(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の混繊交絡糸は、単糸繊度が0.2〜0.9dtexのポリエステル繊維Aと、単糸繊度が1.0〜5.0dtexのポリエステル繊維Bとから構成される混繊交絡糸であって、当該混繊交絡糸は、全体として仮撚捲縮を有し、かつ、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの質量比率(A/B)が20/80〜80/20の範囲にあり、当該混繊交絡糸の表面部分において、ポリエステル繊維Aによる突出部が形成されていることを特徴とする。以下、本発明の混繊交絡糸、当該混繊交絡糸の製造方法、当該混繊交絡糸を用いた織編物、及び当該織編物の製造方法について詳述する。
【0017】
1.混繊交絡糸
本発明の混繊交絡糸は、単糸繊度が0.2〜0.9dtexのポリエステル繊維Aと、単糸繊度が1.0〜5.0dtexのポリエステル繊維Bとから構成されている。本発明の混繊交絡糸においては、ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの繊度を、それぞれこのような特定の範囲に設定することにより、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとを十分に絡めさせることができる。この絡まりにより、本発明の混繊交絡糸の表面部分において、相対的に細いポリエステル繊維Aによる突出部が形成されやすくなる。なお、本発明において、ポリエステル繊維Aによる突出部とは、混繊交絡糸の表面部分において、ポリエステル繊維Aのループ、たるみなどによって、ポリエステル繊維Aが外側に突出した部分をいう。
【0018】
ここで、
図1は、本発明の混繊交絡糸の一例の光学顕微鏡写真である。
図1を参照しながら、本発明の混繊交絡糸の表面構造について説明する。本発明の混繊交絡糸の表面部分は、ポリエステル繊維Bに比して相対的に細いポリエステル繊維Aによる突出部が形成されている。混繊交絡糸の表面部分における微細な突出部は、相対的に細いポリエステル繊維Aにより形成されているため、突出部の上に水滴がのった場合に、水滴が混繊交絡糸の内側に移行しにくい。したがって、本発明の混繊交絡糸1を用いて織編物とすることにより、当該凸部において所謂ロータス効果を生じ、当該織編物に優れた撥水性能を発揮させることが可能となる。また、後述の通り、本発明の混繊交絡糸においては、特定の単糸繊度を有する2種類のポリエステル繊維A、Bを特定の質量比で混繊したものであるため、当該混繊交絡糸の表面部分には、相対的に細いポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合った部分が形成されている。そして、この細い繊維が絡み合った部分は、空気を保持しやすい層(空気保持層)を形成する。本発明の突出部は、ポリエステル繊維Aが絡み合ったこの部分から突出している。すなわち、ポリエステル繊維Aの突出部の内側(混繊交絡糸の内側)には、細いポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合って形成された上記の空気保持層が形成されているため、本発明の混繊交絡糸の内側に水分が移行しにくい。なお、本発明の混繊交絡糸において、当該空気保持層のさらに内側では、ポリエステル繊維A、Bとが絡み合っている。
【0019】
織編物に対して高い撥水性能を付与できる混繊交絡糸とする観点から、ポリエステル繊維Aの単糸繊度としては、好ましくは0.3〜0.7dtex程度が挙げられる。なお、ポリエステル繊維Aの単糸繊度が0.2dtex未満になると、繊維が細過ぎて開繊効果が乏しくなり、ポリエステル繊維Bとの絡み効果が小さくなって、交絡不良が発生しやすくなる。一方、ポリエステル繊維Aの単糸繊度が0.9dtexを超えると、繊維が剛直となり、ポリエステル繊維Bとの混繊が不十分となって、交絡不良が生じやすくなる。また、ポリエステル繊維Aが太くなると、織編物としたときの水滴との接触面積が大きくなり、さらに、繊維が剛直となるため、上述のような空気保持層が形成され難くなり、結果として所望の撥水性能が得られにくくなる。
【0020】
また、ポリエステル繊維Bの単糸繊度が1.0dtex未満になると、ポリエステル繊維Aによって形成された上記の微細な突出部を混繊交絡糸の表面部分において保持することが困難となり、上記のような空気保持層が形成されにくくなる。また、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの単糸繊度とが同程度になると、混繊交絡糸を織編物とした際に、織編物が柔らかくなり過ぎ、張り腰のないくたくたな織編物になりやすくなる。このような織編物は、衣料用織編物として好ましくない。一方、ポリエステル繊維Bの単糸繊度が5.0dtexを超えると、上記範囲の単糸繊度を有するポリエステル繊維Aと混繊した場合にも、織編物全体として硬い風合いのものとなる。このような織編物も、衣料用織編物として好ましくない。さらに、交絡状態が悪くなって、織編物の表面に、上記のような微細な突出部を形成し難くなり、織編物に対して高い撥水性能を付与することが難しくなる。
【0021】
本発明の混繊交絡糸は、全体として仮撚捲縮を有する。本発明の混繊交絡糸において、仮撚捲縮の度合い、すなわち捲縮率としては好ましくは10〜45%程度、より好ましくは20〜40%程度が挙げられる。混繊交絡糸が適度な捲縮率を有していることにより、混繊交絡糸の表面部分に上記のような微細な突出部を形成し易くなる。なお、混繊交絡糸の捲縮率が10%未満となる場合、捲縮率が低いため、混繊交絡糸の表面部分に上記のような突出部を形成することが難しく、織編物としたときに撥水性能を十分に発揮できなくなる。また、混繊交絡糸の捲縮率が45%を超えると、混繊交絡糸のストレッチ性能が強過ぎるため、高撥水性の織編物には適さない。すなわち、混繊交絡糸が伸びたときに平坦な構造となるため、上記のような突出部が維持されにくくなり、撥水性能が低下する。
【0022】
本発明において、混繊交絡糸の捲縮率は、以下の方法により測定して得られた値である。まず、枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回で混繊交絡糸をカセ取りした後、カセを室温下フリー状態でスタンドに一昼夜吊り下げる。次に、カセに0.000147cN/dtexの荷重を掛けたまま沸水中に投入し30分間湿熱処理する。その後、カセを取り出し、水分を濾紙で軽く取り、室温下フリー状態で30分間放置する。そして、カセに0.000147cN/dtexの荷重及び0.00177cN/dtex(軽重荷)を掛け、長さXを測定する。続いて、0.000147cN/dtexの荷重は掛けたまま、軽重荷に代えて0.044cN/dtexの荷重(重荷重)を掛け、長さYを測定する。その後、捲縮率(%)=(Y−X)/Y×100なる式に基づき、算出する。捲縮率の測定は、混繊交絡糸の5本について行い、それぞれの平均をその糸の捲縮率とする。
【0023】
本発明において、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの質量比率(A/B)は、20/80〜80/20の範囲にある。ポリエステル繊維Aの質量比率(混率)が20%未満の場合、混繊交絡糸におけるポリエステル繊維Aの割合が少なすぎるため、上記のような突出部を混繊交絡糸の表面部分に形成することが困難となり、織編物に高い撥水性能を付与することが難しくなる。一方、ポリエステル繊維Aの混率が80%を超えると、ポリエステル繊維Bの割合が少なすぎて、上記の突出部を表面部分に保持することが難しくなる。このため、微細な突出部が潰れ易くなり、織編物に対して高い撥水性能を付与することが困難となる。ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの質量比率(A/B)としては、好ましくは30/70〜70/30程度が挙げられる。
【0024】
本発明の混繊交絡糸においては、糸全体として混繊交絡されている。混繊交絡糸の交絡数としては、好ましくは90〜150個/m程度が挙げられる。交絡数が90個/m未満である場合、交絡状態が解け易くなり、混繊交絡糸の表面部分において上記のような微細な突出部を形成することが難しくなる場合がある。また、交絡状態が解け易くなると、織編物の製造工程において必然的に受けるガイド摩耗によって、糸条内部にズレが発生し、織編物の欠点を誘発しやすくなる場合がある。一方、交絡数が150個/mを超えると、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとが絡まり過ぎて、捲縮が消失し、上記の突出部も形成されにくくなるため、織編物に高い撥水性能を付与し難くなる。なお、本発明において、混繊交絡糸の交絡数は、JIS L1013 8.15フック法に基づいて測定して得られた値である。
【0025】
本発明の混繊交絡糸においては、上述の通り、(1)ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの2糸の単糸繊度を上記の特定の範囲に設定すること、(2)当該2糸の混率を上記の特定範囲にする設定すること、(3)当該2糸を混繊すること、及び(4)混繊交絡糸が全体として仮撚捲縮を有していることを特徴としている。本発明においては、これら構成の相乗効果として、混繊交絡糸の表面部分において、ポリエステル繊維Aによる微細な突出部が形成されている。そして、混繊交絡糸の表面部分に形成されたこのような突出部によって、当該混繊交絡糸を用いた織編物に対して高い撥水性能を付与することができる。さらに、上述のような空気保持層によって、撥水性能が高められる。すなわち、本発明の混繊交絡糸を用いることにより、織編物設計を特段工夫せずとも、従来公知の安価なフッ素系撥水剤などを使用するだけで、織編物に高い撥水性能を発揮させることができる。
【0026】
さらに、本発明の混繊交絡糸においては、ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの少なくとも一方に対して、適宜の添加剤を含有させることにより、混繊交絡糸に対して副次的な機能を付与することができる。なお、添加剤の使用により付与される機能果は、通常、添加剤の使用量(絶対量)が増えるほど増大するが、単糸繊度の大きなポリエステル繊維Bに添加する方が、ポリエステル繊維Aよりも多くの添加剤を含有させることができるため、添加剤はポリエステル繊維Bに含有させることが好ましい。このような添加剤としては、例えば、太陽光遮断物質、赤外線吸収物質などが挙げられる。添加剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明の混繊交絡糸が太陽光遮蔽物質を含む場合、織編物の涼感性を高めることができる。上述の観点から、本発明の混繊交絡糸においては、ポリエステル繊維Bが太陽光遮蔽物質を含むことが好ましい。なお、本発明において、太陽光遮蔽物質とは、例えば、太陽光の可視光線や赤外線を透過させないセラミックの微粒子であり、かつ、ポリエステル中に分散させることができるものであれば、特に制限されず、公知のものが使用できる。織編物に対して良好な涼感性を付与する観点から、好ましい太陽光遮蔽物質の具体例としては、酸化チタン、チタン酸カリウム、酸化亜鉛、インジウムチンオキサイド等の単体及びこれらの混合物などの可視光線や赤外線の吸収が少なく、反射率の高いものが挙げられる。また、太陽光遮蔽物質としては、これらの単体や混合物などを適宜の粒子の表面に被覆したものを用いてもよい。太陽光遮蔽物質は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
ポリエステル繊維Aまたはポリエステル繊維Bにおいて、繊維中の太陽光遮蔽物質の含有量としては、それぞれ、好ましくは3〜10質量%程度、より好ましくは3〜7質量%程度が挙げられる。なお、繊維中の太陽光遮蔽物質の含有量が3質量%未満の場合、所望の涼感性を得られ難い。また、繊維中の含有量が10質量%を超えると、繊維の紡糸性が低下する傾向にある。また、繊維断面を同心芯鞘型とし、芯部及び鞘部に含まれる添加剤の量に差を設けてもよい。例えば、上記の太陽光遮蔽物質の場合では、鞘部に含まれる太陽光遮蔽物質の量を0.8質量%以下とすると同時に、繊維全体では太陽光遮蔽物質が3〜10質量%程度含まれるようにするとよい。鞘部の含有量を減らすことにより、後述の複合仮撚工程や、織編物を製造する工程においてガイド摩耗を受けにくくなり、糸切れや毛羽が発生しにくくなる。
【0029】
また、本発明の混繊交絡糸が赤外線吸収物質を含む場合、織編物の保温性を高めることができる。上述の観点から、本発明の混繊交絡糸においては、ポリエステル繊維Bが赤外線吸収物質を含むことが好ましい。本発明において、赤外線吸収物質とは、吸収した赤外線を熱に変換できる微粒子であり、かつ、ポリエステル中に分散させることができるものであれば、特に制限されず、公知のものが使用できる。織編物に対して良好な保温性を付与する観点から、好ましい赤外線吸収物質の具体例としては、炭化ジルコニウム、炭化ケイ素、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジュームなどが挙げられる。赤外線吸収物質は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
ポリエステル繊維Aまたはポリエステル繊維Bにおいて、繊維中の赤外線吸収物質の含有量としては、それぞれ、好ましくは0.5〜5質量%程度が挙げられる。なお、繊維中の赤外線吸収物質の含有量が0.5質量%未満の場合、所望の保温性が得られ難い。また、繊維中の含有量が5質量%を超えると、繊維の紡糸性が低下する傾向にある。また、赤外線吸収物質を使用する場合においても、繊維断面を同心芯鞘型とし、芯部及び鞘部における含有量に差を設けてもよい。この場合、芯部に含まれる赤外線吸収物質の量を好ましくは5〜25質量%程度、より好ましくは7〜17質量%程度とし、同時に繊維全体では赤外線吸収物質が0.5〜5質量%程度含まれるようにするとよい。鞘部の含有量を減らすことにより、後述の複合仮撚工程や、織編物を製造する工程においてガイド摩耗を受けにくくなり、糸切れや毛羽が発生しにくくなる。
【0031】
なお、太陽光遮蔽物質または赤外線吸収物質のいずれを用いる場合であっても、繊維断面を同心芯鞘型とするときは、その芯鞘質量比率(芯/鞘)は、10/90〜90/10程度の範囲であることが好ましく、20/80〜80/20程度の範囲であることがより好ましい。
【0032】
一般に、繊維は太くなれば剛直となり、細ければしなやかになるが、本発明においては、このような繊維の特性を利用し、後述の複合仮撚り工程及び混繊交絡工程において、相対的に太いポリエステル繊維Bの間に生じる大きな空隙に、相対的に細いポリエステル繊維Aを入り込ませることにより、ポリエステル繊維Aを混繊交絡糸の表面部分において突出させる。すなわち、本発明の混繊交絡糸においては、混繊交絡糸を構成する上記のポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bとが上記の特定範囲の単糸緯度を有すること、これら2種類の繊維の混率が上記特定の範囲に設定されていること、さらに繊交絡糸が全体として仮撚捲縮を有していることにより、上記のような特殊な表面構造が形成されており、織編物に対して優れた撥水性能を付与することができる。
【0033】
2.混繊交絡糸の製造方法
本発明の混繊交絡糸は、以下の工程を備える製造方法により製造することができる。
単糸繊度が1.5〜6.5dtex、伸度が100〜160%のポリエステル高配向未延伸糸Bを延伸倍率1.1〜1.4倍で延伸する延伸工程
延伸工程で延伸されたポリエステル高配向延伸糸Bと、単糸繊度が0.4〜1.3dtex、伸度が80〜110%のポリエステル高配向未延伸糸Aとを、加工速度100〜700m/分、延伸倍率1.10〜1.30倍の条件で複合仮撚りする複合仮撚り工程
複合仮撚り工程で得られた複合仮撚糸を、流体ノズルを用いて、エアー圧0.1〜0.6Mpa、オーバーフィード率1〜4%の条件で混繊交絡する混繊交絡工程
【0034】
本発明の混繊交絡糸の製造方法においては、ポリエステル高配向未延伸糸B(混繊交絡糸を構成するポリエステル繊維Bとなる)をあらかじめ特定の延伸倍率にて延伸する延伸工程を行う。これにより、ポリエステル高配向未延伸糸A(混繊交絡糸を構成するポリエステル繊維Aとなる)及びポリエステル高配向未延伸糸Bの伸度は、ほぼ同じになるか、ポリエステル高配向未延伸糸Bの方がやや低くなる。なお、伸度の高い方が、後の複合仮撚り工程において、糸長の長いものとなる。その後、延伸工程で延伸されたポリエステル高配向延伸糸Bと、混繊の相手方となるポリエステル高配向未延伸糸Aとを引き揃えて延伸しながら複合仮撚りする複合仮撚り工程を行い、複合仮撚糸を得る。複合仮撚糸においては、ポリエステル高配向延伸糸Aが外側(表面側)に多く配される。そして、引き続き複合仮撚糸を混繊交絡する混繊交絡工程を行うことにより、本発明の混繊交絡糸が得られる。このように製造される本発明の混繊交絡糸では、上述の通り、ポリエステル繊維Aが、混繊交絡糸の表面部分において突出している。以下、本発明の混繊交絡糸の製造方法について詳述する。
【0035】
本発明の製造方法においては、まず、ポリエステル高配向未延伸糸A及びポリエステル高配向未延伸糸Bを準備する。本発明の製造方法の各工程を経ることにより、ポリエステル高配向未延伸糸Aが、本発明の混繊交絡を構成する上記のポリエステル繊維Aとなり、ポリエステル高配向未延伸糸Bが、本発明の混繊交絡を構成する上記のポリエステル繊維Bとなる。
【0036】
ここで、ポリエステル高配向未延伸糸とは、ポリエステルポリマーを2000〜4000m/分程度の速度で紡糸して巻き取られたマルチフィラメント糸をいう。ポリエステルポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を単独で用いたり、複数併用することができる。また、ポリエステルポリマーは、共重合ポリエステルであってもよい。共重合成分としては、イソフタル酸、5−アルカリイソフタル酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸;ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロへキサンジオールなどの脂肪族または脂環式ジオール;P−ヒドロキシ安息香酸などの共重合成分が挙げられる。ポリエステルポリマーは、必要に応じて、艶消し剤、安定剤、難燃剤、着色剤等の改質剤を含んでいてもよい。ポリエステル高配向未延伸糸は、複数の高配向未延伸繊維が束になって構成されており、例えば、繊維断面を同心芯鞘型とする場合には、芯部、鞘部それぞれに配されるポリマーの相溶性を考慮して、両者のポリエステルポリマーを同一のものとするのが好ましい。
【0037】
ポリエステル高配向未延伸糸Aは、単糸繊度が0.4〜1.3dtexで、伸度が80〜110%であることが好ましい。ポリエステル高配向未延伸糸Aの単糸繊度が0.4dtex未満では、単糸が細過ぎて開繊効果が乏しくなり、後述のポリエステル高配向未延伸糸Bとの十分な混繊が難しくなって、交絡不良が生じ易くなる。その結果、上述した微細な突出部が混繊交絡糸の表面部分に形成され難くなる。また、糸切れや毛羽も発生し易くなるため好ましくない。一方、ポリエステル高配向未延伸糸Aの単糸繊度が1.3dtexを超えると、糸条内に大きな空隙ができやすく、ポリエステル高配向未延伸糸Bと十分に混繊し難くなり、交絡不良が生じ易くなる。その結果、上述した微細な突出部が混繊交絡糸の表面部分に形成され難くなる。このように、原料となるポリエステル高配向未延伸糸Aの単糸繊度が所定範囲を外れると、後の工程で混繊が十分に促進されず、上述した微細な突出部が混繊交絡糸の表面部分に形成され難くなって、織編物に所望の撥水性能を付与し難くなる。
【0038】
ポリエステル高配向未延伸糸Aの伸度が80%未満である場合、後述の複合仮撚り工程において、糸切れが多発するおそれがある。一方、伸度が110%を超える高配向未延伸糸を得ようとしても、製造時に糸切れや品質低下等が発生して、安定供給が難しくなる。
【0039】
一方、ポリエステル高配向未延伸糸Bは、単糸繊度が1.5〜6.5dtexで、伸度が100〜160%であることが好ましい。ポリエステル高配向未延伸糸Bの単糸繊度が1.5dtex未満の場合、混繊交絡糸となった後において、ポリエステル繊維Aからなる突出部を強固に保持することができず、突出部が潰れ易くなる。しかも、糸条全体が細くなることで、織編物の風合いが張り腰感に乏しいものとなる。また、単糸繊度が6.5dtexを超えると、交絡状態が悪くなる。さらに、織編物の風合いとして適度なふくらみ感が不足して、硬い風合いのものしか得られず好ましくない。
【0040】
また、ポリエステル高配向未延伸糸Bの伸度が100%未満になると、混繊交絡糸を構成するポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの糸長がほぼ同じとなり、上述した突出部が混繊交絡糸の表面部分に形成され難くなる場合がある。本発明における複合仮撚糸では、ポリエステル繊維Aがポリエステル繊維Bよりも長いため、ポリエステル繊維Aが表面側に多く配置される。このため、上述した突出部が混繊交絡糸の表面部分に形成されやすくなる。また、伸度が160%を超えると、交絡糸の伸度が高くなり過ぎて、織編物の寸法が変化し易くなるため、品質安定の観点から好ましくない。
【0041】
なお、本発明の混繊交絡糸において、上述の添加剤を添加する場合、ポリエステル高配向未延伸糸Aまたはポリエステル高配向未延伸糸Bに上述の添加剤を含有させる。ただし、添加剤の種類に応じて好ましい紡糸条件は一般に変動するものであるから、それらの好ましい紡糸条件により得られたポリエステル高配向未延伸糸Bの糸質も多少変動することになる。例えば、ポリエステル高配向未延伸糸Bに太陽光遮蔽物質を含有させた場合の伸度は、好ましくは130〜160%程度であり、赤外線吸収物質を含有させた場合は、好ましくは100〜150%程度である。
【0042】
次に、本発明の混繊交絡糸の製造方法を、
図2の模式図を参照しながら詳述する。まず、上記のポリエステル高配向未延伸糸A、BのパッケージYA、YBをそれぞれクリールに仕掛ける。次にポリエステル高配向未延伸糸Bを供給ローラ1へ導入する。そして、供給ローラ1と第1引取ローラ2との間でポリエステル高配向未延伸糸Bを延伸する延伸工程を行う。すなわち、単糸繊度が1.5〜6.5dtex、伸度が100〜160%のポリエステル高配向未延伸糸Bを延伸倍率1.1〜1.4倍で延伸する。
【0043】
延伸工程において、延伸倍率としては、好ましくは1.1〜1.4倍程度である。これにより、ポリエステル高配向未延伸糸Aとポリエステル高配向未延伸糸A、Bの伸度は、ほぼ同じになるか、ポリエステル高配向未延伸糸Aの伸度の方がやや高くなる。ここで、延伸工程における延伸倍率とは、供給ローラ1の表面速度と第1引取ローラ2の表面速度との比(延伸倍率=第1引取ローラ2の表面速度/供給ローラ1の表面速度)をいう。伸度の高い方が、後の複合仮撚り工程で糸長が長くなり、後に糸長の長い繊維が混繊交絡糸の外側(表面側)へ配され易くなる。その結果、上述の通り、ポリエステル繊維Aによる突出部を混繊交絡糸の表面に形成しやすくなる。また、当該突出部は、混繊交絡糸の表面部分に形成されたポリエステル繊維Aが緩く絡み合った部分のから突出する。なお、ポリエステル高配向未延伸糸Bを延伸することにより、その単糸繊度をより好ましいものに微調整できると共に、ポリエステル高配向未延伸糸A、Bの混率もより好ましいものに微調整することもできる。ポリエステル高配向未延伸糸Bの延伸は、室温中で行ってもよいし、ヒーターなどを設置して熱を与えながら行ってもよい。
【0044】
ポリエステル高配向未延伸糸Bの延伸倍率が1.1倍未満の場合、混繊交絡糸全体の伸度が高くなり、特に織物用として使用した場合、後加工(例えば、製織工程の後に行う、染色加工なども含む一連の加工)において、必然的に付加される張力により混繊交絡糸の物性が変動しやすくなり、織編物の品位品質面でのトラブル発生の要因となり得る。一方、当該延伸倍率が1.4倍を超えると、後の複合仮撚り工程において、ポリエステル繊維Aの糸長がポリエステル繊維Bに比して長くなり過ぎる傾向にあり、複合仮撚り工程において糸切れが多発しやすくなる。
【0045】
次に、延伸後のポリステル高配向未延伸糸Bと、上記ポリエステル高配向未延伸糸Aとを、所定条件下で複合仮撚りする複合仮撚り工程を行う。すなわち、延伸工程で延伸された前記ポリエステル高配向延伸糸Bと、単糸繊度が0.4〜1.3dtex、伸度が80〜110%のポリエステル高配向未延伸糸Aとを、加工速度100〜700m/分、延伸倍率1.10〜1.30倍の条件で複合仮撚りする。具体的には、
図2に示すように、上記で延伸されたポリエステル高配向延伸糸Bと、ポリエステル高配向未延伸糸Aとを第1引取ローラ2へ同時に導入し、ヒーター3、仮撚具4を経て、第2引取ローラ5から引き出すことで、複合仮撚糸Cを得る。ここで、
図2の第1引取ローラ2と第2引取ローラ5との間が複合仮撚域となる。具体的には、第1引取ローラ2と仮撚具4との間が加撚域T1となり、仮撚具4と第2引取ローラ5との間が解撚域T2となる。
【0046】
複合仮撚り工程においては、加工速度及び延伸倍率を各々特定することが好ましい。加工速度とは、第2引取ローラ5から糸を引き出すときの糸速をいい、すなわち、第2引取ローラ5の表面速度をいう。加工速度(糸速)としては、上記のとおり100〜700m/分程度が好ましい。糸速が上記範囲を下回ると、複合仮撚糸Cの捲縮が強くなり過ぎる傾向にある。捲縮が強くなると、ストレッチ性能が強く発現するため、高撥水織編物の製造には適さない。また、複合仮撚糸Cのストレッチ性能が強くなると、後に得られる混繊交絡糸のストレッチ性能も強くなり、混繊交絡糸が容易に伸ばされる。混繊交絡糸が伸びたときに、混繊交絡糸が平坦な形状となり、混繊交絡糸の表面における上記の微細な突出部が失われる。このため、糸速が上記範囲を下回り、捲縮が強くなると、織編物に所望の撥水性能を付与し難くなる。一方、糸速が上記範囲を上回ると、複合仮撚糸Cの捲縮が弱くなる傾向にある。捲縮が弱くなると、ポリエステル繊維に十分なクリンプが付与されなくなり、ポリエステル繊維の形状が平坦に近くなる。したがって、ポリエステル繊維Aが混繊交絡糸の表面部分において、突出部が形成され難くなる。よって、織編物に所望の撥水性能を付与しにくくなる。
【0047】
複合仮撚り工程において、延伸倍率は、1.10〜1.30倍程度の範囲とすることが好ましい。複合仮撚り工程における延伸倍率とは、第1引取ローラ2の表面速度と第2引取ローラ5の表面速度との比(延伸倍率=第2引取ローラ5の表面速度/第1引取ローラ2の表面速度)をいう。当該延伸倍率が1.10倍未満では、ポリエステル繊維Aの糸長をポリエステル繊維Bに比して適度に長くすることができず、また複合仮撚糸Cの品質安定化も難しくなる。また、延伸倍率が1.30倍を超えると、複合仮撚り工程において、毛羽や糸切れが多発する要因となるため、好ましくない。本発明では、複合仮撚糸Cにおいて、ポリエステル繊維Aの糸長をポリエステル繊維Bの糸長よりも、5%以下程度長くすることが好ましく、1〜4%程度長くすることがより好ましい。5%を超えてポリエステル繊維Aがポリエステル繊維Bよりも長くなると、複合仮撚糸の嵩高性が増し、ひいては突出部が大きくなり、撥水性能が低下するので好ましくない。
【0048】
複合仮撚り工程においては、上記の延伸後のポリエステル高配向延伸糸Bと、上記のポリエステル高配向未延伸糸Aとを、好ましくは所定加工速度及び所定延伸倍率の下、適宜の仮撚具により複合仮撚りする。仮撚りの方式は、一般に、スピンドル方式とフリクション方式とに大別される。本発明では、これらのいずれの方式も採用できる。一般に、仮撚具4としては、スピンドル方式の場合はピンタイプのものを使用し、フリクション方式の場合はディスクタイプのものを使用する。
【0049】
スピンドル方式とフリクション方式とでは、好ましい仮撚条件が若干異なる。例えば、糸速については、スピンドル方式では100〜200m/分程度が好ましく、フリクション方式では200〜700m/分程度が好ましい。
【0050】
また、ヒーター温度は、スピンドル方式では150〜200℃程度が好ましい。一方、フリクション方式では、接触式ヒーターで170〜200℃程度、点接触式ヒーターで200〜300℃程度の範囲がそれぞれ好ましい。ヒーター温度が上記範囲を下回ると、いずれの方式であっても十分な捲縮が付与し難く、また、上記範囲を上回ると、いずれの方式であっても繊維同士が融着し易くなり、繊維が十分開繊しなくなるので、後に混繊し難くなる。
【0051】
さらに、スピンドル方式とフリクション方式とでは、加撚・解撚の機構も若干異なる。スピンドル方式では、スピンドルの回転によってピンタイプの仮撚具4が回転し、糸が加撚される。このときの加撚の度合い、すなわち仮撚係数を20000〜34000とするのが好ましく、22000〜30000とするのがより好ましい。仮撚係数とは、K=T×D
1/2なる式で算出されるものである。なお、式中において、Kは仮撚係数、Tは仮撚数(T/M)、Dは複合仮撚糸の総繊度(dtex)である。仮撚数とは、T=スピンドル回転数(rpm)/第2引取ローラ5の表面速度(m/分)で算出されるものである。仮撚係数が20000未満になると、捲縮が弱くなり、複合仮撚糸を構成するポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bに十分なクリンプを付与し難くなる。このため、混繊交絡糸の表面部分における上述の微細な突出部が形成されにくくなる。一方、仮撚係数が30000を超えると、クリンプ形状が緻密になり過ぎて、混繊交絡糸の表面部分における上述の空気保持層が形成されにくくなる。
【0052】
他方、フリクション方式では、一般に、加撚の度合いを仮撚係数で管理するのではなく、K値及びディスク枚数で管理する。これは、両方式の加撚・解撚機構の違いによる。K値とは、解撚張力(F2)と加撚張力(F1)との比(F2/F1)をいい、F2とはディスクを通過した直後の糸張力を、F1とはディスクへ導入される直前の糸張力をいう。フリクション方式では、ディスクの回転により撚りがかかる。したがって、加撚の度合いは、ディスクスピードとディスク枚数とにより決定づけられることになる。ただし、ディスクスピードを直接的に管理することは、工程管理上あまり効率的とはいえないため、ディスクスピードの変動によりK値が変動する点に鑑み、K値を管理することが一般に効率的であるとされている。
【0053】
フリクション方式において、ディスクとしては、一般にポリウレタン製のものが使用される。ディスク枚数としては、一般に5〜7枚が好ましく、ディスクの厚さとしては5〜10mmが好ましい。また、K値としては、0.6〜1.2が好ましい。K値が0.6未満になると、糸切れが増えることに加え、毛羽の多い複合仮撚糸となる場合がある。一方、1.2を超えると、サージングが生じやすくなる。なお、サージングとは、加撚された撚りが解撚域で解かれず撚りが残った状態をいう。
【0054】
複合仮撚り工程の後、複合仮撚糸Cは、第2引取ローラ5によって流体ノズル6へ導かれ、流体ノズル6を用いて混繊交絡する。すなわち、複合仮撚り工程で得られた複合仮撚糸を、流体ノズルを用いて、エアー圧0.1〜0.6Mpa、オーバーフィード率1〜4%の条件で混繊交絡する。
【0055】
流体ノズルとしては、特に限定されないが、一般にインターレースノズルが好適である。混繊交絡の条件としては、上記の通り、エアー圧力を好ましくは0.1〜0.6Mpa程度、オーバーフィード率を好ましくは1〜4%程度に設定する。オーバーフィード率とは、流体ノズルへ導入される直前の糸速をV1、流体ノズルを通過した直後の糸速をV2としたとき、オーバーフィード率=(V1−V2)/V2×100(%)なる式で算出される。
図2の場合では、オーバーフィード率=(第2引取ローラ5の表面速度−第3引取ローラ7の表面速度)/第3引取ローラ7の表面速度×100(%)なる式で算出される。複合仮撚糸Cの外側にはポリエステル繊維Aが多く配されているので、これを所定条件で混繊交絡することでポリエステル繊維Aによる突出部を伴った上述の空気保持層が形成される。混繊交絡の条件が上記の範囲を外れると、ポリエステル繊維Aによる突出部が適度な大きさのものとならず、混繊交絡糸の表面部分に上述のような空気保持層が形成されにくくなる。
【0056】
混繊交絡糸は、第3引取ローラ7を通過した後、巻取ローラ8によりパッケージ9に捲き取られる。本発明の混繊交絡糸においては、目安として、交絡数が90〜150個/m程度の範囲にあると、適度な混繊交絡を有しているといえる。また、交絡数以外にも、適度な混繊交絡の目安として、捲縮変化率が所定範囲を満足していることが好ましい。すなわち、糸を混繊交絡すると、繊維が絡み合うため糸全体の捲縮率は低下するため、どの程度捲縮率が低下したかを知ることで、適度な混繊交絡の目安を知ることができる。本発明では、捲縮変化率が40〜70%の範囲にあることが好ましい。なお、捲縮変化率とは、捲縮変化率=(得られた混繊交絡糸の捲縮率)/(複合仮撚糸Cの捲縮率)×100(%)なる式で算出される。
【0057】
本発明において、捲縮変化率が40%未満では、交絡状態が強くなって、上記の微細な突出部が得られにくくなり、織編物に高い撥水性能を付与し難くなる。また、捲縮変化率が70%を超えると、交絡状態が解け易くなって、糸条内部にズレが発生したり、上記の微細な突出部が得られにくくなる。
【0058】
3.織編物
本発明の織編物は、上記混繊交絡糸を用いた織編物であり、従来公知の安価なフッ素系撥水剤などを使用することにより、織編物の構造を特段工夫せずとも、高い撥水性能を発揮することができる。以下、本発明の好ましい織編物について詳述する。
【0059】
本発明の織編物を構成する混繊交絡糸は、上述の通り、表面部分において、ポリエステル繊維Aの突出部が形成されているため、これを織編して得られる織編物においても、当該混繊交絡糸の突出部が表面部分に位置している。したがって、本発明の織編物では、大きな水滴は勿論、小さな水滴でも、当該突出部によって支えることができ、さらに上述の空気保持層の存在により水滴が織編物の内部へ移行することを効果的に抑制することができるため、所謂ロータス効果と同様の撥水性能が顕著に向上している。
【0060】
本発明の織編物の表面部分に形成された突出部が、どの程度微細であるかを知るには、KES−Fシステムによる織編物表面粗さの平均偏差(SMD)を測定することにより評価できる。本発明の織編物においては、当該KES−Fシステムによる織物表面粗さの平均偏差(SMD)が、3.0〜8.0μmの範囲にあることが好ましい。当該平均偏差(SMD)が3.0μm未満の場合、突出部が微細になり過ぎ、むしろ平坦な形状に近くなる。そうすると、水滴と織編物の表面との接触面積が大きくなり、水滴に十分な表面張力が作用し難くなる。その結果、織編物において、高い撥水性能が発揮され難い。一方、当該平均偏差(SMD)が8.0μmを超えると、突出部が大きくなり過ぎ、突出部の間に落ち易くなる。その結果、水滴が織編物の内部に移行し易くなり、所望の撥水性能が発揮されにくくなる。本発明の織編物においては、当該織編物中に本発明の混繊交絡糸を50質量%以上含ませることにより、平均偏差(SMD)を所定範囲に設定することができる。
【0061】
上述の通り、本発明の織編物においては、織編物を構成する混繊交絡糸の表面構造を特定のものとすることにより、織編物の撥水性能を高めることを特徴としており、従来公知の安価なフッ素系撥水剤などを使用することによっても、優れた撥水性能を発揮することができる。したがって、本発明の織編物において、撥水加工に使用される撥水剤の組成は特に制限されない。
【0062】
本発明の織編物に使用される撥水剤としては、作業性や価格などの点から、フッ素系撥水剤が好適である。具体的には、化学構造中にポリフルオロアルキル基(Rf基)を有するフッ素系化合物からなるフッ素系撥水剤が好適である。Rf基とは、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基をいう。Rf基の炭素数は2〜20個が好ましい。Rf基は直鎖構造でも分岐鎖構造でもよい。特に分岐鎖構造の場合、分岐鎖部分がRf基の末端部分に存在し、かつ炭素数1〜8程度の短鎖であることが好ましい。Rf基としては、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子に置換された基(パーフルオロアルキル基)が好ましい。
【0063】
フッ素系化合物としては、上記パーフルオロアルキル基を含有する重合体と、重合可能な他の重合性単量体とを公知の重合方法により重合した共重合体を好ましく使用することができる。他の重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、塩化ビニルなどが挙げられる。また、必要に応じて、アクリル系化合物、酢酸ビニル系化合物、メラミン系化合物などを適宜混合してもよい。
【0064】
本発明の織編物においては、フッ素系撥水剤として市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、旭硝子株式会社製「アサヒガード(商品名)」、日華化学株式会社製「NKガード(商品名)」などが挙げられる。フッ素系撥水剤としては、特に、環境保護の点からパーフルオロアルキル酸を含まないフッ素系撥水剤が好適である。フッ素系撥水剤は、水性エマルジョンの形態で使用することが好ましい。
【0065】
また、本発明の織編物においては、織編物を構成する混繊交絡糸の表面構造を上記特定のものとすることにより、織編物の撥水性能を高めることを特徴としているため、織編物の設計は、基本的に如何なるものでもよいが、より高い撥水性能を発揮する観点からは、織編物のカバーファクター(CF)を好ましくは1500〜3000程度、より好ましくは1800〜2800程度の範囲に設定する。カバーファクター(CF)が1500を下回ると、組織点の粗い織編物となるので、織編物内に空隙が増える。そうすると、その空隙に水滴が落ちる傾向にあるから、撥水性能の向上が期待できなくなる。一方、カバーファクター(CF)が3000を上回ると、組織点による拘束が強まることによって、上述の混繊交絡糸の表面部分における微細な突出部が失われる傾向にあり、撥水性能の向上が期待できなくなる。
【0066】
ここで、織編物のカバーファクター(CF)とは、織編物の粗密を数値化したものであり、以下の式により算出される。
CF=D
1/2×経糸密度(本/2.54cm)+E
1/2×緯糸密度(本/2.54cm)
[式中、Dは、経糸のトータル繊度を示す。Eは、緯糸のトータル繊度を示す。]
【0067】
また、織編物の組織としては、特に限定されず、適宜の組織を採用してよい。通常は、平織、綾織、朱子織がよく、必要に応じて多重組織を採用してもよい。
【0068】
本発明の織編物は、優れた撥水性能を有するものであるが、具体的には、水滴転がり角度が15度以下であることが好ましい。水滴転がり角度とは、ロータス効果のような撥水性能の優劣を評価する指標であり、本発明における優れた撥水性能とは、高いロータス効果を有することと同義である。水滴転がり角度とは、水平版上に取り付けた水平状の試料(織編物)に、0.2mLの水を静かに滴下し、その後水平版を静かに傾斜させ、水滴が転がり始めるときの角度をいう。水滴転がり角度が15度を超える場合は、実際に織編物を縫製し、製品としたとき、雨水等による水滴を、その水滴形状を崩さずに振り払うことが困難となることがある。例えば、本発明の織編物中に上記の混繊交絡糸を50質量%以上含有させ、かつ、カバーファクター(CF)を上記範囲に設定することにより、水滴転がり角度を15度以下に容易に設定することができる。
【0069】
4.織編物の製造方法
本発明の織編物は、上記の混繊交絡糸を製織編して生機を得た後、これを後加工及び撥水加工することにより得ることができる。製織編は、公知の織機、編機を用いて行えばよく、製織編に先立つ準備工程も公知の設備を使用すればよい。
【0070】
また、後加工では、まず、生機を精練・リラックスする。精練・リラックスは、80〜130℃の温度下で連続方式またはバッチ方式により行えばよい。通常は、100℃以下でバッチ方式により行うのが好ましく、特にジェットノズルを備えた高圧液流染色機を用いて行うのが好ましい。
【0071】
精練・リラックスした後は、織編物をプレセットする。プレセットは、通常、ピンテンターを用いて、170〜200℃で30〜120秒間乾熱処理する。プレセット後は、常法に基づいて染色し、その後、必要に応じてファイナルセットを行う。
【0072】
後加工した後は、織編物を撥水加工する。撥水加工では、まず、撥水剤を含む水溶液を調製する。次に、パディング法、スプレー法、キスロールコータ法、スリットコータ法などに基づき、上記後加工後の織編物に上記水溶液を付与し、105〜190℃で30〜150秒間乾熱処理すればよい。上記水溶液には、必要に応じて架橋剤、柔軟剤、帯電防止剤などを併せて含ませてもよい。撥水加工後は、撥水性能のさらなる向上のため、織編物をカレンダー加工してもよい。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0074】
実施例及び比較例において、1.混繊交絡糸の表面形状、2.高配向未延伸糸及び混繊交絡糸の単糸緯度、トータル繊度、3.捲縮率、4.高配向未延伸糸の伸度、5.混繊交絡糸の交絡数、6.複合仮撚糸の糸長差、7.織物表面粗さの平均偏差(SMD)、8.織物の撥水性能(水滴転がり角度)、9.織物の涼感性、10.織物の保温性は、それぞれ、以下の方法により測定、評価を行った。実施例及び比較例におけるこれらの測定及び評価結果は、表1に示す。
【0075】
1.混繊交絡糸の表面形状
光学顕微鏡(株式会社キーエンス製「マイクロスコープVHX−900」)を使用して、フリー状態で混繊交絡糸の表面形状を200倍で観察し、ポリエステル繊維Aによる突出部が形成され、かつ、混繊交絡糸の表面部分においてポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合って形成された空気が保持されやすい層状の部分(水滴が混繊交絡糸内部に移行し難くする機能を発揮する空気保持層)が形成されている場合を「良好」、そうでない場合を「不良」と評価した。
図1は、実施例1で得られた混繊交絡糸の表面部分の光学顕微鏡写真である。
【0076】
2.高配向未延伸糸及び混繊交絡糸の単糸緯度、トータル繊度
高配向未延伸糸及び混繊交絡糸の単糸緯度、トータル繊度は、それぞれ、JIS L1013 8.3.1の規定に基づいて測定した。
【0077】
3.捲縮率
まず、枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回で試料をカセ取りした後、カセを室温下フリー状態でスタンドに一昼夜吊り下げる。次に、カセに0.000147cN/dtexの荷重を掛けたまま沸水中に投入し30分間湿熱処理する。その後、カセを取り出し、水分を濾紙で軽く取り、室温下フリー状態で30分間放置する。そして、カセに0.000147cN/dtexの荷重及び0.00177cN/dex(軽重荷)を掛け、長さXを測定する。続いて、0.000147cN/dtexの荷重は掛けたまま、軽重荷に代えて0.044cN/dtexの荷重(重荷重)を掛け、長さYを測定する。その後、捲縮率(%)=(Y−X)/Y×100なる式に基づき、算出する。捲縮率の測定は、複合仮撚糸及び混繊交絡糸のそれぞれ5ずつについて行い、それぞれの平均をその糸の捲縮率とする。
【0078】
4.高配向未延伸糸の伸度
高配向未延伸糸の伸度は、JIS L1013 8.5.1に基づいて測定した。
【0079】
5.混繊交絡糸の交絡数
混繊交絡糸の交絡数(個/m)は、JIS L1013 8.15フック法に基づいて測定した。
【0080】
6.複合仮撚糸の糸長差
混繊交絡糸を得る過程で別途複合仮撚糸を採取し、物差しを備えた垂直台に複合仮撚糸を0.1g/dtexの荷重を掛けながら吊るし、上下1m間に黒マジックで2箇所目印を付ける。次に、上部目印の位置を固定しながら、複合仮撚糸をピンセットで丁寧にポリエステル繊維Aの繊維群とポリエステルBの繊維群とに分ける。その後、ポリエステル繊維A、Bの繊維群それぞれに0.1g/dtexの荷重を掛け、それぞれの繊維群の長さを測定する。その後、糸長差(%)=(ポリエステルAの繊維群の長さ−ポリエステルBの繊維群の長さ)/ポリエステルBの繊維群の長さ×100なる式に基づき、算出する。糸長差の測定は5本の複合仮撚糸について行い、その平均を糸長差とした。
【0081】
7.織物表面粗さの平均偏差(SMD)
自動化表面試験機(カトーテック株式会社製「KESFB4−AUTO−A」)を使用してSMDを測定した。まず、20cm四方の試験片を採取し、400gの張力をかけた試験片を上記試験機に設置した。次に、金属摩擦子を含めて50gの垂直方向の荷重を掛け、バネの接触圧により10gの力で摩擦子を接触させ、試験片を前後に30mm移動して、試験片の表面粗さの変動を計測した。測定は、WARP、WEFTの2方向で各3回行い、その平均値をSMDとする。SMDは、表面粗さの変動を示し、値が大きいほど突出部による凹凸があると判定できる。
【0082】
8.織物の撥水性能(水滴転がり角度)
水滴転がり角度は、水平版上に取り付けた水平状の試料(織物)に、0.2mLの水を静かに滴下し、その後水平版を静かに傾斜させ、水滴が転がり始めるときの角度を測定した。
【0083】
9.織物の涼感性
厚さ10mmの発泡ポリスチレン断熱ボードに10cm四方の窓を2つ設け、窓裏側をそれぞれ黒体布で塞ぎ、黒体布裏側中央にそれぞれ温度センサー(温度測定器:アンリン株式会社製「DATA COLLECTOR」)を設ける。その後、一方の窓の表側を測定試料(織物)で塞ぎ、他方の窓の表側を比較試料で塞ぐ。なお、比較試料とは、太陽光遮蔽物質を使用しなかったこと以外、測定試料と同様にして得た試料である。次に、測定試料を上にして断熱ボードを水平に置き、試料上部約25cmの位置にランプ(パナソニック株式会社製、屋内用レフランプ100形 100V90W仕様)を設置する。そして、2分間光照射した時点での黒体布の温度を測定する。測定回数は3回とし、その平均を黒体布温度とする。涼感性は、一般に黒体布温度が37℃を下回る場合に良好と判断できるため、黒体布温度が37℃未満の場合を「○」、37℃以上の場合を「×」と評価した。
【0084】
10.織物の保温性
厚さ10mmの発泡ポリスチレンボードに10cm四方の窓を2つ設け、一方の窓を測定試料(織物)、他方の窓を比較試料で表側からそれぞれ塞ぐ。なお、比較試料とは、赤外線吸収物質を使用しなかったこと以外、測定試料と同様にして得た試料である。そして、照度100000LUX、気温20℃の屋外において、両試料に対し太陽光が直射するようにボードを傾け、ボード裏面からNEC三栄株式会社製、赤外線熱画像装置「サーモトレーサTH7102(商品名)」を用いて両試料の温度が平衡に達するまで温度を測定する。試験は3回行い、その平均平衡温度で保温性を評価する。保温性は、測定試料の平均平衡温度と、比較試料の平均平衡温度との差で評価する。測定試料の温度は、比較試料の温度より3℃以上上回るのが好ましくは、4〜6℃上回るのがより好ましい。
【0085】
(実施例1)
伸度92%、単糸繊度0.54dtex、トータル繊度90dtex168fのポリエステル高配向未延伸糸Aを用意した。一方、繊維断面が同心芯鞘型でその質量比率(芯/鞘)が75/25であり、太陽光遮蔽物質として酸化チタンを芯部に5質量%、鞘部に0.3質量部それぞれ含有すると共に、繊維全体で酸化チタンを3.825質量%含む高配向未延伸繊維から構成される、伸度147%、単糸繊度2.7dtex、トータル繊度130dtex48fのポリエステル高配向未延伸糸Bを用意した。そして、ポリエステル高配向未延伸糸A、Bを
図2に示すような混繊交絡糸の製造方法に供した。仮撚具4としてディスクタイプのものを使用し、複合仮撚条件及び混繊交絡条件は下記の通りとすることにより、163dtex216fの混繊交絡糸を得た。
【0086】
<複合仮撚条件>
供給ローラ1の表面速度:339m/分
ポリエステル高配向未延伸糸Bの延伸倍率:1.25倍
第1引取ローラ2の表面速度:423.7m/分
ヒーター3の温度:(接触式ヒーター)190℃
撚り方向:Z方向
ディスクの構造:1−6−1
ディスクの厚さ:9mm
K値:1.0
仮撚時の延伸倍率:1.18倍
第2引取ローラ5の表面速度:500m/分
【0087】
<混繊交絡条件>
流体ノズル6:インターレースノズル
エアー圧力:0.1961MPa
オーバーフィード率:2.5%
第3引取ローラ7の表面速度:487.8m/分
【0088】
次に、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸に84dtex36fのポリエステル仮撚加工糸を、緯糸に上記で得られた混繊交絡糸を無撚状態でそれぞれ配して、経糸密度125本/2.54cm、緯糸密度66本/2.54cmの平組織の生機を製織した。そして、BOILOFF精練機(福伸工業株式会社製)を用いて生機を95℃で精練し、続いて、連続リラクサー機(和歌山鉄工株式会社製)を用いてリラックスした。その後、織物を130℃で乾燥し、190℃で30秒間プレセットした。
【0089】
次に、下記処方1に示す組成の染液を調製した後、この染液を用いて織物を130℃で40分間染色した。その後、シュリンクサーファー型乾燥機(株式会社ヒラノテクシード製)を用いて130℃で乾燥した。
<処方1>
染料:ダイスタージャパン株式会社製、分散染料「Dianix Blue UN−SE(商品名)」 2%omf
分散剤:日華化学株式会社製「ニッカサンソルトSN−250E(商品名)」 0.5g/L
酢酸(98%) 0.1mL/L
【0090】
さらに、下記処方2に示す組成の水溶液を調製した後、パッター加工機を用いて絞り率80%にて水溶液を織物に付与し、120℃で120秒間乾熱処理した。そして、180℃で30秒間ファイナルセットした後、160℃でカレンダー加工した。得られた織物は、経糸密度143本/2.54cm、緯糸密度74本/2.54cm、カバーファクター(CF)は2255であった。
<処方2>
撥水剤:日華化学株式会社製「NKガードS−07(商品名)固形分20質量%」 50g/L
架橋剤:DIC株式会社製、メラミン樹脂「ベッカミンM−3(商品名)」 3g/L
触媒:DIC株式会社製「キャタリストACX(商品名)固形分35質量%」 3g/L
【0091】
(実施例2)
ポリエステル高配向未延伸糸Aとして、伸度92%、単糸繊度0.54dtex、トータル繊度180dtex336fのポリエステル高配向未延伸糸を使用したこと以外は、実施例1の場合と同様にして、245dtex384fの混繊交絡糸を得た。次に、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経緯糸に上記混繊交絡糸を無撚状態で配して、経糸密度78本/2.54cm、緯糸密度50本/2.54cmの綾組織の生機を製織した。以降は、実施例1と同様に後加工及び撥水加工し、経糸密度83本/2.54cm、緯糸密度56本/2.54cm、カバーファクター(CF)が2176の織物を得た。
【0092】
(実施例3)
ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸に110dtex45fのポリエステル仮撚加工糸を、緯糸に実施例1における混繊交絡糸を無撚状態でそれぞれ配して、経糸密度56本/2.54cm、緯糸密度56本/2.54cmの平組織の生機を製織した。以降は、実施例1と同様に後加工及び撥水加工し、経糸密度60本/2.54cm、緯糸密度62本/2.54cm、カバーファクター(CF)が1420の織物を得た。
【0093】
(比較例1)
ポリエステル高配向未延伸糸Aとして、伸度92%、単糸繊度2.5dtex、トータル繊度90dtex36fのポリエステル高配向未延伸糸を使用した以外は、実施例1の場合と同様にして、164dtex84fの混繊交絡糸を得た。以降は、実施例1の場合と同様に製織、後加工及び撥水加工し、経糸密度143本/2.54cm、緯糸密度74本/2.54cm、カバーファクター(CF)が2258の織物を得た。
【0094】
(比較例2)
ポリエステル高配向未延伸糸Bとして、繊維断面が同心芯鞘型でその質量比率(芯/鞘)が75/25であり、太陽光遮蔽物質として酸化チタンを芯部に5質量%、鞘部に0.3質量部それぞれ含有すると共に、繊維全体で酸化チタンを3.825質量%含んでなる高配向未延伸繊維から構成される、伸度147%、単糸繊度1.2dtex、トータル繊度130dtex110fのポリエステル高配向未延伸糸を使用したこと以外は、実施例1の場合と同様にして、163dtex278fの混繊交絡糸を得た。以降は、実施例1の場合と同様に製織、後加工及び撥水加工し、経糸密度143本/2.54cm、緯糸密度74本/2.54cm、カバーファクター(CF)が2255の織物を得た。
【0095】
(比較例3)
ポリエステル高配向未延伸糸Bとして、繊維断面が同心芯鞘型でその質量比率(芯/鞘)が75/25であり、太陽光遮蔽物質として酸化チタンを芯部に5質量%、鞘部に0.3質量部それぞれ含有すると共に、繊維全体で酸化チタンを3.825質量%含んでなる高配向未延伸繊維から構成される、伸度147%、単糸繊度7.8dtex、トータル繊度280dtex36fのポリエステル高配向未延伸糸を使用する以外、実施例1の場合と同様に行い、266dtex204fの混繊交絡糸を得た。次に、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経緯糸に上記混繊交絡糸を無撚状態で配して、経糸密度72本/2.54cm、緯糸密度58本/2.54cmの綾組織の生機を製織した。以降は、実施例1と同様に後加工及び撥水加工し、経糸密度79本/2.54cm、緯糸密度67本/2.54cm、カバーファクター(CF)が2380の織物を得た。
【0096】
(実施例4)
ポリエステル高配向未延伸糸Bとして、繊維断面が同心芯鞘型でその質量比率(芯/鞘)が75/25であり、赤外線吸収物質として炭化ジルコニウムを芯部にのみに5質量%含有すると共に、繊維全体で炭化ジルコニウムを3.75質量%含んでなる高配向未延伸繊維から構成される、伸度147%、単糸繊度2.7dtex、トータル繊度130dtex48fのポリエステル高配向未延伸糸を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、163dtex216fの混繊交絡糸を得た。以降は、実施例1と同様に製織、後加工及び撥水加工し、経糸密度143本/2.54cm、緯糸密度74本/2.54cm、カバーファクター(CF)が2255の織物を得た。
【0097】
【表1】
【0098】
<実施例及び比較例の考察>
実施例にかかる織物は、いずれも優れた撥水性能を有するものであり、繊維中に適宜の添加剤を含有させることで、副次的な効果も得られる点が確認できた。特に実施例1、2、4にかかる織物は、優れた撥水性能(ロータス効果)を具備するものであることが確認できた。実施例3にかかる織物は、カバーファクター(CF)が低いため、他の実施例のものと比べると撥水性能にやや劣っていた。これは、織物の組織点がやや粗くなったことに伴い、織物内に空隙が増え、その空隙に水滴が落ちる傾向にあったためと推察される。
【0099】
一方、比較例1では、混繊交絡糸中のポリエステル繊維Aの単糸繊度が太すぎたため、水滴との接触面積が増え、かつ、繊維が剛直となったことにより、混繊交絡糸の表面部分に空気を保持して水滴の移行を抑制する空気保持層があまり形成されておらず、撥水性能が劣っていた。また、比較例2では、混繊交絡糸中のポリエステル繊維Bが細すぎ、逆に比較例3では、太すぎたため、いずれの場合も混繊交絡糸の表面部分の形状が所望のものとならず、織物に所望の撥水性能を付与できなかった。