特許第6242401号(P6242401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242401コア材料の元素および1種またはそれ以上の金属酸化物の混合物によってコーティングされたリチウム金属酸化物粒子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242401
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】コア材料の元素および1種またはそれ以上の金属酸化物の混合物によってコーティングされたリチウム金属酸化物粒子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20171127BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/36 C
【請求項の数】36
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2015-547205(P2015-547205)
(86)(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公表番号】特表2016-506596(P2016-506596A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】IB2013060078
(87)【国際公開番号】WO2014091331
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2012/057329
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】502270497
【氏名又は名称】ユミコア
(73)【特許権者】
【識別番号】517107151
【氏名又は名称】ユミコア・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブランゲロ,マクシム
(72)【発明者】
【氏名】キム,キュボ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,デイン
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−008651(JP,A)
【文献】 特表2005−524204(JP,A)
【文献】 特開2006−092820(JP,A)
【文献】 特開2008−311132(JP,A)
【文献】 特開2005−190900(JP,A)
【文献】 特表2010−535699(JP,A)
【文献】 特開2006−019229(JP,A)
【文献】 特開2004−119218(JP,A)
【文献】 George Ting-Kuo Fey, et.al,Nanoparticulate coatings for enhanced cyclability of LiCoO2 cathodes,JOURNAL OF POWER SOURCES,2005年,vol.146,pages 65-70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62、10/05−10/0587
C01G 25/00−47/00、49/10−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア材料と表面層とからなり、前記コア材料がLi、金属Mおよび酸素の元素からなる層状結晶構造を有し、Li対Mのモル比が0.98〜1.01であり、前記金属Mが式M=Co1−aM’を有し、0<a≦0.03であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつ前記表面層が、コア材料の前記元素と、無機NおよびN’をベースとする酸化物との混合物からなり、Nが、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつN’が、4d遷移金属および希土類金属からなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属である、再充電可能電池において陰極材料として使用するためのリチウム金属酸化物粉末。
【請求項2】
N’が、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、YbおよびErからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属である、請求項1に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項3】
少なくとも5μmの平均粒径D50を有する、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項4】
前記表面層の厚さが100nm未満である、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項5】
前記表面層が、2000ppm未満のLiF、LiPOおよびLiSOのいずれか1種またはそれ以上をさらに含んでなる、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項6】
前記コア材料の前記金属が反磁性である、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項7】
前記コア材料中、Liが3価反磁性金属によって取り囲まれる結晶学的部位を占有する、請求項6に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項8】
少なくとも3.40g/cmの圧縮密度を有する、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項9】
25℃で、0.1Cの放電レートで、Li/Liに対して3.0〜4.6でサイクルされる陰極の活性成分として使用される場合、少なくとも200mAh/gの可逆性電極容量を有する、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項10】
60%未満の1Cレート容量低下値を有する、請求項9に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項11】
M’がAlからなり、前記Al含有量が0.1〜1モル%であり、NがMgおよびTiからなり、前記Mg含有量が0.1〜1モル%であり、前記Ti含有量が0.1〜0.5モル%であり、かつN’が、Zr、Nd、ErおよびNbのいずれの1つからなり、前記N’含有量が0.1〜1モル%である、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項12】
50μmol/g未満の全塩基含有量を有する、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項13】
50ppm未満の炭素含有量を有する、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項14】
10−4S/cm未満の電気伝導度を有する、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項15】
前記表面層にはLiCOおよびLiOHが実質的にない、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項16】
前記粉末が、小さい粒径フラクションがD50≦5μmを有し、かつ3〜20体積%であり、大きい粒径フラクションがD50≧12μmを有するバイモーダル粒子形状分布を有する、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項17】
前記粉末が、小さい粒径フラクションのモードおよび大きい粒径フラクションのモードの比率が1/3未満であるバイモーダル粒子形状分布を有する、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項18】
前記コア材料には、酸素空孔、および前記コアの層状結晶構造のMO層中のMに対するLi置換が実質的にない、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項19】
前記コア材料が、常磁性金属、例えば、Co2+、ならびに中間体スピンCo3+およびCo4+を実質的に含まない、請求項1または2に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【請求項20】
コア材料と表面層とからなり、前記コア材料がLi、金属Mおよび酸素の元素からなる層状結晶構造を有し、Li対Mのモル比が0.98〜1.01であり、前記金属Mが式M
=Co1−aM’を有し、0<a≦0.03であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつ前記表面層が、前記コア材料の前記元素と、無機NおよびN’をベースとする酸化物との混合物からなり、Nが、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつN’が、4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属であるリチウム金属酸化物粉末の製造方法であって、
− 第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに第1のLiを含んでなる前駆体粉末の第1の混合物であって、>1.01のLi対M金属モル比を有する第1の混合物を提供するステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で前記第1の混合物を焼結し、それによって、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物を得るステップと、
− 第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を提供するステップと、
− 前記Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物と、前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末とを混合して、それによって、Li対Mモル比が0.98〜1.01である第2の混合物を得るステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で前記第2の混合物を焼結するステップと
を含んでなり、前記第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、前記第1のLiを含んでなる、ならびに前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末のいずれか1種またはそれ以上が、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含んでなり、かつ前記第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、前記第1のLiを含んでなる、ならびに前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末のいずれか1種またはそれ以上が、4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属をさらに含んでなる製造方法。
【請求項21】
コア材料と表面層とからなり、前記コア材料がLi、金属Mおよび酸素の元素からなる層状結晶構造を有し、Li対Mのモル比が0.98〜1.01であり、前記金属Mが式M=Co1−aM’を有し、0≦a≦0.05であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつ前記表面層が、前記コア材料の前記元素と、無機NおよびN’をベースとする酸化物との混合物からなり、Nが、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつN’が、4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属であるリチウム金属酸化物粉末の製造方法であって、
− 第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末、ならびに第1のLiを含んでなる前駆体粉末の第1の混合物であって、>1.01のLi対M金属モル比を有する第1の混合物を提供するステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で前記第1の混合物を焼結し、それによって、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物を得るステップと、
− 前記Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物を、4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属の酸化物または塩と混合し、それによって第2の混合物を得るステップと、
− 第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を提供するステップと、
− 前記第2の混合物と、前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末とを混合して、それによって、Li対Mモル比が0.98〜1.01である第3の混合物を得るステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で前記第3の混合物を焼結するステップと
を含んでなり、前記第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、前記第1のLiを含んでなる、ならびに前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末のいず
れか1種またはそれ以上が、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含んでなる製造方法。
【請求項22】
前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を提供するステップが、− 第3のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を提供するサブステップと、
− 第2のLiを含んでなる前駆体粉末を提供するサブステップと、
− 0.9未満のLi対金属モル比を有する前記第2のLiを含んでなる前駆体粉末が得られるように、前記第3のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を前記第2のLiを含んでなる前駆体粉末と混合するサブステップと
を含んでなり、前記第3のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに前記第2のLiを含んでなる前駆体粉末のいずれか一方または両方が、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含んでなり、かつ前記第3のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに前記第2のLiを含んでなる前駆体粉末のいずれか一方または両方が、4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属をさらに含んでなる、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属が、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、DyおよびErからなる群に属する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1、第2および第3のM’を含んでなる前駆体粉末のいずれか1種またはそれ以上がAlからなる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の混合物が、1.02〜1.12のLi対金属モル比を有する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末中のCoまたはCoおよびM’対前記Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物中の前記金属のモル比が0.01〜0.30である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに前記第1のLiを含んでなる前駆体粉末のいずれか一方または両方が炭素をさらに含んでなり、かつLiが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物が、少なくとも50ppmの炭素含有量を有する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項28】
a=0であり、かつ前記第1および第2のCoを含んでなる前駆体粉末が、酸化コバルト、コバルトオキシヒドロキシド、水酸化コバルト、炭酸コバルトおよびシュウ酸コバルトからなる群のいずれか1種である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、前記第1のLiを含んでなる、ならびに前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末のいずれか1種またはそれ以上が、F、PおよびSのいずれか1種またはそれ以上をさらに含んでなり、かつ前記表面層が、2000ppm未満のLiF、LiPOおよびLiSOのいずれか1種またはそれ以上をさらに含んでなる、請求項20または21に記載の方法。
【請求項30】
前記Liが濃縮されたリチウム金属酸化物ならびに前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末の平均粒径の比率が少なくとも3:1である、請求項20または21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
コア材料と表面層とからなり、前記コア材料がLi、金属Mおよび酸素の元素からなる層状結晶構造を有し、Li対Mのモル比が0.98〜1.01であり、前記金属Mが式M=Co1−aM’を有し、0≦a≦0.05であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつ前記表面層が、前記コア材料の前記元素と、無機NおよびN’をベースとする酸化物との混合物からなり、Nが、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつN’が、4d遷移金属および希土類金属からなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であるリチウム金属酸化物粉末の製造方法であって、
− 第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに第1のLiを含んでなる前駆体粉末の第1の混合物であって、>1.01のLi対M金属モル比を有する第1の混合物を提供するステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で前記第1の混合物を焼結し、それによって、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物を得るステップと、
− 前記Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物を、4d遷移金属および希土類金属からなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属の酸化物または塩と混合し、それによって第2の混合物を得るステップと、
− 第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を提供するステップと、
− 前記第2の混合物と、前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末と、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群の少なくとも1種の元素の酸化物とを混合して、それによって、Li対Mモル比が0.98〜1.01である第3の混合物を得るステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で前記第3の混合物を焼結するステップと
を含んでなる製造方法。
【請求項32】
前記4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属が、Zr、Nb、ErおよびNdからなる群に属する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記4d遷移金属および希土類金属からなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属の塩が水和硝酸塩からなる、請求項21または31に記載の方法。
【請求項34】
前記第3の混合物がLiCOをさらに含んでなる、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の混合物と、前記第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末と、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群の少なくとも1種の元素の酸化物とを混合するステップが、前記第2の混合物を、Co、MgO、AlおよびTiOと混合することを含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項36】
電気化学的セルにおける陰極としての請求項1〜19のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物粉末の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学量論的に制御されたリチウム含有量および電子遮断表面(electron insulating surface)を有するコアを含有する、高圧安定性および高密度リチウム金属酸化物粉末状化合物に関する。この化合物は、改善された高圧電気化学的性能および改善されたエネルギー密度を得るために、Mg、Ti、Zr、Er、Nd、NbおよびAlなどの既知の元素を含んでなってもよい。またこれらの材料の製造方法も開示される。再充電可能なリチウム電池における陰極活物質として、リチウム遷移金属酸化物粉末を使用することができる。
【背景技術】
【0002】
それらの高エネルギー密度のため、携帯電話、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラおよびビデオカメラなどの様々な携帯型電子機器用途において、再充電可能なリチウムおよびリチウムイオン電池を使用することができる。商業的に入手可能なリチウムイオン電池は、典型的にグラファイトをベースとする陽極およびLiCoOをベースとする陰極材料からなる。現在の消費者向け電子機器がより高いエネルギー密度の再充電可能な電池を要求しているため、より要求が高い最終用途のための比容量が増加したLiCoOをベースとする材料が求められている。
【0003】
エネルギー密度を改善する2つの一般的な方法は、(a)充電電圧を増加させること(コインセルに適合させた場合、Li金属に対して典型的に4.5Vまたはさらには4.6V、そしてフル(full)セルに適合させた場合、グラファイトに対して4.35Vおよび4.4V、これは、より高い電圧で充電することができるより強硬な陰極材料を必要とする)、ならびに(b)充填密度を増加させること(これは、粉末粒子の粒径を増加させることを必要とする)である。しかしながら、これらの2つのアプローチの工業的な適用性は、側面的な問題によって制限される。一方では、充電電圧の増加によって電極の不安定な性質が導かれ、電解質分解と関連する陰極劣化がもたらされる。LiCoO(x<1)からリチウムが除去されると、不安定な酸化状態Co4+へのCo3+の酸化が続く。充電電圧が高いほど、Co4+の量は多い。Co4+の高濃度によって、電解質と充電した陰極との間で不必要な副反応が増加する。これらの副反応は、高圧での低い安全性、低いサイクリング安定性、ならびに高温での充電した陰極の低い貯蔵特性をもたらす。他方では、充填密度を増加させるために粒径を増加させることは、再充電可能な電池の動力を低下させる。動力必要条件を満たすために、全体として電池が、特に活性陰極材料自体が十分な高レート性能を有さなければならない。平均粒径を増加させることによって、ソリッドステートリチウム拡散距離が低減し、そして最終的にはレート性能の低下がもたらされる。
【0004】
陰極材料における公開された結果を慎重に研究することによって、LiCoOをベースとする再充電可能なリチウム電池の制限をより良好に理解することができる。到達水準のLiCoOをベースとする材料開発の基本的な制限は、Li過剰および粒径のジレンマにある。国際公開第2010−139404号パンフレットにおいて、著者は、到達水準のMgおよびTiドーピングLiCoOの調製のために使用される充填密度、平均粒径およびリチウム過剰の関係を例示する。要するに充填密度が高いほど、粒径が大きく、かつLi過剰が高く、Li:Co>>1.00として表され、典型的にLi:Coは約1.05であり、これが合成のために使用される。この機構は、Li過剰がLiCoO粒子の成長を向上させるフラックスとして作用し、最終的に充填密度を増加させる、いわゆる「リチウムフラックス効果」に基づく。18μm粒子に関しては、約3.70g/cm
の典型的な充填密度が達成される。著者はまた、高い圧縮密度が好ましく、モノリシック、ジャガイモ形、非凝塊形成された一次LiCoO粒子が得られることを強調する。しかしながら、より大きいモノリシックの粒子を達成するためのより大きいLi:CO過剰の使用は、より低いCレートおよびより低い放電容量とともに低い電気化学的性能をもたらし、これは、粒径増加によって達成されるエネルギー密度増加を相殺する。またそのような高いLi:Co値は、pH、遊離塩基含有量および炭素含有量を増加させ、これは、充電した陰極の安全性、貯蔵および張り出し性を低下させる。Levasseurは、Chem.Mater.,2002,14,3584−3590において、Li MAS NMRによって明示されるような構造的欠陥濃度の増加と、Li:Co過剰の増加との明白な関係を確立する。
【0005】
結果として、現行の到達水準の合成では、Li:Co過剰を低下させて、高密度、モノリシックのLiCoOをベースとする粒子を達成することが不可能である。部分的改善は達成されたが、上記の基本的問題は完全にはまだ解決されていない。したがって、より高い電圧の実際的なセルで、安定性のある様式でサイクルすることができる、高容量のLiCoOをベースとする陰極が明確に必要とされている。
【0006】
従来技術では、この問題に対処するためにいくつかのアプローチが暗示されている。高電圧安定性を達成するため、LiCoO材料は、通常、(例えばAlによって)コーティングされるか、または他の方法で(例えばフッ素化表面を提供することによって)化学的に変性される。問題は、コーティングされた高密度LiCoOがしばしばより低い可逆性容量を有するということであり、そのため、より高い電圧に充電することによるエネルギー密度の獲得の一部分はより低い固有容量によって無効になる。この効果は、酸化アルミニウム保護およびLiF保護コーティングに関して観察することができるが、同様の効果は、ZrO、AlPOなどの他のコーティングでのアプローチに関して観察される。
【0007】
米国特許第2012/0052381号明細書は、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に結合したアルミニウム化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、マグネシウム化合物およびエルビウムなどの希土酸化物化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を有する、リチウム−遷移金属複合酸化物を含んでなる陽極活物質が開示される。
【0008】
米国特許第2009/0136854号明細書は、一般式Li1−y(式中、0.85≦x≦1.25、0≦y≦0.50であり、かつ元素Mは、NiおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種であり、かつ元素Lは、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素、IIIb族元素およびIVb族元素からなる群から選択される少なくとも1種である)によって表されるリチウム複合酸化物を開示する。活物質粒子の表面層は、Al、Mn、Ti、Mg、Zr、Nb、Mo、WおよびYからなる群から選択される少なくとも1種である元素を含む。
【0009】
さらに文献を研究することによって、コーティングが高圧安定性を達成するために必ずしも必要ではないかもしれないことが教示される。Chen & Dahn(Electrochem.Solid−State Lett.,Volume 7,Issue 1,pp.A11−A14(2004))は、例えば、Li金属陽極を用いてコインセルで試験した場合、新たに調製されたLiCoOは4.5Vで安定性のある様式でサイクルすることができることを報告する。そのようなアプローチはコインセルでは適切であり得るが、この効果は実際的な商業的な電池では再現することができない。これらの結果は、現在、発表の数年後、特別に処理されて純粋ではないLiCoOが高圧用途のために商業的に販売されるという事実によって確認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2010−139404号パンフレット
【特許文献2】米国特許第2012/0052381号明細書
【特許文献3】米国特許第2009/0136854号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chem.Mater.,2002,14,3584−3590
【非特許文献2】Electrochem.Solid−State Lett.,Volume 7,Issue 1,pp.A11−A14、2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現在、高圧性能が導かれる他のいかなる戦略も知られていない。本発明の対象は、高い充填密度、高いレート性能、改善された放電容量を有し、そしてハイエンドの二次電池用途のための高い充電電圧で長期のサイクリングの間、高い安定性を示す陰極材料を定義することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、高い充填密度、高いレート性能、改善された放電容量を有し、そして高い充電電圧で長期のサイクリングの間、高い安定性を示す陰極材料を開示する。
【0014】
第1の態様から、本発明は、コア材料と表面層とからなり、コアが元素Li、金属Mおよび酸素からなる層状結晶構造を有し、Li対Mのモル比が0.98〜1.01、好ましくは0.99〜1.00であり、金属Mが式M=Co1−aM’を有し、0≦a≦0.05、好ましくは0<a≦0.03、より好ましくは0<a≦0.01であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつ表面層が、コア材料の元素と、無機NおよびN’をベースとする酸化物との混合物からなり、Nが、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつN’が、4d遷移金属および希土類金属からなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属である、再充電可能電池において陰極材料として使用するためのリチウム金属酸化物粉末を提供することができる。一実施形態において、N’は、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、DyおよびErからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属である。一実施形態において、Li含有量は化学量論的に制御されて、比率Li/M=1.00±0.01を意味する。
【0015】
コアは層状構造を有し、リチウム輝コバルト鉱は、コバルトおよび酸素原子によって形成される八面体のスラブまたは層の間に存在するリチウムの層からなることが知られており、そして層状結晶構造のMO層において酸素空孔およびMに対するLi置換が実質的にない。またコア材料は、常磁性金属、例えばCo2+、ならびに中間体スピンCo3+およびCo4+を実質的に含み得ない。M中の金属の全ては、反磁性体および3価でもよい。コア中のLiは、したがって、3価反磁性金属によって取り囲まれた結晶学的部位を占有してもよい。一実施形態において、表面層の厚さは100nm未満である。もう1つの実施形態において、表面層の厚さは、平均粒径D50の0.008倍未満でもよい。
【0016】
一実施形態において、粉末は一般式LiCo1−a−b−cM’M’’M’’’(式中、0≦a≦0.05、0≦<b≦0.02および0≦c≦0.02であり、M’は、群B、Al、Gaからのいずれか1種またはそれ以上の元素を含んでなり、M’’
は、群Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Y、Sn、Sb、Na、Zn、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、ErおよびYbからのいずれか1種またはそれ以上の元素を含んでなり、M’’’は、群F、P、S、Zrからのいずれか1種またはそれ以上の元素を含んでなる)を有する。元素F、PおよびSは、LiF、LiPOおよびLiSOの形態下で表面上に存在してもよい。もう1つの実施形態において、リチウム金属酸化物粉末の表面のM’およびM’’の濃度は、粉末のバルクのM’およびM’’の濃度の少なくとも5倍である。さらにもう1つの実施形態において、M’およびM’’は、Al、Mg、Ti、ならびにNd、NbおよびErのいずれか1種またはそれ以上からなり、Al含有量は0.1〜1モル%であり、Mg含有量は0.1〜1モル%であり、そしてTi含有量は0.1〜0.5モル%である。種々の実施形態のリチウム金属酸化物粉末は、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも8μm、およびより好ましくは少なくとも12μmの平均粒径D50を有してもよい。一実施形態において、粉末は、少なくとも15μmの平均粒径D50を有する。
【0017】
一実施形態において、粉末は、約−0.5ppmを中心とした単一のLiの寄与によって特徴づけられるLi MAS NMRスペクトルを有し、かつ粉末は、25℃において、0.1C、好ましくは1Cの放電レートでLi/Liに対して3.0〜4.6Vでサイクルされる陰極において活性成分として使用される場合、少なくとも200mAh/g、好ましくは210mAh/g、および最も好ましくは215mAh/gの可逆性電極容量を有する。このリチウム金属酸化物粉末は、60%未満、好ましくは40%未満、および最も好ましくは30%未満の1Cレート容量低下を有し得る。リチウム金属酸化物粉末は、60%より低い、好ましくは40%より低い、および最も好ましくは30%より低い1C容量低下を有し得る。
【0018】
もう1つの実施形態において、リチウム金属酸化物粉末は、少なくとも500ms、好ましくは少なくとも750ms、および最も好ましくは少なくとも900msのスピン格子緩和時間T1を有する。本発明のリチウム金属酸化物粉末は、50μmol/g未満、好ましくは25μmol/g未満、およびより好ましくは15μmol/g未満の全塩基含有量を有し得る。一実施形態において、リチウム金属酸化物粉末は、50ppm未満、好ましくは<35ppm、より好ましくは≦25ppmの炭素含有量を有し得る。もう1つの実施形態において、リチウム金属酸化物粉末は、10−4S/cm未満、好ましくは10−5S/cm未満の電気伝導度を有し得る。
【0019】
本発明のリチウム金属酸化物粉末は、一般式LiCo1−a(式中、0<a≦0.05、好ましくは0<a≦0.01であり、かつMは、群Al、BおよびGaからのいずれか1種またはそれ以上の元素を含んでなる)を有する、少なくとも97モル%の化学量論的な化合物を含んでなり得る。
【0020】
さらにもう1つの実施形態において、リチウム金属をベースとする粉末は、小さい、および大きい粒径フラクションを有するバイモーダル粒子形分布を有し、小さい粒径フラクションはD50≦5μmを有し、かつ3〜20体積%を表し、そして大きい粒径フラクションはD50≧12μm、好ましくはD50≧15μmを有する。いくつかの実施形態において、粉末が、少なくとも3.40g/cm、好ましくは少なくとも3.70g/cm、および最も好ましくは少なくとも3.80g/cmの圧縮密度を有することが可能である。
【0021】
第2の態様から、本発明は、金属Mが式M=Co1−aM’を有し、0≦a≦0.05、好ましくは0≦a≦0.01であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であるリチウム金属酸化物粉末の製造方法であって、
− 第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに第1のLiを含んでなる前
駆体粉末の第1の混合物であって、>1.01のLi対金属モル比を有する第1の混合物を提供するステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で第1の混合物を焼結し、それによって、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物を得るステップと、
− 第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を提供するステップと、
− Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物と、第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末とを混合して、それによって、Li対Mモル比が0.98〜1.01、好ましくは0.99〜1.00である第2の混合物を得るステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で第2の混合物を焼結するステップと
を含んでなる製造方法を提供することができる。「Liが濃縮された」とは、Li含有量がLiMO化合物の化学量論的な量より高いことを意味する。この方法で、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物のLi対金属モル比は、0.98〜1.01の最終Li対金属比(第2の混合物中)を与えるために、第2の混合物中に混合される第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末の量を決定するために使用される。
【0022】
第3の態様から、本発明は、コア材料と表面層とからなり、コア材料が元素Li、金属Mおよび酸素からなる層状結晶構造を有し、Li対Mのモル比が0.98〜1.01、好ましくは0.99〜1.00であり、金属Mが式M=Co1−aM’を有し、0≦a≦0.05、好ましくは0≦a≦0.01であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつ表面層が、コア材料の元素と、無機NおよびN’をベースとする酸化物との混合物からなり、Nが、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつN’が、4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属であるリチウム金属酸化物粉末の製造方法であって、
− 第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに第1のLiを含んでなる前駆体粉末の第1の混合物であって、>1.01のLi対金属モル比を有する第1の混合物を提供するステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で第1の混合物を焼結し、それによって、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物を得るステップと、
− 第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を提供するステップと、
− Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物と、第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末とを混合して、それによって、Li対Mモル比が0.98〜1.01、好ましくは0.99〜1.00である第2の混合物を得るステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で第2の混合物を焼結するステップと
を含んでなり、第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、第1のLiを含んでなる、ならびに第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末のいずれか1種またはそれ以上が、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含んでなり、かつ第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、第1のLiを含んでなる、ならびに第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末のいずれか1種またはそれ以上が、4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属をさらに含んでなる製造方法を提供することができる。この方法で、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物のLi対金属モル比は、0.98〜1.01の最終Li対金属比(第2の混合物中)を与えるために、第2の混合物中に混合される第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末の量を決定するために使用される。CoおよびM’を含んでなる前駆体が少なくとも1種のNまたはN’ドーパントをさらに含んでなることを記載することによって、この粉末が化合物、例えば、CoおよびAl、ならびにNまたはN’前駆体、例えば、TiO、ZrOおよびMgOの混合物からなることを意味することもできる。同様に、Liを含
んでなる前駆体は、例えば、LiCOおよびTiOおよびMgOの混合物であってもよい。また、表面層がN’をベースとする酸化物を含んでなる方法の実施形態において、N’は、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、DyおよびErからなる群のいずれか1種またはそれ以上でもよい。さらなる実施形態において、第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに第1のLiを含んでなる前駆体粉末の第1の混合物であって、>1.01のLi対金属モル比を有する第1の混合物を提供するステップにおいて、Li対金属モル比は1.02〜1.12である。
【0023】
いくつかの実施形態において、Tの焼結ステップおよびTの焼結ステップの各々は、6〜24時間、実行される。
【0024】
代替実施形態において、本発明は、上記リチウム金属酸化物粉末の製造方法であって、− 第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに第1のLiを含んでなる前駆体粉末の第1の混合物であって、>1.01のLi対金属モル比を有する第1の混合物を提供するステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で第1の混合物を焼結し、それによって、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物を得るステップと、
− Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物と、4d遷移金属および希土類金属からなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属の酸化物または塩とを混合して、それによって、第2の混合物を得るステップと、
− 第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を提供するステップと、
− 第2の混合物と、第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末と、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群の少なくとも1種の元素の酸化物とを混合して、それによって、Li対Mモル比が0.98〜1.01、好ましくは0.99〜1.00である第3の混合物を得るステップと、
− 少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で第3の混合物を焼結するステップと
を含んでなる製造方法を提供することができる。本代替の一実施形態において、4d遷移金属および希土類金属からなる群の少なくとも1種の金属は、Zr、Nb、ErおよびNdからなる群に属している。もう1つの実施形態において、4d遷移金属および希土類金属からなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属の塩は、水和硝酸塩からなる。これらの代替実施形態において、第3の混合物は、LiCOをさらに含んでなってもよい。また、これらの代替実施形態において、第2の混合物と、第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末と、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Sn、Sb、Na、ZnおよびSiからなる群の少なくとも1種の元素の酸化物とを混合するステップは、第2の混合物をCo、MgO、AlおよびTiOと混合することを含む。
【0025】
上記の方法実施形態において、第1および第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体は、同一「M前駆体」化合物でもよい。上記のCoを含んでなる前駆体粉末に関して、a=0、M=Co、かつM’が不在である場合、および>0の場合、第1、第2および第3のCoを含んでなる前駆体粉末は、酸化コバルト、コバルトオキシヒドロキシド、水酸化コバルト、炭酸コバルトおよびシュウ酸コバルトからなる群のいずれか1種であってよい。一実施形態において、第1、第2および第3のCoを含んでなる前駆体粉末は、Al、Ti、Mg、FおよびCaからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含んでなる。
【0026】
もう1つの実施形態において、上記の方法で、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物と、第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末の平均粒径の比率は少なくとも3:1、好ましくは少なくとも4:1、および最も好ましくは少なくとも5:1である
。Liが濃縮されたリチウム金属酸化物および第2のMを含んでなる前駆体粉末の粒子は、第2の燃焼時にバイモーダル粒径分布を保持する。さらにもう1つの実施形態において、バイモーダル粒径粉末の圧縮密度は、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物の圧縮密度よりも少なくとも0.1g/cm高い。
【0027】
第4の態様から、本発明は、電気化学的電池における陰極として、上記リチウム金属酸化物粉末の使用を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来技術のLiCoOおよび本発明による材料の両方の10000倍率のSEM像。
図2】LCO−1および実施例1のXRDパターン。回析された強度は、2θ(°)に対応する対数スケールでプロットされる。
図3】実施例2のXRDパターン。回析された強度は、2θ(°)に対応する対数スケールでプロットされる。星印によってマークされるピークは、コバルトをベースとする尖晶石不純物の存在を示す(a=8.085ÅでFd−3mの空間群で示されるCo)。
図4】実施例3の粒径に対応する体積分布の変化(点線、左側スケール)および累積的な体積分布(実線、右側スケール)。図4aおよびb:(4a)LCO−1および(4b)実施例1に関するフルスケールXPSスペクトル(10000カウント毎秒対結合エネルギー(eV))。
図5】(a)および(c)、それぞれ、LCO−1および実施例1のCo2p XPSピーク。(b)および(d)、それぞれ、LCO−1および実施例1のCo3p、Li1sおよびMg2pピーク。
図6】(a)および(c)、LCO−1および実施例1のO1s XPSピーク。(b)および(d)、LCO−1および実施例1のC1s XPSピーク。285.5eVのピークは、炭化水素表面汚染物質に相当する。
図7】(a)および(c)、それぞれ、LCO−1および実施例1のTi2p XPSピーク。(c)、実施例1のMg KLL Augerスペクトル。
図8】Ta参照を使用する正規化されたエッチング深さに対応する、実施例1のMg、TiおよびSi原子パーセントの変化。
図9】a)フルスケールおよびb)50倍拡大強度スケールでのLCO−1のLi MAS NMRスペクトル(116MHz、スピニング30kHz、シンクロナイズドエコー)。星印()でマークされたラインはスピニングサイドバンドを示して、測定からのアーティファクトである。
図10】a)フルスケールおよびb)100倍拡大強度スケールでの実施例1のLi MAS NMRスペクトル(116MHz、スピニング30kHz、シンクロナイズドエコー)。星印()でマークされたラインはスピニングサイドバンドを示して、測定からのアーティファクトである。
図11】回復時間(秒)に対応する磁化回復(任意の単位)の変化。実線は、時間I[t]=I[0](1−2exp(−t/T1))に対応する磁化回復の単指数関数フィットである。
図12】実施例2のLi MAS NMRスペクトル(116MHz、スピニング30kHz、シンクロナイズドエコー)。
図13】LCO−3のLi MAS NMRスペクトル(116MHz、スピニング30kHz、シンクロナイズドエコー)。
図14】実施例3のLi MAS NMRスペクトル(116MHz、スピニング30kHz、シンクロナイズドエコー)。
図15】LCO−4のLi MAS NMRスペクトル(116MHz、スピニング30kHz、シンクロナイズドエコー)。
図16】実施例4のLi MAS NMRスペクトル(116MHz、スピニング30kHz、シンクロナイズドエコー)。
図17】LCO−6およびCo粒子の表面に接着したネオジムをベースとする粒子(17a)およびエルビウムをベースとする粒子(17b)の10000倍率のSEM像。
図18】DSC実験結果。
図19】フルセルサイクリング結果。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面および以下の詳細説明において、本発明の実施を可能にするために、好ましい実施形態が詳細に記載される。本発明は、これらの特定の好ましい実施形態に関して記載されるが、本発明が、これらの好ましい実施形態に限定されないことは理解されるであろう。逆に、本発明は、以下の詳細説明および添付の図面の考察から明白になるであろう数多くの代替、変更および相当物を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明は、コア材料と表面層とからなり、コアが元素Li、金属Mおよび酸素からなる層状結晶構造を有し、Li対Mのモル比が0.98〜1.01、好ましくは0.99〜1.00であり、金属Mが式M=Co1−aM’を有し、0≦a≦0.05であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつ表面層が、コア材料の元素と、無機NおよびN’をベースとする酸化物との混合物からなり、Nが、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Y、Sn、Sb、Na、Zn、ZrおよびSiからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつN’が、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、ErおよびYbからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属である、リチウム金属酸化物粉末を提供することができる。一実施形態において、N=MgおよびTiであり、かつN’は、NbまたはNdまたはErのいずれかである。もう1つの実施形態において、表面層は、Mg、TiおよびZrの無機酸化物を含んでなる。
【0031】
一実施形態において、本発明の材料のコアは、式Li1.00±0.01MOを有し、金属Mが式M=Co1−aM’を有し、0≦a≦0.05であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、Li対Mのモル比が0.98〜1.01、好ましくは0.99〜1.00である。もう1つの実施形態において、コア材料は、空間群R−3mによる秩序ある岩塩型結晶構造と記載される六角形層状結晶構造を有する。コアは、MO層において酸素空孔およびMに対するLi置換などの構造的欠陥が実質的に含み得ず、また常磁性金属、例えばCo2+、ならびに中間体スピンCo3+およびCo4+を実質的に含み得ない。
【0032】
欠陥のないコアの存在は、本発明の陰極材料の固有の特徴である。発明者は、欠陥のないコアが、粒子へのLiイオンのより急速な拡散を可能にし、開示された陰極材料の高い観察されたレート性能および放電容量の改善に関連することが観察された。
【0033】
表面層は、種々のM、M’、LiおよびO元素の構成勾配を有するコアと比較して、不均質な組成を有する。表面は、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Y、Sn、Sb、Na、Zn、Zr、Si、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、DyおよびErなどの元素NおよびN’が濃縮され、そして一実施形態において、コアからの分離、および粒子の表面でのこれらの金属ドーパントの蓄積によって形成される。コアには、これらのドーパントは実質的に存在しない。著者は、表面で形成される酸化物の化学性質を明白に確立することができず、したがって、例えば、Mg、SiおよびTiドーピングの場合、可能な形態は、限定されないが、LiMO、MgO、CoO、Co1−φMgφO(φ≦1)、Co、MgδCo3−δ(δ≦1
)、TiO、LiTiO、SiO、LiεSiλπ(2≦ε≦8、1≦λ≦2および3≦π≦7)、LiZrO、LiZr、LiNbO、LiNdO、LiErOであることを考察する。これらの仮定は、XPS実験によって支持され、Co、MgおよびTi、Al、Zr、Er、Nd、Nbに関して観察される結合エネルギーは酸素環境で典型的であり、そして上記の酸化物の粒子の低い電気伝導率は、より強い絶縁体であることが予想される。CoおよびM’(Al、B、Ga)の結合エネルギーは、トリゴナルR−3m結晶系で記載されるLiMOに見出されるOおよびLi環境で典型的である。コア材料(Li、M、O)の元素、ならびに無機N−およびN’をベースとする酸化物の混合物からなる表面層が記載される場合、「N−またはN’−をベースとする」酸化物は、Li原子を組み込むそれらの酸化物も意味する。
【0034】
表面は、コアに、高密度に、そして連続的に連結されて、粒子から物理的に分離されることができない。したがって、もう1つの実施形態において、NおよびN’金属の濃度は、表面から距離を増加させると、おそらく勾配様で減少し、粒子の内部でゼロに接近する。粒子のN−およびN’−が濃縮された表面は、2つの追加的で予想外の特性を特徴とする:
(i)表面は、LiOHおよびLiCOなどのリチウム塩が実質的に存在しない。そのような特徴は、張り出し性および貯蔵特性が相当に改善されるため、ハイエンドポリマーまたはプリズムセルなどの特に高密度高圧用途で望ましい。
(ii)驚くべきことに、NおよびN’が濃縮された表面粒子は、電子遮断特性も特徴としている。著者は、酸化したNおよびN’をベースとする種の蓄積は、低い電子伝導率の原因となり、そして電解質からの物理的分離をもたらし、さらに望ましくない副反応を防止することを考察する。
【0035】
表面層は典型的に20nm〜200nm、好ましくは20nm〜100nmの厚さであり、2つのパラメーターに主として影響を受ける:
(i)NおよびN’含有量:NおよびN’含有量が増加する時に、厚さは増加する。
(ii)粉末材料の粒径分布。所与の量のNおよびN’に関して、粒径が小さいほど、表面層は薄い。増加する分極化の増加、そして最終的にはより低いレート性能をもたらすため、非常に厚い層は望ましくない。逆に、電解質に対する不良な遮蔽を提供し、そして外的な反応を防止する際に効率的ではないため、薄すぎる層も不都合である。
【0036】
最初に記載したように、LiCoOをベースとする陰極材料の本質的な特徴は、高い充填密度であり、このことは、商業的な二次電池のエネルギー密度を増加させること可能にする。本発明において、高い充填密度を達成するための好ましい形態学的実施形態は、モノリシック、ジャガイモ形状、凝塊形成していない粒子を含む。モノリシック粒子は内部多孔性を示さず、そしてより小さい一次粒子の凝塊からならない。典型的な粒径(D50)は、少なくとも5μm、または少なくとも10μm、好ましくは15μmより大きい。圧縮密度は、典型的に3.40g/cmより高く、好ましくは少なくとも3.70g/cmの範囲にある。一実施形態において、圧縮密度は、3.90g/cm程度の高さである。もう1つの実施形態において、圧縮密度は、平均粒径が6μmより大きい粉末に関して少なくとも3.40g/cmである。さらにもう1つの実施形態において、圧縮密度は、平均粒径が15μmより大きい粉末に関して少なくとも3.75g/cmである。
【0037】
コア材料と表面層とからなり、コア材料が元素Li、金属Mおよび酸素からなる層状結晶構造を有し、Li対Mのモル比が0.98〜1.01、好ましくは0.99〜1.00であり、金属Mが式M=Co1−aM’を有し、0≦a≦0.05、好ましくは0≦a≦0.01であり、M’は、Al、GaおよびBからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつ表面層が、コア材料の元素と、無機NおよびN’をベースとする酸
化物との混合物からなり、Nが、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Y、Sn、Sb、Na、Zn、ZrおよびSiからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属であり、かつN’が、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、DyおよびErからなる群のいずれか1種またはそれ以上の金属である、リチウム金属酸化物粉末製造のための方法実施形態において、
この方法は、
(i)第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、ならびに第1のLiを含んでなる前駆体粉末の第1の混合物であって、>1.01のLi対金属モル比を有する第1の混合物を提供するステップと、
(ii)少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で第1の混合物を焼結し、それによって、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物粉末を得るステップと、
(iii)第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末を提供するステップと、
(iv)Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物と、第2のCoまたはCoおよびM’を含んでなる前駆体粉末とを混合して、それによって、Li対Mモル比が0.98〜1.01、好ましくは0.99〜1.00である第2の混合物を得るステップと、
(v)少なくとも600℃の温度Tで、酸素を含んでなる雰囲気で第2の混合物を焼結するステップと
を含んでなり、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物粉末、第1のCoまたはCoおよびM’を含んでなる、第1のLiを含んでなる、ならびに第2のCoまたはCoおよびM’含んでなる前駆体粉末のいずれか1種またはそれ以上が、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Y、Sn、Sb、Na、Zn、ZrおよびSiからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含んでなり、同一またはもう1種の前駆体が、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、DyおよびErからなる群の少なくとも1種の金属を含んでなる。
【0038】
本文後半で、ステップ(i)および(ii)は、「第1の燃焼」と記載され、そしてステップ(iii)、(iv)および(v)は「第2の燃焼」と記載される。本発明の種々の実施は、特にプロセス条件、種々の先駆体の性質およびそれらのブレンドの順序に関して可能である。
【0039】
第1のMを含んでなる前駆体および第2のMを含んでなる前駆体は、コバルト含有前駆体およびM’含有前駆体の混合物であることができる。適切なコバルト含有前駆体の例は、酸化コバルト、水酸化、オキシヒドロキシド、炭酸塩およびシュウ酸塩が含まれる。M’含有前駆体は、酸化物、水酸化物または有機錯体であることが可能であり、好ましくは、均一な分布と容易なブレンドプロセスを達成するためにサブミクロン粉末形態学を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物、第1のM、第2のMおよび第1のLiを含んでなる前駆体粉末のいずれか1種は、Al、Ga、B、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Y、Sn、Sb、Na、Zn、Zr、Si、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、DyおよびErからなる群からのドーパント(M’、N、N’)をさらに含んでなる。方法実施形態の1つにおいて、第1のMおよび第1のLiを含んでなる前駆体粉末のいずれか一方または両方は、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Y、Sn、Sb、Na、Zn、Zr、Si、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Er、F、PおよびSからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含んでなる。NおよびN’ドーパントの均一な分布は重要であり、このプロセス実施形態を用いて改善することができる。代替プロセス実施形態において、NおよびN’ドーパントの均一な分散は、第2のMを含んでなる前駆体粉末が、Mg、Ti、Fe、Cu、Ca、Ba、Y、Sn、Sb
、Na、Zn、Zr、Si、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sc、Ce、Pr、Nd、Gd、DyおよびErからなるN、N’ドーパント元素群の少なくとも1種の元素をさらに含んでなる場合に改善される。N、N’元素を含んでなる適切な化合物の例は、サブミクロン粒径を有する酸化物(例えば、MgO、TiO、SiO)、フルオライト(例えば、MgF)である。N’元素を含んでなる適切な化合物の例は、好ましくは、サブミクロン酸化物粉末、例えば、ZrO、Nb、Nd、Er、水和硝酸塩、例えば、Nd(NO・6HOおよびEr(NO・5HOおよびフッ化物である。
【0041】
1つの特定の実施形態において、Ti、Mg、ZrおよびNbは、好ましくは、TiO、MgO、ZrO、Nbの形態である。それぞれ、ZrOおよびTiOに関して、100nm未満、ならびにNbおよびMgOに関して、1μm未満のD50を有する粒子を、上記の第1および第2の混合物のいずれか一方または両方に添加する。一実施形態において、それらの水和硝酸塩のNdおよびErは、湿式プロセスを使用してLiCoO粒子に添加される。この方法によって、粒子上での希土類金属の均一な分布を達成することができる。他方では、ナノサイズの希土類金属酸化物粉末に基づく乾燥法は、大量生産に対して安い費用およびより都合の良いルートを提供するため、好ましい。もう1つの実施形態において、Alは、好ましくは100nm未満のD50を有するAl粒子の形態で、上記の第2の混合物に添加される。もう1つの特定の実施形態において、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10〜20マイクロメートルの高密度モノリシックの粒子を有するLiCoOである。多くの商業的な従来技術のLiCoO材料は、すでにこの所望の形態学を有する。
【0042】
さらにもう1つの特定の実施形態において、第2のMを含んでなる前駆体は、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物のD50の1/3未満、好ましくは1/4未満のD50を有する粒径分布を特徴とする。一実施形態において、第2のMを含んでなる前駆体と、Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物とのサイズ比は1/6である。後者の場合、第2の燃焼後、バイモーダル分布が得られ、第2のMを含んでなる前駆体に由来するLiMOをベースとする粒子は、(a)非常に高いCレートを支持するため、および(b)より大きいリチウム金属酸化物粒子充填の空隙に良好に適合するために十分小さく、このため、低い多孔性電極および高体積エネルギー密度が可能となる。
【0043】
Liが濃縮されたリチウム金属酸化物化合物は、到達水準の化合物としても記載されるが、第1の焼結ステップの後に得られ、
− 少なくとも2つの寄与を含有するNMRシグナル、
− 粒子の表面の多量のリチウム塩および炭素、
− 10−4S/cmより高い電気伝導度、
− 低い電気化学的性能、すなわち、低いCレートおよび低い放電容量
をさらに特徴とする。
【0044】
逆に、リチウム化学量論を精巧に制御することによって、第2の焼結ステップの後に得られる本発明の陰極材料は、
− 約0ppmを中心とする独特のNMR寄与、
− 粒子の表面の極めて低い量のリチウム塩および炭素、
− 10−5S/cm未満の電気伝導度、
− 改善された電気化学的性能、すなわち、高いCレートおよび高い放電容量
を特徴とする。
【0045】
本発明の材料のLi含有量は化学量論的に制御され、Li:Mモル比が0.98〜1.
01の範囲にあることを意味する。著者は、目標とされたLi:Mが1.01より高い場合、電気化学的性能、例えば、より低い放電容量およびより低い高圧安定性、ならびに物理的特性、例えば、塩基含有量および炭素含有量の増加が、得られる材料で劣っていることを観察した。同様に、目標とされたLi:Mが0.98より低い場合、材料は、非常に良好な高圧安定性を保持するが、2つの望ましくない効果を受ける:(i)より少ない活物質が入手可能であり、かつ放電容量は低下する、ならびに(ii)コバルトをベースとする尖晶石で濃縮された表面は粒子の表面で形成され、それはセル分極化を増加させる。
【0046】
本発明者は、2つの驚くべき観察をし、これは本発明の本質的な態様であると考えられる。
【0047】
第1の観察:粒子のコアは、化学量論的かつ実質的に欠陥のないリチウムである。本発明によるリチウム金属酸化物は、到達水準方法によって調製され、かつ本発明のリチウム金属酸化物と同一成分を含有するリチウム金属酸化物とは異なる電気化学的特性を示す。物理的特性のこの変化は、Li−NMRによって観察することができる。Li−NMRにおいて、強い磁場がリチウム含有材料に外部的に適用される時、Li化学シフト値は、核磁性モーメントを有するリチウム核およびリチウム含有材料に含有される金属成分の不対電子の間の様々な超微細相互作用のためにシフトする。リチウム含有材料の結晶構造の特定の成分の局所的構造的なおよび電子特徴は、そのような化学シフト値によって生じるLi NMRスペクトルへの種々の寄与を測定することによって評価することができる。
【0048】
従来の方法によって調製される到達水準のTiおよびMgドーピングされたリチウム酸化コバルト(以下の実施例において、材料LCO−1、LCO−3、LCO−4、LCO−6およびLCO−7)において、Li NMRスペクトルの約−0.5ppmの鋭いピーク、ならびに約185ppm、5ppm、−7ppm、−16ppmおよび−40ppmに中心を有する追加のピークが観察される(図9を参照のこと)。この場合、約−0.5ppmの鋭いLi共鳴は、反磁性Co3+金属(t2g)のみに同調するLi結晶部位を示し、ここでは全ての電子が対である。約185ppm、5ppm、−7ppm、−16ppmおよび−40ppmに中心を有する追加のピークは、Levasseur,Chem.Mater.,2002,14,3584−3590に記載されるように、反磁性低スピンCo3+金属(t2g)に加えて、常磁性中間体スピンCo3+(t2g)に部分的に、または完全に同調したLi結晶部位を示す。常磁性金属の不対電子とリチウム核との間の相互作用は、様々な化学シフトをもたらし、そしてLCO−1、LCO−3、LCO−4、LCO−6およびLCO−7のための異なる複数のLi部位環境を明らかにすることを可能にする。著者は、LiMO粒子のコアでのドーパントN、例えば、MgおよびTiの存在は(Wenbin Luo et al.,J.Electrochem.Soc,2010,157,782によるX線回折などの他の技術によって文献に確率されているように)、コバルトイオンのスピン状態および原子価を変化させるか(低スピンCo3+に関してMg2+またはTi4+置換が予想される)、または他の電子スピンキャリア(例えばTi3+)を導入し、さらにコアの構造的および常磁性欠陥の濃度を増加させることを考察する。
【0049】
これと比較すると、本発明のリチウム金属酸化物は、到達水準の方法によって調製されたリチウム金属酸化物のものと同一成分および組成を有するが、約−0.5ppmで独特のLiピークを示すことがわかる。したがって、実施例1〜9(下記参照)は、単に反磁性3価金属イオン、例えば、Co3+(t2g)またはAl3+(2p)によって取り囲まれた1つのLi部位環境のみを含有する。実施例材料のコアは、したがって、常磁性不純物、構造的欠陥およびドーパントN、例えば、Mg2+、Ti3+またはTi4+を実質的に含まない。
【0050】
この観察は、常磁性スピン濃度は、本発明の陰極材料と比較した場合、到達水準のLiCoOをベースとする材料においてより大きいことを明確に明示するT1スピン−格子緩和時間の測定によってさらに確認される。
【0051】
第2の観察:ドーパントNおよびN’が存在する場合、表面は、コアからのドーパントの自然発生分離によって、第2の焼結の間に形成される。このような「その場」コーティングの厳密な機構は知られていないが、著者は、リチウム化学量論が精巧に制御されて、0.98〜1.01のLi:Mモル比である場合に、それは特権的であることを仮定する。この場合、粒子のコアが化学量論的リチウムになり、そしてNおよびN’ドーパント、例えば、MgおよびTi、Zr、Nb、NdおよびErが、粒子表面および粒界で放出して蓄積される協同反応が生じる。上記のとおり、これはNMR観察によって確証される。
【0052】
これに関連して、本発明の陰極材料のもう1つの重要な特徴は、「遮断」性である。これらの陰極材料は、最も少ない伝導性の現在既知の陰極材料のものよりも少なくとも2〜3桁低い伝導率を有する。例えば、商業的なLiCoOは、10−2〜10−3S/cmの範囲の相対的に高い電気伝導度を有する。そのような遮断性陰極は、優れた電気化学的性能、すなわち、高い放電容量およびCレート性能を与えることができ、このことは、固体陰極内および電解質と陰極との間の界面全体でのLiカチオン拡散のために、高い電気伝導度が必要とされることが一般に受け入れられるため、驚きである。
【0053】
表面層によって提供される低い伝導率は、本発明の陰極材料の高圧安定性の主要な理由であると考えられる。LiCoOをベースとする陰極が高圧に充電される時、すなわち、陰極が強く挿入されない場合、大部分のコバルトイオンが4+原子価状態にあるLiCoO(x<<1)組成を達成する。4価コバルト含有LiCoOは、非常に強い酸化剤であって、高度に反応性である。そのような酸化表面と接触している時、電解質は熱力学的に不安定になる。電解質(還元剤である)との反応は、エネルギー的に強く好まれる。高圧でのLiCoO陰極の通常のサイクリングの間の低温でさえ、この反応は、ゆっくり、しかし連続的に進展する。反応生成物は陰極表面を覆って、電解質は分解し、そして両方の影響が連続的に電池の電気化学的性能の劣化を生じる。また容量の損失と耐性の強い増加、すなわち分極化も観察される。
【0054】
もちろん、遮断表面層によって保護されている陰極材料は、4価コバルトイオンを電解質から物理的に分離し、最終的にはさらなる電解質還元を防止することによって、この問題を解決する。Mg、Zr、SiおよびTi、Zr、Nb、NdおよびErなどの化合物の精選によって、このプロセスは、MgOおよびTiO、ならびにリチウム化されてもよいZr、Nb、Nd、Er酸化物などの酸化化合物が濃縮される層による最終的な粉末のその場コーティングを達成することを可能にする。粉末が電池の電解質と接触する時、この不活性コーティング層は追加的な安全性を提供する。
【0055】
実施例で使用される測定技術:
電気伝導度の測定は、4プローブ構造で、63.7MPaの印加圧力下で実行される。明細書および請求項において、63.7MPaの実際の圧力が印加された時に、丸められて63MPaの値が記載される。
【0056】
電気化学的性能は、25℃でリチウムヘキサフルオライト(LiPF)型電解質中で対電極としてLi箔を使用してCR2032コイン型セルで試験する。活物質ロードは、10.5(±0.5)mg/cmである。レート性能および容量を測定するために、セルを4.3Vまで充電し、3.0Vまで放電する。延長されたサイクリングの間の高圧放電容量および容量保持を、4.5Vおよび4.6Vの充電電圧で測定する。放電レートの
測定のために、160mAh/gの比容量を選択する。例えば、2Cの放電に関して、320mA/gの比電流を使用する。以下の表は、この明細書中で全てのコインセルに使用される試験の説明である。
【0057】
【表1】
【0058】
データ分析のために、以下の定義が使用される:Q:容量、D:放電、C:充電、サイクル数を示すための数の後に記載される。例えば、低速高圧放電容量DQ7は、0.1Cで4.5(または4.6)〜3.0Vの範囲で第7回のサイクルの間に測定される。高速高圧放電容量DQ8は、1Cで4.5(または4.6)〜3.0Vの範囲で第8回のサイクルの間に測定される。
不可逆性容量Qirr(%)は、((CQ1−DQ1)/CQ1)×100である。
レート性能は、それぞれ、0.1CでのDQに対する0.2、0.5、1、2および3CのDQの比によって定義され、変換されて、%で表される。
100サイクルあたりの0.1Cでの%で表される容量低下レートは、以下の通り計算される:(1−(DQ31/DQ7))×100/23。同様に、100サイクルあたりの1Cでの容量低下レートは:(1−(DQ32/DQ8))×100/23である。
0.1Cおよび1Cでのエネルギー低下レートは、容量低下レートと同様の方法で算出されるが、放電容量DQの代わりに、放電エネルギー(DQ×平均放電電圧として定義される)が計算に使用される。
分極化はサイクル1で測定されて、第1の充電と第1の放電との間の平均電圧間の差異として定義される。
Liマジックアングルスピニング(MAS)NMRスペクトルは、標準2.5mm Bruker MAプローブを用いて、116MHz(7.05T magnet)でBruker 300 Avance分光計で記録する。シングルパルスとHahnエコーシーケンスの組み合わせは、MAS条件(30kHzスピニング速度)で使用される。tπ/2=2.0μ秒のシングルパルスシーケンスは、分光計の待ち時間のため、sin(x
)/xベースライン補正によるファーストオーダーフェージングプロセスを必要とする。ローターシンクロナイズドHahnエコーシーケンス(tπ/2−τ−tπ−τ)(τ1=τ2は、1ローター期間、すなわち、33.33マイクロ秒に等しい)を使用して、全てのシグナルの位相調整を促進し、そして、電子スピンとの相互作用を焦点を定めている間のレシーバー待ち時間の間失われる可能な非常に広範囲にわたるシグナルの観察を確実にする。90°パルス持続はtπ/2=2.0μ秒に等しい。100秒のリサイクル時間が使用される。ppmで表される等方性化学シフトは、外部参照としてHO中に溶解される1M LiClを使用して得られる。
【0059】
T1スピン−格子緩和時間は、静的試料上で反転回復シーケンスを使用して測定される。T1は、回復遅れ(100μ秒から100秒)に対応する磁化回復強度の単指数関数的フィッティングによって決定される。
【0060】
X線光電子分光法(XPS)測定は、焦点が合わされたモノクロ化Al kα放射線(hυ=1486.6eV)を適合されたKratos Axis Ultra分光計を使用して実行される。Ag 3d5/2ラインに関して、最大半量の全幅は、記録条件で0.58eVである。試料の分析された面積は、300×700μmである。ピークは、20eVの一定パスエネルギーを使用して記録される。分析チャンバーの圧力は約5×10−7Paである。水分と空気曝露から試料を防ぐため、XPS分光計に移動チャンバーを通して直接連結されたアルゴン乾燥箱で、サンプリングを実行する。短い取得時間制御スペクトルは、試料が劣化していないことを確認するために、各実験の開始および終了後に記録する。結合エネルギースケールは、LiCoOピーク(Co2p、Co3pおよびO1s)から較正される。コアピークは、非線形のShirley型バックグラウンドを使用して分析される。ピーク位置および面積は、70%Gaussianおよび30%Lorentzian形を使用する加重最小二乗フィッティング法によって最適化される。定量化は、Scofield相対感度係数に基づいて実行された。深さプロファイリング実験に関して、深さは、0.32nm/秒のアルゴンエッチング速度が観察されるTaの試料に対して相対的に算出された。
【0061】
塩基含有量は、表面と水との間の反応生成物の分析によって定量的に測定されることができる材料表面特性である。粉末が水に浸漬されると、表面反応が生じる。反応の間、水のpHは増加し(「塩基が溶解する」)ので、塩基はpH滴定によって定量化される。滴定の結果は、「可溶性塩基含有量」(SBC)である。可溶性塩基の含有量は、以下の通りに測定することができる:100mlの脱イオン水を7.5gの陰極に添加し、その後、8分間撹拌する。典型的に静置を3分間行い、次いで溶液を除去し、1μmシリンジフィルターに通し、それによって、可溶性塩基を含有する>90gの透明溶液を達成する。可溶性塩基の含有量は、撹拌下でpHが3に達するまで、0.5ml/分の速度で0.1M HClの添加の間のpHプロフィールを対数化することによって滴定される。参照電圧プロフィールは、DI水中に低濃度で溶解されるLiOHおよびLiCOの適切な混合物を滴定することによって得られる。ほとんど全ての場合、2つの異なるプラトーが観察される。上のプラトーは、OH/HOと、それに続いてCO2−/HCOであり、下のプラトーはHCO/HCOである。第1および第2のプラトーの間の変曲点、ならびに第2のプラトーの後の変曲点は、pHプロフィールの導関数dpH/dVolの相当する最小値から得られる。第2の変曲点は、一般にpH4.7に近い。結果は、陰極gあたりの塩基のマイクロモルとして記載される。溶解する塩基の量は非常に再現可能であり、陰極の表面特性と直接に関連する。これらが安定性に対する有意な影響を有するので(すなわち最終的な電池の安全性と過充電/高T貯蔵特性)、塩基含有量と安定性との間の相関がある。可溶性塩基含有量は、国際公開第2012−107313号パンフレットにさらに詳細に検討される。
【実施例】
【0062】
実施例1〜4
Li:Co化学量論的に制御されたリチウムコバルトをベースとする酸化物の調製
これらの実施例は、約−0.5ppmを中心とするシングルLi寄与によって特徴決定されるLi MAS NMRスペクトルおよび増加したT1スピン−格子緩和時間を特徴とする、Li:Co化学量論的に制御された、ドーピングされたリチウムコバルトをベースとする酸化物が、高電圧サイクリング安定性によっても特徴づけられることを実証する。改善された安定性、シングル寄与Li MAS NMRスペクトルおよびより長いT1は、リチウム対金属比を最適化することによって得られる。
【0063】
実施例1:
実施例1および2の特徴決定は、Liが化学量論的に制御される、すなわち、1.00±0.01のLi/Co比を有するLiCoOをベースとする陰極材料であって、Li原子が、3価反磁性金属によって取り囲まれる単一部位を占有するコアを含んでなり、そしてコア材料(Li、Co)の元素ならびにMgおよびTiを含んでなる無機金属酸化物を含んでなる電子遮断表面を有する陰極材料は、高圧用途のために改善された特徴を示すことを実証する。
【0064】
LCO−1の調製:0.25モル%のチタンおよび0.5モル%のマグネシウムがドーピングされたCo(OH)は、LiCoOの前駆体として、国際公開第2010−139404号パンフレットで説明されるプロセスによって、パイロットラインで調製される(960℃〜1020℃の温度での前駆体の単一燃焼プロセス、このプロセスは、LCO−3、−4、−6および−7に関しても使用される)。到達水準のチタンおよびマグネシウムドーピングLiCoO(LCO−1と示される)は、前駆体をLiCOと混合することによって、標準高温固体状態合成(=第1の燃焼ステップ)によって得られる。LiCOドーピングCo(OH)ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.06〜1.12である。LCO−1の平均粒径は、20μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−1の最終的なLi:Coモル比は1.053であり、そして実施例1および2に関するLi:Co比を決定するために使用される。LCO−1は、実施例1および実施例2のリチウムドーピング酸化コバルト「ペアレント」とも呼ばれる。
【0065】
実施例1の調製(Ex1と記載):95モル%のLCO−1および5モル%の0.25モル%Tiおよび0.5モル%MgドーピングCo(OH)(それぞれ95.24重量%および4.76重量%に相当する)を、1.000の最終Li:Coモル比を目標として混合する。試薬の質量は、LCO−1およびCo(OH)のコバルト重量含有量をそれぞれ60.21重量%および63.40重量%と仮定して、Li:Coの計算において0.2%未満の絶対誤差が生じるように算出した。均一な混合物をアルミナるつぼに配置して、一定空気流下で925℃で12時間加熱した(=第2の燃焼ステップ)。冷却後、得られた粉末(Ex1)をふるいがけし、特徴決定する。Ex1の平均粒径は20μmであることが見出される。
【0066】
実施例2:
実施例2の調製(Ex2と記載):94モル%のLCO−1および6モル%の0.25モル%Tiおよび0.5モル%MgドーピングCo(OH)(それぞれ94.28重量%および5.72重量%に相当する)を、0.990±0.002の最終Li:Coモル比を目標として混合する。均一な混合物をアルミナるつぼに配置して、一定空気流下で925℃で12時間加熱した。冷却後、得られた粉末(Ex2)をふるいがけし、特徴決定する。Ex2の平均粒径は20μmであることが見出される。
【0067】
実施例3:
実施例3の特徴決定は、Liが化学量論的に制御されるLiCoOをベースとする陰極材料であって、Li原子が、3価反磁性金属によって取り囲まれる単一部位を占有し、CoがAl3+によって部分的に置換されるコアを含んでなり、そしてコア材料(Li、CoおよびAl)の元素ならびにMgおよびTiを含んでなる無機金属酸化物を含んでなる電子遮断表面を有する陰極材料は、改善された高圧用途特徴および高い圧縮密度を示すことを実証する。
【0068】
LCO−3の調製:到達水準のチタンおよびマグネシウムドーピングLiCoO(LCO−3と記載)は、Coの粉末を、TiO、MgOおよびLiCOと乾燥混合することによって、標準高温固体状態合成によって得られる。LCO−3は、0.25モル%のチタンと0.25モル%のマグネシウムを含有する。ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.10である。LCO−3の平均粒径は、18μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−3の最終的なLi:Coモル比は1.070であり、そして実施例3に関してLi:(Co+Al)比を設定するために使用される。
【0069】
実施例3の調製(Ex3と記載):陰極粉末材料は、Al:Coモル比を0.01:0.99に(またはCo部位上に1モルAl置換)および最終Li(Co+Al)モル比を1.000±0.002に調整するように、85.40重量%のLCO−3、平均粒径3μmの10.51重量%のCo、3.47重量%のLiCO、0.05重量%のMgO、0.05重量%のTiOおよび0.52重量%のAlの混合によって調製される。均一な混合物をアルミナるつぼに配置して、一定空気流下で980℃で12時間加熱した。冷却後、得られた粉末(Ex3)をふるいがけし、特徴決定する。Ex3の平均粒径は16μmであることが見出され、バイモーダル分布が得られる。
【0070】
実施例4:
実施例4の特徴決定は、Liが化学量論的に制御されるLiCoOをベースとする陰極材料であって、Liが、3価反磁性金属によって取り囲まれる単一部位を占有するコアを含んでなり、そしてコア材料(Li、Co)の元素ならびにMgおよびTiを含んでなる無機金属酸化物を含んでなる電子遮断表面を有する陰極材料は、高いCレートおよび高平均電圧の維持が必要とされる高動力用途で適切であることを実証する。
【0071】
LCO−4の調製:到達水準のチタンおよびマグネシウムドーピングLiCoO(LCO−4と示される)は、Coの粉末を、TiO、MgOおよびLiCOと乾燥混合することによって、標準高温固体状態合成によって得られる。LCO−4は、0.18モル%のチタンと0.40モル%のマグネシウムを含有する。ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.03である。LCO−4の平均粒径は6μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−4の最終的なLi:Coモル比は1.015であり、そして実施例4に関してLi:Co比を設定するために使用される。
【0072】
実施例4の調製(Ex4と記載):98.5モル%のLCO−4および1.5モル%のTi(0.18モル%)およびMg(0.4モル%)ドーピングCo(それぞれ98.77重量%および1.23重量%に相当する)を、1.000±0.002の最終Li:Coモル比を目標として均一に混合する。試薬の質量は、LCO−3およびCoのコバルト重量含有量をそれぞれ60.21重量%および73.42重量%と仮定して算出した。混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間1000℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex4)をふるいがけし、特徴決定する。
【0073】
実施例5:
実施例5の特徴決定は、1.00±0.01のリチウム化学量論を目標とする場合、高い電気化学的性能のみが達成されることを実証する。リチウム過化学量論は、通常到達水
準のLiCoOをベースとする材料で観察され、これは放電容量、Cレートおよび高電圧安定性の系統的減損を導く。
【0074】
実施例5a〜5eの調製(Ex5a〜5eと記載):陰極粉末材料は、88.91重量%のLCO−3、3μmの平均粒径を有する10.94重量%のCo、0.12重量%のMgOおよび0.03重量%のTiOを混合することによって調製される。最終Li:Co(またはLi:M)比を、1.00(Ex5a)、1.01(Ex5b)、1.02(Ex5c)、1.03(Ex5d)および1.04(Ex5e)に調整するために、LiCOをさらに添加する。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex5a〜5e)をふるいがけし、特徴決定する。
【0075】
Ex5a〜5eの電気化学的特性を表1に示す。レート放電容量DQ7およびDQ8、ならびに3Cレート性能は、Li:M比が減少して、約1.00±0.01となった時に強く改善する。4.5Vでの容量低下は、Li:M比が化学量論に近い時に大幅に向上する。電気伝導度も、Li:Mが1.00の傾向がある場合、LCO−3と比較して3〜4桁低い規模で強く低下する。これらの特性は、Li:Mが化学量論に近い時に分離したマグネシウムおよびTiの量が増加する「電子遮断その場コーティング」の機構を支持する明白な証拠である。高圧用途のためのLiが化学量論的なコア、ならびにMgおよびTiが濃縮された表面の利点が、最終的には明確に強調される。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例1〜4の特徴決定
本発明によって調製されたリチウムコバルトをベースとする酸化物の物理的および電気化学的特性の変化は、Li:M化学量論を制御し、調整するために使用される第2の燃焼の前後に特徴決定される。
【0078】
SEM分析
表面像形成は、走査電子顕微鏡(SEM)を使用して実行され、図1に示される。全ての試料は、第2の燃焼の前後にモノリシック粒子形態学を特徴とする。第2の燃焼ステップの後、粒子の表面は明らかな変化を受ける:LCO−1、LCO−3およびLCO−4の表面は、ダストおよび細片で覆われ、これは第2の燃焼後のEx1、Ex2、Ex3お
よびEx4の平滑な表面と対照的である。
【0079】
XRD分析
リチウムコバルトをベースとする酸化物の結晶構造は、X線回折によって調査する。LCO−1および実施例1のXRDパターンを図2に示す。全てのピークは、層状LiCoO相で典型的な通常の格子定数a=2.815Åおよびc=14.05Åを有する菱面体セルを使用してR−3m空間群で示される。不純物相、すなわち、コバルトをベースとする酸化物CoおよびCoOは観察されない。同様の構造モデルおよび同様の格子パラメーターを使用して、同様にLCO−3、LCO−4、Ex3およびEx4のXRDパターンは解釈される。LiOHおよびLi2CO3などの大きい表面塩基含有量を含有しているが、LCO−1、LCO−3およびLCO−4のXRDパターンでは、そのような化合物を識別することが不可能であり、このことは、それらの含有量がXRD検出限界の下にあり、かつ/または表面塩基が非晶質形であることを暗示する。
【0080】
Ex2のXRDパターンを図3に示す。層状LiCoOをベースとする酸化物に起因する主要なピークに加えて(R−3m空間群)、小さい強度ピークが観察され、約1.2重量%に達するコバルトをベースとする尖晶石不純物の存在を示し、これは、目標とされる0.990のLi:Coモル比と非常に良好に一致する。Ex2は、したがって、約99モル%のLiが化学量論的に制御されるLiCoOをベースとする材料および約1モル%のコバルト尖晶石をベースとする不純物を含んでなる。
【0081】
Ex3に関して、AlによるCoの均一な置換は、LCO−3(Alなし)およびEx3(1モル%のAl含有)に関して、それぞれ、18.56および18.90である(c/(√24a)−1)×1000として定義される「減少する」c/a比の増加によって確認される。LiCoOのAlドーピングにおけるc/a比の増加は、他の研究(例えば、Myung et al.,Solid State Ionics Volume
139,Issues 1−2,2 January 2001,Pages 47−56およびGaudin et al.,J.Phys.Chem.B,2001,105,8081−8087)と良好に一致する。
【0082】
Li塩不純物の分析
種々の材料の表面塩基および炭素含有量を表2に記載する。塩基および炭素含有量は、LCO−1、LCO−3およびLCO−4比較して、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4に関して、第2の燃焼後に強く減少する。この結果は、SEMで示すように、LCO−1、LCO−3およびLCO−4の表面は、LiOHおよびLiCOなどの未反応の過剰なLi塩で部分的に覆われ、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4の表面は、そのような不純物をほとんど含まないことを支持する。
【0083】
【表3】
【0084】
X線光電子分光法(XPS)分析
LCO−1およびEx1の粒子の表面の化学組成は、XPSによって調査された。フルスケールXPSスペクトルを図4aおよび4bに示し、LCO−1およびEx1の定量的結果に関しては表3に記載する。
【0085】
【表4】
【0086】
コバルト2pおよび3p XPSピークは、図5に示される。スピン軌道カップリングは、Co2pスペクトルを約2:1の強度比で、2成分、2p3/2および2P1/2に分離させる。各成分は、780および795eVで主要ラインを示し、790および805eVで配位子から金属への電荷移動サテライトピークを示す。Co3pスペクトルも、それぞれ、61および71eVで主要ラインおよびサテライトからなるが、3p3/2および3P1/2のエネルギー分裂が非常に小さいため観察されない。LCO−1およびEx1のCo2pおよびCo3pスペクトルは、LiCoOのCo3+イオンに特徴的であり、そして粒子の表面でCo2+の存在を除外する。これらの観察は、LiCoOの従来の研究と一致している(例えば、Daheron et al.,J.Phys.Chem.C,2009,113,5843)。
【0087】
しかしながら、XPS分析は、LCO−1およびEx1の粒子の表面の化学組成における明白な差異を明らかにする:
−リチウム1s、酸素1sおよび炭素1s XPSスペクトルは、図5(b)および5(d)(Li1s)、ならびに図6(a)および6(c)(O1s)、ならびに図6(b)および6(d)(C1s)で示される。LiCOからの激しいピークは、それぞれ、55.7eV、532eVおよび290.2eVを中心とするLi1s、O1sおよびC1sの特徴的な結合エネルギーによってLCO−1に関して観察される。Li2COは、LCO−1粒子の表面で26原子%であると推定される。これらの寄与はEx1で存在せず、このことは、粒子の表面にはリチウム塩がほとんどないことを暗示する。
図5dに示されるように、約50eVの良好に解像されたMg2p XPSピークはEx1に関してのみ観察される。LCO−1およびEx1は、約0.005に等しい同一のMg:Co比を特徴とするが、Ex1の表面で測定されるMg:Co比は約0.37であり、LCO−1より約2桁高くなることが示される。MgO様環境は、図7(c)で示されるように、300〜400eVの範囲で観察される典型的なMg KLL Auger構造によって確認される(Davoisne et al.,Astronomy an
d Astrophysics,2008,482,541を参照のこと)。LCO−1の表面のマグネシウムの不在は、マグネシウムがLCO−1の構造内に残存することを暗示する。
図7(a)および7(b)は、両試料に関して、それぞれ、458.5および464eVにおける2成分Ti2p3/2およびTi2p5/2を有するTi2pのXPSスペクトルを示す。これらの結合エネルギーは、6倍酸素環境におけるTi4+の排除的な存在と良好に一致する(Tanaka et al.,Corrosion Science,2008,50,2111およびEl Ouatani et al.,Journal of The Electrochemical Society,2009,156,A4687も参照のこと)。本系のTi4+の可能なホスト構造は、TiOおよびLiTiOである。同様に、LCO−1およびEx1の表面で測定されたTi:Co比は0.1に近く、Ti:Coブレンド比(約0.0025)の40倍より高い。またLCO−1と比較して、Ex1粒子の表面のTi量はわずかに高い。
【0088】
粒子の深さに対応するMgおよびTiの変化は、図8に示されるようにXPS深さプロファイリングによって監視した。MgおよびTiの濃度は、粒子の最初の50nmで迅速に減少する。MgおよびTiの量は、長時間のエッチングの後でも予想される通り、ゼロまでは減少しない。これは、試料内部の深くまでのアルゴンイオンの挿入が、その後の層の原子の強制混合をもたらす、アルゴンイオンスパッタリングの副作用による。LCO−1と比較してEx1のMgおよびTiより大きい含有量、ならびに深さプロファイリング実験は、Li:Co平衡(第2の)燃焼の間にMgおよびTiがリチウム酸化コバルトバルク構造から放出され、そして酸化型でLiCoO粒子の表面で蓄積される、その場コーティング機構を暗示する。MgおよびTiのその場分離機構は、電気伝導度測定によってさらに明らかにされる。
【0089】
電気伝導度
種々の材料の電気伝導度は表4に記載される。
【0090】
【表5】
【0091】
Ex1〜4の電気伝導度は、相当するリチウムドーピング酸化コバルトペアレントLCO−1、LCO−3およびLCO−4よりも3桁低い。より低い伝導率が2つの寄与に由来するということが著者の意見である:
i)Li NMRにより明らかであるようにバルク構造的欠陥の低下(下記参照)、
これによって、Li:Co=1.00を有するLi化学量論的LiCoOのバンド遮断特性を向上させる。
ii)Ex1、Ex2、Ex3およびEx4の第2の燃焼の間に生じるCo、MgおよびTi酸化物をベースとする種の遮断によるLiCoO粒子のその場コーティング。後者は、それぞれ、10−8S/cmおよび6.0210−7S/cm未満であると測定される商業的に入手可能なMgO(Kyowa Chemicals)およびTiO(Cosmo Chemicals KA300)の非常に低い電気伝導度によって支持される。コバルトをベースとする尖晶石不純物を含有するEx2に関連して、Coの伝導率が10−6S/cm未満であることは一般に受け入れられる。
【0092】
圧縮密度
ペアレント相および実施例の圧縮密度を測定し、結果を表5に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
圧縮密度は、以下の通りに測定される:1.300cmの直径「d」を有するプレス型に3グラムの粉末を充填する。207MPaの圧力に相当する2.8tの一軸負荷を30秒間適用する。負荷を緩和した後に、圧縮された粉末の厚さ「t」を測定する。次いで、ペレット密度は以下の通りに算出される:3/(π(d/2)×t)(単位はg/cm)。
【0095】
全ての材料は、LCO−4およびEx4に関して、平均粒径6μmで、3.40g/cmを超え、LCO−1、LCO−3、Ex1、Ex2およびEx3に関して、15μmより大きい平均粒径で、3.75g/cmを超える非常に高い圧縮密度を特徴とする。Ex3の圧縮密度は、LCO−3と比較して、0.1g/cm増加しており、これは、18μmの粒子を充填することから生じる空隙に適合する3μmの粒子の能力に起因する。図4は、Ex3に関する粒径に対応する体積分布の変化および累積的な体積分布を示す
。驚くべきことに、Ex3は2つの寄与の質量中心が約3および18μmである第2の燃焼後のバイモーダル粒径分布を保持する。2つのGaussian関数で実験データに適合することによって決定される3μm寄与の体積フラクションは、3および18μmの粒子の初期の組成と良好に一致して、13%に達する。3および18μmの粒子の凝塊形成は、第2の燃焼時には生じず、これは、2つの要因の一方または両方によって防がれると考えられる:(a)XPSによって以前明らかにされた通り、粒子の表面のMgおよびTi種の蓄積、ならびに(b)「リチウムフラックス効果」によって粒子のさらなる成長を防ぐリチウム化学量論の制御。過剰なリチウム(最終Li:Co>1.01)で、ならびにMgおよびTiドーパントなしで再燃焼される試料のバイモーダル分布を維持する努力は失敗し、そして大きい粒子凝塊形成および融合が観察され、圧縮密度のより強い減少がもたらされる。
【0096】
Li MAS NMR
LCO−1に関しては図9、Ex1に関しては図10、Ex2に関しては図12、LCO−3に関しては図13、Ex3に関しては図14、LCO−4に関しては図15、そしてEx4に関しては図16に、種々の実施例のLiマジックアングルスピニング核磁気共鳴(MAS NMR)スペクトルを示す。2つの型のパターンを識別することができる:
− LCO−1、LCO−3およびLCO−4は、複数の寄与を有する複雑なLi MAS NMRパターンを有する。約−0.5ppmを中心とする主要な反磁性寄与および関連するスピニング側波帯に加えて、LCO−1スペクトルは、約185ppm、5ppm、−7ppmおよび−16ppmで複数の常磁性寄与を特徴とし、リチウムイオンに関していくつかの異なる常磁性電子−スピン金属環境を示す。
− 他方では、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4は、−0.5ppm±0.25ppmを中心とするLi共鳴および関連するスピニング側波帯を特徴とする。
【0097】
− 0.5ppmを中心とする鋭いピークは、文献(Levasseur et al.,Solid State Ionics 2000,128,11を参照のこと)に報告される通り、3価反磁性Co3+(t2g)イオンによってのみ取り囲まれるリチウムイオンに起因している。したがって、反磁性3価金属イオンによってのみ取り囲まれる独特のLi部位は、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4に関して観察される。LCO−1、LCO−3およびLCO−4に関しては、約185ppm、5ppm、−7ppm、−16ppmおよび−40ppmの追加的な常磁性寄与は、2つの主要な寄与によって誘導される構造的欠陥から生じる:
− S.Levasseur,Chem.Mater.2003,15,348−354に記載の通り、層状リチウムコバルトをベースとする酸化物の過リチウム化は、局所的電荷保存のため、正四角錐形状を占有し、かつ中間体常磁性スピン状態構造を有し、不対電子が軌道にあるCo3+イオンを導く、酸素不足の存在を好む。
− 種々のスピンおよび原子価状態のコバルトイオンの存在を誘導するドーパントの効果。例えば、最近の研究で、LiCoOにおいてCo3+をMg2+で置換することは、実質的な酸素不足をもたらすことが示された(Luo et al.,J.Electrochem.Soc,2010,157,782を参照のこと)。同様に、この酸素不足は、常磁性中間体スピン状態Co3+イオンの存在を好む。局所的電荷保存理由のため、Ti4+原子価状態に存在する場合、CoのためのTi置換は、Ti3+常磁性不純物またはCo2+常磁性不純物も誘導するということを合理的に仮定することもできる。
【0098】
Ex2のLi MAS NMRスペクトルは、尖晶石をベースとする不純物の存在にもかかわらず、なお約−0.5ppmの独特の共鳴を特徴とする。この特徴は、明確に、Ex2は、Li:Co=0.99を目標とするが、Liイオンが3価反磁性金属の周囲およびリチウムのない尖晶石不純物(おそらく粒子の表面で存在する)に適合する、化学量
論的に制御されたLiCoOを含んでなることを確立する。
【0099】
加えて、両方とも3価反磁性金属イオンであるAl3+によるCo3+の置換は、Ex3のLi MAS NMRシグナルを変更せず、約−0.5ppmの独特の共鳴を保持し、リチウムイオンは単3価反磁性金属によってのみ取り囲まれる独特の部位を占有することを明白に確認する。同様に、この所見は、M’=Al、BおよびGaであるLi化学量論的LiCo1−aM’Li MAS NMRシグナルを変更しない、Al3+、Ga3+およびB3+などの3価反磁性金属によるCo3+イオンの置換にまで延長することができる。
【0100】
構造的欠陥の相対的な不在は、表6で示すようにT1スピン−格子緩和時間を測定することによって、さらに特徴づけられる。LCO−1、LCO−2およびLCO−4のT1値は定義されず、いくつかのスピン−格子緩和機構のため、正確に決定することができない。しかしながら、各個の機構の特徴的な緩和時間は0.1秒より短い。他方では、Ex1〜4のT1値は、図11に示されるように、磁化回復の単指数関数フィットによって首尾よく決定される。
【0101】
単一のLi MAS NMRの寄与およびより長いT1値は、両方とも、LCO−1、LCO−3およびLCO−4と比較して、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4における構造的欠陥の相対的に低い濃度を実証する。
【0102】
【表7】
【0103】
結論として、Li MAS NMR、XPS分析および電気伝導度は、Liが化学量論に制御されたコアを含んでなり、Liが、低スピンCo3+(t2g)およびAl3+などの3価反磁性金属によって取り囲まれる単一部位、ならびにMg、Ti、Si、CoおよびLiを含んでなる無機金属酸化物を含んでなる電子遮断表面を占有する、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4材料の構造の明白な説明を可能にする。
【0104】
電気化学的性能
実施例1〜4の電気化学的性能を表7に示す。電気化学的特性は、LCO−1、LCO−3およびLCO−4と比較して予想外に改善される。4.3Vにおいて、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4は、LCO−1、LCO−3およびLCO−4と比較して、非常に小さい不可逆性容量およびより良好なレート性能を示す。Ex1、Ex2、Ex3およ
びEx4の4.5V高圧性能は向上し、非常に高い容量および非常に良好なサイクル寿命を特徴とする。Ex1、Ex2、Ex3およびEx4の4.6V性能は、40%未満の1Cにおける容量低下によって特別であり、これは著者知識の範囲で文献に無比である。これらのデータは、Li MAS NMRによって明示されるような相対的に低い欠陥濃度と、化学量論的に制御されたLiCo1−xの改善された高圧特性との間の完全な相関を示す。
【0105】
Ex1、Ex2、Ex3およびEx4の圧縮密度、平均電圧および放電容量の積として定義される、4.5Vおよび4.6Vに関する0.1Cにおけるエネルギー密度は、それぞれ、LCO−1、LCO−2およびLCO−3と比較して向上する。高エネルギー密度および改善されたサイクル寿命の組み合わせは、Ex1、Ex2、Ex3およびEx4を携帯型電子機器などの用途に適切とさせる。Ex4の容量低下が、LCO−4と比較して大幅に向上しているが、Ex1、Ex2およびEx3よりも高いことに気がつくことができる。この効果は、添加されたMgおよびTiの量が全ての試料に関して同様であるため、より薄い表面層を生じるEx4のより低い粒径の直接的な結果であり、電解質分解に対してより保護を提供しない。
【0106】
【表8】
【0107】
表8は、4.4VにおけるEx4およびLCO−4の放電容量、Cレートおよび平均電圧を示す。15Cで、Ex4のCレートおよび平均電圧は、平均放電電圧と放電容量の積として定義される比エネルギーEsの増加をもたらすLCO−4と比較して、約4%改善される。Ex4は、改善されたサイクル寿命および比エネルギーを特徴とし、高いCレートで高い比エネルギーを維持することが必要とされる高動力用途のために高度に適切である。
【0108】
【表9】
【0109】
実施例6:
本実施例は、ZrまたはNbなどの4d元素ならびにNdおよびErなどの希土類元素を含む他の表面組成物が可能なことを実証する。Li:M=1.00±0.01およびMg、Ti、Zr、Nb、NdおよびErを含有する遮断表面を有する試料は、非常に良好な高圧特性を有する。
【0110】
LCO−6の調製:到達水準のチタンおよびマグネシウムドーピングLiCoO(LCO−6と示される)は、Coの粉末を、TiO、MgOおよびLiCOと乾燥混合することによって、標準高温固体状態合成によって得られる。LCO−6は、0.25モル%のチタンと0.25モル%のマグネシウムを含有する。ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.10である。LCO−6の平均粒径は、SEM像の図17aで示される通り、18μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−6の最終的なLi:Coモル比は1.0707であり、そして実施例6a、6b、6cおよび6dに関してLi:(Co+Al)=1.000比を設定するために使用される。
【0111】
実施例6a、6b、6cおよび6dの調製
実施例6aは、第1のステップで、LCO−6をナノサイズZrO粉末と混合することによって調製される。第2のステップにおいて、89.046重量%のLCO−6/ZrOおよび10.954重量%のCo(平均粒径3μm)を混合する。Co、LiCO、Al、TiOおよびMgO粉末は、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%およびZr=0.200モル%(Co含有量に対して表される)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex6a)をふるいがけし、特徴決定する。Ex6aの平均粒径は16μmであることが見出され、そして図4に示されるものと同様にバイモーダル分布が得られる。
【0112】
実施例6aは、第1のステップで、LCO−6をミクロンサイズNb粉末と混合することによって調製される。第2のステップにおいて、89.046重量%のLCO−6/Nbおよび10.954重量%のCo(平均粒径3μm)を混合する。Co、LiCO、Al、TiOおよびMgO粉末は、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%およびNb=0.200モル%(Co含有量に対して表される)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex6b)をふるいがけし、特徴決定する。Ex6bの平均粒径は16μmであることが見出され、そして図4に示されるものと同様にバイモーダル分布が得られる。
【0113】
実施例6cは、第1のステップで、89.046重量%のLCO−6および10.954重量%Co(平均粒径3μm)を硝酸ネオジム六水和物と湿式混合することによって調製される。12.146gの硝酸ネオジム六水和物を100mLの脱イオン水に溶解し、そして2kgのLCO−6およびCo混合物に添加する。混合物をボトルに入れ、ボトルを回転させることによって一晩中均質化する。次いで、混合物を120℃で乾燥させ、SEM像は、図17bに示されるように、ネオジムをベースとする粒子がLCO−6およびCo粒子の表面に接着することを示す。第2のステップで、LiCO、Al、TiOおよびMgO粉末は、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%およびNb=0.115モル%(Co含有量に対して表される)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex6c)をふるいがけし、特徴決定する。Ex6cの平均粒径は16μmであることが見出され、そして図4に示されるものと同様にバイモーダル分布が得られる。
【0114】
実施例6dは、第1のステップで、89.046重量%のLCO−6および10.954重量%Co(平均粒径3μm)を硝酸エルビウム五水和物と湿式混合することによって調製される。10.603gの硝酸エルビウム五水和物を100mLの脱イオン水に溶解し、そして2kgのLCO−6およびCo混合物に添加する。混合物をボトルに入れ、ボトルを回転させることによって一晩中均質化する。次いで、混合物を120℃で乾燥させ、SEM像は、図17cに示されるように、エルビウムをベースとする粒子がLCO−6およびCo粒子の表面に接着することを示す。第2のステップで、LiCO、Al、TiOおよびMgO粉末は、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%およびEr=0.114モル%(Co含有量に対して表される)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex6d)をふるいがけし、特徴決定する。Ex6dの平均粒径は16μmであることが見出され、そして図4に示されるものと同様にバイモーダル分布が得られる。
【0115】
表9および10は、4.5および4.6VにおけるLCO−6およびEx6a〜6dの電気化学的特性を示す。表11は、LCO−6およびEx6a〜6dの物理的特性を示す。高いLi過剰を含有するLCO−6試料は、低容量および高低下レートで、4.5Vにおいて低い電気化学的性能を有する。LCO−6も、多量のCおよび塩基不純物を含有する。Li:(Co+Al)=1.000を有するEx6a〜6dは、非常に低い伝導率、ならびに非常に低いCおよび塩基不純物含有量を有する。したがって、これらの試料は、表面がMg、Ti、Zr、Nb、NdおよびErなどの元素で濃縮されるため、LCO−6より4〜5桁低い非常に低い電気伝導度を有する。4.5および4.6Vにおける電気化学的性能は、LCO−6と比較して、Li:(Co+Al)=1.000のため、非常に高い容量、かつ遮断表面層のため、改善された安定性で特別である。最後に、Ex6a〜6dはバイモーダル分布を特徴とするため、圧縮密度は、LCO−6と比較して、少なくとも+0.5g/cm改善される。
【0116】
表11に種々の材料の表面塩基および炭素含有量が示すように、LCO−6と比較して、塩基および炭素含有量は、Ex6a〜dに関して、第2の燃焼の後、強く低下する。この結果は、図17aのSEMで確認することができるように、LCO−6の表面は、LiOHおよびLiCOなどの未反応の過剰なLi塩のダストで部分的に覆われ、そしてEx6a〜dの表面がそのような不純物をほとんど含まないということを支持する。
【0117】
【表10】
【0118】
【表11】
【0119】
【表12】
【0120】
実施例7:
この実施例は、MgおよびTIを含まないLi1.00CoOは、Ex1〜6と比較して、非常に高い放電容量および良好なレート性能を有するが、遮断保護層が形成されず、より高い電子伝導率および低い高圧サイクル安定性を有することを実証する。
【0121】
LCO−7の調製:到達水準のLiCoO(LCO−7と示される)は、大量生産スケールで、Coの粉末を、LiCOと乾燥混合することによって、標準高温固体状態合成によって得られる。ブレンドで使用される典型的なLi:Coモル比は1.07である。LCO−7の平均粒径は19μmである。ICPで測定される燃焼後のLCO−7の最終的なLi:Coモル比は1.040であり、そして実施例7a、7b、7cおよび7dに関してLi:Co=1.010、1.000、0.990および0.980比を設定するために使用される。
【0122】
実施例7a、7b、7cおよび7dは、それで、それぞれ、1.010、1.000、0.990と0.980にLi:Co比を調節するように、以下の重量%比でLCO−7をCo粉末と混合することによって調製される:(97.60、2.40)(96.82、3.18)(96.06、3.94)および(95.31、4.69)。均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex7a〜7d)をふるいがけし、特徴決定する。
【0123】
4.5VにおけるLCO−7および4.6VにおけるEx7a〜7dの電気化学的性能ならびに電子伝導率値を表12に示す。
【0124】
【表13】
【0125】
放電容量DQ1はLi:Co=1.00で局所的最大を有し、その間Cレートおよび4.6V安定性は、Li:Coが減少する時に連続的に改善する。実施例5とは対照的に、遮断表面層が粒子の表面で形成されないため、Li:Coが減少する時に伝導率は有意に減少しない。電解質との不必要な副反応に対する遮蔽を通常提供する遮断表面層の不在は、4.6Vの安定性がなぜこの遮断保護層を特徴とする他の実施例と同様に良好ではないのかについて説明する。Li:Co<1.00の場合、CoO(xは約4/3)のトレースが粒子の表面で形成され、そして外的な反応に対して効率的な遮蔽の提供を始動すると、安定性は改善する。しかしながら、DQ1は減少し、そしてサイクル1で充電と放電との間の平均電圧間で差異として定義される分極化は劇的に増加する。
【0126】
実施例8:
本実施例は、マグネシウム含有量が増加した時、表面層の遮断性が増加することを実証する。Li1.00CoOコアの表面層の遮断性を増加させることによって、材料の安全性を改善することができる。
【0127】
実施例8a、8b、8cおよび8dの調製:実施例8a、8b、8cおよび8dは、Alが添加されないこと、およびMg含有量を、それぞれ、0.22、0.48、0.75および1.00モル%まで調節するために十分なMgOが添加されたことを除き、Ex3と同様の方法で調製された。
【0128】
実施例8a、8b、8cおよび8dの電気伝導度を表13に示す。Mg含有量が増加する時、電気伝導度は連続的に減少し、このことは、MgおよびTI含有表面層の遮断性が増加することを意味する。著者は、MgOをベースとする表面層の厚さは、Mgが増加させる時を増加する時に増加し、このことによって改善された遮断挙動がもたらされると考える。本明細書に示されるようにマグネシウムの影響は、Zr、Er、Nd、Nbなどの表面層に存在するさらなる元素から独立し、実験は、NおよびN’ドーピング生成物に対するMg含有量増加の影響も例示する。
【0129】
【表14】
【0130】
安全性におけるこの遮断性の影響は、4.5Vで充電された電極上で実行されるDSC実験によって評価された。充電後、コインセルをグローブボックスで分解し、DMCを使用して陰極を洗浄する。洗浄および乾燥後、電極を電解質で浸漬し、DSC測定のために密封容器に配置する。本実験をEx7b、8bおよび8dで実行し、データは図18(温度に対する熱フロー(W/g)を示す)に示される。Ex7bは最高ピークを示し、その次はEx8bであり、最も低いピークはEx8dである。
【0131】
Ex7bは、いずれの遮断保護表面層も特徴とせず、DCS実験では鋭い発熱性寄与によって特徴づけられる。これは、充電された材料と電解質とのより急速で激しい外的な反応の結果である。Mg含有量が8bから8dまで増加する時、発熱性寄与は拡大し、より高いTへシフトして、電解質分解の強度は、粒子の表面における遮断保護層によって遅くなることを意味する。
【0132】
実施例9:
実施例9の調製:89.046重量%のLCO−6および10.954重量%のCo(平均粒径3μm)を混合することによって調製される。Co、LiCO
Al、TiOおよびMgO粉末に、以下の最終モル比を調節するために添加される:Li:(Co+Al)=1.000、ならびにAl=0.180モル%、Ti=0.283モル%、Mg=0.348モル%(Co含有量に対して表される)。大量生産装置を使用して、均一な混合物をアルミナるつぼに配置し、一定空気流下で12時間980℃で加熱する。冷却後、得られた粉末(Ex9)をふるいがけし、特徴決定する。Ex9の平均粒径は16μmであることが見出され、バイモーダル分布が得られる。
【0133】
Ex9は、1.01E−05S/cmの電子伝導率、3.88g/cmの圧縮密度、4.5Vで194.1mAh/gのDQ7および3.1%の1C容量低下レートを有する。Ex9は、非水電解質として1/2の体積比でEC(炭酸エチレン)およびDEC(炭酸ジエチル)の混合溶媒中、グラファイト陽極および1.0mol/Lの濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)塩を使用する800mAhポリマー型フルセルに適合される。その後、セルは、室温(図19a、サイクル数に対してmAh/gで容量を示す)および45℃(図19b)で、4.35および3.0Vの間で、1C充電および1C放電レートで500回サイクルされる。50回のサイクルごとに、セル分極化増加を評価するために0.2Cの低速サイクルを実行する。Ex9(図中の上の線)を、到達水準のLiCoOの対照(下の線)と比較する。Ex9は、500回のサイクルの後、改善された初期の容量、1Cおよび0.2Cサイクルの間の分極化の増加が少ないこと、ならびにより良好な容量保持を特徴とする。これらの差異は、粒子のコアのLi(Ca+Al)比の差異からもたらされ、Ex9の場合、リチウムの化学量論的な欠陥のないコアが、より良好な放電容量およびより高いレート性能を提供する。Ex9と参照の間の差異は、粒子の表面におけるより少ない電解質酸化によって、45℃では増幅されない。Ex9の粒子の表面の遮断層は、改善された容量保持をもたらす電解質酸化に対する効率的な保護を提供する。
【0134】
本発明に記載されるLi化学量論的なコアおよび保護遮断層の組み合わせは、携帯型電子機器などの商業的な大量生産用途に非常に望みがあると結論づけることができる。
図1
図2
図3
図4
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図8
図9a)】
図9b)】
図10a)】
図10b)】
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図17a
図17b
図17c
図18
図19