる。また、植物工場において、電力を光に変換するより、送信装置によりマイクロ波に変換する方が効率的であり、光を照射するよりマイクロ波を照射した方がコストの低減を図れる可能性がある。
【0021】
また、マイクロ波は、光より直進性が低く、かつ、植物等の生物を透過し易いので、影ができにくく、例えば、水耕栽培等の植物の栽培において、面積当たりの収穫量を増やすために、栽培する植物同士の間隔を狭めて、植物を密に配置するものとしても、隣り合う植物が影になって光量不足で生育が妨げられるのを防止することができる。これらのことから、植物等の生産性を向上し、植物等を用いて作られる各種製品、例えば、バイオ燃料、食物、医薬品、酸素等の生産性の向上およびコストダウンを図ることができる。また、二酸化炭素の除去や、酸素の供給を行うことができる。
【0023】
また、マイクロ波を用いて光合成を促進し、効率的に光合成生物を育成することが可能となり、植物等を用いて作られる上述の各種製品の生産性の向上およびコストダウンを図ることができる。また、二酸化炭素の除去や、酸素の供給をより効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、マイクロ波により光合成を促進させることが可能であり、マイクロ波を用いることで、農作物の生産性を向上したり、空気中の二酸化炭素濃度の低減と酸素の増加を図ったりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、光合成を行う生物の実際に光合成が行われる部分、例えば、光合成色素がある部分や、光合成色素として葉緑素がある部分や、光合成を行う小器官としての葉緑体等に、マイクロ波を照射するものである。現実的には、植物や藻類や光合成細菌等にマイクロ波を照射することにより、例えば、光量が不十分な場合であっても、光合成を活性化させて光合成を促進するものである。なお、光合成を促進する場合に、二酸化炭素濃度や水の量や温度など光以外の他の条件が整っていることが好ましい。
【0026】
ここでのマイクロ波は、例えば、極超短波(UHF)、センチ波(SHF)、ミリ波(EHF)、サブミリ波を含むものであり、周波数が300MHz〜3THzで、波長が1m〜100μmの電磁波である。なお、赤外線の周波数は、3THz〜300THzである。また、好ましくは、マイクロ波でかつ周波数が例えば1GHz以上であることが好ましい。なお、マイクロ波は、必ずしも明確に定義されたものはなく、マイクロ波がサブミリ波を含まないとする場合もある。ここでは、マイクロ波は、サブミリ波含むものとする。
【0027】
本実施の形態では、マイクロ波の植物等への照射は、具体的には、地上植物にマイクロ波を照射するものであり、例えば、田圃、畑等において、マイクロ波用の送信装置を用いて植物等にマイクロ波を照射する。この場合に、例えば、アンテナからマイクロ波を照射することになるが、指向性があるアンテナを用いることが好ましい。すなわち、植物等に向けてマイクロ波を照射できるようになっていることが好ましい。
【0028】
なお、アンテナの種類、アンテナの本数を含むアンテナの配置、マイクロ波送信装置の出力等は、田圃や畑の状況に応じて異なるものとなる可能性が高く、各状況において、実験的に最適な状態を求めることが好ましい。
【0029】
マイクロ波用の送信装置における発振には、マグネトロン、クライストロン、進行波管(TWT)、ジャイロトロン、ガンダイオードを用いた回路などを用いることができる。
【0030】
上述の畑等には、例えば、露地栽培やビニールハウスや温室を用いた促成栽培を含むとともに、建物内で例えば水耕栽培等により植物等を育てる植物工場にも応用することができる。また、水中に生息する藻類や光合成細菌に対しては、水の外側または水中の装置からマイクロ波を照射することになる。この際に、マイクロ波は、ある程度水中に入り込むが、水に吸収されて水を温めることになり、水中深くマイクロ波を照射することはできないので、浅い水槽内または水槽内に複数のマイクロ波照射口を設けて栽培(培養)することが好ましい。
【0031】
なお、日本の電子レンジでは、2.45GHzのマイクロ波が用いられるが、使用される波長は国によって異なり、基本的には水を温める効率等の技術的観点や安全性の観点で決められたものではなく、電波に関する各種規制や法律等に基づいて決められている。基本的にマイクロ波の周波数範囲の電磁波を水に照射することにより、水を温めることが可能である。
【0032】
この場合に、マイクロ波が水に吸収されることになり、マイクロ波は水中で減衰し、水中を長い距離に渡って伝播することはできないが、浅い水槽ならば、十分にマイクロ波を照射することは可能である。また、水槽が深く、大容量であるような場合には、水槽がマイクロ波を透過可能ならば、水槽の周囲に対して複数のアンテナをマイクロ波照射口として配置し、水面側から照射したのではマイクロ波が十分に照射されない部分にマイクロ波を照射可能としてもよい。また、アンテナを防水された状態(水から隔離された状態)で、水中にマイクロ照射口として配置し水槽内にマイクロ波を照射するものとしてもよい。
【0033】
また、マイクロ波により水が加温されるので、マイクロ波を水槽の水温を維持するための加熱装置(暖房装置)として用いるものとしてもよい。例えば、冬の低温となる時期に、光合成に必要と思われる出力よりも少し大きい出力のマイクロ波を照射して、水槽の水温を調節するものとしてもよい。また、高温を好む藻類(光合成細菌を含む)の場合に、冬以外でもマイクロ波による加熱を行ってもよい。
【0034】
また、ユーグレナ、クロレラなどの単細胞の藻類(光合成細菌を含む)の培養や、各種植物(種子植物、胞子植物、海藻等の多細胞生物である藻類を含む)の細胞培養において、マイクロ波を照射する場合、培養容器内にマイクロ波の送信装置のアンテナを配置して、培養容器内の光合成可能な細胞(単細胞生物を含む)に、マイクロ波を照射する。この場合も、上述のようにマイクロ波を温度調節に用いるものとしてもよい。また、培養容器内で、培養液を撹拌するものとすれば、マイクロ波が水に吸収されても、マイクロ波を培養容器内の細胞に略均等に照射することが可能になる。なお、細胞が撹拌に弱い場合には、撹拌速度を十分に遅くしてもよい。また、細胞培養ではなく、破砕した植物等(樹木等の場合には、葉の部分)を培養容器内に入れて、マイクロ波を照射し、光合成を行わせるものとしてもよい。この場合、光合成の進行状況に即して培養容器内の二酸化炭素濃度などを光合成に適した環境に整えることが好ましい。
【0035】
また、培養容器内に光を取り入れる場合に、例えば、培養容器を透明なガラスや樹脂で構成することが考えられるが、マイクロ波だけで光合成を行う場合に、培養容器を金属製としてもよい。この場合に、マイクロ波が金属容器に反射されるので、マイクロ波の漏洩によるノイズの発生を防止できる。
【0036】
マイクロ波を大きな出力で照射した場合に、マイクロ波が周囲へのノイズとなるので、例えば、アンテナの指向性と、アンテナの配置や、各アンテナでのマイクロ波の位相差等により、周囲に漏れるマイクロ波を十分に低減できない場合には、使用するマイクロ波の波長より十分に目の細かい金属のメッシュのシートや、金属のメッシュのパネルや、メッシュのシートが貼られたパネル等を周囲に配置して、電波を内側に反射させることが好ましい。なお、金属のメッシュのシート等ではなく、金属板であってもよい。
【0037】
このような光合成促進方法によれば、地球環境や地下室等の比較的閉鎖された空間や完全に閉鎖されている宇宙ステーション等において、マイクロ波に基づく光合成を利用して二酸化炭素の除去、酸素の供給および食料等の確保を可能とする。宇宙ステーション等に限らず、例えば1000m
2の広さの植物工場を考えた場合、それに見合った大規模な照明装置があっても光による光合成の場合、光合成は1000m
2の一面限り可能で、影の部分では光合成がほとんど行われない。このような場合、光合成を行わせる対象生物は異なるが、容器内に水生のユーグレナ、クロレラなどの光合成生物を入れ光合成の起こる適切な環境(循環、二酸化炭素の注入、酸素の排出、温度管理等)とすることで1〜2m
2(試算)のスペースですみ極めて省スペースなだけでなくエネルギー効率も極めて高い光合成が可能となる。また、マイクロ波に基づく光合成を利用して商業利用されるバイオ燃料、ビタミンなどの医薬品、酸素の製造を行うことができる。同様に、食料等に利用できる有機物の生産を行うことができる。光量が不足するような状況下において、植物等の成長を促進することができ、例えば、気孔が開く程度の光の環境で光合成を活発化できる。光の照射面にたよる光合成を平面ではない環境で行え、省スペースである。また、マイクロ波を使うことで電力が効率的に利用できる。
【0038】
上述のように、マイクロ波の照射により光合成が促進されることになることから、光量が不十分な状況でも、マイクロ波を照射することにより、光合成による二酸化炭素への水素の供給能力を高めることが可能になる。すなわち、光合成を行う生物、例えば、地上植物を、光量が不足しても育成することが可能になる。すなわち、農業は、気候により生産量が左右されるが、気候不順による日照量不足をマイクロ波の照射により補うことができる。
【0039】
また、植物工場等の屋内の栽培で、かつ、太陽光を十分に取り入れることができないような状況において、照明装置により植物等に光を照射するようになっているような場合に、照明装置の少なくとも一部の使用を止めて、植物等にマイクロ波を照射するようにしてもよい。なお、照明装置を用いて、電力を光に変換するより、送信装置によりマイクロ波に変換する方が効率的であり、光を照射するよりマイクロ波を照射した方がコストの低減を図れる可能性がある。
【0040】
また、マイクロ波は、光と比較した場合に、直進性が低いとともに、植物等を透過し易く、光に比べて影が生じ難いものとなっている。すなわち、光の場合に、葉が生い茂っている植物や、隙間なく植物が植えられた状況では、影が多くなり植物の下部で光量不足となって、生育が妨げられる可能性がある。それに対してマイクロ波は、光より直進性が低く、かつ、植物等の生物を透過し易いので、影ができにくく、例えば、水耕栽培等において、面積当たりの収穫量を増やすために、栽培する植物同士の間隔を狭めて、植物を密に配置するものとしても、隣り合う植物が影になって光量不足で生育が妨げられるのを防止することができる。
【0041】
なお、マイクロ波を使用する場合に、光を使用せずにマイクロ波だけを使用するものとしても良いが、故意に光を遮る必要はない。また、太陽光や照明装置の光とマイクロ波を併用するものとしてもよい。基本的に露地栽培や促成栽培にマイクロ波を使用する場合には、太陽光とマイクロ波を併用することになる。また、植物工場においても、植物等を栽培する部屋を暗室とする必要はなく、太陽光が取り入れ可能な構造であってもよく、さらに、照明装置を使用してもよい。
また、人工光合成においても、マイクロ波の照射により、光合成を促進できる可能性があり、上述の植物等に人工光合成装置を含んでもよい。
【実施例】
【0042】
次に、本発明の実施例を説明する。
本実施例では、以下の実験を行った。
この実験の概要は、植物の葉の粉砕物を炭酸水中に分散し、電子レンジを用いてマイクロ波(周波数、2.45GHz)を照射し、その際の溶存酸素濃度を計測するものである。
【0043】
以下に、実験における使用機材等を記載する。
棒状温度計(0〜100℃)×2
スポイト 10mL×2、5mL×2、1mL×2
撹拌棒×2
試験管 5mL×4(サンプリングした試料を入れるためのもの)
1LのPE(ポリエチレン)容器×2 (粉砕した葉と炭酸水を入れ電子レンジにかけるための容器、または、湯煎して加温するための容器)
湯煎用ボール×1(1LのPE容器を湯煎するためのもので75℃の湯を入れて湯煎開始直後に約72℃)
溶存酸素濃度測定試薬(アンプル入り液体試薬:株式会社共立理化学研究所:溶存酸素(DO)キット)
【0044】
ろ紙およびロート
電子レンジ (シャープ製 AX−M1を200Wで使用、2.45GHz)
炭酸水約1500g(500mLペットボトル×3本)
試料 オカワカメの葉約1.2Kg(正式和名:アカザカズラ、ツルムラサキ科のつる性の多年草)
ブレンダー (ブラウン製 MR5550 M CA、オカワカメ粉砕用)
試料(オカワカメ)の葉を粉砕するためのガラス容器(約2L)
発泡スチロール容器(二酸化炭素を満たして空気中の酸素の影響を無くすためのもの)
ドライアイス(発泡スチロール容器に二酸化炭素を満たすためのもの)
【0045】
実験は以下のように行った。
炭酸水1500mL(23℃)を準備する。ここで、炭酸水の一部を試料液1とする。また、湯煎用75℃の水を準備する。ドライアイスを入れた発泡スチロール容器内で、ガラス容器に試料(オカワカメの葉)1.2Kgと炭酸水300mLを入れ、ブレンダーで粉砕する。なお、以後の実験においての操作は、基本的に可能ならば、発砲スチロール容器内で行った。
【0046】
次に、破砕した試料に炭酸水500mLを加え撹拌する。この分散された破砕物の一部を試料液2とする。
【0047】
上述のように破砕した試料を撹拌して炭酸水を加えた溶液を2本のPE容器にそれぞれ850g入れ、そのうちの1本を電子レンジ(200W、5分間)にかけた。これを試料液4とする。
【0048】
電子レンジにかけることにより液の温度が35℃まで上昇することと、測定値への光合成以外の影響を考慮し、対照実験として、残りのPE容器の試料液850gを湯煎(72℃の湯で約5分間)し35℃にする。これを試料液3とする。
【0049】
試料液1はそのまま、試料液2、3、4はろ過し、試料液3、4はさらに炭酸水でそれぞれ8倍に希釈し、溶存酸素を測定した。
【0050】
溶存酸素の測定結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
マイクロ波を照射した試料液4が、マイクロ波が照射されていない試料液3に比べ厳密な数値ではないが24mg/L溶存酸素が増えたことが確認できた。また、試料液3は緑色(波長520nm)なのに対し試料液4は褐変(波長610nm)しており光合成により生じた酸素により酸化されたものと考えられる。すなわち、マイクロ波により光合成が促進され、マイクロ波を照射しなかった場合に比較して、多くの酸素が光合成により発生したと思われる。