(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記揮発性溶媒が、アルコール類、炭化水素類、芳香族類、ケトン類、エーテル類、エステル類、揮発性シリコーン油、イソパラフィンから選ばれる、請求項1に記載の逆ベシクル組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
有効成分をマイクロカプセル化して生体内外に適用する技術は、カプセル内の有効成分の有効性が持続する等の利点から、医薬、食品分野の他、化粧品分野においても応用が期待され、様々な研究がされている。
化粧品分野におけるマイクロカプセル化の技術として、レシチンなどのリン脂質を二重膜成分としたベシクルが従来知られている。
従来、レシチンを用いたベシクルは、リン脂質の親水基を外側に向けて配向させ、水相中に分散させた水分散ベシクルが主であった。
他方、両親媒性物質の疎水基を外側に向けて配向させた逆ベシクルとしては、以下が知られている。
特許文献1には、ショ糖脂肪酸エステルを用いた逆ベシクルが記載されている。また、前記逆ベシクルを乳化剤として、三相乳化法により油中水型エマルションを形成することが記載されている。
特許文献2には、スフィンゴシン類を用いた逆ベシクル組成物が記載されている。
【0003】
非特許文献1には、レシチンを含む逆ベシクルの形成について記載されており、シクロヘキサン中で特定のレシチンが逆ベシクルを形成することが報告されている。
一方で、非特許文献2には、上記と異なる炭素鎖のレシチンについては、同油剤中で逆ベシクルの形成に必要な油とラメラ相の共存相を形成しないことが示されている。
【0004】
上述した従来の逆ベシクルは、逆ベシクルの構成成分のラメラ相と油剤とを、手撹拌や超音波照射によって、物理的な撹拌力を与えて混合することにより製造されていた(上記特許文献、非特許文献参照。)
従来の逆ベシクルの形成方法では、ラメラ相の油への分散は、ラメラ相の柔軟性が高いほど弱い撹拌力で行う頃ができるため、柔軟性を高める方法として、二分子膜を水性成分および油性成分で膨潤させることが重要と報告されている(非特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法では、大きな分子量の油剤を用いた場合に、二分子膜の層間に油剤が入り込めないため、ラメラ相が剛直となり、微細な逆ベシクルを得ることは困難であった。特に、化粧料などに安全に用いられる比較的大きな分子量の油剤を用いて、逆ベシクルを得ようとする場合には、大きな撹拌力を与える必要があり、製造効率の面から見ても課題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、逆ベシクル組成物の新規な製造方法を提供することを課題とする。特に、大きな分子量の油剤を用いる場合に、従来の方法に比して、逆ベシクル組成物の形成を容易にする製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、
二分子膜成分を揮発性溶媒に溶解させて、第1の等方性溶液を得る工程と、
前記第1の等方性溶液を油剤と混合し、第2の等方性溶液を得る工程と、
前記第2の等方性溶液中の前記揮発性溶媒を揮発させる工程と、
揮発性溶媒の揮発により、前記二分子膜成分の逆ベシクルを形成させる揮発工程と、
を含む、逆ベシクル組成物の製造方法である。
このように、二分子膜成分を、揮発性溶媒に溶解させて、等方性溶液とした後に、これを油剤と混合し、その後に揮発性溶媒を揮発させることで、等方性溶液からラメラへの相転移を引き起して逆ベシクル組成物を得ることができる。
本発明の逆ベシクル組成物の製造方法によれば、物理的な撹拌では二分子膜成分を油剤中に分散させにくい系、例えば、分子量の大きい油剤を用いた系でも、逆ベシクル組成物を製造することが可能となる。
特に、微細な逆ベシクルを含む逆ベシクル組成物を容易に製造することが可能となる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記揮発性溶媒は、アルコール類、炭化水素類、芳香族類、ケトン類、エーテル類、エステル類、揮発性シリコーン油、イソパラフィンから選ばれる。
揮発性溶媒として、上記を用いることにより、製造した逆ベシクル組成物を化粧料などの皮膚外用剤に用いることを想定した場合、その安全性を高めることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記油剤が、シリコーン油、炭化水素油、エステル油、天然動植物油、フッ素油から選ばれる。
これらの油剤を用いることで、製造した逆ベシクル組成物を化粧料などの皮膚外用剤に用いることを想定した場合、その安全性を高めることができる。
【0012】
本発明においては、前記二分子膜成分は特に制限されないが、例えば、得られる逆ベシクル組成物を化粧料の成分として応用する場合、レシチン及び/又は非イオン界面活性剤が好ましく挙げられる。
【0013】
本発明の一形態では、第1の等方性溶液は、二分子膜成分の含有質量の1倍以下の水を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の一形態では、前記第2の等方性溶液は、前記油剤中に第1の等方性溶液の粒子が分散した二相の溶液である。
揮発性溶媒によって、揮発性溶媒と油剤とが1相を形成する場合と、2相を形成する場合があるが、後者の場合には、油剤中に第1の等方性溶液の粒子を分散させることにより、逆ベシクルを製造することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記揮発性溶媒の揮発は、減圧下で行われる。
【0016】
本発明はまた、上述した製造方法により製造した逆ベシクル組成物を、他の成分と混合することを含む、皮膚外用剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の逆ベシクル組成物の製造方法を用いることにより、従来の逆ベシクルの製造方法に比して、容易に逆ベシクルを製造することが可能となる。
特に、分子量の大きな油剤を用いて逆ベシクル組成物を製造する場合に、従来の方法を用いる場合に比して、物理的な撹拌力による必要がなく、工業的生産において、生産性を向上させることが可能となる。また、従来微細な逆ベシクルを形成することが困難であった成分等を用いた場合でも、微細な逆ベシクルを含む逆ベシクル組成物を比較的容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、
図1を参照しながら詳述する。
<1>第1の等方性溶液を得る工程
本発明の製造方法では、まず、二分子膜成分1を揮発性溶媒2に溶解させて、第1の等方性溶液3を得る。
二分子膜成分は、逆ベシクルを構成する二分子膜の構成成分を示す。
このような二分子膜の構成成分としては、両親媒性物質であれば特に制限されず、イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤の何れをも用いることができる。好ましくは、両イオン性界面活性剤であるレシチンが挙げられる。また、非イオン性界面活性剤も好ましく用いることができ、例えば、シリコーン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、スフィンゴシン類、脂肪酸などを好ましく用いることができる。
本発明の製造方法は、二分子膜が剛直で、従来の物理的撹拌では逆ベシクルを形成させにくいレシチンを用いる場合に有効である。また、本発明の製造方法により製造される逆ベシクル組成物を、化粧料などに用いることを考慮すると、安全性などからレシチン、非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
【0020】
レシチンは、植物、動物及び微生物の生体から抽出され、所望により精製したものを用いてもよいし、合成したものを用いても良い。好ましくは、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来レシチンや、卵黄等の動物由来レシチンなどを用いることができる。
本発明におけるレシチンには、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等が含まれる。
また、本発明において、「レシチン」には、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、リゾレシチン等も含まれる。
【0021】
レシチンの疎水基部分を構成する脂肪酸の炭素数は特に制限されず、例えば炭素数8〜20、好ましくは16〜18のものを主に用いることができる。また、脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよい。また、脂肪酸は直鎖であっても分岐であっても良い。
【0022】
本発明において、レシチンは、上記化合物の単独種の形態で用いることもできるし、上述した複数種のリン脂質の混合物の形態で用いることも出来る。
レシチンの組成としては、ホスファチジルコリンを主体としたものが好ましく、例えば20質量%以上、好ましくは50質量%以上がホスファチジルコリンであることが好ましい。
レシチンは、市販のものを特に制限なく用いることができる。
【0023】
また、レシチンを主体とする場合、他の補助界面活性剤(非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤)と組合せることもできる。
この場合、逆ベシクルを形成する二分子膜成分のうち、レシチンが好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上を占めることが好ましい。
【0024】
上述した二分子膜成分を溶解させる揮発性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ペンタン、ヘキサン、シクロペンタンなどの炭化水素類、ベンゼンなどの芳香族類、アセトンなどのケトン類、エーテル類、エステル類、デカメチルペンタシロキサン等の揮発性シリコーン油、フルオロカーボン類、イソパラフィン等が挙げられる。
中でも、エタノール、プロパノール、アセトン等が好ましく用いられる。
【0025】
第1の等方性溶液における二分子膜成分の含有量としては、二分子膜成分が十分に溶解する範囲であればよい。例えば、二分子膜成分の含有量は、10〜90質量%を目安とすることができる。10質量%より少ない場合には、揮発性溶媒の揮発時間が長くなる場合があり、90質量%より多い場合には、溶液が粘稠性となり、溶解させにくくなる場合があるためである。
【0026】
また、第1の等方性溶液は、水を含んでいてもよい。
本発明の製造方法は、従来の物理的な撹拌によらず逆ベシクルを形成しようとするものであるため、物理的な撹拌による分散を助ける目的では水の存在は必要でなく、むしろ水が少ない系において、有用であるといえる。
ただし、前記揮発性溶媒の揮発による逆ベシクルの形成において、水の存在は二分子膜の形成を補助し得る場合がある。
これらの観点から、本発明においては、二分子膜成分の1倍以下の質量の水を含んでいてもよい。また、この場合、二分子膜成分を水と混合しておき、揮発性溶媒と混合することができる(
図1(a))。もちろん、二分子膜成分、水、揮発性溶媒を混合してもよい。
【0027】
本発明においては、前記二分子膜成分1を前記揮発性溶媒2に溶解し、第1の等方性溶液3を調製する。この調製は、通常の混合、撹拌により行うことができる。
二分子膜成分1を前記揮発性溶媒2に溶解して得られる第1の等方性溶液3は、二分子膜成分1が揮発性溶媒2中に単分散した状態、又は揮発性溶媒2中に二分子膜成分1の逆ミセルなどの会合体が形成した状態となる(
図1(b))。
このような等方性溶液は流動性が高いものであり、続く油剤との混合をしやすいものである。
【0028】
<2>第2の等方性溶液を得る工程
本発明の製造方法では、続いて、上記で得られた第1の等方性溶液3を油剤4と混合し、第2の等方性溶液5を得る。
【0029】
油剤としては、第1の等方性溶液と混合し得るものであれば特に制限はないが、25℃で液状の油剤を好ましく用いることができる。本発明で用いられる油剤としては、シリコーン油、炭化水素油、エステル油、天然動植物油、フッ素油等が挙げられる。
【0030】
シリコーン油の例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シロキサン等が挙げられる。
中でも、上述した環状シロキサンが好ましく用いられる。
【0031】
炭化水素油としては、鎖式及び環式の炭化水素、例えば、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添イソブテン、イソオクタン、デカン、イソドデカン、イソヘキサデカン、ポリブデン等が挙げられる。
【0032】
エステル油としては、コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2−ヘプチルウンデシル)、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリエチル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオレイン酸ペンタエリトリトール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル等が挙げられる。
【0033】
天然動植物油としては、アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、サフラワー油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、綿実油、ヤシ油等が挙げられる。
【0034】
フッ素油としてはパーフルオロ類の油が挙げられる。
【0035】
前記第1の等方性溶液と、前記油剤との混合比は、製造される逆ベシクル組成物における二分子膜成分の含有量が、0.1〜10質量%となる範囲とすることができる。
【0036】
前記第1の等方性溶液3と油剤4を混合することにより、油剤4中に二分子膜成分1が分散した等方性溶液(第2の等方性溶液)5を得ることができる。
ここで、二分子膜成分の油剤への分散の形態は、用いる揮発性溶媒の油剤に対する溶解性に応じて異なる。
(1)揮発性溶媒2が油剤4に可溶である場合には、第1の等方性溶液3は油剤と相溶し、一相の溶液を形成する。すなわち、第1の等方性溶液3に含まれていた二分子膜成分1は、一相の溶液2・4中に、単分散した状態、又は逆ミセルなどの会合体が形成した状態で存在する(
図1(c))。
(2)一方、揮発性溶媒2が油剤4に対して不溶又は難溶である場合には、第1の等方性溶液3は油剤4と相溶せず、二相の溶液を形成する。すなわち、油剤4の連続相中に、第1の等方性溶液3の粒子31が分散した状態となる(
図1(d))。粒子31は、
図1(d2)に示すように、二分子膜成分1が揮発性溶媒2中に単分散した状態、又は揮発性溶媒2中に二分子膜成分1の逆ミセルなどの会合体が形成した状態となっている。
なお、この状態は、混合の工程において、通常の振とう又は撹拌の操作により容易に形成することができる。
また、二分子膜成分として、油剤に難溶な成分と、油剤に可溶な成分を組み合わせて用いる場合には、油剤に難溶な成分を揮発性溶媒に溶解し、油剤に可溶な成分を油剤に溶解し、これらを混合することも可能である。
【0037】
<3>揮発性溶媒を揮発させる工程
本発明の製造方法では、続いて、上記の操作により得られた、第2の等方性溶液5から、揮発性溶媒2を揮発させる。
揮発性溶媒の揮発は、常法により、減圧することにより揮発性溶媒を気化させることにより行うことができる。また、揮発性溶媒が気化する温度まで混合液を加温することにより行うことが可能である。揮発は、減圧下で行うことが好ましい。また、加温する場合には、ラメラ相(逆ベシクル)を維持できる温度以下、すなわち相転移しない温度以下で加熱する。
上述した第2の等方性溶液が2相を形成する場合には、振とう又は撹拌の操作により、油剤中に第1の等方性溶液を十分に分散させた後に、本工程に入ることが好ましい。
また、揮発中に撹拌力を与えることも、微細な逆ベシクルを形成する観点から好ましい。
【0038】
上記のとおり、揮発性溶媒2を揮発させることにより、第2の等方性溶液5を相転移させ、油剤4中に逆ベシクル7が分散した逆ベシクル組成物8を得ることができる(
図1(e))。形成される逆ベシクルの状態は単層、多層を問わない。逆ベシクルが形成されていることの確認は、例えば、偏光下で顕微鏡観察を行うことにより確認することができる。
【0039】
このようにして製造される逆ベシクル組成物における逆ベシクルの粒子径は、作成直後の状態で例えば200μm以下、さらに好ましい形態では20μm、より好ましい形態では2μm以下である。粒子径が小さいほど、分散液中で沈降しにくいという利点がある。ただし、この逆ベシクルの粒子径は、逆ベシクル自体の安定性には、特に影響しない。
逆ベシクルの粒子径は、動的光散乱法やレーザー回折法により測定することができる。
【0040】
本発明の逆ベシクル組成物は、その他、逆ベシクルの形成性を妨げない範囲において、防腐剤、増粘剤、香料等の任意成分を含んでいても良い。
【0041】
また、上記のようにして製造した逆ベシクル組成物から、逆ベシクルを回収することも可能である。なお、ここにいう回収は、濃縮の概念を含むものである。
その方法として、逆ベシクル組成物において、逆ベシクルを沈降させた後、上澄み液を除く方法が挙げられる。
【0042】
本発明の製造方法により製造した逆ベシクル組成物は、皮膚外用剤の原料として用いることができる。もちろん、このような方法により製造した逆ベシクル組成物をそのまま皮膚外用剤として用いることもできる。
皮膚外用剤として、医薬や化粧料が挙げられるが、特に化粧料とすることが好ましい。
例えば、上記逆ベシクル組成物は、そのまま又は任意成分を添加して、ローションやオイルの形態の皮膚外用剤として用いることができる。また、上記逆ベシクル組成物をその他成分と混合し、必要に応じて乳化するなどして、ローションやクリームの形態の皮膚外用剤として用いることもできる。また、上記逆ベシクル組成物を化粧料の原料粉体と混合することにより、パウダータイプの化粧料とすることもできる。
【実施例】
【0043】
表1に示す組成で、以下の方法で逆ベシクル組成物を製造した。
すなわち、サンプルA〜Dについては二分子膜成分及び水の混合物(ラメラ混合物)を、揮発性溶媒に溶解し、中間溶液(第1の等方性溶液)を調製した。続いて、この中間溶液を油剤と混合し、混合溶液を得た。この溶液は2相を形成するものであった。続いて、この混合溶液をボルテックスミキサーで1分間撹拌し、中間溶液を油剤に分散させた分散液(第2の等方性溶液)を得たのち、減圧したオーブンで35℃に加温し、揮発性溶媒がなくなるまで乾燥した。
また、サンプルEについては、二分子膜成分及び水の混合物を油剤と混合し、この混合溶液をボルテックスミキサーで上記と同様の条件で撹拌した。
得られた組成物について、偏光顕微鏡を用いて、逆ベシクルの形成を確認した。逆ベシクルの形成が確認されたものについては○を、逆ベシクルの形成が確認されなかったものについては×を記入した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、ラメラ混合物を揮発性溶媒に溶解し、中間溶液を調製した後に、これと油剤を混合する方法を用いたサンプルA〜Dでは、逆ベシクルの形成が確認された。
一方、従来のように、ラメラ混合物を油剤と直接混合する方法を用いたサンプルEでは、逆ベシクルの形成が確認されなかった。
これより、二分子膜成分をあらかじめ揮発性溶媒に溶解しておき、これを油剤と混合し、その後揮発性溶媒を揮発させる方法により、逆ベシクル組成物を容易に調製できることが分かった。
なお、サンプルEの処方においても、超音波分散機等を用いてより強い撹拌力を与えることにより、逆ベシクル組成物を製造できることを本発明者らは確認している。本発明の製造方法は、このような超音波分散機などによる強い撹拌力を要さずに逆ベシクル組成物を製造できるものであり、この点で、工業的生産などを想定した場合に有用であるといえる。
また、本実施例で用いた油剤より分子量の大きな油剤を使用する場合には、本発明の製造方法は極めて有用なものとなると考えられる。
【0046】
以下に、皮膚外用剤(化粧料)の製造例を記載する。配合量は、質量パーセントで示す。
実施例1.トリートメントオイル
(A)レシチン 0.4
(A)水 0.1
(A)エタノール 0.2
(B)スクワラン 69.4
(B)オリーブオイル 20
(B)ホホバオイル 10
(B)香料 0.1
【0047】
(A)群のレシチン及び水の混合物を揮発性溶媒に溶解した後、これらを(B)群の成分と混合し、この混合溶液をボルテックスミキサーで1分間撹拌した。続いて、常法により揮発性溶媒を除去した。
その結果、逆ベシクルを含むトリートメントオイル(逆ベシクル溶液)を製造した。
【0048】
実施例2.クリーム
(A)ジメチコン 31.5
(A)シクロペンタシロキン 10
(A)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 5
(A)ポリエーテル変性シリコーン 2
(A)セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
(A)フェノキシエタノール 0.5
(B)水 30
(B)1,3―ブタンジオール 10
(C)逆ベシクル溶液 10
(C−1)レシチン 2
(C−2)プロパノール 2
(C−3)スクワラン 98
【0049】
(C−1,2,3)を用いて、実施例1と同様にして逆ベシクル溶液(C)を調製した。(A)群の成分を均一に混合し、これに(B)群の成分を混合し、ホモジナイザーで乳化物を形成した。その後、乳化物と予め作成した(C)を、手撹拌により混合した。
その結果、逆ベシクルを含むクリームを製造した。
【0050】
実施例3.日焼け止め化粧料
(A)シクロペンタシロキサン 26.7
(A)ポリエーテル変性シリコーン 3
(A)40%疎水化処理微粒子酸化チタンスラリー* 15
(A)40%疎水化処理微粒子亜鉛スラリー* 10
*分散媒:シクロペンタシロキサン
(B)水 30
(B)1,3−BG 5
(B)メチルパラベン 0.3
(C)逆ベシクル溶液 10
(C−1)レシチン 0.7
(C−2)水 0.3
(C−3)エタノール 2.0
(C−4)シクロペンタシロキサン 99
【0051】
予め(C−1〜4)を用いて実施例1と同じ方法で逆ベシクル溶液(C)を調製した。(A)群の成分を手攪拌で均一に混合、80℃に加熱した。そこに、(B)群の成分を80℃で加熱して撹拌したものを添加し、ホモジナイザーで乳化した。乳化物を冷却し、35℃に達したときに、乳化物と予め作成した(C)を、手撹拌により混合した。
その結果、逆ベシクルを含む日焼け止め化粧料を製造した。
【0052】
実施例4.乳化型ファンデーション
(A)シクロペンタシロキサン 24.2
(A)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
(A)ポリエーテル変性シリコーン 4
(A)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
(A)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 0.5
(B)顔料色素(酸化チタン、酸化鉄) 10
(C)有機変性ベントナイト 1
(D)水 30
(D)グリセリン 10
(D)メチルパラベン 0.3
(E)逆ベシクル溶液 5
(E−1)レシチン 1.4
(E−2)水 0.6
(E−3)エタノール 3
(E−4)シクロペンタシロキサン 98
【0053】
予め(E−1〜4)を用いて実施例1と同じ方法で逆ベシクル溶液(E)を調製した。(A)群の成分を手攪拌で均一に混合、80℃に加熱した。(A)群の成分の混合物に(B)群の成分をディスパーで分散した後、さらに(C)分の成分をディスパーで分散する。ホモジナイザーを用いて、得られた油相と80℃で均一に混合した(D)群を混合し、乳化する。乳化物を冷却し、35℃に達したときに、乳化物と予め作成した(E)を手攪拌にて混合した。
その結果、逆ベシクルを含む乳化型ファンデーションを製造した。
【0054】
実施例5.パウダーファンデーション
(A)シリコーン処理顔料色素(酸化チタン、酸化鉄) 15
(A)タルク 29.7
(A)マイカ 10
(A)フッ素処理セリサイト 10
(A)シリカ 10
(A)メタクリル酸メチルクロスポリマー 10
(A)雲母チタン 5
(A)メチルパラベン 0.3
(B)逆ベシクル溶液 10
(B−1)レシチン 3
(B−2)水 0.3
(B−3)アセトン 1
(B−4)ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.3
(B−5)ジメチコン 40
(B−6)ホホバオイル 56.4
【0055】
予め(B−1〜6)を用いて、実施例1と同じ方法で逆ベシクル溶液(B)を調製した。(A)群の成分を混合してパルベライザーで粗粉砕した後、(B)を添加しヘンシェルミキサーで混合した。その後、再びパルベライザーで粉砕し、金皿に打型した。
その結果、逆ベシクルを含むパウダーファンデーションを製造した。