(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内蔵された一又は複数の施療機構で施療動作を実行し、前記施療機構による施療動作の実行前に、前記施療機構の被施療者への施療動作に係る可動範囲から外れた位置に配置された加熱手段により被施療者の身体の一部を加熱するマッサージ機において、
前記加熱手段がシート状のヒータからなり、前記施療機構の被施療者への施療動作に係る可動範囲から外れた位置に配置され、施療機構とは非接触とされ
また、前記加熱手段と接触して加熱手段から施療機構に熱を伝えられる、良熱伝導性材料からなるシート状の伝熱体を、前記可動範囲を覆うように備え、
前記加熱手段が、接触した物体の表面形状に沿って変形可能な可撓性のある加熱面を少なくとも一部に有してなり、
前記加熱手段の少なくとも加熱面をマッサージ機内部から外部へ向かう方向に押して動かすエアセルからなる押圧手段を備え、
被施療者の施療予定部位にマッサージ動作を実行する前に、前記押圧手段が前記加熱手段の加熱面を押し、前記施療予定部位に加熱面を接近させて、加熱面を施療予定部位の表面に沿った形状に変形させ、
前記加熱手段が、加熱面を接近させた前記施療予定部位に加熱面を通じて熱を加えることを特徴とするマッサージ機。
前記エアセルによりマッサージ機内部から外部へ向かう方向に押して、施療予定部位の隣接部位にヒータを沿わせる際に、施療予定部位に重なる伝熱体も、ヒータの動きに合せて施療予定部位に沿った状態とすることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のマッサージ機におけるヒータ等の温熱作用をもたらす機構は前記各特許文献に示される構成とされており、マッサージを受ける被施療者に熱を加え、被施療者に温熱の効果を与えられるようにしていたが、前記特許文献1に記載された従来のマッサージ機は、マッサージと同時にヒータを動作させて被施療者の患部を温めるものであり、また、前記特許文献2に記載された従来の施療用パッドにマッサージ機能を付加したり、施療用パッドをマッサージ機と併用したりする場合も、マッサージと同時に温熱施療手段を動作させて人体所望部位を温める構成のみとなっているなど、こうした従来の機器は、単に温熱付与とマッサージを同時に実行してそれぞれの効果を同時に得ようとするものに過ぎず、マッサージと温熱付与との効果的な連係を企図したものではなかった。
【0006】
また、マッサージによる機械的刺激に比べて人の身体に伝わりにくい温熱刺激の性質に加え、マッサージにより振動が生じる中で熱源を身体の一部に接触させて熱を加えるのは困難であることから、従来のマッサージ機等で、温熱を適切に身体に伝えて効率よく温熱による効果を発揮させることは現実的ではないといえる。
【0007】
ところで、マッサージを人の手で簡易に行う場合に、マッサージを行おうとする部位をあらかじめ少し温めてからマッサージを行うと、マッサージのもたらす効果を高められることが経験的に知られている。しかしながら、従来の温熱付与とマッサージを同時に実行するマッサージ機等では、このような手法を採ることはできず、身体の特性に対応して温熱を有効に利用し、マッサージの効果をこれまで以上に高めることは難しいという課題を有していた。
【0008】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、マッサージを行う前の最適なタイミングで、マッサージの施療予定部位を温めて、血行等の身体の働きを活性化し、身体に与えるマッサージの効果を大きく高められるマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマッサージ機は、内蔵された一又は複数の施療機構で施療動作を実行するマッサージ機において、前記施療機構による施療動作の実行前に、前記施療機構の被施療者への施療動作に係る可動範囲から外れた位置に配置された加熱手段により被施療者の身体の一部を加熱するマッサージ機において、前記加熱手段がシート状のヒータからなり、前記施療機構の被施療者への施療動作に係る可動範囲から外れた位置に配置され、施療機構とは非接触とされまた、前記加熱手段と接触して加熱手段から施療機構に熱を伝えられる、良熱伝導性材料からなるシート状の伝熱体を、前記可動範囲を覆うように備え、前記加熱手段が、接触した物体の表面形状に沿って変形可能な可撓性のある加熱面を少なくとも一部に有してなり、前記加熱手段の少なくとも加熱面をマッサージ機内部から外部へ向かう方向に押して動かすエアセルからなる押圧手段を備え、被施療者の施療予定部位にマッサージ動作を実行する前に、前記押圧手段が前記加熱手段の加熱面を押し、前記施療予定部位に加熱面を接近させて、加熱面を施療予定部位の表面に沿った形状に変形させ、記加熱手段が、加熱面を接近させた前記施療予定部位に加熱面を通じて熱を加えるものである。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、加熱手段による被施療者の施療予定部位への加熱を十分に効果的なものとすることが出来る。
【0011】
施療機構によるマッサージとしては給排気されるエアセルや揉み玉が考えられる。いずれの場合も施療機構が本来のマッサージ動作を行う前に施療機構の可動範囲から外れた位置に配置された加熱手段を動作させ施療予定部位に位置するカバー材を加熱すると、カバー材の熱が被施療部に伝わることで事前に被施療部が十分に温まり、その状態で施療機構による本来のマッサージ動作が被施療部に対して実行されるのでマッサージ効果が向上する効果がある。
【0012】
マッサージ手段が揉み玉による場合の具体的動作としては、例えば加熱手段により身体の一部をカバー材を介して加熱開始し、初期は加熱位置に揉み玉を当接させた状態(上下や左右の移動の合成を含む)を維持させ、カバー材の加熱を促進させて、所定時間経過(数秒から数分)後伝熱により、温まった状態の部位に対し所望のマッサージ動作を実行させるような制御が考えられる。
【0013】
また、他の具体的動作としては、例えば加熱手段により身体の一部をカバー材を介して加熱開始し、初期は加熱位置のカバー材を凸没方向において押圧力の強いマッサージ動作(揉み玉によるものやエアセルによるもの)にて押し付けて、加熱を促進させて、所定時間経過(数秒から数分)後押圧力を弱めて、伝熱により温まった状態の部位に対し施療機構でマッサージ動作を実行させるような制御が考えられる。
【0014】
なお、本発明は例えば加熱手段の加熱開始後の初期は揉み玉によるマッサージ動作を揉み玉の当接力が常時加わっている動作(ローリング動作やモミ動作)に限定して動作を実行し、加熱部が揉み玉の当接力によって被施療部の加熱を促進させ、被施療部が加熱された後に、温まった状態の部位に対し(望ましくは加熱を解除、または弱めてから)叩き等の当接力付与が連続しないマッサージ動作が実行されるようにするものを含む。
【0015】
つまり、本発明でいう「押し付ける」とは、マッサージ動作の一部であってもよく、使用者が認識していなくても、マッサージ動作がまず加熱とともに押し付ける動作を行い、施療予定箇所の加温を促進させ、その後押し付ける動作以外を含む動作が実行されれば良い。
【0016】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記加熱手段が、前記施療機構の被施療者への施療動作に係る可動範囲から外れた位置に配置され、施療機構とは非接触とされるものである。
【0017】
このように本発明によれば、加熱手段を施療機構の可動範囲から外れて施療機構と接触しない位置に配設し、マッサージ動作を実行する際の施療機構が加熱手段に対し力を加え得ない状態とすることにより、加熱手段がマッサージ動作の実行に伴って施療機構からストレスを受けるようなことがなく、加熱手段の劣化や損傷を防いで、加熱手段で確実に被施療者のマッサージの施療予定部位を温められる状態を維持できる。
【0018】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記カバー材は前記加熱手段と接触して加熱手段から熱を伝えられる、良熱伝導性材料からなる伝熱体を備えているものである。
【0019】
このように本発明によれば、マッサージ動作の施療予定部位を確実に温めた上でマッサージ動作を行うことができ、マッサージ動作を身体の十分温められた部分に施すことでマッサージの効果をより一層高めることができる。また、加熱手段が施療機構と接触しない状態を確保しつつ、施療機構の可動範囲に位置させた伝熱体で施療予定部位に直接的に熱を伝えられ、加熱手段の劣化等を生じさせず、その耐久性を維持しつつ、マッサージ動作の施療予定部位を効率よく温められ、施療予定部位を十分温まった状態とするまでの時間を短縮できる。
【0020】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記加熱手段が、接触した物体の表面形状に沿って変形可能な可撓性のある加熱面を少なくとも一部に有してなり、前記加熱手段の少なくとも加熱面をマッサージ機内部から外部へ向かう方向に押して動かす押圧手段を備え、被施療者の施療予定部位にマッサージ動作を実行する前に、前記押圧手段が前記加熱手段の加熱面を押し、前記施療予定部位に加熱面を接近させて、加熱面を施療予定部位の表面に沿った形状に変形させ、前記加熱手段が、加熱面を接近させた前記施療予定部位に加熱面を通じて熱を加えるものである。
【0021】
このように本発明によれば、加熱手段のうち少なくとも加熱面を押圧手段で押して、加熱面を施療予定部位に沿った形状に変形させつつ施療予定部位に接近させ、この加熱面を施療予定部位に沿わせた状態で、加熱面から施療予定部位に熱を加えることにより、施療予定部位に沿った加熱手段の加熱面から一様に施療予定部位に熱を伝えることができ、マッサージ動作の直前に施療予定部位を効率よく温められ、マッサージ効果の発現を促せる。
【0022】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記押圧手段が、内部に流体を流入出させて膨張収縮する流体セルとされると共に、少なくとも被施療者の施療予定部位に近い部位に前記加熱面を配置されて前記加熱手段を兼ねるものである。
【0023】
このように本発明によれば、加熱手段を押圧手段と一体化した流体セル構造とし、施療予定部位へ熱を加える加熱面を、流体の流入による流体セルの膨張に伴って押し、施療予定部位に接近させ、加熱面を施療予定部位に沿わせた状態で、加熱面から施療予定部位に熱を加えることにより、施療予定部位に沿った加熱手段の加熱面から一様に施療予定部位に熱を伝えることができ、マッサージ動作の直前に施療予定部位を効率よく温められ、マッサージ効果の発現を促せる。また、加熱面が流体セルの内圧で直接押されることで、加熱面をより確実に施療予定部位に沿った状態とすることができ、加熱面から施療予定部位への伝熱性能を向上させて、施療予定部位をより短時間に温められると共に、加熱面を施療予定部位に沿わせる機構を簡略化できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機を前記
図1ないし
図7に基づいて説明する。
【0026】
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機1は、着座した被施療者を支える椅子状のものであり、詳細には、床面上に載置されて椅子全体を安定的に支持する基台部91と、この基台部91の上方で被施療者の臀部を支える座部92と、この座部92の後側で被施療者の背中を支える背もたれ部93と、座部92の左右両側で被施療者の肘や前腕部を支える肘掛部94と、座部92の前側で被施療者の脚を支える脚支持部95と、着座した被施療者の身体所定箇所に熱を加える前記加熱手段としてのヒータ11、12、13と、カバー材としてのヒータを覆う背もたれカバー100と、マッサージ動作に係る各種操作入力を受付ける操作手段としてのリモコン81と、搭載されている複数の施療機構によるマッサージ動作を操作入力内容に基づいて制御する制御部82とを備える構成である。
【0027】
前記基台部91は、椅子各部をなす前記座部92、背もたれ部93、肘掛部94、及び脚支持部95を一体に取付けられてこれらを支持するものである。また、前記座部92は、基台部91に対し座面の傾斜角度を調整可能として取付けられ、座面にて被施療者の臀部や太腿部を支えつつ内蔵の施療機構でマッサージを実行するものであり、この施療機構として、空気の給排で動作する臀部用エアセル71、及び太腿用エアセル72を備える構成である。これらエアセルを空気の給排で動作させるエアポンプ70が座部92下側のスペースに配設される。
【0028】
前記背もたれ部93は、人の背中形状に合せた表面形状とされて前記基台部91及び座部92に対し傾斜角度を調整可能として配設され、その内部に、マッサージを実行する施療機構と、前記加熱手段としてのヒータ12、13とを備える構成である。
【0029】
背もたれ部93内部には、施療子としての左右一対の揉み玉61とこれを動作させる駆動機構部が一体となったメカユニット60と、このメカユニット60を背もたれ部93上下方向に移動可能とし且つ他方向への動きは拘束して支持する二つのガイドレール62、63と、前記エアポンプ70による空気の給排で動作する背中用エアセル73及び腰用エアセル74と、この背もたれ部93の形状を内部から維持する枠状のフレーム97とがそれぞれ配設される構成であり、このうちメカユニット60、背中用エアセル73、及び腰用エアセル74が、それぞれマッサージを実行する施療機構をなす。
【0030】
前記ガイドレール62、63は、背もたれ部93の表面に沿う長手方向形状とされてなり、背もたれ部93内部のフレーム97にそれぞれ固定され、一対を背もたれ部内部左右にそれぞれ配設される構成である。この対をなす二つのガイドレール62、63に挟まれる配置で、前記メカユニット60がガイドレール62、63に沿って移動可能に配設される。このメカユニット60において、前記駆動機構部(図示を省略)が、施療子としての左右一対の揉み玉61を揉み、叩き等のマッサージ動作に対応させて駆動することで、揉み、叩き等の刺激を背もたれ部93上の被施療者に与えられる仕組みである。
【0031】
また、背もたれ部93の上部には、背もたれ部93にもたれた被施療者の頭部を支える枕部98が配設される構成である。さらに、背もたれ部93の左右両側部には一対の側壁部99が突出配設され、その被施療者に面する内面側にもエアセル(図示を省略)が設けられ、被施療者の上腕部に対してもマッサージを行える構成である。
【0032】
前記肘掛部94は、座部92の両側に位置して基台部91と一体に連結し、背もたれ部93がリクライニング角度を変化させたり、座部92が傾動しても、被施療者の前腕を安定的に支持するよう形成される構成である。この肘掛部94にも、前記エアポンプ70による空気の給排で動作するエアセルを配設して、被施療者の前腕部に対しマッサージを行える構成としてかまわない。
【0033】
前記脚支持部95は、座部92の前側に位置し、座部92前端付近を中心として傾動可能に配設され、内蔵のアクチュエータ(図示を省略)により傾斜角度を調整されるものである。この脚支持部95には、前記エアポンプ70による空気の給排で動作する脚用エアセル75、76が配設される。
【0034】
前記ヒータ11、12、13は、通電により発熱するシート状の熱源体であり、背もたれ部93のうち、着座状態の被施療者の背中、及び腰部にそれぞれ当接する箇所の内部位置で、且つ揉み玉61の通る中央の領域、すなわち揉み玉61の可動範囲Mに隣接する位置にそれぞれ内蔵されると共に、枕部98の下部における被施療者の肩上側に接する箇所にも配設され、制御部82の制御に基づき発熱、温度上昇して、背もたれカバー100を介して近接する被施療者の身体各部を加熱して温めるものである。
【0035】
なお、前記ヒータは背もたれ部に固着されても良いし、背もたれカバー100の表面、裏面、内部のいずれに固着されても良い。
【0036】
また、ヒータが背もたれ部に固着される場合は背もたれカバーのヒータと対応する位置及びその周辺を伝熱体とすることも可能である。
【0037】
また、背もたれカバーにヒータが固着される場合もヒータ周辺を伝熱体とすることが望ましい。
【0038】
これらヒータ11、12、13は、被施療者における肩、背中、及び腰の、揉み玉61によるマッサージの施療予定部位にそれぞれ対応させて配設されており、枕部98に配設されるヒータ11は、肩の施療予定部位に隣接した部位に熱を加えられるように、厚みがある枕部98の、ちょうどその厚みのなす下面部分の内部に配置され、被施療者が着座して頭を枕部98に載せた状態で、枕部98の下側に位置する肩と対向することとなる(
図3参照)。また、背中位置のヒータ12は背中の施療予定部位に隣接した部位に熱を加えられるように配設され、腰位置のヒータ13は腰の施療予定部位に隣接した部位に熱を加えられるように配設される。
【0039】
こうして各ヒータ11、12、13が、被施療者における肩、背中、及び腰の各施療予定部位に直接的に熱を加えるのではなく、各施療予定部位に隣接した部位に熱を加えるように配設されることで、マッサージを実行する揉み玉61の可動範囲Mや揉み玉61以外のメカユニット60各部の可動範囲から離れる形となり、揉み玉61の動作時や移動時に揉み玉61等と各ヒータ11、12、13との接触はなく、ヒータ11、12、13が繰返しストレスを受けるような事態を避けられる。
【0040】
これらヒータ11、12、13は、制御部82の制御により、被施療者の各施療予定部位に順次マッサージが実行される場合に、それぞれマッサージ前の施療予定部位に対し、その施療予定部位の隣接部位を背もたれカバー100を介して加熱して温めることで、施療予定部位も間接的に温める加熱動作を実行し、しかも加熱中に揉み玉も施療予定部位へ移動し、温められた背もたれカバーを施療予定部位へ押し付ける動作を行う。このあとに、温められた施療予定部位に対し上記押し付ける動作と異なる本来のマッサージ動作が実行される過程が順次進行することとなる。
【0041】
具体的には押し付ける動作とは揉み玉が身体側へ突出させた状態が維持されている状態であり、上下方向や幅方向への動作が併用されているものを含むが、一方本来のマッサージ動作とは叩きや指圧などの身体側への方向(凸没方向)の動作を含むものである。
【0042】
また、カバー材として背もたれカバー100を図示しているが、カバー材は背もたれカバー100に限定されず背もたれ部のメカユニット60やエアセル73、74を覆うものであれば良い。もちろん施療箇所によっては背もたれ部に配設されていない場合もある。前記リモコン81は、マッサージ機に対する各種操作入力を受付ける多数のスイッチや表示部を備え、マッサージ機1の側部におけるスタンド96に着脱自在に設置され、マッサージに係る操作入力を制御部82に送信するものである。なお、リモコン81のスイッチや表示部の位置を被施療者にとって最適位置とするために、スタンド96の位置は調整可能となっている。
【0043】
前記制御部82は、リモコン操作やあらかじめ設定されたマッサージに係る情報に基づいて被施療者に適するマッサージコースを選定するコース選定手段82aと、このコース選定手段82aで選定されたマッサージコースと後からのリモコン操作等に基づくマッサージとを調整して、適切なマッサージの実行を制御するマッサージ実行手段82bと、ヒータ11、12、13による加熱を制御する加熱制御手段82cとを備える構成である(
図2参照)。
【0044】
この制御部82は、そのハードウェア構成として、CPUやメモリ、入出力インターフェース等を備えるコンピュータとなっており、メモリ等に格納されるプログラムにより、コンピュータを前記コース選定手段82a、マッサージ実行手段82b、及び加熱制御手段82cとして動作させる仕組みである。この制御部82をなすコンピュータは、CPUやメモリ、ROM等を一体的に形成されたマイクロコンピュータとしてもかまわない。
【0045】
前記コース選定手段82aは、被施療者に係るマッサージ履歴や体形・姿勢等の情報に基づいて、メモリ等に格納されたマッサージコースの中から、その時点における被施療者にとって好適なマッサージコースを一又は複数選定し、マッサージ実行手段82bに出力するものである。
【0046】
前記マッサージ実行手段82bは、コース選定手段82aで被施療者に適したものとして選定されたマッサージコース、もしくは、リモコン81から直接選択指示されたマッサージコースやマッサージについて、必要に応じて被施療者に確認の指示入力を求めた上で、選択されたマッサージコースのマッサージデータをメモリ等から読み出し、データに基づく制御信号を出力してメカユニット60及び/又はエアポンプ70を動作させ、メカユニット60の揉み玉61によるメカマッサージ及び/又はエアセルマッサージを実行するものである。
【0047】
メモリ等から読み出される複数のマッサージコースは、例えば、施療手段として揉み玉61を用いる場合の、強さ、速度を変化させたり、動きを揉み、叩き等のいずれかに変化させることでバリエーションを与えたものを、所定の一施療部位に対し一又は複数割当て、さらにこうした施療部位に対する動作を複数の異なる施療部位について関連付けて連続実行や同時実行する、といった内容を規定した情報となっている。
【0048】
前記加熱制御手段82cは、選択されたマッサージコースやマッサージの情報から、まだマッサージ動作が行われていない場合には最初にマッサージ動作が行われる位置を、マッサージ動作中の場合には、次にマッサージ動作が行われる位置をそれぞれ取得し、マッサージ動作が行われる前に、マッサージ動作の行われる位置に対応して配設される加熱手段としてのヒータ11、12、13を動作させてかつ、施療機構としての揉み玉により、加熱された背もたれカバー100を押し付けて被施療者のマッサージ動作の施療予定部位が温まるようにし、マッサージ動作の開始までに施療予定部位を十分に温められた状態とするものである。そして、加熱制御手段82cは、所定の施療予定部位のマッサージ動作が開始する直前に、その施療予定部位へのヒータ11、12、13による加熱を停止させる。
【0049】
この制御部82をなすコンピュータのユニットは、座部92直下等のマッサージ機1内部の所定のスペースに配設され、リモコン81と通信可能な状態とされると共に、メカユニット60や、背もたれ部93や脚支持部95の各アクチュエータ、エアポンプ70、ヒータ11、12、13とそれぞれ電気的に接続される。また、制御部82は、メカユニット60や各アクチュエータの変位量を出力するエンコーダ等の信号出力手段とも電気的に接続されており、メカユニット60の状態や、背もたれ部93及び脚支持部95の傾斜等の状態を把握しつつこれらの動作制御を行うこととなる。
【0050】
次に、本実施形態に係るマッサージ機におけるマッサージ動作と加熱の動作について説明する。前提として、マッサージ機1の主電源が入状態とされてマッサージ機1が待機状態で起動し、被施療者が背中を背もたれ部93に向けた通常姿勢でマッサージ機1に着座した状態にあって、被施療者の体重や肩・腰位置の測定、検出などのマッサージ動作開始前の準備動作や、背もたれ部93のリクライニング角度調整等が完了し、さらに被施療者によりマッサージコース等の動作状態指示が入力されたものとする。
【0051】
制御部82では、被施療者についてあらかじめメモリ等に格納されていた各種情報や過去の使用履歴等に基づいて、コース選定手段82aにより導かれた複数の推奨されるマッサージコースの中から、被施療者によるリモコン81のスイッチ操作で選択された所定のマッサージコースについて、マッサージコースの内容がメモリ等より読出される。
【0052】
マッサージコース等の情報が得られると、まず、制御部82は、マッサージコースで指定された最初のマッサージの施療予定部位に対応させて配置されたヒータを通電状態として発熱、昇温させ、このヒータに近い被施療者の施療予定部位を背もたれカバー100を介してマッサージ動作に先立って温める予備加熱動作が実行される。この際、マッサージ動作を行うメカユニットを施療予定部位に移動させ揉み玉によりを当該位置の背もたれカバーを当該施療予定部位に押し付けて加熱効果を高める。押し付ける動作は揉み玉を施療予定部位側に突出させて、その状態を維持したまま上下方向にローリングさせ加熱された背もたれカバーを十分に押し付ける。
【0053】
施療予定部位が全身の場合は配設された全てのヒータを通電状態とし、揉み玉を全身に亘って上下動させて、加熱された背もたれカバーの熱を付与させる。この予備加熱動作は揉み玉の動きとしては所謂ローリング動作と同様であり幅方向の移動も併用しても許されるものであるが、施療予定部位の加熱が十分に施されるまでの所定時間(例えば3分)は叩きなどの凸没方向への動作を禁止している点で従来のマッサージ動作とは区別している。
【0054】
次に、例えば、マッサージコースで指定されたマッサージ動作が揉み玉61で肩から背中、腰と上から順に実行されるものである場合、背もたれ部下方の待機位置にあるメカユニット60の揉み玉61を上方の肩対応位置へ動かすため、制御部82は、メカユニット60をガイドレール62、63に沿って上方へ移動させ、揉み玉61位置を上方に変化させる(
図5参照)。この揉み玉61が肩対応位置に達し、被施療者の肩の施療予定部位へのマッサージ動作が開始されるまで、被施療者の肩位置に対応する枕部98下部のヒータ11による加熱を実行しつつ揉み玉による押し付け動作を実行している。肩の施療予定部位に隣接する部位を温めることで、施療予定部位も間接的に温めることができる。
【0055】
この際の揉み玉による押し付け動作とは揉み玉を突出状態としたまま数秒間維持させることを言い、加熱を促進させている。この維持状態では突出方向の動きはないが場合によっては幅方向や上下方向の動きを併用させても良い。この併用動作により押し付けによる加熱面積を広くすることが出来る。
【0056】
なお、押し付け動作には所謂揉み動作のようなものも含まれ、本実施例上は常時被施療者と当接された動作を言い、ヒータの加熱と揉み動作の併用により本来のマッサージ動作である叩き動作の前に十分な加熱が可能となる。
【0057】
つまり、本実施例における押し付け動作とはその後に実行されるマッサージ動作の内容により区別され、マッサージ動作が揉み動作の場合は突出した状態を維持する動作であり、マッサージ動作が叩き動作の場合は突出した状態を維持する動作に加え揉み動作を含むこととする。
【0058】
マッサージコースに沿ったマッサージ動作が開始すると、この肩位置に対する加熱は終了となる。所定時間温められた施療予定部位に対し、揉み玉61によるマッサージが実行されることとなる。この肩位置においては、ヒータ11は揉み玉61の可動範囲Mの外で揉み玉61とは接触しない枕部98の下部に位置することから、加熱を終えたヒータ11が繰返しの押圧等によるストレスを受けることはない。
【0059】
続いて、制御部82は、マッサージコースで指定された次のマッサージ動作の施療予定部位、例えば、背中、に対し、あらかじめ設定されたマッサージ動作開始時点の所定時間前から、対応する位置のヒータ、すなわち背中位置のヒータ12による加熱を開始し(
図6(B)参照)、背中の施療予定部位に隣接する部位を温めることで、施療予定部位を背もたれカバー100を介して間接的に温める。実行中の肩位置でのマッサージ動作が終了し、次の背中位置まで揉み玉61が移動し、揉み玉61による押し付け動作が実行され、マッサージ動作が開始されるまで、制御部82はヒータ12による加熱を継続させる。このヒータ12の加熱と揉み玉61による押し付け動作により、背中の施療予定部位を十分に温められた状態とした上で、マッサージ動作を実行できる。
【0060】
さらに、この背中へのマッサージ動作中においても同様に、制御部82は、マッサージコースで指定された次のマッサージ動作の施療予定部位、例えば、腰、に対し、あらかじめ設定されたマッサージ動作開始時点の所定時間前から、対応する位置のヒータ、すなわち腰位置のヒータ13による加熱を開始し(
図7(A)参照)、腰の施療予定部位に隣接する部位を温めることで、施療予定部位を間接的に温める。実行中の背中位置でのマッサージ動作が終了し、次の腰位置まで揉み玉61が移動し、揉み玉61による押し付け動作が実行され、マッサージ動作が開始される(
図7(B)参照)まで、制御部82はヒータ13による加熱を継続させる。このヒータ13の加熱により、腰の施療予定部位を十分に温められた状態とした上で、マッサージ動作を実行できる。
【0061】
なお、上述ではマッサージ動作が開始すると、この肩位置に対する加熱は終了となる場合を記載したが、必要に応じてマッサージ動作中も継続して加熱を行なっても良い。
【0062】
こうして、マッサージコースに沿って、部分的に実行されるマッサージ動作の施療部位が順次変りながら、それぞれの部位にマッサージ動作が行われる間、前記同様に、マッサージ動作が実行される前の施療予定部位に対し、ヒータ11、12、13による各施療予定部位の隣接部位への加熱動作が繰返され、実際にマッサージ動作が実行されるまでにヒータ11、12、13による加熱と揉み玉61による押し付け動作で十分温まった状態となった施療予定部位に対して、マッサージ動作が行われることとなる。ただし、マッサージコースで指定される最後のマッサージ動作が開始すると、次のマッサージ動作の施療予定部位が存在しないことに伴い、それ以降は加熱に係る動作は実行されない。
【0063】
このように、本実施形態に係るマッサージ機は、被施療者の身体の一部を背もたれカバー(カバー材)を介して加熱する複数のヒータ(加熱手段)を備え、揉み玉(施療機構)によるマッサージ動作の前に、被施療者におけるマッサージ動作の施療予定部位を、ヒータにより加熱された背もたれカバーを揉み玉により押し付けることにより温めるものである。
【0064】
このように本発明によれば、加熱手段による被施療者の施療予定部位への加熱を十分に効果的なものとすることが出来る。
【0065】
なお、前記実施形態に係るマッサージ機においては、加熱手段をなすヒータ11、12、13を、揉み玉61の可動範囲M外など、各施療機構と接触しない位置に配設して、ヒータ11、12、13に施療機構からの力が加わらないようにし、ヒータ11、12、13が繰返しの応力付加により劣化するのを防ぐ構成としているが、これに限らず、ヒータが施療機構からマッサージ実行に起因するストレスを受けても、劣化等の問題がない構造のものであれば、
図8に示すように、ヒータ14、15を施療予定部位、すなわち揉み玉61の可動範囲Mをはじめとする施療機構の可動範囲に重なるように配置する構成とすることもでき、ヒータ14、15の位置から直接的に施療予定部位に熱を伝えられると共に、熱を伝える面積を大きくして、効率よくマッサージ前に温熱付与を行うことができる。
【0066】
また、前記実施形態に係るマッサージ機においては、加熱手段として、自ら温度上昇して接触物に熱を伝えるヒータ11、12、13を用いる構成としているが、これに限らず、加熱手段として、マッサージ機内部から被施療者側に遠赤外線、高周波の電磁波、又は超音波を放射することで施療予定部位を温める機構や、被施療者側へ温風を吹出すことで施療予定部位に熱を加える機構を用いる構成とすることもでき、熱源を直接接触させずに熱を付与できる特性から、加熱手段を施療機構の可動範囲やその隣接位置に配置しなくても施療予定部位を確実に昇温させることができ、加熱手段の配置の自由度を高め、被施療者側への伝熱を図る構成を簡略化できる。
【0067】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るマッサージ機を前記
図9及び
図10に基づいて説明する。
【0068】
前記各図において、本実施形態に係るマッサージ機2は、前記第1の実施形態同様、基台部91と、座部92と、背もたれ部93と、肘掛部94と、脚支持部95と、ヒータ21、22、23と、リモコン81と、制御部82とを備える一方、異なる点として、背もたれ部93におけるヒータ22、23に隣接して、ヒータ22、23の熱を広範囲に伝える略シート状の伝熱体24、25を備える構成を有するものである。
【0069】
なお、マッサージ機2における背もたれ部93での伝熱体24、25の配置構造以外の各部の構成は、前記第1の実施形態と同様のものであり、説明を省略する。
【0070】
前記伝熱体24、25は、金属や炭素繊維成形材等の良熱伝導性材料で形成され、施療機構をなす揉み玉61の可動範囲に重なる背もたれ面所定範囲に裏打ちされた状態で配設され、また前記ヒータ22、23とも接触して、各ヒータ22、23から熱が伝わる状態とされる構成である。
【0071】
前記ヒータ22、23の加熱状態では、伝熱体24、25にもヒータ22、23から直接熱が伝わることで、伝熱体24、25もその温度を上昇させ、こうして温まった伝熱体24、25が、これと重なる施療予定部位にさらに熱を伝えて温める仕組みである。(
図10参照)
【0072】
なお、前記実施形態に係るマッサージ機においては、熱を発生させるヒータ22、23を背もたれ部93の背もたれ面近くに配設し、ヒータ22、23で直接的に施療予定部位の隣接部位に熱を加える構成としているが、これに限らず、ヒータ等の加熱手段と被施療者との間に伝熱体を介在させ、加熱手段で発生させた熱が全て伝熱体を介して被施療者に伝わる構成とすることもでき、伝熱体を介して所望の位置に熱を伝えられることで、加熱手段を必要最小限のスペースに抑えてマッサージ機内の他の機構に影響を与えることなく配設でき、マッサージ機内における加熱手段のレイアウトの自由度を高くして様々な形状・用途のマッサージ機に対応させられる。
【0073】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るマッサージ機を前記
図11ないし
図13に基づいて説明する。
【0074】
前記各図において、本実施形態に係るマッサージ機3は、前記第1の実施形態同様、基台部91と、座部92と、背もたれ部93と、肘掛部94と、脚支持部95と、ヒータ31、32と、リモコン81と、制御部82とを備える一方、異なる点として、背もたれ部93におけるヒータ31、32が、施療用の各エアセル73、74と重なる位置にそれぞれ配設されてなり、また、このヒータ31、32をマッサージ機内部から外部へ向かう方向に押して動かす前記押圧手段としての補助エアセル33、34を備える構成を有するものである。
【0075】
なお、マッサージ機3における背もたれ部93でのヒータ31、32と補助エアセル33、34の配置構造以外の各部の構成は、前記第1の実施形態と同様のものであり、説明を省略する。
【0076】
前記ヒータ31、32は、通電により発熱するシート状の熱源体であり、背もたれ部93内部で前記施療機構としての背中用エアセル73及び腰用エアセル74の、背もたれ部93表面側となる位置にそれぞれ配設される構成である。このヒータ31、32における、被施療者のもたれる背もたれ部93表面側寄りの面が、施療予定部位に熱を加える加熱面をなし、この加熱面を含むヒータ全体が、接触した物体の表面形状に沿って変形可能な可撓性を有している。
【0077】
前記補助エアセル33、34は、背もたれ部93表面側から見て前記背中用エアセル73と腰用エアセル74の奥側(裏側)にそれぞれ配設され(
図12(A)参照)、前記制御部82の制御に基づく前記エアポンプ70による空気の給排で膨張、収縮可能とされ、膨張状態で背中用エアセル73又は腰用エアセル74ごとヒータ31、32を背もたれ部93上の被施療者に向けて押し、背もたれ部93表面寄りに動かすものである。
【0078】
これら補助エアセル33、34は、被施療者の着座状態で、制御部82による制御の下、背中用エアセル73又は腰用エアセル74によるマッサージの施療予定部位に対し、前記エアセルによるマッサージの開始直前までの所定時間、膨張状態となってヒータ31、32を押すことで、ヒータ31、32の加熱面を、被施療者の各エアセル73、74による施療予定部位の表面に沿った変形状態とすることができ、これによりヒータ31、32の加熱面の全域から施療予定部位に一様に熱を加えることができる仕組みである。
【0079】
次に、本実施形態に係るマッサージ機におけるマッサージと加熱の動作状態について説明する。前提として、前記第1の実施形態と同様、マッサージ機3が起動し、被施療者がマッサージ機3に着座した状態にあって、マッサージ動作開始前の準備動作等が完了し、さらに被施療者によりマッサージコース等の動作状態指示が入力されたものとする。
【0080】
制御部82では、前記第1の実施形態と同様、被施療者によるリモコン81の操作で選択された所定のマッサージコースやマッサージ動作について、その内容の情報がメモリ等より読出される。こうしてマッサージコース等の情報が得られると、制御部82は、マッサージを行うメカユニット60及び/又はエアセルをマッサージ準備状態とするのと同時に、マッサージコースで指定された最初のマッサージ動作(揉み玉によるもの及び/又はエアセルによるもの)の施療予定部位に対応させて配置されたヒータを通電状態として発熱、昇温させ、このヒータに近接している被施療者の施療予定部位をマッサージに先立って温める。
【0081】
例えば、マッサージコースで指定されたマッサージ動作が背中、腰と上から順に実行されるものである場合、背中用エアセル73にエアポンプ70で空気を流入出させられる状態となって、背中に対するマッサージ動作が開始されるまで、被施療者の背中の施療予定部位に対応する背中位置のヒータ31による加熱を実行し背もたれカバー100の該当箇所を加熱し、同時に、又は加熱開始前後所定時間(数秒)あけて、補助エアセル33にエアポンプ70で空気を流入させて膨張させ、補助エアセル33で背中用エアセル73とヒータ31と背もたれカバー100の押し付け動作を実行して、ヒータ31を被施療者の背中の施療予定部位に接近させ、ヒータ31の加熱面を背中の施療予定部位に沿わせた状態とし、このヒータ31加熱面各部を通じて背中の施療予定部位に熱を加えて、施療予定部位を温める(
図12(B)参照)。背中の施療予定部位に沿ったヒータ31の加熱面から広く一様に熱を加えられることで、施療予定部位を短時間に効率よく且つ温度分布を生じさせることなく一様に温めることができる。
【0082】
そして、マッサージコースに沿った揉み玉のマッサージ動作や背中用エアセル73のマッサージ動作、あるいは補助エアセルの給排気を繰り返すことによるマッサージ動作の開始に合わせて、この背中の施療予定部位に対するヒータ31の加熱動作を停止させると共に、補助エアセル33から空気を流出させて、補助エアセル33を収縮状態とする。所定時間温められた背中の施療予定部位に対し、背中用エアセル73の給排気による及び/または揉み玉によるマッサージ動作が実行されることとなる。なお、補助エアセル33の収縮やヒータ31の加熱停止はマッサージ動作の開始に合わせて行われる必要はない。
【0083】
また、補助エアセル33は給気状態を維持している時は押し付け動作となるが、一旦収縮させた場合、再度給排気を繰り返せばマッサージ動作となる。
【0084】
続いて、制御部82は、この背中へのマッサージ中、マッサージコースで指定された次のマッサージ動作対象部位、例えば、腰、に対し、あらかじめ設定されたマッサージ動作開始時点の所定時間前から、対応する位置のヒータ、すなわち腰位置のヒータ32による加熱を開始し、また同時に補助エアセル34に空気を流入させて膨張させ、補助エアセル34で腰用エアセル74ごとヒータ32を押して、ヒータ32の加熱面を被施療者の腰の施療予定部位に沿わせた状態とする。
【0085】
実行中の背中位置でのマッサージ動作が終了し、次の腰位置において、腰用エアセル74によるマッサージが開始されるまで、ヒータ32による加熱が継続されると共に補助エアセル34の膨張が維持され、ヒータ32加熱面各部から腰の施療予定部位に熱を加えて、施療予定部位を温める(
図13(A)参照)。腰の施療予定部位に沿ったヒータ32の加熱面からも広く一様に熱を加えられることで、腰の施療予定部位についても効率よく且つ温度分布を生じさせることなく一様に温めることができる。
【0086】
背中位置でのマッサージの場合と同様、腰用エアセル74によるマッサージの開始に際して、ヒータ32の加熱動作は停止されると共に、補助エアセル34から空気が流出させられ、補助エアセル34は収縮状態となる。そして、所定時間温められた腰の施療予定部位に対し、腰用エアセル74によるマッサージが実行される(
図13(B)参照)。
【0087】
こうして、マッサージコースに沿って、部分的に実行されるマッサージの施療部位が順次変りながら、それぞれの部位にマッサージ動作が行われる間、前記同様に、マッサージが実行される前の施療予定部位に対し、補助エアセル33、34の膨張を伴ってこの施療予定部位に沿った状態となったヒータ31、32による加熱動作が繰返され、このヒータ31、32による加熱で十分温まった状態の施療予定部位に対して、マッサージが行われることとなる。ただし、マッサージコースで指定される最後のマッサージ動作が開始すると、次のマッサージの施療予定部位が存在しないことに伴い、それ以降は加熱に係る動作は実行されない。
【0088】
このように、本実施形態に係るマッサージ機においては、加熱手段としてのヒータ31、32を、施療予定部位へ熱を加える加熱面も含む全体で、押圧手段をなす補助エアセル33、34で押して、ヒータ31、32を施療予定部位に沿った形状に変形させ、このヒータ31、32の加熱面を施療予定部位に沿わせた状態で、加熱面から施療予定部位に熱を加えることにより、施療予定部位に沿ったヒータ31、32の加熱面から一様に施療予定部位に熱を伝えることができ、マッサージの直前に施療予定部位を効率よく温められ、マッサージ効果の発現を促せる。
【0089】
なお、前記実施形態に係るマッサージ機においては、熱を発生させるヒータ31、32を背もたれ部93における施療用のエアセル近傍に配設し、背もたれ部93にもたれた被施療者の各エアセルによる施療予定部位にヒータ31、32で熱を加える構成としているが、これに限らず、座部92や脚支持部95における施療用のエアセル近傍にもヒータ等の加熱手段を配設し、座部92や脚支持部95に面する被施療者の施療予定部位に加熱手段で熱を加えた後、マッサージを実行する構成とすることもできる。
【0090】
また、前記実施形態に係るマッサージ機においては、施療用の背中用エアセル73と腰用エアセル74の背もたれ部93表面側にそれぞれ配設したヒータ31、32を、補助エアセル33、34で押し、施療用の各エアセルによる施療予定部位にヒータ31、32を沿わせる構成としているが、これに限らず、前記第1の実施形態で示したような、背もたれ部93における揉み玉61の通る中央の領域に隣接する位置にヒータ35、36を配設する場合に、
図14に示すように、ヒータ35、36に対応させて補助エアセル37、38を配置し、マッサージ前に施療予定部位の隣接部位をヒータ35、36で温める際に、ヒータ35、36を補助エアセル37、38で押して、前記施療予定部位の隣接部位にヒータ35、36を沿わせる構成とすることもでき、揉み玉61によるマッサージの場合も、施療予定部位の隣接部位に沿ったヒータ35、36から広く一様に熱を加えられることとなり、間接的ながら施療予定部位にも熱が伝わりやすくなり、施療予定部位をより短時間に効率よく温められる。
【0091】
さらに、この場合において、前記第2の実施形態で示したような、ヒータ35、36に接触する伝熱体35a、36aを設ける構成(
図15参照)であってもよく、ヒータ35、36を補助エアセル37、38で押して、施療予定部位の隣接部位にヒータ35、36を沿わせる際に、施療予定部位に重なる伝熱体35a、36aも、ヒータ35、36の動きに合せて緊張して、施療予定部位に沿った状態とすることができ、伝熱体35a、36aを施療予定部位にさらに近付けつつ伝熱体35a、36a各部から偏り無く均等に熱を伝えられることとなり、伝熱体35a、36aで施療予定部位を短時間に効率よく且つ温度分布を生じさせることなく一様に温められる。
【0092】
また、補助エアセルを上述の背中用エアセル73と腰用エアセル74と同様にマッサージ動作と押し付け動作のいずれをも実行できるものとしても良い。
この場合、補助エアセルが給気状態を維持している動作を押し付け動作とし、給排気を少なくとも2回以上繰り返す動作をマッサージ動作とする。
【0093】
(本発明の第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係るマッサージ機を前記
図16ないし
図19に基づいて説明する。
前記各図において、本実施形態に係るマッサージ機4は、前記第3の実施形態同様、基台部91と、座部92と、背もたれ部93と、肘掛部94と、脚支持部95と、ヒータ41、42と、リモコン81と、制御部82とを備える一方、異なる点として、背もたれ部93の背中用エアセル73と腰用エアセル74にそれぞれ重なる位置に配設されるヒータ41、42が、空気の流入出で膨張、収縮するエアセル構造とされて前記押圧手段の役目も果し、ヒータ41、42による加熱を行う際、背もたれ部93表面側に近い部位に配置された加熱面41a、42aを、膨張に伴って被施療者の施療予定部位に向けて押し、施療予定部位の表面に沿わせる構成を有するものである。
【0094】
なお、マッサージ機4における背もたれ部93でのヒータ41、42の構造と補助エアセルを省略した点以外の各部の構成は、前記第3の実施形態と同様のものであり、説明を省略する。
【0095】
本実施形態では、背中用エアセル73と腰用エアセル74がマッサージ動作と押し付け動作のいずれをも実行できるものとしている。
また本実施形態では、ヒータ41、42も膨縮可能としているので、マッサージ動作と押し付け動作のいずれをも実行できる。ヒータ41、42、エアセル73、74はいずれの場合も給気状態を維持している動作を押し付け動作とし、給排気を少なくとも2回以上繰り返す動作をマッサージ動作とする。 前記ヒータ41、42は、空気の流入出で膨張、収縮する可撓性のあるエアセル構造を有し、背もたれ部93表面寄り部分を通電により発熱する加熱面41a、42aとされ、背もたれ部93内部で前記施療機構としての背中用エアセル73及び腰用エアセル74の、それぞれ背もたれ部93表面側となる位置に配設される構成である(
図17参照)。
【0096】
このエアセル構造をなすヒータ41、42は、全体として背中用エアセル73及び腰用エアセル74の押圧に対応して変形すると共に、空気の流入に伴うヒータ41、42自体の膨張に伴い、加熱面45aを内圧で押して背もたれ部93表面寄りに動かすことで、被施療者におけるマッサージ動作直前の施療予定部位に加熱面41a、42aを接近させ、これら加熱面41a、42aを施療予定部位の表面に沿った形状に変形させるものとなっている。
【0097】
こうしてエアセル構造のヒータ41、42が膨張し、加熱面41a、42aが内圧で押されて被施療者の施療予定部位に沿った状態となることで、マッサージ動作開始直前までの所定時間、施療予定部位に対し加熱面41a、42aの全域から一様に熱を加えることができ、施療予定部位を効率よく温めることができる。
【0098】
次に、本実施形態に係るマッサージ機におけるマッサージ動作と加熱の動作状態について説明する。前提として、前記第1の実施形態と同様、マッサージ機4が起動し、被施療者がマッサージ機4に着座した状態にあって、マッサージ動作開始前の準備動作等が完了し、さらに被施療者によりマッサージコース等の動作状態指示が入力されたものとする。
【0099】
制御部82では、前記第3の実施形態と同様、被施療者によるリモコン81の操作で選択された所定のマッサージコースやマッサージ動作について、その内容の情報がメモリ等より読出される。こうしてマッサージコース等の情報が得られると、制御部82は、マッサージを行うメカユニット60及び/又はエアセルをマッサージ準備状態とするのと同時に、マッサージコースで指定された最初のエアセルによるマッサージ動作の施療箇所に位置するヒータを通電状態として発熱、昇温させ、このヒータに近接している被施療者の施療予定部位をマッサージに先立って温める。
【0100】
例えば、マッサージコースで指定されたエアセルによるマッサージ動作が背中、腰と上から順に実行されるものである場合、背中用エアセル73にエアポンプ70で空気を流入出させられる状態となって、背中用エアセル73によるマッサージ動作が開始されるまで、被施療者の背中の施療予定部位に対応する背中位置のヒータ41による加熱を実行し、同時に、又は加熱開始前後に、エアセルであるヒータ41にエアポンプ70で空気を流入させて膨張させ、ヒータ41の加熱面41aを内圧で押して、加熱面41aを被施療者の背中の施療予定部位に接近させ、加熱面41aを背中の施療予定部位に沿わせた状態とし、このヒータ41の加熱面41a各部を通じて背中の施療予定部位に熱を加えて、施療予定部位を温める(
図18(B)参照)。背中の施療予定部位に沿ったヒータ41の加熱面41aから広く一様に熱を加えられることで、施療予定部位を短時間に効率よく且つ温度分布を生じさせることなく一様に温めることができる。
【0101】
そして、マッサージコースに沿った背中用エアセル73のマッサージ動作開始に合わせて、この背中の施療予定部位に対するヒータ41の加熱動作を停止させると共に、ヒータ41から空気を流出させてヒータ41を収縮状態とする。所定時間温められた背中の施療予定部位に対し、背中用エアセル73によるマッサージ動作が実行されることとなる。
【0102】
続いて、制御部82は、この背中へのマッサージ動作中、マッサージコースで指定された次のエアセルによるマッサージ動作の対象部位、例えば、腰、に対し、あらかじめ設定されたマッサージ動作の開始時点の所定時間前から、対応する位置のヒータ、すなわち腰位置のヒータ42による加熱を開始し、また同時にエアセル構造のヒータ42に空気を流入させて膨張させ、ヒータ42の加熱面42aを内圧で押して、加熱面42aを被施療者の腰の施療予定部位に沿わせた状態とする(
図19(A)参照)。
【0103】
実行中の背中位置でのマッサージ動作が終了し、次の腰位置において、腰用エアセル74によるマッサージ動作が開始されるまで、ヒータ42による加熱が継続されると共にヒータ42の膨張が維持され、ヒータ42の加熱面42a各部から腰の施療予定部位に熱を加えて、施療予定部位を温める。腰の施療予定部位に沿ったヒータ42の加熱面42aからも広く一様に熱を加えられることで、腰の施療予定部位についても効率よく且つ温度分布を生じさせることなく一様に温めることができる。
【0104】
背中位置でのマッサージ動作の場合と同様、腰用エアセル74によるマッサージ動作の開始に際して、ヒータ42の加熱動作を停止させると共に、ヒータ42から空気を流出させてヒータ42を収縮状態とする。そして、所定時間温められた腰の施療予定部位に対し、腰用エアセル74によるマッサージが実行される(
図19(B)参照)。
【0105】
こうして、マッサージコースに沿って、部分的に実行されるマッサージの施療部位が順次変りながら、それぞれの部位にマッサージ動作が行われる間、前記同様に、マッサージが実行される前の施療予定部位に対し、ヒータ41、42の膨張でこの施療予定部位に沿った状態となったヒータ41、42の加熱面41a、42aからの加熱が繰返され、このヒータ41、42による加熱で十分温まった状態の施療予定部位に対して、マッサージが行われることとなる。ただし、マッサージコースで指定される最後のマッサージ動作が開始すると、次のマッサージの施療予定部位が存在しないことに伴い、それ以降は加熱に係る動作は実行されない。
【0106】
このように、本実施形態に係るマッサージ機においては、加熱手段としてのヒータ41、42を、押圧手段と一体化したエアセル構造とし、施療予定部位へ熱を加える加熱面41a、42aを、空気流入によるヒータ41、42の膨張に伴って押し、施療予定部位に接近させ、加熱面41a、42aを施療予定部位に沿わせた状態で、加熱面41a、42aから施療予定部位に熱を加えることにより、施療予定部位に沿ったヒータ41、42の加熱面41a、42aから一様に施療予定部位に熱を伝えることができ、マッサージの直前に施療予定部位を効率よく温められ、マッサージ効果の発現を促せる。また、ヒータ41、42の加熱面41a、42aがエアセルをなすヒータ41、42の内圧で直接押されることで、加熱面41a、42aをより確実に施療予定部位に沿った状態とすることができ、加熱面41a、42aから施療予定部位への伝熱性能を向上させて、施療予定部位をより短時間に温められると共に、加熱面41a、42aを施療予定部位に沿わせる機構を簡略化できる。
【0107】
なお、前記実施形態に係るマッサージ機において、ヒータ41、42は空気の流入出で膨張、収縮するエアセル構造を有し、背もたれ部93表面寄り部分を通電により発熱する加熱面41a、42aとされる構成としているが、これに限らず、ヒータの加熱面をヒータの他部位と同様の構造として、通電による発熱等を特に生じさせない一方、エアセル構造のヒータ内に外部で温められた空気を流入させ、ヒータを膨張させながら加熱面を含むヒータ全体を温めて、ヒータの加熱面による施療予定部位の加熱を行える構成とすることもでき、ヒータとして熱を伝えつつ、ヒータ自体の膨張に伴い、加熱面を被施療者の施療予定部位に沿った形状として、前記実施形態同様に施療予定部位を効率よく温めることができる。
【0108】
以上本実施形態では、膨縮可能なヒータ41、42と膨縮可能な背中用エアセル73と腰用エアセル74を重ね合わせた実施形態を説明したが、ヒータ41、42が膨縮せずシート状であって、背中用エアセル73と腰用エアセル74がマッサージ動作と押し付け動作のいずれをも実行できるようにする実施形態や、ヒータ41、42の膨縮機能のみでマッサージ動作と押し付け動作のいずれをも実行し、背中用エアセル73と腰用エアセル74を省略する構成ももちろん考えられる。いずれの構成であっても、ヒータ41、42により加熱された背もたれカバー100を押し付けることが可能になるだけでなく、ヒータそのものを直接押し付けることが可能となるため、施療予定部位を直接十分に加熱することが可能となり都合が良い。
【0109】
また、上記各実施形態ではマッサージ動作、押し付け動作を実行するエアセルは背もたれ部93に配するものにおいて説明したが、脚用エアセル75、76に対しても実施可能である。
【0110】
なお、前記第1ないし第4の各実施形態に係るマッサージ機においては、椅子型のマッサージ機への適用例となっているが、これらに限られるものではなく、マッサージ機能の付いた他の機器、例えば、背もたれ部分や脚載せ部分が傾動可能なベッドタイプの機器等に、前記マッサージ前に施療予定部位又はその隣接部位を加熱手段で温める構成を適用するようにしてもかまわない。
【0111】
また、被施療者の身体の一部を加熱する実施形態として肩、背中、腰を例にあげて説明したが、腕や脚、臀部、大腿部に対しても同様の構成をとることが可能であることは言うまでもない。