特許第6242621号(P6242621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242621
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】大気浄化壁面緑化装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 1/00 20060101AFI20171127BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20171127BHJP
   A01G 9/02 20060101ALI20171127BHJP
   A01G 27/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   A01G1/00 301C
   A01G7/00 602A
   A01G9/02 D
   A01G27/00 502H
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-158567(P2013-158567)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-29425(P2015-29425A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】西部 洋晴
(72)【発明者】
【氏名】天保 美咲
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−128483(JP,A)
【文献】 特開2013−099298(JP,A)
【文献】 特開2012−005409(JP,A)
【文献】 特開2004−255262(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/067356(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 1/00
A01G 7/00
A01G 9/00−9/02
A01G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気が可能な積層構造の緑化面形成部材と、この緑化面形成部材の背面に設けられ、前記緑化面形成部材を通過して浄化されるように送風される空気を案内する通気層を形成した通気層形成部材とを備え、
前記緑化面形成部材が、支持体と、この支持体の表面に支持され導水性を有する支持層と、この支持層の表面に重ねられて保水する保水層と、育成する植物が表面に配置される表面層とを含み、
前記支持体が、穴空き形状の板状支持体またはワイヤメッシュである、
大気浄化壁面緑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の大気浄化壁面緑化装置において、前記緑化面形成部材が、前記支持体と、この支持体の表面に支持され導水性を有する支持層と、この支持層の表面に重ねられ前記支持層から水を受け取って保持する保水層と、この保水層の水を受け取って表面側の根張り領域に導く導水層と、前記根張り領域を有し植物を育成する表面層とを含む大気浄化壁面緑化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の大気浄化壁面緑化装置において、前記支持層がマット状体またはシート状体からなり、前記保水層および導水層がシート状体からなる大気浄化壁面緑化装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の大気浄化壁面緑化装置において、前記通気層形成部材がボックス状であり、前記通気層の外部から空気を吸引して前記通気層内へ送風しまたは前記通気層から空気を吸引して外部へ送風するファンを前記通気層形成部材に設置した大気浄化壁面緑化装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の大気浄化壁面緑化装置において、前記通気層形成部材の上方に灌水手段を設け、前記通気層形成部材の下方に貯水タンクを設け、前記緑化面形成部材の下方に、この緑化面形成部材から落ちる水を受けて前記貯水タンクへ導く樋を設けた大気浄化壁面緑化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大気を清浄化する機能と壁面を緑化する機能とを備えた大気浄化壁面緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の壁面等に設置されて大気の浄化および壁面等の緑化を行う大気浄化壁面緑化装置がある。この種の従来の大気浄化壁面緑化装置は、緑化用の植物が植えられる土壌基盤に大気を通過させることで、大気中の汚染物質を吸着、除去する。土壌基盤としては、軽量土壌等の土が用いられていた。
大気浄化は行わずに壁面緑化だけを行うために用いられる緑化面形成部材では、土壌基盤が土以外からなるものもある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−99298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の大気浄化壁面緑化装置は、土壌基盤が軽量土壌やその他の土であるため、以下のような問題点がある。
・土壌基盤の重量が重い。例えば、土は、湿潤状態で比重が0.5程度である。
・土壌基盤の重量が重いことにより、大気浄化壁面緑化装置の構造体を頑丈に造る必要があり、コストが高くつく。
・土壌基盤の厚みが少なくとも150mm程度必要となり、大気浄化壁面緑化装置の厚みが大きくなる。
・土壌そのもの、または土壌層全体で土壌組成分の分布が不均一となり易く、通気性にムラが生じ易い。
・緑化面となる前面から土壌が少なからずこぼれ落ちるので、室内に設置するのに適しない。
【0005】
この発明の目的は、全体に軽量・小型化することができ、かつ製作コストを抑えることができ、通気箇所のムラが生じ難く、さらに室内に設置するのにも適した大気浄化壁面緑化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の大気浄化壁面緑化装置は、通気が可能な積層構造の緑化面形成部材と、この緑化面形成部材の背面に設けられ、前記緑化面形成部材を通過して浄化されるように送風される空気を案内する通気層を形成した通気層形成部材とを備える。前記緑化面形成部材が、支持体と、この支持体の表面に支持され導水性を有する支持層と、この支持層の表面に重ねられて保水する保水層と、育成する植物が表面に配置される表面層とを含む。前記支持体は、穴空き形状の板状支持体またはワイヤメッシュである。
【0007】
この構成によると、直接、または導水性を有する支持層を通って供給される水が保水層に貯えられ、その保水層の水が適量ずつ表面層に導かれる。表面層および保水層の水を根で吸い上げることで、植物が生育する。表面層を設けることで、保水層の乾燥を防止することができる。また、緑化面形成部材の背面に通気層形成部材が設けられているため、送風を行うことにより、通気層形成部材の通気層から緑化面形成部材の表面側への空気の流れ、または緑化面形成部材の表面側から通気層形成部材の通気層への空気の流れが生じる。この空気の流れにより空気が緑化面形成部材の各層を通過する際に、空気中の汚染物質が吸着、除去されて、空気が清浄化される。
【0008】
緑化面形成部材を構成する各層のうち支持層および保水層は、樹脂等からなる比較的薄手で軽量なマット状材やシート状材を用いることができる。また、これら支持層および保水層により表面層に水を適量ずつ供給することができるので、表面層に土を使用しなくても植物を育成することが可能である。表面層に土を使用してもよいが、その場合、使用する土の量を少なくすることができる。これらのことから、緑化面形成部材を軽量にすることができる。緑化面形成部材が軽量であると、大気浄化壁面緑化装置の構造体を比較的簡易な構成とすることができ、コストダウンを図れる。緑化面形成部材は、複数層の積層構造であるため、全体を均一な仕様にすることができ、通気性にムラが生じ難い。
【0009】
この発明の大気浄化壁面緑化装置は、前記緑化面形成部材が、支持体と、この支持体の表面に支持され導水性を有する支持層と、この支持層の表面に重ねられ前記支持層から水を受け取って保持する保水層と、この保水層の水を受け取って表面側の根張り領域に導く導水層と、前記根張り領域を有し植物を育成する表面層とを含んでいても良い。
【0010】
この構成によると、導水性を有する支持層を通って供給される水が保水層に貯えられ、その保水層の水が導水層を介して適量ずつ表面層の根張り領域に導かれる。表面層、導水層、および保水層の水を根で吸い上げることで、植物が生育する。保水層とは別に導水層を設けることで、表面層に水をスムーズに導くことができる。また、表面層に根張り領域を設けることで、植物をより一層確実に活着させることができる。この大気浄化壁面緑化装置も、前記同様に、空気が緑化面形成部材の各層を通過する際に、空気中の汚染物質が吸着、除去されて、空気が清浄化される。
【0011】
前記支持層がマット状体またはシート状体からなり、前記保水層および導水層がシート状体からなっていても良い。
緑化面形成部材に薄手のマット状体やシート状体を用いると、緑化面形成部材の厚みを抑えることができ、大気浄化壁面緑化装置の全体の厚みも薄くすることができる。また、緑化面形成部材の各層を均一な仕様にすることができるので、通気性により一層ムラが生じ難い。加えて、土を用いなくてもよいので、室内に設置することも可能である。
【0013】
この発明において、前記通気層形成部材がボックス状であり、前記通気層の外部から空気を吸引して前記通気層内へ送風しまたは前記通気層から空気を吸引して外部へ送風するファンを前記通気層形成部材に設置しても良い。
通気層形成部材にファンを設置すると、外部にファンやダクトを設けることが不要となり、ファンを含めて全体をコンパクトに構成でき、また設置が簡単に行える。
【0014】
この発明において、前記通気層形成部材の上方に灌水手段を設け、前記通気層形成部材の下方に貯水タンクを設け、前記緑化面形成部材の下方に、この緑化面形成部材から落ちる水を受けて前記貯水タンクへ導く樋を設けても良い。
灌水手段を設けると、通気層形成部材の各層へ水を良好に供給することができる。また、貯水タンクおよび樋を設けることで、余分な水を回収することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の大気浄化壁面緑化装置は、通気が可能な積層構造の緑化面形成部材と、この緑化面形成部材の背面に設けられ、前記緑化面形成部材を通過して浄化されるように送風される空気を案内する通気層を形成した通気層形成部材とを備え、前記緑化面形成部材が、支持体と、この支持体の表面に支持され導水性を有する支持層と、この支持層の表面に重ねられて保水する保水層と、育成する植物が表面に配置される表面層とを含み、前記支持体が、穴空き形状の板状支持体またはワイヤメッシュであるため、全体に軽量・小型化することができ、かつ製作コストを抑えることができ、通気箇所のムラが生じ難く、さらに室内に設置するのにも適する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)この発明の実施形態にかかる大気浄化壁面緑化装置の縦断面図、(B)はその正面図である。
図2】(A),(B)はそれぞれ緑化面形成部材の構成が異なる大気浄化壁面緑化装置の縦断面図である。
図3】この発明の異なる実施形態にかかる大気浄化壁面緑化装置の縦断面図である。
図4】この発明のさらに異なる実施形態にかかる大気浄化壁面緑化装置の縦断面図である。
図5】(A)この発明のさらに異なる実施形態にかかる大気浄化壁面緑化装置の縦断面図、(B)はその正面図である。
図6】この発明のさらに異なる実施形態にかかる大気浄化壁面緑化装置の外観斜視図である。
図7】この発明のさらに異なる実施形態にかかる大気浄化壁面緑化装置の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図1と共に説明する。この大気浄化壁面緑化装置は、図1(A)の縦断面図で示すように、通気が可能な積層構造の緑化面形成部材1と、この緑化面形成部材1の背面側に設けられた通気層形成部材2とを備える。緑化面形成部材1の表面側が植物30の植えられる緑化面となる。
【0018】
緑化面形成部材1は、ボックス状の装置躯体3の内側に、背面側から表面側に向かって支持体5、支持層6、保水層7、導水層8、および表面層9が重ねて設けられている。緑化面形成部材1は、その上端部および下端部を装置躯体3の内側に突出して設けられた中間フランジ部3aと正面側フランジ部3bとの間に嵌め込み、ボルト等の固定具11により中間フランジ部3aおよび正面側フランジ部3bに固定される。
【0019】
前記支持体5は、前記各層6〜9が背面側に動かないように押えるものであり、腐食し難い素材で形成するか、または防水加工が施された材料で作られる。また、支持体5は、高い開口率を有し、かつ通気抵抗が低いものが適している。具体的には、穴あき鋼板、パンチング板、有孔OAフロア材等の板状支持体、またワイヤメッシュを用いる。有孔OAフロア材は、例えば17.3%の開口率のものが好ましい。図1の支持体5は、板状支持体5Aおよびワイヤメッシュ5Bの両方を併用した例を示すが、図2(A)のように板状支持体5Aだけとしてもよく、また図2(B)のようにワイヤメッシュ5Bだけとしても良い。
【0020】
前記支持層6は、前記支持体5の表面に支持される。支持層6は導水性を有することが求められ、例えばマット素材、高密度フェルト等をシート状にしたものが用いられる。或いは、床下空調に使用する通気カーペットに導水性を持たせたものでも良い。通気カーペットの一例としては、ポリエステルフェルト基材とタイルカーペットの基布を、所定の接着剤と接着方法で、通気性を確保してバインディングしたものがある。この通気カーペットの通気抵抗は、約20Pa(1.5cm/sec時)と低い。
【0021】
前記保水層7は、前記支持層6の表面に重ねられ、支持層6から水を受け取って保持する役割をする。保水層7には、水分を含んだときに体積が増大する素材である吸水性ポリマーシート、繊維素材であるランシール(登録商標)等が用いられる。
【0022】
前記導水層8は、前記保水層7の水を受け取って表面側の後記根張り領域13に導く役割をする。導水層8には、水を毛細管現象により吸い上げる能力に優れた素材、例えばポリエチレン、ポリエステル等の樹脂や合成繊維からなる不織布(ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布等)、トリコット等、或いはこれらの組み合わせを利用することができる。また、この導水層8としては、バイレック揚水距離が10分後で5cm以上となる素材を用いるのが良い。導水層8は、植物30の根が入り込める密度を有するものであっても良い。
【0023】
上記支持層6、保水層7、および導水層8に用いられる各マット状材またはシート状材は、これらマット状材またはシート状材自体の重量、含有する水分の重量、および後記根張り領域13から伸びてきた植物30の根の重量を受けて支持することができ、かつ前記固定具11を挿通させる穴をあけても穴が大きく広がらないようにハリを有するのが良い。また、各層6〜8全体として、水分を含んだ状態で約100Pa以下の通気抵抗となるのが望ましい。100Paは、緑化面形成部材1を空気が良好に通過することができる通気抵抗値である。
【0024】
前記表面層9は、支持シート12を加工して形成されている。すなわち、支持シート12の一部分に水平方向の切れ目を入れ、その切れ目の下側部分12aを表面側に突出するように変形させることで、植物30が外に向かって生育するための開口12bを形成すると共に、切れ目の下側部分12aと前記導水層8との間に空間を設けて、この空間を根張り領域13としている。根張り領域13には、ある程度の保水性を有し、根の伸長を妨げない植物育成基盤(図示せず)が充填される。植物育成基盤は特に限定しないが、例えば樹脂製のスポンジ状やフェルト状材であっても良く、土であっても良い。支持シート12は、根張り領域13に根を張った植物30を支えることができる強度を有し、かつ大気浄化壁面緑化装置が屋外に設置される場合には、温度、湿度、雨等に対する耐候性を有するのが良い。また、水分の蒸発を抑制する乾燥防止性に優れ、紫外線を遮断する性質を有するのが望ましい。
【0025】
例えば図1(B)のように、表面層9の各根張り領域13が任意に分散して配置される。根張り領域13の箇所を避けて、支持シート12の表面側をワイヤメッシュ等の表面側支え14で押えることで、緑化面形成部材1が表面側へ出ることを防止する。表面側支え10は、装置躯体3の前記表面側フランジ部3bに取り付けられている。
【0026】
前記通気層形成部材2は、ボックス状の装置躯体3における前記中央フランジ部3aよりも背面側の部分で構成され、内部に、緑化面形成部材1を通過して浄化されるように送風される空気を案内する通気層16が形成されている。装置躯体3は、複数枚の金属板または樹脂板をボックス状に組み立てたものである。通気層16の表面側の面は、緑化面形成部材1の支持体5に接している。
【0027】
前記通気層16は、装置躯体3の下側の空気室17と連通穴18で繋がっており、この連通穴18に、空気室17から通気層16へ空気を送るファン19が取り付けられている。ファン19は、例えばターボファンである。空気室17の前面部には、空気出入り口17aが設けられている。ファン19を駆動すると、空気出入り口17aから空気を吸い込み、その空気が空気室17、通気層16を通り、緑化面形成部材1を背面側から表面側へ通過して植栽面となる表面層9から排出する空気の流れが生じる。ファン19の空気送り方向を逆向きに設置して、逆向きの空気の流れが生じるようにしても良い。
【0028】
通気層形成部材1の上端と装置躯体3の天板部との間には、灌水手段21が設けられている。例えば、灌水手段21は、外周に複数の孔が開けられたチューブであって、前記孔から滲み出た水が、支持層6に滴下されるようになっている。潅水手段21を構成するチューブの入口は、給水源に接続されている。装置躯体3の中間フランジ部3aと正面側フランジ部3b間の底部は、通気層形成部材1から落ちてくる水を受けて大気浄化壁面緑化装置の幅方向に沿って案内する樋22になっている。樋22の水案内方向の下流部には下方に延びる排水パイプ23が設けられ、樋22で受けられた水が排水パイプ23を通って、空気室17の下側に設けられた貯水タンク24に集められる。樋22および貯水タンク24を設けることで、余分の水を回収することができる。
【0029】
この構成の大気浄化壁面緑化装置は、前記根張り領域13の植物育成基盤に植物30が植えられる。灌水手段21により支持層6が灌水され、その水が、保水層7および導水層8を通って表面層9に導かれて、根張り領域13に供給される。この水を根で吸い上げることで、植物30が生育する。植物30は、根張り領域13を中心に根を張り、一部の根は導水層8、保水層7、支持層6にも伸びる。植物30の茎および葉は、支持シート12の開口12bから外に向かって伸び、表面側の壁面を緑化する。
【0030】
また、緑化面形成部材1の背面側に通気層16を設けることで、緑化面形成部材1を背面側から表面側へ通過する空気の流れ、または逆向きの空気の流れを生じさせることができる。この空気の流れにより、空気が緑化面形成部材1の各層6〜9を通過する際に、空気中の汚染物質が吸着、除去されて、空気が清浄化される。送風用のファン19は装置躯体3から離して設け、ダクトで通気層16に接続しても良いが、この実施形態のように、ファン19を緑化面形成部材1に設置すると、外部にファン19やダクト(図示せず)を設けることが不要となり、ファン19を含めて全体をコンパクトに構成でき、また設置が簡単に行える。
【0031】
緑化面形成部材1を構成する各層のうち支持層6、保水層7、および導水層8は、表面層9の根張り領域13に水を供給するための層であって、樹脂等からなる比較的薄手で軽量なマット状素材を用いることができる。また、これら支持層6、保水層7、および導水層8により表面層9の根張り領域13に水を適量ずつ供給することができるので、根張り領域13に土を使用しなくても植物を育成することが可能である。根張り領域13に土を使用してもよいが、その場合、使用する土の量を少なくすることができる。これらのことから、緑化面形成部材1を軽量にすることができる。
【0032】
緑化面形成部材1が軽量であると、大気浄化壁面緑化装置の構造体である装置躯体3を比較的簡易な構成とすることができ、コストダウンを図れる。また、緑化面形成部材1に薄手のマット状体やシート状体を用いるため、緑化面形成部材1の厚みを抑えることができ、大気浄化壁面緑化装置の全体の厚みも薄くすることができる。例えば、全体の厚みを100〜200mmとすることができる。このうち、通気層16の厚みは50mm程度である。さらに、緑化面形成部材1の各層6〜9を均一な仕様にすることができるので、通気性にムラが生じ難い。加えて、土壌を用いなくてもよいので、室内に設置することも可能である。
【0033】
この実施形態では、支持体5および支持層6の両方が設けられているが、いずれか一方のみを設けても良い。支持体5のみを設ける場合は、潅水手段21を、保水層7に対して潅水を行うように設置する。支持層6のみを設ける場合は、支持層6が、保水層7の背面を受けて保水層7、導水層8、および表面層9を支持できるものとする。
また、保水層7から表面層9へ水を良好に導くことができるのであれば、導水層8は設けなくても良い。
さらに、表面層9に特別な根張り領域13を設けずに、植物30の根が直接に導水層8や保水層7に伸びるようにしても良い。
【0034】
この大気浄化壁面緑化装置による効果をまとめると、以下のようになる。
・大気を土等の土壌で浄化するのではなく、薄手のマットを複数重ねた緑化面形成部材1で浄化するため、大気浄化壁面緑化装置全体を軽量にすることができる。
・大気浄化壁面緑化装置全体が軽量であるため、大気浄化壁面緑化装置の構造体も軽量にすることができる。
・構造体が軽量であると、構造体の材料選択の幅が広がり、コストダウンを図れると共に、意匠性を高めることができる。
・緑化面形成部材1が薄手のマット状体やシート状体を複数重ねた構成であると、緑化面形成部材1の通気性をコントロールし易く、小型のファン19を用いることができる。
・ファン19が小型であると、騒音を抑えることができると共に、コストダウンを図ることができる。
・植物30の育成に土壌を用いなくてよいため、土が周囲にこぼれることなく、また大気浄化のために緑化面形成部材1に通気しても、土壌の臭いが発生しない。そのため、室内に設置することが可能である。
・土と違ってマット状体やシート状体は通気性を均一にすることができるので、通気性にムラが生じ難い。
・通気性にムラが生じ難いため、表面層9の各部に同じように水分を供給することができ、表面層9に植えられた植物30の育成が安定する。
・保水性のある緑化面形成部材1を通過して空気が清浄化されるので、清浄化された空気に水分が与えられる。そのため、大気浄化壁面緑化装置を室内に設置した場合、室内の乾燥を抑えることができる。
【0035】
上記実施形態は片方の壁面のみが植栽面とされているが、両方の壁面を植栽面としてもよい。その場合、図3のように、厚み方向の中央部に通気層16を配置し、その両側に緑化面形成部材1をそれぞれ配置する。
【0036】
また、上記実施形態は通気層16の下にファン19が設置されているが、図4のように、通気層16の上にファン19を設置しても良い。この場合、装置躯体3の上に設けられた空気室17の空気出入り口17aから空気が出入りする。ファン19としては、ターボファン以外に、図5に示すような小型のDCファンを用いても良い。この例では、装置躯体3の天板部に設けたファン19により直接に空気を出し入れするため、空気室は設けられていない。図5は、DCファンであるファン19を通気層16の上に設置した例を示すが、通気層16の下に設置しても良い。
【0037】
以上の各実施形態は大気浄化壁面緑化装置の全体形状が直方体であるが、直方体以外の形状としても良い。例えば、図6図7のように三角柱状とすると、室内のコーナー部にコンパクトに設置することが可能である。その場合、図7の大気浄化壁面緑化装置のように、植栽面である表面層9の支持シート12の一部をパネル26で覆っても良い。また、上記パネル26に棚27等を設けても良い。このように、パネル26や棚27を設けることで、大気浄化壁面緑化装置をインテリアとして用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…緑化面形成部材
2…通気層形成部材
5…支持体
6…支持層
7…保水層
8…導水層
9…表面層
13…根張り領域
16…通気層
19…ファン
21…灌水手段
22…樋
24…貯水タンク
30…植物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7