(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
固体インク技術は、印刷の可能性を広げ、顧客基盤を多くの市場へと広げ、印刷技術、印刷プロセスおよびインク材料を有効に組み込むことによって、印刷用途の多様性を促進するだろう。固体インク組成物は、室温(例えば、20〜27℃)で固体であり、高温で溶融し、このときに溶融したインクが基材に塗布されることを特徴とする。上に記載したように、現行のインクの選択肢は、多孔性紙基材にも首尾よく利用されるが、これらの選択肢は、コーティングされた紙基材の場合、常に満足がいくものではない。
【0010】
固体インク配合物中で結晶性成分とアモルファス成分の混合物を使用すると、堅牢性の高いインクが得られ、特に、コーティングされていない紙およびコーティングされた紙の上に堅牢性の高い画像を示す固体インクが得られることを発見した。しかし、この手法を用いることは、驚くべきことに、既知の結晶性材料またはアモルファス材料に起因する。結晶性材料の場合、低分子は、一般的に、固化したときに結晶化する傾向があり、低分子有機固体は、一般的に結晶である。結晶性材料は、一般的に、硬く、耐性が大きいが、このような材料は、かなり脆くもあり、その結果、主に結晶性のインク組成物を用いて製造された印刷物質は、かなり損傷を受けやすい。アモルファス材料の場合、高分子量アモルファス材料(例えばポリマー)は、高温で粘性が高く、粘着性の液体となるが、高温で十分な粘度を示さない。その結果、所望の吐出温度(≦140℃)で印刷ヘッドノズルからポリマーを吐出することができない。しかし、本実施形態では、結晶性成分とアモルファス成分のブレンドによって、堅牢性の高い固体インクを得ることができることを発見している。
【0011】
本実施形態は、(1)結晶性成分と(2)アモルファス成分のブレンドを、一般的に、それぞれ約60:40〜約95:5の重量比で含む新しい種類のインクジェット固体インク組成物を提供する。さらに具体的な実施形態では、結晶性成分とアモルファス成分の重量比は、約65:35〜約95:5であるか、または、約70:30〜約90:10である。一実施形態では、この重量比は、結晶性成分およびアモルファス成分について、それぞれ70:30である。別の実施形態では、この重量比は、結晶性成分およびアモルファス成分について、それぞれ80:20である。それぞれの成分は、固体インクに特定の性質を付与し、これらの成分のブレンドは、コーティングされていない基材およびコーティングされた基材に対し、優れた堅牢性を示すインクを与える。
【0012】
いくつかの実施形態では、アモルファス化合物は、以下に示す式Iの酒石酸エステルまたは式IIのクエン酸エステルを含んでいてもよく、
【化1】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立してアルキル基であり、アルキルは、炭素原子を約1〜約40個含む直鎖、分枝鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であってもよく、または、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であってもよい。
【0013】
特定の実施形態では、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1個以上のアルキル基で場合により置換されたシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1個以上のアルキル基で場合により置換されたシクロヘキシル基である。
【0014】
式Iを参照すると、特定の実施形態では、R
1およびR
2の片方が2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
1およびR
2の他方が、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシルまたはシクロヘキシルであるか、または、R
1およびR
2の片方が4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R
1およびR
2の他方がシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
1およびR
2は、それぞれ2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
1は2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
2は4−t−ブチルシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
1は2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
2はシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
1は4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R
2はシクロヘキシルである。
【0015】
式IIを参照すると、特定の実施形態では、R
3、R
4、R
5のうち、1つは2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
3、R
4、R
5のうち、他の1つは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシルまたはシクロヘキシルであるか、または、R
3、R
4、R
5のうち、1つは4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R
3、R
4、R
5のうち、他の1つはシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
3、R
4、R
5は、それぞれ2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
3は2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
4およびR
5は、それぞれ4−t−ブチルシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
3は2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
4およびR
5は、それぞれシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
3は4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R
4およびR
5は、それぞれシクロヘキシルである。
【0016】
いくつかの適切なアモルファス材料が、Morimitsuらに対する米国特許出願第13/095,784号に開示されており、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。アモルファス材料は、以下の式を有する酒石酸エステルを含んでいてもよく、
【化2】
式中、R
1およびR
2は、それぞれ互いに独立して、または、これらが同じであってもよく、異なっていてもよいことを意味し、アルキル基からなる群から選択され、アルキル部分は、炭素原子を約1〜約40個含む直鎖、分枝鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であってもよく、または、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であってもよい。特定の実施形態では、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1個以上のアルキル基で場合により置換されたシクロヘキシル基である。特定の実施形態では、R
1およびR
2は、それぞれ2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。
【0017】
酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される。酒石酸のR基および立体化学によっては、エステルは、結晶または安定なアモルファス化合物を形成するだろう。具体的な実施形態では、アモルファス化合物は、L−酒石酸 ジ−L−メンチル、L−酒石酸 ジ−DL−メンチル(DMT)、DL−酒石酸 ジ−L−メンチル、DL−酒石酸 ジ−DL−メンチル、および任意の立体異性体、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
アモルファス化合物は、Morimitsuらに対する米国特許出願第13/095,795号に開示されるクエン酸エステルを含んでいてもよく、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。これらのアモルファス材料は、クエン酸のエステル化反応によって合成される。特に、米国特許出願第13/095,795号に示される合成スキームにしたがって、クエン酸を種々のアルコールと反応させ、トリエステルを製造した。アモルファス化合物は、酒石酸のエステル化反応によって合成される。
【0019】
これらの材料は、吐出温度付近(≦140℃、または約100〜約140℃、または約105〜約140℃)で比較的低い粘度を示す(<10
2センチポイズ(cps)、または約1〜約100cps、または約5〜約95cps)が、室温できわめて高い粘度を示す(>10
5cps)。
【0020】
特に、L−酒石酸 ジ−DL−メンチル(DMT)は、本発明のインクの実施形態でアモルファス化合物として使用するのに特に適していることがわかった。
【0021】
アモルファス成分を合成するために、酒石酸を種々のアルコールと反応させ、米国特許出願第13/095,784号に示される合成スキームで示されるようなジエステルを作製した。このエステル化に、例えば、メントール、イソメントール、ネオメントール、イソネオメントールおよび任意の立体異性体、およびこれらの混合物のような種々のアルコールを使用してもよい。このエステル化に脂肪族アルコールの混合物を使用してもよい。例えば、このエステル化に2種類の脂肪族アルコールの混合物を使用してもよい。脂肪族アルコールのモル比は、25:75〜75:25、40:60〜60:40、または約50:50であってもよい。酒石酸と反応させたときに混合物がアモルファス化合物を形成する適切な脂肪族アルコールの例としては、シクロヘキサノールおよび置換シクロヘキサノール(例えば、2−、3−、または4−tert−ブチル−シクロヘキサノール)が挙げられる。いくつかの実施形態では、2当量以上のアルコールをこの反応に使用し、酒石酸ジエステルを製造してもよい。1モル当量のアルコールを使用する場合、その結果は、ほとんどモノエステルである。
【0022】
特定の実施形態では、アモルファス化合物は、L−酒石酸 ビス(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)またはL−酒石酸 (4−t−ブチルシクロヘキシル)−(シクロヘキシル)−L−酒石酸、および任意の立体異性体を含む。
【0023】
他の適切なアモルファス成分としては、Morimitsuらに対する米国特許出願第13/095,795号(その全体が本明細書に参考として組み込まれる)に開示されているものが挙げられる。アモルファス材料は、以下の構造を有する化合物を含んでいてもよく、
【化3】
式中、R
3、R
4、R
5は、独立して、アルキル基であり、アルキルは、炭素原子を約1〜約40個含む直鎖、分枝鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であってもよく、または置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であってもよい。特に、クエン酸 トリ−DL−メンチル(TMC)が、適切な熱的特性およびレオロジー特性を与え、また印刷画像に堅牢性を付与する望ましいアモルファス候補物質である。
【0024】
これらのアモルファス材料は、クエン酸のエステル化反応によって合成される。特に、本明細書に開示する合成スキームにしたがってクエン酸を種々のアルコールと反応させ、トリエステルを製造した。いくつかの実施形態では、クエン酸と少なくとも1種のアルコールとからエステル化反応で合成されるアモルファス化合物を用いることによって、転相インク組成物を得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、アモルファス化合物は、以下の式を有するジウレタン化合物を含んでいてもよく、
【化4】
式中、Zは、以下
【化5】
からなる群から選択され、Zは、ジウレタンの式の窒素原子のいずれかの側に対し、*が付けられた結合を介して接続していてもよく、R
6およびR
7は、それぞれ、(i)炭素原子を約1〜8個含み、直鎖または分枝鎖であってもよいアルキル基、または(ii)アリール基であり、但し、Zが−(CH
2)
6−である場合、R
6およびR
7は、両方とも−(CH
2)
n−C
6H
5(n=0〜4)ではない。R
6およびR
7は、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、(n−、iso−、sec−およびt−)ブチル、(n−、iso−、t−など)ペンチル、(n−、iso−、t−など)ヘキシル、(n−、iso−、t−など)ヘプチル、または(n−、iso−、t−など)オクチルを含む任意の直鎖または分枝鎖のアルキルであってもよい。
【0026】
特定の実施形態では、R
6およびR
7は、独立して、以下
【化6】
からなる群から選択される。
【0027】
特定の実施形態では、zは、−(CH
2)
6−であり、R
6およびR
7は、両方とも
【化7】
である。R
6およびR
7は、縮合した環アルコール、ヒドロアビエチルアルコール(例えば、ロジンアルコール)、イソボルネオール、オクチルフェノールエトキシレート(例えば、Rhodia製のIgepal CA210)であってもよい。
【0028】
これらの材料は、吐出温度付近(≦140℃、または約100〜約140℃、または約105〜約140℃)で比較的低い粘度を示す(<10
2センチポイズ(cps)、または約1〜約100cps、または約5〜約95cps)が、室温できわめて高い粘度を示す(>10
5cps)。
【0029】
いくつかの実施形態では、アモルファス化合物を結晶性化合物と配合し、固体インク組成物を作製する。インク組成物は、良好なレオロジープロフィールを示す。K−プルーフによって、コーティングされた紙の上に固体インク組成物によって作られる印刷サンプルは、優れた堅牢性を示す。さらに、エステル基剤として酒石酸を使用することは、低コストであり、有望な生物由来の供給源から得られるため、さらなる利点を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、酒石酸と少なくとも1種のアルコールとからエステル化反応で合成される新規アモルファス化合物を用いることによって、固体インク組成物を得る。固体インク組成物は、結晶性化合物および着色剤と組み合わせてアモルファス化合物を含む。本実施形態は、望ましいレベルの粘度を維持しつつ、液体から固体への迅速な相転移を実現し、固く堅牢性の高い印刷画像を促進するために、ある割合のアモルファス化合物と結晶性化合物を含む。このインクを用いて製造された印刷物は、市販のインクに比べ、例えば、引っ掻きに対する良好な堅牢性のような利点を示した。したがって、固体インクのためのアモルファス化合物を与える本発明の酒石酸エステルは、望ましいレオロジープロフィールを有し、インクジェット印刷の多くの要求事項を満たす、堅牢性の高いインクを製造するために開発されてきた。
【0031】
いくつかの実施形態では、アモルファス材料は、インク組成物の合計重量の約5重量%〜約40重量%、または約5重量%〜約35重量%、または約10重量%〜約30重量%の量で存在する。
【0032】
結晶性成分は、アミド、芳香族エステル、直鎖ジエステル、ウレタン、スルホン、芳香族基を含む酒石酸エステル誘導体、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0033】
適切な結晶性成分としては、Morimitsuらに対する米国特許出願第13/457,221号に開示されているものが挙げられ、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。これらの結晶性材料は、以下の構造を含み、
【化8】
式中、R
8およびR
9は、同じであってもよく、異なっていてもよく、R
8およびR
9は、それぞれ独立して、(i)直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル基であってもよく、場合により、アルキル基にヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を約1〜約40個、約1〜約20個、または約1〜約10個含む、アルキル基、(ii)置換または非置換のアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分が、直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよく、場合により、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分にヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を約4〜約40個、約7〜約20個、または約7〜約12個含む、アリールアルキル基、(iii)置換または非置換の芳香族基であってもよく、置換基が、直鎖、分枝鎖、環状または非環状のアルキル基であってもよく、場合により芳香族基にヘテロ原子が存在していてもよく、炭素原子を約3〜約40個、約6〜約20個、または約6〜約10個含む、芳香族基からなる群から選択される。
【0034】
適切な結晶性成分としては、Morimitsuらに対する米国特許出願第13/456,916号に開示されているものが挙げられ、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。これらの結晶性材料は、以下の構造を含み、
【化9】
式中、R
10およびR
11は、同じであってもよく、異なっていてもよく、R
10およびR
11は、それぞれ独立して、(i)直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル基であってもよく、場合により、アルキル基にヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を約1〜約40個、約1〜約20個、または約1〜約10個含む、アルキル基、(ii)置換または非置換のアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分が、直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよく、場合により、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分にヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を約4〜約40個、約7〜約20個、または約7〜約12個含む、アリールアルキル基、(iii)置換または非置換の芳香族基であってもよく、置換基が、直鎖、分枝鎖、環状または非環状のアルキル基であってもよく、場合により芳香族基にヘテロ原子が存在していてもよく、炭素原子を約3〜約40個、約6〜約20個、または約6〜約10個含むが、その数がこれらの範囲をはずれていてもよい、芳香族基、およびこれらの混合物からなる群から選択され、但し、R
10およびR
11のうち、少なくとも1つは芳香族基であり、pは、0または1である。
【0035】
結晶性芳香族エーテルの非限定例としては、
【化10】
およびこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
適切な結晶性成分としては、Chopraらに対する米国特許出願第13/095,555号に開示されているものが挙げられ、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。これらの結晶性材料は、以下の構造を有する脂肪族直鎖二酸のエステルを含み、
【化11】
式中、R
12は、置換または非置換のアルキル鎖であってもよく、−(CH
2)
1−から−(CH
2)
12−からなる群から選択され、R
13およびR
14は、それぞれ互いに独立して、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基からなる群から選択され、置換基はアルキル基を含み、アルキル部分は、直鎖、分枝鎖または環状であってもよい。
【0037】
適切な結晶性成分としては、Chopraらに対する米国特許出願第13/456,619号に開示されているものが挙げられ、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。これらの結晶性材料は、以下の構造を含むジウレタンを含み、
【化12】
式中、Qは、アルカンジイルであり、R
15およびR
16は、それぞれ独立して、1個以上のアルキルで場合により置換されたフェニルまたはシクロヘキシルであり、iは、0または1であり、jは、0または1であり、pは、1〜4であり、qは、1〜4である。このような特定の実施形態では、R
15およびR
16は、それぞれ独立して、1個以上のメチルまたはエチルで場合により置換されたフェニルまたはシクロヘキシルである。このような特定の実施形態では、R
15およびR
16は、フェニルである。特定の実施形態では、Qは、−(CH
2)
n−であり、nは、4〜8である。このような特定の実施形態では、nは6である。特定の実施形態では、R
15およびR
16は、それぞれ独立して、ベンジル、2−フェニルエチル、2−フェノキシエチル、C
6H
5(CH
2)
4−、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、3−フェニルプロパニル、3−メチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−メチルシクロヘキシルメチル、3−メチルシクロヘキシルメチル、4−メチルシクロヘキシルメチル、4−エチルシクロヘキサニルから選択される。
【0038】
適切な結晶性成分としては、Morimitsuらに対する米国特許出願第13/457,323号に開示されているものが挙げられ、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。これらの結晶性成分は、以下の構造を有するスルホン化合物であり、
【化13】
式中、R
17およびR
18は、同じであってもよく、異なっていてもよく、R
17およびR
18は、それぞれ互いに独立して、(i)直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル基であってもよく、場合により、アルキル基にヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を約1〜約40個、約1〜約20個、または約1〜約10個含むが、その数がこれらの範囲からはずれていてもよい、アルキル基、(ii)置換または非置換のアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分が、直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよく、場合により、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分にヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を約4〜約40個、約7〜約20個、または約7〜約12個含むが、その数がこれらの範囲からはずれていてもよい、アリールアルキル基、(iii)置換または非置換の芳香族基であってもよく、置換基が、直鎖、分枝鎖、環状または非環状のアルキル基であってもよく、場合により芳香族基にヘテロ原子が存在していてもよく、炭素原子を約3〜約40個、約6〜約20個、または約6〜約10個含むが、その数がこれらの範囲をはずれていてもよい、芳香族基、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
特定の実施形態では、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、1個以上のハロ、アミノ、ヒドロキシまたはシアノ基で場合により置換されたアルキルまたはアリール、およびこれらの組み合わせであるか、またはR
17およびR
18が、これらが接続しているS原子とともにヘテロ環を形成する。このような特定の実施形態では、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、場合により置換されたアルキル、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチルまたはt−ブチルである。このような特定の実施形態では、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、場合により置換されたアリール、例えば、フェニルまたはベンジルである。特定の実施形態では、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、1個以上のアミノ、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、シアノまたはこれらの組み合わせで置換されている。アリール基の置換基は、フェニル基のオルト、メタ、パラ位、およびこれらの組み合わせにあってもよい。特定の実施形態では、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、2−ヒドロキシエチルまたはシアノメチルである。
【0040】
特定の実施形態では、結晶性成分としては、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、2−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホン、フェニル−4−クロロフェニルスルホン、フェニル−2−アミノフェニルスルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ジベンジルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、ジ−n−ブチルスルホン、ジビニルスルホン、メチル−2−ヒドロキシメチルスルホン、メチルクロロメチルスルホン、スルホラン、3−スルホレン、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
結晶性化合物は、以下の式を有する酒石酸エステルを含んでいてもよく、
【化14】
式中、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、低級アルキルおよびアルコキシで場合により置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、各nは、独立して0〜3である。特定の実施形態では、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、場合により置換されたアリール、例えばフェニルである。特定の実施形態では、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、置換されていないか、またはメチル、エチル、イソプロピル、メトキシまたはエトキシで置換されている。特定の実施形態では、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、メチルまたはメトキシで場合により置換されたフェニルである。
【0042】
特定の実施形態では、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、以下
【化15】
およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
特定の実施形態では、酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される。
【0044】
特定の実施形態では、結晶性化合物は、L−酒石酸 ジベンジル、L−酒石酸 ジフェネチル、L−酒石酸 ビス(3−フェニル−1−プロピル)、L−酒石酸 ビス(2−フェノキシエチル)、L−酒石酸 ジフェニル、L−酒石酸 ビス(4−メチルフェニル)、L−酒石酸 ビス(4−メトキシルフェニル)、L−酒石酸 ビス(4−メチルベンジル)、L−酒石酸 ビス(4−メトキシルベンジル)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
結晶性材料は、鋭敏な結晶化、約140℃で相対的に低い粘度(≦10
1センチポイズ(cps)、または約0.5〜約20cps、または約1〜約15cps)を示すが、室温できわめて高い粘度を示す(>10
6cps)。これらの材料は、融点(T
melt)が150℃未満、または約65〜約150℃、または約66〜約145℃であり、結晶化温度(T
crys)が60℃より大きく、または約60〜約140℃、または約65〜約120℃である。T
meltとT
crysのΔTは、約55℃未満である。
【0046】
いくつかの実施形態では、結晶性材料は、インク組成物の合計重量の約60重量%〜約95重量%、または約65重量%〜約95重量%、または約70重量%〜約90重量%の量で存在する。
【0047】
いくつかの実施形態では、転相インクのインク担体は、融点が、例えば、示差走査熱量測定によって速度10℃/分で測定すると、約65℃〜約150℃、例えば、約70℃〜約140℃、約75℃〜約135℃、約80℃〜約130℃、または約85℃〜約125℃であってもよい。いくつかの実施形態では、得られたインクは、融点が、約65〜約140℃、または約65〜約135℃、または約70〜約130℃である。いくつかの実施形態では、得られたインクは、結晶化点が、約65〜約130℃、または約66〜約125℃、または約66〜約120℃である。さらなる実施形態では、得られたインクは、約140℃での粘度が、約1〜約15cps、または約2〜約14cps、または約3〜約13cpsである。室温で、得られたインクは、粘度が約≧10
6cpsである。
【0048】
染料系固体インク組成物は、時に、染料の耐光性が悪いため、経時によって変色する傾向がある。耐光性は、環境にさらされているときに、変色または色あせを起こさずに、インクの色(例えば、保存中または印刷した画像中)を元々の色に保持する能力であると定義される。本実施形態は、固体インク組成物に1種以上のUV吸収剤を低濃度で組み込むことによって、変色に対する解決法を提供する。UV吸収剤を固体インク組成物に組み込んだインクは、固体インクの耐光性にかなりの向上が示された。例えば、UV吸収剤を組み込むと、UV吸収剤を含まない同じインクと比較した場合、光にさらされた後、CIEデルタE 2000の約100%までの減少を示した。いくつかの実施形態では、本発明のインクは、UV吸収剤を含まない転相インクと比較した場合、光にさらされた後、CIEデルタE 2000の約30〜約100%、または約40%〜約100%の減少を示した。サンプルの色L
2a
2b
2と、リファレンスの色L
1a
1b
1の色差、つまりΔEは、
【数1】
であり、式中、
【数2】
である。
【0049】
適切なUV吸収剤が、例えば、色がほとんどない状態からまったくない状態、インク基剤に溶解および/または分散する、吐出温度(例えば、約130℃〜約140℃)より低い融点を有するといった多くの特定的な特徴を有する。本開示では、UV吸収剤は、UV吸収剤を含むCMYKインクを用いて調製した印刷物が、CMYKを用いて調製した印刷物とUV吸収剤を足したものと比較して、CIEデルタE 2000<2である場合、ほとんど着色していない状態からまったく着色していない状態であるといわれる。いくつかの実施形態では、UV吸収剤は、トリアゾール誘導体である。トリアゾール誘導体は、ベンゾフェノン吸収剤のような他のUV吸収剤と比較したときでさえ、耐光性において予想できない優れた結果を与えることが発見された。UV吸収剤の具体的な例としては、表1に示されるものが挙げられ、Mayzo(スワニー、ジョージア)から入手可能である。
【表1】
上の表において、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール中の「−t」は、「第三級」であると定義される。
【0050】
UV吸収剤は、固体インク中、インク組成物の合計重量の5.0重量%までの量で存在する。他の実施形態では、UV吸収剤は、インク組成物の合計重量の約0.01重量%〜約5重量%、または約0.3重量%〜約2.0重量%の量で存在する。
【0051】
実施形態のインクは、従来の添加剤と関連する既知の機能を利用するために、従来の添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、少なくとも1つの酸化防止剤、消泡剤、スベリ剤およびレベリング剤、清澄剤、粘度調整剤、接着剤、可塑剤などを挙げることができる。
【0052】
インクは、場合により、画像が酸化するのを防ぐために酸化防止剤を含有していてもよく、また、インク容器中に加熱した溶融物として存在している間にインク成分が酸化するのを防いでもよい。酸化防止剤が存在する場合、酸化防止剤は、インク中に任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、例えば、インクの約0.25重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約5重量%の量で存在していてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する転相インク組成物は、着色剤も含む。したがって、本実施形態のインクは、着色剤を含むインクであってもよく、着色剤を含まないインクであってもよい。固体インクは、場合により、着色剤(例えば、染料)を含有していてもよい。着色剤は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(CMYK)のセット、または特注色の染料または染料混合物から得られるスポットカラーのいずれであってもよい。染料系着色剤は、結晶性成分とアモルファス成分と任意の他の添加剤とを含むインク基剤組成物と混和性である。
【0054】
インク担体に分散または溶解させることができ、他のインク成分と適合性である限り、任意の染料を選択してもよい。転相担体組成物を、例えば、Color Index(C.I.)Solvent Dye、Disperse Dye、改変したAcid and Direct Dye、Basic Dye、Sulphur Dye、Vat Dyeなどのような従来の転相インク着色剤材料と組み合わせて使用してもよい。
【0055】
着色剤は、望ましい色または色相が得られるように転相インク中に任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、例えば、少なくともインクの約0.1重量%〜約50重量%、少なくとも約0.2重量%〜約20重量%、少なくとも約0.5重量%〜約10重量%の量で存在していてもよい。
【0056】
インク組成物を任意の望ましい方法または適切な方法によって調製してもよい。例えば、それぞれのインク担体成分を一緒に混合し、次いで混合物を少なくともその融点(例えば、約60℃〜約150℃、80℃〜約145℃、85℃〜約140℃)まで加熱してもよい。インク成分を加熱する前、またはインク成分を加熱した後に、着色剤を加えてもよい。顔料が所定の着色剤である場合、溶融した混合物をアトライタまたはメディアミル装置で研磨し、顔料をインク担体に分散させてもよい。次いで、加熱した混合物を約5秒間〜約30分間またはそれ以上撹拌し、実質的に均質で均一な溶融物を得て、その後、インクを周囲温度(典型的には、約20℃〜約25℃)まで冷却する。インクは、周囲温度で固体である。インクを、直接的に印刷するインクジェットプロセスのための装置、および間接的な(オフセット)印刷インクジェット用途で使用してもよい。本明細書に開示する別の実施形態は、本明細書で開示するインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、このインクを溶融させることと、溶融したインクの液滴を、記録基板の上に画像になるようなパターンで吐出することとを含むプロセスに関する。また、本明細書に開示するインクを、他のホットメルト印刷プロセス(例えば、ホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルト熱インクジェット印刷、ホットメルト連続流式インクジェット印刷または偏向インクジェット印刷など)に利用してもよい。本明細書に開示する転相インクを、ホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスで使用することもできる。
【0057】
普通紙を含む任意の適切な基材または記録シートを使用してもよい。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
(インク基剤の調製)
表2に示す結晶性成分とアモルファス成分を用い、インク基剤を調製した。
【表2】
【0059】
上に示すように、この実施例のインクは、80%の結晶性樹脂と、20%のアモルファス樹脂とで構成されていた。着色剤として、2重量%の染料を加えた。この例で、シアン色のためにSolvent Blue 67(Orasol Blue GNとしてPylam Products Company Inc.(テンペ、アリゾナ)から入手可能)を使用した。
【0060】
(実施例2)
(実施例のインクの調製)
表3に示す所定量のUV吸収剤と、2% Orasol Blue GNとを含み、残りがインク基剤(80%の樹脂80、20%のDMT)である以下のインクを調製した。成分をビーカー内で一緒に加え、撹拌しつつ140℃まで加熱し、加熱を1時間維持することによってインクを調製した。
【0061】
加圧ロールセットを備えるK−プルーファーグラビア印刷プレートを用い、低圧でシアンインクのK−プルーフをXerox(登録商標)デジタルColor Elite Gloss、120gsm(DCEG)コート紙に印刷した。K−プルーフとは、ほぼ2×4インチの画像を製造するために使用されるグラビアオフセットプレートを指す。このグラビアプレートの温度を142℃に設定したが、実際のプレートの温度は約134℃である。K−プルーファー装置(RK Print Coat Instrument Ltd.(Litlington、Royston、Heris、SG8 0OZ、U.K.)によって製造)は、小スケールで種々のインクをスクリーニングし、種々の基材で画質を評価するのに有用な印刷器具であり、その後に、インク配合物をスケールアップし、さらなる深さ方向のインクジェット印刷試験について最適化する。シアンインクのK−プルーフを、同じ様式で印刷した市販のインク(ColorQube Cyanおよび競合会社のシアンインク)と比較した。
【表3】
【0062】
(耐光性)
耐光性試験を以下の様式で行った。K−プルーフ印刷物を、太陽放射スペクトルをシミュレートするスペクトルを有する光源の下の、ウインドウガラスの下の接地面に置いた(露光:Atlas Suntest XLS+、FilterセットC(「ウインドウガラス」)、BST=50°C、Phi=700W/m2)。K−プルーフの露光領域に所定量の光があてられるまで画像の4/5を覆うようにフォトマスクを置いた(表4に示す)。次いで、画像の2/5が光にさらされるように、フォトマスクを1/5まで上げた。画像の1/5を除くすべてが光にさらされ、1回のプルーフで所定範囲の露光線量が生じるまで、これを繰り返した。X−rite 528(D65 Illuminant、観察角度2°)を用い、それぞれの領域の色を測定した。K−プルーフの1/5が光にさらされていないリファレンスを用い、CIEデルタE 2000を計算した。
【表4】
図は、全インクのCIEデルタE 2000測定値を示す。対応するデータを以下の表5に提示する。
【表5】
ここからわかるように、耐光性の結果が最も悪かったインクは、競合会社のシアンインクであり、これに次いで、UV吸収剤を含まない対照インクである。UV吸収剤を含むものおよび含まないものを含め、実施例のインクの中で最も良い性能は、1% Mayzo BLS 1328を含有する配合物であることがわかった。図から、選択したUV吸収剤が耐光性を顕著に改良し、耐光性を2倍まで改良したことが明らかである。得られたデータから、UV吸収剤を組み込んだインクは、161280KJ/m2の光にさらした後、UV吸収剤を含まない同じインクと比較したとき、少なくともΔEの50%減少を示した。例えば、対照が色変化10を示す場合、本発明のUV吸収剤を含む実施形態は、5以下の色変化を示すだろう。また、本発明のUV吸収剤を含むインクは、対照インク(UV吸収剤を含まない同じインク)と比較して、CIEデルタE 2000が100%までの減少を示し得ると予想される。UV吸収剤が容易に溶融し、インクにブレンドされ、インク中できわめて低い濃度であるため、吐出には課題は存在しないはずである。