(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通常磁場の前記ピークの強度は、前記電子サイクロトロン共鳴条件を満たす磁場の1.3倍から1.6倍の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ波イオン源。
前記制御部は、前記プラズマ室にマイクロ波が供給される前に前記初期磁場の印加を開始するように、前記磁場発生器を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロ波イオン源。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明のある実施形態に係るマイクロ波イオン源10の構成を模式的に示す図である。マイクロ波イオン源10は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)条件を満たす磁場またはそれよりも高い磁場を印加したプラズマ室12内へ、磁力線方向にマイクロ波電力を入力して高密度プラズマを生成しイオンを引き出すイオン源である。マイクロ波イオン源10は、磁場とマイクロ波との相互作用によって原料ガスのプラズマを生成し、そのプラズマからプラズマ室12の外部へイオンを引き出すように構成されている。
【0015】
よく知られるように、ECR条件を満たす磁場の強さは使用されるマイクロ波の周波数に対し一意に定まり、マイクロ波周波数が2.45GHzの場合には87.5mT(875ガウス)の磁場が必要である。以下では便宜上、ECR条件を満たす磁場を、共鳴磁場と呼ぶことがある。
【0016】
マイクロ波イオン源10は、例えばイオン注入装置のためのイオン源に使用される。注入するイオンには例えば酸素がある。また、マイクロ波イオン源10は、プロトン加速器のためのイオン源、またはX線源としても使用され得る。マイクロ波イオン源10は主として、一価イオン源として使用される。
【0017】
マイクロ波イオン源10は、イオン源本体14を備える。イオン源本体14は、プラズマ室12、磁場発生器16、及び真空容器18を備える。
【0018】
プラズマ室12は、両端をもつ筒状の形状を有する。プラズマ室12の一端から他端に向かう方向を以下では便宜上、軸方向と呼ぶことがある。また、軸方向に直交する方向を径方向と呼び、軸方向を包囲する方向を周方向と呼ぶことがある。しかしこれらは、プラズマ室12が回転対称性を有する形状であることを必ずしも意味するものではない。図示の例ではプラズマ室12は円筒形状を有するが、プラズマ室12は、プラズマを適切に収容し得る限り、いかなる形状であってもよい。また、プラズマ室12の軸方向長さは、プラズマ室12の端部の径方向長さより長くてもよいし短くてもよい。
【0019】
磁場発生器16は、プラズマ室12に磁場を印加するために設けられている。磁場発生器16は、プラズマ室12の中心軸に沿う磁場を発生させるよう構成されている。その磁力線方向を
図1に矢印Mで示す。磁場発生器16は、プラズマ室12の軸線上の少なくとも一部分に共鳴磁場またはそれよりも高強度の磁場を発生させるよう構成されている。磁場発生器16は、プラズマ室12の軸線上の少なくとも一部分に共鳴磁場よりも低い磁場を発生させることも可能である。
【0020】
真空容器18は、プラズマ室12を真空環境に収容するための筐体である。真空容器18は、磁場発生器16を保持するための構造体でもある。プラズマ室12は、内部にマイクロ波を受け入れるための真空窓24を有する。プラズマ室12、磁場発生器16、及び真空容器18については、更に詳しく後述する。
【0021】
マイクロ波イオン源10は、マイクロ波供給系26を備える。マイクロ波供給系26は、真空窓24を通じてプラズマ室12にマイクロ波電力を入力するよう構成されている。マイクロ波供給系26は、マイクロ波源28、導波管30、及びマッチングセクション32を備える。マイクロ波源28は例えばマグネトロンである。マイクロ波源28は例えば2.45GHzの周波数のマイクロ波を出力する。導波管30は、マイクロ波源28の出力するマイクロ波をプラズマ室12に伝達するための立体回路である。導波管30の一端はマイクロ波源28に接続されており、他端はマッチングセクション32を介して真空窓24に接続されている。マッチングセクション32はマイクロ波の整合のために設けられている。
【0022】
このようにして、マイクロ波供給系26から真空窓24を通じてプラズマ室12にマイクロ波が導入される。導入されたマイクロ波は、真空窓24に対向するプラズマ室12の端部へ向けてプラズマ室12の内部を伝搬する。マイクロ波の伝搬方向を
図1に矢印Pで示す。マイクロ波の伝搬方向Pは、磁場発生器16による磁力線方向Mと同一方向である。よって、マイクロ波の伝搬方向Pはプラズマ室12の軸方向と同一方向である。
【0023】
また、マイクロ波供給系26は、導波管30に設けられているマイクロ波検出器33を備える。マイクロ波検出器33は、例えば、プラズマ室12への入射電力及びプラズマ室12からの反射電力をモニタするための方向性結合器を備える。マイクロ波検出器33は、測定結果を制御装置Cに出力するよう構成されている。
【0024】
マイクロ波イオン源10は、ガス供給系34を備える。ガス供給系34は、プラズマの原料ガスをプラズマ室12に供給するよう構成されている。ガス供給系34は、ガス源であるガスボンベ36とガス流量制御器38とを備える。原料ガスは例えばアルゴンガスである。原料ガスはイオン注入のための不純物を含有する成分を含んでもよい。ガス供給系34のガス配管40の先端が真空容器18を通じてプラズマ室12に接続されている。ガス配管40は例えば、プラズマ室12の側壁64に接続されている。ガス流量制御器38は、ガスボンベ36をプラズマ室12に接続し又は遮断するための開閉弁、またはガスボンベ36からプラズマ室12へのガス流量を調整するための流量制御弁を備える。こうして、原料ガスが、ガスボンベ36からプラズマ室12へと制御された流量で供給される。
【0025】
イオン源本体14は、引出電極系42を備える。引出電極系42は、プラズマ室12のイオン引出開口66を通じてプラズマからイオンを引き出すよう構成されている。引出電極系42は、第1電極44と第2電極46を含む。第1電極44はプラズマ室12と第2電極46との間に設けられている。イオン引出開口66を有する終端部62と第1電極44とは隙間を隔てて配列され、第1電極44と第2電極46とは隙間を隔てて配列されている。第1電極44及び第2電極46は、それぞれ例えば環状に形成されており、プラズマ室12から引き出されたイオンを通すための開口部分を中心部に有する。
【0026】
第1電極44は、プラズマから陽イオンを引き出すとともに、ビームライン52からプラズマ室12への電子の戻りを妨げるために設けられている。そのために、第1電極44には負の高電圧が印加されている。第1電極44に負の高電圧を印加するために、第1引出電源48が設けられている。第2電極46は接地されている。また、真空容器18には正の高電圧が印加されている。真空容器18に正の高電圧を印加するために、第2引出電源50が設けられている。真空容器18に印加される正の高電圧の絶対値は、第1電極44に印加される負の高電圧の絶対値よりも大きい。このようにして、プラズマ室12から陽イオンのイオンビーム20が引き出される。プラズマ室12からのイオンビーム20の引出方向はマイクロ波の伝搬方向Pと同一方向である。
【0027】
マイクロ波イオン源10には、引出電極系42によって引き出されたイオンビーム20を輸送するためのビームライン52が設けられている。ビームライン52は、マイクロ波供給系26とは反対側にイオン源本体14に連結されている。ビームライン52は、真空容器18に連通されている真空容器である。ビームライン52は、イオン源本体14の真空容器18に対し絶縁されて真空容器18に取り付けられている。そのために、ビームライン52と真空容器18の間にブッシング54が設けられている。
【0028】
ブッシング54は、ビームライン52及び真空容器18内の真空を維持しつつ、真空容器18とグラウンド側との間の耐電圧を保持する。ブッシング54は絶縁材料で形成されている。ブッシング54は環状の形状を有し、引出電極系42を囲んでいる。ブッシング54は、ビームライン52及びイオン源本体14それぞれの真空容器の取付フランジ間に挟まれて取り付けられている。
【0029】
真空容器18及びプラズマ室12に真空環境を提供するための真空排気系56が設けられている。図示の例においては真空排気系56はビームライン52に設けられている。ビームライン52は真空容器18及びプラズマ室12に連通されているので、真空排気系56は真空容器18及びプラズマ室12の真空排気をすることができる。真空排気系56は例えばクライオポンプまたはターボ分子ポンプ等の高真空ポンプを含む。
【0030】
マイクロ波イオン源10は、イオンビーム20の出力を制御するための制御装置Cを備えてもよい。制御装置Cは、マイクロ波イオン源10の各構成要素を制御し、プラズマ室12に生成されるプラズマを制御し、それによりイオンビーム20の出力を制御する。制御装置Cは、例えば、マイクロ波供給系26、ガス供給系34、コイル電源76の動作を制御するよう構成されている。制御装置Cは例えば、原料ガスの流量、マイクロ波パワー、及び磁場強度の少なくとも1つを調整することにより、イオンビーム20の出力を制御してもよい。
【0031】
プラズマ室12は、その内部空間にプラズマを生成し維持するよう構成されている。プラズマ室12の内部空間を以下では、プラズマ収容空間58と呼ぶことがある。
【0032】
プラズマ室12は、始端部60、終端部62、及び側壁64を含む。始端部60と終端部62とはプラズマ収容空間58を挟んで対向している。側壁64はプラズマ収容空間58を囲み、始端部60と終端部62とを接続している。このようにして、始端部60、終端部62、及び側壁64によってプラズマ収容空間58が真空容器18の内部に画定されている。プラズマ室12が円筒形状である場合、始端部60及び終端部62は円板形状であり、側壁64は円筒であり、始端部60及び終端部62の外周部に側壁64の末端が固定されている。
【0033】
始端部60は真空窓24を有する。真空窓24は始端部60の全体を占めていてもよいし、始端部60の一部(例えば中心部)に形成されていてもよい。真空窓24の一方の側がプラズマ収容空間58に面しており、真空窓24の他方の側がマイクロ波供給系26に向けられている。真空窓24はプラズマ室12の内部を真空に封じる。マイクロ波の伝搬方向Pは真空窓24に垂直である。真空窓24は誘電体損の低い誘電体(例えばアルミナまたは窒化ホウ素等)で形成されている。なおプラズマ室12の真空窓24以外の部分は例えば非磁性金属材料で形成されている。
【0034】
終端部62には少なくとも1つのイオン引出開口66が形成されている。イオン引出開口66は、プラズマ収容空間58を挟んで真空窓24に対向する位置に形成されている。すなわち、真空窓24、プラズマ収容空間58、及びイオン引出開口66は、プラズマ室12の軸方向に沿って配列されている。
【0035】
真空容器18は、プラズマ室12が一体に形成された二重の筒構造を有する。すなわち、プラズマ室12が真空容器18の内筒であり、その外側にプラズマ室12を収容する外筒68が設けられている。外筒68はプラズマ室12と同軸の円筒形状であってもよい。外筒68とプラズマ室12の側壁64との間には隙間があり、この隙間に上述のガス供給系34のガス配管40の先端部が進入し側壁64に取り付けられている。真空容器18は例えば非磁性金属材料で形成されている。
【0036】
真空容器18は、プラズマ室12と一体に形成されていなくてもよい。真空容器18とプラズマ室12とがそれぞれ別体であり分割可能であってもよい。また、真空容器18自体がプラズマ室12を成していてもよい。このように真空容器18がプラズマ室12を兼用する場合には、外筒68のビームライン52側にイオン引出開口66を有する端板を取り付ければよい。
【0037】
真空容器18の一端は端板70により閉塞され、他端はビームライン52に向けて開放されている。端板70の中心部にプラズマ室12の始端部60が形成されている。端板70の外周部は径方向に外筒68の外側まで延びている。ビームライン52側の真空容器18の端部には、ブッシング54のための取付フランジ72が設けられている。取付フランジ72は外筒68から径方向に外側に延びている。真空容器18とプラズマ室12とは軸方向長さが等しく、取付フランジ72とプラズマ室12の終端部62とは軸方向位置が一致している。真空容器18とプラズマ室12とは軸方向長さが異なっていてもよい。
【0038】
真空容器18には、磁場発生器16を保持するための磁石保持部74が形成されている。磁石保持部74は例えば、真空容器18の外筒68の外表面に形成されている。本実施例においては磁場発生器16は真空容器18の外側に(即ち大気中に)設けられている。磁場発生器16は真空容器18を取り囲むように配置されている。しかし、別の例では、真空容器18は、磁場発生器16を真空容器18の内部に(即ち真空中に)保持するための磁石保持部74を備えてもよい。この場合にも本例と同様の効果を得ることができる。このようにして、磁場発生器16は、プラズマ収容空間58を包囲するように配置されている。
【0039】
磁場発生器16は、プラズマ室12の軸方向を向く磁場を発生させるよう構成されたコイルを備える。本例においてはプラズマ室12及び真空容器18は円筒形状であり、コイルは環状に形成され、プラズマ室12の周方向に導線が巻かれている。磁場発生器16は、コイルに電流を流すためのコイル電源76を含む。なお磁場発生器16は、図示されるように1つのコイルを備える代わりに、プラズマ室12の軸方向に沿って配列された複数のコイルを備えてもよい。
【0040】
図2は、本発明のある実施形態に係る通常磁場B1の一例を示す図である。
図2において縦軸はプラズマ室12の中心軸上での軸方向磁束密度Bを表し、横軸はプラズマ室12の軸方向位置Lを表す。従って、
図2は、通常磁場B1の軸方向磁場分布を示す。
図2の横軸には、プラズマ室12の一端である真空窓24の軸方向位置、及びプラズマ室12の他端であるイオン引出開口66の軸方向位置をそれぞれの符号で示す。
図2には共鳴磁場B
ECRが示されている。こうした表記は後掲の
図3においても同様である。
【0041】
通常磁場B1は、高密度プラズマの維持に適する磁場である。制御装置Cは、マイクロ波イオン源10の通常運転においてプラズマ室12に通常磁場B1が印加されるように磁場発生器16を制御する。
【0042】
図示されるように、通常磁場B1は、プラズマ室12において真空窓24からイオン引出開口66にわたって共鳴磁場B
ECRを超えており、プラズマ室12内にピークP1を有する単峰形の磁場分布である。ピークP1の軸方向位置は、イオン引出開口66よりも真空窓24に近い。磁場強度はピークP1から真空窓24へと単調に減少し、ピークP1からイオン引出開口66へと単調に減少する。よってピークP1から真空窓24への減少勾配は、ピークP1からイオン引出開口66への減少勾配より大きい。真空窓24での磁場強度は、イオン引出開口66での磁場強度に等しいか、又はいくらか大きくてもよい。また、通常磁場B1のピークP1の近傍では磁場分布は平坦である。ピークP1の強度は例えば、共鳴磁場B
ECRの約1.3倍から約1.6倍の範囲にある。
【0043】
図3は、本発明のある実施形態に係る初期磁場B2の一例を示す図である。初期磁場B2は、プラズマ室12におけるプラズマの着火に適する磁場である。初期磁場B2は、プラズマ室12に電子サイクロトロン共鳴を起こすように設定されている。そのために、初期磁場B2は、プラズマ室12の少なくとも一部において共鳴磁場B
ECRに一致するか又はその近傍の磁場を有する。制御装置Cは、マイクロ波イオン源10の起動運転においてプラズマ室12に初期磁場B2が印加されるように磁場発生器16を制御する。
【0044】
図示されるように、初期磁場B2は、真空窓24からイオン引出開口66にわたって平坦な磁場分布である。プラズマ室12内において初期磁場B2の強度は共鳴磁場B
ECRにほぼ等しく、例えば共鳴磁場B
ECRの±5%以内、好ましくは±3%以内、より好ましくは±1%以内の範囲にある。よって初期磁場B2は、プラズマ室12内の少なくとも一部において共鳴磁場B
ECRよりいくらか低い磁場であってもよい。図示される初期磁場B2は、真空窓24及びイオン引出開口66において共鳴磁場B
ECRに一致し、真空窓24からイオン引出開口66にわたって共鳴磁場B
ECRよりも高い磁場である。このように、初期磁場B2はプラズマ室12内において通常磁場B1に比べて低減された磁場分布である。
【0045】
図4は、本発明のある実施形態に係るマイクロ波イオン源10の起動方法を説明するためのフローチャートである。この方法は、マイクロ波イオン源10のプラズマ室12にプラズマを着火する着火工程と(S10)、プラズマ着火後にマイクロ波イオン源10の通常運転に移行する移行工程と(S20)、を備える。制御装置Cは、例えば、磁場発生器16、マイクロ波供給系26、ガス供給系34などのマイクロ波イオン源10の構成要素の動作を制御して本方法を実行する。
【0046】
着火工程(S10)は、マイクロ波イオン源10のプラズマ室12にプラズマ着火のための初期磁場B2を印加することと(S12)、ガス供給系34からプラズマ室12にガスを導入することと(S14)、マイクロ波供給系26からプラズマ室12にマイクロ波を導入することと(S16)、を備える。
【0047】
制御装置Cによる制御のもとで(または操作者の操作により)、マイクロ波イオン源10の動作が開始される。コイル電源76から磁場発生器16のコイルに電流が供給され、プラズマ室12に初期磁場B2が生じる。原料ガスがガス供給系34からプラズマ室12に供給される。マイクロ波がマイクロ波供給系26から真空窓24を通じてプラズマ室12に導入される。マイクロ波は軸方向に沿ってプラズマ室12に入射する。
【0048】
このように、制御装置Cは、プラズマ室12にマイクロ波が供給される前に初期磁場B2の印加を開始するように、磁場発生器16を制御する。また、制御装置Cは、プラズマ室12にマイクロ波が供給される前に原料ガスをプラズマ室12に導入する。したがって、プラズマ室12に初期磁場B2を印加しかつ原料ガスを供給した状態で、マイクロ波がプラズマ室12に導入される。マイクロ波と初期磁場B2との作用によって電子サイクロトロン共鳴が生じ、プラズマ室12にプラズマが生成される。
【0049】
移行工程(S18)は、プラズマ着火後に初期磁場B2を通常磁場B1に変更することを備える(S20)。制御装置Cは例えば、マイクロ波の導入開始から所定時間後に初期磁場B2から通常磁場B1に切り換えるように磁場発生器16を制御する。この所定時間はプラズマの着火に要する時間であり、例えば数秒以内である。本方法によるとマイクロ波を導入したとき直ちにプラズマが確実に着火されるので、制御装置Cはマイクロ波の導入と同時に通常磁場B1に切り換えてもよい。
【0050】
移行工程(S18)は、マイクロ波検出器33を使用してプラズマ着火を検出することを備えてもよい。プラズマが着火したときプラズマ室12でのマイクロ波の反射率がいくらか下がる。このような反射率の低下がマイクロ波検出器33によって検出される。したがって、制御装置Cは、マイクロ波検出器33の測定結果に基づいてプラズマが着火したか否かを判定し、着火と判定した場合に初期磁場B2を通常磁場B1に変更してもよい。
【0051】
このようにして、マイクロ波イオン源10は、プラズマ着火運転から通常運転へと移行する。通常運転においては、引出電極系42によってイオン引出開口66を通じてプラズマからイオンが引き出される。引き出されたイオンはビームライン52へと供給される。
【0052】
ある典型的なマイクロ波イオン源10の起動方法においては、通常磁場B1を印加した状態でマイクロ波及び原料ガスがプラズマ室12に導入される。このときプラズマ室12における原料ガス圧を一時的に通常よりも高くすることで、プラズマの着火を促進することができる。しかし、通常磁場B1は共鳴磁場B
ECRから乖離しているので、この方法においてはプラズマの着火が保証されているわけではない。また、プラズマ室12の昇圧は、プラズマ室12の真空度を測定するための真空計測機器(例えば電離真空計など)に負荷を与えるかもしれない。
【0053】
これに対し、本実施形態によると、ECR条件付近の磁場分布である初期磁場B2がプラズマ着火のためにプラズマ室12に印加される。ECRはプラズマが存在していない状態において僅か1つの荷電粒子があるだけでも生じる相互作用である。したがって、容易かつ確実にプラズマを着火することができる。また、本実施形態によると、高密度プラズマに適する通常磁場B1がプラズマ着火後にプラズマ室12に印加される。こうして、着火したプラズマを高密度プラズマへと成長させることができる。
【0054】
また、本実施形態によると、プラズマ室12に初期磁場B2を印加しかつ原料ガスを供給した状態で、マイクロ波がプラズマ室12に導入される。ECR条件近傍の磁場はマイクロ波の反射率が高い。よって、このようにマイクロ波を着火工程の最後に導入することにより、マイクロ波の不必要な反射や消費を抑えることができる。
【0055】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。