特許第6242572号(P6242572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242572
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】医用画像撮影装置および画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   A61B6/03 360D
   A61B6/03 360J
   A61B6/03 360G
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-260821(P2012-260821)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-104249(P2014-104249A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】前田 達郎
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−049498(JP,A)
【文献】 特表2011−524754(JP,A)
【文献】 特開2011−206155(JP,A)
【文献】 特表2010−500079(JP,A)
【文献】 特開2006−034337(JP,A)
【文献】 特開2005−199040(JP,A)
【文献】 特開2004−174254(JP,A)
【文献】 特開2007−289335(JP,A)
【文献】 特開2007−061622(JP,A)
【文献】 MORI K,CAD system for quantitative evaluation of chronic obstructive pulmonary disease based on 3-D CT images,INTERNATIONAL CONGRESS SERIES,2003年 6月,V1256,P1049-1054
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の内部形態を反映したデータを収集するデータ収集部と、
前記データ収集部が収集したデータに基づき、被検体の内部形態を表す画像データを生成する画像生成部と、
前記画像データに対して、気管支の形状に基づいて気管支の周囲に存在する対象領域を注目する気管支領域について設定する設定部と、
前記対象領域内に存在する肺気腫を含むCT値低吸収領域の分布を表すパラメータを、前記対象領域毎に算出するパラメータ算出部と、
記パラメータに基づき、気管支狭窄のリスクがあるリスク領域を前記対象領域毎に特定するリスク領域特定部と、
を備え
前記画像生成部は、画像データとして被検体の肺を含むボリュームデータを生成し、
前記パラメータ算出部は、前記ボリュームデータに基づいて生成される気管支のクロスカット画像データにおいて、気管支の周囲におけるCT値低吸収領域の分布角度を、前記パラメータとして算出することを特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項2】
前記画像生成部は、画像データとして被検体の肺を含むボリュームデータを生成し、
前記パラメータ算出部は、前記ボリュームデータにおいて、前記各対象領域と、当該各対象領域内に存在する肺気腫を含むCT値低吸収領域との体積比を表すパラメータをさらに算出することを特徴とする請求項1に記載の医用画像撮影装置。
【請求項3】
前記リスク領域特定部が特定した領域を報知するリスク領域報知部をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医用画像撮影装置。
【請求項4】
前記画像生成部により生成された画像データに基づく画像を表示する表示部をさらに備え、
前記リスク領域報知部は、前記表示部に表示された画像上で、前記リスク領域特定部が特定した領域を表すことにより、当該領域を報知することを特徴とする請求項3に記載の医用画像撮影装置。
【請求項5】
前記設定部は、気管支の芯線、内壁および外壁のいずれか1つから当該気管支の外側に向かって規定距離の範囲を前記対象領域として設定することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の医用画像撮影装置。
【請求項6】
被検体の内部形態を反映したデータを収集し、収集したデータに基づき被検体の内部形態を表す画像データを生成する医用画像撮影装置により生成された画像データに対して、気管支の形状に基づいて気管支の周囲に存在する対象領域を注目する気管支領域について設定する設定部と、
前記対象領域内に存在する肺気腫を含むCT値低吸収領域の分布を表すパラメータを、前記対象領域毎に算出するパラメータ算出部と、
記パラメータに基づき、気管支狭窄のリスクがあるリスク領域を前記対象領域毎に特定するリスク領域特定部と、
を備え
前記画像データは、被検体の肺を含むボリュームデータであり、
前記パラメータ算出部は、前記ボリュームデータに基づいて生成される気管支のクロスカット画像データにおいて、気管支の周囲における肺気腫を含むCT値低吸収領域の分布角度を、前記パラメータとして算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
前記画像データは、被検体の肺を含むボリュームデータであり、
前記パラメータ算出部は、前記ボリュームデータにおいて、前記各対象領域と、当該各対象領域内に存在する肺気腫を含むCT値低吸収領域との体積比を表すパラメータをさらに算出することを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記リスク領域特定部が特定した領域を報知するリスク領域報知部をさらに備えることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像データに基づく画像を表示する表示部をさらに備え、
前記リスク領域報知部は、前記表示部に表示された画像上で、前記リスク領域特定部が特定した領域を表すことにより、当該領域を報知することを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記設定部は、気管支の芯線、内壁および外壁のいずれか1つから当該気管支の外側に向かって規定距離の範囲を前記対象領域として設定することを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
被検体の内部形態を反映したデータを収集するデータ収集部と、
前記データに基づき、被検体の内部形態を表す画像データを生成する画像生成部と、
前記画像データに基づいて生成される気管支の断面を含む断層像に基づいて、当該断層像に描出された気管支の周囲に存在する肺気腫を含むCT値低吸収領域の分布角度を表すパラメータを算出するパラメータ算出部と、
を備えることを特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項12】
被検体の内部形態を反映したデータを収集し、収集したデータに基づき被検体の内部形態を表す画像データを生成する医用画像撮影装置により生成された画像データに基づいて生成される気管支の断面を含む断層像に基づいて、当該断層像に描出された気管支の周囲に存在する肺気腫を含むCT値低吸収領域の分布角度を表すパラメータを算出するパラメータ算出部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体の内部形態を表す画像データを生成する医用画像生成装置および該装置によって生成された画像データを処理する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気管支と肺気腫の病態について研究が進み、肺気腫が気管支の周囲に存在する場合に、気管支壁がその形状を保てなくなり、気管支が狭窄してしまうことが解明されてきた。
【0003】
従来、例えばX線CT(Computed Tomography)装置にて撮影されたCT画像を用いて気管支の疾患の状態を評価するに当たっては、先ずCT画像から気管支壁に相当する部分を抽出し、抽出した部分の形状に基づいて気管支の狭窄率を計測する手法などが用いられている。
【0004】
気管支が狭窄すると、その治療において患者は多大な負担を負うことになる。そのため、気管支が狭窄する前に狭窄のリスクが有るか否かを評価して、リスクが有る場合には生活習慣の改善などにより狭窄を未然に防ぐことが好ましい。
【0005】
上記のような従来の手法においては、実際に狭窄した気管支の状態を評価することができるが、今後に気管支が狭窄するリスクの有無までは評価することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、気管支の狭窄に関するリスクを評価する医用画像撮影装置および画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る医用画像撮影装置は、データ収集部と、画像生成部と、パラメータ算出部と、リスク領域特定部とを備える。上記データ収集部は、被検体の内部形態を反映したデータを収集する。上記画像生成部は、上記データ収集部が収集したデータに基づき、被検体の内部形態を表す画像データを生成する。上記パラメータ算出部は、上記画像生成部により生成された画像データに基づいて、当該画像データに描出された気管支の周囲に存在する肺気腫を含むCT値低吸収領域の分布を表すパラメータを算出する。上記リスク領域特定部は、上記パラメータ算出部が算出したパラメータに基づき、気管支の狭窄に関するリスクが有る気管支の領域を特定する。
【0009】
また、一実施形態に係る画像処理装置は、パラメータ算出部と、リスク領域特定部とを備える。上記パラメータ算出部は、被検体の内部形態を反映したデータを収集し、収集したデータに基づき被検体の内部形態を表す画像データを生成する医用画像撮影装置により生成された画像データに描出された気管支の周囲に存在する肺気腫を含むCT値低吸収領域の分布を表すパラメータを算出する。上記リスク領域特定部は、上記パラメータ算出部が算出したパラメータに基づき、気管支の狭窄に関するリスクが有る気管支の領域を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態におけるX線CT装置の要部構成を示すブロック図。
図2】肺気腫による気管支の狭窄を説明するための図。
図3】気管支狭窄のリスク評価機能に係る一連の動作を示すフローチャート。
図4】気管支形状、芯線、対象領域等の関係を示す模式図。
図5】気管支のクロスカット画像データを示す模式図。
図6】リスク領域の報知の一例を示す図。
図7】第2の実施形態に係る画像処理装置の要部構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する要素については同一の符号を付し、重複説明は省略する。
【0012】
(第1実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
本実施形態では、医用画像撮影装置の一例として、X線CT装置を開示する。
【0013】
[X線CT装置の全体構成]
図1は、本実施形態におけるX線CT装置1の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、X線CT装置1は、架台装置2と、コンソール装置3とを備える。
【0014】
架台装置2は、本実施形態に係るデータ収集部として機能するものであり、被検体PにX線を曝射し、被検体Pを透過したX線を検出することにより、被検体Pの内部形態を反映したデータを収集する。なお、X線CTシステムの撮影系には、X線管球と検出器システムとが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプや、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管球のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあるが、本実施形態では現状において主流を占めている回転/回転タイプのX線CT装置を例示する。
【0015】
図1に示すように、架台装置2は、固定部10、回転部11、寝台12、X線管球13、X線検出器14、給電部15、高電圧発生部16、データ収集回路(DAS)17、データ伝送部18、および架台寝台駆動部19等を備える。
【0016】
回転部11には開口部110が設けられている。寝台12は、この開口部110内に被検体Pを搬送する。
【0017】
X線管球13は、X線を発生する真空管であり、回転部11に取り付けられている。X線検出器14は、被検体Pを透過したX線を検出する検出器システムであり、X線管球13に対向する向きで回転部11に取り付けられている。
【0018】
固定部10には、商用交流電源等の外部電源から動作電力が供給される。固定部10に供給された動作電力は、例えばスリップリングである給電部15を介して回転部11が備える各部に伝達される。
【0019】
高電圧発生部16は、高電圧変圧器、フィラメント加熱変換器、整流器、および高電圧切替器等で構成されており、給電部15から供給される動作電力を高電圧変換してX線管球13に供給する。
【0020】
X線管球13は、高電圧発生部16から高電圧の供給を受けると、X線を発生する。X線検出器14は、M×Nのマトリクス状に配列された検出素子を備える。各検出素子は、入射したX線に応じた電荷を蓄える。X線検出器14は、各検出素子が蓄えた電荷を所定のタイミングで読み出してデータ収集回路17に出力する。
【0021】
データ収集回路17は、DASチップが配列された複数のデータ収集素子列を有し、X線検出器14から入力されるM×Nのチャンネルに関する膨大なデータ(1ビューあたりのM×Nチャンネル分のデータを以下「生データ」と呼ぶ)に対して増幅処理やA/D変換処理を施す。データ収集回路17は、増幅処理やA/D変換処理を施した後の生データをデータ伝送部18に出力する。
【0022】
データ伝送部18は、例えば回転部11側に設けられた発光部と固定部10側に設けられた受光部とを備え、これら発光部と受光部との間で光通信することにより、データ収集回路17から入力された投影データを固定部10側に伝送する。
【0023】
架台寝台駆動部19は、架台装置2の各部を制御する。例えば被検体Pの撮影時において、架台寝台駆動部19は、高電圧発生部16に高電圧を発生させることでX線管球13にX線を発生させ、開口部110に挿入された被検体Pの体軸方向に平行な中心軸のまわりで回転部11を高速回転させつつ、被検体Pを寝台12により上記体軸方向に移動させる。このようにして被検体Pが広範囲にスキャンされる。
【0024】
次に、コンソール装置3について説明する。コンソール装置3は、コントローラ20、前処理部21、再構成部22、記憶部23、入力部24、画像処理部25、表示部26、およびデータ/制御バス30等を備える。
【0025】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)やメモリを主体として構成される。コントローラ20は、CPUにてメモリが記憶するコンピュータプログラムを実行することにより、撮影処理、データ処理、および画像処理等の各種処理に関する統括的な制御を行う。
【0026】
前処理部21は、データ伝送部18を介してデータ収集回路17から生データを受け取り、受け取った生データに対して感度補正やX線強度補正を施す。以下の説明においては、当該前処理部21によって各種補正が施された後の生データを「投影データ」と呼ぶ。
【0027】
再構成部22は、本実施形態に係る画像生成部として機能するものであり、所定の再構成パラメータ(再構成領域サイズ、再構成マトリクスサイズ、関心部位を抽出するための閾値等)に基づいて投影データを再構成処理することで、所定のスライス数分の再構成画像データを生成する。
【0028】
記憶部23は、前処理部21がデータ収集回路17から受け取った生データ、前処理部21にて生成された投影データ、再構成部22にて生成された再構成画像データ等の各種データを記憶する。
【0029】
入力部24は、キーボード、トラックボール、各種スイッチ、およびマウス等を備え、各種指示の入力やスライス厚,スライス数等のスキャン条件の入力等に用いられる。
【0030】
画像処理部25は、再構成部22により生成された再構成画像データに対して、ウィンドウ変換、RGB処理等の表示のための画像処理を行い、表示部26に出力する。また、画像処理部25は、オペレータが入力部24を介して入力する指示に基づき、任意断面の断層像データ、任意方向からの投影像データ、あるいは疑似3次元画像データ等の各種画像データを生成し、表示部26に出力する。
【0031】
表示部26は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)であり、画像処理部25やコントローラ20から入力されるデータに基づく画像や文字等を表示する。
【0032】
データ/制御バス30は、コンソール装置3の各部を接続し、各種データ、制御信号、およびアドレス情報等を送受信するための信号線である。
【0033】
以上のような構成のX線CT装置1を用いれば、被検体Pの任意断面に係る断層像データや、被検体Pの所定領域に係るボリュームデータを得ることができる。
【0034】
[気管支の狭窄]
ここで、肺気腫による気管支の狭窄につき、図2を参照して説明する。
図2(a)は、X線CT装置1による撮影にて得られた被検体Pの肺の断層像を示す。環状に描出された部分が気管支Bに相当する。気管支Bの周囲には肺胞が存在する。
【0035】
肺胞は、気管支Bの外壁に対してその壁面の法線方向に向けた張力を与える。この状態をモデル化したものが図2(b)であり、肺胞を複数のコイルばねに置き換えて張力を表現している。健常なケースでは、図2(b)に示す通り肺胞による張力にて気管支Bの形状が保たれ、気管支Bの内部に十分な空気の通り道ができる。
【0036】
肺胞が肺気腫に侵されると、当該肺胞からの張力が得られなくなる。図2(c)は、気管支B周りの肺胞の一部にて肺気腫が発生した状態を示している。気管支Bの外壁は、肺気腫が発生した肺胞や他の組織からの圧力を受けて変形する。これにより気管支Bの内腔面積が減少するので、気管支狭窄を併発する。
【0037】
[気管支狭窄に関するリスク評価]
本実施形態に係るX線CT装置1は、被検体Pの肺を含む再構成画像データに基づいて被検体Pの気管支の狭窄に関するリスクを評価し、その結果を報知する気管支狭窄リスク評価機能を備える。以下、当該機能の詳細について説明する。
【0038】
当該機能を実現するにあたり、コントローラ20は、気管支抽出部100、パラメータ算出部101、リスク領域特定部102、およびリスク領域報知部103としての機能を実現する。これら各部はソフトウェア的に実現されてもよいし、回路の組み合わせによりハードウェア的に実現されてもよい。
【0039】
気管支抽出部100は、再構成部22により再構成された画像データから気管支の形状(内壁および外壁の形状)や気管支の芯線を抽出する。ここに、芯線は、例えば気管支内腔の中心を通る線と定義する。
【0040】
パラメータ算出部101は、再構成部22により再構成された画像データに基づいて、当該画像データに描出された気管支の周囲に存在する肺気腫を含むCT値低吸収領域(肺気腫化した肺胞に相当する領域)の分布を表すパラメータを算出する。
【0041】
リスク領域特定部102は、パラメータ算出部101が算出したパラメータに基づき、気管支の狭窄に関するリスクが有る気管支の領域を特定する。
【0042】
リスク領域報知部103は、リスク領域特定部102が特定したリスク領域を報知する。
【0043】
続いて、気管支狭窄リスク評価機能に係る一連の動作につき、図3のフローチャートに沿って説明する。X線CT装置1は、このフローチャートに示す動作を、例えばオペレータが入力部24を介して当該リスク評価機能に係る処理の開始を指示したことに応じて開始する。
【0044】
処理開始当初において、X線CT装置1は、被検体Pの非造影の肺領域を架台装置2により撮影する(ステップS1)。より具体的には、コントローラ20が架台寝台駆動部19に撮影の開始を指示する。この指示を受けた架台寝台駆動部19は、高電圧発生部16に高電圧を発生させることでX線管球13にX線を発生させ、開口部110に挿入された被検体Pの体軸方向に平行な中心軸のまわりで回転部11を高速回転させつつ、被検体Pを寝台12により上記体軸方向に移動させて、被検体Pを広範囲にスキャンする。なお、スキャン範囲には少なくとも被検体Pの肺領域が含まれるように設定されているものとする。このスキャンにより得られた投影データを再構成部22が再構成処理することにより、被検体Pの肺領域を含む複数断面に係る断層像データ群が得られる。再構成部22は、断層像データ群から成るボリュームデータVDを記憶部23に保存する。
【0045】
続いて、気管支抽出部100がステップS1にて記憶部に保存されたボリュームデータVDから気管支の形状および芯線を抽出する(ステップS2)。
気管支の形状および芯線の抽出は、例えば以下の手順で行う。
先ず気管支抽出部100は、ボリュームデータVDにおいてCT値が略−1000HUとなる領域を抽出する。気管支の内腔は空気にて満たされるため、ボリュームデータVDにおいて気管支の内腔に相当するボクセルのCT値は、約−1000HUを示す。一方、肺胞等は組織を多く含むため、肺胞等に相当するボクセルのCT値は、−800HU程度を示す。従って、−1000HUに合理的な誤差範囲を勘案した値を閾値として領域を抽出することにより、気管支の内腔領域を抽出することが可能である。続いて、気管支抽出部100は、抽出した内腔領域の中心線を求める。この中心線が芯線に相当する。最後に、気管支抽出部100は、求めた芯線を起点としてCT値の変化を詳細に観測することにより、正確な気管支内壁と外壁の形状を抽出する。
【0046】
ステップS2の後、パラメータ算出部101が気管支狭窄に関するリスクを評価するための対象領域Rを設定する(ステップS3)。例えば対象領域Rは、気管支の芯線、内壁あるいは外壁から規定距離D内の領域と定義することができる。規定距離Dは、例えば気管支の芯線、内壁あるいは外壁からこの距離以内に存在する肺胞が肺気腫化した場合に、当該肺胞が気管支の狭窄に影響し得ると想定される範囲とする。このような規定距離Dは、実験的、経験的、あるいは理論的に予め定めておけばよい。
【0047】
図4は、ステップS1にて得られたボリュームデータVDの一部において、ステップS2にて抽出された形状の気管支Bおよびその芯線Cと、上記対象領域Rとの関係を示す模式図である。同図においては、対象領域Rを気管支の芯線Cから規定距離Dの範囲と定義した場合を例示している。さらに本実施形態では、この対象領域Rを芯線Cに沿う長さHごとに区切ることにより、多数のサブ領域Rsを定義する。
【0048】
ステップS3の後、パラメータ算出部101は、ボリュームデータVDにおいて対象領域Rに含まれる各ボクセルのCT値を計測し、ボリュームデータVDにおいて肺気腫化した肺胞に相当する領域(以下、CT値低吸収領域Eと呼ぶ)を示すCT値低吸収領域データを生成する(ステップS4)。CT値低吸収領域Eは、例えば対象領域Rに含まれる肺胞に相当する領域において、CT値が−950HU以下となるボクセルにて構成される領域である。
【0049】
続いて、パラメータ算出部101は、各サブ領域Rsのそれぞれについて、CT値低吸収領域Eの体積比LAV(Low Attenuation Volume)%を算出する(ステップS5)。LAV%は、例えば1つのサブ領域Rsに含まれるCT値低吸収領域Eのボクセル数を、当該サブ領域Rsに含まれる全ボクセル数にて除し、百分率表記した値である。
【0050】
ステップS5の後、パラメータ算出部101は、芯線に沿って設定された複数のサンプリング点Sにおける気管支のクロスカット画像データCDに関して、対象領域Rに含まれるCT値低吸収領域Eの分布角度θを算出する(ステップS6)。サンプリング点Sは、例えば各サブ領域Rsに含まれる芯線の中心点とするなど、サブ領域Rsにつき1点ずつ設定すればよい。
【0051】
図5は、あるサンプリング点Sにおける気管支のクロスカット画像データCDを示す模式図である。当該サンプリング点Sを含むサブ領域Rs中に同図に示すようなCT値低吸収領域Eが存在する場合、ステップS6においてパラメータ算出部101は、当該サンプリング点Sを軸として当該CT値低吸収領域Eの一端部から他端部までの分布角度θを算出する。本例では連続するCT値低吸収領域Eが1つのみサブ領域Rs中に存在する場合を示しているが、仮に複数のCT値低吸収領域Eが存在するならば、パラメータ算出部101はそれらCT値低吸収領域Eのそれぞれについて本例と同様に分布角度を求め、その合計角度を分布角度θとする。その際、各CT値低吸収領域Eに係る分布角度において重複する角度範囲については、分布角度θから差し引けばよい。
【0052】
ステップS6の後、リスク領域特定部102が気管支狭窄のリスクが有る領域を特定する(ステップS7)。具体的には、リスク領域特定部102は、ステップS5にて算出した各サブ領域Rsの体積比LAV%と、ステップS6にて算出した各サンプリング点Sのクロスカット画像データCDにおける分布角度θとに基づき、ボリュームデータVDにおいて気管支狭窄のリスクが存在する領域(以下、リスク領域Xと呼ぶ)を示すリスク領域データを生成する。リスク領域Xは、例えば体積比LAV%が予め定められた閾値SH1を超えるサブ領域Rsに含まれる気管支壁と、分布角度θが予め定められた閾値SH2を超えるサンプリング点Sに対応するサブ領域Rsに含まれる気管支壁とを合せた領域である。閾値SH1,SH2は気管支狭窄のリスクが有る場合と無い場合とを隔てるものであり、具体的な値は実験的、経験的、あるいは理論的に予め定めておけばよい。
【0053】
ステップS7の後、リスク領域報知部103がリスク領域データにて示されるリスク領域Xを報知する(ステップS8)。例えばリスク領域報知部103は、ボリュームデータVDに基づき、気管支の芯線に沿うCMPR(Curved multi planar reconstruction)像を表示部26に表示するとともに、当該CMPR像に対応する断面に存在するリスク領域Xを当該CMPR像上に描画することにより、リスク領域Xを報知する。また、リスク領域報知部103は、ステップS2にて抽出した気管支の形状の3次元画像を表示部26に表示するとともに、この3次元画像にリスク領域Xを描画することにより、リスク領域Xを報知してもよい。
【0054】
リスク領域報知部103による報知の一例につき、図6を用いて説明する。
同図は、表示部26に表示された、気管支の芯線に沿うCMPR像Tを示す。リスク領域報知部103は、CMPR像Tに含まれる気管支Bの壁部(内壁−外壁間)に、ステップS7にて生成されたリスク領域データで示されるリスク領域Xを描画する。さらに、リスク領域報知部103は、対象領域R内に、ステップS4にて生成されたCT値低吸収領域データで示されるCT値低吸収領域Eを描画する。リスク領域XやCT値低吸収領域Eは、その存在が明確に把握できるように目立つ色や模様にて表すことが好ましい。
【0055】
なお、表示部26に表示するCMPR像Tに係る断面は、例えばオペレータが入力部24の操作によって指定する。さらに、表示部26にCMPR像Tが表示された状態でオペレータが入力部24の操作により他の断面を指定すると、リスク領域報知部103は、表示部26の表示を当該断面に係るCMPR像Tに切り替えるとともに、当該断面に対応するリスク領域XやCT値低吸収領域Eを切り替え後のCMPR像T上に描画する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係るX線CT装置1は、再構成画像データに基づいてパラメータ(体積比LAV%,分布角度θ)を算出し、算出したパラメータに基づいて狭窄のリスクが有る気管支の領域(リスク領域X)を特定する。オペレータは、特定されたリスク領域Xを確認して、気管支狭窄が発生する前に適切な処置を施したり、被検体である患者に生活習慣の改善をアドバイスしたりすることができる。
【0057】
また、X線CT装置1は、図6に例示したように表示部26に表示された画像上に表示することによりリスク領域Xを報知する。このような報知態様であれば、オペレータは視覚的に容易にリスク領域Xを認識できる。
【0058】
また、X線CT装置1は、気管支狭窄のリスクを評価するパラメータとして、体積比LAV%と分布角度θの双方を使用する。このように複数のパラメータを使用することで、評価の精度を高めることができる。
その他にも、本実施形態の構成からは種々の好適な効果が得られる。
【0059】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
本実施形態では、第1の実施形態にて説明したステップS2〜S8に係る動作を実行する画像処理装置を開示する。
【0060】
図7は、本実施形態における画像処理装置200の要部構成を示すブロック図である。画像処理装置200は、例えばRIS(Radiology Information System)などのシステムから画像データを取得して処理するワークステーションであり、コントローラ201、記憶部202、通信部203、入力部204、表示部205、およびデータ/制御バス206などを備える。
【0061】
コントローラ201は、CPUやメモリを主体として構成される。コントローラ201は、CPUにてメモリが記憶するコンピュータプログラムを実行することにより、画像処理装置200が備える各部の制御や、処理対象の画像データに対する画像処理などを行う。また、コントローラ20は、気管支抽出部100、パラメータ算出部101、リスク領域特定部102、およびリスク領域報知部103としての機能を実現する。これら各部はソフトウェア的に実現されてもよいし、回路の組み合わせによりハードウェア的に実現されてもよい。
【0062】
記憶部202は、処理対象の画像データや画像処理後の画像データなどを記憶する。
【0063】
通信部203は、例えばDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に準拠したプロトコルにてRISなどと通信し、処理対象の画像データを取得する。
【0064】
入力部204は、キーボード、トラックボール、各種スイッチ、およびマウス等を備え、各種指示の入力等に用いられる。
【0065】
表示部205は、例えばLCDであり、通信部203が取得した画像データや画像処理後の画像データなどに基づく画像を表示する。
【0066】
データ/制御バス206は、画像処理装置200の各部を接続し、各種データ、制御信号、およびアドレス情報等を送受信するための信号線である。
【0067】
このような構成の画像処理装置200において、オペレータが入力部204を介して画像処理の開始を指示すると、通信部203がX線CT装置により得られたボリュームデータVDをRISなどから取得し、記憶部202に保存する。
【0068】
その後、気管支抽出部100、パラメータ算出部101、リスク領域特定部102、およびリスク領域報知部103が、記憶部202に保存されたボリュームデータVDを使用してステップS2〜S8の処理を実行する。
【0069】
以上説明した画像処理装置200によれば、第1の実施形態にて説明したものと同様の効果が得られる。
【0070】
(変形例)
いくつかの変形例を例示する。
第1の実施形態においては、医用画像撮影装置としてX線CT装置1を例示した。しかしながら、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、X線診断装置、あるいは超音波診断装置などの他種の医用画像撮影装置において、これら装置がそれぞれの方法で被検体を撮影することにより得た画像データに基づき、第1の実施形態にて開示した気管支狭窄のリスク評価に関する処理を実行することもできる。
【0071】
気管支狭窄のリスク評価に用いるパラメータは、体積比LAV%と分布角度θに限られない。他のパラメータとしては、例えば特定の断面に係る2次元の画像データに設定した対象領域Rと、この対象領域Rに含まれるCT値低吸収領域Eとの面積比LAA(Low Attenuation Area)%を用いることができる。
【0072】
また、体積比LAV%と分布角度θの双方を用いて気管支狭窄のリスクを評価するのではなく、いずれか一方のみを用いて気管支狭窄のリスクを評価してもよい。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1…X線CT装置、2…架台装置、3…コンソール装置、20…コントローラ、100…気管支抽出部、101…パラメータ算出部、102…リスク領域特定部、103…リスク領域報知部、200…画像処理装置、B…気管支、R…対象領域、D…規定距離、C…芯線、E…肺気腫を含むCT値低吸収領域、X…リスク領域、T…CMPR像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7