(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242577
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】レドックスポリマーエネルギー貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
H01G 11/48 20130101AFI20171127BHJP
H01G 11/02 20130101ALI20171127BHJP
【FI】
H01G11/48
H01G11/02
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-58000(P2013-58000)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-197595(P2013-197595A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】13/426,692
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】キンレン, パトリック ジョン
【審査官】
小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/037254(WO,A1)
【文献】
特開2007−234338(JP,A)
【文献】
特開2009−277760(JP,A)
【文献】
特開平11−329414(JP,A)
【文献】
特開2011−181353(JP,A)
【文献】
特開2004−273283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面及び第2の表面を有する第1の集電装置12、42と;
前記第1の集電装置12、42の前記第2の表面上に複数のカーボンナノチューブ18、48を含む第1の電極16、46であって、前記複数のカーボンナノチューブ18,42が前記複数のカーボンナノチューブ18、42の表面上に塗布されたポリジスルフィドを含む、第1の電極16、46と;
第1の表面及び第2の表面を有するイオン伝導性セパレータ24、54であって、前記イオン伝導性セパレータ24、54の前記第1の表面が前記第1の電極16、46の上に位置している、イオン伝導性セパレータ24、54と;
第1の表面及び第2の表面を有する第2の集電装置14、44と;
前記第2の集電装置14、44の前記第1の表面と前記イオン伝導性セパレータ24、54の前記第2の表面との間に複数のカーボンナノチューブ18、48を含む第2の電極22、52と
を含み、
前記イオン伝導性セパレータ24、54がケイタングステン酸を含む酸ポリマーゲルを含む、エネルギー貯蔵システム。
【請求項2】
第1の表面及び第2の表面を有する第1の集電装置12、42と;
前記第1の集電装置12、42の前記第2の表面上に複数のカーボンナノチューブ18、48を含む第1の電極16、46であって、前記複数のカーボンナノチューブ18,42が前記複数のカーボンナノチューブ18、42の表面上に塗布されたポリジスルフィドを含む、第1の電極16、46と;
第1の表面及び第2の表面を有するイオン伝導性セパレータ24、54であって、前記イオン伝導性セパレータ24、54の前記第1の表面が前記第1の電極16、46の上に位置している、イオン伝導性セパレータ24、54と;
第1の表面及び第2の表面を有する第2の集電装置14、44と;
前記第2の集電装置14、44の前記第1の表面と前記イオン伝導性セパレータ24、54の前記第2の表面との間に複数のカーボンナノチューブ18、48を含む第2の電極22、52と
を含み、
前記複数のカーボンナノチューブ18、48が、前記複数のカーボンナノチューブ18、48の表面上に塗布されたポリジスルフィド及びケイタングステン酸の組み合わせを含む、エネルギー貯蔵システム。
【請求項3】
前記第2の電極22、52の前記複数のカーボンナノチューブ18、48が、前記複数のカーボンナノチューブ18、48の表面上に塗布されたポリジスルフィドを含む、請求項1または2に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項4】
前記ポリジスルフィドが、ポリ(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ビス−2,5−ジチオ−1,3,4−チアジアゾール、ポリ(Zn−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Cu−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Al−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、及びポリ(Fe−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項5】
前記ポリジスルフィドが2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールモノマーから電解重合される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項6】
複数のカーボンナノチューブ18、48を第1の集電装置12、42の表面に塗布するステップと;
複数のカーボンナノチューブ18、48を第2の集電装置14、44の表面に塗布するステップと;
第1の集電装置12、42及び第2の集電装置14、44のうち少なくとも1つのカーボンナノチューブ18、48をポリジスルフィドで被覆するステップと;
イオン伝導性セパレータ24、54を第1の集電装置12、42に塗布されたカーボンナノチューブ18、48と第2の集電装置14、44に塗布されたカーボンナノチューブ18、48との間に置いて、サンドイッチ構造を有するエネルギー貯蔵システムを形成するステップと
を含み、
前記イオン伝導性セパレータ24、54がケイタングステン酸を含む酸ポリマーゲルを含む、エネルギー貯蔵システム作製方法。
【請求項7】
酸ポリマーゲルをイオン伝導性セパレータ24、54に塗布するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
カーボンナノチューブ18、48を被覆するステップが、第1の集電装置12、42及び第2の集電装置14、44のカーボンナノチューブ18、48をポリジスルフィドで被覆することを含む、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポリジスルフィドが、ポリ(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ビス−2,5−ジチオ−1,3,4−チアジアゾール、ポリ(Zn−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Cu−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Al−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、及びポリ(Fe−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)のうちの少なくとも1つを含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールモノマーを電解重合させてポリジスルフィドを形成するステップをさらに含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は一般にレドックスポリマーエネルギー貯蔵システムに関し、より具体的には炭素構造体に塗布された電気活性ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二重層容量を有するコンデンサはエネルギーを貯蔵及び放出するエネルギー貯蔵デバイスとして使用することができる。既知の二重層コンデンサは二重層の厚さに反比例したエネルギー量を貯蔵する。低電圧において、これらの二重層コンデンサは典型的には従来の誘電コンデンサよりも高いエネルギー密度を有する。
【0003】
リチウムイオン電池もエネルギー貯蔵デバイスとして使用される。そのような電池は典型的には非常に高いエネルギー密度を有する。リチウムイオン電池の欠点は、これらの電池が密閉される必要があり、水を含まない電解質組成を必要とすることである。さらに、リチウムイオン電池を使い切ると、電池の中のリチウムは廃棄物集積場に置くよりもむしろ隔離する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体デバイスであり、高いエネルギー密度を有し、漏れが生じにくく、高いG力及び極端な温度で安定であるエネルギー貯蔵システムを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、エネルギー貯蔵システムが提供される。エネルギー貯蔵システムは、第1の表面及び第2の表面を有する第1の集電装置と、第1の集電装置の第2の表面上に複数のカーボンナノチューブを含む第1の電極とを含む。複数のカーボンナノチューブは複数のナノチューブの表面上に塗布されたポリジスルフィドを含む。エネルギー貯蔵システムはまた、第1の表面及び第2の表面を有するイオン伝導性セパレータであってイオン伝導性セパレータの第1の表面が第1の電極上に位置しているイオン伝導性セパレータと、第1の表面及び第2の表面を有する第2の集電装置と、第2の集電装置の第1の表面とイオン伝導性セパレータの第2の表面との間に位置する複数のカーボンナノチューブを含む第2の電極とを含む。
【0006】
有利には、前記第2の電極の複数のカーボンナノチューブは前記複数のナノチューブの表面上に塗布されたポリジスルフィドを含む。
【0007】
有利には、ポリジスルフィドはポリ(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ビス−2,5−ジチオ−1,3,4−チアジアゾール、ポリ(Zn−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Cu−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Al−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、及びポリ(Fe−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)のうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
有利には、ポリジスルフィドは2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールモノマーから電解重合される。
【0009】
有利には、イオン伝導性セパレータはケイタングステン酸を含む酸ポリマーゲルを含む。
【0010】
有利には、複数のカーボンナノチューブは、前記複数のナノチューブの表面上に塗布されたポリジスルフィド及びケイタングステン酸の組み合わせを含む。
【0011】
本発明の別の態様によれば、エネルギー貯蔵システムが提供される。エネルギー貯蔵システムは、第1の集電装置及び第2の集電装置の表面に接着した複数のカーボンナノチューブ有する第1の集電装置及び第2の集電装置と、少なくとも1つの集電装置のカーボンナノチューブの上に被着したポリジスルフィドと、第1の集電装置のカーボンナノチューブと第2の集電装置のナノチューブとの間に挟まれたイオン伝導性セパレータとを含む。セパレータは第1の集電装置のカーボンナノチューブから第2の集電装置のカーボンナノチューブへプロトンを輸送するように配置されている。
【0012】
有利には、前記第1及び第2の集電装置の複数のカーボンナノチューブは、前記複数のナノチューブの表面上に塗布された前記ポリジスルフィドを含む。
【0013】
有利には、ポリジスルフィドはポリ(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ビス−2,5−ジチオ−1,3,4−チアジアゾール、ポリ(Zn−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Cu−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Al−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、及びポリ(Fe−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
有利には、ポリジスルフィドは2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールモノマーから電解重合される。
【0015】
有利には、イオン伝導性セパレータはケイタングステン酸を含む酸ポリマーゲルを含む。
【0016】
有利には、ポリジスルフィドは、前記ナノチューブに塗布されたポリジスルフィド及びケイタングステン酸の組み合わせを含む。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、エネルギー貯蔵システムを作製する方法が提供される。この方法は、複数のカーボンナノチューブを第1の集電装置の表面に塗布するステップと、複数のカーボンナノチューブを第2の集電装置の表面に塗布するステップと、第1の集電装置及び第2の集電装置のうち少なくとも1つのカーボンナノチューブをポリジスルフィドで被覆するステップとを含む。この方法は、イオン伝導性セパレータを第1の集電装置に塗布されたカーボンナノチューブと第2の集電装置に塗布されたナノチューブとの間に置いて、サンドイッチ構造を有するエネルギー貯蔵システムを形成するステップも含む。
【0018】
有利には、この方法は酸ポリマーゲルをイオン伝導性セパレータに塗布するステップをさらに含む。好ましくは、酸ポリマーゲルはケイタングステン酸を含む。
【0019】
有利には、カーボンナノチューブの被覆は、第1の集電装置及び第2の集電装置のカーボンナノチューブをポリジスルフィドで被覆することを含む。
【0020】
有利には、ポリジスルフィドはポリ(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ビス−2,5−ジチオ−1,3,4−チアジアゾール、ポリ(Zn−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Cu−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Al−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、及びポリ(Fe−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
有利には、この方法は2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールモノマーを電解重合させてポリジスルフィドを形成させるステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】レドックスポリマーエネルギー貯蔵システムの実施形態の概略図である。
【
図2】レドックスポリマーエネルギー貯蔵システムの別の実施形態の概略図である。
【
図6】
図3〜5に示す超コンデンサのサイクリックボルタンメトリーのグラフの図である。
【
図7】
図3〜5に示す超コンデンサのクロノクーロメトリーのグラフの図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
レドックスポリマーエネルギー貯蔵システム及びエネルギー貯蔵システムを作製する方法を以下に詳細に説明する。エネルギー貯蔵システムは、エネルギー貯蔵のための電気活性レドックスポリマー(例えば一実施形態において、カーボンナノチューブ(CNT)構造体を被覆している及び/又はカーボンナノチューブ構造体に塗布されているポリジスルフィド)を使用する。別の実施形態において、ジスルフィドモノマーをCNT構造体に塗布し、電解重合してポリジスルフィドを形成させてもよい。得られるCNTポリジスルフィド構造体はエネルギー貯蔵システムのためのレドックス電極として働く。ジスルフィドモノマーの重合反応は可逆であり、エネルギー貯蔵システムが多数回の充電及び放電のサイクルに耐えるのを可能にする。エネルギー貯蔵システムは、2つの集電装置を、カーボンナノチューブから形成される第1の電極、カーボンナノチューブの第2の電極、及び2つの集電装置の間に位置する輸送セパレータと共に含む。輸送セパレータは第1の電極と第2の電極との間に置かれて電極を電気接触から防護する。エネルギー貯蔵システムは液体を利用しない固体デバイスであり、したがって漏れが起こりにくく、高いG力及び極端な温度で安定である。さらに、エネルギー貯蔵デバイスのメカニズムはジスルフィド結合を形成及び切断し、したがって充電及び放電のサイクルの間にプロトン輸送のみを行う。輸送セパレータはプロトン輸送を促進するだけでよいので、輸送セパレータはエネルギー貯蔵システムにおける高い出力密度を容易にする。
【0024】
図面を参照すると、
図1は例となる実施形態におけるレドックスポリマーエネルギー貯蔵システム10の概略図である。エネルギー貯蔵システム10は複数の層のサンドイッチ構造を有する。層は第1の集電装置12及び第2の集電装置14を含む。カーボンナノチューブ18(CNT)から形成される第1の電極16は第1の集電装置12の内表面20に塗布され、カーボンナノチューブ18から形成される第2の電極22は第2の集電装置14の内表面23に塗布されている。イオン伝導性セパレータ24は第1の電極16と第2の電極22との間に位置している。
【0025】
カーボンナノチューブ18は本質的には広い表面積ひいては大きい静電容量(C)を有するが、なぜならCはカーボンナノチューブ18の表面積Aに比例するからである。(C=εε
oA/d、式中εは電解質二重層の誘電率、ε
oは自由空間の誘電率であり、dは二重層の厚さである)。カーボンナノチューブ電極16及び22のエネルギー貯蔵能を高めるために、ポリジスルフィドをカーボンナノチューブの表面上に被着させる。ポリジスルフィドは、既存のカーボンナノチューブの静電容量に酸化還元の静電容量を加えることによって、電極のエネルギー貯蔵能を高める。酸化還元の静電容量の大きさは、カーボンナノチューブ表面上のジスルフィドの分子密度に比例する。
【0026】
電気活性レドックスポリマー(例えばポリジスルフィド)をカーボンナノチューブ18に塗布する。別の実施形態において、ジスルフィドモノマーをカーボンナノチューブ18に塗布し、ジスルフィドモノマーを電解重合してカーボンナノチューブ18の上でポリジスルフィドを形成させる。例となる実施形態において、ポリジスルフィドはポリ(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)(polyDMcT)であってもよい。他の好適なジスルフィドポリマーとしては、限定はされないが、ビス−2,5−ジチオ−1,3,4−チアジアゾール、ポリ(Zn−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Cu−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Al−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)、ポリ(Fe−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)などを挙げることができる。
【0027】
イオン伝導性セパレータ24は、貯蔵システムを充電及び放電させる際に、第1の電極16と第2の電極22との間でプロトンを輸送する。セパレータ24は、セパレータ24の表面を被覆する酸ポリマーゲルを含む。酸ポリマーゲルはケイタングステン酸(SiWA)から形成させてもよい。別の実施形態において、SiWAをpolyDMcT中に分散させ、第1の及び第2のナノチューブ電極16及び22に塗布する。プロトンのみがセパレータ24によって輸送されるので、高速の輸送が促進され、等価直列抵抗(ESR)が低く出力密度が高いデバイスを提供する。貯蔵システム10のエネルギーは式C=1/2(Cdl+Credox)V
2から計算することができ、したがってエネルギーはCNTの表面積及びDMcTの分子密度に基づく。出力密度はV
2/4ESRに比例し、したがってESRが減少すると出力密度は増加する。
【0028】
ジスルフィド(例えば,2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(DMcT))を電解重合してpolyDMcTとしてもよい。DMcT重合反応は下記に示すように可逆である。
【0029】
【化1】
DMcTは貯蔵システム10の充電サイクルの間に重合されてpolyDMcTとなり、貯蔵システム10の放電サイクルの間にDMcTへと戻る。例えば、アノード電極ではDMcT→polyDMcT、カソード電極ではpolyDMcT→DMcT。
【0030】
第1の集電装置12及び第2の集電装置14は任意の導電性材料から形成してもよい。好適な導電性材料としては、限定はされないが、金属、炭素、グラファイト、及び複合材料、例えば、炭素繊維又は粒子、グラファイト、及び金属繊維又は粒子を含有するポリマーを挙げることができる。
【0031】
別の実施形態において、
図2に最も良く示されるように、レドックスポリマーエネルギー貯蔵システム40は、上記のエネルギー貯蔵システム10と同様に複数の層のサンドイッチ構造を有する。層は第1の集電装置42及び第2の集電装置44を含む。カーボンナノチューブ48(CNT)から形成される第1の電極46は第1の集電装置42の内表面50に塗布され、カーボンナノチューブ48から形成される第2の電極52は第2の集電装置44の内表面51に塗布される。イオン伝導性セパレータ54は第1の電極46と第2の電極52との間に置かれる。第1の電極46はカーボンナノチューブ48の表面上に被着したポリジスルフィドを含む。第2の電極52はポリジスルフィドもジスルフィドも含まない。セパレータ54はセパレータ54の表面を被覆する酸ポリマーゲルを含む。酸ポリマーゲルはケイタングステン酸(SiWA)から形成させてもよい。
【0032】
DMcTは貯蔵システム40の充電サイクルの間に重合されてpolyDMcTとなり、貯蔵システム40の放電サイクルの間にDMcTへと戻る。例えば、アノード電極ではDMcT→polyDMcT、カソード電極ではH
+→H
+CNT
−。
【0033】
超コンデンサがエネルギーを貯蔵する能力を示すために試料の試験を行った。3種の異なる超コンデンサの構造を試験した。
図3に示すタイプ1の構造60は、電極62及び64それぞれの内表面68及び70に塗布されたpolyDMcT及びSiWAのブレンドのコーティング66を有する2つの炭素複合材料電極62及び64を含んでいた。イオン伝導性セパレータ72を電極62及び64の間に置いた。セパレータ72は、SiWAに浸し約20分空気乾燥させたWhatman 1定性ろ紙片であった。タイプ1の超コンデンサは、
図3に示すように電極62及び64を電極間のセパレータ72と共に積み重ねることによって組み立てられた。
【0034】
図4に示すタイプ2の構造80は、2つの炭素複合材料電極82及び84を含んでいた。polyDMcT及びSiWAのブレンドのコーティング86を、電極82の内表面88に塗布した。SiWAのコーティング90を電極84の内表面92に塗布した。イオン伝導性セパレータ94を電極82及び44の間に置いた。セパレータ94は、SiWAに浸し約20分空気乾燥させたWhatman 1定性ろ紙片であった。タイプ2の超コンデンサは、
図4に示すように電極82及び84を電極間のセパレータ94と共に積み重ねることによって組み立てられた。
【0035】
図5に示すタイプ3の構造100は、電極102及び104それぞれの内表面108及び110に塗布されたSiWAのコーティング106を有する2つの炭素複合材料電極102及び104を含んでいた。イオン伝導性セパレータ112を電極102及び104の間に置いた。セパレータ112は、SiWAに浸し約20分空気乾燥させたWhatman 1定性ろ紙片であった。タイプ3の超コンデンサは、
図5に示すように電極102及び104を電極間のセパレータ112と共に積み重ねることによって組み立てられた。
【0036】
サイクリックボルタンメトリーをタイプ1〜3について測定した。
図6においてグラフはサイクリックボルタンメトリーを示す。グラフは電位(ボルト)対電流(アンペア)のX−Yグラフである。0から1.0ボルトまでの充電における300秒間のクロノクーロメトリーもタイプ1〜3について測定した。
図7においてグラフはクロノクーロメトリーを示す。グラフは電荷(クーロン)対時間(秒)のX−Yグラフである。
図6及び7に示すように、構造タイプ1及び2は構造タイプ3よりも優れていることを示した。
【0037】
最良の形態を含めて本発明を開示するため、また任意のデバイス又はシステムの作成及び使用並びに取り入れられた任意の方法の実施を含めて、任意の当業者が本発明を実施することを可能にもするため、この明細書は例を使用する。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつく他の例を含んでいてもよい。そのような他の例は、それらの例が特許請求の範囲の文字通りの言葉とは変わらない構造要素を有する場合、又はそれらの例が特許請求の範囲の文字通りの言葉とはごくわずかに異なる等価な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内であることを意図している。
【符号の説明】
【0038】
10 レドックスポリマーエネルギー貯蔵システム
12 集電装置
14 集電装置
16 電極
18 カーボンナノチューブ
20 内表面
22 電極
23 内表面
24 イオン伝導性セパレータ
40 レドックスポリマーエネルギー貯蔵システム
42 集電装置
44 集電装置
46 電極
48 カーボンナノチューブ
50 内表面
51 内表面
52 電極
54 イオン伝導性セパレータ
60 構造
62 炭素複合材料電極
64 炭素複合材料電極
66 コーティング
68 内表面
70 内表面
72 イオン伝導性セパレータ
80 構造
82 炭素複合材料電極
84 炭素複合材料電極
86 コーティング
88 内表面
90 コーティング
92 内表面
94 イオン伝導性セパレータ
100 構造
102 炭素複合材料電極
104 炭素複合材料電極
106 コーティング
108 内表面
110 内表面
112 イオン伝導性セパレータ