特許第6242545号(P6242545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6242545
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】干渉のモデル化
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/08 20090101AFI20171127BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20171127BHJP
【FI】
   H04W72/08 110
   H04W16/14
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-526870(P2017-526870)
(86)(22)【出願日】2015年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2015074841
(87)【国際公開番号】WO2016078877
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年5月18日
(31)【優先権主張番号】14193993.4
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ホンミン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーゲン ダニエル マーティン
(72)【発明者】
【氏名】シェンク ティム コーネール ウィルヘルムス
【審査官】 伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−85719(JP,A)
【文献】 特表2012−525052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉源の存在下で、ワイヤレスチャネルで通信するための装置であって、前記装置は、
ワイヤレス送信機及びワイヤレス受信機に接続するインターフェースと、
前記ワイヤレスチャネルにアクセスしてエネルギー検出のシーケンスを行うように前記ワイヤレス受信機を制御するコントローラであって、各前記エネルギー検出は、それぞれの検出時間における前記ワイヤレスチャネル内のエネルギー収集をすることを含む、コントローラと、
前記干渉源が、周期的に遷移して、非アクティブ状態に入ったり、前記非アクティブ状態から出るものとして、また前記非アクティブ状態から出た時には、前記干渉源がアクティブであり前記ワイヤレスチャネル上に干渉を生じさせている第1のアクティブ状態と、前記干渉源がアクティブであるが前記ワイヤレスチャネル上に大幅に低いレベルの干渉を生じさせている第2のアクティブ状態との間を周期的に遷移するものとして、前記干渉源をモデル化するモデル化コンポーネントとを備え、
前記モデル化コンポーネントは、前記エネルギー検出のシーケンスに基づいて、i)前記非アクティブ状態への遷移及び前記非アクティブ状態からの遷移を記述する大きい時間スケールの指標、及びii)前記第1のアクティブ状態と前記第2のアクティブ状態との間の遷移を記述する小さい時間スケールの指標を決定し、
前記コントローラは、推定された指標に依存して、前記ワイヤレス送信機によるデータの送信を実施する、装置。
【請求項2】
前記データは、遅延に影響されやすい又は遅延に影響されにくいと分類されるパケットとして送信され、遅延に影響されやすいパケットは、前記小さい時間スケールの指標に依存して送信され、遅延に影響されにくいパケットは、前記大きい時間スケールの指標に依存して送信される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記遅延に影響されにくいパケットは、長い時間スケールの指標及び短い時間スケールの指標の両方に依存して送信される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記大きい時間スケールの指標及び前記小さい時間スケールの指標はそれぞれ、前記非アクティブ状態に入り、そこから出る遷移のデューティサイクル、及び前記第1のアクティブ状態と前記第2のアクティブ状態との間の遷移のデューティサイクルを伝える、請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記モデル化コンポーネントは、前記エネルギー検出のシーケンス中の前記エネルギー検出ごとに、それぞれの検出時間に収集されたエネルギーの量が空きチャネル評価閾値を上回るかどうかを判定し、上回る場合にのみそのエネルギー検出のインデックスを記憶し、前記指標は記憶された前記インデックスに基づいて決定される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記空きチャネル評価閾値を上回る量についての前記インデックスが、大きさMのFIFO構造に入力され、前記入力されることにより、前記空きチャネル評価閾値を上回るM個の最も新しいインデックスのみが前記FIFO構造に記憶され、前記指標は、前記FIFO構造に記憶された前記インデックスに基づいて決定される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記モデル化コンポーネントは、ステートマシンを実行し、前記ステートマシンは、前記干渉源の前記非アクティブ状態に対応する非アクティブ状態と、前記干渉源の前記第1のアクティブ状態に対応する第1のアクティブ状態と、前記干渉源の前記第2のアクティブ状態に対応する第2のアクティブ状態とを備え、前記ステートマシンは、以下のように、複数のエネルギー測定に関係する条件に依存して状態間を遷移し、
前記条件のうち第1の条件が満たされるとき、前記非アクティブ状態から前記第1のアクティブ状態に遷移し、前記第1の条件を満たすことは、前記干渉源が前記非アクティブ状態から出る遷移を意味し、
前記条件のうち第2の条件が満たされるとき、第1の非アクティブ状態から前記第2のアクティブ状態に遷移し、前記第2の条件を満たすことは、前記干渉源が前記第2のアクティブ状態に入る遷移を意味し、
前記条件のうち第3の条件が満たされるとき、前記第2のアクティブ状態から前記第1の非アクティブ状態に遷移し、前記第3の条件を満たすことは、前記干渉源が前記第1のアクティブ状態に入る遷移を意味し、
前記条件のうち第4の条件が満たされるとき、前記第2のアクティブ状態から前記非アクティブ状態に遷移し、前記第4の条件を満たすことは、前記干渉源が前記非アクティブ状態に入る遷移を意味し、
前記指標は、前記ステートマシンの遷移を追跡することによって推定される、請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の条件は、前記FIFO構造内のM1個のインデックスが第1の窓の中にあることであり、前記第2の条件は、前記FIFO構造内の多くともm1個のインデックスが、前記第1の窓よりも短い第2の窓の中にあることであり、前記第3の条件は、前記FIFO構造内の少なくともm2個のインデックスが前記第2の窓の中にあることであり、前記第4の条件は、前記FIFO構造内の多くともM2個のインデックスが、前記第1の窓よりも長い第3の窓の中にあることである、請求項6に従属する請求項7に記載の装置。
【請求項9】
平均干渉電力を推定する干渉電力推定コンポーネントを備え、前記平均干渉電力を推定することは、複数のエネルギー検出値を合計することを含み、a)それぞれの検出時間が、前記干渉源が前記第1のアクティブ状態又は前記第2のアクティブ状態にあるときと一致し、b)前記それぞれの検出時間に収集されるエネルギーの量が測定閾値を上回る、前記エネルギー検出のシーケンス中の前記エネルギー検出によって前記エネルギー検出値それぞれが取得される、請求項1乃至8に記載の装置。
【請求項10】
前記測定閾値は、前記空きチャネル評価閾値より低い、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記エネルギー検出のシーケンスは、定期的なスケジュールに従って行われ、
各エネルギー検出は、前記エネルギー検出のシーケンスが定期的になるように、各自のスケジュールされた時間に行われるか、又は、
各エネルギー検出は、前記エネルギー検出のシーケンスが疑似定期的になるように、所定の時間間隔からランダムに選択された量だけ各自のスケジュールされた時間からずらされた時間に行われる、請求項1乃至10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記ワイヤレスチャネルは、前記装置が通信することができるN個のワイヤレスチャネルのうちの1つであり、前記コントローラは、定期的なスケジュールに基づいてそれぞれの前記エネルギー検出のシーケンスを行うために前記N個のワイヤレスチャネルそれぞれにアクセスするように前記ワイヤレス受信機を制御し、前記定期的なスケジュールは、周期Tを持ち、前記エネルギー検出のシーケンスは、時間的に互いとインターリーブされ、各前記エネルギー検出のシーケンスは、他のそれぞれの当該エネルギー検出のシーケンスからT/Nだけ時間的にずらされ、前記エネルギー検出のシーケンスは、前記N個のワイヤレスチャネルにおける干渉をモデル化するために使用される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
ワイヤレスセンサネットワーク及び/又はワイヤレス照明制御ネットワーク内で使用される、請求項1乃至12の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
干渉源の存在下で、ワイヤレスチャネルで通信する方法であって、前記方法は、
前記ワイヤレスチャネルにアクセスしてエネルギー検出のシーケンスを行うように受信機を制御するステップであって、各エネルギー検出は、それぞれの検出時間における前記ワイヤレスチャネル内のエネルギーを収集することを含む、ステップと、
前記干渉源が、周期的に遷移して非アクティブ状態に入ったり、前記非アクティブ状態から出るものとして、また前記非アクティブ状態から出た時には、前記干渉源がアクティブであり前記ワイヤレスチャネル上に干渉を生じさせている第1のアクティブ状態と、前記干渉源がアクティブであるが前記ワイヤレスチャネル上に大幅に低いレベルの干渉を生じさせている第2のアクティブ状態との間を周期的に遷移するものとして、前記干渉源をモデル化するステップと、を含み、
前記干渉源をモデル化するステップは、前記エネルギー検出のシーケンスに基づいて、i)前記非アクティブ状態への遷移及び前記非アクティブ状態からの遷移を記述する大きい時間スケールの指標、及びii)前記第1のアクティブ状態と前記第2のアクティブ状態との間の遷移を記述する小さい時間スケールの指標を決定するステップを含み、
前記方法は、推定された前記指標に依存して、送信機によるデータの送信を実施するステップを更に含む、方法。
【請求項15】
コンピュータ可読記憶媒体に記憶され、実行されると請求項14に記載の方法を実施するコードを含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤレスチャネル、特に、これに限らないがアンライセンス周波数帯域のワイヤレスチャネル上の干渉源によって生じる干渉のモデル化に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス通信装置は、ワイヤレスチャネルを通じて互いとの間でデータを送受信することによって互いと通信する。ワイヤレスチャネルは、電磁気周波数、典型的には、無線周波数(RF)、又はそのような周波数の組若しくは狭い範囲である。ワイヤレスチャネルで送信される信号は、そのチャネル上の干渉によって妨害されることがある。ワイヤレスチャネル上で互いに信号を送受信する所与の装置のペアから見ると、それらの信号を妨害する他のあらゆる信号は干渉に相当する。干渉は、同じチャネル若しくは近隣のチャネルで互いと通信している他のワイヤレス通信装置、又は、そのような妨害を引き起こす電磁気放射の何らかの他の発生源によって生じることがある。
【0003】
ワイヤレス無線通信の到来以来、干渉は常に、信頼性の高い通信を実現するために対処すべき重要な問題であった。この理由から、多くの国では無線周波数帯の多くの部分はライセンス制にされ、関連する機関によって規制されている。ライセンス帯へのアクセスを得るには、どのユーザも割増金を払う必要がある。
【0004】
それに対して、いくつかのアンライセンス帯も存在し、例えば、産業、科学、及び医療(ISM(industrial,scientific and medical))帯又は「ホワイトスペース」帯があるが、ホワイトスペースは、かつては一部の国でアナログテレビ放送のために確保されていたもので、基本的に一定の地域規制に従って無料で使用することができる。近年、アンライセンス帯の使用が次第に普及してきている。その理由の1つはコストが低いことである。別の理由は、センサネットワークやワイヤレス照明制御等の多くの用途では、長い時間にわたって継続的に多量のデータを送信する必要がないことである。
【0005】
ますます進む普及と、アンライセンス帯では規制が比較的弱いことに伴って、そのような帯域における干渉も重要な問題となりつつあり、これは、アンライセンス周波数帯域の自由にアクセスされる性質と、厳しい規制がないことによって悪化する。
【0006】
無線通信の性能に影響する干渉には主に2つの種類がある。1つは帯域内干渉であり、これは、あらゆる種類の無線送信機が同じ帯域を共有すること、又は帯域外送信機からの送信機漏洩から生じる。もう1つは、受信機のフロントエンドフィルタが実際には非理想的であることが原因となって、受信器によって取り込まれる帯域外信号電力の漏洩である(帯域外干渉)。
【0007】
干渉に対処するために、適切な方策を取ることができるように干渉を検出して特徴付けする試みが行われる。干渉の検出を試み、扱う手法の知られている種類の1つは、初期チャネルスキャン動作を使用するものである。初期スキャン動作は、アンライセンス帯内の利用可能なチャネルを探すために行われる。この初期チャネルスキャン時間は、典型的なパケット継続時間よりもはるかに長い。この初期チャネルスキャンで、重大な干渉がないことが明らかになると、ユーザは希望する通信用途のためにそのチャネルを使用し始める。通常の動作では、チャネルへの短時間のアクセスにはlisten−before−talk(LBT)型の手法を用いることができる。
【0008】
この手法には2つの主要な欠点がある。1つは、この手法では、急速に変化する可能性のある干渉状況をリアルタイムに捉えられないことである。もう1つは、基本のチャネルスキャンでは、干渉シナリオの重要な特性だけでなく、用途の関連性が見逃されることである。
【0009】
具体的には、多くの場合、要求される用途及び干渉源のどちらもチャネルを常時占有することは必要とせず、しばしば、ある種のデューティサイクル挙動を呈する。アンライセンス周波数帯域における多くの用途には、著しい量のデータを継続的に送信することは必要でない。代わりに、そのような用途の多くは、ランダムなものであれ、固定されたスケジュールに従ったものであれ、ある種のバースト送信のみを必要とする。その結果、潜在ユーザの用途の特性も原因となって、多くの場合における干渉は、恒常的なものではなく、一定のデューティサイクル挙動である。別の例として、RFID(「無線周波数識別(Radio Frequency Identification)」)などの一部の用途では、LBTに代えて周波数ホッピング方式が使用される。そのような周波数ホッピングも、周波数ホッパが現在のユーザチャネルの中にホップする時に干渉源のように見え、ホップして現在のユーザチャネルから離れる時には見えない(それでも依然としてアクティブであり、したがって他のチャネルに干渉を生じる可能性がある)という意味で、デューティサイクル型の影響をユーザに及ぼす。
【0010】
したがって、干渉スキャン手法では、高速に変化する干渉状況を捉えることができないため、多くの場合には、選択されたチャネルの通信性能を保証することができない。さらに、この手法では、詳細なネットワーク状況の診断を提供するのに十分な情報も得られない。
【0011】
米国特許出願公開第2008/146156号は、定期的で間欠的な干渉を予測的に感知する方法を開示し、これは、定期的で間欠的な干渉の兆候を求めてチャネル上のエネルギーを測定することを含む。チャネル上の現在のエネルギーレベルが新しい閾値を下回り、以前のエネルギー特性が、現在のエネルギーレベルが所定の最小期間にわたって新しい閾値を下回ったままになることを示唆する場合は、空きチャネルの示唆が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記で概説した非リアルタイムの干渉検出手法に加えて、干渉検出及び特徴付けの対処を試みるための、高度にリアルタイムな別の種類の手法がある。TVホワイトスペースシステムや他の認識無線システムによって用いられるものなど、高度にリアルタイムな手法では、副通信装置が主通信装置の存在を確認し続ける。主通信装置が無線周波数帯域の使用を開始するとすぐに、近隣にいる副通信装置は、迅速に反応して自身の無線信号の送信を控える必要がある。
【0013】
このリアルタイムの手法は、無線周波数帯域を高頻度で監視する必要があり、本発明者らは、これは、多くの用途、特にワイヤレス照明制御やセンサネットワークの用途などの低コストで低電力の用途には、過度に、そして不必要にリソースを消費することを認識した。用途の観点からは、この手法はまた、そのような用途の要件に対して過剰である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、(非リアルタイム手法とは異なり)前の段落で述べた種類の用途のために十分にリッチであるが、同時に(高度にリアルタイムな手法とは異なり)リソース消費の点で低コストに実現できる情報出力を伴う、疑似リアルタイムで、用途に適した干渉検出及び特徴付け手法を提供する。すなわち、本開示は、情報のリッチさとリソース消費のバランスをとり、限定されないが、特にこの種の用途に適した干渉検出及び特徴付けを提供する。
【0015】
第1の態様によれば、干渉源の存在下でワイヤレスチャネルで通信するための装置は、インターフェースと、コントローラと、モデル化コンポーネントとを備える。インターフェースは、ワイヤレス送信機及びワイヤレス受信機に接続するように構成される。コントローラは、チャネルにアクセスしてエネルギー検出のシーケンスを行うように受信機を制御するように構成され、各エネルギー検出は、それぞれの検出時間におけるチャネル内のエネルギーを収集することを含む。モデル化コンポーネントは、干渉源を、周期的に遷移して非アクティブ状態に入ったり、非アクティブ状態から出るものとして、また非アクティブ状態から出た時には、干渉源がアクティブでありチャネル上に干渉を生じさせている第1のアクティブ状態と、干渉源がアクティブであるがチャネル上に大幅に低いレベルの干渉を生じさせている第2のアクティブ状態との間を周期的に遷移するものとして、モデル化するように構成される。干渉源をモデル化することは、エネルギー検出のシーケンスに基づいて、i)非アクティブ状態への遷移及び非アクティブ状態からの遷移を記述する大きい時間スケールの指標、及びii)第1のアクティブ状態と第2のアクティブ状態との間の遷移を記述する小さい時間スケールの指標を決定することを含む。コントローラは、推定された指標に依存して、送信器によるデータの送信を実施するように構成される。
【0016】
本発明者らは、ある種の干渉源、特に実際にアンライセンス周波数帯域に干渉を生じさせることが判明する可能性が高い干渉源は、二重の周期的挙動、例えば、二重の定期的な挙動、又は少なくとも、干渉源の実際の挙動にランダム若しくは疑似ランダムな要素がある場合でも適度に正確にそのようなものとしてモデル化できる挙動を示すことを認識した。第1の種類の周期的挙動の方が緩慢であり、すなわち、非アクティブ状態(干渉源が著しい干渉を全く生じさせていないとき)とアクティブであることとの間の遷移の頻度がより低い。第2の種類の周期的挙動の方がより速く、すなわち第1のアクティブ状態と第2のアクティブ状態間の遷移の頻度はより高く、これは、干渉源がアクティブである時に限って発生し、すなわち、そのため、干渉源がアクティブである時でも、時間の一部にワイヤレスチャネルに著しい干渉を実際に生じさせている時だけ発生する。
【0017】
さらに、本発明者らは、この二重の周期的挙動をモデル化することで2つの指標の形態で干渉の特徴付けが得られ、それらの指標は、多くの用途にとって、チャネルに干渉があってもなお有効な通信を行えるようにするのに十分にリッチであり、有利な点として、このモデル化は、上記で概説した高度にリアルタイムの手法と比べて、大幅に少ないリソースを使用してより低いコストで実現することができることに気付いた。
【0018】
複数の支配的な干渉源があるときでも、デューティサイクルはなお使用することができる。何故ならば、その場合には、指標は、集約された大きい時間スケールと小さい時間スケールの干渉源の挙動を記述することになるためである。
【0019】
「ワイヤレスチャネル上の干渉」とは、ワイヤレスチャネル上のワイヤレス通信装置との間の送信を妨害する任意の信号を意味し、それには、上述の種類の帯域内干渉及び帯域外干渉の両方が含まれることに留意されたい。
【0020】
第2の状態における「チャネル上の大幅に低いレベルの干渉」とは、第1の状態における装置の動作を妨害するチャネル上の不許容レベルの干渉と比べて、装置の動作を著しく妨害することはないチャネル上の許容レベルの干渉を意味する。この理由は、干渉源が実質的にチャネルに干渉を生じさせていない(すなわち、干渉がないか又は無視できるほど小さい)か、又はレベルは非ゼロであるが、例えば誤り補正や干渉緩和等によって補償できるのに十分になお低いことである。例えば、周波数ホッパは、第1のアクティブ状態にある時には、前記ワイヤレスチャネルで通信して、装置から見て不許容レベルの干渉を生じさせ、第2のアクティブ状態にある時には、異なるチャネルで通信し、装置から見て前記チャネルへのいくらかの帯域内/帯域外漏洩を伴う可能性があるが、許容レベルにある。明らかであるように、許容/不許容レベルの干渉に相当するものは状況に応じて決まり、特に装置の用途に応じて決まる。例えば、装置がワイヤレス照明制御ネットワーク又はセンサネットワークの一部を形成するときには、大幅に低いレベルは、装置の照明制御又はセンサ機能を妨害しないように、ネットワーク内の他のノードとの有効な通信を可能にするのに十分に低い。
【0021】
好ましい実施形態では、データは、遅延に影響されやすい又は遅延に影響されにくいと分類されるパケットとして送信され、遅延に影響されやすいパケットは、小さい時間スケールの指標に依存して送信され、遅延に影響されにくいパケットは大きい時間スケールの指標に依存して送信される。遅延に影響されにくいデータパケットには、問題となるのは、比較的長い時間スケールにわたるチャネルの平均アクセス可能性である。これは、遅延に影響されにくいデータパケットは、最終的にすべてが到着する(例えば、十分な余裕を与える1分間の窓以内)限り、互いに対していつ各自の宛先に到着するかは比較的重要でないためである。それと対照的に、遅延に影響されやすいデータパケットには、互いに関連性のある遅延に影響されやすいパケットの所与のセットがすべて大体同じ時間に到着する(例えば互いから数ミリ秒以内)ことを保証できることが重要であり、そのため、問題となるのは、チャネルの短期間のアクセス可能性である。したがって、短い時間スケールと長い時間スケールの指標は、それぞれ、遅延に影響されやすいデータと遅延に影響されやすいデータの送信を誘導するのに特に適している。
【0022】
遅延に影響されにくいパケットは、長い時間スケールの指標及び短い時間スケールの指標の両方に依存して送信されてよい。
【0023】
大きい時間スケールの指標及び小さい時間スケールの指標はそれぞれ、非アクティブ状態に入り、そこから出る遷移のデューティサイクル、及び第1のアクティブ状態と第2のアクティブ状態との間の遷移のデューティサイクルを伝えてよい。
【0024】
モデル化コンポーネントは、シーケンス中のエネルギー検出ごとに、それぞれの検出時間に収集されたエネルギーの量が空きチャネル評価閾値を上回るかどうかを判定し、上回る場合にのみそのエネルギー検出のインデックスを記憶するように構成されてよく、指標は記憶されたインデックスに基づいて決定される。
【0025】
空きチャネル評価閾値を上回る量についてのインデックスが、大きさMのFIFO構造に入力されてよく、それにより、空きチャネル評価閾値を上回るM個の最も新しいインデックスのみがFIFO構造に記憶され、指標は、FIFO構造に記憶されたインデックスに基づいて決定されてよい。
【0026】
モデル化コンポーネントは、ステートマシンを実行するように構成されてよく、ステートマシンは、干渉源の非アクティブ状態に対応する非アクティブ状態と、干渉源の第1のアクティブ状態に対応する第1のアクティブ状態と、干渉源の第2のアクティブ状態に対応する第2のアクティブ状態とを備え、ステートマシンは、以下のように、複数のエネルギー測定に関係する条件に依存して状態間を遷移するように構成されてよい。
前記条件のうち第1の条件が満たされるとき、非アクティブ状態から第1のアクティブ状態に遷移し、第1の条件を満たすことは、干渉源が非アクティブ状態から出る遷移を意味し、
前記条件のうち第2の条件が満たされるとき、第1の非アクティブ状態から第2のアクティブ状態に遷移し、第2の条件を満たすことは、干渉源が第2のアクティブ状態に入る遷移を意味し、
前記条件のうち第3の条件が満たされるとき、第2のアクティブ状態から第1の非アクティブ状態に遷移し、第3の条件を満たすことは、干渉源が第1のアクティブ状態に入る遷移を意味し、
前記条件のうち第4の条件が満たされるとき、第2のアクティブ状態から非アクティブ状態に遷移し、第4の条件を満たすことは、干渉源が非アクティブ状態に入る遷移を意味し、
指標は、ステートマシンの遷移を追跡することによって推定される。
【0027】
第1の条件は、FIFO構造内のM1個のインデックスが第1の窓の中にあることであってよく、このとき、第2の条件は、FIFO構造内の多くともm1個のインデックスが、第1の窓よりも短い第2の窓の中にあることであり、第3の条件は、FIFO構造内の少なくともm2個のインデックスが第2の窓の中にあることであり、第4の条件は、FIFO構造内の多くともM2個のインデックスが、第1の窓よりも長い第3の窓の中にあることである。
【0028】
装置は、平均干渉電力を推定するように構成された干渉電力推定コンポーネントを備えてよく、平均干渉電力を推定することは、複数のエネルギー検出値を合計することを含み、エネルギー検出値は、a)それぞれの検出時間が、干渉源が第1又は第2のアクティブ状態にあるときと一致し、b)それぞれの検出時間に収集されるエネルギーの量が測定閾値を上回る、シーケンス中のエネルギー検出によってそれぞれが取得される。測定閾値は、空きチャネル評価閾値より低くてよい。
【0029】
エネルギー検出のシーケンスは、定期的なスケジュールに従って行われてよく、
各検出は、シーケンスが定期的になるように、各自のスケジュールされた時間に行われるか、又は、
各エネルギー検出は、シーケンスが疑似定期的になるように、所定の時間間隔からランダムに選択された量だけ各自のスケジュールされた時間からずらされた時間に行われる。
【0030】
チャネルは、装置がその上で通信することができるN個のワイヤレスチャネルのうち1つであってよく、コントローラは、定期的なスケジュールに基づいてそれぞれのエネルギー検出のシーケンスを行うためにN個のチャネルそれぞれにアクセスするように、受信機を制御するように構成されてよく、定期的なスケジュールは周期Tを持ち、シーケンスは、時間的に互いとインターリーブされてよく、各シーケンスは、前記シーケンスの他のそれぞれからT/Nだけ時間的にずらされ、シーケンスが使用されてN個のチャネルにおける干渉をモデル化することができる。
【0031】
装置は、ワイヤレスセンサネットワーク及び/又はワイヤレス照明制御ネットワーク内で使用するために構成されてよい。
【0032】
第2の態様は、干渉源の存在下でワイヤレスチャネルで通信する方法を提供する。この方法は以下のステップを含む。受信機が、チャネルにアクセスしてエネルギー検出のシーケンスを行うように制御され、各エネルギー検出は、それぞれの検出時間におけるチャネル内のエネルギーを収集することを含む。干渉源は、周期的に遷移して非アクティブ状態に入ったり、非アクティブ状態から出るものとして、また非アクティブ状態から出た時には、干渉源がアクティブでありチャネル上に干渉を生じさせている第1のアクティブ状態と、干渉源がアクティブであるがチャネル上に大幅に低いレベルの干渉を生じさせている第2のアクティブ状態との間を周期的に遷移するものとして、モデル化される。干渉源をモデル化することは、エネルギー検出のシーケンスに基づいて、i)非アクティブ状態への遷移及び非アクティブ状態からの遷移を記述する大きい時間スケールの指標、及びii)第1のアクティブ状態と第2のアクティブ状態との間の遷移を記述する小さい時間スケールの指標を決定することを含む。送信機によるデータの送信は、推定された指標に依存して実施される。
【0033】
第3の態様によれば、コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたコードであって、実行されると第3の態様の方法を実施するように構成されたコードを含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】ワイヤレス通信装置の概略ブロック図である。
図1B】複数のワイヤレス通信装置からなるワイヤレスネットワークの概略図である。
図2A】1つのワイヤレスチャネルに関する定期的なエネルギー検出のシーケンスを模式的に説明する図である。
図2B】複数のワイヤレスチャネルに関する定期的なエネルギー検出のシーケンスを模式的に説明する図である。
図2C】1つのワイヤレスチャネルに関する疑似定期的なエネルギー検出のシーケンスを模式的に説明する図である。
図3】モデル化コンポーネントによって実行されるFIFO構造を模式的に説明する図である。
図4】干渉モデル化方法のためのステートマシンを示す図である。
図5】エネルギー検出のシーケンスをスケジュールする方法のフローチャートである。
図6A】干渉電力推定技術のシミュレーションの結果を示す図である。
図6B】大きい時間スケールのデューティサイクル推定技術のシミュレーションの結果のグラフである。
図6C】小さいスケールのデューティサイクル推定技術のシミュレーションの結果のグラフである。
図7A】種々のモードで動作する能動RFID干渉源についてのエネルギー検出測定のシーケンスのグラフである。
図7B】種々のモードで動作する能動RFID干渉源についてのエネルギー検出測定のシーケンスのグラフである。
図7C】種々のモードで動作する能動RFID干渉源についてのエネルギー検出測定のシーケンスのグラフである。
図7D】種々のモードで動作する能動RFID干渉源についてのエネルギー検出測定のシーケンスのグラフである。
図8】ネットワーク性能シミュレーションの結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1Aは、コントローラ6と、モデル化コンポーネント8と、インターフェース10とを備えるワイヤレス通信装置1のブロック図を示す。コントローラ6及びモデル化コンポーネント8は、ハードウェア回路として、適切なプロセッサで実行されるコードとして、又はその両方の組合せとして実現される機能を表す。コントローラ6及びモデル化コンポーネント8は、インターフェース10を介して無線トランシーバ2に接続されており、無線トランシーバ2はそれ自体がアンテナ4に接続されている。トランシーバ2は装置1に一体化され、その場合、インターフェース10は装置に対して内部にあるか、又は一体化されず、例えば、装置1に接続可能な外部モデムの一部とすることができ、その場合、インターフェース10は外部にある(例えば、USB若しくはシリアルポートインターフェース)。
【0036】
トランシーバ2は、ワイヤレス送信機とワイヤレス受信機の両方である。コントローラ6は、アンテナ4を介してRF信号として送信される(又は受信された)データを、トランシーバ2に提供する(又はトランシーバ2からデータを受け取る)。コントローラ6は、トランシーバ2に制御信号を供給することによりトランシーバ2の動作を制御することができる。詳細には、コントローラ6は、トランシーバ2を制御して所望の時間にエネルギー検出(エネルギー測定)を行わせることができる。エネルギー検出は、所望の時間に短い継続時間T0にわたってチャネル内のエネルギーを収集することを含む。エネルギー検出の結果は、トランシーバからモデル化コンポーネント8に伝達されて、エネルギー検出(ED)値を得、これは収集されたエネルギーの量を示す。モデル化コンポーネント8は、それぞれコントローラ6の第1の入力及び第2の入力に接続された第1の出力及び第2の出力を有し、それにより、時間と共に収集されたED値から推定された干渉に関する指標であるLDC、SDCが、コントローラ6に供給される。これについては下記で詳細に説明する。
【0037】
装置1は、センサ装置(すなわちセンサ機能を内蔵している)、及び/又は照明制御装置(すなわち照明制御機能を内蔵している)である。
【0038】
センサ機能を実現するために、コントローラ6は、センサ(例えば光センサ)に接続され、それと対話するように構成される。コントローラ6は、センサからセンサデータ(例えば現在の光レベル)を受け取り、コントローラはそれを送信のためにトランシーバ2に渡し、トランシーバ2は、アンテナ4を介して制御データも受け取り、その制御データがコントローラ6に渡され、それに基づいてコントローラ6がセンサの動作を制御する。
【0039】
照明制御機能を実現するために、コントローラ6は、照明器具と接続され、それと対話するように構成される。照明器具は、照明要素(例えば、LED、LEDの配列、フィラメント電球、又は放電灯)を備え、その光出力は、アンテナ4を介して受け取られる照明制御データに基づいて、例えば照明要素の光束及び/又は色バランスを変化させるためにコントローラ6によって制御することができる。
【0040】
データは、N>1個のワイヤレスチャネルCH1、CH2、...、CHNの1つで送信及び受信することができる。この例では、各チャネルは、アンライセンスRF周波数帯域(例えば、ISM又はホワイトスペース)内の特定の周波数にある搬送波であり、データは、周波数変調又は振幅変調を使用してその搬送波にデータを変調することによってそのチャネルで送信される。データは、個別のパケットの形態で送信及び受信される。
【0041】
図1Bは、複数のそのようなワイヤレス通信装置1A、...、1Fを含む無線通信ネットワーク10であるワイヤレスネットワークを示す。装置1A、...、1Fは、ネットワーク10のノードである。ネットワーク10は、データ(例えばセンサデータ及び/又は照明制御データ等)が、専用のルータやワイヤレスアクセスポイント等を介するのではなく、他のノード1のための中継器として働くノード1によって、ネットワークを通じてワイヤレスに送信されるという点で、メッシュアーキテクチャを有する。ネットワーク10は、例えばZigBeeプロトコルに準拠して動作する。
【0042】
ノード1A、...、1Fは、例えば、センサ装置、照明制御装置、又はそれら両方の組合せとすることができる。例えば、センサノードは、現在の光レベルについてのデータを収集することができ、このデータが使用されて、照明制御ノードによって制御される照明器具の光出力を制御して、一日を通じた周囲自然光レベルの変化を補償するように全光出力を自動的に適合する。
【0043】
特定のワイヤレスチャネル上にあるネットワーク10内の通信ノード1の任意のペアから見ると、そのチャネル上の通信を妨害するネットワーク10内の他のノード1による送信は、例えば同じ又は近い周波数帯域で動作している他のワイヤレスネットワークからなどの、ネットワーク10の外側で発生する信号が干渉に相当するのと同じように、干渉に相当する。これには、そのチャネル上の通信を妨害する帯域内信号及び帯域外信号が含まれる。
【0044】
以下に、疑似リアルタイムのデューティサイクル型無線干渉の特徴付けの方法が提示される。この方法は、ネットワーク10内の各ノード1のモデル化コンポーネント8によって実施される。
【0045】
指摘したように、広く使用される標準的な既存の干渉スキャン手法では、
− 干渉シナリオの重要な特性だけでなく、用途の関連性が見逃される。具体的には、多くの要求される用途及び干渉源の種類は、チャネルを常時占有することを必要とせず、しばしば、ある種のデューティサイクル挙動を持つ。
− また、急速に変化する可能性のある干渉状況をリアルタイムに捉えず、又は過度にリソースを消費し、一方で、センサネットワークやワイヤレス照明制御等の多くの実際的な用途の関心を超える、高度にリアルタイムの干渉検出を提供する。
【0046】
それに対して、下記で提示される方法は、照明制御やセンサネットワーク用途などの低コストで低電力の用途の要件に基づいてバランスがとられる。干渉の挙動は、エネルギー検出サンプルの(1つ又は複数の)シーケンスに基づいて、時間と共に統計的に特徴付けられる。チャネル評価のシーケンスの集約を使用して、以下の点から干渉シナリオを分類する。
i)干渉源がアクティブであるか非アクティブであるかの状態を捉える大きいスケールのデューティサイクル(LDC(large−scale duty cycle))、及び
ii)アクティブである時の干渉源の断続的なパターンを捉える小さいスケールのデューティサイクル(SDC(small−scale duty cycle))。
【0047】
このデューティサイクルの特徴付けは、固定され限定された時間間隔内に、すなわち疑似リアルタイム方式で行われる。
【0048】
チャネル評価のシーケンスを得るために、リアルタイムのチャネルスキャン手法が使用され、これは、通常のトランシーバ動作間に又は他のトランシーバ動作が行われていない時に実行されるエネルギー測定を用いる、規則正しい(定期的、ランダム化された疑似定期的、適応定期的)が、短時間のチャネル評価に基づく。
【0049】
図1Aに戻ると、無線トランシーバ1は、2つの通常のアクティブな動作モードを持ち、それは送信モードと受信モードとである。受信モードでは、トランシーバ2は2つの下位モードも有し、それは、トランシーバ2が有効なパケットを待つリッスンモードと、チャネル内でパケットヘッダが検出されており、パケットが受信されるパケット受信モードである。これらの通常の動作モードの上で、「エネルギー検出」(ED)とも呼ばれるチャネルスキャン動作は、無線トランシーバ2を受信モードに切り替え、次いで短い継続時間T0にわたって特定のチャネル(CH1、CH2、...、CHNの1つ)内の信号エネルギーを収集して、継続時間T0にわたって収集されたエネルギーの量を示すED値を得ることを伴う。このプロセスの間は、トランシーバは、通常のパケットは送信も受信もすることができない。
【0050】
図2Aは、単一のチャネルについての定期的なエネルギー検出スケジュールを示す。間隔T1ごとにエネルギー検出が行われ、間隔T1は実際のエネルギー検出時間T0よりも大幅に大きい。定期的なエネルギー検出スケジュールが図2に示される。T0及びT1の値の実際的な例は、T0=320μs及びT1=100msであり、これらは説明のための例示的な値であることが理解されよう。T1>>T0であるため、通常のトランシーバ動作へのエネルギー検出の影響は最小になる。
【0051】
図2Bは、複数のチャネルCH1、CH2、...、CHNの場合の定期的なエネルギー検出スケジュールを示す。使用される可能性のあるチャネルが複数個存在するときには、エネルギー検出スケジュールは、エネルギー検出動作の間が時間的に最大に隔てられるように、複数のチャネルCH1、CH2、...、CHN間でインターリーブされる。具体的には、計N個のチャネルがあると仮定すると、2つのチャネルにおけるエネルギー検出動作間の時間間隔は、T2=T1/Nとなる(したがって、チャネルnの場合はTn=(n−1)*T1/Nとなる。チャネルの番号付けは恣意的なものであることに留意されたい)。
【0052】
定期的なエネルギー検出の実際的な変形例として、疑似定期的なエネルギー検出スケジュール(図2Cに示される)を用いることができ、その場合は、図示されるように、エネルギー検出動作ごとにランダムジッタが導入される。具体的には、そのような疑似定期的な動作では、それぞれのエネルギー検出動作の開始時間は、スケジュールされた時間の前後のT3間隔内でランダムに選択される。同様に、そのような疑似定期的、又はジッタによる方式は、複数チャネルの事例に拡張することができる(実質的に図2B図2Cの方式の組合せ)。
【0053】
(疑似)定期的なエネルギー検出動作から得られた結果を用いて、当該チャネル又は各チャネルの干渉状況を特徴付けることができる。指摘したように、干渉状況は、データ通信用途への影響を考慮して特徴付けられる。
【0054】
アンライセンス周波数帯域で動作する大半のデータ通信用途は、継続的なパターンではなく、ランダム又はバースト型のデータパターンを持つ。さらに、データは、遅延に影響されにくいものと遅延に影響されやすいものの2種類に分けることができる。
【0055】
遅延に影響されにくいデータには、送信機からのそれぞれの個々のパケットが受信器に到達するために、比較的大きい遅延が許容できる。この種の用途に重要なのは、ある時間内に全体で多数のデータパケットが受信されることである。例えば、1分間に10個のパケットが連続して受信されることが予想されるが、その10個のパケットが1分間の間隔のうち最初に受信されるか、最後に受信されるか、又はランダムに分散しているかは問題でない。
【0056】
遅延に影響されやすいデータには、各パケットが比較的短い間隔内に受信されることを保証することが重要である。例えば、照明の用途には、緊急の状況ですべての照明を点灯できることが重要である。そのような用途には、小さい時間スケール(「小さいスケール」)でのチャネルの平均アクセス可能性を知ることが重要である。
【0057】
上記のような遅延に影響されにくいデータの送信には、大きい時間スケール(「大きいスケール」)内でのチャネルの平均アクセス可能性を知ることが重要であるが、特に大きいスケールのデューティサイクルが高いときには、小さいスケールの変化も関連する可能性がある(その場合、制限因子は小さいスケールの挙動になる)。実際には、大きいスケールのデューティサイクルと小さいスケールのデューティサイクルの積(すなわちSDC*LDC)を、遅延に影響されにくい用途に適用して、単一の指標SDC*LDCで大きいスケール及び小さいスケール両方の挙動を捉えることができる。
【0058】
「大きい時間スケール」及び「小さい時間スケール」は、相対的な語であり、正確な定義は特定用途の要件に依存することに留意されたい。それでも、典型的な状況では、大きい時間スケールの間隔は、小さい時間スケールの間隔よりも数桁大きいことが予想される。
【0059】
その目的のために、モデル化コンポーネント8は、干渉特徴付け方法を実施して、干渉源を、i)周期的に、比較的ゆっくりと遷移して非アクティブ状態に入り、非アクティブ状態から出る、すなわちアクティブと非アクティブとの間を遷移し、ii)周期的に、比較的高速に、そしてアクティブな時にだけ、干渉源がアクティブであり当該チャネルに干渉を生じさせている第1のアクティブ状態と、干渉源がアクティブであるが当該チャネルに干渉を生じさせていない第2のアクティブ状態との間を遷移するものとして、モデル化する。したがって、干渉源は、常に、非アクティブ状態、第1のアクティブ状態、第2のアクティブ状態、の3つの別個の状態の1つにあるものとしてモデル化される。
【0060】
干渉特徴付け方法は、時間と共に収集されるED値に基づいて生成される2つの出力を持ち、それらは、アクティブと非アクティブの間の干渉源の切り替えのデューティサイクルの推定値である、推定される大きいスケールのデューティサイクル(LDC)(すなわち、合計時間のうちの割合としての干渉源がアクティブである平均時間量)と、アクティブである時の「アクティブであり当該チャネルに干渉を生じさせている」と「アクティブであるが当該チャネルに干渉を生じさせていない」との間の干渉源の切り替えのデューティサイクルの推定値である、推定される小さいスケールのデューティサイクル(SDC)(すなわち、干渉源がアクティブである平均時間のうちの割合としての、干渉源がアクティブであり当該チャネルに干渉を生じさせている平均時間量)と、である。
【0061】
遅延に影響されにくいパケットは、大きい時間スケールの指標に依存して送信され(小さい時間スケールの指標を考慮する必要はない)、遅延に影響されやすいパケットは、小さい時間スケールの指標に依存して送信される(大きい時間スケールの指標を考慮する必要はない)。
【0062】
これらのデューティサイクルを、例えばネットワーク全体の通信チャネルを切り替えるための基準として使用するいくつかの異なる方式がある。別の具体例として、光スイッチングスケジュールの更新など、データ量が多く、且つ/又は枢要な用途のトラフィックは、重大なネットワーク干渉状況がある時間間隔内では回避されることがある。
【0063】
干渉源の実際の挙動は、(少なくとも概ね)定期的であり、すなわち周期P1でアクティブと非アクティブの間を、また周期P2<P1で第1のアクティブ状態と第2のアクティブ状態の間を(概ね)定期的に遷移し、よって、LDCは、P1のうち干渉源がアクティブである割合を表し、SCDは、P2のうち干渉源がアクティブで当該チャネルに干渉を生じさせている割合を表す。しかしこれは必要ではなく、例えば、第1のアクティブ状態と第2のアクティブ状態間の遷移は、ランダム又は疑似ランダムな性質であってもよいが、それにも関わらず、干渉源が所与の時点にアクティブで当該チャネルに干渉を生じさせている確率は、適度に一定のままである。その場合でも、SDCは、干渉源の平均的な短い時間スケールの挙動の良好な概観を依然として提供する。
【0064】
図3及び図4を参照して、そのような方法の1つを説明するが、これは、複雑性が低く、必要とするメモリ使用及び計算力が少ない。
【0065】
この手法における主要な要素は、すべてのサンプルを記憶する代わりに、エネルギー検出のサンプルがインデックス付けされることである(すなわち、測定のシーケンスが行われ、そのシーケンス中の各エネルギー測定が、シーケンス中でのそのエネルギー測定の位置に対応するインデックスで表される)。干渉特徴付けプロセスが開始又はリセットされると、カウンタが開始し、エネルギー検出のたびに増分され、現在の測定に割り当てられるインデックスは、カウンタの現在の値に基づく。エネルギー検出は規則正しく行われるので、デューティサイクルを推定する視点からは、ある閾値を超えるサンプルの数に着目すれば十分である。この閾値は、通信のリンク予算分析に基づいて選択することができる。リンク予算分析は、送信機から受信機への通信信号に該当する様々なゲイン、損失、及びフェーディングの分析である。例えば、閾値は、受信機における予想受信信号電力、及び信号受信成功のための要求される信号対ノイズ比に基づいて決定される。
【0066】
すべてのインデックスを記録する必要はなく、ここでは、エネルギー検出値が選択された閾値を超えるときのインデックスのみが記録される。さらに、高いエネルギー検出値を持つインデックスのすべてを記憶する必要がある訳ではなく、後でステートマシンの観点から詳述するように、いくつかの最も新しいそのようなインデックスだけが対象となる。FIFO(「先入れ先出し」)構造を用いて、関連するエネルギー検出値のインデックスを記憶する。
【0067】
図3はFIFO構造14を示し、ここではM個のインデックス16(1)、...、16(M)(まとめて16と参照される)が保持される。ED値が空きチャネル評価(CCA(clear channel assessment))の閾値(例えば、特定の通信システムについてのリンク予算分析に基づいて手動で設定される)を超える場合には、ED動作のインデックスがFIFO14に入力される。CCA閾値は、装置1の通常動作にとって著しく有害ではないチャネル内の干渉の許容レベル(閾値を下回る)とみなされるものと、有害であるチャネル上の干渉の不許容レベル(閾値を上回る)とみなされるものとの間の境界を定義する。
【0068】
したがって、FIFOは、M個(例えばM=10)の最も新しいインデックスを保持し、FIFOが一杯になると、新しいインデックスが追加されたときに、最も古いインデックス(「1番目のインデックス」16(1))が破棄される(「最後のインデックス」16(M)が最も新しいインデックスになる)。CCA閾値は、チャネルに使用するための空きがある(閾値を下回る)ことと、チャネルの干渉レベルが高過ぎて、チャネルの干渉レベルが高過ぎるためにチャネルが不使用となる(閾値を上回る)こととの間の境界を表す。複数のチャネルが同時に監視される場合(図2Bのように)は、複数のそのようなFIFOが各チャネルに1つずつ実施され、互いから独立して更新される。
【0069】
参照符号16(1)、...、16(M)は、FIFO内での位置に関係することに留意されたい。すなわち、FIFO14が更新されると、各インデックス16(n)が変化し、すなわち新しいインデックスが追加されると、その新しいインデックスが最後のインデックス16(M)になり、以前に最後のインデックス16(M)であったものが最後から2番目のインデックス16(M−1)になる等である。1番目のインデックスであったものはFIFOから破棄され、2番目のインデックスであったものが1番目のインデックスになる。
【0070】
図4は、現在のチャネルの干渉の特徴付けに使用できるステートマシン20を示し、これは干渉検出値に関連して実行される。ステートマシン20は、State_NO、State_YES_ON、及びState_YES_OFF、の3つの状態を有する。State_NOは、干渉源が存在しないか、又はその電力が切られている(すなわち非アクティブである)とみなされる干渉源の状態に対応する。この状態は、大きいスケールのデューティサイクルを推定する観点から最も有用である。
【0071】
State_YES_ONは、干渉源が作動されており(すなわちアクティブであり)、現在のチャネルに干渉を生じさせているとみなされる干渉源の状態に対応する。State_YES_OFFは、干渉源が作動されている(すなわちアクティブである)が、現時点では現在のチャネルに干渉を生じさせていないとみなされる干渉源の状態に対応する。
【0072】
一例は、周波数ホッパの形態の潜在的な干渉源である。State_NOは、周波数ホッパの電源が切られていることを意味する。State_YES_ONは、周波数ホッパの電源が入っており、現在、現在のチャネルへの送信を行っていることを意味する。State_YES_OFFは、周波数ホッパの電源が入っているが、現在はホップして現在のチャネルにはないことを意味する。
【0073】
ステートマシン20は、エネルギー検出動作ごとに、その動作のエネルギー検出結果のインデックスがFIFOに入れられるかどうかに関係なく(すなわち、ED値がCCA閾値を上回るか、又は下回るか否かに関係なく)、更新される。下記及び図4では、「current_index」は、最も新しいED動作のインデックスを意味し、その結果は、FIFO14に追加されている場合も、そうでない場合もある。
【0074】
複数の状態間の遷移基準の点からは、FIFOに記憶されたインデックスを使用して、エネルギー検出値が選択された閾値を超えることの最も新しい確率が用いられる。遷移基準は以下に述べられる通りである(Tn:X−>Yは、状態Xから状態Yへの遷移を意味し、「Cn」の表記を使用して、その遷移Tnが発生する条件を表す)。
【0075】
記録された時間のセットが4つ維持され、ステートマシン20が下記で述べるようにして遷移すると更新される。デューティサイクルSDC及びLDCを推定するために使用されるのは、それらの時間変数である。これらについては順次説明する。
【0076】
3つのパラメータτ1、τ2、及びτ3が、ステートマシン20の挙動をパラメータ化する。これらのパラメータの値は、FIFOに利用できるメモリと、それらの遷移条件で使用される百分率の基準とに基づいて、実用的な形で設定される。
T1:State_NO->State_YES_ON:

C1:
FIFO14内のM1個のインデックス(例えばM1=M、すなわち、M個すべてのインデックスの場合は16)が窓[current_index-τ1,current_index](例えばτ1=100)内にある場合は、

新しいt1
=現在FIFO14にある1番目のインデックス16(1)、を記録し、

新しいt2’
=t1(すなわちこれも第1のインデックスに等しい)、を記録する。

T2:State_YES_ON->State_YES_OFF:

C2:
FIFO14内の多くともm1個のインデックスが窓[current_index-τ2,current_index]内にあり、ここでτ2<τ1(例えばτ2=10、m1=1)である場合、

新しいt1’
=現在FIFO14にある最後のインデックス16(M)、を記録し、

T3:State_YES_OFF->State_YES_ON:

C3:
FIFO14の中の少なくともm2個のインデックスが[current_index-τ2、current_index]内(例えばm2=2)にある場合、

新しいt2’
=[current_index-τ2、current_index]の中に現在あるうちで最も古いインデックス、を記録する。

T4:State_YES_OFF->State_NO:

C4:
FIFO14の中で多くともM2個のインデックスが窓[current_index-τ3、current_index]内にあり、ここでτ3≧τ1(例えばτ3=1000、M2=M-1、例えばM2=9)である場合、

新しいt2
=現在FIFO14にある1番目のindex16(1)、を記録する。
【0077】
大まかに言うと、上述の方式は以下のように機能する。FIFO14は、CCA閾値を上回るED値についてのみインデックスを保持することを思い出されたい。したがって、現在保持されているすべてのインデックスがcurrent_indexのτ1以内にある(すなわち条件C1が満たされる)ことは、比較的持続している高いエネルギーレベルが最近チャネルにあることを意味し、それは、その条件C1が最初に満たされた時に、FIFO14の中の1番目のインデックスに対応する時間に始まったと考えることができる。何故ならば、これは、持続している高いエネルギーの期間の開始を表すためである。
【0078】
条件C2及びC3は、干渉源がアクティブである(しかし当該チャネルには定期的にしか干渉を生じさせていない)間隔中の短いデューティサイクルの挙動をモデル化するために、YES_ONとYES_OFFとの間の比較的高速な切り替えを許容する。
【0079】
条件C4が満たされることは、CCA閾値を上回る記録されたチャネル上のアクティブ性の中で最も古いものが、干渉源がもうアクティブでなくなっていることを示すのに十分に古いことを意味し、「十分に古い」ことはパラメータτ3によって設定される。言い換えると、C4が満たされることは、干渉源がアクティブである時でも予想される当該チャネル上の間欠的な非アクティブ性を上回り、それを超える、そのチャネル上の持続している非アクティブ性、したがって、干渉源の非アクティブ状態への切り替わりを示す。条件C4は、過度に容易にState_NOに戻ることなく、State_YES_ONとState_YES_OFF間の切り替えに対応するためのいくらかの非アクティブ性を許容するのに十分に「ゆるい」。遷移条件と、T4はSTATE_YES_OFFからの遷移(STATE_YES_ONに戻ることはない)であることとにより、この遷移は、現在の1番目のインデックスに対応する時間に起こると想定することができる。
【0080】
状態遷移基準C1、...、C4は、State_NOは大きいスケールのデューティサイクルの推定に最も関連して提案され、一方、STATE_YES_ON及びSTATE_YES_OFFは小さいスケールのデューティサイクルの推定に最も関連するようになっている。
【0081】
より具体的には、ステートマシンがState_NOからState_YES_ONに入るには、ある量の高いエネルギー検出値が受信されていなければならず、それにより、エネルギー検出動作と有効なパケットヘッダとの衝突の結果パケットヘッダが干渉と「取り違えられる」などの複数の理由による、散発的な高いエネルギー検出値を簡単に引き起こすことを回避する。
【0082】
さらに、State_NOを出ることとState_NOに入ることとの間で不平衡の基準を用いて、State_NOに入る方がより長い時間を要するようにする。この理由は、状態、State_YES_OFFとState_NOとをよりよく区別するためである。State_YES_ONに入ることとState_YES_OFFに入ることとの間の基準も、異ならせ、互いと重ならないようにする。
【0083】
明らかであるように、上記のm1、m2、M1、M2の値は例示的なものである。実際には、観察間隔、FIFOの大きさ等の他のパラメータに応じて、適切な値が設定される。
【0084】
大きいスケールのデューティサイクルLDCは、
【0085】
【数1】
と決定され、
小さいスケールのデューティサイクルSDCは、
【0086】
【数2】
と決定され、ここで、Nindexは、計画される観察対象インデックスの数、すなわちt1及びt2の値が収集される継続時間中のエネルギー検出の予想数であり、例えば、エネルギー検出動作が、1時間の継続時間にわたって100msごとに1回行われる場合には、Nindex=36000となり、Nindexは、合計継続時間を示すものとして使用される。演算子「Σ」は、ステートマシン20が状態を変える時に記録されたすべての関連する時間にわたる合計を意味する(例えば、Σ(t2−t1)は、一番新しく記録されたt2値から、一番新しく記録されたt1値を引き、それに、二番目に新しく記録されたt2値から二番目に新しく記録されたt1値を引いた値を足すこと等を意味する)。
【0087】
複数のチャネルが同時に監視されるときには、各チャネルに1つずつ、複数のそのようなステートマシンが実行され、互いから独立して更新される。
【0088】
図1Aに戻ると、モデル化コンポーネント8は、ワイヤレスチャネルの平均干渉電力を推定する干渉電力推定コンポーネント8aを含むものと示されている。
【0089】
所与のチャネルの平均干渉電力を推定するには、状態State_YES_ON及びState_YES_OFFにおけるそのチャネルのエネルギー検出値に対して、累積和平均化動作を行い、エネルギー検出インデックスがFIFOによって記録されるための閾値(すなわちCCA閾値)よりも数dB(1dB又はそれ以上)低い測定閾値(MT)より大きい値だけを考慮する。すなわち、平均干渉電力は、
【0090】
【数3】
として推定され、ここで、E={ED│ED>MT、且つState_YES_ON又はState_YES_OFFにある}、すなわち、MTを上回り、ステートマシン20がState_YES_ON又はState_YES_OFF(State_NOではない)のどちらかにある時に測定されたED値の集合であり、また|E|は、Eにある値の数である。累積和は、MTを上回る新しいED値(newED)がState_YES_OFF/State_YES_ONで検出されるたびに、「SUM」及び「|E|」を、
− SUM→SUM+newED;
− |E|→|E|+1
と更新することにより、「電力」を更新することによって維持される。
【0091】
この測定閾値MTは、ランダムノイズによって生じるエネルギー検出値ではなく、干渉によって生じるエネルギー検出値に着目するように選択され、また、控えめな遷移基準がステートマシンによって選択されることから、結果として、STATE_YES_OFF又はSTATE_YES_ONでは瞬間的な干渉が存在せず、すなわち、チャネル内に存在する何らかの関連性のない散発的なエネルギーは、状態遷移条件により自動的に排除される。
【0092】
推定平均干渉電力は、干渉の存在下でデータを送信/受信するための何らかの方策を取るために有用である。例えば、干渉のデューティサイクルが比較的高いが、平均干渉電力は比較的低い、例えばCCA閾値を少し上回る場合には、送信電力を一時的に増大してそれに対処することができる。
【0093】
先に紹介した干渉の特徴付けを無期限に実行することは可能であるが、多くの場合、実際には、1時間などの固定された期間内に特徴付けを取ることが望ましい。したがって、特徴付けの結果は1時間単位で得ることができる。以下の2つの手法のどちらでもこれを実現することができる。第1の手法は、ステートマシンを無期限に動作させるが、1時間ごとの境界における瞬間的な状態を記録し、次いで、それに従ってデューティサイクル及び平均干渉電力レベルを計算するものである。もう1つの手法は、単に、1時間の始まりごとにステートマシンをSTATE_NOにリセットするものである。第2の手法によって生じるバイアスは、計算の性質がFIFO内のインデックスに基づき、実際に実施することが第1の手法よりもはるかに簡単であるため、最小である。
【0094】
干渉源の挙動は、(例えば)1時間の間に変化することもある。しかし、用途の視点からは、一時間などの比較的長い時間の後に、更新された干渉の特徴付けを得れば十分である。これは、この技術が上述のリソースを要するリアルタイムのチャネル推定手法とどのように異なるかの態様の1つである。
【0095】
ED動作中、無線トランシーバは、通常のパケットは送信も受信もすることができない。リアルタイムのエネルギー検出動作が原因となって、枢要なデータが遅延又は欠落しないことを保証するために、エネルギー検出動作のスケジュールが作成される。
【0096】
図5は、スケジューリングのフローチャートを示す。エネルギー検出動作のスケジュールされた時間に、トランシーバが現在データパケットの送信又は受信で使用中であるかどうかが判定される(S2)。使用中でない場合、トランシーバは、短いエネルギー検出を行うように命令され(S4)、使用中である場合は、このスケジュールされたエネルギー検出動作は単にスキップされる(S6)。いずれの場合も、トランシーバは、次のスケジュールされた時間を待って(S8)、次のエネルギー検出動作を行うことを試みる。任意で、このスケジュールされた動作は、実行をランダム化することができる。
【0097】
上記で述べたように規則正しいリアルタイムのエネルギー検出動作を行うときには、数回のエネルギー検出動作をスキップしても大きな影響はない。したがって、エネルギー検出よりもデータ送信を優先することにより、有利に干渉特徴付け方法に与える影響を最小にしながら、枢要なデータが欠落しないことを保証する。
【0098】
本発明者らは、本発明の主題に基づいてシミュレーション及び現場測定を行った。一例として、所与の干渉源によるシミュレーション結果を以下のように提示する。以下で、パラメータを適切に設定すると、推定が、妥当な推定精度をもたらすことを見て取ることができる。
【0099】
シミュレーション条件:
− EDサンプリング間隔100ms
− 干渉:
〇大きいスケールの期間=60s
〇大きいスケールのデューティサイクル=50%
〇小さいスケールの期間=2s
〇小さいスケールのデューティサイクル=10%〜100%
− ランダム干渉振幅=10〜30
− シミュレーション時間:1時間
【0100】
図6Aは、実際の(シミュレーションした)小さいスケールのデューティサイクルの関数としての推定平均電力についてのシミュレーション結果のグラフを示す。図6Bは、実際の小さいスケールのデューティサイクルの関数としての推定大きいスケールのデューティサイクルについてのシミュレーション結果のグラフを示す。図6Cは、実際の小さいスケールのデューティサイクルの関数として推定された小さいスケールのデューティサイクルについてのシミュレーション結果のグラフを示す。
【0101】
本発明者らはまた、提案されるこの干渉特徴付け方法をPhilips Starsense Wireless通信プラットフォームに実施し、実際的な干渉源としての、周波数ホッピング変調方式を用いる能動RFID装置に実地測定を行った。RFID装置は、異なる挙動をする複数のモードを有する。
【0102】
現実のデューティサイクル又は平均電力がどのようなものであるかを正確に知ることは、実際的には可能でない。それでも、小さいスケールのデューティサイクル推定に着目した図7A〜7Dに提示される結果から、適正なパラメータ設定を用いると、適度に正確な推定結果を得ることが可能であることが見て取れる。図7Aは、RFID装置が能動RFID装置のモード1動作をするように構成されたときにトランシーバによって時間と共に収集されたED値のグラフを示し、図7Bはモード2、図7Cはモード3、図7Dはモード4である。
【0103】
【表1】
【0104】
表の項目は、所与のモード及びT1(T1はエネルギー検出動作間の間隔である)について推定された小さいスケールのデューティサイクルの推定である。
【0105】
本発明者らは、実地測定も行って、規則正しいエネルギー検出サンプリングがネットワーク性能に及ぼす影響も評価することにより、通常の送信/受信動作がエネルギー検出動作によって著しく妨害されることはないことを実証した。実験は、868.3MHzチャネルの仮定された欧州設定を用いて、8個のノードを持つ小型のネットワークで行われ、1%のデューティサイクルの制限が規制によって取り込まれる。ノードごとのユニキャストメッセージについての成功率(縦軸)の点から測定されたネットワーク性能の結果が、図8に提示される。この設定ではネットワーク性能への影響は無視できることを見て取ることができる。
【0106】
指摘したように、主題である本発明の一般的な用途には、ワイヤレス照明制御ネットワーク、例えばStarsense Wireless及びLight−on−Demandシステム、並びにアンライセンス帯を使用したセンサネットワーク通信の用途が含まれる。ただし、本主題はこれらの用途に限定されない。
【0107】
上記ではデューティサイクルを検討したが、例えば、関連する遷移を記述する個々の時間をそれぞれが含む時間的な指標など、代替の短い時間スケール及び長い時間スケールの指標が実現可能である。
【0108】
さらに、明らかであるように、ステートマシンの挙動を支配する上記の条件C1〜C4は例示的なものであり、干渉源の二重のデューティサイクル挙動を特徴付けることができる他の適切な条件が明らかであろう。
【0109】
上記では、ステートマシンに基づくデューティサイクル推定を提示したが、例えば、記録されたシーケンス又はエネルギー検出結果のシーケンスに基づく、異なる応答時間を持つデジタルフィルタリング技術又は伝統的な信号推定技術などの異なる方法を用いて、小さいスケール及び大きいスケールのデューティサイクルを推定することができる。
【0110】
図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲から、請求される本発明を実施する際に、開示される実施形態の他の変形例が、当業者によって理解され、実行されることが可能である。特許請求の範囲では、「を含む(comprising)」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数形を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されるいくつかの項目の機能を実現する。ある手段が、互いと異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、それら手段の組合せを有利に使用できないことを意味しない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に、又はその一部として供給される光学記憶媒体又は固体状態媒体などの適切な媒体に記憶/配布されるが、インターネット又は他の有線若しくは無線の遠隔通信システムを介するなど、他の形態で配布されることも可能である。特許請求の範囲に参照符号がある場合は、範囲を制限するものと解釈すべきでない。
【要約】
本開示は、干渉源の存在下でワイヤレスチャネルで通信することに関する。受信機がチャネルにアクセスしてエネルギー検出のシーケンスを行う。干渉源は、周期的に遷移して非アクティブ状態に入ったり、非アクティブ状態から出るものとして、また非アクティブ状態から出た時には、干渉源がアクティブでありチャネル上に干渉を生じさせている第1のアクティブ状態と、干渉源がアクティブであるがチャネル上に大幅に低いレベルの干渉を生じさせている第2のアクティブ状態との間を周期的に遷移するものとして、モデル化される。エネルギー検出のシーケンスに基づいて、大きい時間スケール及び小さい時間スケールの指標が決定される。送信機によるデータの送信は、推定された指標に依存する。
図1A
図1B
図2A-2C】
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8