(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242538
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】医療用オーバーチューブ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20171127BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
A61M25/00 620
A61M25/14 512
A61M25/14 518
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-508586(P2017-508586)
(86)(22)【出願日】2016年5月9日
(86)【国際出願番号】JP2016063786
(87)【国際公開番号】WO2016194550
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】62/168987
(32)【優先日】2015年6月1日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】竹本 昌太郎
【審査官】
鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−509718(JP,A)
【文献】
特表2007−530155(JP,A)
【文献】
特表2007−517597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスを貫通させる複数のルーメンを備えたマルチルーメンチューブと、
該マルチルーメンチューブの外側を被覆する編組繊維からなるブレードチューブと、
該ブレードチューブの外側を被覆するアウターチューブとを備え、
該アウターチューブを径方向に貫通し、該アウターチューブと前記マルチルーメンチューブとにより囲まれた前記ブレードチューブが配される空間を外部に接続する貫通孔が設けられ、
前記アウターチューブの径方向外方に、径方向に隙間を空けて前記貫通孔の開口部を覆うカバー部が設けられている医療用オーバーチューブ。
【請求項2】
前記オーバーチューブの長手方向の両端において、前記マルチルーメンチューブと前記ブレードチューブとの間、および前記ブレードチューブと前記アウターチューブとの間を密封状態に接着する接着剤が設けられている請求項1に記載の医療用オーバーチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用オーバーチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用デバイスを貫通させる複数の貫通孔を有する長尺のマルチルーメンチューブと、該マルチルーメンチューブの外側を被覆する編組繊維からなるブレードチューブと、該ブレード中部の外側を被覆するアウターチューブとを備える3層構造の医療用オーバーチューブが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−509718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような医療用オーバーチューブを滅菌する場合、一般に、酸化エチレンガスを用いたEOG滅菌処理が行われる。このEOG滅菌処理においては、医療用オーバーチューブを収容した処理容器内を一度真空吸引して処理容器内の空気を排出し、その後、高濃度の酸化エチレンガスを供給することにより滅菌が行われる。
【0005】
しかしながら、特許文献1のような3層構造の医療用オーバーチューブを収容した処理容器内が真空吸引されると、気密性の高いマルチルーメンチューブおよびアウターチューブによって挟まれたブレードチューブの繊維間に存在している空気が膨張してアウターチューブが膨張し、空気量が多い場合には破裂等により損傷する不都合がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、EOG滅菌処理における真空吸引によっても損傷することなく健全な状態を維持することができる医療用オーバーチューブを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、医療用デバイスを貫通させる複数のルーメンを備えたマルチルーメンチューブと、該マルチルーメンチューブの外側を被覆する編組繊維からなるブレードチューブと、該ブレードチューブの外側を被覆するアウターチューブとを備え、
該アウターチューブを径方向に貫通し、該アウターチューブと前記マルチルーメンチューブとにより囲まれた前記ブレードチューブが配される空間を外部に接続する貫通孔が設けられ
、前記アウターチューブの径方向外方に、径方向に隙間を空けて前記貫通孔の開口部を覆うカバー部が設けられている医療用オーバーチューブである。
【0008】
本態様によれば、マルチルーメンチューブとアウターチューブとの間に設けられたブレードチューブによって、医療用オーバーチューブの基端において加えた捩りトルクを医療用オーバーチューブの先端まで伝達することができ、マルチルーメンチューブの各ルーメンに貫通させた医療用デバイスの相対位置を保ちながら一度に回転させることができる。
【0009】
この場合において、医療用オーバーチューブを滅菌するには、処理容器内に収容して真空吸引し、処理容器内の空気を排出した後に、処理容器内に酸化エチレンガスを充満させて高濃度の酸化エチレンガスにより滅菌処理を行う。この真空吸引においては処理容器内が減圧されるが、アウターチューブとマルチルーメンチューブとの間のブレードチューブが配されている空間が
、アウターチュー
ブに設けられた貫通孔によって外部に接続しているので、当該空間内の空気が貫通孔を介して外部に排出され、アウターチューブの膨張や破裂を防止することができる。
【0010】
上記態様においては、前記貫通孔が、前記アウターチューブを径方向に貫通して設けられてい
る。
また、上記態様においては、前記アウターチューブの径方向外方に、径方向に隙間を空けて前記貫通孔の開口部を覆うカバー部が設けられてい
る。
このようにすることで、滅菌処理前の真空吸引によって減圧されても、アウターチューブとマルチルーメンチューブとの間のブレードチューブが配されている空間が、アウターチューブに設けられた貫通孔によって外部に接続しているので、当該空間内の空気が貫通孔を介して外部に排出され、アウターチューブの膨張や破裂を防止することができる。
【0011】
この場合において、滅菌パックに医療用オーバーチューブを収容した状態で滅菌処理を行う場合においても、滅菌パックを構成しているフィルムによって貫通孔が閉塞されることがカバー部によって防止され、ブレードチューブが配されている空間内の空気をより確実に外部に排気することができる。
【0012】
本発明の参考例としての発明の参考態様においては、前記貫通孔が、前記マルチルーメンチューブの外面からいずれかの前記ルーメンまで貫通して設けられていてもよい。
このようにすることで、滅菌パックに医療用オーバーチューブを収容した状態で滅菌処理を行う場合においても、いずれかのルーメンに貫通している貫通孔によって、ブレードチューブが配されている空間内の空気が外部に排気される。貫通孔がアウターチューブの外面に開口しないので、滅菌パックを構成しているフィルムによって貫通孔が閉塞されることを防止することができる。
【0013】
また、
本発明の参考例としての発明の参考態様においては、前記マルチルーメンチューブが、先端開口が閉塞され、基端開口が開放された排気用ルーメンを備え、前記貫通孔が、前記マルチルーメンチューブの外面から前記排気用ルーメンまで貫通して設けられていてもよい。
このようにすることで、医療用オーバーチューブが体内に挿入されても、先端開口が閉塞された排気用ルーメンは体液によって汚染されることはない。また、排気用ルーメンは医療用デバイスが挿入されないので、医療用デバイスが挿脱されることによるルーメン内の汚染も防止することができる。したがって、体液等の物質がブレードチューブが配されている空間内に侵入することを防止できる。
また、
本発明の上記態様においては、前記オーバーチューブの長手方向の両端において、前記マルチルーメンチューブと前記ブレードチューブとの間、および前記ブレードチューブと前記アウターチューブとの間を密封状態に接着する接着剤が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、EOG滅菌処理における真空吸引によっても損傷することなく健全な状態を維持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の
参考例としての発明の一参考実施形態に係る医療用オーバーチューブを示す
図2のB−B縦断面図である。
【
図2】
図1の医療用オーバーチューブの貫通孔位置における
図1のA−A横断面図である。
【
図3】
本発明の一実施形態に係る医療用オーバーチュー
ブを示す
図4のB−B縦断面図である。
【
図4】
図3の医療用オーバーチューブの貫通孔位置における
図3のA−A横断面図である。
【
図5】
図1の医療用オーバーチューブの第
1の変形例を示す
図6のB−B縦断面図である。
【
図6】
図5の医療用オーバーチューブの貫通孔位置における
図5のA−A横断面図である。
【
図7】
図1の医療用オーバーチューブの第
2の変形例を示す貫通孔位置における横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の
参考例としての発明の一
参考実施形態に係る医療用オーバーチューブ1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る医療用オーバーチューブ1は、
図1および
図2に示されるように、長手方向に貫通する複数のルーメン2を有し、可撓性を有する材質からなるマルチルーメンチューブ3と、該マルチルーメンチューブ3の外側を全周にわたって被覆するように配置される編組繊維からなるブレードチューブ4と、該ブレードチューブ4の外側を全周にわたって被覆するように配置されるアウターチューブ5とを備えている。
【0017】
マルチルーメンチューブ3の各ルーメン2には、例えば、内視鏡、光ファイバ、処置具等の医療用デバイスが挿入されるようになっている。マルチルーメンチューブ3は気密性の高い樹脂材料により構成されている。
【0018】
ブレードチューブ4は、樹脂繊維あるいは金属繊維を編組してチューブ状に形成されたものであり、長手軸回りの捩りトルクを伝達することができる。
アウターチューブ5は、表面の滑らかな気密性の高い樹脂製チューブであって、薄い肉厚を有している。ブレードチューブ4の外面をアウターチューブ5によって被覆することにより、体内への挿入時における摩擦を低減し、挿入性を向上することができるようになっている。
【0019】
マルチルーメンチューブ3とブレードチューブ4との間、およびブレードチューブ4とアウターチューブ5との間は、医療用オーバーチューブ1の長手方向の両端において接着剤6によって密封状態に接着されている。
【0020】
本実施形態に係る医療用オーバーチューブ1は、アウターチューブ5の基端に近い位置に、径方向に貫通する貫通孔7を備えている。貫通孔7は、マルチルーメンチューブ3の外面とアウターチューブ5の内面との間に形成されたブレードチューブ4の配される円筒状の空間を径方向外方に大気開放している。
【0021】
このように構成された本実施形態に係る医療用オーバーチューブ1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る医療用オーバーチューブ1によれば、患者の体腔に挿入される際に体腔の形状に合わせてマルチルーメンチューブ3、ブレードチューブ4およびアウターチューブ5を湾曲させながら挿入される。アウターチューブ5は滑らかな表面を有しているので、挿入時の摩擦が低減され、容易に挿入することができる。
【0022】
そして、マルチルーメンチューブ3の複数のルーメン2を介して内視鏡および処置具等の医療用デバイスを挿入することにより、内視鏡によって患部を観察しながら、処置具によって患部を処置することができる。
【0023】
患部の処置において、内視鏡による視界を回転させるには、医療用オーバーチューブ1の基端において長手軸回りの捩りトルクを加える。本実施形態に係る医療用オーバーチューブ1は捩りトルクを伝達可能なブレードチューブ4を備えているので、基端に加えた捩りトルクを先端まで伝達し、ルーメン2の先端開口から露出している医療用デバイスの相対位置を変更することなく纏めて回転させることができる。
【0024】
本実施形態に係る医療用オーバーチューブ1を滅菌処理する場合には、密閉可能な処理容器内に医療用オーバーチューブ1を収容し、処理容器内部を真空吸引することにより空気を排出する。ブレードチューブ4は編組繊維によって構成されているので、空気が含まれている。そして、ブレードチューブ4が配されている空間は先端部及び基端部において接着剤6により密封されている。
【0025】
本実施形態においては、アウターチューブ5を径方向に貫通する貫通孔7が設けられているので、真空吸引されることによってブレードチューブ4が配されている空間内の空気が貫通孔7を介して排出される。これにより、真空吸引によって減圧されても、ブレードチューブ4が配されている空間が膨張することが防止され、アウターチューブ5の破裂を確実に防止することができる。また、貫通孔7がアウターチューブ5の基端側に設けられているので、貫通孔7が体腔内に挿入されることがなく、ブレードチューブ4が配置されている空間内に体液が進入することを防止できる。
【0026】
この状態で処理容器内に酸化エチレンガスを供給することにより、高濃度の酸化エチレンガスによって医療用オーバーチューブ1を滅菌することができる。供給された高濃度の酸化エチレンガスは貫通孔7を介してブレードチューブ4が配されている空間内にも進入させられる。これにより、ブレードチューブ4が配されている空間まで滅菌することができる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る医療用オーバーチューブ1は、図3および
図4に示されるように、医療用オーバーチューブ1の基端に取り付けられる操作部8から先端に向かって貫通孔7の開口(開口部)を覆う位置まで延びる円筒状のカバー部9
を備えている。カバー部9は、アウターチューブ5の外面に対して径方向に隙間を空けて配置されている。
【0028】
このようにすることで、医療用オーバーチューブ1を滅菌する際に、滅菌パックに封入して行う場合に、滅菌パックを構成しているフィルムがアウターチューブ5の貫通孔7の開口を閉塞してしまうことを防止することができる。すなわち、フィルムはカバー部9を覆うように配置されるが、カバー部9とアウターチューブ5との間に隙間が形成されているので、その隙間を介して空気が排出され、かつ、酸化エチレンガスをブレードチューブ4が配されている空間に供給することができる。
【0029】
上記参考実施形態においては、アウターチューブ5に貫通孔7を設けることとしたが、これに代えて、
図5および
図6に示されるように、マルチルーメンチューブ3の外面といずれかのルーメン2との間を連絡する貫通孔10を設けることにしてもよい。貫通孔10の開口がルーメン2内に配置されるので、滅菌パックのフィルムによって貫通孔10の開口が閉塞されることがなく、確実に滅菌することができるという利点がある。
【0030】
また、医療用デバイスを貫通させるいずれかのルーメン2に貫通孔10を設けることに代えて、
図7に示されるように、専用の排気用ルーメン11に貫通孔12を設けることにしてもよい。排気用ルーメン11としては、医療用オーバーチューブ1の先端に配置される先端開口が閉塞され、医療用オーバーチューブ1の基端に配置される基端開口が大気開放されていればよい。
このようにすることで、排気用ルーメン11内に体液を進入させずに済むのでブレードチューブ4が配されている空間内への体液の進入を防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 医療用オーバーチューブ
2 ルーメン
3 マルチルーメンチューブ
4 ブレードチューブ
5 アウターチューブ
7,10,12 貫通孔
9 カバー部
11 排気用ルーメン