(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6242515
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】構造物診断方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20171127BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
E01D22/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-14663(P2017-14663)
(22)【出願日】2017年1月30日
【審査請求日】2017年1月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390001993
【氏名又は名称】みらい建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510319890
【氏名又は名称】株式会社シーラム
(73)【特許権者】
【識別番号】508377554
【氏名又は名称】株式会社アートンシビルテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 武
(72)【発明者】
【氏名】足立 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 保之
(72)【発明者】
【氏名】金子 誓
【審査官】
小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−219014(JP,A)
【文献】
特開2014−62433(JP,A)
【文献】
特開2012−177569(JP,A)
【文献】
特開2015−119372(JP,A)
【文献】
特開2002−267432(JP,A)
【文献】
特開2002−156347(JP,A)
【文献】
特開2016−141239(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0007724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
E01D 1/00 − E01D 24/00
G01B 11/00 − G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上の移動手段に搭載されているとともに、当該移動手段の真上に向けた状態で同一直線上に並設された複数のカメラで構造物を同時に撮影する撮影工程と、
前記カメラで撮影した画像により前記構造物の表面の状況を確認する診断工程と、を備える構造物診断方法であって、
前記複数のカメラは、前記移動手段に固定された棒状の取付部材に固定されていることで、撮影方向調整機構を用いることなく前記移動手段に固定されており、
前記取付部材は、前記移動手段の進行方向に対して直交していて、
前記複数のカメラの撮影方向同士は平行で、かつ、一のカメラによって撮影する範囲が、隣接する他のカメラによって撮影する範囲の少なくとも一部と重なっており、
前記診断工程では、隣り合うカメラの画像同士を重ね合わせることで前記構造物の表面の状況を広範囲に確認することを特徴とする、構造物診断方法。
【請求項2】
前記撮影工程では、前記カメラによって動画を撮影するものとし、
前記診断工程では、前記動画から抽出した静止画同士を接続して大きな画像を作成することを特徴とする、請求項1に記載の構造物診断方法。
【請求項3】
前記診断工程では、前記画像同士の重なる部分において前記構造物の表面の状況を確認することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の構造物診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の劣化の診断方法として、構造物の表面に生じたクラックや欠損などを確認する方法が知られている。構造物のクラック等の確認は、目視による確認が一般的である。ところが、例えば港湾構造物等のように、測定者が近づくことが困難な場合には、目視により確認することができない場合がある。そのため、特許文献1には、小型船舶等に設置したカメラで撮影した画像により港湾構造物の劣化状況を診断する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−37361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の診断方法は、カメラの撮影方向を多方向に変化させてランダムに撮影することで撮影対象範囲の全体を撮影するものである。そのため、カメラの撮影方向を制御するための複雑な機構を備えている必要があり、装置が高価である。
【0005】
このような観点から、本発明は、簡易かつ安価に既存構造物の状況を確認することを可能とした構造物診断方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、
水上の移動手段に搭載されているとともに、当該移動手段の真上に向けた状態で同一直線上に並設された複数のカメラで
同時に構造物を撮影する撮影工程と、前記カメラで撮影した画像により前記構造物の表面の状況を確認する診断工程とを備える構造物診断方法であって、
前記複数のカメラは、前記移動手段に固定された棒状の取付部材に固定されていることで、ジンバル等の撮影方向調整機構を用いることなく前記移動手段に固定されており、前記取付部材は、前記移動手段の進行方向に対して直交していて、前記複数のカメラの撮影方向同士は平行で、かつ、一のカメラによって撮影する範囲が隣接する他のカメラによって撮影する範囲の少なくとも一部と重なっており、前記診断工程では隣り合うカメラの画像同士を重ね合わせることで前記構造物の表面の状況を広範囲に確認することを特徴とする。なお、前記撮影工程では、前記カメラによって動画を撮影するものとし、前記診断工程では、前記動画から抽出した静止画同士を接続して大きな画像を作成するのが望ましい。
【0007】
かかる構造物診断方法によれば、複数の画像をラップさせた状態で大きな画像を作成して構造物表面全体の状況を判断するため、より正確に構造物の表面を確認することができる。また、複数のカメラを利用して広範囲に撮影することができるため、カメラの撮影方向を操作するための複雑な機構を要しない。また、1回の走行または航行により広範囲に構造物の表面の状況を確認することができる。なお、前記診断工程において、前記画像同士の重なる部分において前記構造物の表面の状況を確認すれば、複数の画像を重ね合わせることによって凹凸が強調されるため、クラック等を確認しやすい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構造物診断方法によれば、簡易かつ安価に既存構造物の状況を確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の構造物診断方法の概要図である。
【
図3】複数のカメラの撮影範囲を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、桟橋1の保全点検を目的として、上部工(構造物)11の下面の劣化を診断する場合について説明する(
図1参照)。本実施形態の構造物診断方法は、上部工11の下面をカメラで撮影して画像を採取する撮影工程と、撮影工程で撮影した画像により上部工の下面の状況を確認する診断工程とを備えている。なお、
図1において、符号12は、上部工11を支持する下部工である。
【0011】
撮影工程では、
図2に示すように、複数のカメラ3,3,3が搭載された台船2を利用して、桟橋1の下側の水上から上部工11の下面を撮影する。本実施形態の台船2は、遠隔操作が可能な無人小型艇である。なお、台船2の構成、形状、大きさ等は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、台船2の操作は、離れた位置から台船2の位置を確認しながら行ってもよいし、台船2に搭載されたカメラ(図示せず)の画像を、陸上に設けられたモニターで確認しながら行ってもよい。また、台船2は、予め設定されたルートを自動的に走行するように制御してもよい。
【0012】
台船2に搭載された複数(本実施形態では3台)のカメラ3,3,3は、台船2の真上に向けた状態で、同一直線状に並設されている。カメラ3は台船に固定された棒状の取付部材4に固定されている。取付部材4の長手方向は、台船2の進行方向に対して直交している。また、カメラ3の撮影方向は、取付部材4の長手方向および台船2の進行方向に対して直交しており、各カメラの撮影方向同士は平行である。なお、台船2に設置されるカメラ3の台数は2台以上であれば限定されるものではない。
【0013】
上部工11の下面の撮影は、台船2を桟橋1の下側に侵入させた状態で行う。本実施形態では、動画を撮影するものとし、複数のカメラ3,3,3は同時に撮影を行うように制御されている。撮影工程では、台船2を移動させつつ、動画を撮影することで、上部工11の下面全体を撮影する。なお、撮影工程では、静止画を撮影してもよい。カメラ3は、遠隔操作により撮影するようにしてもよいし、予め設定されたプログラムに基づいて自動的に撮影するようにしてもよい。
【0014】
複数のカメラ3,3,3は、
図3に示すように、一のカメラ3によって撮影する範囲(撮影範囲31)の一部が、隣接する他のカメラ3によって撮影する範囲(撮影範囲32,33)の一部と重なるように配置されている。本実施形態では、隣り合うカメラ3同士の撮影範囲が65%以上重なり合っている(重複範囲30)。なお、隣り合うカメラ3同士の重なり合う範囲(重複範囲30)の割合は限定されるものではなく適宜設定すればよい。
【0015】
台船2は、上部工11を横断する方向で移動させつつ、複数回折り返すことで、上部工11の下面全体を撮影する。
【0016】
診断工程では、まず、撮影工程において撮影した動画から、1秒間に3枚の静止画を抽出する。次に隣接する撮影画像同士の重複する部分(重複範囲30)において、画像同士をラップさせることで、広範囲の画像(診断用画像)を作成する。なお、動画から抽出する静止画の1秒あたりの枚数は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0017】
診断用画像の作成には、SfM(Structure from Motion)技術を用いる。ここで、「SfM技術」とは、カメラの視点を変えながら撮影した複数の画像からそのシーンの3次元形状とカメラの位置を同時に復元する手法である。本実施形態では、Agisoft社製のPhotoscanを使用して、撮影画像から診断用画像を作成する。なお、診断用画像の作成に使用するソフトは、SfM技術を用いるものであれば限定されるものではない。
【0018】
以上、本実施形態の構造物診断方法によれば、台船2を利用して撮影した画像により構造物の劣化状況(ひびわれ、浸食、破損等)を確認するため、目視が困難な桟橋1の上部工11の下面を評価することができる。
【0019】
また、画像同士を重ね合わせることで、上部工の状態を広範囲に確認することができる。すなわち、1枚の画像のみでは影等により見えにくい部分に対しても、把握することができる。なお、撮影工程において撮影した画像は、撮影範囲が隣接する他の画像と65%以上重複しているため、上部工の下面の全体を重ね合わせた画像により確認することができる。また、異なる方向から撮影された画像同士を重ね合わせることで、上部工の下面の凹凸を3次元的に確認することができる。
【0020】
また、複数のカメラを利用して広範囲に撮影することで、カメラ3の撮影方向を制御する複雑な機構を必要としないため、コストの低減化が可能である。また、ジンバル等のカメラ3の撮影方向を一定に保つための機構も省略することで、設備の簡略化および費用の低減化を図ることができる。また、構造物の状況を1走行(1回の走行または1回の航行)により広範囲に確認することができる。
【0021】
また、画像同士を重ねることで、1枚の画像では不鮮明な部分を、他の画像を足し合わせることで補うことができる。すなわち、複数の画像データの画素を組み合わせることで、構造物表面の凹凸が強調されるため、クラック等を確認しやすくなる。なお、撮影工程において撮影した画像は、撮影範囲が隣接する他の画像と65%以上重複しているため、上部工の下面の全体を重ね合わせた画像により確認することができる。
【0022】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、桟橋1の上部工11の調査を行う場合について説明したが、構造物診断方法によって調査を行う対象の構造物は桟橋1に限定されるものではなく、例えば、橋梁等であってもよい。
【0023】
また、前記実施形態では、台船2を利用して水面から調査を行う場合について説明したが、移動手段は台船2に限定されるものではない。例えば、陸上であれば車輪等の走行手段を備えたものであってもよい。
また、カメラ3の向きは、必ずしも真上に限定されるものではなく、撮影の対象となる構造物に応じて適宜決定すればよい。
【符号の説明】
【0024】
1 桟橋
11 上部工(構造物)
2 台船(移動手段)
3 カメラ
【要約】
【課題】簡易かつ安価に既存構造物の状況を確認することを可能とした構造物診断方法を提案する。
【解決手段】同一直線上に並設された複数のカメラ3で上部工11の下面を撮影する撮影工程と、カメラ3で撮影した画像により上部工11の下面の状況を確認する診断工程とを備える構造物診断方法であって、一のカメラ3によって撮影する範囲が、隣接する他のカメラ3によって撮影する範囲の少なくとも一部と重なっており、診断工程では、隣り合うカメラ3の画像同士を重ね合わせることで上部工11の下面の状況を広範囲に確認する。
【選択図】
図1