(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242488
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】接線構造、永久磁石可変速電気モーター及び遠心冷凍圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/00 20060101AFI20171127BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20171127BHJP
H02K 11/25 20160101ALI20171127BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20171127BHJP
C22C 38/40 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
H02K5/00 Z
F16J15/10 C
F16J15/10 D
F16J15/10 T
F16J15/10 B
F16J15/10 U
H02K11/25
!C22C38/00 302Z
!C22C38/40
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-530331(P2016-530331)
(86)(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公表番号】特表2016-535573(P2016-535573A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】CN2014082804
(87)【国際公開番号】WO2015014231
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2016年3月16日
(31)【優先権主張番号】201310329687.9
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512306405
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンシーズ インク オブ ズーハイ
【氏名又は名称原語表記】GREE ELECTRIC APPLIANCES, INC. OF ZHUHAI
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヂャオ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ヤビン
(72)【発明者】
【氏名】リ,グォヤオ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,フゥアィツァン
【審査官】
津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−129661(JP,A)
【文献】
実開昭55−171976(JP,U)
【文献】
特開2010−268622(JP,A)
【文献】
特開平05−172251(JP,A)
【文献】
実開平05−039164(JP,U)
【文献】
特開2008−182834(JP,A)
【文献】
実開昭63−007963(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00− 5/26
F16J15/00−15/14
H02K11/25
H01R 9/22− 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線板と、電源端子と、を含む接線構造であって、
更にシールリングを含み、
前記配線板の材料が鋼材であり、前記鋼材の透磁率μが1.31×10−6Η/m以下であって、
前記配線板が平板であり、上下表面を備え、前記配線板に配線孔が設置され、
前記シールリングが前記電源端子に装着され、
前記電源端子が前記配線孔を介して前記配線板に固定され、
前記シールリングが前記配線板に緊密に貼り合わせられ、
前記配線孔の内壁に二段の傾斜面が形成され、第一傾斜面と第二傾斜面にそれぞれ区分され、
前記第一傾斜面は前記配線板の上表面に近接し、
前記シールリングが前記第一傾斜面上に緊密に貼り合わせられ、
前記第一傾斜面の傾斜度の範囲が77°〜79°であり、
前記第二傾斜面の傾斜度の範囲が44°〜46°であり、
前記電源端子に凸台が設置され、前記凸台の下表面上に環状凹溝が設置され、
前記環状凹溝の断面形状と直径が前記シールリングの断面形状と直径に合致し、
前記シールリングが前記環状凹溝内に設置される、
ことを特徴とする接線構造。
【請求項2】
前記第一傾斜面の傾斜度が78°である、
ことを特徴とする請求項1に記載の接線構造。
【請求項3】
前記接線構造がセンサー端子及びガスケットを更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の接線構造。
【請求項4】
前記配線板上にセンサー配線孔が含まれ、
前記センサー端子が前記センサー配線孔を介して前記配線板に固定され、
前記ガスケットが環形であり、その一端の直径が他端の直径より小さく、前記ガスケットの直径が小さい方の一端が前記センサー配線孔中に取り付けられ、
二個の前記ガスケットが前記センサー端子上に装着され、
前記配線板の上、下表面にそれぞれ緊密に貼り合わせられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の接線構造。
【請求項5】
前記配線板、前記ガスケット及び前記センサー端子の間に空隙が形成される、
ことを特徴とする請求項4に記載の接線構造。
【請求項6】
前記鋼材がオーステナイト系ステンレス鋼である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接線構造。
【請求項7】
前記環状凹溝の断面形状は半円形であり、前記シールリングの断面形状は円形である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の接線構造。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の接線構造を含む、
ことを特徴とする永久磁石可変速電気モーター。
【請求項9】
請求項8に記載の永久磁石可変速電気モーターを含む、
ことを特徴とする遠心冷凍圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は2013年7月31日に出願された出願番号201310329687.9、出願名「接線構造、永久磁石可変速電気モーター及び遠心冷凍圧縮機」の中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、ここにおいて参考として、その全文が引用される。
【0002】
本発明は電気モーターに関わるものであり、特に電気モーターに用いられ、良好な放熱性を有し、密封可能な接線構造及び該接線構造に応用される永久磁石可変速電気モーターと遠心冷凍圧縮機に関わるものである。
【背景技術】
【0003】
従来の技術において、永久磁石可変速電気モーターについては、渦電流の影響を受けるために、一般に鋼により製造される電気モーター配線部品は発熱し易く、電磁誘導の法則によれば、誘導起電力E=dΨ/dtであることから、周波数が大きくなればなるほど、dtは小さくなり、誘導起電力Eが大きくなればなるほど、誘導電流は増加し、発熱も大きくなり、更には温度が極めて高温となり、信頼性の低下、ひいては潜在的な安全性の問題を引き起こすものであった。特に永久磁石可変速電気モーターが応用される遠心冷凍圧縮機では、配線板の発熱が深刻であれば、密封不良を引き起こし、電気モーターを冷却するための冷媒を漏出されてしまうおそれがあった。
【0004】
一方、電気工学系絶縁材料で製造される電気モーター配線部品は、体積が大きいのみならず、生産が困難であって、更には信頼性も低いものであった。上述の欠点に鑑み、本発明の発明者は長期にわたる研究と実践の結果、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は発熱反応を低減する接線構造、永久磁石可変速電気モーター及び遠心冷凍圧縮機を提供する。本発明は、具体的には、配線板と、電源端子と、シールリングと、を有し、
前記配線板の材料が鋼材であり、前記鋼材の透磁率μが1.31×10
−6Η/m以下であって、
前記配線板が平板であり、上下表面を備え、前記配線板に配線孔が設置され、
前記シールリングが前記電源端子に装着され、前記電源端子が前記配線孔を介して前記配線板に固定され、前記シールリングが前記配線板に緊密に貼り合わせられる接線構造を提供する。
【0006】
実施形態の一つでは、前記配線孔が変形断面の貫通孔である。
【0007】
実施形態の一つでは、前記配線孔の内壁に二段の傾斜面が形成され、第一傾斜面と第二傾斜面にそれぞれ区分され、前記第一傾斜面は前記配線板の上表面に近接し、前記シールリングが前記第一傾斜面上に緊密に貼り合わせられ、
前記第一傾斜面と前記上表面、前記第二傾斜面と前記上表面の傾斜角度がいずれも90°未満である。
【0008】
実施形態の一つでは、前記第一傾斜面の傾斜度が前記第二傾斜面の傾斜度より大きい。実施形態の一つでは、前記第一傾斜面の傾斜度の範囲が77°〜79°であり、前記第二傾斜面(の傾斜度)の範囲が44°〜46°である。
【0009】
実施形態の一つでは、前記第一傾斜面の傾斜度が78°である。
【0010】
実施形態の一つでは、前記電源端子上に凸台が設置され、前記凸台の下表面上に環状凹溝が設置され、
前記環状凹溝の断面形状と直径が前記シールリングの断面形状と直径に合致し、
前記シールリングが前記環状凹溝内に設置される。
【0011】
実施形態の一つでは、前記接線構造センサー端子及びガスケットを更に含む。
【0012】
実施形態の一つでは、前記配線板上にセンサー配線孔が含まれ、
前記センサー端子が前記センサー配線孔を介して前記配線板に固定され、
前記ガスケットが環形であって、その一端の直径が他端の直径より小さく、前記ガスケットの直径が小さい方の一端が前記センサー配線孔中に取り付けられ、二個の前記ガスケットが、前記センサー端子上に装着され、前記配線板の上、下表面にそれぞれ緊密に貼り合わせられる。
【0013】
実施形態の一つでは、前記配線板、前記ガスケット及び前記センサー端子の間に空隙が形成される。
【0014】
実施形態の一つでは、前記鋼材がオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0015】
永久磁石可変速電気モーターは、前記接線構造を含む。
【0016】
遠心冷凍圧縮機は、前記永久磁石可変速電気モーターを含む。
【発明の効果】
【0017】
従来の技術に比べ、本発明は以下の有益な効果を有する。本発明の接線構造、永久磁石可変速電気モーター及び遠心冷凍圧縮機は、渦電流によって発熱した後に接線構造の温度が過度に高温になるという課題を有効に解決する。密封性が良好で、マルチレベルの設計により密封性を多重に保証する。小体積で、加工し易く、信頼性と安全性が極めて高い。システムの集積度が高く、組立手順を削減し、生産効率の向上を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1は接線構造の正面図である。
図2は接線構造のシール溝の断面図である。
図3は接線構造の俯瞰図である。
図4は接線構造の温度測定端子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
温度が過度に高温となるという問題を解決するため、熱反応を低減する接線構造、永久磁石可変速電気モーター及び遠心冷凍圧縮機を開示する。
【0020】
以下、図を参照し、本発明の上述の、及びそれ以外の技術的特徴と優位性について、更に詳細に説明する。
【0021】
図1を参照するに、
図1は接線構造の正面図であり、前記接線構造は配線板1、電源端子2及びシールリング3を含む。
【0022】
前記配線板1は平板であり、前記配線板1の材料には鋼材が採用され、渦電流作用による配線板の発熱を防止するため、前記鋼材の透磁率μは1.31×10
−6Η/m以下である(磁気誘導強度Β=μΗ)。前記鋼材は、好ましくは非磁性鋼であって、非磁性鋼とは強磁性を有さず、磁化されることのない安定したオーステナイト鋼のことを言い、非磁性鋼の金属組織が電磁気特性を決定することから、これら材料を使用して製造された前記配線板1の組織は安定的であり、透磁率は低く、磁場中の渦電流損は極めて小さく、良好な絶縁性、概ね良好な電導性、優良な力学的性質を有する。
【0023】
一般に、オーステナイト系ステンレス鋼は全て非磁性鋼として利用することができ、オーステナイト系ステンレス鋼は常温下においてオーステナイト組織を有するステンレスであり、その中に含まれるCrは約17%〜19%、Mは約7%〜15%である。前記配線板1の鋼材中には少量のフェライトとマルテンサイトが含まれていても良いが、透磁率μが1.31×10
−6Η/m以下であることを満たすものでなければならない。
【0024】
前記配線板1において渦電流が発生する時には、高すぎるエネルギーを蓄積することがなく、発熱が効果的に防がれ、また複数の前記電源端子2間の距離を厳密に制御する必要がないことから、前記接線構造全体の体積を有効に制御できる。更に金属材料の信頼性は極めて高く、使用中に損壊し難い。
【0025】
前記電源端子2の密封面上に環状凹溝が設置され、前記環状凹溝の直径は前記シールリング3の直径と同一であり、前記シールリング3の仮置きを行うために用いられる。前記シールリング3は前記電源端子2上に装着され、前記電源端子2の環状凹溝内に仮置きされ、前記電源端子2
が固定される前に前記シールリング3の位置のズレが生じることを防止する。実施例では前記電源端子2上に環形凸台が設置され、前記環形凸台の下表面は前記電源端子2の密封面である。
【0026】
本実施例では、前記シールリング3の断面が円形であり、前記環状凹溝の断面が半円形であって、その深さと前記シールリング3断面の円形の半径
は同一であるか、又は、前記シールリング3断面の円形の半径
よりも小さい。前記シールリング3の断面は更に長方形又はその他の形状とすることができ、この場合は、前記環状凹溝の断面形状と合致し、前記シールリング3
が脱落しないように挟めることを保証する。更に前記環状凹溝内に粘着力のやや弱い接着剤を少量塗布し、前記シールリング3を予め固定することもできる。
【0027】
前記電源端子2は前記配線板1の配線孔を通過し、前記電源端子2の密封面を前記シールリング3に押し付け、前記シールリング3を圧着して前記配線板1上に緊密に貼り合わせ、前記電源端子2を端子用ナットを用いて前記配線板1上に固定する。
【0028】
前記シールリング3は弾性材料で製造された閉じた環状リングであり、前記シールリング3はゴム材質であって、好ましくは水素化ニトリルブタジエンゴムである。
【0029】
図2を参照するに、
図2は接線構造のシール溝の断面図であり、前記配線板1の三相電源主端子U、V、Wが前記配線孔において密閉して装着するための構造を示す。
【0030】
前記配線孔は変形断面の傾斜孔であり、配線孔は、前記配線板1上表面の直径が大きい方の座ぐり孔に近接し、前記電源端子2の前記端子用ナットの一部を収容するために用いられ、前記端子用ナットの位置決め作用を有し、前記座ぐり孔の高さは必要に応じて設計することができる。前記座ぐり孔は第一の傾斜面に隣接し、前記第一傾斜面と前記座ぐり孔との連接部にR1の面取り部を使用し、前記シールリング3が装着される時に傷が付くことを防止する。前記第一傾斜面は第二傾斜面に隣接し、前記第一傾斜面と前記第二傾斜面の間はスムーズに接続される。
【0031】
前記第一傾斜面の高さと前記シールリング3の高さはほぼ等しく、前記シールリング3が圧入される時は主に前記第一傾斜面に当接する。
【0032】
前記第一傾斜面の傾斜度範囲が77°〜79°であり、前記第二傾斜面の傾斜度範囲は44°〜46°である。前記第一傾斜面の角度は、好ましくは78°であり、この時、前記シールリング3の変形量が最適となる。角度が79°より大きくなると、変形量は過大となり、角度が77°より小さくなると、変形量が過少となって、いずれの場合も最高の密封効果が得られない。前記第二傾斜面の角度は、好ましくは45°であり、緊密に固定するプロセスでは、前記電源端子2の密封面を押し付けつつ、前記シールリング3を前記傾斜度孔内の下方に向かって押し込み、前記端子用ナットと前記座ぐり孔の底面とが緊密に貼り合わせられるに伴い、前記シールリング3は前記傾斜度孔内にわずかに押し出されて変形し、前記電源端子2と前記配線板1との間に緊密な密封状態が形成される。この方法は、密封効果が良好であり、更に前記配線板1上表面への環形のシールリング収容溝の設置を必要としないことから、工程の難度を下げ、加工効率を向上させる。
【0033】
図3を参照するに、
図3は接線構造の俯瞰図であり、本実施例では前記配線板1は長方形であるが、更にその他の形状でも設計することができ、好ましくは必要な端子とその他(付属品)が配置されるレイアウトとする。
【0034】
前記配線板1上にはセンサーの接線構造を設置することができ、本実施例では前記配線板1にPT100とPTC等の電気モーターベアリングと巻線温度の温度を測定するための配線端子が設置され、温度測定配線端子の動作電流は2mA未満であり、ガラスフリット方式によって密封配線板と連接され、固定及び密封作用を発揮する。
【0035】
図4を参照するに、
図4は接線構造の温度測定端子の断面図であり、前記温度測定端子にはセンサー端子4とガスケット5が含まれ、前記配線板1上には更にセンサー配線孔が含まれ、前記センサー配線孔は通常の貫通孔である。
【0036】
前記ガスケット5は環形であり、その一端の直径が他端の直径より小さく、前記ガスケット5の直径の小さい方の一端が前記センサー配線孔中に取り付けられ、好ましくは、良好な密封効果が得られるよう、両者を締まりばめする。
【0037】
二個の前記ガスケット5は前記センサー端子4上に装着され、前記センサー端子4は前記センサー配線孔を介して前記配線板1上に固定的に取り付けられ、二個の前記ガスケット5は前記配線板1の上、下表面にそれぞれ緊密に貼り合わせられる。
【0038】
前記ガスケット5の熱膨張冷収縮時及びナット締め時に前記ガスケット5が応力を受けて生じた変形に対応する変形用の空間を提供するため、前記センサー端子4、前記配線板1と前記ガスケット5の間に空隙を残すことによって、前記配線板1の密封性を保証する。なお前記ガスケット5は、好ましくは絶縁されたポリテトラフルオロエチレン材料である。
【0039】
本実施例では、温度測定のための前記センサー端子4は電導性ポストであり、前記配線板1上に電源端子とセンサー端子が同時に設置され、従来の技術において慣用的に単独で設置されていたセンサージャンクションボックスを省くことによって、前記接線構造の永久磁石可変速電気モーター及び遠心冷凍圧縮機をより簡素に見栄え良くし、システムの集積度を高めるのみならず、更には生産における組立工程の簡素化を実現する。
【0040】
以上の実施例は本発明の幾つかの実施形態を示したものに過ぎず、説明は具体的かつ詳細であるが、これによって本発明の特許範囲が限定されるものではない。本分野の通常の技術者ならば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、若干の変形及び改善を加えることも可能であるが、これらは全て本発明の保護の範囲内であることは言うまでもない。