【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。表1に、実施例及び比較例に係る磁性粉の種類、Fe及びCoを主成分とする合金粒子中のCoの含有量(原子%)、平均短軸長(nm)、平均アスペクト比、無機酸化膜の厚さ(nm)、無機酸化膜で被覆された合金粒子に対して被覆される樹脂の量(質量%)、無機酸化膜で被覆された合金粒子と樹脂により構成される複合磁性材料の形態、2GHzにおける複素透磁率の実部μ´、及び磁気損失tanδ
μを示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(実施例1〜実施例11、及び比較例1〜比較例6)
合金粒子は、Coを含む針状のα−FeOOHをH
2中で加熱還元して作製する公知の方法により得た。実施例、及び比較例の中で無機酸化膜を被覆させるものについては、最初にAl
2(SO
4)
3の水溶液中にCoを含むα−FeOOHを混合させ、pH調整した後、濾過、乾燥させたものを加熱し、次にそのようにして得られたものをY(NO
3)
3の水溶液中で混合、乾燥させることで、Al
2O
3、及びY
2O
3を無機酸化膜として被覆させた。表1に示したCo量、無機酸化膜で被覆された合金粒子の平均短軸長、及び平均アスペクト比の違いは、表1に示した原子%のCoを含み、且つ平均短軸長、及び平均アスペクト比の異なるα−FeOOHを用いることで得た。
【0035】
表1に示す磁性粉に対し、アセトン、及び絶縁性樹脂としてエポキシ樹脂を表1に示す質量%添加し、これらをボールミルで60分間混合した後、90℃で60分間乾燥させて混合粉末を得た。
【0036】
次に、得られた混合粉末を、外径7mm、内径3mm、厚さ2mmのトロイダル形状の成形金型に充填し、2tonf/cm
2の圧力にて成形して、トロイダル成形体を得た。
【0037】
(平均短軸長、及び平均アスペクト比)
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM2000FX)を用いて無機酸化膜で被覆された合金粒子を観察し、粒子の短軸長、及び長軸長を測定した。N=100個について短軸長、及び長軸長の平均値をそれぞれ求めて平均短軸長、及び平均長軸長とし、それを元に平均アスペクト比を計算した。
【0038】
(複素透磁率測定)
複素透磁率の実部μ‘、虚部μ“、及び磁気損失tanδ
μは、上述したトロイダル成形体を用いて、ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー(株)製、HP8510C)を使用した同軸型Sパラメーター法により測定した。
【0039】
表1の結果から分かるように、実施例1〜実施例
10、参考例1に係る高周波用圧粉体は、いずれも無機酸化膜が被覆された、Fe、及びCoを主成分とする、平均アスペクト比3以上60未満の合金粒子に、10質量%〜15質量%の樹脂を含み、成形して得られた高周波用圧粉体であり、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.02以下で、且つ2GHzにおける複素透磁率の実部μ´が1.5以上となる。
【0040】
実施例1〜実施例9に係る高周波用圧粉体は、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.01以下となり、磁気損失tanδ
μの値は実施例10に係る高周波用圧粉体の0.02よりも小さい値となる。これは実施例1〜実施例9の高周波用圧粉体においては、無機酸化膜で被覆された合金粒子の平均短軸長が80nm未満であり、磁気損失tanδ
μが、実施例4の高周波用圧粉体について
図1に示したように、GHz帯の広帯域に渡って小さい値となるのに対して、
参考例1の高周波用圧粉体においては、無機酸化膜で被覆された合金粒子の平均短軸長が80nm以上であるため、自然共鳴周波数がより低周波側にシフトすることに伴って、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが増加したことが原因と考えられる。
【0041】
さらに、実施例1〜実施例9に係る高周波用圧粉体は、2GHzにおける複素透磁率の実部μ´が1.7となり、複素透磁率の実部μ´の値は実施例
10に係る高周波用圧粉体の1.5よりも大きい値となる。これは実施例1〜実施例9の高周波用圧粉体においては、混合された樹脂の割合が1.0質量%〜9.0質量%であるのに対して、実施例10の高周波用圧粉体においては、混合された樹脂の割合が15質量%と多いため、高周波用圧粉体に含有される無機酸化膜で被覆された合金粒子の割合が低下することで、2GHzにおける複素透磁率の実部μ´が減少したことが原因と考えられる。
【0042】
比較例1に係る高周波用圧粉体は、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.07となり、磁気損失tanδ
μの値は十分に小さいとは言えない。比較例1に係る高周波用圧粉体で磁気損失tanδ
μが大きくなったのは、磁性粉がFe
3O
4であるため、飽和磁化の値が小さいことが原因であると考えられる。これに対して、実施例1〜実施例
10、参考例1に係る高周波用圧粉体は、磁性粉として無機酸化膜で被覆されたFe、及びCoを主成分とする合金粒子を用いているため、Fe
3O
4と比較して飽和磁化の値が大きく、自然共鳴周波数がより高周波側にあることから、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.02以下になったと考えられる。
【0043】
比較例2に係る高周波用圧粉体は、
図1に示したように、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.05となり、磁気損失tanδ
μの値は十分に小さいとは言えない。比較例2に係る高周波用圧粉体で磁気損失tanδ
μが大きくなったのは、無機酸化膜で被覆されたFe、及びCoを主成分とする軟磁性合金粉の平均アスペクト比が、3未満であることが原因であると考えられる。これに対して、実施例1〜実施例
10、参考例1に係る高周波用圧粉体の平均アスペクト比は3以上60未満であるため、平均アスペクト比3未満の場合と比較して、異方性磁界が大きく、GHz帯での磁気損失tanδ
μが低減され、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.02以下になったと考えられる。
【0044】
比較例3に係る高周波用圧粉体は、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.03となり、磁気損失tanδ
μの値は十分に小さいとは言えない。比較例3に係る高周波用圧粉体で磁気損失tanδ
μが大きくなったのは、無機酸化膜で被覆されたFe、及びCoを主成分とする合金粒子の平均アスペクト比が、60以上であることが原因であると考えられる。これに対して、実施例1〜実施例
10、参考例1に係る高周波用圧粉体の平均アスペクト比は3以上60未満であるため、粒子形状が自然共鳴周波数の高周波化に好適に作用することにより、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.02以下になったと考えられる。
【0045】
比較例4に係る高周波用圧粉体は、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.73となり、磁気損失tanδ
μは過大な値となった。比較例4に係る高周波用圧粉体で磁気損失tanδ
μが過大な値となったのは、Fe、及びCoを主成分とする合金粒子に無機酸化膜が被覆されていないため、合金粒子作製時に粒子の平均アスペクト比を3以上60未満に保つことができず不定形状となり、さらに粗大化したことが原因であると考えられる。これに対して、実施例1〜実施例
10、参考例1に係る高周波用圧粉体は、合金粒子に無機酸化膜が被覆されることで平均アスペクト比が3以上60未満に保たれ、自然共鳴周波数が高周波側にあることから、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.02以下になったと考えられる。
【0046】
比較例5に係る高周波用圧粉体は、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが13となり、磁気損失tanδ
μは過大な値となった。比較例5に係る高周波用圧粉体で磁気損失tanδ
μが過大な値となったのは、高周波用圧粉体に樹脂が含有されていないため、無機酸化膜で被覆された合金粒子の粒子間の絶縁が確保されず、高周波用圧粉体の抵抗率が低下し、渦電流損失が増大したことが原因であると考えられる。これに対して、実施例1〜
実施例10、参考例1に係る高周波用圧粉体は、無機酸化膜で被覆された合金粒子がさらに樹脂で被覆されることで粒子間の絶縁性が保たれ、高周波用圧粉体の抵抗率が高い値に保持されることから、渦電流損失の発生は抑制され、2GHzにおける磁気損失tanδ
μが0.02以下になったと考えられる。
【0047】
比較例6に係るサンプルは、2GHzにおける磁気損失tanδ
μは0.01以下と十分に小さいものの、2GHzにおける複素透磁率の実部μ´が1.3と小さい値となり、複素透磁率の実部μ´は特許文献2に記載されている従来材と比較して大きいとは言えない。比較例6に係るサンプルで複素透磁率の実部μ´が小さい値となったのは、サンプルの形態が圧粉体ではなく、シート成形したものを積層、圧着して作製した複合磁性材料であるため、複合磁性材料に占める無機酸化膜で被覆された合金粒子の割合を増加させることができなかったことが原因であると考えられる。これに対して、実施例1〜
実施例10、参考例1に係る高周波用圧粉体は、サンプルの形態が樹脂を含有した圧粉体であるため、高周波用圧粉体に占める無機酸化膜で被覆された合金粉の割合を増加させることができ、2GHzにおける複素透磁率の実部μ´が1.5以上になったと考えられる。
【0048】
(アンテナ特性)
高周波用圧粉体を電子部品に適用する一例として、実施例2の高周波用圧粉体について、アンテナ特性を評価した。磁性体アンテナは、実施例2の高周波用圧粉体、導体、及び導体と電気的に接続される給電端子から構成される。磁性体アンテナの形状は、10mm×10mm×10mmの立方体であり、矩形形状をした基板上の短辺側端部側に配置されて、給電端子を介して導体に電気的エネルギーが供給される。磁性体アンテナの放射効率は、小型3D放射指向性測定器(SATIMO社製、STARLAB)を用いて測定した。測定の結果、2GHzを中心として放射効率が60%以上となる周波数範囲は216MHzとなり、実施例2の高周波用圧粉体が、磁性体アンテナ用の複合磁性材料として広帯域で有効に用いることができることを確認した。