(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
逆止弁(13)をバイパスする線上で、イジェクタ(4b)の上流に取り付けられている第2の弁具備装置(6)と、処理チャンバ(2)の動作状態に応じて、第1の弁具備装置および第2の弁具備装置(5、6)を制御するようになっている制御手段とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の排気装置。
第2の弁具備装置(6)は、イジェクタ(4b)が起動されると開く、較正された逆止弁(6a)を備えていることを特徴とする、請求項2又は請求項2を引用する請求項3〜6のいずれか1項に記載の排気装置。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の処理工程は、乾式1次真空ポンプを備える排気装置を使用して、処理チャンバ内を低圧にして実施される。
【0003】
基板を処理するためにチャンバ内にガスを導入する前に実行されるステップは、作動中に達成可能な低圧閾値を確認することである。この低圧閾値は、「真空限界」と呼ばれている。処理チャンバ内で低圧真空限界を得るのは、簡単で、高速で、かつ安価な方法で行われる。これには、チャンバのシール気密性を確認する(例えば、保守の後に)か、または、チャンバが、いずれのガス残基をも含んでいないことを確認する。ガス残基の中に、例えば、あまりに多量の酸素または水蒸気が含まれている場合には、それらが、基板の汚染源となる可能性がある。
【0004】
装置製造業者によって要求される真空限界圧力レベルは、一般に、約10
−3、または10
−2mbarである。このレベルは、処理チャンバ内で処理される基板の処理圧力とは大きく異なり、基板処理圧力は、通常、10
−1〜数100mbarである。
【0005】
この値の真空限界圧力と、これより1桁または2桁高い処理圧力が確実に得られるようにするための、1つの公知の手段は、乾式1次真空ポンプの中の排気段数を増加させ、例えば、6段、または7段とするか、または、真空ポンプの作動クリアランスを減少させることである。これらは、いずれも、費用を上昇させ、また信頼度を減少させることとなる。
【0006】
他の排気装置では、従来の乾式1次真空ポンプの上流に、単一段のルーツ真空ポンプを配置することが提案されている。しかしながら、これらの排気装置もまた、高価である。
【0007】
更に他の装置においては、従来の乾式1次真空ポンプの排気部に、補助真空ポンプを配置することが提案されている。補助真空ポンプによって、排気装置の真空限界動作における動作性能を、改善させることができる。しかしながら、補助ポンプは、無視できない量の電力を消費し、それでもなお、真空限界動作圧力は、不十分である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の1つは、基板の低圧処理に対して、低い真空限界動作圧力と、良好な排気速度とが得られ、しかも容易に、かつ安価に得ることができる排気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明の1つの主題は、処理チャンバに接続されるようになっている排気装置であり、この排気装置は、
− 乾式1次真空ポンプであって、
・吸入孔および吐出孔と、
・吸入孔と吐出孔との間に配置された少なくとも1つの排気段と、
・前記排気段の中にパージガスを注入するようになっているパージ手段と、
・吐出孔に接続された排気ダクトと、
・排気ダクト内に配置された逆止弁とを有する乾式1次真空ポンプと、
− 逆止弁をバイパスしている線上に取り付けられたイジェクタであって、
・吸気口、排気口、および少なくとも1つの吸入ノズルを有するダクトと、
- ・動力ガスを注入し、少なくとも1つの吸入ノズルに対する動力ガスの注入を制御するための手段とを備えるイジェクタと、
− 乾式1次真空ポンプのパージ手段に接続され、ガス供給源に接続されるようになっている第1の弁具備装置とを備えている。
【0010】
パージ手段に接続されている第1の弁具備装置はまた、動力ガスを注入するための手段にも接続され、ガスの供給を、乾式1次真空ポンプのパージ手段から、イジェクタの動力ガスを注入する手段に、少なくとも部分的に切り替えるようになっている。
【0011】
本発明の別の主題は、上記で述べた排気装置により、処理チャンバを排気するための方法である。この排気装置は、処理チャンバに接続されており、この排気装置においては、処理チャンバが真空限界動作になると、イジェクタを起動させることにより、乾式1次真空ポンプのパージ手段に対するガスの供給は減少され、乾式1次真空ポンプの吐出孔に接続された排気ダクトにおける圧力は、低減される。イジェクタの動力ガスを注入するための手段には、乾式1次真空ポンプのパージ手段から、ガスが供給される。
【0012】
排気装置または排気方法は、以下に示す特徴を、単独にか、または組み合わせて具備することがある。
− 排気装置は、第2の弁具備装置を備え、この第2の弁具備装置は、逆止弁をバイパスしている線上で、イジェクタの上流に取り付けられている。
− 排気装置は、制御手段を備え、この制御手段は、処理チャンバの動作状態に応じて、第1および第2の弁具備装置を制御するようになっている。これにより、処理チャンバが真空限界動作になったときには、第1の弁具備装置は、少なくとも部分的に閉じられ、第2の弁具備装置は、開かれる。
− 処理チャンバが真空限界動作になると、パージ手段の供給ガスの流量は、20〜200sccm(または、33〜333 Pa・L/s)になる。
− 第1の弁具備装置は、三方電磁弁を備えている。
− イジェクタは、多段イジェクタである。
− 第1の弁具備装置は、制御手段によって制御可能な、少なくとも1つの電磁弁を備えている。
− 乾式1次真空ポンプは、複数の排気段を備え、パージ手段は、各排気段にパージガスを分配するための複数の分岐を備え、第1の弁具備装置は、複数の電磁弁を備え、各電磁弁は、それぞれの各分岐に配置されている。
− 制御手段は、処理チャンバが真空限界動作になったときには、第1の排気段以外の排気段に関連付けられている第1の弁具備装置の電磁弁を、少なくとも部分的に閉じて、第1の排気段の第1の弁具備装置の電磁弁を開くようになっている。
− 第2の弁具備装置は、制御手段によって制御可能な電磁弁を備えている。
− 電磁弁の電源は、処理チャンバのスイッチに接続されている。
− 第2の弁具備装置は、較正された逆止弁を備え、この逆止弁は、イジェクタが起動されると開かれる。制御手段は、処理チャンバの動作状態に応じて、イジェクタを起動させるようになっている。
【0013】
乾式1次真空ポンプの排気段を通過するパージガスの流量を減少させること、および乾式1次真空ポンプの吐出孔における圧力を減少させることによって、処理チャンバの内部における、非常に低い真空限界圧力を得ることができる。
【0014】
処理チャンバが真空限界動作になったときには、乾式1次真空ポンプの排気段を通過するパージガスの流量を減少させることができる。これは、潜在的に真空ポンプを汚染させる可能性があるガスが処理チャンバ内に導入されないからである。
【0015】
更に、乾式1次真空ポンプの吐出孔における圧力を低下させることにより、1次真空ポンプの電力消費を大幅に減少させることができる。
【0016】
更に消費電力を低減させるために、処理チャンバが真空限界動作になったときにだけ、イジェクタを起動するようにしてもよい。
【0017】
更に、補助排気手段としてイジェクタを使用することにより、可動部品を使用することなく、乾式1次真空ポンプの吐出孔における圧力を減少させることができる。これは、動力ガスの膨張を使用しているからであり、従って、電力を消費することなく、また、摩耗することもなく、保守の必要もない。これは、例えば、ダイヤフラムポンプまたはピストンポンプの場合とは異なっている。更に、イジェクタは、非常に小型であるという利点を有し、排気装置の形状を小さくすることができる。また、これらイジェクタは、腐食、または活性ガスの攻撃に対する十分な耐性を有する。これにより、排気装置を非常に信頼度の高いものとすることができる。更にまた、イジェクタは、安価である。
【0018】
乾式1次真空ポンプのパージ手段からのガスを、イジェクタの動力ガス注入手段に対して供給するという手法で、イジェクタを使用することにより、乾式1次真空ポンプの吐出孔における圧力を、的確に低減させることができる。従って、おおむね2〜3barに圧縮されたパージガスを、乾式1次真空ポンプのパージ手段に供給するのではなく、イジェクタに動力ガスを供給するだけでよい。
[0019]
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な実施例、および図面により示されている以下の説明を読むことにより、明らかになると思う。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「真空限界」という表現は、あり得るいくつかの例外的なガス流、および無視できる程度の寄生的なガス流を除いて、処理チャンバの中に導入されるガス流がなく、処理チャンバは、作動している排気装置によって真空に排気されている、処理チャンバの動作状態によって定義される。この、あり得るいくつかの例外的なガス流、および無視できる程度の寄生的なガス流は、例えば、壁からの脱ガス、またはリークによって生ずる。
【0021】
図1は、半導体を製造する装置の処理チャンバ2を排気するための排気装置1を示している。チャンバ内で実施されるプロセスは、例えば、有機金属化学気相成長(MOCVD)プロセスであり、このプロセスでは、特に、LED(発光ダイオード)基板上に、GaN活性層を堆積させる化学気相成長プロセスである。基板の処理中に処理チャンバ2の中に導入されるガスは、TMG(トリメチルガリウム)、NH
3、およびH
2を備え、この処理ガス流量は、50〜250slm(すなわち、83333Pa・L/s〜416667Pa・L/s)であり、処理圧力は、100〜500mbarである。
【0022】
処理チャンバ2は、処理チャンバ2が真空限界動作にあることを知らせる信号手段を備えている。この信号は、処理チャンバ2の中に処理ガスが導入されておらず、処理チャンバ2は、排気装置1によって真空に排気されているということを示す。真空限界動作を示すこの信号は、例えば電気信号であり、この電気信号は、例えば、スイッチをオンにすることによる電気接触によって得ることができる。
【0023】
図1に示すように、排気装置1は、乾式1次真空ポンプ3、補助排気手段4、第1および第2の弁具備装置5、6、および制御手段を備えている。制御手段は、処理チャンバ2の動作状態に応じて、第1および第2の弁具備装置5、6を制御するようになっている。
【0024】
乾式1次真空ポンプ3は、吸入孔8、吐出孔9、吸入孔8と吐出孔9との間に配置されている少なくとも1つの排気段、パージ手段11、真空ポンプ3の吐出孔9に接続されている排気ダクト12、および排気ダクト12の中に配置された逆止弁13を備えている。真空ポンプ3の吸入孔8は、処理チャンバ2の吐出孔に接続されている。
【0025】
乾式1次真空ポンプ3は、例えば、多段ルーツ真空ポンプであり、複数の排気段を備え、この例では、5段(10a、10b、10c、10d、10e)である。第1の排気段10aの吸入孔は、真空ポンプ3の吸入孔8に対応している。この第1の排気段は、一般に、低圧段と呼ばれる。最終排気段10eは、真空ポンプ3の吐出孔9に開口しており、吐出孔9では、大気圧に排気される。この最終排気段10eは、一般に、高圧段と呼ばれる。段間チャネルが、排気段10a、10b、10c、10d、10eを直列に接続している。より正確には、段間チャネルは、真空ポンプ3の吸入孔8と吐出孔9との間で、先行する排気段の吐出孔を、後続の排気段の吸入孔に接続している。
【0026】
パージ手段11は、窒素等のパージガスを排気段10a、10b、10c、10d、10eの中に注入するようになっている。パージ手段11は、分配器(クラリネットとも呼ばれる)を備え、この分配器は、真空ポンプ3が備える排気段の数と同数の分岐を備え、これにより、ガス供給器14から、5つの排気段10a、10b、10c、10d、10eのそれぞれに対してパージガスを分配する。パージ手段11からのガス注入は、一般に、関連する排気段の排気口に開口しているノズルを通して、排気段10a、10b、10c、10d、10eに沿って分布している複数の点で実行される。最初および最終の排気段10a、10eにおいては、パージガスは、真空ポンプ3を実際に運転しているレベルに注入される。パージガス流量は、例えば、35〜100slm(すなわち、58333〜166666Pa・L/s)である。
【0027】
パージガスによって、処理チャンバ2からくるガスを希釈することができ、これにより、特に、乾式1次真空ポンプ3のステータとロータとの間、およびロータのローブの間における作動間隙を保持し、適切な作動を維持し続けることができる。
【0028】
真空ポンプ3の逆止弁13は、処理チャンバ2から排気ダクト12に向かってガスが排気方向に流れる(
図1の矢印F参照)よう強制することができ、これにより、排気されるべきガスが真空ポンプ3の中に逆流するのを防ぐことができる。真空ポンプ3は、作動時には、ガスを圧縮して、逆止弁13を通してその圧縮ガスを排気ダクトに送ることにより、処理チャンバ2を低圧に排気する。真空ポンプ3の吐出孔圧が排気圧より低くなると、逆止弁13は閉じる。このようにして、大気から吐出孔9への逆流を防止することができる。
【0029】
第1の弁具備装置5は、乾式1次真空ポンプ3のパージ手段11とパージ手段11が接続されているガス供給器14との間に挿入される。
【0030】
制御手段は、コンピュータ、マイクロコントローラ、またはコントローラであるのがよい。このコンピュータ、マイクロコントローラ、またはコントローラには、排気装置の各部を制御して、排気方法のステップを実行するためのプログラムが搭載されている。制御手段は、処理チャンバが真空限界動作になったときに、少なくとも部分的に、第1の弁具備装置5を閉じるようになっている。
【0031】
第1の例においては、第1の弁具備装置5は、閉位置にあるときには、ガス供給器14とパージ手段11との間のガス流を完全に遮断し、これにより、排気段10a、10b、10c、10d、10eの内の少なくとも1つのパージ手段11に対するガス供給を遮断する。
【0032】
別の例においては、第1の弁具備装置5は、ほぼ閉位置にあるときに、少なくとも1つの排気段10a、10b、10c、10d、10eのパージ手段11に対するガス供給14を大幅に減少させる。これにより、パージ手段11に対する供給ガス14の流量は、約35〜100slmからから減少して、真空限界動作である流量20〜200sccm(すなわち、33〜333Pa・L/s)になる。
【0033】
従って、第1の弁具備装置5が通過させるパージガスの残留流は、処理ガスを希釈するために必要なパージガスの流れと比較して、無視できる程度になる。ガス供給源14によって供給され続けられるこのパージガスの残留流は、パージ手段11の中のガスの流れの方向を維持し続け、これにより、処理チャンバ2から由来する腐食性を有する可能性があるガス残基が、パージ手段11の中に蓄積されるのを防止することができる。
【0034】
第1の弁具備装置5は、例えば、乾式1次真空ポンプ3のパージ手段11とガス供給器14との間に挿入された、少なくとも1つの電磁弁5aを備えている。
【0035】
電磁弁5aを制御するための手段は、例えば、電磁弁5aの電源を電気接続することによって得ることができる。電磁弁5aの電源は、例えば、第1の結線7aを介して処理チャンバ2のスイッチに接続されている。処理チャンバ2が真空限界動作になると、スイッチがオンとなり、電磁弁5aへの電力供給が遮断され、これにより、電磁弁5aを閉じて、乾式1次真空ポンプ3のパージ手段11に対するガス供給を減少させるか、または完全に遮断することができる。
【0036】
電磁弁5aを制御する手段として、他の実施形態を想定することもできることは、言うまでもない。例えば、電磁弁5aに対する空気供給源を設けて、それを電気的に接続して制御することも可能である。
【0037】
図1に示す第1の実施形態においては、第1の弁具備装置5は、乾式1次真空ポンプ3の全ての分岐を接続しているパージ手段11の分配器の共通線上に配置されている。従ってこの場合には、第1の弁具備装置5は、排気段10a、10b、10c、10d、10eの全てに対して、ガス供給14を、同時に、減少させるか、または遮断する。
【0038】
図2に示す別の実施形態においては、第1の弁具備装置5は、排気段10a、10b、10c、10d、10eに対して、選択的にパージガスを供給するようになっている。例えば、第1の弁具備装置5は、パージ手段11が備える分岐と同数の電磁弁5aを備えている。各電磁弁5aは、パージ手段11のそれぞれの分岐に配置され、これにより、1つ以上の排気段10a、10b、10c、10d、10eに対して、ガス供給14を選択的に、同時に、減少させるかまたは遮断することができる。
【0039】
制御手段は、処理チャンバ2が真空限界動作になると、例えば、第1の排気段10a以外の排気段10b、10c、10d、10eと関連する、第1の弁具備装置5の電磁弁5aを、少なくとも部分的に閉じて、第1の排気段10aの第1の弁具備装置5の電磁弁5aを開くようになっている。従って、第1の排気段10a以外の排気段10b、10c、10d、10eに対するパージガスの流れは、減少されるか、または遮断されるが、低圧排気段10aを通したパージガスの流れは、保持される。このパージガスの流れによって、真空ポンプ3の排気段の最低限の保護は、確保される。
【0040】
制御手段はまた、処理チャンバ2内が真空限界動作になると、第2の弁具備装置6を開くようにもなっている。
【0041】
図1および
図2に示すように、排気装置1の補助排気手段4は、真空ポンプ3の逆止弁13をバイパスする線上に配置されている。
【0042】
第2の弁具備装置6は、逆止弁13をバイパスする線上で、補助排気手段4と直列に、また補助排気手段4の上流に取り付けられている。
【0043】
処理チャンバ2が真空限界動作でないときには、第2の弁具備装置6は、閉じられて、補助排気手段4の吸入孔を、排気ダクト12から分離し、第1の弁具備装置5は、開かれ、排気段10a、10b、10c、10d、および10eに対するパージ手段には、ガスが供給される。
【0044】
処理チャンバ2が真空限界動作になったという信号に応答して、第2の弁具備装置6は開かれ、第1の弁具備装置5は、少なくとも部分的に閉じられる。これにより、乾式1次真空ポンプ3のパージ手段11に対するガス供給は、遮断されるか、または減少され、補助排気手段4は、排気ダクト12と流体連通になる。
【0045】
乾式1次真空ポンプ3の排気段を通ったパージガスの流量の減少と、乾式1次真空ポンプ3の吐出孔9における圧力低下によって、乾式1次真空ポンプ3の吸入孔8において、非常に低い吸気圧力を得ることができ、従って、処理チャンバ2内において、非常に低い真空限界圧力を得ることができる。これにより、処理チャンバ2内における圧力限界を1/10に減少させることができる。
【0046】
消費電力を低減するために、更に、処理チャンバ2が真空限界動作になったときにだけ、補助排気手段4を起動させることができる。
【0047】
図1に示す第1の実施形態においては、第2の弁具備装置6は、較正された逆止弁6aを備えている。逆止弁6aは、補助排気手段4が起動されると開く。制御手段は、処理チャンバ2が真空限界動作になると、補助排気手段4を起動させるようになっている。
【0048】
補助排気手段4は、例えば、電力が供給されると、直ちに起動される。従って、補助排気手段4の電源は、例えば、第2の電気結線7bによって処理チャンバ2の信号手段に接続されている。
【0049】
補助排気手段4は、例えば、ダイヤフラムポンプ4aである。
【0050】
逆止弁6aは、それが閉じられると、補助排気手段4の吸入孔を排気ダクト12から分離する。真空限界動作に達した処理チャンバ2に応答して、電気スイッチがオンにされて、これにより、補助排気手段4に対する電力供給が駆動され、従って、補助排気手段4は、起動される。補助排気手段4が起動されると、逆止弁6aは、自動的に開く。逆止弁6aの下流に形成された真空によって、逆止弁6aは、開かれる。
【0051】
従って、第2の弁具備装置6の制御手段は、処理チャンバ2への電気接続を必要としない自動手段である。
【0052】
図3に示す実施形態においては、第2の弁具備装置6の制御手段は、電磁弁6bを備えている。
【0053】
制御手段は、処理チャンバ2が真空限界動作になったときに、第2の弁具備装置6の電磁弁6bを開くようになっており、これにより、補助排気手段4を、排気ダクト12と連通させる。
【0054】
例えば、電磁弁6bの電源は、第3の電気結線7cによって、処理チャンバ2の信号手段に接続されている。従って、処理チャンバ2の信号手段のスイッチをオンにすると、電磁弁6bに電力が供給され、電磁弁6bを開くことができる。
【0055】
図3に示す第3の実施形態においては、補助排気手段4は、イジェクタ4bを備えている。
【0056】
イジェクタ4bは、ダクト22と動力ガス注入手段とを備えている。
【0057】
図4a、
図4b、および
図4cに、より明確に分かるように、ダクト22は、吸気孔16、排気孔17、および少なくとも1つの吸入ノズル18a、18b、18cを備えている。吸入ノズル18a、18b、18cは、ダクト22の内部空間に開口している。吸気孔16、および排気孔17は、それぞれ、第1、および第2のチャネル19、20によって排気ダクト12に接続されている(
図3)。動力ガスを注入するための手段は、吸入ノズルの18a、18b、18cの内の少なくとも1つの中への、加圧された動力ガスの注入を高速で制御するようになっている。
【0058】
図示の例においては、イジェクタ4bは、多段イジェクタである。すなわち、イジェクタ4bは、複数の吸入ノズル18a、18b、18cを備え、これらの吸入ノズルは、吸気孔16と排気孔17との間にダクト22に沿って分布し、これらのノズルは、段数を定義している。イジェクタ4bは、例えば、3段を備え、各段は、互いに対向する2つの吸入ノズル18a、18b、18cによって規定されている。吸入ノズル18a、18b、18cは、例えば、対の形で、ダクト22に沿って規則的に分布している。動力ガスは、必要とされる圧力および流量に応じて、イジェクタ4bの中の、0段、1段、または複数段の中に注入される。動力ガス注入によって複数段を同時に活性化することにより、イジェクタ4bの排気速度を増加させることができる。イジェクタ4bはまた、弁21を備えている。弁21は、例えば、旋回弁であり、各吸入ノズル18a、18b、18cに関係づけられ、これにより、動力ガスが注入されないときには、前記吸入ノズルをブロックすることができる。
【0059】
イジェクタは、排気手段であり、その動作は、ベンチュリー効果に基づいている。ベンチュリー効果は、流体力学における現象であり、ガス状粒子または液体が、流れ断面積の狭窄によって加速され、チャネルスロートで吸引力が生成される現象である。吸入ノズル18a、18b、18cを通して圧縮ガスを通過させることにより、各段で吸引力が生成される。
【0060】
動力ガスを注入するための手段は、動力ガス分配ネットワーク15を備えている。動力ガス分配ネットワーク15は、各吸入ノズル18a、18b、18cの中に、選択的に、動力ガスを注入する。動力ガスを注入するための手段は、複数のイジェクタ段4bの内の0段、1段、または複数段の中に対する動力ガスの注入を、選択的に制御することができる。
【0061】
図4aに示す例においては、動力ガスを注入するための手段は、イジェクタ段4bの全てに対する動力ガスの注入を制御している。また、
図4bに示す例においては、動力ガスを注入するための手段は、イジェクタ4bの最終の2つの段のみに対する動力ガスの注入を制御している。更に、
図4cにおいては、動力ガスを注入するための手段は、イジェクタ4bの最終段だけに対する動力ガスの注入を制御している。
【0062】
処理チャンバ2が真空限界動作になると、制御手段は、第1の弁具備装置5を、少なくとも部分的に閉じて、第2の弁具備装置6を開き、これにより、イジェクタ4bを排気ダクト12と流体連通にする。
【0063】
乾式1次真空ポンプ3のパージ手段を通してのガス流を減少させるか、または遮断し、乾式1次真空ポンプの3の吐出孔9圧力を低減させることによって、処理チャンバ2の中の圧力限界の閾値を低減させることができる。
【0064】
更に、補助排気手段4としてイジェクタ4bを使用することにより、可動部品を使用することなしに、乾式1次真空ポンプ3の吐出孔9における圧力を低減させることができる。これは、動力ガスの膨張によるものであり、従って、電力を消費することなく、摩耗することなく、また保守の必要もない。これは、例えば、ダイアフラムポンプ、またはピストンポンプの場合とは異なるものである。
【0065】
更に、イジェクタは、非常に小型であるという利点を有する。従って、排気装置は、形状が小さくて済む。また、イジェクタは、腐食や活性ガスの攻撃に対して、十分な耐性を有し、これにより、排気装置を非常に信頼性の高いものとすることができる。更に、イジェクタは、安価である。
【0066】
消費電力を低減するために、処理チャンバ2が真空限界動作になったときにだけ、イジェクタ4bを起動させることができる。
【0067】
これは、イジェクタ4bの動力ガスを注入する手段に対して、動力ガスとして、乾式1次真空ポンプ3のパージ手段11からのガスを供給することにより、的確に実現することができる。従って、一般に、2〜3barに圧縮されたパージガスは、乾式1次真空ポンプ3のパージ手段11に供給するのではなくて、動力ガスとして、イジェクタ4bに供給することができる。
【0068】
これを行うために、第1の弁具備装置5はまた、イジェクタ4bの動力ガスを注入するための手段にも接続され、第1の弁具備装置5は、乾式1次真空ポンプ3のパージ手段11のガス供給器14を、イジェクタ4bの動力ガスを注入するための手段に切り替えるようになっている。
【0069】
例えば、第1の弁具備装置5は、2つの2方電磁弁を備えている。第1の電磁弁は、乾式1次真空ポンプ3のパージ手段11に接続された第1のポートと、ガス供給器14に接続された第2のポートとを備えている。第2の電磁弁は、イジェクタ4bの動力ガス注入するための手段に接続された第1のポートと、ガス供給器14に接続された第2のポートとを備えている。
【0070】
第1の弁具備装置5を制御するための手段は、例えば、第1の弁具備装置5の電磁弁を電気接続することにより得られる。
【0071】
第2の実施形態においては、第1の弁具備装置5は、3方弁5bを備えている。3方弁5bは、例えば、3方電磁弁である。3方弁5bは、第1のポートが、乾式1次真空ポンプ3のパージ手段11に接続され、第2のポートが、ガス供給器14に接続され、第3のポートが、イジェクタ4bの動力ガスを注入するための手段に接続されている。従って、ガス供給器14を、乾式1次真空ポンプ3からイジェクタ4bの動力ガスを注入するための手段へ切り替えることに対する制御は、単純化される。
【0072】
第2の弁具備装置6は、較正された逆止弁6aを備えることができる。逆止弁6aは、イジェクタ4bが起動されると、自動的に開く。制御手段は、イジェクタ4bを起動させるようになっている。すなわち、処理チャンバ2が真空限界動作になると、吸入ノズル18a、18b、18cの少なくとも1つに対して動力ガスを注入するようになっている。
【0073】
あるいは、第2の弁具備装置6は、電磁弁6bを備えることができる(
図3)。
【0074】
更に、第2の弁具備装置6は、処理チャンバ2が真空限界動作になったという信号を受信すると、開いて、所定の時間の後に閉じるようになっている。所定の時間は、例えば、約3秒である。動力ガスを注入するための手段は、処理チャンバ2が真空限界動作になったという処理チャンバ2からの信号に基づいて、非常に短時間の間、動力ガスを注入するように制御される。具体的には、排気ラインが真空限界動作になって、新しいガス流が供給されなければ、イジェクタ4bの起動による圧力低下は、限りなく続く可能性がある。イジェクタ4bに対する動力ガスの、短時間の間の、時折の供給によって、窒素の消費量を、更に最適化することができる。
【0075】
従って、第2の弁具備装置6が閉じられたときには、動力ガスは注入されず、弁21は、閉じられて、イジェクタ4bのダクト22の内部空間は、切り離される。
【0076】
処理チャンバ2が真空限界動作になると、制御手段は、第1の弁具備装置5を、少なくとも部分的に閉じて、パージガスの供給を、イジェクタ4bの吸入孔18a、18b、18cの内の1つ以上の吸入孔に切り換える。
【0077】
関連する弁21が開くことにより、動力ガスをイジェクタ4bの中に浸透させることができ、これにより、ダクト22を排気ダクト12と連通させて、ダクト22の中を減圧することができ、従って、真空ポンプ3の吐出孔9における圧力を低減することができる。
【0078】
従って、排気装置1によって、基板の低圧処理に対して、低い真空限界圧力と十分に良好な排気速度とを、容易に、かつ安価に得ることができる。