特許第6242610号(P6242610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242610
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ハイブリッドロケット燃料
(51)【国際特許分類】
   C06D 5/00 20060101AFI20171127BHJP
   C06D 5/10 20060101ALI20171127BHJP
   C06B 43/00 20060101ALI20171127BHJP
   C06B 45/00 20060101ALI20171127BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20171127BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C06D5/00 A
   C06D5/10
   C06B43/00
   C06B45/00
   C08L21/00
   C08L91/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-137679(P2013-137679)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-10020(P2015-10020A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】501272317
【氏名又は名称】株式会社 型善
(73)【特許権者】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駆米雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 豊
(72)【発明者】
【氏名】堀 恵一
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰弘
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−087716(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0031888(US,A1)
【文献】 特表2003−523909(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0036038(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0121081(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0167793(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0217642(US,A1)
【文献】 米国特許第05529648(US,A)
【文献】 特開2010−285890(JP,A)
【文献】 特公昭46−023520(JP,B1)
【文献】 特開2011−020880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06D 5/00
C06B 43/00
C06B 45/00
C06D 5/10
C08L 21/00
C08L 91/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータケースに充填固定された固体燃料に対して別のタンクに収容された液体又は気体の酸化剤を供給することで、当該固体燃料を燃焼させてロケット推力を発生させるハイブリッドロケット燃料であって、
前記固体燃料は、5〜35重量%の熱可塑性エラストマーと、65〜95重量%のプロセスオイルとを混合させた樹脂組成物を主成分として、当該樹脂組成物が(29〜100)重量%の割合で配合され、
当該樹脂組成物は、加熱溶融した状態で前記モータケース内に充填して冷却固化させることで、当該モータケースに充填固定されることを特徴とするハイブリッドロケット燃料。
【請求項2】
主成分である前記樹脂組成物100重量部に対して150重量部以下の粘着性付与樹脂が配合されて成ることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドロケット燃料。
【請求項3】
主成分である前記樹脂組成物100重量部に対して20重量部以下の溶融助剤が配合されて成ることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドロケット燃料。
【請求項4】
主成分である前記樹脂組成物100重量部に対して100重量部以下の溶融助剤が配合されて成ることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッドロケット燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマーとプロセスオイルとを主成分とするハイブリッドロケット燃料に関するものであり、更に、詳しくは、HTPB(Hydroxyl−terminated polybutadiene)〔未端水酸基ポリブタジエンゴム〕に代表される従来の熱硬化性樹脂燃料に比較して、固体燃料として必要な機械的物性を確保したうえで、燃焼特性に関して、従来良いとされているワックス燃料と同レベルを実現したハイブリッドロケット燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙産業において、小型衛星の打上げに使用されるロケットには、固体燃料と酸化剤とを混練させて燃料を燃焼させて推力を発生させる固体燃料ロケット、別々のタンクに貯蔵された液体燃料と酸化剤とを燃焼室で適宜混合して燃焼させることで推力を発生させる液体燃料ロケット、更には、モータケースに充填固定された固体燃料と、別のタンクに収容された液体又は気体の酸化剤とを燃焼室に供給して燃焼させることで推力を発生させるハイブリッドロケットがある。
【0003】
ハイブリッドロケットRは、図1に示されるように、液体酸化剤が充填された酸化剤タンクToと、固体燃料Fが充填されたモータケースMCとで流量バルブVを介して連結され、前記タンクToのモータケースMCと反対側に接続された圧力タンクTpから噴射される圧力気体により酸化剤タンクTo内の液体酸素がインジェクタIの部分からモータケースMC内の固体燃料Fの内部に貫通された中空通路1に対して噴射されることで、溶融状態の固体燃料(当該固体燃料の表面には、燃焼室からの火炎が及んでいる)が液滴状となった液体酸素を伴って、ノズル噴射機構Nから燃焼室(図示せず)内に供給され、当該燃焼室内において、液体酸化剤が蒸発することで溶融した固体燃料が燃焼されて、推力が発生される構成である。なお、図1において、2は、圧力タンクTp内の圧力気体の流出量を調整する流量調整器を示す。
【0004】
上記したハイブリッドロケットは、固体燃料ロケットに対しては、以下の利点があるとされている。(1)燃料として火薬を使用しないために安全である。(2)固体燃料ロケットでは、固体燃料中に金属粉が含まれていると共に、酸化剤として過塩素酸アンモニウムが使用されることが多いのに対して、ハイブリッドロケットの燃料は、このような成分を有していないので、即ち、燃料自体が非塩酸系及び非金属系であるために、環境負荷が低い。(3)酸化剤の供給量の調整によって推力の調整ができる。
【0005】
一方、ハイブリッドロケットは、液体燃料ロケットに対しては、以下の利点があるとされている。(1)液体燃料と酸化剤とを燃焼室に供給するための配管、ポンプ類が不要となるために、全体構造がシンプルとなって、低コスト化が可能となる。(2)固体燃料は液体燃料より密度が高いので、固体燃料を貯蔵するタンク(モータケース)を小さくできて、ロケット本体のスペースを小さくできる。
【0006】
ハイブリッドロケットは、上記の利点を有するため、その燃料についても種々研究されており、例えば、特許文献1,2に開示されている。特許文献1には、固体燃料として、HTPBにプラスチック粒を混和させたものが開示され、特許文献2には、固体燃料として、樹脂材料に金属繊維又は発泡金属を混和させたものが開示されている。更には、パラフィンワックスが固体燃料として使用されることもある。
【0007】
ハイブリッドロケット燃料のうち固体燃料は、モータケース内に充填配置されるために、燃焼性に優れていること、即ち、「燃料後退速度」が一定値以上を有していることのみでは不十分であって、燃料タンクの内周面に対してしっかりと固定できること、即ち、高い「接着性」が要求され、更に、固体燃料自体が、加速度、振動等に起因する衝撃力に対しても耐え得る機械的物性が要求される。高い「燃料後退速度」が要求されるのは、固体燃料として、火薬成分を有していないために、単位時間に燃焼する固体燃料の量、即ち、燃料後退速度が一定値以上でないと、必要なロケット推力が得られないからである。
【0008】
図4は、(1)HTPB、(2)ポリプロピレン,ポリエチレン,アクリル樹脂等の不活性ポリマー、(3)パラフィンワックスの「燃料後退速度」、「機械的物性」及び「モータケースとの接着性」の各面における評価が「○」、「△」、「×」の3段階で示されている。ここで、「燃料後退速度(Regression rate of fuel)」とは、単位時間(秒)に対する燃料の減少厚さ(減少量)を言う。HTPBは、「機械的物性」及び「燃料タンクとの接着性」に関しては、いずれも優れているが、「燃料後退速度」は遅いという欠点があり、不活性ポリマーは、「機械的物性」に関しては、強度は高いが、伸びが不十分である欠点があり、「モータケースとの接着性」に関しては、種類により異なるので、一律には評価できない。更に、パラフィンワックス燃料に関しては、「燃料後退速度」が速い点では満足できるが、「機械的物性」及び「モータケースとの接着性」のいずれの点においても、評価が低い。
【0009】
このように、ハイブリッドロケット燃料のうち固体燃料は、「燃料後退速度」、「機械的物性」及び「モータケースとの接着性」の全てにおいて、満足し得ることが要求されるが、従来の固体燃料は、いずれも全ての条件を満足し得るものは発見されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−20880号公報
【特許文献2】特開2011−87716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ハイブリッドロケット燃料において、モータケースに対する充填配置を考慮した機械的物性及び接着性を確保できる範囲内において、固体燃料の融点を可能な範囲で下げることで、燃料後退速度を含む燃焼特性を高めることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、モータケースに充填固定された固体燃料に対して別のタンクに収容された液体又は気体の酸化剤を供給することで、当該固体燃料を燃焼させてロケット推力を発生させるハイブリッドロケット燃料であって、
前記固体燃料は、5〜35重量%の熱可塑性エラストマーと、65〜95重量%のプロセスオイルとを混合させた樹脂組成物を主成分として、当該樹脂組成物が(29〜100)重量%の割合で配合され、
当該樹脂組成物は、加熱溶融した状態で前記モータケース内に充填して冷却固化させることで、当該モータケースに充填固定されることを特徴としている。
【0013】
請求項1の発明において、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリオレフィン及びこれらの混合物が挙げられ、プロセスオイルは、高沸点を有し、常温で液状であって、パラフィンオイル、ナフテンオイル等の鉱物油から成る。熱可塑性エラストマーとプロセスオイルとを混合させたものを樹脂組成物とし、当該樹脂組成物を加熱溶融させた溶融樹脂混合原料を、モータケースの形状に対応した成形型に注型した後に、冷却固化させることで、モータケースに充填固定可能な形状に成形する。
【0014】
ここで、固体燃料の主成分である樹脂組成物を形成する熱可塑性エラストマーの全体に対する重量割合は、5〜35重量%であることが必要であり、その結果として、プロセスオイルの重量割合は、65〜95重量%であって、固体燃料に対して樹脂組成物は、(29〜100)重量%の割合で配合されることが必要である。熱可塑性エラストマーの全体に対する重量割合が5重量%より小さいと、樹脂組成物として柔らか過ぎて、その融点が60°Cよりも低くなって、耐熱強度が小さくなる。この結果、モータケースに対する固体燃料の十分な保持力を確保できなくなる。一方、熱可塑性エラストマーの全体に対する重量割合が35重量%よりも大きいと、溶融温度が160°Cを超えてしまい、燃焼時における固体燃料が溶融して液滴状となる液滴化現象が乏しくなって、ハイブリッドロケット燃料の固体燃料として適さなくなる。更に、熱可塑性エラストマーの全体に対する重量割合を25重量%以下にすると、燃焼時における液滴化が容易となって、燃料後退速度を含む燃焼特性が高められる。
【0015】
請求項2の発明は、主成分である前記樹脂組成物100重量部に対して150重量部以下の粘着性付与樹脂が配合されて成ることを特徴としている。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1で特定される樹脂組成物100重量部に対して150重量部以下の粘着性付与樹脂が配合されたものであって、粘着性付与樹脂としては、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂、キシレン系樹脂、芳香属系炭化水素樹脂,及びこれらの混合物が挙げられる。粘着性付与樹脂は、常温で液状のものから、幅広い軟化点を有する常温で固体のものまであり、樹脂組成物の組成割合に応じて、前記樹脂組成物100重量部に対して150重量部の範囲内において適正に選択することで、ハイブリッドロケット燃料のうち固体燃料として求められる溶融温度を満たすように調整できる。請求項1で特定される樹脂組成物に粘着性付与樹脂を配合することで、樹脂組成物を加熱溶融した後に冷却固化して得られる固体燃料の剛性が増して、モータケース或いはインシュレータに対する接着性を向上させられる。
【0017】
また、樹脂組成物100重量部に対する粘着性付与樹脂の配合割合が150重量部を超えると、上記のようにして成形された固体燃料としての可撓性が失われて脆くなって、自身の形状保持力が乏しくなって、ハイブリッドロケット燃料の固体燃料としての適正を保持できなくなる。ここで、樹脂組成物100重量部に対する粘着性付与樹脂の配合割合を100重量部以下にすると、固体燃料としての適正な溶融温度を満たしたうえで、適正な可撓性を有することになって、モータケースに対する接着性も高められる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、主成分である前記樹脂組成物100重量部に対して20重量部以下の溶融助剤が配合されて成ることを特徴としている。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1で特定される樹脂組成物100重量部に対して20重量部以下の溶融助剤が配合されているものであって、溶融助剤としては、パラフィンワックス、脂肪酸、脂肪酸エステル等が挙げられる。溶融助剤は、適度な融点と溶融粘度の低さを有しているため、当該溶融助剤を加えることで、固体燃料の溶解温度を適宜調整できる。樹脂組成物100重量部に対する溶融助剤の重量割合が20重量部を超えると、全体が脆くなって不適であり、当該重量割合を10重量部以下にすると、固体燃料の溶解温度を適正に調整できることに加えて、固体燃料自体に可撓性が付与される。
【0020】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、主成分である前記樹脂組成物100重量部に対して100重量部以下の溶融助剤が配合されて成ることを特徴としている。
【0021】
請求項4の発明によれば、請求項1で特定される樹脂組成物に対して粘着性付与樹脂と溶融助剤を組み合せて配合することで、固体燃料の溶解性、剛性、モータケースに対する接着性を適宜コントロールできる。主成分である樹脂組成物に溶融助剤の配合量は、粘着性付与樹脂が併用して配合されることで、樹脂組成物のみの場合に比較して配合量を多くしても、上記した諸物性の低下は少ない。それでも、樹脂組成物100重量部に対する配合割合が100重量部を超えると、脆くなって、固体燃料として適さなくなる。樹脂組成物に対する配合割合を50重量部以下にすると、固体燃料として望ましい可撓性を付与できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、熱可塑性エラストマーとプロセスオイルとを主成分とする樹脂組成物をハイブリッドロケットの固体燃料とすることで、固体燃料としての溶融温度が低下されて、燃料後退速度が高まることで燃焼特性が高められるのに加えて、弾性率に代表される機械的物性が高められて、固体燃料として丈夫で壊れにくくなり、更に、モータケース又はインシュレータに対する接着性を高められ、ハイブリッドロケットの固体燃料として必要な特性である燃料後退速度、機械的物性及び接着性を満足させられる。
【0023】
また、熱可塑性エラストマーとプロセスオイルとが主成分として配合された樹脂組成物に対して粘着性付与樹脂と溶融助剤とを単独で、又は併用して配合することで、ハイブリッドロケットの固体燃料の溶融温度及び可撓性の調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ハイブリッドロケットRの模式図である。
図2】本発明に係るハイブリッドロケット燃料の各実施例1〜8の組成成分を示す表である。
図3】実施例3,6,7,8のハイブリッドロケット燃料を構成する各固体燃料と、HTPB及びパラフィンワックスとの平均酸化剤質量流束(kg/ m2 ・s) に対する平均燃料後退速度(mm/s)の比較を示すグラフである。
図4】従来のハイブリッドロケット燃料の固体燃料の特性表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料は、5〜35重量%の熱可塑性エラストマーと、65〜95重量%のプロセスオイルとを混合させた樹脂組成物を主成分とし、必要に応じて、当該樹脂組成物に、粘着性付与樹脂及び/又は溶融助剤が配合される。当該樹脂組成物は、常温でゲル化している。以下に示す実施例1〜8においては、熱可塑性エラストマーとして、スチレン系熱可塑性エラストマーが使用され、このスチレン系熱可塑性エラストマーはポリスチレンブロックとポリオレフィン構造のエラストマーブロックで構成された共重合体である。なお、本発明の固体燃料の樹脂組成物としての熱可塑性エラストマーとしては、上記したスチレン系熱可塑性エラストマー以外にも、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック(SEP)及びポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEEPS)が挙げられる。なお、上述したスチレン系熱可塑性エラストマーの他に、SBC(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBC(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体)等の熱可塑性エラストマーの使用が可能である。
【0026】
本発明に係るハイブリッドロケット燃料の固体燃料を構成するプロセスオイルは、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル等の鉱油類より成り、熱可塑性エラストマーの可塑剤又は軟化剤として用いられる。ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、或いはこれらの混合物のいずれのオイルを用いても、プロセスオイルとしての効果は同等である。市販のスチレン系熱可塑性エラストマーには、既にプロセスオイルが配合されているが、実施例1〜8では、いずれも市販のスチレン系熱可塑性エラストマーに対して、ナフテン系オイル又はパラフィン系オイルのいずれかを単独で配合することで、基本成分である樹脂組成物が、5〜35重量%の熱可塑性エラストマーと、65〜95重量%のプロセスオイルとの混合物となるように配合している。
【0027】
上記した樹脂組成物は、常温でゲル化されていて、粘着性付与樹脂は、常温でゲル化した主成分である樹脂組成物に粘着力を付与することで、固体燃料としての硬さを高めると共に、モータケースに対する接着性が向上され、更には、ハイブリッドロケット燃料の固体燃料として求められる溶融温度を満たすように調整するために、必要に応じて配合され、その配合割合は、樹脂組成物100重量部に対して150重量部以下である。即ち、樹脂組成物に対して粘着性付与樹脂を配合することで、固体燃料自体の剛性、可撓性、更には、モータケースに対する当該固体燃料の接着性等の機械的物性の調整が可能であるのに加えて、燃焼前における固体燃料の溶融性の調整が可能となる。粘着性付与樹脂としては、水素化テルペン樹脂、キシレン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、ロジンエステル樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。溶融助剤は、適度な融点と溶融粘度を有しているために、樹脂組成物に配合することで、固体燃料の溶解温度を含む溶融性を適宜調整でき、具体的には、パラフィンワックス、ステアリン酸等の脂肪酸、脂肪酸エステル等が挙げられる。
【実施例1】
【0028】
実施例1のハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料は、スチレン系熱可塑性エラストマー、及びパラフィンオイル(プロセスオイル)として、それぞれ株式会社クラレの商品名「セプトンコンパウンド」及び出光興産株式会社の商品名「ダイアナプロセスオイル」を用いた。上記した市販の熱可塑性エラストマーの重量割合は、17重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、83重量%であった。株式会社クラレの商品名「セプトンコンパウンド」には、プロセスオイルが40重量%だけ含まれているので、結局、実施例1の固体燃料の純粋な熱可塑性エラストマーの重量割合は、10.2重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、89.8重量%であった。実施例1のハイブリッドロケット燃料の固体燃料は、熱可塑性エラストマーとプロセスオイルとを混合させた樹脂組成物のみから成り、他の配合剤は含まれていないために、「請求項1」の実施例に該当する。当該樹脂組成物を溶融混練させて、型となるモータケースに流し込んで、冷却固化させることで、ハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料を得た。この固体燃料は、比較例1であるHTPBよりも低い融点において、液滴化現象が発生する。このため、実施例1の固体燃料は、燃焼性の評価の一つとしての「燃料後退速度」は、比較例1であるHTPBに対して速いために、燃焼性の点で優れているのみならず、型成形後におけるモータケースに対する接着性、更には、固体燃料自体の自己保持性を高める可撓性等の固体燃料として要求される基本的な機械的物性の面においても、満足できるものであった。
【0029】
なお、「燃料後退速度」の測定は、円筒状に形成された固体燃料が内部に配置されたケースに対して燃焼ガスの流れる方向に沿って上流側に、点火用燃料が配置された別のケースを配置して、点火時に小流量の酸素ガスを流して、点火用燃料の着火の確認後に、所定流量の酸素ガスを流して本燃焼を所定時間だけ行い、窒素ガスを燃焼室に供給することで消火を行った。「燃料後退速度」は、実験前と実験後の質量差から「平均燃料後退速度」として求めた。なお、基本体な実験環境値として、酸化剤上流圧力は、8MPa未満であり、平均酸化剤質量流束は、10〜80kg/ m2 ・sであり、燃焼室圧力は、0.7〜2MPaであり、燃焼時間は、3秒未満であった。
【0030】
固体燃料の機械的物性は、単軸引張試験により、弾性率(ヤング率)、最大応力及び最大歪みの基本物性を測定することで行った。実施例1の固体燃料を成形型に流し込むことで、厚さ約20mmの細長いシート板状に型成形して複数の試験片を製作し、株式会社島津製作所製の「EHF−EG50kN−10L」の型式に係る引張試験機を用いた測定結果から、各試験片の「応力−歪み線図」を作成した。この「応力−歪み線図」から得られるデータから、弾性率は、22.3(mN/ mm2 ) であり、最大応力は、0.06(mN/ mm2 ) であり、更に、最大歪みは、437.4(%)であった。
【実施例2】
【0031】
実施例2のハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料は、スチレン系熱可塑性エラストマー、及びナフテンオイル(プロセスオイル)として、それぞれ株式会社クラレの商品名「セプトンコンパウンド」及び日本サン石油株式会社の商品名「サンセンオイル」を用いて、主成分である樹脂組成物を構成し、更に、この樹脂組成物に対して、粘着性付与樹脂である水素化テルペン樹脂として、ヤスハラケミカル株式会社の商品名「クリアロン(軟化点:125°C)」を配合させた。上記した市販の熱可塑性エラストマーの重量割合は、15重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、85重量%であった。株式会社クラレの商品名「セプトンコンパウンド」には、プロセスオイルが35重量%だけ含まれているので、結局、実施例2の固体燃料の純粋な熱可塑性エラストマーの重量割合は、9.8重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、90.2重量%であり、粘着性付与樹脂である水素化テルペン樹脂は、樹脂組成物100重量部に対して20.0重量部(phr)だけ配合させた。実施例2のハイブリッドロケット燃料の固体燃料は、熱可塑性エラストマーとプロセスオイルとを混合させた樹脂組成物に対して粘着性付与樹脂が配合されているために、「請求項2」の実施例に該当する。当該樹脂組成物を溶融混練させて、型となるモータケースに流し込んで、冷却固化させることで、ハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料を得た。
【0032】
この固体燃料には、粘着性付与樹脂が配合されて、固体燃料として適正な溶解温度に調整されて、実施例1の固体燃料よりも低い融点を有していて、当該融点における液滴化現象が活発であるために、燃焼性の評価の一つとしての「平均燃料後退速度」は、比較例1であるHTPBに対して速くて、燃焼性の点の当該比較例1よりも優れていた。また、機械的物性に関しては、弾性率は、32.5(mN/ mm2 ) であり、最大応力、及び最大歪みは、それぞれ0.12(mN/ mm2 ) ,405.6(%)であって、実施例1の固体燃料に比較すると、粘着性付与樹脂が配合された分だけ、僅かに大きな硬さ(耐弾性変形性)を有していることが分かった。
【実施例3】
【0033】
実施例3のハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料は、実施例1の固体燃料と同様に、スチレン系熱可塑性エラストマー、及びパラフィンオイル(プロセスオイル)として、それぞれ株式会社クラレの商品名「セプトンコンパウンド」及び出光興産株式会社の商品名「ダイアナプロセスオイル」を用いた。両者を混合した後の実施例3の固体燃料の純粋な熱可塑性エラストマーの重量割合は、14.0重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、86.0重量%である。実施例3の固体燃料は、上記した樹脂組成物100重量部に対して、粘着性付与樹脂であるキシレン樹脂として、フドー株式会社の商品名「ニカノール(軟化点:108°C)」が50.0重量部(phr)だけ配合されたものであるので、「請求項2」の実施例に該当する。実施例3の固体燃料には、粘着性付与樹脂が配合されて、固体燃料として適正な溶解温度に調整されていて、実施例1の固体燃料よりも低い融点を有していて、当該融点における液滴化現象が活発であるために、燃焼性の評価の一つとしての「平均燃料後退速度」は、図3に示されるように、比較例1であるHTPBに対しては、2倍を超える速さを有していると共に、従来の研究で良いとされている比較例2のパラフィンワックスとほぼ同レベルに速いために、燃焼性の面において、比較例1のHTBPよりも優れていることが分かった。また、機械的物性に関しては、弾性率は、169.3(mN/ mm2 ) であり、最大応力、及び最大歪みは、それぞれ0.26(mN/ mm2 ) ,319.4(%)であって、実施例1,2の各固体燃料に比較すると、粘着性付与樹脂としてキシレン樹脂を選択していること、及び樹脂組成物に対する配合割合が実施例2の固体燃料に比較して高いことからして、実施例2の固体燃料に対して、遥かに大きな硬さ(耐弾性変形性)、特に、弾性率に関しては、比肩し得ない値を有していることが分かった。この機械的物性は、比較例2のパラフィンワックスよりもはるかに優れていた。
【実施例4】
【0034】
実施例4のハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料は、スチレン系熱可塑性エラストマー、及びナフテンオイル(プロセスオイル)として、実施例2と同一のものを使用して、主成分である樹脂組成物を構成した。上記した市販の熱可塑性エラストマーの重量割合は、23重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、77重量%であった。株式会社クラレの商品名「セプトンコンパウンド」には、プロセスオイルが35重量%だけ含まれているので、結局、実施例4の固体燃料の純粋な熱可塑性エラストマーの重量割合は、15.0重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、85.0重量%であり、溶融助剤として、日本精鑞株式会社の製造に係るパラフィンワックス(融点:69°C)を、樹脂組成物100重量部に対して15.0重量部(phr)だけ配合させた。実施例4のハイブリッドロケット燃料の固体燃料は、熱可塑性エラストマーとプロセスオイルとを混合させた樹脂組成物に対して溶融助剤が配合されているために、「請求項3」の実施例に該当する。実施例4の固体燃料は、主成分である樹脂組成物に対して溶融助剤が配合されているため、固体燃料の燃焼前における溶融温度が適度に調整されることで、HTPBの融点よりも低い融点において、液滴化現象が発生するため、「燃料後退速度」は、比較例1であるHTPBに対して改善された。また、機械的物性に関しては、弾性率は、123.5(mN/ mm2 ) であり、最大応力、及び最大歪みは、それぞれ0.22(mN/ mm2 ) ,390.2(%)であって、樹脂組成物に対して溶融助剤が配合されている点において、実施例1,2の各固体燃料よりも大きな硬さ(耐弾性変形性)を有しており、ロケット固体燃料として、満足し得るものであった。
【実施例5】
【0035】
実施例5のハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料は、実施例2,3と同様に、スチレン系熱可塑性エラストマー、及びナフテンオイル(プロセスオイル)として、それぞれ株式会社クラレの商品名「セプトンコンパウンド」及び日本サン石油株式会社の商品名「サンセンオイル」を用いた。上記した市販の熱可塑性エラストマーの重量割合は、38重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、62重量%であった。株式会社クラレの商品名「セプトンコンパウンド」には、プロセスオイルが40重量%だけ含まれているので、結局、実施例5の固体燃料の純粋な熱可塑性エラストマーの重量割合は、22.8重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、77.2重量%であった。実施例5のハイブリッドロケット燃料の固体燃料は、主成分である樹脂組成物100重量部に対して粘着性付与樹脂であるキシレン樹脂(軟化点:108°C)として、フドー株式会社の商品名「ニカノール」が75.0重量部(phr)だけ配合されていると共に、溶融助剤として日油株式会社の製造に係るステアリン酸(融点:69.6°C)が50.0重量部(phr)だけ配合されているため、「請求項4」の実施例に該当する。実施例5の固体燃料は、粘着性付与樹脂及び溶融助剤の双方の配合により、固体燃料の燃焼前の溶解温度が一層適正に調整されるために、「燃料後退速度」は、比較例1であるHTPBに対して大幅に改善された。また、機械的物性に関しては、弾性率は、874.3(mN/ mm2 ) であり、最大応力、及び最大歪みは、それぞれ0.86(mN/ mm2 ) ,226.8(%)であって、樹脂組成物に対して粘着性付与樹脂及び溶融助剤の双方が高い割合で配合されているために、実施例3の固体燃料よりも大きな硬さ(耐弾性変形性)を有しており、ロケット固体燃料として、満足し得るものであった。
【実施例6】
【0036】
実施例6のハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料は、実施例1,3の各固体燃料と同様に、スチレン系熱可塑性エラストマー、及びパラフィンオイル(プロセスオイル)として、それぞれ株式会社クラレの商品名「セプトンコンパウンド」及び出光興産株式会社の商品名「ダイアナプロセスオイル」を用いた。両者を混合した後の実施例6の固体燃料の純粋な熱可塑性エラストマーの重量割合は、10.5重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、89.5重量%である。実施例6の固体燃料は、上記した樹脂組成物100重量部に対して、粘着性付与樹脂であるキシレン樹脂として、フドー株式会社の商品名「ニカノール(軟化点:108°C)」が15.0重量部(phr)だけ配合され、溶融助剤として日油株式会社の製造に係るステアリン酸(融点69.6°C)が、5.0重量部(phr)だけ配合されているため、「請求項4」の実施例に該当する。
【0037】
実施例6の固体燃料には、樹脂組成物に対して粘着性付与樹脂及び溶融助剤の双方が配合されて、固体燃料として適正な溶解温度に調整されていて、実施例4の固体燃料よりも更に低い融点を有していて、当該融点における液滴化現象が活発であるために、燃焼性の評価の一つとしての「平均燃料後退速度」は、後述のように、比較例1のHTPBに対して速く、比較例2のパラフィンワックスに対して同レベルか又はそれ以上であることが判明した。図3は、実施例6及び同8の各ハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料と、比較例1のHTPB及び比較例2のパラフィンワックスとの平均酸化剤質量流束(Average oxidizer mass flux)〔kg/ m2 ・s〕に対する平均燃料後退速度(Average Regression rate of fuel)〔mm/s〕の比較を示す図であり、両対数グラフで表示されている。平均酸化剤質量流束(G)として、平均燃料後退速度を(rb)とした場合において、HTPBにおいては、図3で一点鎖線で示されるように、(rb=0.0298×G0.681 )であると共に、パラフィンワックスに関しては、同図で2点鎖線で示されるように、(rb=0.156×G0.39)であるのに対して、実施例6の固体燃料においては、同図で実線で示されるように、(rb=0.137×G0.54)であり、平均酸化剤質量流束(G)を同一とした場合には、実施例6の固体燃料の平均燃料後退速度(rb)は、比較例1のHTPBに対しては、3〜4倍の速さを有すると共に、比較例2のパラフィンワックスに対しても同レベルか又はそれ以上であることが判明し、ロケット固体燃料の燃焼性の面で優れていることが分かった。
【0038】
また、機械的物性に関しては、弾性率は、37.7(mN/ mm2 ) であり、最大応力、及び最大歪みは、それぞれ0.09(mN/ mm2 ) ,378.8(%)であって、樹脂組成物に対して粘着性付与樹脂及び溶融助剤の双方が配合されているために、実施例5の固体燃料よりも、僅かに大きな硬さ(耐弾性変形性)を有しており、ロケット固体燃料として、満足し得るものであった。
【実施例7】
【0039】
実施例7のハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料は、樹脂組成物を構成する熱可塑性エラストマー及びプロセスオイル、並びに樹脂組成物に配合する粘着性付与樹脂、及び溶融助剤は、実施例6の固体燃料で使用されたものと同一であって、その組成割合が異なるのみである。即ち、実施例7の固体燃料の純粋な熱可塑性エラストマーの重量割合は、17.5重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、82.5重量%であり、上記した樹脂組成物100重量部に対して、粘着性付与樹脂であるキシレン樹脂として、フドー株式会社の商品名「ニカノール(軟化点:108°C)」が50.0重量部(phr)だけ配合され、溶融助剤として日油株式会社の製造に係るステアリン酸(融点69.6°C)が5.0重量部(phr)だけ配合されているため、「請求項4」の実施例に該当する。
【0040】
図3に示されるように、実施例7の固体燃料の平均酸化剤質量流束に対する平均燃料後退速度は、比較例2のパラフィンワックスに対して同レベルに速く、燃焼性の面で改善されていることが分かった。また、機械的物性に関しては、弾性率は、267.7(mN/ mm2 ) であり、最大応力、及び最大歪みは、それぞれ0.41(mN/ mm2 ) ,344.0(%)であって、実施例6の固体燃料に対して樹脂組成物に対する粘着性付与樹脂の配合割合(phr)が3倍以上であるために、実施例6の固体燃料よりも、遥かに大きな硬さ(耐弾性変形性)を有しており、ロケット固体燃料として、満足し得るものであった。
【実施例8】
【0041】
実施例8のハイブリッドロケット燃料を構成する固体燃料は、樹脂組成物を構成する熱可塑性エラストマー及びプロセスオイル、並びに樹脂組成物に配合する粘着性付与樹脂、及び溶融助剤は、実施例6,7の各固体燃料で使用されたものと同一であって、その組成割合が異なるのみである。即ち、実施例8の固体燃料の純粋な熱可塑性エラストマーの重量割合は、21.0重量%であり、プロセスオイルの重量割合は、79.0重量%であり、上記した樹脂組成物100重量部に対して、粘着性付与樹脂であるキシレン樹脂として、フドー株式会社の商品名「ニカノール(軟化点:108°C)」が50.0重量部(phr)だけ配合され、溶融助剤として日油株式会社の製造に係るステアリン酸(融点69.6°C)が10.0重量部(phr)だけ配合されているため、「請求項4」の実施例に該当する。
【0042】
実施例8の固体燃料の平均酸化剤質量流束(G)に対する平均燃料後退速度(rb)は、図3で破線で示されるように、(rb=0.104×G0.53)の関係が成立して、HTPBに対しては、2倍程度の速さであって、パラフィンワックスと同等の速さを有していて、燃焼性の面で改善されていることが分かった。また、機械的物性に関しては、弾性率は、617.7(mN/ mm2 ) であり、最大応力、及び最大歪みは、それぞれ0.58(mN/ mm2 ) ,300.2(%)であって、実施例7の固体燃料に対して、樹脂組成物に対する溶融助剤の配合割合(phr)が2倍であるために、実施例7の固体燃料よりも、大きな硬さ(耐弾性変形性)を有しており、ロケット固体燃料として、満足し得るものであった。
【比較例1】
【0043】
実施例1〜8に対する比較例1として、HTPBを用いた。HTPBは、機械的物性は優れているが、図3に示されるように、「燃料後退速度」が遅く、大きな推力が得られず、実用に至らなかった。
【比較例2】
【0044】
実施例1〜8に対する比較例2として、パラフィンワックスを用いた。パラフィンワックスは、図3に示されるように、燃料後退速度に関しては、満足し得るものであるが、「機械的物性」の点においては脆くて壊れ易く、またモータケースとの接着性が悪いという欠点を有していて、満足し得るものではなかった。
【符号の説明】
【0045】
F:固体燃料
MC:モータケース
R:ハイブリッドロケット
To:酸化剤タンク
図1
図2
図3
図4