特許第6242571号(P6242571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242571
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20171127BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20171127BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   B32B9/00 A
   C23C14/08 D
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-245694(P2012-245694)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-96222(P2014-96222A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年8月24日
【審判番号】不服2017-1378(P2017-1378/J1)
【審判請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】梨木 智剛
(72)【発明者】
【氏名】拝師 基希
(72)【発明者】
【氏名】野口 知功
(72)【発明者】
【氏名】石橋 邦昭
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 宮本 純
【審判官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−114070(JP,A)
【文献】 特開2006−244771(JP,A)
【文献】 特許第5190554(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/ 14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および第2面を有するフィルム基材と、該フィルム基材の第1面側に形成された第1透明導電層と、前記フィルム基材の第2面側に形成された第2透明導電体層とを含む透明導電性フィルムであって、
前記フィルム基材は、厚み80μm〜200μmであり、
前記第1透明導電体層は、前記フィルム基材の第1面側から、第1インジウムスズ酸化物層と、第2インジウムスズ酸化物層と、第3インジウムスズ酸化物層とがこの順に積層されてなり、
前記第2透明導電体層は、前記フィルム基材の第2面側から、第4インジウムスズ酸化物層と、第5インジウムスズ酸化物層と、第6インジウムスズ酸化物層とがこの順に積層されてなり、
前記第2インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、第1インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量および第3インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量のいずれよりも大きく、
前記第5インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、第4インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量および第6インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量のいずれよりも大きい、
ことを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記第2インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、6重量%〜15重量%であり、前記第1インジウムスズ酸化物層および前記第3インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、それぞれ1重量%〜5重量%であることを特徴とする、請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記第5インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、6重量%〜15重量%であり、前記第4インジウムスズ酸化物層および前記第6インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、それぞれ1重量%〜5重量%であることを特徴とする、請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記第2インジウムスズ酸化物層の厚みは、前記第1インジウムスズ酸化物層および前記第3インジウムスズ酸化物層の厚さのいずれよりも大きいことを特徴とする、請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記第2インジウムスズ酸化物層の厚みは、5nm〜20nmであり、前記第1インジウムスズ酸化物層および前記第3インジウムスズ酸化物層の厚さは、それぞれ1nm〜10nmであることを特徴とする、請求項4記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記第5インジウムスズ酸化物層の厚みは、前記第4インジウムスズ酸化物層および前記第6インジウムスズ酸化物層の厚さのいずれよりも大きいことを特徴とする、請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記第5インジウムスズ酸化物層の厚みは、5nm〜20nmであり、前記第4インジウムスズ酸化物層および前記第6インジウムスズ酸化物層の厚さは、それぞれ1nm〜10nmであることを特徴とする、請求項6記載の透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指やスタイラスペン等の接触によって情報を入力することが可能な入力表示装置等に適用される透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1枚のフルム基材の両面に、銀塩感光材料からなる透明導電体層が形成された透明導電性フィルムが知られている(特許文献1)。このような両面に透明導電体層を有する透明導電性フィルムは、静電容量方式タッチパネルを作製する場合に、フィルム基材の片面に透明導電体層を形成した透明導電性フィルムを2枚積層する必要がなく、さらに、透明導電体層をパターニング(patterning)した場合に、パターン化された表裏の透明導電体層の位置ずれが小さい、すなわち相対的な位置精度が優れる、という利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−210579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明導電体層としてインジウムスズ酸化物を用いる場合、フィルム基材の片面のみに透明導電体層を形成する場合には何ら問題がなくても、フィルム基材の両面に透明導電体層を形成するとインジウムスズ酸化物の結晶性が極端に悪くなり、表面抵抗値が小さい透明導電性フィルムを得ることができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、フィルム基材の両面にインジウムスズ酸化物層からなる透明導電層が形成された場合であっても、結晶性に優れ、小さい表面抵抗値を実現することができる透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の透明導電性フィルムは、第1面および第2面を有するフィルム基材と、該フィルム基材の第1面側に形成された第1透明導電層と、前記フィルム基材の第2面側に形成された第2透明導電体層とを含む透明導電性フィルムであって、前記フィルム基材は、厚み80μm〜200μmであり、前記第1透明導電体層は、前記フィルム基材の第1面側から、第1インジウムスズ酸化物層と、第2インジウムスズ酸化物層と、第3インジウムスズ酸化物層とがこの順に積層されてなり、前記第2透明導電体層は、前記フィルム基材の第2面側から、第4インジウムスズ酸化物層と、第5インジウムスズ酸化物層と、第6インジウムスズ酸化物層とがこの順に積層されてなり、前記第2インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、第1インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量および第3インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量のいずれよりも大きく、前記第5インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、第4インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量および第6インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量のいずれよりも大きいことを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記第2インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、6重量%〜15重量%であり、前記第1インジウムスズ酸化物層および前記第3インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、それぞれ1重量%〜5重量%である。
【0008】
また好ましくは、前記第5インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、6重量%〜15重量%であり、前記第4インジウムスズ酸化物層および前記第6インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、それぞれ1重量%〜5重量%である。
【0009】
また、前記第2インジウムスズ酸化物層の厚みは、前記第1インジウムスズ酸化物層および前記第3インジウムスズ酸化物層の厚さのいずれよりも大きいことが好ましい。
【0010】
より好ましくは、前記第2インジウムスズ酸化物層の厚みは、5nm〜20nmであり、前記第1インジウムスズ酸化物層および前記第3インジウムスズ酸化物層の厚さは、それぞれ1nm〜10nmである。
【0011】
また、前記第5インジウムスズ酸化物層の厚みは、前記第4インジウムスズ酸化物層および前記第6インジウムスズ酸化物層の厚さのいずれよりも大きいことが好ましい。
【0012】
より好ましくは、前記第5インジウムスズ酸化物層の厚みは、5nm〜20nmであり、前記第4インジウムスズ酸化物層および前記第6インジウムスズ酸化物層の厚さは、それぞれ1nm〜10nmである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィルム基材の両面に形成される第1,第2透明導電体層の双方を三層構造とし、第1透明導電体層における第2インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量が、第1,第3インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量のいずれよりも大きく、また、第2透明導電体層における第5インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量が、第4,第6インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量のいずれよりも大きい。本構成によれば、フィルム基材の両面にインジウムスズ酸化物層からなる透明導電層が形成された場合であっても、結晶性に優れ、表面抵抗値の小さい透明導電性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る透明導電性フィルムの構成を概略的に示す断面図である。
図2図1における第1透明導電体層の構成を示す部分拡大断面図である。
図3図1における第2透明導電体層の構成を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る透明導電性フィルムの構成を概略的に示す断面図である。尚、図1における各層の厚みは、その一例を示すものであり、本発明のフィルムセンサにおける各層の厚みは、図1のものに限られないものとする。
【0017】
図1に示すように、本発明の透明導電性フィルム1は、面2a(第1面)および面2b(第2面)を有するフィルム基材2と、フィルム基材2の面2a側に形成された透明導電体層3(第1透明導電体層)と、フィルム基材2の面2b側に形成された透明導電体層4(第2透明導電体層)とを含んでいる。
【0018】
透明導電体層3は、フィルム基材2の面2a側から、インジウムスズ酸化物層5(第1インジウムスズ酸化物層)と、インジウムスズ酸化物層6(第2インジウムスズ酸化物層)と、インジウムスズ酸化物層7(第3インジウムスズ酸化物層)とがこの順に積層されてなる。また、透明導電体層4は、フィルム基材2の面2b側から、インジウムスズ酸化物層8(第4インジウムスズ酸化物層)と、インジウムスズ酸化物層9(第5インジウムスズ酸化物層)と、インジウムスズ酸化物層10(第6インジウムスズ酸化物層)とがこの順に積層されてなる。
【0019】
そして、インジウムスズ酸化物層6の酸化スズ含有量は、インジウムスズ酸化物層5の酸化スズ含有量およびインジウムスズ酸化物層7の酸化スズ含有量のいずれよりも大きい。また、インジウムスズ酸化物層9の酸化スズ含有量は、インジウムスズ酸化物層8の酸化スズ含有量およびインジウムスズ酸化物層10の酸化スズ含有量のいずれよりも大きい。
【0020】
このように本発明では、フィルム基材2の面2a,2bに形成される透明導電体層3,4の双方を三層構造とし、各透明導電体層において、酸化スズ含有量が大きいインジウムスズ酸化物層を、相対的に酸化スズ含有量が小さい2つのインジウムスズ酸化物層の間に挟み込んでいる。本構成により、透明導電体層3,4全体の結晶性を格段に向上することができる。換言すれば、低温・短時間の加熱処理条件で、各インジウムスズ酸化物層を非晶質から結晶質に容易に転化することができ、その結果、透明導電性フィルムの表面抵抗値を小さくすることが可能となる。
【0021】
次に、透明導電性フィルム1の各構成要素の詳細を以下に説明する。
【0022】
(1)フィルム基材
本発明におけるフィルム基材2は、可撓性を有するシート状の部材であり、一方の主面である面2aと、他方の主面である面2bとを有する。面2aには透明導電体層3が、面2bには透明導電体層4がそれぞれ形成されている。
【0023】
上記フィルム基材を形成する材料としては、透明性や耐熱性に優れるものが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリシクロオレフィン(polycycloolefin)、ポリカーボネート(polycarbonate)である。上記フィルム基材は、その表面に易接着層やハードコート層を有していてもよい。
【0024】
上記フィルム基材の厚みは、特に制限はなく、例えば20μm〜200μmである。一般に、基材内部の揮発成分量を少なくし、インジウムスズ酸化物層の結晶化に及ぼす影響を少なくするために、フィルム基材の厚みは小さい方が好ましいが、本発明の構成であれば、フィルム基材の厚みが大きくても(例えば、80μm〜200μm)、インジウムスズ酸化物層を十分に結晶化させることができる。
【0025】
(2)第1透明導電体層
第1透明導電体層としての透明導電体層3は、フィルム基材2の面2aに、インジウムスズ酸化物層5、インジウムスズ酸化物層6およびインジウムスズ酸化物層7がこの順に積層されてなる三層膜である。また、インジウムスズ酸化物層6の酸化スズ含有量は、インジウムスズ酸化物層5およびインジウムスズ酸化物層7の酸化スズ含有量よりも大きい。
【0026】
インジウムスズ酸化物層6の厚みは、図2に示すように、好ましくは、インジウムスズ酸化物層5およびインジウムスズ酸化物層7の厚さのいずれよりも大きい。インジウムスズ酸化物層6の厚みは、好ましくは5nm〜20nmであり、インジウムスズ酸化物層5およびインジウムスズ酸化物層7の厚さは、好ましくはそれぞれ1nm〜10nmである。
【0027】
透明導電体層3の総厚み(インジウムスズ酸化物層5,6,7の厚みを合計した値)は、好ましくは7nm〜40nmである。
【0028】
本発明に用いられるインジウムスズ酸化物(indium tin oxide)は、酸化インジウム(In)に酸化スズ(SnO)がドープされた化合物である。酸化インジウムに酸化スズを添加すると、インジウム(3+)の格子の一部にスズ(4+)が置換され、その際に生成する電子が電気伝導に寄与するキャリアとなる。
【0029】
インジウムスズ酸化物層6の酸化スズ含有量は、好ましくは6重量%〜15重量%であり、さらに好ましくは8重量%〜12重量%である。インジウムスズ酸化物層5およびインジウムスズ酸化物層7の酸化スズ含有量は、好ましくはそれぞれ1重量%〜5重量%であり、さらに好ましくは2重量%〜4重量%である。なお、上記酸化スズ含有量は、酸化スズの重量を(SnO)、酸化インジウム(In)としたとき、式:{(SnO)/(In+SnO)}×100 から求められる値である。
【0030】
透明導電体層3の結晶化後(加熱処理後)の表面抵抗値は、200Ω/□(単位:ohms per square)以下であり、好ましくは100Ω/□〜160Ω/□である。
【0031】
(3)第2透明導電体層
第2透明導電体層としての透明導電体層4は、フィルム基材2の面2bに、インジウムスズ酸化物層8、インジウムスズ酸化物層9およびインジウムスズ酸化物層10がこの順に積層されてなる三層膜である。また、インジウムスズ酸化物層9の酸化スズ含有量は、インジウムスズ酸化物層8およびインジウムスズ酸化物層10の酸化スズ含有量よりも大きい。
【0032】
インジウムスズ酸化物層9の厚みは、図3に示すように、好ましくは、インジウムスズ酸化物層8およびインジウムスズ酸化物層10の厚さのいずれよりも大きい。インジウムスズ酸化物層9の厚みは、好ましくは5nm〜20nmであり、インジウムスズ酸化物層8およびインジウムスズ酸化物層10の厚さは、好ましくはそれぞれ1nm〜10nmである。
【0033】
透明導電体層4の総厚み(インジウムスズ酸化物層8,9,10の厚みを合計した値)は、好ましくは7nm〜40nmである。
【0034】
インジウムスズ酸化物層9の酸化スズ含有量は、好ましくは6重量%〜15重量%であり、さらに好ましくは8重量%〜12重量%である。インジウムスズ酸化物層8およびインジウムスズ酸化物層10の酸化スズ含有量は、好ましくはそれぞれ1重量%〜5重量%であり、さらに好ましくは2重量%〜4重量%である。
【0035】
透明導電体層4の結晶化後(加熱処理後)の表面抵抗値は、200Ω/□以下であり、好ましくは100Ω/□〜160Ω/□である。
【0036】
次に、上記のように構成される透明導電性フィルムの製造方法を説明する。なお、以下に説明する製造方法は例示であり、本発明に係る透明導電性フィルムの製造方法は、これに限られるものではない。
【0037】
先ず、500nm〜5000nmの長尺状フィルム基材が巻かれてなるロールをスパッタ装置内に入れ、これを一定速度で巻き戻しながら、スパッタ法により長尺状フィルム基材の第1面に、第1,第2,第3インジウムスズ酸化物層を順次積層して、第1透明導電層を形成する。次に、長尺状フィルム基材の表裏を反転させ、該長尺状フィルムの第2面に、第4,第5,第6インジウムスズ酸化物層を順次積層し、第2透明導電層を形成する。
【0038】
上記スパッタ法は、低圧気体中で発生させたプラズマ中の陽イオンを、負電極である焼成体ターゲットに衝突させることにより、上記焼成体ターゲット表面から飛散した物質を基板に付着させる方法である。
【0039】
各インジウムスズ酸化物層の酸化スズ含有量は、上記スパッタ装置内に設置する焼成体ターゲット材の酸化スズ含有量を変えることによって調整することができる。各インジウムスズ酸化物層の厚みは、長尺状フィルム基材の搬送速度を変化させるか、あるいはターゲット材の個数を増減させることで、適宜調整することができる。
【0040】
各インジウムスズ酸化物層が形成された長尺状フィルムは、一旦、巻き回してロールにし、これを巻き戻しながら、加熱オーブン内に連続的に搬送して加熱処理される。フィルム基材に形成された第1〜第6インジウムスズ酸化物層は、加熱処理によって非晶質から結晶質に転化する。本発明の透明導電性フィルムは結晶性に優れるため、上記加熱処理の条件は、低温・短時間でよく、加熱温度は、好ましくは140℃〜170℃であり、加熱時間は、好ましくは30分〜60分である。
【0041】
本実施形態によれば、フィルム基材2の両面に形成される透明導電体層3,4の双方を三層構造とし、透明導電体層3におけるインジウムスズ酸化物層6の酸化スズ含有量が、インジウムスズ酸化物層5,7の酸化スズ含有量のいずれよりも大きく、また、透明導電体層4におけるインジウムスズ酸化物層9の酸化スズ含有量が、インジウムスズ酸化物層8,10の酸化スズ含有量のいずれよりも大きい。このような構成によれば、透明導電体層3,4全体の結晶性を格段に向上することができる。また、低温・短時間の加熱処理条件であっても、各インジウムスズ酸化物層を非晶質から結晶質に容易に転化することができ、その結果、透明導電性フィルム1の表面抵抗値を小さくすることが可能となる。
【0042】
以上、本実施形態に係る透明導電性フィルムについて述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0043】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に、厚み30nmメラミン樹脂を含む熱硬化性樹脂のアンダーコート層が形成された長尺状フィルム基材のロールを準備した。
【0045】
このロールをスパッタ装置に入れ、一定速度で巻き戻しながら、上記長尺状フィルム基材の第1面に、酸化スズ含有量が3.3重量%の第1インジウムスズ酸化物層、酸化スズ含有量10重量%の第2インジウムスズ酸化物層、および酸化スズ含有量3.3重量%の第3インジウムスズ酸化物層を順次積層し、総厚み28nmの第1透明導電体層を作製した。
【0046】
次に、上記長尺状フィルム基材を反転させ、該長尺状フィルム基材の第2面に、酸化スズ含有量が3.3重量%の第4インジウムスズ酸化物層、酸化スズ含有量10重量%の第5インジウムスズ酸化物層、および酸化スズ含有量3.3重量%の第6インジウムスズ酸化物層を順次積層し、総厚み28nmの第2透明導電体層を作製した。
【0047】
各インジウムスズ酸化物層が形成された長尺状フィルム基材を、スパッタ装置から取り出し、一旦巻き回してロールにし、これを巻き戻しながら、150℃の加熱オーブン内連続的に搬送して、60分間加熱処理した。その結果、フィルム基材に形成された第1〜第6インジウムスズ酸化物層は、加熱処理にて非晶質から結晶質に転化した。
(比較例1)
第1インジウムスズ酸化物層、および第4インジウムスズ酸化物層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
(比較例2)
第1インジウムスズ酸化物層、第3インジウムスズ酸化物層、第4インジウムスズ酸化物層および第6インジウムスズ酸化物層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルムを作製した。
【0048】
次に、これら実施例1および比較例1〜2を、以下の方法にて測定・評価した。
【0049】
(1)表面抵抗値の測定
JIS K7194に準じて、4端子法により測定した。
【0050】
(2)透明導電体層の結晶状態の確認
透過型電子顕微鏡(日立製作所製 製品名「H−7650」)を用いて、倍率25,000倍で透明導電体層の表面状態を観察し、結晶粒が全面に存在するものを結晶質(結晶化)と判断した。
【0051】
上記(1)〜(2)の方法にて測定・評価した結果を表1〜表2に示す。
【表1】

【表2】

表1〜表2の実施例1に示すように、第1透明導電体層を三層構造とし、第2インジウムスズ酸化物層(SnO:10wt%)の厚みを14nm、第1,第3インジウムスズ酸化物層(SnO:3.3wt%)の厚みを7nmとし、総厚みを28nmとすると、加熱処理後の透明導電体層表面が結晶質となり、良好な表面抵抗値が得られた。また、第2透明導電体層における第5インジウムスズ酸化物層(SnO:10wt%)の厚みを14nm、第4,第6インジウムスズ酸化物層(SnO:3.3wt%)の厚みを7nmとし、総厚みを28nmとすると、加熱処理後の透明導電体層表面が結晶質となり、良好な表面抵抗値が得られた(135Ω/□)。
【0052】
一方、表1〜表2の比較例1に示すように、第1透明導電体層を二層構造とし、第2インジウムスズ酸化物層(SnO:10wt%)の厚みを14nm、第3インジウムスズ酸化物層(SnO:3.3wt%)の厚みを14nmとし、第1透明導電体層の総厚みを28nmとすると、加熱処理後の透明導電体層表面が非晶質となり、表面抵抗値が大幅に増大した(350Ω/□)。同様に、第2透明導電体層を二層構造とし、第5インジウムスズ酸化物層(SnO:10wt%)の厚みを14nm、第6インジウムスズ酸化物層(SnO:3.3wt%)の厚みを14nmとし、第2透明導電体層の総厚みを28nmとすると、加熱処理後の透明導電体層表面が非晶質となり、表面抵抗値が大幅に増大した。
【0053】
また、比較例2に示すように、第1透明導電体層を一層構造とし、第2インジウムスズ酸化物層(SnO:10wt%)の厚みを28nm(第1透明導電体層の総厚みが28nm)とすると、加熱処理後の透明導電体層表面が非晶質となり、表面抵抗値が大幅に増大した(350Ω/□)。同様に、第2透明導電体層を一層構造とし、第2インジウムスズ酸化物層(SnO:10wt%)の厚みを28nm(第2透明導電体層の総厚みが28nm)とすると、加熱処理後の透明導電体層表面が非晶質となり、表面抵抗値が大幅に増大した。
【0054】
したがって、フィルム基材の両面に形成した各透明導電体層を三層構造とし、酸化スズ含有量が大きい第2インジウムスズ酸化物層を、酸化スズ含有量が小さい第1,第3インジウムスズ酸化物層の間に挟み込むことによって、透明導電体層全体の結晶性が格段に向上し、表面抵抗値の小さい透明導電性フィルムが得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る透明導電性フィルムの用途は、特に制限はなく、好ましくはスマートフォンやタブレット端末(Slate PCともいう)等の携帯端末に使用される静電容量方式タッチセンサである。
【符号の説明】
【0056】
1 透明導電性フィルム
2 フィルム基材
2a,2b 面
3,4 透明導電体層
5,6,7,8,9,10 インジウムスズ酸化物層
図1
図2
図3