特許第6242584号(P6242584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242584
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ピッキング装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B25J15/06 Z
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-89939(P2013-89939)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-213395(P2014-213395A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】渡 研司
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 毅
(72)【発明者】
【氏名】古賀 直幸
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−024683(JP,A)
【文献】 特開2002−246443(JP,A)
【文献】 特開2005−052919(JP,A)
【文献】 特開2000−356204(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0130884(US,A1)
【文献】 特開2012−232380(JP,A)
【文献】 特開昭58−077478(JP,A)
【文献】 実開昭60−086602(JP,U)
【文献】 実開平04−009288(JP,U)
【文献】 実開昭57−172706(JP,U)
【文献】 特開平10−193291(JP,A)
【文献】 特開2001−205584(JP,A)
【文献】 特開平05−293784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/02−17/00
B65G 21/027−21/22
F16B 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着対象物を吸着する吸着面を有する吸着具と、
前記吸着具と接続され、前記吸着面と連通する内部空間を有する昇降部材と、
前記昇降部材を挿入して連結し、前記昇降部材に吸引圧力を付与する吸引管路と、
前記吸引圧力による加速度を制御する速度制御部と、を備え、
前記吸着面は、外部と連通する開口部を有し、
前記吸引管路は、前記吸引圧力を付与することで、前記吸着面に接触する前記吸着対象物を吸着させると共に、前記昇降部材を第1位置から第2位置まで上昇させ、
前記速度制御部は、前記第1位置から前記第2位置までの前記昇降部材の上昇期間において、加速期間と減速期間とに分けて、前記吸引圧力による加速度を制御し、
前記吸着対象物は、柔軟性を有する袋が内容物を収容する袋物であり、
前記袋の内部における内容物と袋表面の前記上昇方向に沿った隙間距離をhとすると、前記加速期間の加速度と前記減速期間の加速度との差分は、前記hに基づいて定められ、かつ、前記hに基づいて前記加速度が切り替えられるピッキング装置。
【請求項2】
前記開口部は、メッシュ状、網目状および格子状の少なくとも一つの形態を有し、前記吸引圧力が、前記開口部から前記吸着対象物に付与されることで、前記吸着面は前記吸着対象物を吸着し、
前記吸着面に前記吸着対象物が吸着することで、前記吸引管路から前記昇降部材を介して前記吸着具までが密閉状態となり、前記吸引圧力によって、前記昇降部材が前記吸引管路内部を上昇できる、請求項1記載のピッキング装置。
【請求項3】
前記吸着具は、前記吸着面に外周に沿って前記吸着対象物側に突出する接触部を、更に備え、
前記接触部は、前記吸着面との間に空隙を有し、
前記空隙は、前記吸着対象物の変形部分の少なくとも一部を、その内部に収容する、請求項1又は2記載のピッキング装置。
【請求項4】
前記速度制御部は、前記第1位置から前記第2位置までの上昇期間において、前半を前記加速期間とし後半を前記減速期間とする、請求項1から3のいずれか記載のピッキング 装置。
【請求項5】
前記速度制御部は、前記第1位置から前記第1位置と前記第2位置との略中間位置までを、前記加速期間とし、前記中間位置から前記第2位置までを、前記減速期間とする、請求項1から3のいずれか記載のピッキング装置。
【請求項6】
前記加速期間における前記ピッキング装置が発生する加速度を+2Aとする場合(垂直軸に沿って上昇する方向を+方向、降下する方向を−方向の記号で表す)、前記減速期間 におけるピッキング装置が発生する加速度を、+0.3Aとする、請求項1から5のいずれか記載のピッキング装置。
【請求項7】
前記吸着具の一方の側面に設けられる第1支持部材および他方の側面に設けられる第2支持部材を更に備え、
前記第1支持部材および前記第2支持部材のそれぞれは、相互に対向すると共に相互の距離を変動可能であり、前記第1支持部材および前記第2支持部材のそれぞれは、前記吸着面が前記吸着対象物を吸着する前後のいずれかにおいて、相互の対向距離を縮めて前記 吸着対象物の側面のそれぞれに接触して把持する、請求項1から6のいずれか記載のピッキング装置。
【請求項8】
前記第1支持部材および前記第2支持部材を駆動する駆動部と、
前記吸引管路に接続する吸引装置と、を更に備え、
前記吸引装置、前記駆動部および前記速度制御部は、
(1)前記吸着具を設置されている前記吸着対象物に下降させるステップ1、
(2)前記吸引管路に吸引圧力を付与するステップ2、
(3)前記吸着具が前記吸着対象物を吸着するステップ3、
(4)前記吸引圧力によって、前記吸着具が前記吸引管路内部を上昇するステップ4、
(5)前記第1支持部材および前記第2支持部材の対向距離を縮めて前記吸着対象物を把持するステップ5、
(6)前記吸引圧力による加速期間で正の加速度を付与するステップ6、
(7)前記吸引圧力を変化させることでの減速期間で負の加速度を付与するステップ7、
の少なくとも一つを実行する、請求項7記載のピッキング装置。
【請求項9】
前記吸着具の上部と所定距離離隔して、前記吸着具と接続する係止部材と、 前記係止部材と接触可能なピストンとこのピストンを挿入させる対となるシリンダを有する、昇降制御具を更に備え、
前記シリンダは、前記ピストンを挿入および突出可能な内部空間と、前記内部空間と外部とを連通する上方開口部と、前記内部空間と外部とを連通する下方開口部と、を有し、
前記ピストンは、前記シリンダから突出している一部に、前記係止部材と係止および離隔可能なストッパーと、前記シリンダの前記内部空間の側断面に対応して、前記シリンダ 内部を仕切る仕切り板と、を有し、
前記ストッパーは、前記吸着具が前記第1位置から前記第2位置まで上昇する途中において、前記吸着具の上部と接触し、
前記上方開口部は、前記仕切り板の上方に位置し、前記下方開口部は、前記仕切り板の下方に位置する、請求項1から8のいずれか記載のピッキング装置。
【請求項10】
前記吸着具が前記第1位置から前記第2位置まで上昇する途中である第3位置で、前記 ストッパーが、前記吸着具の上部と接触し、
前記ストッパーが前記吸着具の上部と接触した後で、前記内部空間における前記仕切り板から前記上方開口部との間の空気が、前記上方開口部から排出される、請求項9記載 のピッキング装置。
【請求項11】
前記内部空間における前記仕切り板から前記上方開口部との間の空気が、前記上方開口部から排出されることで、前記吸引管路による前記吸着具の上昇に対する抵抗力が生じる 、請求項10記載のピッキング装置。
【請求項12】
前記第3位置は、前記第1位置と前記第2位置の略中央である、請求項10又は11記載のピッキング装置。
【請求項13】
前記上方開口部および前記下方開口部の少なくとも一方は、空気の流入及び流出の少なくとも一方を制御する絞り弁を有する、請求項9から12のいずれか記載のピッキング 装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかのピッキング装置と、
前記吸着具の平面方向の位置を移動させる移動装置と、
前記ピッキング装置および前記移動装置の少なくとも一部を制御する制御装置と、を備える物品移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や配送センターなどにおける製品や商品の運搬や分類において、製品や商品をピッキングする際に商品へ吸着するピッキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な事業分野、商品分野においては、それぞれに対応した工場において、種々の製品や商品が製造される。半完成状態の製品や商品は、製造工程における次の工程に運搬される必要がある。完成状態の製品や商品は、最終的にダンボールや専用のケースに詰められて出荷される。このため、工場や配送センターは、製造ライン以外に、製品や商品の分類や詰め込みを行って製品や商品を移動させる運搬ラインを必要とする。運搬ラインは、半完成の製品や商品を次の工程に移動させたり、完成した製品や商品を出荷状態に移動させたりする。
【0003】
運搬ラインが、製品や商品を次の工程や出荷状態に移動させる際には、製品や商品の分類を行ったり、所定数の製品や商品を段ボール箱やケースに詰め込んだりする必要がある。このため、運搬ラインは、複数の製品や商品から、一つ一つの製品や商品をピッキングする必要を有している。ピッキングとは、ある場所にある製品や商品を吸着したり把持したりして持ち上げることをいい、ピッキングされた後で、ピッキングした製品や商品を、ある場所から別の場所に移動する。すなわち、ピッキング装置によるピッキングとは、製品や商品を種々の方式で掴むことであり、掴むのに合わせて、製品や商品を上昇させたり下降させたりすることを含むこともある。
【0004】
ここで、製品や商品は、様々である。運搬ラインは、製品や商品の配送先、アイテム数、品種などのパラメータに基づいて、様々な製品や商品を効率的に分類する必要がある。一つのダンボール箱やケースには、異なる品種の製品や商品が詰め込まれる必要があることもあるからである。このような様々なパラメータに対応して、複数の製品や商品を正確に分類するには、人的作業が適しているが、人件費や効率の問題がある。
【0005】
ここで、製品や商品の出荷のための運搬ラインの場合は、個々の製品や商品の分類、分類後の製品や商品の運搬、分類された製品や商品の箱詰め、箱の集積、パレットへの積載などの工程を含む。これらそれぞれの工程は、他の工程と独立しているが、運搬ラインの前半工程である製品や商品の分類においては、取り扱うべき製品や商品の個数が多い。これに対して、運搬ラインの後半工程である、製品や商品の箱詰めやパレットへの積載においては、取り扱うダンボール箱の個数は、前半工程で取り扱う製品や商品の個数より相対的に少なくなる。
【0006】
運搬ラインでの全ての工程を含む流れ作業を、自動化して効率よく進めるためには、前半工程で取り扱う製品や商品の個数に対応した、分類や運搬作業が必要となる。すなわち、個々の製品や商品を、高速かつ高精度にピッキングする必要がある。前半工程でのピッキング作業が遅かったり、作業エラーが生じたりすると、運搬ラインの後半工程での作業速度を遅くしたり作業を止めたりする必要が生じるからである。
【0007】
このように、製造工程の途中や、製造工程後の出荷前作業において必要となる運搬ラインでは、個々の製品や商品を、正確かつ高速にピッキングすることが求められる。個々の製品や商品が正確かつ高速にピッキングされることで、製造および出荷作業が高速化され、様々な製造現場や流通現場での生産性が向上する。
【0008】
ここで、運搬ラインにおいては、ピッキング装置が、ケースに入った製品や商品、コンベアを流れる製品や商品のそれぞれを、ピッキングする。例えば、ピッキング装置は、あるケースに入った複数の製品や商品の中から一つをピッキングして、次の工程(場所)に移動させる。あるいは、ピッキング装置は、コンベアを流れる複数の製品や商品の中から一つをピッキングして、ケースや箱に詰め込む。
【0009】
このように、ピッキング装置は、複数の製品や商品の中から、対象となる一つを選択して、確実かつ高速にピッキングする必要を有している。特に、ピッキング装置が掴む商品や製品は、形状、内容、外装物が様々であるので、掴みにくいことも多い。このため、ピッキング装置は、吸引圧力を用いる吸着具を用いて、製品や商品を吸着してピッキングすることが多い。製品や商品の外周に吸着具を押し当てて、吸着具に付与される吸引圧力によって、ピッキング装置は、製品や商品を取り出し可能とする。吸着具には、製品や商品を確実に吸着する能力が求められている。
【0010】
ここで、製品や商品には様々なものがあるが、お菓子、パン、食品など、軟質性を有する(変形容易性を有する)内容物が、袋(やはり変形容易性を有する)に詰められている「袋物」も多くある。工場や配送センターなどでは、このような袋物を取り扱うことも多く、ピッキング装置には、このような袋物を取り扱うことも求められている。
【0011】
このようなピッキング装置やピッキング装置に用いられる吸着具の技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−16378号公報
【特許文献2】特開2000−296489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1は、空気吸引孔1を有する吸着具本体2の下部に、硬質弾性材料製環状体3を固定し、その硬質弾性材料製環状体3よりも下方に突出する軟質弾性材料製環状体4を、硬質弾性材料製環状体3の外側において吸着具本体2に直接または間接的に固定する吊上運搬用真空吸着具を開示する。
【0014】
特許文献1は、硬質部材と軟質部材とをあわせた吸着部分によって、対象物を吸着する吸着具を開示する。このような吸着具によって、表面に凸凹がある対象物であっても、確実に吸着できることを目的としている。
【0015】
しかしながら、硬質部材と軟質部材とをあわせた吸着部分を有しているとしても、対象物が袋物である場合には、特許文献1に開示される吸着具は、袋物の対象物を確実に吸着できない問題を有している。菓子、パン、食品、袋入り部品などは、その外形は袋である。袋は、内部に空気や不活性ガスを収容しているので、外圧によって容易に変形する。
【0016】
このため、吸着具によって袋の表面が吸着される場合でも、袋表面にしわや折れ曲がりが生じてしまう。しわや折れ曲がりが、吸着具の吸着面から吸着具の外側にまで連通していると、吸着面の一部が、外気と連通してしまうことになる。吸着面の一部が、吸着対象物である袋物で覆われていない状態であると、吸引面積が減少したり、吸引方向に外気が入ったりして、吸着力が弱まる。吸着力が弱まった状態であると、何らかの要因で、吸着具は、吸着対象物を落下させてしまうこともある。吸着具が、吸着対象物を吸着した後で吸着対象物を装置の一部に衝突させたり、吸着対象物を移動させる勢いを与えたりすることで、吸着具は、吸着対象物を落下させてしまう。
【0017】
吸着具(とこれを備えるピッキング装置)が、このように袋物である吸着対象物を落下させてしまえば、吸着対象物を移動させることができないだけでなく、袋物の内容物を損傷(変形なども含む)させてしまうこともありえる。内容物を損傷させることは、工場や配送センターにとっては当然に問題であり、このような損傷を生じさせないことが求められる。
【0018】
逆に、落下を防止しようとして、吸着具による吸引力を増加させれば、袋物の袋が破れたり、内容物が吸着具の吸着面に強く押し付けられたりして、袋の破損や内容物の損傷がやはり生じてしまう。
【0019】
特許文献2は、工作物を吸着するための真空グリッパー10は、負圧ポート14と弾性的な吸盤20と吸盤ホルダー12とを備え、吸盤20は工作物寄りの側に、吸引室26を画成するリップシール22を備え、吸引室26は負圧ポート14に流体接続されている。吸引室26はその中に突出するリブ36,38を備え、リブおよびまたはリップシール22は吸引室26寄りのその面30に、少なくとも1つの溝28を有する真空グリッパーを開示する。
【0020】
特許文献2に開示される真空グリッパーは、リブや溝によって、滑り止め機能を発揮し、対象物を吸着する際のすべりを防止する。
【0021】
しかしながら、一定形状を維持できる吸着対象物ではなく、袋物である場合には、リブや溝による滑り止めがあったとしても、特許文献1の場合と同様の問題を有する。すなわち、特許文献2に開示される真空グリッパーは、袋物を吸着する際に、表面にしわや折れ曲がりを生じさせて、吸着対象物を落下させてしまう可能性を有する。
【0022】
この結果、特許文献1と同様に、袋の破損や内容物の損傷を生じさせてしまうことがある。
【0023】
特許文献1、特許文献2に代表される従来技術は、袋物のように吸着時に容易に変形する吸着対象物を確実に吸着することが難しい問題を有していた。もし、吸着具が、吸着対象物を落下させてしまうと、運搬ラインを停止させる必要が生じ、製造工程や出荷工程での生産性を低下させる問題も生じてしまう。
【0024】
加えて、生産性の低下だけでなく、袋物における袋の破損や内容物の損傷を生じさせる可能性も高い。袋の破損は当然のこと、袋が破損しないまでも内容物に変形などの損傷が生じてしまえば、当該商品は販売ができなくなってしまう。特に、お菓子、パン、インスタント食品などの食品の購入においては、購入者は、内容物の見た目も重視するので、内容物が変形等していれば、購入者が購入をためらう。食品などの袋物においては、内容物を確認できるように袋の一部もしくは全部が透明もしくは半透明であることが多いので、購入者は購入時に内容物の状態を確認できるからである。
【0025】
以上のように、従来技術の吸着具やこれを備えるピッキング装置は、袋物を確実にピッキングできないとの問題に加え、袋物の袋や内容物の損傷を生じさせてしまう問題を有していた。
【0026】
このような問題に鑑み、袋物のように外圧で容易に変形してしまう吸着対象物であっても、確実にピッキングしつつ、袋や内容物を損傷させないピッキング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題に鑑み、本発明のピッキング装置は、吸着対象物を吸着する吸着面を有する吸着具と、吸着具と接続され、吸着面と連通する内部空間を有する昇降部材と、昇降部材を挿入して連結し、昇降部材に吸引圧力を付与する吸引管路と、吸引圧力による加速度を制御する速度制御部と、を備え、吸着面は、外部と連通する開口部を有し、吸引管路は、吸引圧力を付与することで、吸着面に接触する吸着対象物を吸着させると共に、昇降部材を第1位置から第2位置まで上昇させ、速度制御部は、第1位置から第2位置までの昇降部材の上昇期間において、加速期間と減速期間とに分けて、吸引圧力による加速度を制御する。
【発明の効果】
【0028】
本発明のピッキング装置は、空気吸引圧力のみで、吸着対象物を吸着すると共に一定の高さまで上昇させることができる。このため、ピッキングにおける工程数およびこれに対応する部材の削減が実現できる。更に、確実にピッキングを行うことができる。
【0029】
また、空気吸引圧力のみで吸着と上昇を行うことに伴う、上昇時の内容物の袋内部での振動や上昇による内容物の損傷を防止できる。この結果、ピッキング装置が、袋物をピッキングしてある場所から別の場所へ移動させる場合に、袋はもちろんのこと、内容物を損傷させることが無くなり、ピッキングによって廃棄対象となりうる商品を生じさせにくくできる。このため、工程移動などにおいて商品の廃棄率を下げることができる。
【0030】
また、ピッキングにおける損傷可能性を低減できることでピッキング装置によるピッキング速度を上げることができ、商品の移動効率を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の搬送装置の全体斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の斜視図である。
図3】本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の動作手順の説明図である。
図4】本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の動作手順の説明図である。
図5】本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の動作手順の説明図である。
図6】本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の動作手順の説明図である。
図7】本発明の実施の形態1における速度制御部の速度制御を示す一例のグラフである。
図8】本発明の実施の形態1における上昇期間における装置の発生する加速度の変化を示すグラフである。
図9】本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の動作手順の説明図である。
図10】本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の動作手順の説明図である。
図11】本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の動作手順の説明図である。
図12】本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の動作手順の説明図である。
図13】本発明の実施の形態2におけるピッキング装置の斜視図である。
図14】本発明の実施の形態2における第3位置(中間位置)に到達した状態のピッキング装置の正面図である。
図15】本発明の実施の形態2における第2位置に到達したピッキング装置の正面図である。
図16】本発明の実施の形態3における吸着具の吸着面から見た斜視図である。
図17】本発明の実施の形態3における吸着具3の断面斜視図である。
図18】本発明の実施の形態3における吸着具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1の発明に係るピッキング装置は、吸着対象物を吸着する吸着面を有する吸着具と、吸着具と接続され、吸着面と連通する内部空間を有する昇降部材と、昇降部材を挿入して連結し、昇降部材に吸引圧力を付与する吸引管路と、吸引圧力による加速度を制御する速度制御部と、を備え、吸着面は、外部と連通する開口部を有し、吸引管路は、吸引圧力を付与することで、吸着面に接触する吸着対象物を吸着させると共に、昇降部材を第1位置から第2位置まで上昇させ、速度制御部は、第1位置から第2位置までの昇降部材の上昇期間において、加速期間と減速期間とに分けて、吸引圧力による加速度を制御し、吸着対象物は、柔軟性を有する袋が内容物を収容する袋物であり、袋の内部における内容物と袋表面の上昇方向に沿った隙間距離をhとすると、加速期間の加速度と減速期間の加速度との差分は、hに基づいて定められ、かつ、hに基づいて加速度が切り替えられる。
【0033】
この構成により、ピッキング装置は、吸着具の上昇によって上昇の上端である第2位置に吸着対象物が到達する場合でも、吸着対象物に強い慣性を与えすぎない。また、この構成により、上端である第2位置での慣性を抑えることができ、袋の内容物が吸着面に衝突することが防止される。また、この構成により、ピッキング装置は、食品、菓子、パン、精密機器などの袋に入った吸着対象物であっても、損傷させることなくピッキングできる。
【0034】
本発明の第2の発明に係るピッキング装置では、第1の発明に加えて、開口部は、メッシュ状、網目状および格子状の少なくとも一つの形態を有し、吸引圧力が、開口部から吸着対象物に付与されることで、吸着面は吸着対象物を吸着し、吸着面に吸着対象物が吸着することで、吸引管路から昇降部材を介して吸着具までが密閉状態となり、吸引圧力によって、昇降部材が吸引管路内部を上昇できる。
【0035】
この構成により、ピッキング装置は、吸引圧力だけで、吸着対象物の吸着と吸着対象物の上昇とを、実現できる。
【0036】
本発明の第3の発明に係るピッキング装置では、第1又は第2の発明に加えて、吸着具は、吸着面に外周に沿って吸着対象物側に突出する接触部を、更に備え、接触部は、吸着面との間に空隙を有し、空隙は、吸着対象物の変形部分の少なくとも一部を、その内部に収容する。
【0037】
この構成により、ピッキング装置は、吸着具を用いて、袋物などの柔軟性の高い吸着対象物であっても、確実に吸着して昇降させることができる。
【0038】
本発明の第4の発明に係るピッキング装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、速度制御部は、第1位置から第2位置までの上昇期間において、前半を加速期間とし後半を減速期間とする。
【0039】
この構成により、上昇の上端である第2位置に吸着対象物が到達するときでも、吸着対象物に強すぎる慣性が加わらず、袋の内部で内容物が飛び跳ねたりして吸着面に衝突することを防止できる。結果として、内容物の損傷を防止できる。
【0040】
本発明の第5の発明に係るピッキング装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、速度制御部は、第1位置から第1位置と第2位置との略中間位置までを、加速期間とし、中間位置から第2位置までを、減速期間とする。
【0041】
この構成により、上昇の上端である第2位置に吸着対象物が到達するときでも、吸着対象物に強すぎる慣性が加わらず、袋の内部で内容物が飛び跳ねたりして吸着面に衝突することを防止できる。結果として、内容物の損傷を防止できる。
【0042】
本発明の第6の発明に係るピッキング装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、加速期間におけるピッキング装置が発生する加速度を+2Aとする場合(垂直軸に沿って上昇する方向を+方向、降下する方向を−方向の記号で表す)、減速期間におけるピッキング装置が発生する加速度を、+0.3Aとする。
【0043】
この構成により、上端である第2位置での慣性を抑えることができ、袋の内容物が吸着面に衝突することが防止される。
【0048】
本発明の第の発明に係るピッキング装置では、第1から第のいずれかの発明に加えて、吸着具の一方の側面に設けられる第1支持部材および他方の側面に設けられる第2支持部材を更に備え、第1支持部材および第2支持部材のそれぞれは、相互に対向すると共に相互の距離を変動可能であり、第1支持部材および第2支持部材のそれぞれは、吸着面が吸着対象物を吸着する前後のいずれかにおいて、相互の対向距離を縮めて吸着対象物の側面のそれぞれに接触して把持する。
【0049】
この構成により、ピッキング装置は、上昇中、水平移動中、下降中において、吸着対象物を落下させたりすることを防止できる。
【0050】
本発明の第の発明に係るピッキング装置では、第の発明に加えて、第1支持部材および第2支持部材を駆動する駆動部と、吸引管路に接続する吸引装置と、を更に備え、吸引装置、駆動部および速度制御部は、(1)吸着具を設置されている吸着対象物に下降させるステップ1、(2)吸引管路に吸引圧力を付与するステップ2、(3)吸着具が吸着対象物を吸着するステップ3、(4)吸引圧力によって、吸着具が吸引管路内部を上昇するステップ4、(5)第1支持部材および第2支持部材の対向距離を縮めて吸着対象物を把持するステップ5、(6)吸引圧力による加速期間で正の加速度を付与するステップ6、(7)吸引圧力を変化させることでの減速期間で負の加速度を付与するステップ7、の少なくとも一つを実行する。
【0051】
この構成により、ピッキング装置は、吸引圧力のみで、吸着対象物の吸着と上昇を実現しつつ、上昇の終了する上端での吸着対象物に加わる慣性を低減できる。
【0052】
本発明の第の発明に係るピッキング装置では、第1から第のいずれかの発明に加えて、吸着具の上部と所定距離離隔して、吸着具と接続する係止部材と、係止部材と接触可能なピストンとこのピストンを挿入させる対となるシリンダを有する、昇降制御具を更に備え、シリンダは、ピストンを挿入および突出可能な内部空間と、内部空間と外部とを連通する上方開口部と、内部空間と外部とを連通する下方開口部とを有し、ピストンは、シリンダから突出している一部に、係止部材と係止および離隔可能なストッパーと、シリンダの内部空間の側断面に対応して、シリンダ内部を仕切る仕切り板と、を有し、ストッパーは、吸着具が第1位置から第2位置まで上昇する途中において、吸着具の上部と接触し上方開口部は、仕切り板の上方に位置し、下方開口部は、仕切り板の下方に位置する。
【0053】
この構成により、ピッキング装置は、昇降制御部によって、吸引圧力を制御することなく、減速期間を生じさせることができる。
【0054】
本発明の第10の発明に係るピッキング装置では、第の発明に加えて、吸着具が第1位置から第2位置まで上昇する途中である第3位置で、ストッパーが、吸着具の上部と接触し、ストッパーが吸着具の上部と接触した後で、内部空間における仕切り板から上方開口部との間の空気が、上方開口部から排出される。
【0055】
この構成により、昇降制御部は、上方開口部からの空気の排出を負荷として、吸着具(昇降部材)の上昇に与えることができる。この負荷によって、減速期間が生じる。
【0056】
本発明の第11の発明に係るピッキング装置では、第10の発明に加えて、内部空間における仕切り板から上方開口部との間の空気が、上方開口部から排出されることで、吸引管路による吸着具の上昇に対する抵抗力が生じる。
【0057】
この構成により、昇降制御部は、減速期間を生み出せる。
【0058】
本発明の第12の発明に係るピッキング装置では、第11の発明に加えて、第3位置は、第1位置と第2位置の略中央である。
【0059】
この構成により、昇降制御部は、適切な加速期間と減速期間を生み出せる。
【0060】
本発明の第13の発明に係るピッキング装置では、第12の発明に加えて、上方開口部および下方開口部の少なくとも一方は、空気の流入及び流出の少なくとも一方を制御する絞り弁を有する。
【0061】
この構成により、昇降制御部は、負荷の調整を行える。この結果、減速期間の速度を調整できる。
【0062】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0063】
(実施の形態1)
【0064】
(空気吸引式のピッキング装置の説明)
まず、実施の形態1におけるピッキング装置の全体概要を説明する。図1は、本発明の搬送装置の全体斜視図である。図1は、実施の形態1におけるピッキング装置1を含んで実際の製造ラインや箱詰めラインに設置される搬送装置全体を示している。
【0065】
ピッキング装置1は、搬送装置300の一部に用いられる。搬送装置300は、製造ラインや箱詰めラインにおいて、吸着対象物をある場所から別の場所に移動させる。図1では、製造ライン100における第1ライン101に設置された箱102に詰められている吸着対象物50が、第2ライン104に設置された箱103に搬送される。ピッキング装置1には、制御ロボット200が備わっている。制御ロボット200は、筐体210と、ピッキング装置1の姿勢を制御する姿勢制御部材201、202を備えている。また、図1には図示していないが、ピッキング装置1は、吸引装置に接続されている。
【0066】
このように、搬送装置300は、ピッキング装置1とこれを制御する制御ロボット200を備え、製造ライン100に備わる吸着対象物50を掴んで所定の位置に搬送する。ピッキング装置1が搬送装置300の一部として取り付けられて、ピッキング装置1の動作によって、箱102に入れられている吸着対象物50が、別の箱103に搬送される。ピッキング装置1は、搬送装置300として製造ラインや箱詰めラインに設置されて使用される。
【0067】
ここで、図1では、ピッキング装置1は、吸着対象物50を実際に掴んで搬送する部分を示しており、ピッキング装置1を含んだ全体を搬送装置300として示している。しかしながら、ピッキング装置1と搬送装置300とを、特段に区別する必要があるものではない。例えば、図1で搬送装置300として示されている制御ロボット200(筐体210なども)までを含めた構成を、ピッキング装置として把握しても良い。当然に、ピッキング装置1は、図1に示されるように、吸着対象物50と直接的に対峙する部分だけで把握されても良い。
【0068】
制御ロボット200は、図示していないが、別途接続される吸引装置からの吸引圧力を付与したり、姿勢制御部材201、202を用いてピッキング装置1の姿勢を制御したりすることで、ピッキング装置1の実動作を制御する。制御ロボット200による制御によって、ピッキング装置1が、吸着対象物50を掴んで搬送でき、製造ライン100に設置された搬送装置300は、その機能を発揮する。
【0069】
(ピッキング装置の概要)
ピッキング装置1の概要について説明する。図2は、本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の斜視図である。図2に示されるピッキング装置1は、図1で説明された搬送装置300の一部として用いられる。ピッキング装置1は、吸着具3、昇降部材9、吸引管路2、第1支持部材4、第2支持部材5を備える。ここで、第1支持部材4および第2支持部材5は、必須の要素ではなく、作業性や作業能率を向上させるために設けられる。また、ピッキング装置1は、速度制御部8を備える。
【0070】
吸着具3は、吸着対象物50を吸着する吸着面31を有する。吸着面31は、外部と連通する状態であり、例えばメッシュ状の開口部を有している。この開口部によって、吸引管路2から付与される吸引圧力(吸引空気)が、外部へ到達して、吸着具3は、吸着面31に接触する吸着対象物50を吸着できる。
【0071】
昇降部材9は、吸着具3と接続される。昇降部材9は、吸着面31の開口部と連通する内部空間を有しており、この内部空間は、昇降部材9の上方にも連通している。言い換えれば、昇降部材9は、上下で開口しているがらんどうの部材である。昇降部材9は、吸引管路2の内部に挿入される。この挿入によって、昇降部材9は、吸引管路2内部で昇降する。
【0072】
吸引管路2は、昇降部材9を挿入して連結する。このとき、昇降部材9が吸引管路2内部に挿入されて連結されることで、昇降部材9は、吸引管路2内部で上下移動が自由にできる。なお、昇降部材9が、吸引管路2から外れて落下することのないように、吸引管路2の下端には、昇降部材9を止める部材が備わっていることもよい。
【0073】
吸引管路2は、昇降部材9を内部で昇降させるために、内部空間を有している。この内部空間を介して、吸引管路2は、吸引圧力を吸着具3(同様に昇降部材9に)に付与する。吸引管路2には、別途吸引装置が接続されており(図2には図示せず)、吸引装置からの吸引圧力(吸引空気)は、吸引管路2の内部空間に到達する。すなわち、吸引管路2、昇降部材9、吸着具3の内部空間が全て連通して、最終的には、吸着面31の開口部から外部へ連通する構造となる。この連通する経路を、吸引圧力を有する吸引空気が移動して、吸着面31に接触する吸着対象物50を吸着する。
【0074】
吸着面31に吸着対象物50が吸着すると、吸引管路2、昇降部材9および吸着具3を連通する経路の先端がこの吸着対象物50によってふさがれることになる。こうなると、吸引管路2が付与する吸引圧力(吸引空気)は、吸着面31の外部に出ることができなくなる。この結果、吸引管路2から吸着具3に至る内部空間で吸引圧力が留まり、この吸引圧力によって、吸引管路2に挿入されている昇降部材9が上昇できる。昇降部材9は、吸引管路2内部で自由に昇降できる状態で挿入されているからである。
【0075】
このように、ピッキング装置1は、吸引管路2からの吸引圧力のみで、(1)吸着面31に吸着対象物50を吸着させる、(2)吸着面が塞がれたことで、吸引圧力が内部に留まり、吸引管路2内部で昇降部材9を上昇させる、(3)昇降部材9に接続される吸着具3も同時に上昇する、(4)当然ながら吸着対象物50も上昇する、とのステップで、吸着対象物50を上昇させる。
【0076】
逆に言えば、吸引圧力を消滅させると、昇降部材9が下降すると共に、吸着面31から吸着対象物50が外れる。この結果、ピッキング装置1は、吸着対象物50を、ある場所に置くことができる。
【0077】
更に、ピッキング装置1は、吸引圧力による上昇での加速度を制御する速度制御部8を備えている。速度制御部8は、吸引圧力によって上昇する昇降部材9(当然に吸着具3)の加速度を制御する。ピッキング装置1は、吸引圧力により、昇降部材9を下端である第1位置から上端である第2位置まで上昇させる。この上昇は、吸引圧力によってその加速度(速度)が決まる。
【0078】
加速度が大きすぎると、第2位置に到達した瞬間に、強い慣性が残り、例えば袋物の内容物が袋内部で飛び跳ねたりして、吸着面31に衝突することもある。これでは、内容物が不良品となってしまいかねない。一方、加速度が小さすぎると、昇降部材9が第1位置から第2位置まで十分に上昇できず、ピッキング装置1が、吸着対象物50を上昇させて他の場所に移動させることができなくなる。あるいは、ピッキング速度が遅くなり、作業効率が下がる問題がある。
【0079】
この両面の問題を同時解決するために、速度制御部8は、第1位置から第2位置までの昇降部材9の上昇期間において、加速期間と減速期間とにわけて、吸引圧力による加速度を制御する。この制御によって、昇降部材9の第2位置までの確実な上昇を担保しつつ、第2位置に到達する際の速度を低減して、内容物の慣性力を低下させる。慣性力の低下によって、袋の中で、内容物が飛び跳ねて吸着面31に衝突することも防止される。当然に、内容物の損傷が防止され、ピッキング装置1でのピッキング速度が下がりすぎることも防止される。
【0080】
このように、実施の形態1におけるピッキング装置1は、速度制御部8を備えることで、吸着対象物50と接触する下端である第1位置から、昇降部材9の上昇上端である第2位置まで上昇する結果、袋の内容物が、上昇時の慣性によって袋内部で飛び跳ねて吸着面31に衝突することが防止できる。この結果、ピッキング装置1は、食品や精密部品などの袋物のピッキングにおいて、吸着対象物50(特に内容物)を、損傷させることがない。
【0081】
(動作手順)
次に、実施の形態1におけるピッキング装置1の基本動作を、説明する。
【0082】
図3図6図9図12は、本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の動作手順の説明図である。これら図のそれぞれは、ピッキング装置1の動作手順を、段階的かつ離散的に示したものである。すなわち、ピッキング装置1の動作が進む順序に対応して、図3図6図9図12は、それぞれのタイミングでのピッキング装置1の正面を示している。なお、図3図6図9図12はでは、吸着具3の両側面のそれぞれに設けられる第1支持部材4および第2支持部材5が示されている。
【0083】
また、ピッキング装置1は、吸着具3、第1支持部材4および第2支持部材の位置、姿勢などを動作させて制御する駆動部6を有している。駆動部6は、図3に示される構造部分に設けられてもよいし、図1における制御部200に設けられてもよい。駆動部6は、第1支持部材4、第2支持部材を駆動したり、昇降部材9を吸引圧力とは別に昇降させたりする。
【0084】
(ステップ1)
最初の段階では、ピッキング装置1は、吸着対象物50から吸着具3を離した状態である。吸着具3は、吸引管路2から付与される吸引圧力や駆動部による駆動によって下降可能である。最初の段階では、吸着具3は、上昇した状態であり吸着対象物50と接触していない。また、第1支持部材4および第2支持部材5も上昇した状態で吸着対象物50と接触していない。
【0085】
まず、ステップ1では、ピッキング装置1は、吸着具3を吸着対象物50に向けて下降させる。図3は、この下降開始状態を示している。ピッキング装置1は、図1に示されるように、ある製造ライン100に置かれた箱102に入っている吸着対象物50を吸着し、箱103に搬送する。ピッキング装置1は、制御ロボット200などに画像処理機能を持たせており、画像処理によって、吸着対象物50が吸着具3の下に位置していることを把握できる。あるいは、予めプログラミングされた座標指示に合わせて、ピッキング装置1は、吸着対象物50の位置を判別して、吸着具3を吸着対象物50に向けて下降させる。
【0086】
なお、吸着具3は、昇降部材9と共に(あるいは吸引管路2と共に)下降すればよい。駆動部が吸着具3を下降させる。
【0087】
なお、一般的に吸着対象物50は、箱102などに入れられているので、吸着具3が下降することをステップ1として説明した。しかしながら、吸着対象物50を収容している箱102が上昇可能であれば、吸着具3が下降するのではなく、吸着対象物50が吸着具3に上昇してくることでもよい。
【0088】
吸着具3が下降することで、吸着具3は、第1支持部材4および第2支持部材5の先端よりも、下側(吸着対象物50側)に、その先端(吸着具3において吸着対象物50と接触する接触部)を位置させるようになる。
【0089】
(ステップ2)
ステップ1によって、吸着具3の下降が進むと、吸着具3が吸着対象物50に接触する。接触すると、吸引管路2には、吸引圧力が付与されて、この吸引圧力は、吸着具3にも付与される。この吸引管路2への吸引圧力が、ピッキング装置1によるステップ2の動作である。この吸引圧力は、吸引管路2、昇降部材9、吸着具3を通じて、吸着面31に到達する。
【0090】
吸着面31は、メッシュ状、網目状および格子状の少なくとも一つの形態の開口部を有する。吸引圧力は、この開口部から吸着対象物50に付与される。
【0091】
(ステップ3)
次に、ピッキング装置1は、吸引圧力の付与によって吸着具3で吸着対象物50を吸着させるステップ3を実行する。図4は、このステップ3を示している。昇降部材9の下降に伴って吸着面31が吸着対象物50に接触している。この接触時に吸引圧力が付与されることで、吸着具3は、吸着面31に吸着対象物50を吸着できる。
【0092】
ここで、吸着対象物50は、内容物を袋に収容する袋物である。たとえば、菓子、パン、惣菜製品、加工食品など、変形性がある内容物を収容している袋物である。このような袋物は、内容物も袋そのものも変形性を有しているので、吸着具3によって吸着されると、外形(特に袋)が、変形する。
【0093】
図4に示されるステップ3によって、ピッキング装置1は、吸着力によって吸着対象物50を、上方に移動できるようになる。なお、図4に示されるステップ2においては、吸着具3は、吸着している吸着対象物50に吸引圧力を付与し続ける。吸着を停止させないためである。
【0094】
また、図4に示される、昇降部材9が最下端(吸着対象物50が置かれている位置)まで下がっている位置を、第1位置91として定義する。
【0095】
(ステップ4)
図5は、ステップ4を示す。ステップ4では、吸着面31が吸着対象物50で塞がれている。この塞がりにより、吸引管路2から付与される吸引圧力は、吸着面31で留まり、吸引管路2、昇降部材9および吸着具3の内部に吸引圧力がとどまる。吸引圧力は、端的に言えば吸引空気であるので、吸着面31がふさがれることで、吸引管路2から吸着具3に至る内部空間の空気圧力が低下する。すなわち、この内部空間が密閉空間となって、吸引圧力による吸引力が、可動部分である昇降部材9に加わることになる。この吸引力の付与によって、昇降部材9が可動して上昇できる。
【0096】
この空気圧力の低下によって、吸引管路2の内部空間で自由に昇降できる昇降部材9が、上昇する。図5は、この昇降部材9が一定量昇降した状態を示している。
【0097】
このように、ピッキング装置1は、吸引圧力のみで、吸着と上昇を実現できる。こうして、ステップ4にて、昇降部材9は、第1位置91から上昇する。
【0098】
(ステップ5)
次にピッキング装置1は、ステップ5の動作を行う。図6は、ステップ5の状態を示している。ステップ5では、駆動部6が、第1支持部材4および第2支持部材5を駆動させて、側面から吸着対象物50を挟む。第1支持部材4および第2支持部材5のそれぞれは、吸着具3の側面に設けられる。好ましくは、第1支持部材4と第2支持部材5とは、相互に対向する。更に、第1支持部材4および第2支持部材5のそれぞれは、相互の距離(対向距離)を変動可能であり、吸着面31が吸着対象物50を吸着する前後のいずれかにおいて、対向距離を縮めて、吸着対象物50の側面に接触して把持する。
【0099】
ここでは、吸着面31での吸着対象物50の吸着の後で、駆動部6が、第1支持部材4および第2支持部材5の対向距離を縮める。こうして、第1支持部材4は吸着された吸着対象物50の一方の側面を押さえ、第2支持部材5は吸着された吸着対象物50の他方の側面を押さえる。この両側面からの押さえによって、吸着具3による吸着だけでなく、第1支持部材4および第2支持部材5のそれぞれによる把持によって、吸着対象物50の上昇時あるいは水平方向での移動時の落下や、袋内部での内容物の移動や振動が低減できる。
【0100】
ここで、第1支持部材4および第2支持部材5のそれぞれは、吸着対象物50の搬送方向に沿って、接触面41、51を接触させる。言い換えれば、接触面41、51のそれぞれは、搬送方向に略垂直である。接触面41、51が、このように吸着対象物50に接触させられることで、平面方向での移動時に、搬送方向に加わる圧力に対応できる。
【0101】
なお、接触面41、51のそれぞれは、吸着対象物50の姿勢を維持できるように接触させられれば良く、非常に強い圧力で接触する必要は無い。吸着対象物50である袋物の袋や内容物を破壊しないためである。
【0102】
第1支持部材4および第2支持部材5のそれぞれは、両サイドから、吸着対象物50に近づくようにスライド動作することで、接触面41、51を、吸着対象物50に接触させる。このとき、第1支持部材4および第2支持部材5は、相互に連動してスライド動作しても良いし、それぞれが独立してスライド動作しても良い。例えば、第1支持部材4がより大きくスライド動作して、接触面41を吸着対象物50に接触させてもよいし、逆でも良い。
【0103】
なお、このときには、第1支持部材4および第2支持部材5の先端は、吸着具3の先端よりも上方に位置することが適当である。こうすることで、吸着具3がステップ1によって第1位置まで下降した場合に、第1支持部材4および第2支持部材5が、邪魔になることは無いからである。
【0104】
このようにピッキング装置1は、吸引圧力による昇降部材9の上昇に合わせて、第1支持部材4および第2支持部材5の把持をもって、第1位置から第2位置(昇降部材9の上限位置)にまで、昇降部材9を上昇させる。
【0105】
なお、ステップ5で説明した第1支持部材4と第2支持部材5による把持と、ステップ4で説明した昇降部材9の上昇とは、完全に切り分けられるものではなく、前後したりミックスで動作したりすることでもよい。いずれにしても、ステップ4、ステップ5によって、ピッキング装置1は、吸着対象物50を第1位置91から第2位置92まで上昇させる。
【0106】
(ステップ6、ステップ7)
ここで、速度制御部8は、第1位置91から第2位置92まで昇降部材9が上昇する間に、加速期間と減速期間とに分けて、昇降部材9の上昇速度を制御する。加速期間において重力加速度と合成しても正の加速度が与えられるステップ6と、減速期間において、重力加速度と合成して負の加速度が与えられるステップ7とを組み合わせて、速度制御部8は、昇降部材9の上昇を制御する。ピッキング装置1は、このステップ6、ステップ7によって、袋の内容物を吸着面31に衝突させること無く上昇させる。
【0107】
例えば、全てを加速期間とすると、第2位置92に到達したところで、慣性によって袋の内容物が袋の中で上下して吸着面31に衝突するなどの問題を生じさせる。このため、速度制御部8は、第1位置91から第2位置92までの上昇期間において、前半を加速期間として後半を減速期間として制御する。
【0108】
加速期間による加速中に到達する第1位置91と第2位置92の途中で、減速に切り替えることで、昇降部材9の上昇速度が、第2位置92では抑えられることになるからである。上昇最後の第2位置92での速度が抑えられれば、慣性による袋内部での内容物の上下振動が抑えられる。結果として、内容物が吸着面31に衝突することが減少し、内容物の損傷が低下できる。
【0109】
図7は、本発明の実施の形態1における速度制御部の速度制御を示す一例のグラフである。図7の横軸は、昇降部材9の上昇位置を示している。上昇位置の横軸において第1位置、第2位置を示している。図7の縦軸は昇降部材9の速度を示している。昇降部材9の速度は、基本的に吸引管路2からの吸引圧力で定まる。すなわち、吸引管路2に繋がる吸引装置の吸引力(定量的に調整可能である)によって、この昇降部材9の速度は決定される。
【0110】
(吸引圧力の制御)
速度制御部8は、吸引装置の吸引圧力を変化させることで、加速期間と減速期間とを変化させる。吸引装置には、例えば吸引ポンプやバキュームポンプなどが用いられ、これらは定量的に吸引圧力を制御できる。速度制御部8は、この吸引装置の定量的な吸引圧力制御に作動して、吸引装置から吸引管路2への吸引圧力を制御して、加速期間と減速期間を制御できる。
【0111】
(絞り弁による制御)
吸引管路2や吸引管路2に繋がる吸引装置からの管路は、絞り弁を備えていることも好適である。この絞り弁の開口調整によって、結果的に吸引管路2への吸引圧力が制御される。速度制御部8は、この絞り弁の開口を調整する。例えば、開口が大きければ、吸引管路2に加わる(すなわち昇降部材9に加わる)吸引圧力は大きくなる。逆に絞り弁の開口が小さければ、吸引管路2に加わる吸引圧力は小さくなる。吸引圧力の大小によって、昇降部材9の上昇速度が変化する。
【0112】
速度制御部8は、この絞り弁の開口調整を通じて、加速期間および減速期間を切り替える。
【0113】
なお、加速期間とは正の加速度が与えられる期間であり、減速期間とは負の加速度が与えられる期間である。正の加速度によって、加速期間では昇降部材9の上昇速度は増加し、減速期間では昇降部材9の上昇速度は減少する。このため、速度制御部8は、加速度を制御することで結果的に速度を制御している。
【0114】
(加速期間と減速期間)
ここで、速度制御部8は、第1位置91と第2位置92の略中間の位置で、加速期間から減速期間に変化させることも好適である。略中間の位置で変化させる制御によって、速度制御部8の制御そのものが容易となるからである。
【0115】
また、第1位置91と第2位置92との略中間となる位置によって、加速期間と減速期間とを切り替えるのではなく、上昇期間の時間における略半分の時刻において切り替えることも好適である。この場合には、加速期間での加速度および減速期間での加速度の違いによって、上昇期間での時間上での略半分の時刻と、第1位置91と第2位置92との略中間の位置が異なることがありえる。
【0116】
いずれにしても、加速期間および減速期間は、上昇期間、上昇距離、上昇時の速度(加速期間および減速期間のいずれであっても上昇速度を有している)、袋物である吸着対象物50の袋と内容物との余裕度などに基づいて定められる。この定められた内容に基づいて、速度制御部8は、第1位置91から第2位置92までの上昇における加速期間と減速期間との切り替えを行えばよい。
【0117】
もちろん、加速期間と減速期間とは、上昇期間の略半分あるいは第1位置91と第2位置92との略中間の位置以外で切り替わってもよい。上記の通り、加速期間および減速期間は、上昇期間、上昇距離、上昇時の速度(加速期間および減速期間のいずれであっても上昇速度を有している)、袋物である吸着対象物50の袋と内容物との余裕度などに基づいて、種々に定められればよい。
【0118】
一つには、袋の内部における内容物と袋表面の上昇方向に沿った隙間距離をhとする場合には、加速期間と減速期間の割合は、このhに基づいて定められれば良い。
【0119】
また、上昇期間が短い場合(第1位置91と第2位置92との距離が短い場合)には、加速期間が相対的に短くなることも好適である。加速期間が長いと、減速期間での減速が不十分となり、第2位置92に到達したところでの慣性が大きすぎることになりうるからである。
【0120】
逆に、上昇期間が長い場合(第1位置91と第2位置92との距離が長い場合)には、加速期間が相対的に長くなるあるいは加速期間と減速期間が半々程度になることが好適である。減速期間も十分に確保されるので第2位置92での慣性が十分に下がっているからである。加えて、上昇時間も短くなり、吸着対象物50のピッキング速度が高まるからである。
【0121】
(加速度)
速度制御部8は、加速期間では上昇方向の加速度を吸着物に付与し、減速期間では、上昇方向の加速度を減じて吸着物の上昇速度を抑える。
【0122】
図8は、本発明の実施の形態1における上昇期間における装置の発生させる加速度の変化を示すグラフである。装置が発生させる加速度が、図8に示されているので、実際に昇降部材の有する加速度は、このグラフに示される加速度から重力加速度を加味した加速度となる。速度制御部8は、加速期間において発生させる加速度を2A(重力単位を用いて2Gと見てもよい)とする。実際には、この場合には、重力加速度を考慮すると、昇降部材の有する加速度は+1.0Gとなる。
【0123】
これに対して、減速期間においては、速度制御部8が発生させる加速度を、+0.3A(+0.3G)とする。実際には、重力加速度を考慮して、昇降部材の有する加速度は、−0.7A(−0.7G)となる。図8のグラフには、この昇降部材の有する最終的な加速度を示しているのではなく、速度制御部8を通じて装置が生じさせる加速度(重力加速度を無視した状態)を示している。
ここで説明する加速度の変化は、あくまでも一例である。上昇距離や上昇速度が一般的なピッキング装置の場合には、このような比率の加速度の切り替えが行われることで、袋の内容物が、第2位置92において袋内部で上昇して吸着面31に衝突しにくい。
【0124】
また、上述の隙間距離hに基づいて、加速度が切り替えられてもよい。このことから、加速期間と減速期間の比率に基づいて、速度制御部8は、加速度を制御してもよい。
【0125】
以上のように、速度制御部8は、加速期間、減速期間を適切に設けることで、上昇によって第2位置92に到達した袋物である吸着対象物50における袋の内容物が、吸着面31に衝突することを防止できる。
【0126】
ピッキング装置1は、以上のステップ1〜ステップ7の少なくとも一つを含んだ動作で、吸着対象物50を、適切に上昇させる。
【0127】
また、ピッキング装置1は、吸着対象物50を上昇させる動作だけでなく、上昇させた(ピッキングした)吸着対象物50を別の場所に移動させて、吸着対象物50を置くステップも行っても良い。
【0128】
(ステップ8)
ステップ8で、ピッキング装置1は、所定の搬送方向に吸着対象物50を移動させる。図9は、このステップ8を示している。図1の全体構成に合わせたピッキング装置1であれば、箱102から箱103に向けた平面方向に、ピッキング装置1は、吸着対象物50を移動させる。
【0129】
ピッキング装置1は、画像処理や座標処理を用いて、吸着している吸着対象物50を、所定位置まで移動させる。例えば、箱103のある位置まで、吸着対象物50を移動させる。ピッキング装置1あるいは搬送装置が画像処理機能を有していれば、箱103の所定の位置を画像で確認して吸着対象物50を移動させる。あるいは、ピッキング装置1あるいは搬送装置が、プログラミングされた座標を有している場合には、ピッキング装置1は、当該プログラミングによる指示に従い、箱103の所定の位置に吸着対象物50を移動させる。このときの移動は水平方向である。
【0130】
このとき、図9に示されるように、ピッキング装置1は、吸着面31で吸着対象物50を吸着している(吸引圧力により)だけでなく、側面を第1支持部材4および第2支持部材5で押さえている。このため、ピッキング装置1は、水平方向の移動であっても、吸着対象物50を落下させることを防止できる。また、袋に入った内容物が、水平方向の動きにつられて、袋の中で動いて傷付いたり、変形したり、することを防ぐことが出来きることで、見た目の良さを維持でき、商品価値を維持できる事となる。これは、仕分け時の事故率を減らす事となり、経営の効率化に貢献する。
【0131】
(ステップ9)
ピッキング装置1は、ステップ8で吸着対象物50を所定の水平方向における所定の位置に移動させることができる。次いで、ピッキング装置1は、この移動してきた所定の位置で、吸着対象物50を下降させて、例えば箱103の所定場所に、吸着対象物50をおくことができる。
【0132】
ピッキング装置1は、まずステップ9にて、吸引圧力を減少させて昇降部材9を下降させつつ第1支持部材4および第2支持部材5の押さえを離して行く。図10は、このステップ9を示している。駆動部6は、第1支持部材4および第2支持部材5を吸着対象物50から離すように動作させる。こうして、第1支持部材4および第2支持部材5は、接触面41、接触面51の接触を開放する。この結果、ピッキング装置1は、吸着具3による吸着のみで、吸着対象物50を保持するようになる。
【0133】
(ステップ10)
次に、ステップ10にて、ピッキング装置1は、吸着対象物50を下降させる。図11は、ステップ10を示す説明図である。ステップ10では、ピッキング装置1は、吸着具3を下降させる。駆動部6や吸引管路2による制御で、吸着具3は下降する。適当には、吸引装置による吸引圧力が減少しながら停止することで、吸引管路2に加わる吸引圧力が消失していく。この消失に合わせて、吸引管路2内部に挿入されている昇降部材9が下降する。この下降によって、図11に示されるように、吸着対象物50が、移動先の配置面に接触するようになる。
【0134】
(ステップ11)
昇降部材9は、吸引圧力が減少することで下降する。この下降に従ってステップ10で移動先の配置面に、吸着対象物50が接触する。ステップ11では、この接触に続いて、吸引圧力が消失することで、吸着具3は、吸着面31における吸着対象物50の吸着力を消失する。
【0135】
図12は、このステップ11を示す説明図である。吸着具3が吸着力を消失することで、吸着対象物50は、そのまま配置面に置かれた状態となる。駆動部6が、昇降部材9あるいはピッキング装置1全体を上昇させれば、吸着面31は、吸着対象物50から離れるようになる。図12は、この離れた状態を示している。
【0136】
吸着具3が上昇して吸着対象物50を離すと、ピッキング装置1は、フリーな状態となる。この結果、ピッキング装置1は、次の吸着対象物50のピッキング作業に取り掛かることができる。ピッキング装置1は、ステップ1から作業を再開して、次の吸着対象物50をピッキングする。
【0137】
以上のステップを含めて、実施の形態1におけるピッキング装置1は、吸着対象物50をある位置で吸着して上昇させ、別の移動先に移動して下降させておくことができる。特に、実施の形態1におけるピッキング装置1は、上昇期間において、加速期間と減速期間とを設けることで、上昇の上端である第2位置に到達した場合に、袋の中の内容物が飛び跳ねて吸着面31に衝突することを防止できる。この結果、柔軟性のある袋に食品、精密機器、その他の内容物が入っている袋物をピッキングする場合であっても、内容物を損傷させたり故障させたりすることを防止できる。
【0138】
(実施の形態2)
【0139】
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、速度制御部8として動作する昇降制御具を更に備えるピッキング装置1について説明する。
【0140】
図13は、本発明の実施の形態2におけるピッキング装置の斜視図である。ピッキング装置1は、吸引管路2の側面に、昇降制御具81を有する。更に、ピッキング装置1は、吸着具3の上部と所定距離離隔して吸着具3と接続する係止部材82を備える。係止部材82は、図13に示されるように屈曲した板材83の屈曲した先端が吸着具3の上部に接続(接合)している。板材83は屈曲によって、吸着具3の上部から所定距離だけ離れる。図13では、コの字状となって、吸着具3の上部に延伸している。
【0141】
板材83の屈曲した上方部分は、開口を有しており、この開口が係止部材82となる。この結果、吸着具3から一定距離上方に離隔した場所に、後述するストッパー89が係止可能な係止部材82が設けられる。
【0142】
昇降制御具81は、この係止部材82と対になって設けられる。将校制御部81は、係止部材82によって係止されることが可能なストッパー89を突出側に有するピストン84と、このピストン84を挿入させるシリンダ85とを、有する。このピストン84とシリンダ85とは、対の関係となる。
【0143】
シリンダ85は、ピストン84を挿入および突出可能な(すなわち、収容可能な)内部空間88を備えている。ピストン84は、この内部空間88に収容されている場合には当然ながらシリンダ85から突出しておらず、内部空間88から出ている場合には、ピストン84は、シリンダ85から突出している。すなわち、ピストン84は、シリンダ85から出ることも、シリンダ85に収まることも可能である。
【0144】
シリンダ85は、上方に、この内部空間88と外部とを連通可能とする上部開口部87と、下方に、内部空間88と外部とを連通可能とする下部開口部86とを有する。ピストン84は、上方であってシリンダ85の内部空間88に収まる部分に、内部空間88の横断面を仕切る仕切り板(図13では図示せず。シリンダ85内部に隠れている)を有している。ピストン84の昇降(挿入と突出)に合わせて、仕切り板は内部空間88における位置を変化させる。仕切り板は、内部空間88の横断面を仕切る(横断面に適合した形状と大きさを有している)ので、内部空間88は、仕切り板の位置変化によって、下方の体積が大きくなったり上方の体積が大きくなったりする。
【0145】
上部開口部87は、この仕切り板の上方に位置しており(仕切り板が移動した場合でも)、下部開口部86は、この仕切り板の下方に位置している(仕切り板が移動した場合でも)。
【0146】
ピストン84とシリンダ85とが、このような関係構造を有するので、例えば、何らかの力によってピストン84が上昇すると、仕切り板によって内部空間88の空気が上部開口部87から外部に排出される。逆に、何らかの力によってピストン84が下降すると、仕切り板によって内部空間88の空気が、下部開口部86から外部に排出される。
【0147】
逆に、上部開口部87から空気が内部空間88に送り込まれれば、仕切り板が下がることで、ピストン84が下降する(シリンダ85からピストン84が突出される)。一方、下部開口部86から空気が内部空間88に送り込まれれば、仕切り板が上昇して、ピストン84が上昇する(ピストン84がシリンダ85に収容される)。
【0148】
このように、上部開口部87および下部開口部86が、特段の管路などに接続されておらず、自然の空気出し入れとして外部と連通している場合には、ピストン84の上昇時には、内部空間88の空気が上部開口部87から抜ける際の反発圧力により、ピストン84の上昇速度は遅い。
【0149】
ピストン84は、突出する側にストッパー89を有しており、このストッパー89は、係止部材82と係止可能である。また、係止部材82と係止していない場合には、ストッパー89は、係止部材82と吸着具3の上面との間に位置する。もしくは、ストッパー89は、吸着具3の上面に接触する。
【0150】
(動作手順)
昇降制御具81が有するピストン84は、吸着具3が第1位置(吸着対象物50に接触する下端である位置)にある場合には、ストッパー89は、係止部材82に係止している。
【0151】
吸引管路2からの吸引圧力によって、実施の形態1で説明した通り、昇降部材9は、第1位置から上昇を開始する。昇降部材9が上昇すると、当然に昇降部材9に接続される吸着具3も上昇する。この上昇に合わせて、ストッパー89は、係止部材82から徐々に離れていく。徐々に離れつつ、ストッパー89は、吸着具3の上部との距離を縮める。
【0152】
第1位置から昇降部材9が上昇して、第2位置(上昇の終端の位置)との途中となる第3位置に到達すると、ピストン84は、係止部材82の開口の中の貫通を進める。この結果、ストッパー89が吸着具3の上部に接触するようになる。
【0153】
この第1位置から第3位置までの上昇においては、ピストン84は、シリンダ85内部に挿入されていく動作をしない。
【0154】
図14は、本発明の実施の形態2における第3位置(中間位置)に到達した状態のピッキング装置の正面図である。図13は、第1位置である。図14は、図13での第1位置から上昇して、第3位置まで到達した状態を示している。第3位置に到達した結果、ピストン84が伸びた状態でストッパー89は、吸着具3の上部に接触するようになっている。
【0155】
すなわち、吸着具3を主体としてみれば、吸着具3が、ストッパー89を押し上げる。ストッパー89を押し上げるとは、ピストン84を押し上げて、ピストン84をシリンダ85内部に挿入させる。逆に、ストッパー89を主体としてみれば、ストッパー89は、吸着具3の上昇を上から押さえつける。吸着具3は、吸引圧力によって、昇降部材9が吸引管路2内部を上昇するのに合わせて上昇する。このとき、ストッパー89が吸着具3の上部に接触して押さえつけていることで、吸着具3の上昇(すなわち昇降部材9)が遅くなる。
【0156】
ストッパー89が吸着具3の上部に接触しても、昇降部材9の上昇の終了である第2位置までは距離がある。このためこの吸引管路2から加わる吸引圧力によって、昇降部材9と共に吸着具3は、第3位置から第2位置まで上昇を続ける。このとき、吸着具3の上部は、ストッパー89によって押さえられている状態である。逆に言えば、吸着具3の上昇に合わせてストッパー89が押し上げられる。
【0157】
ここで、ストッパー89はピストン84の突出側に設けられているので、ストッパー89の押し上げに伴い、ピストン84も上昇する。ピストン84は、この上昇においては、シリンダ85内部に挿入されながら上昇する。このとき、仕切り板によって内部空間88の空気が、上部開口部87から排出される。この排出においては、内部空間88の空気が、上部開口部87を通じて排出されるとのステップのため、負荷がかかる。すなわち、ピストン84がシリンダ85に挿入される第2位置から第3位置までにおいては、ピストン84の上昇に負荷が掛かる。
【0158】
ピストン84が吸着具3の上部に接触した状態であるので、吸着具3は、ピストン84の上昇における負荷を同様に受ける。このため、第2位置から第3位置にかけては、吸着具3(昇降部材9)の上昇においては、ピストン84がシリンダ85に挿入される際の、上部開口部87から空気が抜けることに伴う負荷が、昇降部材9の上昇に及ぶ。
【0159】
この結果、第3位置から第2位置にかけては、この負荷によって上昇が減速される。すなわち、第3位置から第2位置にかけては、減速期間となる。このように、昇降制御具81によって、昇降部材9の上昇においては、加速期間と減速期間が生じる。この場合には、吸引管路2に加えられる吸引圧力を制御する必要がなく、簡易な構造で、上昇における加速期間と減速期間とを切り替えることができる。
【0160】
第3位置から減速期間が開始されても、吸引管路2からの吸引圧力により、昇降部材9と吸着具3とは、上昇の上端である第2位置までは上昇を続ける。この間は、ストッパー89との接触と、ピストン84とシリンダ85とによる減速での上昇である。この減速状態で、吸着具3は、上端である第2位置までの上昇を終える。図15は、本発明の実施の形態2における第2位置に到達したピッキング装置の正面図である。図15は、吸着具3が、ピストン84などの上昇制御による減速を受けた後で、第2位置まで上昇した状態を示している。
【0161】
なお、第3位置は、ストッパー89が吸着具3の上部と接触する位置である。このため、第3位置は、吸着具3の上部と係止部材82との距離で定めることができる。一例として、第3位置は、第1位置と第2位置の略中央であることも好適である。こうすることで、加速期間と減速期間を、距離の上で半々とでき、第2位置に到達する場合に、吸着対象物50に加わる慣性を抑えることができるからである。
【0162】
このように、昇降制御具81によって、上昇している昇降部材9への負荷を途中で生じさせて加速期間から減速期間に切り替えることができる。ここで、上部開口部87から空気が抜けることでの負荷をより確実にするために、上部開口部87の開口面積は、内部空間88の断面積よりも小さいことが好適である。あるいは、上部開口部87は、シリンダ85の横方向を向いて開口していることも好適である。いずれの場合にも、内部空間88の空気が、上部開口部87から抜ける際に、負荷が掛かりやすくなるからである。
【0163】
同様に、下部開口部86の開口面積も、内部空間88の断面積よりも小さいことが好適である。あるいは、下部開口部86が、シリンダ85の横方向を向いて開口していることも好適である。ピストン84がシリンダ85内部に挿入しながら上昇する際に、下部開口部86から入り込む空気の速度が遅くなり、やはり負荷が生じやすくなるからである。
【0164】
また、上部開口部87および下部開口部86の少なくとも一方は、空気の流入および流出の少なくとも一方を制御する絞り弁を有することも好適である。この絞り弁の調整により、ピストン84がシリンダ85内部に挿入されながら上昇する際の負荷を調整できる。この調整によって、昇降部材9および吸着具3の減速を調整できる。
【0165】
以上のように、実施の形態2におけるピッキング装置1は、昇降制御具81により、吸引圧力の制御を行うことなく、昇降部材9の上昇中における加速期間と減速期間とを切り替えることができる。
【0166】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、吸着具3が、吸着対象物50の変形に合わせて吸着する態様を説明する。図16は、本発明の実施の形態3における吸着具の吸着面から見た斜視図である。実施の形態3の吸着具3は、吸着面31の外周に沿って吸着対象物50側に突出する接触部32を更に備える。接触部32は、吸着面31との間に空隙33を有する。空隙33は、袋物などの柔軟性を有する吸着対象物50の、吸着によって変形する変形部分の少なくとも一部を、その内部に収容する。
【0167】
吸着具3が、このように吸着面31との間に空隙33を有する接触部32を有することで、袋物などの柔軟性と変形性を有する吸着対象物50を吸着する場合でも、変形部分を空隙33に収容できる。このため、変形によってできるしわなどが吸着面31と連通して、吸引圧力が外部に抜けてしまうことが防止できる。この防止によって、吸着具3が、吸着対象物50を落下させてしまうなどの問題が減少する。
【0168】
図17は、本発明の実施の形態3における吸着具3の断面斜視図である。断面斜視図からわかる通り、吸着具3の吸着面31と接触部32との間の空隙33が、吸着対象物50の変形部分51を収容していることが分かる。加えて、空隙33は、吸着面31の外周に向けて形成されるので、変形部分51は、吸着面31の中央部から外周に向けて広がりつつ空隙33に収容される。
【0169】
このように、袋物などの柔軟性を有する吸着対象物50は、吸着面31での吸着において、空隙33も活用されて確実に吸着される。
【0170】
図18は、本発明の実施の形態3における吸着具の側面図である。図18は、吸着具3が、吸着対象物50を空隙33に一部を収容しながら吸着している状態を示している。図17のように、吸着具3は、吸着対象物50を確実に吸着できる。
【0171】
以上のように、実施の形態3におけるピッキング装置1は、吸着具3によって、確実に吸着対象物50を吸着できる。
【0172】
なお、実施の形態1〜3で説明された吸着具およびピッキング装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0173】
1 ピッキング装置
2 吸引管路
3 吸着具
31 吸着面
4 接触部
6 重複領域
7 空隙
8 速度制御部
81 昇降制御具
82 係止部材
83 板材
84 ピストン
85 シリンダ
86 下部開口部
87 上部開口部
89 ストッパー
9 昇降部材
50 吸着対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18