(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242630
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】光測定装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/28 20060101AFI20171127BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20171127BHJP
H04B 10/079 20130101ALI20171127BHJP
【FI】
G01J3/28
G01J1/42 D
H04B10/079 150
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-174706(P2013-174706)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42960(P2015-42960A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石原 元太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 徹
【審査官】
塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−089536(JP,A)
【文献】
特開2011−257194(JP,A)
【文献】
特開2004−132815(JP,A)
【文献】
特開2012−163534(JP,A)
【文献】
特開平9−80100(JP,A)
【文献】
特開平11−64405(JP,A)
【文献】
特開平3−205571(JP,A)
【文献】
米国特許第4794324(US,A)
【文献】
米国特許第4747095(US,A)
【文献】
MS9710B 光スペクトラムアナライザ取扱説明書,アンリツ株式会社,2008年12月26日,第11版
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/28
G01J 1/42
H04B 10/079
G01R 23/16
G01R 23/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面に表示される測定対象光のスペクトラムからパワーを測定するように構成された光測定装置において、
前記スペクトラム上の所望の波長位置にマーカーを設定するマーカー設定手段と、
積分演算対象の波長範囲を定めるための波長間隔をあらかじめ設定し、前記設定されたマーカーの波長位置から前記あらかじめ設定された波長間隔を減じて得た波長位置を始点とし、前記設定されたマーカーの波長位置から前記あらかじめ設定された波長間隔を加えて得た波長位置を終点として定める波長範囲を前記パワーの測定範囲として設定する波長範囲設定手段と、
を設け、
前記パワーは、前記設定された波長範囲のスペクトラムを積分演算して算出されることを特徴とする光測定装置。
【請求項2】
表示画面に表示される測定対象光のスペクトラムからパワーを測定するように構成された光測定装置において、
前記スペクトラム上の所望の波長位置にマーカーを設定するマーカー設定手段と、
レベル範囲パラメータをあらかじめ設定し、前記設定されたマーカーの波長位置のパワー値から前記レベル範囲パラメータの値を減じてパワーしきい値を算出し、前記設定されたマーカーの波長位置から短波長側におけるスペクトラムデータのパワー値のうち前記パワーしきい値を最初に下回るパワー値における波長位置を始点とし、前記設定されたマーカーの波長位置から長波長側におけるスペクトラムデータのパワー値のうち前記パワーしきい値を最初に下回るパワー値における波長位置を終点として定まる波長範囲を前記パワーの測定範囲として設定する波長範囲設定手段と、
を設け、
前記パワーは、前記設定された波長範囲のスペクトラムを積分演算して算出されることを特徴とする光測定装置。
【請求項3】
前記波長範囲は、前記測定対象光のスペクトラム波形上に識別可能な表示形態で重畳して表示されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光測定装置に関し、詳しくは、光信号の信号パワー測定の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信において光ファイバー内を伝送する信号光の信号パワーを測定する方法として、一般的に光スペクトラムアナライザや光波長計などの光スペクトラム測定装置を使用し、スペクトラムから求めることが行われている。これは、伝送するチャネル(波長)が1波長のみの信号光や、波長分割多重通信(WDM: Wavelength Division Multiplex)のように複数のチャネル(波長)が含まれる信号光でも同様である。
【0003】
図7は、従来から用いられている光スペクトラム測定装置の一例を示す構成ブロック図である。光スペクトラム測定装置で信号のピークパワーを測定する場合には、まず、被測定光源1から入力された信号光のスペクトラムを光学部2で測定し、測定したスペクトラムを演算部3で解析して解析結果を表示部4で表示する。ピークパワーの測定にあたっては、マーカー設定部5で、パワーを測定したいスペクトラムの所望のピークにマーカーを設定する。
【0004】
信号光スペクトラムの測定方式としては、モノクロメータやポリクロメータを用いた分散分光方式や、干渉計により求めた干渉縞を高速フーリエ変換して求めるフーリエ分光方式などがあるが、いずれの方法でもよい。
【0005】
ここで、求めたスペクトラムデータは、X軸が波長値または光周波数値、Y軸がパワー値で表される。なお、以下の説明では、全てX軸を波長値として記述しているが、光周波数でも同様に適用できる。
【0006】
図8は、
図7の光スペクトラム測定装置における信号パワー測定の流れの一例を示すフローチャートである。被測定信号光のスペクトラムを測定し(ステップS1)、測定したスペクトラムデータを表示部4に表示するとともに、図示しないデータ格納領域に格納する(ステップS2)。表示画面上のスペクトラムデータの所望の波長位置にマーカーを設定し(ステップS3)、マーカーが設定された位置における波長のパワーを測定する(ステップS4)。
【0007】
大量の情報を伝送する光通信で用いられる光源は、一般的にDFB-LDなどのシングルモードレーザーが用いられる。この光源のスペクトラムは、線幅が非常に狭く、無変調な状態では
図9に示すように細い線状のスペクトラムとなる。この1本のスペクトラムを信号1チャネルとし、WDM信号光のスペクトラムでは、複数のチャネルが多重化されたスペクトラムが測定される。
【0008】
演算部3でスペクトラムを解析して信号パワーを求めるのにあたっては、ユーザーの操作またはスペクトラムデータのピーク位置の自動検索処理によりスペクトラム上のチャネル中心波長の付近でパワーがピークとなる波長の位置にマーカーを設定し、そのマーカー位置におけるパワーの測定値をそのチャネルの信号パワー値として表示部4に表示する。
【0009】
図9に示す無変調の信号光のように、信号部分のスペクトラム幅が光スペクトラム測定装置の波長分解能以下の場合には、信号パワーは信号部分のスペクトラムのピークレベルで測定することができる。たとえば、信号パワーが-10dBm(0.1mW)の無変調な光信号のスペクトラムを測定した場合、
図9のように光スペクトラム測定装置の波長分解能を0.1nmに設定して測定したスペクトラムのピークレベルは、信号パワーの-10dBmと一致する。
【0010】
ところで、変調された光信号では、無変調な光信号に比べてスペクトラムが広がる。そのため、光スペクトラム測定装置の波長分解能が測定したスペクトラム幅に比べて狭い場合には、光信号の信号パワーはスペクトラムのピークパワーではなく、広がったスペクトラムを積分したパワーを計算しなければ求めることができない。すなわち、従来のマーカーを用いてピークレベルを測定する方法では、信号パワーを求めることができないことになる。
【0011】
たとえば、信号レベルが-10dBmの変調された信号光を測定した場合について説明する。
変調された信号光では、
図10に示すようにスペクトラムが広がる。光スペクトラム測定装置の波長分解能を0.1nmに設定してスペクトラムを測定した場合のピークレベルは-15.9dBmとなり、信号レベルの-10dBmより低く測定される。つまり、マーカーを使用してスペクトラムのピークのレベルを求めても、信号レベルを正しく測定することはできない。
【0012】
そこで、従来の光スペクトラム測定装置には、このような信号レベルを正しく測定する方法として、
図11に示すようにスペクトラムのパワー積分演算を行う範囲の始点と終点にラインマーカーLM1とLM2を設定して積分範囲を指定し、この範囲の積分パワーを求める機能が設けられている。
【0013】
特許文献1には、隣接するアレイ素子の出力をもとにして簡単な演算により該当する単色光の中心波長とトータルパワーを求めることができる光スペクトラムアナライザの構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−254465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述のようにラインマーカーにより積分範囲の始点と終点を指定してこの範囲の積分パワーを求める機能を使うことにより広がったスペクトラムからも信号パワーを求めることができるが、計算するためには積分範囲の始点と終点を指定する必要がある。つまり、チャネルの中心波長から積分範囲パラメータ(Δλ)の位置となる積分始点・終点位置を計算し、その位置にラインマーカーを設置する必要があり、手間がかかって不便である。
【0016】
さらに、チャネルが複数あるWDM信号光において、複数のチャネルそれぞれで信号レベルを求める場合、各チャネルで信号レベルを計算する度にラインマーカーを積分範囲の位置に設置し直して演算をさせなければならず、非常に手間がかかる。
【0017】
変調光の信号レベルを測定する他の方法として、
図12に示すように光スペクトラム測定装置の波長分解能を変調により広がるスペクトラム幅より広く設定してスペクトラムを測定し、そのピークパワーを測定する方法もある。
【0018】
しかしこの方法では、波長分解能を広めにするためにWDM信号光などでは隣のチャネルとスペクトラムが分離できなかったり、信号光の信号対雑音比(SN比)を測定する際に信号成分とノイズ成分でスペクトラムを分離して測定できなくなる恐れがある。
【0019】
信号光のSN比を測定する場合には、信号成分とノイズ成分のスペクトラムを分離して測定することから、光スペクトラム測定装置の波長分解能を狭く設定して測定する必要がある。具体的には、波長分解能を広めに設定してスペクトラムを測定して信号レベルを測定し、続いて波長分解能を狭めに設定してスペクトラムを測定してノイズレベルを測定することになり、SN比の測定に手間と時間がかかってしまう。
【0020】
本発明は、これらの課題を解決するものであって、その目的は、指定した波長を中心とした積分範囲内の積分パワーを簡単な操作で測定できるようにし、変調光などの広がりのあるスペクトラムでも積分パワーを容易に測定できる光測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、
表示画面に表示される測定対象光のスペクトラムからパワーを測定するように構成された光測定装置において、
前記スペクトラム上の所望の波長位置にマーカーを設定するマーカー設定手段と、
積分演算対象の波長範囲を定めるための波長間隔をあらかじめ設定し、前記設定されたマーカーの波長位置から前記あらかじめ設定された波長間隔を減じて得た波長位置を始点とし、前記設定されたマーカーの波長位置から前記あらかじめ設定された波長間隔を加えて得た波長位置を終点として定める波長範囲を前記パワーの測定範囲として設定する波長範囲設定手段と、
を設け、
前記パワーは、前記設定された波長範囲のスペクトラムを積分演算して算出されることを特徴とする。
【0022】
請求項2に記載の発明は、表示画面に表示される測定対象光のスペクトラムからパワーを測定するように構成された光測定装置において、
前記スペクトラム上の所望の波長位置にマーカーを設定するマーカー設定手段と、
レベル範囲パラメータをあらかじめ設定し、前記設定されたマーカーの波長位置のパワー値から前記レベル範囲パラメータの値を減じてパワーしきい値を算出し、前記設定されたマーカーの波長位置から短波長側におけるスペクトラムデータのパワー値のうち前記パワーしきい値を最初に下回るパワー値における波長位置を始点とし、前記設定されたマーカーの波長位置から長波長側におけるスペクトラムデータのパワー値のうち前記パワーしきい値を最初に下回るパワー値における波長位置を終点として定まる波長範囲を前記パワーの測定範囲として設定する波長範囲設定手段と、
を設け、
前記パワーは、前記設定された波長範囲のスペクトラムを積分演算して算出されることを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の光測定装置において、前記波長範囲は、前記測定対象光のスペクトラム波形上に識別可能な表示形態で重畳して表示されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
これらの構成によれば、指定波長を中心とした積分範囲内の積分パワーを簡単な操作で測定でき、変調光などの広がりのあるスペクトラムでも積分パワーを容易に測定できる光測定装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】本発明による他の信号パワー測定画面例である。
【
図5】本発明の他の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】従来の光スペクトラム測定装置の一例を示す構成ブロック図である。
【
図8】
図7の信号パワー測定の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、
図7と共通する部分には同一の符号を付けている。
図1と
図7の相違点は、演算部6におけるパワー演算にある。すなわち、
図7の演算部3はピークパワーを演算しているのに対し、
図1の演算部6は所望の波長範囲における積分パワーの演算を実行する。
【0028】
図2は、
図1のように構成される光スペクトラム測定装置の動作例を示すフローチャートである。まず、被測定信号光のスペクトラムを測定し(ステップS1)、測定したスペクトラムデータ(S(λ))を表示部4に表示するとともに、図示しないデータ格納領域に格納する(ステップS2)。
【0029】
次に、ユーザーの操作またはスペクトラムデータのピーク位置の自動検索処理により、スペクトラム上のチャネル中心波長の付近でパワーがピークとなる波長の位置にマーカーを設定する。これは、ピークとなる波長でなくても、チャネルの中心波長やチャネルの重心波長の場合もある。いずれにせよ、このマーカー位置を中心としてパワーの積分処理をするため、ユーザーは積分範囲が適切となるようにマーカーを設置する。
【0030】
続いて、あらかじめユーザーにより設定された積分対象とする波長範囲を指定するパラメータ(Δλ)を用いて、マーカー波長(λ
M)を中心とした積分対象となる波長範囲の始点(λ
START)と終点(λ
END)を次の式で求める。
λ
START=λ
M−Δλ
λ
END=λ
M+Δλ (1)
【0031】
求めた積分波長範囲λ
STARTとλ
ENDから積分パワー(P)を次の式で求める。
【0032】
【0033】
ここで、Δλ
INTERVALはスペクトラムデータS(λ)の波長間隔であり、スペクトラムデータのサンプリング間隔である。RBW(λ)は光スペクトラム測定装置の波長λにおける実効波長分解能である。スペクトラムデータS(λ)をRBW(λ)で割ることで、スペクトラムデータS(λ)を単位波長あたりのパワー値に換算する。実効波長分解能RBW(λ)は、光スペクトラム測定装置で線スペクトラム光源を測定したときの半値全幅で定義されたり、線スペクトラム光源の測定スペクトラムを積分したパワー値をピークパワー値で割って求められる等価雑音帯域幅で定義されたりするものである。
【0034】
以上の演算により、マーカー波長(λ
M)を中心として、積分範囲パラメータ(Δλ)で指定された積分波長範囲における積分パワーPを求めることができる。
【0035】
図3は、本発明による信号パワー測定画面例である。この例では、
図10と同様に、信号レベルが-10dBmの変調された信号光を測定している。
図3のピークレベルも-15.9dBmとなるが、本発明に基づいてマーカー波長を中心とした所定の積分波長範囲内でスペクトラムを積分したパワーPを求めることにより、-10dBmの信号パワーを求めることができる。
【0036】
さらに、
図3では、積分波長範囲λ
STARTからλ
ENDのスペクトラムを太線で表示することにより、積分パワーPを求めるにあたって使用したスペクトラムデータの積分範囲をわかりやすくしている。なお、線幅の変更に代えて、積分範囲の線分の色を変えて表示してもよい。
【0037】
積分範囲パラメータ(Δλ)を変更したり、マーカー波長(λ
M)を変更したときは、積分波長範囲や積分パワーPを再計算し、その結果を表示するとともに、マーカー表示やスペクトラムの太線表示なども更新する。
【0038】
これらの更新により、積分範囲パラメータ(Δλ)やマーカー位置を変更しても、その結果である積分パワーPや実際に演算された積分波長範囲を、すぐに画面上で確認することができる。
【0039】
次に、本発明により無変調な信号光の信号レベルを測定した場合について説明する。
無変調な信号光のスペクトラムは、変調された信号光のようにスペクトラムが広がらないので、ピーク以外の部分、すなわちスペクトラムの裾野の部分のパワーはピークに比べて非常に小さい。
【0040】
そのため、ピーク位置にマーカーを設置して、マーカー波長(λ
M)と積分範囲パラメータ(Δλ)で決まる積分波長範囲内でパワーを積分した積分パワーPは、スペクトラムのピーク位置のパワーと一致する。
すなわち、本発明による積分計算で、無変調な信号光の信号パワーも測定できる。
【0041】
図4は、本発明による他の信号パワー測定画面例である。この例では、5チャネルの光信号を波長分割多重したWDM信号を測定している。WDM信号光のように、複数の信号が含まれるスペクトラムを解析する場合、それぞれのチャネル波長λ
1、λ
2、…、λ
Nにマーカー1,2,…,Nを設定することにより、各チャネルの信号パワーを測定できる。
【0042】
このとき、積分範囲パラメータ(Δλ)は、全チャネルで共通の値としてもよいし、それぞれのチャネルで別々に設定(Δλ
1、Δλ
2、…、Δλ
N)してもよい。
【0043】
また、上記実施例では、光通信の信号光のスペクトラムから信号パワーを測定する例について説明したが、本発明の適用範囲は、光通信信号光のスペクトラム測定に限るものではなく、たとえばハロゲンランプなどの光源のスペクトラム測定にも適用できる。
【0044】
また、光源ではなく、たとえば特定の波長域を透過したり透過を阻止したりするような特性を持つ光フィルターの透過特性を測定したスペクトラムなどにも適用できる。
【0045】
図5は本発明の他の動作例を示すフローチャートであって、レベル範囲パラメータにより積分範囲を指定する例を示している。まず、被測定信号光のスペクトラムを測定して(ステップS1)、測定したスペクトラムデータ(S(λ))を表示部4に表示するとともに、図示しないデータ格納領域に格納する(ステップS2)。
【0046】
続いて、ユーザーは、スペクトラム上の任意の位置にマーカを設置する(ステップS3)。このマーカー位置のレベル値が、積分範囲を求める際の基準点のレベル値となる。
【0047】
次に、あらかじめユーザーにより設定された積分範囲のパラメータを用いて、積分範囲を求める。積分範囲パラメータは、マーカー位置のレベル値を基準とした相対パワー値(ΔP[dB])で指定する。
【0048】
そして、マーカー位置のパワー値をP
M[dBm]としたとき、そこから積分範囲パラメータである相対パワー値(ΔP[dB])だけレベルが下がったパワーしきい値(P
TH[dBm])を次の式で求める。
P
TH=P
M−ΔP (3)
【0049】
次に、積分波長範囲(積分開始波長λ
STARTと積分終了波長λ
END)を求める。
積分開始波長(λ
START)は、現在のマーカー波長(λ
M)から短波長側にスペクトラムデータのパワー値をサーチし、パワー値がパワーしきい値(P
TH)を最初に下回る位置の一つ長波長側の位置を積分開始波長(λ
START)として求める。このとき、測定スペクトラムデータの最も短波長位置のパワー値がパワーしきい値(P
TH)を下回らない場合は、その位置を積分開始波長(λ
START)とする。
【0050】
積分終了波長(λ
END)は、現在のマーカー波長(λ
M)から長波長側にスペクトラムデータのパワー値をサーチし、パワー値がパワーしきい値(P
TH)を下回る位置の一つ短波長側の位置を積分終了波長(λ
END)として求める。このとき、測定スペクトラムデータの最も長波長位置のパワー値がパワーしきい値(PTH)を下回らない場合は、その位置を積分終了波長(λ
END)とする。
【0051】
すなわち、求めた積分波長範囲(λ
STARTとλ
END)は、現在のマーカー位置のレベル位置(P
M)を基準として、そこから相対パワー値(ΔP[dB])レベルが下がるまでのスペクトラムデータ範囲である。
【0052】
次に、求めた積分波長範囲(λ
STARTとλ
END)で、前述の(2)式により積分パワー(P)を求める。
【0053】
以上の演算により、マーカー位置のレベル値を基準として、そこから積分範囲パラメータである相対パワー値(ΔP[dB])から求めるパワーしきい値(P
TH)を上回るレベル範囲内のスペクトラムの積分パワー(P)を求めることができる。
【0054】
また、積分範囲を指定する別の方法として、積分波長範囲(λ
STARTとλ
END)を求めずに、
(3)式により求めたパワーしきい値(P
TH[dBm])を用いて、スペクトラムデータにおいて、パワーしきい値(P
TH[dBm])を越えるスペクトラムデータを積分対象データとする方法もある。
【0055】
図6は、広帯域光源のパワー測定画面例である。この波長広帯域光源のスペクトラムはスペクトラム測定装置の光学分解能より広いため、マーカーによりスペクトラムのピークレベルを求める方法ではパワー値を求めることはできず、スペクトラムデータを積分して求める必要がある。
【0056】
図6のスペクトラムは波長の異なる2つの光源を合わせたスペクトラムであることから、スペクトラムのピークが2つある。ここで、それぞれの光源のパワーを測定する場合を例に説明する。
【0057】
それぞれの光源のパワーを測定するということは、スペクトラムのピーク一つ分の積分パワーを計算することとなる。従来の光スペクトラム測定装置では、スペクトラムのパワー積分演算を行う範囲の始点/終点をラインマーカーなどで指定しなければ、ピーク一つ分の積分パワーを求めることができない。
【0058】
また、本発明に基づきマーカー波長(λ
M)と積分範囲パラメータ(Δλ)で積分波長範囲を指定して積分パワーPを求める方法においても、
図6のように積分範囲がマーカー位置を中心に左右対称とならない場合には、積分範囲を適切に指定できない場合がある。
【0059】
ところが、
図5に示す本発明の手順によれば、マーカー位置のレベル値を基準として、そこから積分範囲パラメータである相対パワー値(ΔP[dB])下のパワー値までの範囲内で、スペクトラムの積分パワー(P)を求めることができる。
【0060】
図6のスペクトラムでは、相対パワー値(ΔP[dB])を50dBとしている。そのため、マーカー位置を基準として、そこから50dB下がった位置までのスペクトラムを積分範囲として積分パワーを求めることができる。
【0061】
このように、
図5に示す本発明の手順によれば、マーカー位置を中心に左右対称ではないスペクトラムの場合であっても、スペクトラムのピーク一つ分を積分範囲として指定して、積分パワー計算をすることができる。
【0062】
以上説明したように、本発明によれば、指定波長を中心とした積分範囲内の積分パワーを簡単な操作で測定でき、変調光などの広がりのあるスペクトラムでも積分パワーを容易に測定できる光測定装置が実現できる。
【符号の説明】
【0063】
1 被測定光源
2 光学部
4 表示部
5 マーカー設定部
6 演算部(積分パワー)