【実施例】
【0062】
実施例1〜4
Li:Co化学量論的に制御されたリチウムコバルトをベースとする酸化物の調製
これらの実施例は、約−0.5ppmを中心とするシングルLi寄与によって特徴決定される
7Li MAS NMRスペクトルおよび増加したT1スピン−格子緩和時間を特徴とする、Li:Co化学量論的に制御された、ドーピングされたリチウムコバルトをベースとする酸化物が、高電圧サイクリング安定性によっても特徴づけられることを実証する。改善された安定性、シングル寄与
7Li MAS NMRスペクトルおよびより長いT1は、リチウム対金属比を最適化することによって得られる。
【0063】
実施例1:
実施例1および2の特徴決定は、Liが化学量論的に制御される、すなわち、1.00±0.01のLi/Co比を有するLiCoO
2をベースとする陰極材料であって、Li原子が、3価反磁性金属によって取り囲まれる単一部位を占有するコアを含んでなり、そしてコア材料(Li、Co)の元素ならびにMgおよびTiを含んでなる無機金属酸化物を含んでなる電子遮断表面を有する陰極材料は、高圧用途のために改善された特徴を示すことを実証する。
【0064】
LCO−1の調製:0.25モル%のチタンおよび0.5モル%のマグネシウムがドーピングされたCo(OH)
2は、LiCoO
2の前駆体として、国際公開第2010−139404号パンフレットで説明されるプロセスによって、パイロットラインで調製される(960℃〜1020℃の温度での前駆体の単一燃焼プロセス、このプロセスは、LCO−3、−4、−6および−7に関しても使用される)。到達水準のチタンおよびマグネシウムドーピングLiCoO
2(LCO−1と示される)は、前駆体をLi
2CO
3と混合することによって、標準高温固体状態合成(=第1の燃焼ステップ)によって得られる。Li
2CO
3ドーピングCo(OH)
2ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.06〜1.12である。LCO−1の平均粒径は、20μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−1の最終的なLi:Coモル比は1.053であり、そして実施例1および2に関するLi:Co比を決定するために使用される。LCO−1は、実施例1および実施例2のリチウムドーピング酸化コバルト「ペアレント」とも呼ばれる。
【0065】
実施例1の調製(Ex1と記載):95モル%のLCO−1および5モル%の0.25モル%Tiおよび0.5モル%MgドーピングCo(OH)
2(それぞれ95.24重量%および4.76重量%に相当する)を、1.000の最終Li:Coモル比を目標として混合する。試薬の質量は、LCO−1およびCo(OH)
2のコバルト重量含有量をそれぞれ60.21重量%および63.40重量%と仮定して、Li:Coの計算において0.2%未満の絶対誤差が生じるように算出した。均一な混合物をアルミナるつぼに配置して、一定空気流下で925℃で12時間加熱した(=第2の燃焼ステップ)。冷却後、得られた粉末(Ex1)をふるいがけし、特徴決定する。Ex1の平均粒径は20μmであることが見出される。
【0066】
実施例2:
実施例2の調製(Ex2と記載):94モル%のLCO−1および6モル%の0.25モル%Tiおよび0.5モル%MgドーピングCo(OH)
2(それぞれ94.28重量%および5.72重量%に相当する)を、0.990±0.002の最終Li:Coモル比を目標として混合する。均一な混合物をアルミナるつぼに配置して、一定空気流下で925℃で12時間加熱した。冷却後、得られた粉末(Ex2)をふるいがけし、特徴決定する。Ex2の平均粒径は20μmであることが見出される。
【0067】
実施例3:
実施例3の特徴決定は、Liが化学量論的に制御されるLiCoO
2をベースとする陰極材料であって、Li原子が、3価反磁性金属によって取り囲まれる単一部位を占有し、CoがAl
3+によって部分的に置換されるコアを含んでなり、そしてコア材料(Li、CoおよびAl)の元素ならびにMgおよびTiを含んでなる無機金属酸化物を含んでなる電子遮断表面を有する陰極材料は、改善された高圧用途特徴および高い圧縮密度を示すことを実証する。
【0068】
LCO−3の調製:到達水準のチタンおよびマグネシウムドーピングLiCoO
2(LCO−3と記載)は、Co
3O
4の粉末を、TiO
2、MgOおよびLi
2CO
3と乾燥混合することによって、標準高温固体状態合成によって得られる。LCO−3は、0.25モル%のチタンと0.25モル%のマグネシウムを含有する。ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.10である。LCO−3の平均粒径は、18μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−3の最終的なLi:Coモル比は1.070であり、そして実施例3に関してLi:(Co+Al)比を設定するために使用される。
【0069】
実施例3の調製(Ex3と記載):陰極粉末材料は、Al:Coモル比を0.01:0.99に(またはCo部位上に1モルAl置換)および最終Li(Co+Al)モル比を1.000±0.002に調整するように、85.40重量%のLCO−3、平均粒径3μmの10.51重量%のCo
3O
4、3.47重量%のLi
2CO
3、0.05重量%のMgO、0.05重量%のTiO
2および0.52重量%のAl
2O
3の混合によって調製される。均一な混合物をアルミナるつぼに配置して、一定空気流下で980℃で12時間加熱した。冷却後、得られた粉末(Ex3)をふるいがけし、特徴決定する。Ex3の平均粒径は16μmであることが見出され、バイモーダル分布が得られる。
【0070】
実施例4:
実施例4の特徴決定は、Liが化学量論的に制御されるLiCoO
2をベースとする陰極材料であって、Liが、3価反磁性金属によって取り囲まれる単一部位を占有するコアを含んでなり、そしてコア材料(Li、Co)の元素ならびにMgおよびTiを含んでなる無機金属酸化物を含んでなる電子遮断表面を有する陰極材料は、高いCレートおよび高平均電圧の維持が必要とされる高動力用途で適切であることを実証する。
【0071】
LCO−4の調製:到達水準のチタンおよびマグネシウムドーピングLiCoO
2(LCO−4と示される)は、Co
3O
4の粉末を、TiO
2、MgOおよびLi
2CO
3と乾燥混合することによって、標準高温固体状態合成によって得られる。LCO−4は、0.18モル%のチタンと0.40モル%のマグネシウムを含有する。ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.03である。LCO−4の平均粒径は6μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−4の最終的なLi:Coモル比は1.015であり、そして実施例4に関してLi:Co比を設定するために使用される。
【0072】
実施例4の調製(Ex4と記載):98.5モル%のLCO−4および1.5モル%のTi(0.18モル%)およびMg(0.4モル%)ドーピングCo
3O
4(それぞれ98.77重量%および1.23重量%に相当する)を、1.000±0.002の最終Li:Coモル比を目標として均一に混合する。試薬の質量は、LCO−3およびCo
3O
4のコバルト重量含有量をそれぞれ60.21重量%および73.42重量%と仮定して算出した。混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間1000℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex4)をふるいがけし、特徴決定する。
【0073】
実施例5:
実施例5の特徴決定は、1.00±0.01のリチウム化学量論を目標とする場合、高い電気化学的性能のみが達成されることを実証する。リチウム過化学量論は、通常到達水
準のLiCoO
2をベースとする材料で観察され、これは放電容量、Cレートおよび高電圧安定性の系統的減損を導く。
【0074】
実施例5a〜5eの調製(Ex5a〜5eと記載):陰極粉末材料は、88.91重量%のLCO−3、3μmの平均粒径を有する10.94重量%のCo
3O
4、0.12重量%のMgOおよび0.03重量%のTiO
2を混合することによって調製される。最終Li:Co(またはLi:M)比を、1.00(Ex5a)、1.01(Ex5b)、1.02(Ex5c)、1.03(Ex5d)および1.04(Ex5e)に調整するために、Li
2CO
3をさらに添加する。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex5a〜5e)をふるいがけし、特徴決定する。
【0075】
Ex5a〜5eの電気化学的特性を表1に示す。レート放電容量DQ7およびDQ8、ならびに3Cレート性能は、Li:M比が減少して、約1.00±0.01となった時に強く改善する。4.5Vでの容量低下は、Li:M比が化学量論に近い時に大幅に向上する。電気伝導度も、Li:Mが1.00の傾向がある場合、LCO−3と比較して3〜4桁低い規模で強く低下する。これらの特性は、Li:Mが化学量論に近い時に分離したマグネシウムおよびTiの量が増加する「電子遮断その場コーティング」の機構を支持する明白な証拠である。高圧用途のためのLiが化学量論的なコア、ならびにMgおよびTiが濃縮された表面の利点が、最終的には明確に強調される。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例1〜4の特徴決定
本発明によって調製されたリチウムコバルトをベースとする酸化物の物理的および電気化学的特性の変化は、Li:M化学量論を制御し、調整するために使用される第2の燃焼の前後に特徴決定される。
【0078】
SEM分析
表面像形成は、走査電子顕微鏡(SEM)を使用して実行され、
図1に示される。全ての試料は、第2の燃焼の前後にモノリシック粒子形態学を特徴とする。第2の燃焼ステップの後、粒子の表面は明らかな変化を受ける:LCO−1、LCO−3およびLCO−4の表面は、ダストおよび細片で覆われ、これは第2の燃焼後のEx1、Ex2、Ex3お
よびEx4の平滑な表面と対照的である。
【0079】
XRD分析
リチウムコバルトをベースとする酸化物の結晶構造は、X線回折によって調査する。LCO−1および実施例1のXRDパターンを
図2に示す。全てのピークは、層状LiCoO
2相で典型的な通常の格子定数a=2.815Åおよびc=14.05Åを有する菱面体セルを使用してR−3m空間群で示される。不純物相、すなわち、コバルトをベースとする酸化物Co
3O
4およびCoOは観察されない。同様の構造モデルおよび同様の格子パラメーターを使用して、同様にLCO−3、LCO−4、Ex3およびEx4のXRDパターンは解釈される。LiOHおよびLi2CO3などの大きい表面塩基含有量を含有しているが、LCO−1、LCO−3およびLCO−4のXRDパターンでは、そのような化合物を識別することが不可能であり、このことは、それらの含有量がXRD検出限界の下にあり、かつ/または表面塩基が非晶質形であることを暗示する。
【0080】
Ex2のXRDパターンを
図3に示す。層状LiCoO
2をベースとする酸化物に起因する主要なピークに加えて(R−3m空間群)、小さい強度ピークが観察され、約1.2重量%に達するコバルトをベースとする尖晶石不純物の存在を示し、これは、目標とされる0.990のLi:Coモル比と非常に良好に一致する。Ex2は、したがって、約99モル%のLiが化学量論的に制御されるLiCoO
2をベースとする材料および約1モル%のコバルト尖晶石をベースとする不純物を含んでなる。
【0081】
Ex3に関して、AlによるCoの均一な置換は、LCO−3(Alなし)およびEx3(1モル%のAl含有)に関して、それぞれ、18.56および18.90である(c/(√24a)−1)×1000として定義される「減少する」c/a比の増加によって確認される。LiCoO
2のAlドーピングにおけるc/a比の増加は、他の研究(例えば、Myung et al.,Solid State Ionics Volume
139,Issues 1−2,2 January 2001,Pages 47−56およびGaudin et al.,J.Phys.Chem.B,2001,105,8081−8087)と良好に一致する。
【0082】
Li塩不純物の分析
種々の材料の表面塩基および炭素含有量を表2に記載する。塩基および炭素含有量は、LCO−1、LCO−3およびLCO−4比較して、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4に関して、第2の燃焼後に強く減少する。この結果は、SEMで示すように、LCO−1、LCO−3およびLCO−4の表面は、LiOHおよびLi
2CO
3などの未反応の過剰なLi塩で部分的に覆われ、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4の表面は、そのような不純物をほとんど含まないことを支持する。
【0083】
【表3】
【0084】
X線光電子分光法(XPS)分析
LCO−1およびEx1の粒子の表面の化学組成は、XPSによって調査された。フルスケールXPSスペクトルを
図4aおよび4bに示し、LCO−1およびEx1の定量的結果に関しては表3に記載する。
【0085】
【表4】
【0086】
コバルト2pおよび3p XPSピークは、
図5に示される。スピン軌道カップリングは、Co2pスペクトルを約2:1の強度比で、2成分、2p
3/2および2P
1/2に分離させる。各成分は、780および795eVで主要ラインを示し、790および805eVで配位子から金属への電荷移動サテライトピークを示す。Co3pスペクトルも、それぞれ、61および71eVで主要ラインおよびサテライトからなるが、3p
3/2および3P
1/2のエネルギー分裂が非常に小さいため観察されない。LCO−1およびEx1のCo2pおよびCo3pスペクトルは、LiCoO
2のCo
3+イオンに特徴的であり、そして粒子の表面でCo
2+の存在を除外する。これらの観察は、LiCoO
2の従来の研究と一致している(例えば、Daheron et al.,J.Phys.Chem.C,2009,113,5843)。
【0087】
しかしながら、XPS分析は、LCO−1およびEx1の粒子の表面の化学組成における明白な差異を明らかにする:
−リチウム1s、酸素1sおよび炭素1s XPSスペクトルは、
図5(b)および5(d)(Li1s)、ならびに
図6(a)および6(c)(O1s)、ならびに
図6(b)および6(d)(C1s)で示される。Li
2CO
3からの激しいピークは、それぞれ、55.7eV、532eVおよび290.2eVを中心とするLi1s、O1sおよびC1sの特徴的な結合エネルギーによってLCO−1に関して観察される。Li2COは、LCO−1粒子の表面で26原子%であると推定される。これらの寄与はEx1で存在せず、このことは、粒子の表面にはリチウム塩がほとんどないことを暗示する。
−
図5dに示されるように、約50eVの良好に解像されたMg2p XPSピークはEx1に関してのみ観察される。LCO−1およびEx1は、約0.005に等しい同一のMg:Co比を特徴とするが、Ex1の表面で測定されるMg:Co比は約0.37であり、LCO−1より約2桁高くなることが示される。MgO様環境は、
図7(c)で示されるように、300〜400eVの範囲で観察される典型的なMg KLL Auger構造によって確認される(Davoisne et al.,Astronomy an
d Astrophysics,2008,482,541を参照のこと)。LCO−1の表面のマグネシウムの不在は、マグネシウムがLCO−1の構造内に残存することを暗示する。
−
図7(a)および7(b)は、両試料に関して、それぞれ、458.5および464eVにおける2成分Ti2p
3/2およびTi2p
5/2を有するTi2pのXPSスペクトルを示す。これらの結合エネルギーは、6倍酸素環境におけるTi
4+の排除的な存在と良好に一致する(Tanaka et al.,Corrosion Science,2008,50,2111およびEl Ouatani et al.,Journal of The Electrochemical Society,2009,156,A4687も参照のこと)。本系のTi
4+の可能なホスト構造は、TiO
2およびLi
2TiO
3である。同様に、LCO−1およびEx1の表面で測定されたTi:Co比は0.1に近く、Ti:Coブレンド比(約0.0025)の40倍より高い。またLCO−1と比較して、Ex1粒子の表面のTi量はわずかに高い。
【0088】
粒子の深さに対応するMgおよびTiの変化は、
図8に示されるようにXPS深さプロファイリングによって監視した。MgおよびTiの濃度は、粒子の最初の50nmで迅速に減少する。MgおよびTiの量は、長時間のエッチングの後でも予想される通り、ゼロまでは減少しない。これは、試料内部の深くまでのアルゴンイオンの挿入が、その後の層の原子の強制混合をもたらす、アルゴンイオンスパッタリングの副作用による。LCO−1と比較してEx1のMgおよびTiより大きい含有量、ならびに深さプロファイリング実験は、Li:Co平衡(第2の)燃焼の間にMgおよびTiがリチウム酸化コバルトバルク構造から放出され、そして酸化型でLiCoO
2粒子の表面で蓄積される、その場コーティング機構を暗示する。MgおよびTiのその場分離機構は、電気伝導度測定によってさらに明らかにされる。
【0089】
電気伝導度
種々の材料の電気伝導度は表4に記載される。
【0090】
【表5】
【0091】
Ex1〜4の電気伝導度は、相当するリチウムドーピング酸化コバルトペアレントLCO−1、LCO−3およびLCO−4よりも3桁低い。より低い伝導率が2つの寄与に由来するということが著者の意見である:
i)
7Li NMRにより明らかであるようにバルク構造的欠陥の低下(下記参照)、
これによって、Li:Co=1.00を有するLi化学量論的LiCoO
2のバンド遮断特性を向上させる。
ii)Ex1、Ex2、Ex3およびEx4の第2の燃焼の間に生じるCo、MgおよびTi酸化物をベースとする種の遮断によるLiCoO
2粒子のその場コーティング。後者は、それぞれ、10
−8S/cmおよび6.02
*10
−7S/cm未満であると測定される商業的に入手可能なMgO(Kyowa Chemicals)およびTiO
2(Cosmo Chemicals KA300)の非常に低い電気伝導度によって支持される。コバルトをベースとする尖晶石不純物を含有するEx2に関連して、Co
3O
4の伝導率が10
−6S/cm未満であることは一般に受け入れられる。
【0092】
圧縮密度
ペアレント相および実施例の圧縮密度を測定し、結果を表5に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
圧縮密度は、以下の通りに測定される:1.300cmの直径「d」を有するプレス型に3グラムの粉末を充填する。207MPaの圧力に相当する2.8tの一軸負荷を30秒間適用する。負荷を緩和した後に、圧縮された粉末の厚さ「t」を測定する。次いで、ペレット密度は以下の通りに算出される:3/(π(d/2)
2×t)(単位はg/cm
3)。
【0095】
全ての材料は、LCO−4およびEx4に関して、平均粒径6μmで、3.40g/cm
3を超え、LCO−1、LCO−3、Ex1、Ex2およびEx3に関して、15μmより大きい平均粒径で、3.75g/cm
3を超える非常に高い圧縮密度を特徴とする。Ex3の圧縮密度は、LCO−3と比較して、0.1g/cm
3増加しており、これは、18μmの粒子を充填することから生じる空隙に適合する3μmの粒子の能力に起因する。
図4は、Ex3に関する粒径に対応する体積分布の変化および累積的な体積分布を示す
。驚くべきことに、Ex3は2つの寄与の質量中心が約3および18μmである第2の燃焼後のバイモーダル粒径分布を保持する。2つのGaussian関数で実験データに適合することによって決定される3μm寄与の体積フラクションは、3および18μmの粒子の初期の組成と良好に一致して、13%に達する。3および18μmの粒子の凝塊形成は、第2の燃焼時には生じず、これは、2つの要因の一方または両方によって防がれると考えられる:(a)XPSによって以前明らかにされた通り、粒子の表面のMgおよびTi種の蓄積、ならびに(b)「リチウムフラックス効果」によって粒子のさらなる成長を防ぐリチウム化学量論の制御。過剰なリチウム(最終Li:Co>1.01)で、ならびにMgおよびTiドーパントなしで再燃焼される試料のバイモーダル分布を維持する努力は失敗し、そして大きい粒子凝塊形成および融合が観察され、圧縮密度のより強い減少がもたらされる。
【0096】
7Li MAS NMR
LCO−1に関しては
図9、Ex1に関しては
図10、Ex2に関しては
図12、LCO−3に関しては
図13、Ex3に関しては
図14、LCO−4に関しては
図15、そしてEx4に関しては
図16に、種々の実施例の
7Liマジックアングルスピニング核磁気共鳴(MAS NMR)スペクトルを示す。2つの型のパターンを識別することができる:
− LCO−1、LCO−3およびLCO−4は、複数の寄与を有する複雑な
7Li MAS NMRパターンを有する。約−0.5ppmを中心とする主要な反磁性寄与および関連するスピニング側波帯に加えて、LCO−1スペクトルは、約185ppm、5ppm、−7ppmおよび−16ppmで複数の常磁性寄与を特徴とし、リチウムイオンに関していくつかの異なる常磁性電子−スピン金属環境を示す。
− 他方では、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4は、−0.5ppm±0.25ppmを中心とするLi共鳴および関連するスピニング側波帯を特徴とする。
【0097】
− 0.5ppmを中心とする鋭いピークは、文献(Levasseur et al.,Solid State Ionics 2000,128,11を参照のこと)に報告される通り、3価反磁性Co
3+(t
2g6e
g0)イオンによってのみ取り囲まれるリチウムイオンに起因している。したがって、反磁性3価金属イオンによってのみ取り囲まれる独特のLi部位は、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4に関して観察される。LCO−1、LCO−3およびLCO−4に関しては、約185ppm、5ppm、−7ppm、−16ppmおよび−40ppmの追加的な常磁性寄与は、2つの主要な寄与によって誘導される構造的欠陥から生じる:
− S.Levasseur,Chem.Mater.2003,15,348−354に記載の通り、層状リチウムコバルトをベースとする酸化物の過リチウム化は、局所的電荷保存のため、正四角錐形状を占有し、かつ中間体常磁性スピン状態構造を有し、不対電子が軌道にあるCo
3+イオンを導く、酸素不足の存在を好む。
− 種々のスピンおよび原子価状態のコバルトイオンの存在を誘導するドーパントの効果。例えば、最近の研究で、LiCoO
2においてCo
3+をMg
2+で置換することは、実質的な酸素不足をもたらすことが示された(Luo et al.,J.Electrochem.Soc,2010,157,782を参照のこと)。同様に、この酸素不足は、常磁性中間体スピン状態Co
3+イオンの存在を好む。局所的電荷保存理由のため、Ti
4+原子価状態に存在する場合、CoのためのTi置換は、Ti
3+常磁性不純物またはCo
2+常磁性不純物も誘導するということを合理的に仮定することもできる。
【0098】
Ex2の
7Li MAS NMRスペクトルは、尖晶石をベースとする不純物の存在にもかかわらず、なお約−0.5ppmの独特の共鳴を特徴とする。この特徴は、明確に、Ex2は、Li:Co=0.99を目標とするが、Liイオンが3価反磁性金属の周囲およびリチウムのない尖晶石不純物(おそらく粒子の表面で存在する)に適合する、化学量
論的に制御されたLiCoO
2を含んでなることを確立する。
【0099】
加えて、両方とも3価反磁性金属イオンであるAl
3+によるCo
3+の置換は、Ex3の
7Li MAS NMRシグナルを変更せず、約−0.5ppmの独特の共鳴を保持し、リチウムイオンは単3価反磁性金属によってのみ取り囲まれる独特の部位を占有することを明白に確認する。同様に、この所見は、M’=Al、BおよびGaであるLi化学量論的LiCo
1−aM’
aO
2の
7Li MAS NMRシグナルを変更しない、Al
3+、Ga
3+およびB
3+などの3価反磁性金属によるCo
3+イオンの置換にまで延長することができる。
【0100】
構造的欠陥の相対的な不在は、表6で示すようにT1スピン−格子緩和時間を測定することによって、さらに特徴づけられる。LCO−1、LCO−2およびLCO−4のT1値は定義されず、いくつかのスピン−格子緩和機構のため、正確に決定することができない。しかしながら、各個の機構の特徴的な緩和時間は0.1秒より短い。他方では、Ex1〜4のT1値は、
図11に示されるように、磁化回復の単指数関数フィットによって首尾よく決定される。
【0101】
単一の
7Li MAS NMRの寄与およびより長いT1値は、両方とも、LCO−1、LCO−3およびLCO−4と比較して、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4における構造的欠陥の相対的に低い濃度を実証する。
【0102】
【表7】
【0103】
結論として、
7Li MAS NMR、XPS分析および電気伝導度は、Liが化学量論に制御されたコアを含んでなり、Liが、低スピンCo
3+(t
2g6e
g0)およびAl
3+などの3価反磁性金属によって取り囲まれる単一部位、ならびにMg、Ti、Si、CoおよびLiを含んでなる無機金属酸化物を含んでなる電子遮断表面を占有する、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4材料の構造の明白な説明を可能にする。
【0104】
電気化学的性能
実施例1〜4の電気化学的性能を表7に示す。電気化学的特性は、LCO−1、LCO−3およびLCO−4と比較して予想外に改善される。4.3Vにおいて、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4は、LCO−1、LCO−3およびLCO−4と比較して、非常に小さい不可逆性容量およびより良好なレート性能を示す。Ex1、Ex2、Ex3およ
びEx4の4.5V高圧性能は向上し、非常に高い容量および非常に良好なサイクル寿命を特徴とする。Ex1、Ex2、Ex3およびEx4の4.6V性能は、40%未満の1Cにおける容量低下によって特別であり、これは著者知識の範囲で文献に無比である。これらのデータは、
7Li MAS NMRによって明示されるような相対的に低い欠陥濃度と、化学量論的に制御されたLiCo
1−xM
xO
2の改善された高圧特性との間の完全な相関を示す。
【0105】
Ex1、Ex2、Ex3およびEx4の圧縮密度、平均電圧および放電容量の積として定義される、4.5Vおよび4.6Vに関する0.1Cにおけるエネルギー密度は、それぞれ、LCO−1、LCO−2およびLCO−3と比較して向上する。高エネルギー密度および改善されたサイクル寿命の組み合わせは、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4を携帯型電子機器などの用途に適切とさせる。Ex4の容量低下が、LCO−4と比較して大幅に向上しているが、Ex1、Ex2およびEx3よりも高いことに気がつくことができる。この効果は、添加されたMgおよびTiの量が全ての試料に関して同様であるため、より薄い表面層を生じるEx4のより低い粒径の直接的な結果であり、電解質分解に対してより保護を提供しない。
【0106】
【表8】
【0107】
表8は、4.4VにおけるEx4およびLCO−4の放電容量、Cレートおよび平均電圧を示す。15Cで、Ex4のCレートおよび平均電圧は、平均放電電圧と放電容量の積として定義される比エネルギーEsの増加をもたらすLCO−4と比較して、約4%改善される。Ex4は、改善されたサイクル寿命および比エネルギーを特徴とし、高いCレートで高い比エネルギーを維持することが必要とされる高動力用途のために高度に適切である。
【0108】
【表9】
【0109】
実施例6:
本実施例は、ZrまたはNbなどの4d元素ならびにNdおよびErなどの希土類元素を含む他の表面組成物が可能なことを実証する。Li:M=1.00±0.01およびMg、Ti、Zr、Nb、NdおよびErを含有する遮断表面を有する試料は、非常に良好な高圧特性を有する。
【0110】
LCO−6の調製:到達水準のチタンおよびマグネシウムドーピングLiCoO
2(LCO−6と示される)は、Co
3O
4の粉末を、TiO
2、MgOおよびLi
2CO
3と乾燥混合することによって、標準高温固体状態合成によって得られる。LCO−6は、0.25モル%のチタンと0.25モル%のマグネシウムを含有する。ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.10である。LCO−6の平均粒径は、SEM像の
図17aで示される通り、18μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−6の最終的なLi:Coモル比は1.0707であり、そして実施例6a、6b、6cおよび6dに関してLi:(Co+Al)=1.000比を設定するために使用される。
【0111】
実施例6a、6b、6cおよび6dの調製
実施例6aは、第1のステップで、LCO−6をナノサイズZrO
2粉末と混合することによって調製される。第2のステップにおいて、89.046重量%のLCO−6/ZrO
2および10.954重量%のCo
3O
4(平均粒径3μm)を混合する。Co
3O
4、Li
2CO
3、Al
2O
3、TiO
2およびMgO粉末は、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%およびZr=0.200モル%(Co含有量に対して表される)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex6a)をふるいがけし、特徴決定する。Ex6aの平均粒径は16μmであることが見出され、そして
図4に示されるものと同様にバイモーダル分布が得られる。
【0112】
実施例6aは、第1のステップで、LCO−6をミクロンサイズNb
2O
5粉末と混合することによって調製される。第2のステップにおいて、89.046重量%のLCO−6/Nb
2O
5および10.954重量%のCo
3O
4(平均粒径3μm)を混合する。Co
3O
4、Li
2CO
3、Al
2O
3、TiO
2およびMgO粉末は、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%およびNb=0.200モル%(Co含有量に対して表される)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex6b)をふるいがけし、特徴決定する。Ex6bの平均粒径は16μmであることが見出され、そして
図4に示されるものと同様にバイモーダル分布が得られる。
【0113】
実施例6cは、第1のステップで、89.046重量%のLCO−6および10.954重量%Co
3O
4(平均粒径3μm)を硝酸ネオジム六水和物と湿式混合することによって調製される。12.146gの硝酸ネオジム六水和物を100mLの脱イオン水に溶解し、そして2kgのLCO−6およびCo
3O
4混合物に添加する。混合物をボトルに入れ、ボトルを回転させることによって一晩中均質化する。次いで、混合物を120℃で乾燥させ、SEM像は、
図17bに示されるように、ネオジムをベースとする粒子がLCO−6およびCo
3O
4粒子の表面に接着することを示す。第2のステップで、Li
2CO
3、Al
2O
3、TiO
2およびMgO粉末は、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%およびNb=0.115モル%(Co含有量に対して表される)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex6c)をふるいがけし、特徴決定する。Ex6cの平均粒径は16μmであることが見出され、そして
図4に示されるものと同様にバイモーダル分布が得られる。
【0114】
実施例6dは、第1のステップで、89.046重量%のLCO−6および10.954重量%Co
3O
4(平均粒径3μm)を硝酸エルビウム五水和物と湿式混合することによって調製される。10.603gの硝酸エルビウム五水和物を100mLの脱イオン水に溶解し、そして2kgのLCO−6およびCo
3O
4混合物に添加する。混合物をボトルに入れ、ボトルを回転させることによって一晩中均質化する。次いで、混合物を120℃で乾燥させ、SEM像は、
図17cに示されるように、エルビウムをベースとする粒子がLCO−6およびCo
3O
4粒子の表面に接着することを示す。第2のステップで、Li
2CO
3、Al
2O
3、TiO
2およびMgO粉末は、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%およびEr=0.114モル%(Co含有量に対して表される)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex6d)をふるいがけし、特徴決定する。Ex6dの平均粒径は16μmであることが見出され、そして
図4に示されるものと同様にバイモーダル分布が得られる。
【0115】
表9および10は、4.5および4.6VにおけるLCO−6およびEx6a〜6dの電気化学的特性を示す。表11は、LCO−6およびEx6a〜6dの物理的特性を示す。高いLi過剰を含有するLCO−6試料は、低容量および高低下レートで、4.5Vにおいて低い電気化学的性能を有する。LCO−6も、多量のCおよび塩基不純物を含有する。Li:(Co+Al)=1.000を有するEx6a〜6dは、非常に低い伝導率、ならびに非常に低いCおよび塩基不純物含有量を有する。したがって、これらの試料は、表面がMg、Ti、Zr、Nb、NdおよびErなどの元素で濃縮されるため、LCO−6より4〜5桁低い非常に低い電気伝導度を有する。4.5および4.6Vにおける電気化学的性能は、LCO−6と比較して、Li:(Co+Al)=1.000のため、非常に高い容量、かつ遮断表面層のため、改善された安定性で特別である。最後に、Ex6a〜6dはバイモーダル分布を特徴とするため、圧縮密度は、LCO−6と比較して、少なくとも+0.5g/cm
3改善される。
【0116】
表11に種々の材料の表面塩基および炭素含有量が示すように、LCO−6と比較して、塩基および炭素含有量は、Ex6a〜dに関して、第2の燃焼の後、強く低下する。この結果は、
図17aのSEMで確認することができるように、LCO−6の表面は、LiOHおよびLi
2CO
3などの未反応の過剰なLi塩のダストで部分的に覆われ、そしてEx6a〜dの表面がそのような不純物をほとんど含まないということを支持する。
【0117】
【表10】
【0118】
【表11】
【0119】
【表12】
【0120】
実施例7:
この実施例は、MgおよびTIを含まないLi
1.00CoO
2は、Ex1〜6と比較して、非常に高い放電容量および良好なレート性能を有するが、遮断保護層が形成されず、より高い電子伝導率および低い高圧サイクル安定性を有することを実証する。
【0121】
LCO−7の調製:到達水準のLiCoO
2(LCO−7と示される)は、大量生産スケールで、Co
3O
4の粉末を、Li
2CO
3と乾燥混合することによって、標準高温固体状態合成によって得られる。ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.07である。LCO−7の平均粒径は19μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−7の最終的なLi:Coモル比は1.040であり、そして実施例7a、7b、7cおよび7dに関してLi:Co=1.010、1.000、0.990および0.980比を設定するために使用される。
【0122】
実施例7a、7b、7cおよび7dは、それで、それぞれ、1.010、1.000、0.990と0.980にLi:Co比を調節するように、以下の重量%比でLCO−7をCo
3O
4粉末と混合することによって調製される:(97.60、2.40)(96.82、3.18)(96.06、3.94)および(95.31、4.69)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex7a〜7d)をふるいがけし、特徴決定する。
【0123】
4.5VにおけるLCO−7および4.6VにおけるEx7a〜7dの電気化学的性能ならびに電子伝導率値を表12に示す。
【0124】
【表13】
【0125】
放電容量DQ1はLi:Co=1.00で局所的最大を有し、その間Cレートおよび4.6V安定性は、Li:Coが減少する時に連続的に改善する。実施例5とは対照的に、遮断表面層が粒子の表面で形成されないため、Li:Coが減少する時に伝導率は有意に減少しない。電解質との不必要な副反応に対する遮蔽を通常提供する遮断表面層の不在は、4.6Vの安定性がなぜこの遮断保護層を特徴とする他の実施例と同様に良好ではないのかについて説明する。Li:Co<1.00の場合、CoO
x(xは約4/3)のトレースが粒子の表面で形成され、そして外的な反応に対して効率的な遮蔽の提供を始動すると、安定性は改善する。しかしながら、DQ1は減少し、そしてサイクル1で充電と放電との間の平均電圧間で差異として定義される分極化は劇的に増加する。
【0126】
実施例8:
本実施例は、マグネシウム含有量が増加した時、表面層の遮断性が増加することを実証する。Li
1.00CoO
2コアの表面層の遮断性を増加させることによって、材料の安全性を改善することができる。
【0127】
実施例8a、8b、8cおよび8dの調製:実施例8a、8b、8cおよび8dは、Alが添加されないこと、およびMg含有量を、それぞれ、0.22、0.48、0.75および1.00モル%まで調節するために十分なMgOが添加されたことを除き、Ex3と同様の方法で調製された。
【0128】
実施例8a、8b、8cおよび8dの電気伝導度を表13に示す。Mg含有量が増加する時、電気伝導度は連続的に減少し、このことは、MgおよびTI含有表面層の遮断性が増加することを意味する。著者は、MgOをベースとする表面層の厚さは、Mgが増加させる時を増加する時に増加し、このことによって改善された遮断挙動がもたらされると考える。本明細書に示されるようにマグネシウムの影響は、Zr、Er、Nd、Nbなどの表面層に存在するさらなる元素から独立し、実験は、NおよびN’ドーピング生成物に対するMg含有量増加の影響も例示する。
【0129】
【表14】
【0130】
安全性におけるこの遮断性の影響は、4.5Vで充電された電極上で実行されるDSC実験によって評価された。充電後、コインセルをグローブボックスで分解し、DMCを使用して陰極を洗浄する。洗浄および乾燥後、電極を電解質で浸漬し、DSC測定のために密封容器に配置する。本実験をEx7b、8bおよび8dで実行し、データは
図18(温度に対する熱フロー(W/g)を示す)に示される。Ex7bは最高ピークを示し、その次はEx8bであり、最も低いピークはEx8dである。
【0131】
Ex7bは、いずれの遮断保護表面層も特徴とせず、DCS実験では鋭い発熱性寄与によって特徴づけられる。これは、充電された材料と電解質とのより急速で激しい外的な反応の結果である。Mg含有量が8bから8dまで増加する時、発熱性寄与は拡大し、より高いTへシフトして、電解質分解の強度は、粒子の表面における遮断保護層によって遅くなることを意味する。
【0132】
実施例9:
実施例9の調製:89.046重量%のLCO−6および10.954重量%のCo
3O
4(平均粒径3μm)を混合することによって調製される。Co
3O
4、Li
2CO
3、
Al
2O
3、TiO
2およびMgO粉末に、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%(Co含有量に対して表される)。大量生産装置を使用して、均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex9)をふるいがけし、特徴決定する。Ex9の平均粒径は16μmであることが見出され、バイモーダル分布が得られる。
【0133】
Ex9は、1.01E−05S/cmの電子伝導率、3.88g/cm
3の圧縮密度、4.5Vで194.1mAh/gのDQ7および3.1%の1C容量低下レートを有する。Ex9は、非水電解質として1/2の体積比でEC(炭酸エチレン)およびDEC(炭酸ジエチル)の混合溶媒中、グラファイト陽極および1.0mol/Lの濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6)塩を使用する800mAhポリマー型フルセルに適合される。その後、セルは、室温(
図19a、サイクル数に対してmAh/gで容量を示す)および45℃(
図19b)で、4.35および3.0Vの間で、1C充電および1C放電レートで500回サイクルされる。50回のサイクルごとに、セル分極化増加を評価するために0.2Cの低速サイクルを実行する。Ex9(図中の上の線)を、到達水準のLiCoO
2の対照(下の線)と比較する。Ex9は、500回のサイクルの後、改善された初期の容量、1Cおよび0.2Cサイクルの間の分極化の増加が少ないこと、ならびにより良好な容量保持を特徴とする。これらの差異は、粒子のコアのLi(Ca+Al)比の差異からもたらされ、Ex9の場合、リチウムの化学量論的な欠陥のないコアが、より良好な放電容量およびより高いレート性能を提供する。Ex9と参照の間の差異は、粒子の表面におけるより少ない電解質酸化によって、45℃では増幅されない。Ex9の粒子の表面の遮断層は、改善された容量保持をもたらす電解質酸化に対する効率的な保護を提供する。
【0134】
本発明に記載されるLi化学量論的なコアおよび保護遮断層の組み合わせは、携帯型電子機器などの商業的な大量生産用途に非常に望みがあると結論づけることができる。