【実施例】
【0066】
以下に、実施例および比較例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0067】
実施例1
熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)(固有粘度[η]=0.61、ガラス転移温度Tgは70℃、冷結晶化温度Tccは128℃、融点Tmは265℃、溶融結晶化発熱ピーク温度Tmcは215℃、添加剤として平均粒径0.25μmの酸化珪素粒子を0.1wt%含有)を用いた。該PET樹脂の含水率が20ppm以下になるように乾燥した後、押出機に供給して280℃で溶融して3t/hの吐出量で押出し、10μmカットの金属繊維燒結フィルターを通過させて濾過し、口金に導入して溶融フィルムを吐出し、この溶融フィルムに0.06mm径のワイヤー状の電極から負の静電荷を印加させながら冷却ロール上に密着させ冷却、固化させた。該押出フィルムをクロムメッキロールを用いて予熱温度72℃で予備加熱し、その後セラミックロールにてさらに加熱して、長手方向延伸機で延伸温度95℃で3.5倍延伸した後、ガラス転移温度Tg以下に冷却した。続いて該長手方向延伸フィルムの幅方向両端をクリップで把持しながらテンターに導き、延伸温度90℃に加熱された熱風雰囲気中で幅方向に3.8倍延伸後、225℃で熱固定して、厚さ25μmのフィルムを製膜した。
【0068】
縦延伸予熱ロールのうち、最初にフィルムのキャスティングドラム面に接したロールの表面にオリゴマーなどの汚れが経時と共に付着してくるので、そのロールのクリーン化のためにオゾンレス低圧UVランプの主波長を254nmのみにし、該紫外線強度を20mW/cm
2にしてロール表面に照射した。オゾンレス低圧UVランプにはロール幅方向の長さが160mmのストレート管を用いた。このランプをロールの幅方向に均一に照射するために、ロールの幅方向にトラバース(移動速度20m/min)し、縦延伸予熱ロールに連続的に照射した。オゾンレス低圧UVランプに使用した電力は110Wで、ランプ寿命は約6000時間であった。このときの結果を表1に示す。
【0069】
実施例2
実施例1と同様の条件で製膜した。ただし、このとき照射強度は50mW/cm
2 になるように調節した。得られた結果を表1に示す。
【0070】
実施例3
実施例1と同様の条件で製膜した。ただし、このときの照射強度は180mW/cm
2 になるように調節した。得られた結果を表1に示す。
【0071】
実施例4
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプをチャンバーで囲い、同チャンバーの四方に設置された集光鏡の角度と、ロールと紫外線ランプの距離を調節して、照射強度120mW/cm
2 になるように紫外線を集光した。得られた結果を表1に示す。集光鏡による集光で照射強度を調整可能なことを確認した。但し同時に、とくに集光しなくても、照射強度を好ましい範囲に調整できれば、目標とするロール表面の付着物除去効果が得られることも確認した。
【0072】
実施例5
長さ1010mmの長い1本のオゾンレス低圧UVランプをU字型に6回折り曲げて、1本のランプ長さを約160mmにして、ロールに照射するランプを見掛け上6本有るようにしたランプでロールに照射した。得られた結果を表1に示す。ランプの形状を変えても同様の優れたロール表面の付着物除去効果が得られることを確認した。
【0073】
実施例6
実施例1と同様の条件で製膜した。ただし、このとき照射強度は10mW/cm
2 になるように調節した。得られた結果を表1に示す。照射強度を低下させたことによりロール表面の付着物除去効果が若干低下したので、照射強度としては15mW/cm
2 程度以上が望ましいことが判った。
【0074】
比較例1
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプを、254nmの波長の紫外線とともに、オゾンが発生する185nmの波長の紫外線を照射する通常の低圧水銀ランプに代え、実施例1と同様の条件で紫外線を照射して製膜した。ランプからの紫外線によりオゾンが発生したので、被処理ロールのクロムメッキ処理ロールに黒い斑点が出たり、一部腐食のような欠点が見つかったりして、該予熱ロールにダメージが発生しており、フィルムに傷が発生したので、継続して生産はできなかった。さらに、このオゾンガスは人体にも悪影響を与えるので、強制的にランプ周りの空気を排出させたが、完璧な排出は難しく、オゾン臭がしていた。このテストの結果を表1に示した。
【0075】
比較例2
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプの電源を切った以外は実施例1と同じようにしてフィルムを製膜したが、予熱ロールに経時でオリゴマーが付着して得られたフィルム表面にスクラッチ傷や、異物が付着していた。
【0076】
比較例3
実施例1で用いたオゾンレス低圧UVランプを高圧水銀ランプに代えて1kW(使用電力1000W)の照射を行った他は、実施例1と全く同じようにして製膜したところ、ロールのクリーン化が遅いばかり、ロール表面温度が経時と共に上昇して行き、フィルムが部分的にロールに粘着しフィルム表面欠点となった。さらに、このランプで用いる電力も、実施例1の110Wに比べ1000Wと大きく、またランプ寿命も実施例1の約6000時間に比べ約1000時間と短く、しかもランプ価格も高く、ランニングコストが高く付くと言う欠点もあった。
【0077】
【表1】
【0078】
この結果、とくに実施例1〜5では(実施例6でも実用上問題がない程度に)、ロール汚れがなく、且つロール上でのフィルムの滑りや、フィルム表面の擦り傷、掻き傷などは皆無であった。長時間の製膜に対しても問題となるロール汚れは認められなかった。かくして得られたフィルムは、ロール汚れや表面欠点が全く無い平面性の優れたフィルムであった。
【0079】
それに対し、比較例1〜3では、製膜から24時間後ですでにロール表面にわずかに付着物の発生が認められ、72時間後はロール上でフィルム滑りや傷転写などが発生した。この時得られた二軸延伸フィルム表面には異物の付着のみならず、擦り傷・掻き傷などの表面欠点が多く存在した。
【0080】
すなわち、前述の特許文献5のように、たとえ低圧水銀ランプを使用しても、主要波長を120nm−380nmとし220nm以下の波長の紫外線が存在する場合には、比較例1の結果と同様に、オゾンが発生する問題が解消されない。一方、前述の特許文献7のように、310nm−390nmの紫外光の照射強度を大きくすると、比較例3の結果と同様に、ロール昇温が発生してシート状物の粘着等の問題が発生し、かつ、高圧水銀ランプを使用することにより設備費の増加、紫外線漏れ対策の困難性を伴う。本発明では、これらの問題を発生させることなく、目標とするオゾンレスの状態にて、所望のロール汚れの除去が可能になる。
【0081】
さらに、本発明による効果をより明確に確認するために、以下に説明するオゾンレス低圧UVランプを用いたPETオリゴマー汚れの除去効果確認試験を実施した。
【0082】
[オゾンレス低圧UVランプを用いたPETオリゴマー汚れの除去効果確認試験]
1.試験の概要
310nm以下の波長の紫外線はPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに対する透過率はゼロである。これらの紫外線はPETに100%吸収される。PETのオリゴマーは、PETとほぼ同じ組成比のベンゼン核とカルボニル基からなる類似の分子構造のモノマーで構成されていることが判っている。したがって、PETのオリゴマーも310nm以下の波長の紫外線を効率良く吸収すると思われる。試験に用いたオゾンレス低圧UVランプから発生する紫外線は、実質的に、さらに短波長の254nmの波長の紫外線のみであることから、PETオリゴマーに対して極めて吸収されやすく、PETオリゴマーの分解力が高いことが推測される。これを確認するために、オゾンレスの大気中で、このオゾンレス低圧UV照射によるPETオリゴマーの分解除去実験を行った。画像処理ソフト“ImageJ”を使用して、デジタルカメラ写真から試料表面のオリゴマー残量をGray Valueとして測定する方法で、オゾンレス低圧UVランプのオリゴマー除去能力を調べた。
【0083】
2.オリゴマーの種類
A:TD(横)延伸ライン部:
図1に概略構成を示すPET二軸延伸フィルム製造ラインのTD(横)延伸ライン3部分からオリゴマーを採取(概略組成は図に示すようにテレフタル酸(TPA):20%、モノ−2−ヒドロキシエチルテレフタル酸(MHT):30%、環状化合物(環化と略して表記)、特に環状3量体:10%、残りはそれ以外の物質である。)
B:MD(縦)延伸ライン部(
図1に符号2で表示):
採取が難しいため、市販試薬テレフタル酸を代用し、TPA:70%、環状化合物(環化)、特に環状3量体:30%に調製して使用
C:キャスティング装置部:
A−PET(非晶[Amorphous]−PET)シート製造ラインの冷却ロール1(キャスティングロール)[
図1]上部のTダイス4周辺からオリゴマーを採集(TPA:20%、MHT:15%、BHT(ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタル酸):5%、環状化合物(環化)、特に環状3量体:7%、残りはそれ以外の物質である。)
【0084】
3.ロールを想定した試料の表面処理の種類
AT:黒灰色アルミナチタニヤ(Al
2O
3/40%TiO
2)プラズマ溶射膜
Ra:0.08μm以下の研磨仕上げ面
HCr 0.2S:ハードクロムめっき、表面粗度0.2S以下の鏡面研磨面
HCr As Plating:ハードクロムめっき、めっき後のままの磨き無し表面
WCNiCr:タングステンカーバイド系(WC/20%Ni/7%Cr)高速フレーム溶射(HVOF)膜、Ra:0.08μm以下の研磨仕上げ面
【0085】
4.UV照射によるオリゴマー分解残量の測定方法
オリゴマーの付着量はわずかであるため、重量減量は天秤の測定誤差範囲となり重量減ではオリゴマー分解量は判断できない。オリゴマー塗布膜表面は基材よりGray Value(白色度)が高いので、目視だとオリゴマーの残留状態は容易に判断できるが、定量的な表現ができない。そこで、画像処理ソフト“ImageJ”で試験片のデジタルカメラ写真をグレイに変換後に、オリゴマー付着部のピクセル単位のGray Valueを測定し、オリゴマー汚れの残留量の指標とした。
【0086】
基材表面が、オリゴマーで完全に覆れているときはGray Valueは
図2に示す標準グレースケールにて160〜170となる。また、基材表面と同じGray Valueのときはオリゴマーは完全に除去されていることを示している。一部のオリゴマーが分解除去されて基材表面が露出し始めるとGray Valueは下がりはじめ、オリゴマーと基材表面のGray Valueの中間の値を示すようになる。したがって、基材表面と同じGray Valueになるまでは、Gray Valueが高いほどオリゴマー残留が多いことを示している。
【0087】
測定対象試料の測定枠で囲まれた領域全体または、測定線上のGray Value(Pixel単位)の平均値を測定データとした。Gray Value(黒=0→灰色254steps→白=256)の測定により、残留量の定量的表現が可能である。このオリゴマー残留量の測定方法は、目視による判断を半定量化した方法であるが再現性が良い。
【0088】
5.試験条件
(1)PETオリゴマー塗布液:オリゴマー0.8gを100ccエタノールに添加し、攪拌混合。
試薬TPA の塗布液:試薬TPA(テレフタル酸)1gを100ccN,Nジメチルホルムアミドに溶解。この溶解液をさらにトルエンと1:1 混合。
(2)オリゴマーの塗布:塗布液を浸みこませた二つ折り15W×50Lウエスで1〜2回塗り。
(3)試験片のセットと照射距離:シリコンラバーヒーター上に設置、照射距離65mm。
(4)試験片の温度調整:試験片の表面に温調用熱電対をセット。
(5)ブロアーを作動させた状態で試験を行なった。
(6)規定時間ごとに、オリゴマーの分解状況をデジタルカメラで撮影。
【0089】
6.試験装置
図3(A)に示す照射試験機10を用いた。
図3(A)に示すように、ガイドレール11とラボジャッキ・ハンドル12により位置、高さが調整可能なステージ13上に試験片14をセットし、ダクト口15から排気しながら、端子台16、ランプ端子台17を介して給電されるオゾンレス低圧UVランプ18からの特定波長の紫外線を、反射板19による反射も利用しつつ、試験片14に照射した。
図3(B)に示すように、この試験用オゾンレス低圧UVランプ装置20としては、実質発光長φ16×1100L(mm)のオゾンレス低圧UVランプ18を5回折り曲げて160×160(mm)の面状ヒーターに加工したものを用いた。
【0090】
オゾンレス低圧UVランプのガラス管材質:オゾンレス石英ガラス(オゾンを生成する危険性がある220nm以下の波長の紫外線を遮断可能で、同時に254nmの波長の吸収は少ないように重金属等を添加した溶融石英ガラス)
ランプ電力:110W
UV照度:15mW/cm
2(照射距離60〜65mm)
ランプ冷却:ブロアーによる強制空冷
【0091】
使用したオゾンレス石英ガラスの紫外線透過特性を、
図4に、波長(Wavelength:nm)と透過率(transmittance:%)との関係図として、普通溶融石英ガラスと合成石英ガラスと比較して示した。また、使用したオゾンレス低圧UVランプのスペクトルを、波長(Wavelength:nm)と相対強度(%)との関係図として
図5に示した。
【0092】
A.二軸延伸ラインのPETオリゴマーへのオゾンレスUVの照射試験
下記の条件で試験した。試験結果を表2および
図6に示す。さらに、Gray Value測定のためにデジタルカメラで撮影した映像の代表例を
図7、
図8に示す。
オリゴマーの種類:A
基材(試験片):(1)HCr 0.2S
(2)WCNiCr
(3)AT
(4)HCr As Plating
基材温度:71〜75℃
Gray Value の測定枠形状:10×10mm
【0093】
【表2】
【0094】
次に、基材(試験片)の温度のオリゴマー除去性能への影響を、下記条件の試験により調べた。
オリゴマーの種類:A
基材 :HCr As Plating
UV照射距離 :65mm
Gray Value の測定枠形状:10×10mm
測定値は測定枠内部の平均値とした。結果を表3および
図9に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
B.試薬テレフタル酸(TPA)の塗布膜へのオゾンレスUV照射試験
下記の条件で試験した。試験結果を
図10および
図11に示す。
オリゴマーの種類 :B
基材(試験片):HCr As Plating
UV照射距離 :65mm
基材温度 :71〜75℃
Gray Value の測定枠形状:30mm×50mm
測定値は、測定枠の基準線に平行で、30mm幅の線に沿った値の平均値とした。
【0097】
C.A−PETシートオリゴマーへのオゾンレスUV照射試験
下記の条件で試験した。試験結果を
図12〜
図14および表4に示す。
オリゴマーの種類:C(A−PETシートオリゴマー)
基材(試験片):HCr 0.2S
基材温度 :30〜35℃
Gray Value の測定枠形状:25mm×37mm
測定値は、測定枠の基準線に平行で、25mm幅の線に沿った値の平均値とした。
【0098】
図12に示すように、25mm×37mmの測定枠において、UV未照射部、2時間照射部、3時間照射部、5時間照射部、7時間照射部にマスキングを移動させて区分し、それぞれの区分位置のオリゴマー残量をGray Valueにて測定したところ、
図13に示す結果が得られた。それぞれの区分位置におけるオリゴマー残量の代表値を
図13のグラフから読み取ってまとめると、表4に示すようになり、それをグラフにすると、
図14に示すようになる。
【0099】
【表4】
【0100】
上述の一連の試験結果からも分かるように、本発明により、オゾンレスの大気中で、オゾンレス低圧UVランプを用いてオゾンを発生させない特定波長の紫外線のみを照射することによって、優れたオリゴマー除去性能が得られることが確認できた。
【0101】
すなわち、本発明は、オゾンレスの大気中で、オゾンレス低圧UVランプを用いてオゾンを発生させない特定波長の紫外線のみを照射することにより、オゾン発生に伴う問題を生じることなく、例えば上記のようにPETのオリゴマー等の低分子量化合物の付着物を、残存しないように或いは残存したとしてもその残存量を極力小さく抑えるように分解ガス化して、実際に効率よく除去することが可能な方法であり、その本発明による除去効果が、上述の一連の試験によって実証された。