特許第6242531号(P6242531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6242531
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】力布、およびそれを有するシャツ
(51)【国際特許分類】
   A41B 3/04 20060101AFI20171127BHJP
   A41B 1/10 20060101ALI20171127BHJP
   A44B 1/08 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   A41B3/04
   A41B1/10
   A44B1/08 610G
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-119918(P2017-119918)
(22)【出願日】2017年6月19日
【審査請求日】2017年10月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398033024
【氏名又は名称】株式会社アクセス
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝人
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−157061(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3114921(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 1/00、1/10、3/00 − 3/04
A44B 1/00、1/08、3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と、襟と、ボタンダウン用ボタンを有するシャツの前記前身頃の裏面において前記前身頃の前記ボタンダウン用ボタンの縫い付け部を補強する力布であって、
少なくとも一部に装飾部を有する
ことを特徴とする力布。
【請求項2】
前記力布は、前記ボタンダウン用ボタンの寸法に依存せず、縫い付け部を補強する充分な強度を持ち、且つ着心地が悪化しない寸法であることを特徴とする、請求項1に記載の力布。
【請求項3】
前記装飾部は、プリント生地の柄によって構成されていること特徴とする請求項1または2に記載の力布。
【請求項4】
前記プリント生地の柄は、ラバーインクによって形成されていることを特徴とする請求項3に記載の力布。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の力布は、
織布あるいは不織布であって、天然繊維あるいは合成繊維からなることを特徴とする力布。
【請求項6】
左右に開閉可能な前身頃と、襟と、前記前身頃の表面に縫い付けられたボタンダウン用ボタンと、前記前身頃の前記ボタンダウン用ボタンの縫い付け部を補強する力布とを有するシャツであって、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の力布を有することを特徴とするシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は力布、およびそれを有するシャツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の前開き可能なワイシャツなどのシャツは、前ボタンを全て留めて、さらにネクタイを締めて着用するのが一般的である。
【0003】
またこのようなシャツは、ビジネスマナーなどを意識して、表面に華美な装飾を施せずシンプルなデザインであることが多い。したがって、ブランドのロゴマークなどをシャツ表面に表記することも好まれない。
【0004】
しかし、昨今クールビズへの取り組みが社会的に広がっていることなどにより、ネクタイを締めずに上方の前ボタン(すなわち第1ボタンや第2ボタン)のいくつかをはずして使用する開襟シャツが普及している(特許文献1)。
【0005】
このようにネクタイを締めずに上方の前ボタンのいくつかをはずしてシャツを着用すると、襟元からシャツの前身頃の裏面が見え、体裁が良くない問題があった。
【0006】
一方でシャツの中には、ボタンダウンと呼ばれ、左右両方の襟をボタンで前身頃に留めることができる構成を有するものがある。
【0007】
ボタンダウン用ボタンは、前身頃に直節縫い付けられる。しかし前身頃のボタンダウン用ボタンの縫い付け部は、一枚布であるため強度が弱い。
【0008】
そこで、ボタンダウン用ボタンを縫い付ける際に、前身頃の縫い付け部を補強するために力布が用いられる。力布は、前身頃の裏面に位置し、ボタンダウン用ボタンを縫い付ける際に前身頃とともに縫い付けられる。
【0009】
ボタンダウンを有するシャツでは、ネクタイを締めずに上方の前ボタンをはずして着用すると襟元が開き、力布が外部から見える。従来の力布は、厚手の無地の布片などからなるので、美感に欠ける。その結果、シャツの意匠性を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2855516号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ボタンダウンを具備するシャツの力布に、ブランドのロゴマークやデザインなどの装飾を施すことにより、シャツの裏面に意匠性や出所表示機能を持つシャツを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、前身頃と、襟と、ボタンダウン用ボタンを有するシャツの前記前身頃の裏面において前記前身頃の前記ボタンダウン用ボタンの縫い付け部を補強する力布であって、少なくとも一部に装飾部を有することを特徴とする力布に関する。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記力布は、前記ボタンダウン用ボタンの寸法に依存せず、縫い付け部を補強する充分な強度を持ち、且つ着心地が悪化しない寸法であることを特徴とする、請求項1に記載の力布に関する。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記装飾部は、プリント生地の柄によって構成されていること特徴とする請求項1または2に記載の力布に関する。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記プリント生地の柄は、ラバーインクによって形成されていることを特徴とする請求項3に記載の力布に関する。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の力布は、織布あるいは不織布であって、天然繊維あるいは合成繊維からなることを特徴とする力布に関する。
【0017】
請求項6に係る発明は、左右に開閉可能な前身頃と、襟と、前記前身頃の表面に縫い付けられたボタンダウン用ボタンと、前記前身頃の前記ボタンダウン用ボタンの縫い付け部を補強する力布とを有するシャツであって、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の力布を有することを特徴とするシャツに関する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、ボタンダウン用ボタンを有するシャツの前記前身頃の裏面において前記前身頃の前記ボタンダウン用ボタンの縫い付け部を補強する力布であって、少なくとも一部に装飾部を有することを特徴とする力布であるため、力布の美感を向上させることできる。それゆえに、シャツ全体の意匠性も向上させることが可能である。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、前記力布は、前記ボタンダウン用ボタンの寸法に依存せず、縫い付け部を補強する充分な強度を持ち、且つ着心地が悪化しない寸法であるため、様々な寸法を取り得る。したがって、大きく目立つ装飾部を有する力布を提供することも可能である。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、前記装飾部は、プリント生地の柄によって構成されているため、審美性の高いデザインの装飾が施された力布を容易かつ安価に提供することができる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、前記プリント生地の柄は、ラバーインクによって形成されているため、力布がシャツの着用者の肌に触れても色移りせず、且つ洗濯やアイロンがけを行っても色落ちしにくい装飾を施すことができる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、力布は織布あるいは不織布であって、天然繊維あるいは合成繊維からなる生地であるため、他の生地の力布より丈夫な力布を提供できる。またこれらの生地は、適度な柔軟性を有し、着心地を悪化させない。
【0023】
請求項6に係る発明は、左右に開閉可能な前身頃と、襟と、前記前身頃の表面に縫い付けられたボタンダウン用ボタンと、前記前身頃の前記ボタンダウン用ボタンの縫い付け部を補強する力布とを有するシャツであって、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の力布を有することを特徴とするシャツであるため、力布の装飾性によってシャツ全体の意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る力布を有するシャツの一例を示す正面図である。
図2図1のシャツについて片方の襟元を開いて力布の装飾部が見えた状態を示す正面図である。
図3】ボタンダウン用ボタンが襟に留められた状態を示す模式図である。
図4】ボタンダウン用ボタン、前身頃、及び力布の位置関係を示す断面図である。
図5】(a)、(b)、(c)及び(d)は、力布の装飾部のデザインの一例を模式的に示した平面図である。
図6】(a)及び(b)は、力布の装飾部に施されたブランドのロゴマークの一例を模式的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態について図面に基づいて詳述する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る力布を有するシャツの一例を示す正面図である。図2は、図1のシャツについて片方の襟元を開いて力布が見えた状態を示す正面図である。
【0027】
<第1の実施形態>
本実施形態に係るシャツ(1)は、図1に示されるように左右に開閉可能な前身頃(2)と、襟(4)と、前身頃(2)の表面に糸(9)で縫い付けられたボタンダウン用ボタン(5)と、前身頃(2)の裏面において前身頃(2)のボタンダウン用ボタン(5)の縫い付け部(2a)を補強する力布(7)とを有するシャツ(1)であって、力布(7)は、装飾部(8)を具備する。
【0028】
前身頃(2)は、前ボタン(3)を有し、前記前ボタン(3)の留めはずしによって左右に開閉可能になっている。前ボタン(3)は、左右どちらの前身頃に縫い付けられてもよい。
【0029】
襟(4)は、襟(4)の左右両方の下端部が前身頃(2)の上端部から連続するように縫い付けられている。襟(4)は、シャツ(1)を着用したとき、着用者の首を一周するように構成されている。襟(4)は左右両方に、前記ボタンダウン用ボタン(5)を留めるためのボタンダウン用ボタンホール(6)を夫々備える。
【0030】
ボタンダウン用ボタン(5)は前身頃(2)の表面であって、ボタンダウン用ボタンホール(6)に留めることが可能になる位置に縫い付けられる。
【0031】
図3で示すように、ボタンダウン用ボタン(5)をボタンダウン用ボタンホール(6)に留めると、襟(4)の襟先を前身頃(2)に据えつけることができる構成になっている。図中において破線で示される力布(7)は、前身頃(2)の裏に位置する構造となっている。
【0032】
図4で示すように、ボタンダウン用ボタン(5)は、糸(9)によって前身頃(2)及び前身頃(2)の布を挟んで対向する位置にある力布(7)に縫い付けられる。
【0033】
また図4において示される襟(4)は、ボタンダウン用ボタン(5)をボタンダウン用ボタンホール(6)に留めたとき、ボタンダウン用ボタン(5)と前身頃(2)の間に位置することになる。
【0034】
力布(7)の形状、厚さ、及び寸法は、前身頃(2)のボタンダウン用ボタン(5)の縫い付け部(2a)を補強する充分な強度を持ち、且つ着心地を悪化させないものであれば特に限定されない。また力布(7)の形状、厚さ、及び寸法は、ボタンダウン用ボタン(5)の形状、厚さ、及び寸法に依存せず、独立して選択し得る。力布(7)の形状は、限定されないが、例えば円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、星形などを取り得る。限定されないが、力布(7)の厚さは0.5mm乃至3mmが好ましく、前記力布(7)の寸法は最大外形で5mm乃至30mmが好ましい。
【0035】
力布(7)の素材は、前身頃(2)のボタンダウン用ボタン(5)の縫い付け部(2a)を補強するために十分な強度と、シャツ(1)を着用した際に、着心地を悪化させない素材であれば特に限定されない。このような素材の例として、限定されないが、織布あるいは不織布であって、天然繊維あるいは合成繊維からなる生地が挙げられる。
【0036】
力布(7)は装飾部(8)を有する。装飾部(8)は、例えば、刺繍、染色、パッチワーク、またはプリント生地を用いて装飾やブランドのロゴマークが施され得る。
【0037】
装飾部(8)の装飾は、1つ以上の色を含む。装飾部(8)の装飾は、図5に一例を示すが、これに限定されず、チェック、ボーダー、ストライプ、ドット、マーブル、唐草、ペイズリー、モノグラム、オプティカル、ドリッピング、迷彩柄、アニマル柄、花柄などが例として挙げられる。また装飾部(8)は、文字、記号、図形などを含むデザインであってもよい。
【0038】
図6に示す力布(7)は、ロゴマークであれば装飾部(8)のブランドのロゴマーク(図6(a)、(b))が認識できる程度の大きさが望ましく、この様な力布(7)を用いればシャツ(1)のメーカーが直ちに判別できるので望ましい。尚、シャツ(1)は、スポーツウェア等と異なり、通常シャツの表面にブランドを表記することは美感的に好ましくないため、通常は襟裏のタグでメーカーを確認する。しかし本発明においてはシャツ(1)の美感を損ねることなくなく、シャツ(1)の裏面の力布(7)の装飾部(8)によってメーカーが確認できる。
【0039】
プリント生地は、生地をインクによって印刷(プリント)し装飾する技法により作られる生地である。印刷をする生地の繊維と使用するインクには相性があり、組み合わせによっては、発色が悪かったり、色ムラができたりする。該相性を考慮して、使用するインクは、適切に装飾部を装飾するものを選択すればよい。該プリント生地は、使用するインクによって仕上がりの発色や生地の質感が異なる複数の種類がある。本発明においては、限定されることなく、水性顔料プリント、ハーフラバープリント、ラバープリント、箔プリント、フロッキープリントなど全ての種類のプリント生地を用いることができる。これらプリント生地のうち、ラバープリントは以下の理由によってより好ましい。
【0040】
ラバープリントは、ラバーインクを用いて印刷されたプリント生地である。ラバーインクは、ウレタン、ビニル、アクリル、シリコーンなどの樹脂を含み、粘度の高いインクである。ラバーインクは、粘度が高いため、生地の繊維に染み込まず繊維の上に付着する。したがって、元の生地の色に影響されず発色のよい印刷が可能である。
【0041】
付着したラバーインクは乾燥するとゴム状に固まる。また付着したラバーインクの分だけ生地の厚みが増す。装飾部(8)に、ラバーインクで形成された柄を有するプリント生地を用いれば、力布(7)の強度を増すことが可能となる。
【0042】
さらに乾燥したラバーインクは、上述のとおりゴム状であり、質感もゴムに近く適度な弾力性と柔軟性を有する。したがって、ラバーインクで形成された柄を有するプリント生地の力布(7)は、シャツ(1)の着心地を悪化させずに着用することが可能である。
【0043】
またラバープリントは、耐水性がありシャツの着用者の汗や洗濯などによって色移りや色落ちしにくい。また耐熱性にも優れるため、アイロンがけの熱によっても色移りや色落ちしにくい。さらにラバープリントがシャツ(1)の着用者の肌に接触しても、インクが生地から剥がれにくい特徴を有する。したがって、長時間に亘って着用したり、洗濯やアイロンがけを繰り返しても、一度施した装飾は劣化することなく、美感を保つことができる。
【0044】
シャツ(1)の上方の前ボタン(3)(すなわち第1ボタンや第2ボタン)をはずして襟元が開いた際、図2に示すように外部から装飾部(8)が見える。これに伴いシャツ(1)全体の意匠性が向上する。
【0045】
<第2の実施形態>
上述したシャツ(1)では、襟(4)と、前身頃(2)の表面に糸(9)で縫い付けられたボタンダウン用ボタン(5)と、前身頃(2)のボタンダウン用ボタン(5)の縫い付け部(2a)を補強する力布(7)とを具備するシャツ(1)であって、例えばポロシャツなどのように、前身頃(2)の全てが左右に開閉せず前ボタン(3)が上部にだけあるシャツ(1)であってもよい。
【0046】
<第3の実施形態>
上述したシャツ(1)では、装飾部(8)は、社章、校章、ブランドのロゴマーク、所有者のイニシャルなどを含むデザインであってもよい。これによって、社章又は校章を含むデザインの装飾部(8)を有する本実施形態のシャツ(1)を企業や学校の制服として利用すれば、着用者の所属を示すことができる。またブランドのロゴマークを含むデザインの装飾部(8)を有するシャツ(1)は、自他商品の識別に優れる。所有者のイニシャルを含むデザインの装飾部(8)を有するシャツ(1)は、所有者が容易に自分のシャツ(1)を見分けることが可能となる。
【0047】
<第4の実施形態>
上述したシャツ(1)では、前記プリント生地の柄は、蛍光塗料を含むインクで形成されてもよい。よって装飾部(8)は蛍光塗料によって発光し暗所においても、美感を有するシャツ(1)を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ボタンダウンを具備するシャツの力布に、ブランドのロゴマークやデザインなどの装飾を施すことにより、シャツの裏面に意匠性や出所表示機能を持つシャツを提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 シャツ
2 前身頃
2a 縫い付け部
3 前ボタン
4 襟
5 ボタンダウン用ボタン
6 ボタンダウン用ボタンホール
7 力布
8 装飾部
9 糸
【要約】
【課題】ボタンダウンを具備するシャツの力布に、ブランドのロゴマークやデザインなどの装飾を施すことにより、シャツの裏面に意匠性や出所表示機能を持つシャツを提供する。
【解決手段】前身頃と、襟と、ボタンダウン用ボタンを有するシャツの前記前身頃の裏面において前記前身頃の前記ボタンダウン用ボタンの縫い付け部を補強する力布であって、少なくとも一部に装飾部を有することを特徴とする力布。

【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6