【文献】
M.Miyata and Y.Hayafuji,Theoretical Study of Acceptor-Donor Complexes in 4H-SiC,Applied Physics Express,日本,The Japan Society of Applied Physics,2008年10月24日,Vol.1, Number 11,[111401-1]-[111401-3]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。また、以下の説明において、n
+、n、n
−及びp
+、p、p
−の表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、n
+はnよりもn形の不純物濃度が相対的に高く、n
−はnよりもn形の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p
+はpよりもp形の不純物濃度が相対的に高く、p
−はpよりもp形の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、本実施形態では、第1導電形をn形、第2導電形をp形として説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の構成を例示する模式図である。
図1(a)には本実施形態に係る半導体装置110の模式的断面図が表される。
図1(b)には本実施形態に係る半導体装置110の模式的平面図が表される。
図1(a)には、
図1(b)に示すA−A線の模式的断面図が表される。
図1(a)及び(b)に表したように、半導体装置110は、第1半導体領域10と、第2半導体領域20と、第3半導体領域30と、第1電極91と、を備える。第1半導体領域10、第2半導体領域20及び第3半導体領域30のそれぞれは、例えば炭化珪素(SiC)を含む。半導体装置110は、例えば、SiCのショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)である。
【0009】
第1半導体領域10は、素子領域AAを有する。第1半導体領域10において、素子領域AAの外側は終端領域TAである。第1半導体領域10の導電形は、第1導電形(n形)である。第1半導体領域10は、SBDのドリフト領域である。第1半導体領域10は、例えば第1面10aと、第1面10aとは反対側の第2面10bと、を有する。
【0010】
第2半導体領域20は、第1半導体領域10の上に設けられる。本実施形態において、第1半導体領域10と第2半導体領域20とを結ぶ方向をZ方向、Z方向と直交する方向の1つをX方向、Z方向及びX方向と直交する方向をY方向とする。また、第1半導体領域10から第2半導体領域20に向かう方向を上(上側)、その反対を下(下側)ということにする。
【0011】
第2半導体領域20は、素子領域Aの外側に設けられる。第2半導体領域20の導電形は、第2導電形(p形)である。第2半導体領域20は、第1半導体領域10の第1面10aに沿って、例えば素子領域AAの外側を囲むように設けられる。第2半導体領域20は、リサーフ構造のリサーフ層である。
【0012】
第3半導体領域30は、第2半導体領域20の上に設けられる。第3半導体領域30の導電形は、第2導電形(p
+形)である。第3半導体領域30は、第1面10aに沿って、例えば素子領域AAの外側を囲むように設けられる。第3半導体領域30は、リサーフ構造のコンタクト層である。
【0013】
第1電極91は、第1半導体領域10、第2半導体領域20及び前記第3半導体領域30の上に設けられる。第1電極91は、SBDの例えばアノード電極である。第1電極91は、第1半導体領域10、第2半導体領域20及び第3半導体領域30のそれぞれと接する。第1電極91は、第1半導体領域10とショットキー接合される。第1電極91は、第2半導体領域20及び第3半導体領域30のそれぞれとオーミック接触する。本実施形態において、オーミック接触には、ショットキー接合していない接触が含まれる。
【0014】
第1電極91には、例えばチタン(Ti)が用いられる。第1電極91と第3半導体領域30との間には、コンタクト電極35が設けられていてもよい。コンタクト電極35には、例えば、ニッケル(Ni)が用いられる。コンタクト電極35によって、第1電極91は、第3半導体領域30との間で良好なオーミック接触を得る。
【0015】
半導体装置110は、第2電極92及び半導体部5を含む。半導体部5は、第2電極92と第1半導体領域10との間に設けられる。半導体部5は、例えばSiCの基板である。半導体装置110において半導体部5は、第1導電形(n
+形である)。
【0016】
第2電極92は、半導体部5の裏面5bに接するように形成される。第2電極92は、SBDの例えばカソード電極である。第2電極92には、例えばNiが用いられる。第2電極92は、半導体部5とオーミック接触している。
【0017】
本実施形態に係る半導体装置110において、第3半導体領域30は、第1導電形(n形)の不純物と、第2導電形(p形)の不純物と、を含む。第3半導体領域30に含まれる第1導電形の不純物の量をD1、第2導電形の不純物の量をD2とした場合、D2/D1は、1よりも大きく3よりも小さい。すなわち、1<D2/D1<3である。
【0018】
第3半導体領域30における第1導電形の不純物の量D1と、第2導電形の不純物の量D2との関係が上記を満たすことで、第3半導体領域30と電極(第1電極91またはコンタクト電極35)とのコンタクト抵抗の低減が達成される。これにより、半導体装置110の安定した耐圧特性が得られる。
【0019】
次に、半導体装置110の具体例について説明する。
半導体部5には、例えば六方晶のSiC(例えば、4H−SiC)が含まれる。半導体部5は、表面5a及び裏面5bを有する。半導体部5は、例えば昇華法によって作製されたSiCのバルク基板である。
【0020】
半導体部5の表面5aは、六方晶のSiC面である(0001)面に対して0度よりも大きく8度以下で傾斜している。例えば、半導体部5は、2度オフ基板、4度オフ基板及び8度オフ基板などのオフ基板である。
【0021】
半導体部5には、n形の不純物(例えば、窒素(N))がドーピングされている。半導体部5の不純物濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上1×10
20cm
−3以下である。本実施形態では、約5×10
18cm
−3である。
【0022】
第1半導体領域10は、n形のSiCを有する。第1半導体領域10は、半導体部5の表面5a上に例えばエピタキシャル成長によって形成される。第1半導体領域10は、半導体部5と同等の結晶構造を有する。
【0023】
第1半導体領域10の厚さは、半導体装置110の耐圧特性およびその他の特性の設計により決定される。第1半導体領域10の厚さは、例えば200マイクロメートル(μm)程度以下である。
【0024】
第1半導体領域10にはn形の不純物(例えば、N)が含まれる。第1半導体領域10の不純物濃度は、半導体部5の不純物濃度よりも低い。第1半導体領域10の不純物濃度は、例えば5×10
14cm
−3以上1×10
17cm
−3以下である。
【0025】
第2半導体領域20の厚さは、例えば0.1μm以上2μm以下程度である。第2半導体領域20は、例えば第1電極91の周縁に沿って配置される。
【0026】
第2半導体領域20は、p形のSiCを有する。第2半導体領域20にはp形の不純物(例えば、アルミニウム(Al)やボロン(B))が含まれる。第2半導体領域20の不純物濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上1×10
21cm
−3以下である。第2半導体領域20は、第1半導体領域10とpn接合する。
【0027】
第3半導体領域30は、p形のSiCを有する。第3半導体領域30には、p形の不純物として例えばAlが含まれ、n形の不純物として例えばNが含まれる。第3半導体領域30に含まれるp形の不純物の濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上である。n形の不純物の濃度は、p形の不純物の濃度に対して1/3よりも高く、1よりも低い。
【0028】
図2(a)及び(b)は、不純物濃度について例示する模式図である。
図2(a)には、半導体装置110の模式的断面図が表される。説明の都合上、
図2(a)では、半導体装置110の半分の断面が表される。
図2(b)には、半導体領域の不純物濃度が表される。
図2(b)に示す横軸は不純物の量、縦軸は半導体領域の位置を表している。
図2(b)に示す縦軸は、
図2(a)に示すB−B線上での位置を表す。
【0029】
図2(a)及び(b)に表したように、位置p0からp1は、第1半導体領域10を表している。第1半導体領域10にはn形の不純物Ndが含まれる。第1半導体領域10のn形の不純物Ndの量はD0である。
【0030】
位置p1からp2は、第3半導体領域30を表している。第3半導体領域30には、n形の不純物Ndと、p形の不純物Naとが含まれる。第3半導体領域30のn形の不純物Ndの量はD1であり、p形の不純物Naの量はD2である。第3半導体領域30のn形の不純物Ndの量D1は、第1半導体領域10のn形の不純物Ndの量D0よりも多い。D1に対するD2は、1よりも大きく3よりも小さい。
【0031】
次に、半導体装置110の動作について説明する。
半導体装置110の第2電極92に対して第1電極91が正になるよう(順方向)電圧を印加すると、第1電極91からショットキー障壁を越えた電子が第1半導体領域10及び半導体部5を介して第2電極92に流れる。
【0032】
一方、半導体装置110の第2電極92に対して第1電極91が負になるよう(逆方向)電圧を印加すると、電子は第1電極91と第1半導体領域10との間のショットキー障壁を容易に超えることができず、電流の流れは抑制される。
【0033】
半導体装置110では、第3半導体領域30と第1電極91との間のコンタクト抵抗が低減される。したがって、逆方向の電圧が印加された際、リサーフ領域である第2半導体領域20の全体の電位を均一化しやすい。このため、半導体装置110の中央部分(素子領域AA)から周辺部分(終端領域TA)にかけ電界が徐々に緩和される。すなわち、終端領域TAにおいて局所的な電界集中が緩和される。これにより、半導体装置110の安定した耐圧特性が得られる。
【0034】
図3は、不純物の量とシート抵抗との関係を例示する図である。
図3に示す横軸は、第3半導体領域30における第1導電形の不純物(N)の量と、第2導電形の不純物(Al)の量との比率(以下、[Al]/[N]と表す。)を表す。
図3に示す縦軸は、第3半導体領域30の室温でのシート抵抗(Ω/□)を表す。
図3には、第3半導体領域30における[Al]/[N]を変化させた場合のシート抵抗をシミュレーション計算した結果が表される。ここでは、第3半導体領域30はSiCを含み、Alの量は2×10
20cm
−3として計算している。参考として、
図3の横軸には、Nの量をn×10
20/cm
−3とした場合のnの値、及びNの量/Alの量(%)(以下、N量/Al量と表す。)が表される。ここで、シート抵抗とは、正方形薄膜の一辺から対辺までの電気抵抗のことをいう。シート抵抗は、例えば、日本工業規格(JIS C 2525)に定められた方法によって測定される。
【0035】
図3に表したように、[Al]/[N]が1を超えると(N量/Al量が100%未満)、第3半導体領域30のシート抵抗が低下する。第3半導体領域30のシート抵抗は、[Al]/[N]が2(N量/Al量が50%)のときに最も低くなる。シート抵抗は、[Al]/[N]が約1.05以上3未満(N量/Al量が33%よりも大きく約95%以下)で1×10
4Ω/□以下になる。シート抵抗は、[Al]/[N]が約1.4以上2.5以下(N量/Al量が約40%以上67%以下)で1×10
3Ω/□以下になる。シート抵抗は、[Al]/[N]が約1.67以上2.22以下(N量/Al量が45%以上60%以下)で3×10
2Ω/□以下になる。シート抵抗は、[Al]/[N]が約1.79以上2.13以下(N量/Al量が47%以上56%以下)で1×10
2Ω/□以下になる。
【0036】
半導体領域に、第1導電形の不純物と第2導電形の不純物とが共ドープされた場合、逆極のドーパントの相互作用によって浅い準位が形成される。このため、第1導電形の不純物の量と、第2導電形の不純物の量とのバランスによって、第1導電形及び第2導電形のいずれの半導体領域であっても浅い準位を形成し、シート抵抗の低減を図る。
【0037】
ここで、n形及びp形のうち、特にp形では浅い準位の形成が困難である。したがって、p形の半導体領域を形成する際、p形の不純物とn形の不純物とを共ドープし、p形の不純物の量/n形の不純物の量を1よりも大きく3よりも小さくする。これにより、浅い準位の形成によってp形の半導体領域のシート抵抗の低減が達成される。
【0038】
例えば、SiCに共ドープされたAl及びNのそれぞれが独立している場合、Alによって深い準位が形成される。このAl及びNがペアを構成し、さらに2つのAl及び1つのNによって3量体が形成されると、Alの深い準位がNによって浅い準位に変換される。例えば、SiCのCサイトに置換されたN:SiCのSiサイトに置換されたAl=1:2とすると、非常に浅いp形準位が形成される。Alのアクセプター準位は160meV〜200meV程度である。SiCに上記の割合でAl及びNを共ドープすると、アクセプター準位は60meV〜80meV程度まで低減する。
【0039】
なお、SiCにn形及びp形の不純物を共ドープする場合、n形の不純物をCサイトに置換する必要がある。したがって、ドナーとしてはNを用いることが望ましい。p形の不純物としては、例えばボロン(B)、Al及びガリウム(Ga)よりなる群から選択された少なくとも1つを用いることが望ましい。
【0040】
第3半導体領域30における第1導電形の不純物の濃度及び第2導電形の不純物の濃度は、例えばSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)によって検出される。
図4(a)及び(b)は、不純物濃度を例示する図である。
図4(a)及び(b)において、横軸は深さ、縦軸は不純物濃度を表している。
図4(a)には、第3半導体領域のn形の不純物が少ない場合のSIMSの結果が例示される。
図4(b)には、第3半導体領域のn形の不純物が多い場合のSIMSの結果が例示される。
【0041】
図4(a)に表した例では、第3半導体領域30からn形の不純物(N)とp形の不純物(Al)とが検出されているが、n形の不純物(N)の濃度が第1半導体領域10のn形の不純物(N)の濃度とほぼ等しくなっている。
【0042】
図4(b)に表した例においても、第3半導体領域30からn形の不純物(N)とp形の不純物(Al)とが検出されているが、n形の不純物(N)の濃度が
第1半導体領域10のn形の不純物(N)の濃度よりも高い。
図4(b)に表した例では、第3半導体領域30におけるp形の不純物(Al)の濃度/n形の不純物(N)の濃度が、1よりも大きく3よりも小さくなっている。
【0043】
このような半導体装置110では、耐圧構造を構成する第3半導体領域30のシート抵抗が低減される。したがって、半導体装置110の安定した耐圧特性が得られる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図5(a)及び(b)は、第2の実施形態に係る半導体装置を例示する図である。
図5(a)には、第2の実施形態に係る半導体装置120の模式的断面図が表される。
図5(b)には、半導体装置120における電界分布が表される。
【0045】
図5(a)に表したように、半導体装置120は、第2半導体領域20の外側であって素子領域AAを囲むように設けられた第4半導体領域40を含む。第4半導体領域40は、ガードリングである。半導体装置120は、ガードリングを備えたSBDである。
【0046】
第4半導体領域40は、第2導電形の領域である。第4半導体領域40は複数設けられていてもよい。
図5(a)に表した半導体装置120では、例えば2つの第4半導体領域41、42が設けられる。複数の第4半導体領域41、42は、互いに離間して設けられる。第4半導体領域41は、第2半導体領域20の外側を囲むように設けられ、第4半導体領域42は、第4半導体領域41の外側を囲むように設けられる。
【0047】
第4半導体領域40には、第1導電形の不純物と第2導電形の不純物とが共ドープされていてもよい。また、第2導電形の不純物の量をD4、第1導電形の不純物の量をD3とした場合、1<D4/D3<3を満たすことが望ましい。また、複数の第4半導体領域41、42が設けられた場合、複数の第4半導体領域41、42のうち少なくとも1つについて、1<D4/D3<3を満たすようにしてもよい。これにより、第4半導体領域40、41及び42のシート抵抗が低減される。
【0048】
図5(b)には、半導体装置120に逆電圧が印加された場合の電界分布が表される。
図5(b)に示す横軸は半導体装置120のX方向の位置、縦軸は電界強度を表している。半導体装置120の製造において、第1電極91の位置ずれが発生すると、リサーフ構造を構成する第2半導体領域20やガードリングを構成する第4半導体領域40の電界のバランスにずれが生じやすい。電界分布E2は、第3半導体領域30を備えていない半導体装置の電界分布である。電界分布E2では、一方側のガードリング付近での電界分布のアンバランスが見られる。
【0049】
半導体装置120のように、第3半導体領域30や第4半導体領域40、41及び42のシート抵抗が低減されると、第1電極91の位置ずれが発生した場合でも電界のバランスにずれが発生し難くなる。電界分布E1は、第3半導体領域30を備えた半導体装置120の電界分布である。電界分布E1では、電界分布のアンバランスは見られない。したがって、半導体装置120では、終端領域TAでの耐圧が向上する。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図6は、第3の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図6には、第3の実施形態に係る半導体装置130の一部の模式的断面図が表される。半導体装置130は、第1半導体領域10の上であって素子領域AA内に設けられた第5半導体領域50を含む。第5半導体領域50は、第2導電形の領域である。第5半導体領域50は第2半導体領域20と離間して設けられる。第5半導体領域50は、第1電極91と接する。このような半導体装置130は、例えばMPS(Merged PIN Schottky Rectifier)である。
【0051】
第5半導体領域50は、複数設けられていてもよい。複数の第5半導体領域50は、互いに離間して設けられる。第5半導体領域50は、例えばY方向に延在する。第5半導体領域50は、XY平面内に島状に設けられていてもよい。
【0052】
これにより、第1電極91に逆方向電圧が印加された際、第5半導体領域50から第2半導体領域20の終端領域TA側まで空乏層が伸び、逆方向リーク電流が抑制される。したがって、半導体装置130の耐圧が向上する。
【0053】
図7は、第3の実施形態の他の例に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図7には、半導体装置131の一部の模式的断面図が表される。半導体装置131は、半導体装置130の構成に加え、第4半導体領域40を備える。第4半導体領域40は複数設けられていてもよい。
図7に表した例では、2つの第4半導体領域41、42が設けられる。第4半導体領域40、41及び42と第1電極91との間には、絶縁膜15が設けられる。
【0054】
このような半導体装置131によれば、第2半導体領域20の外側に設けられた第4半導体領域40、41及び42によって複数本のガードリングが設けられた構成になり、半導体装置131の耐圧が向上する。
【0055】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図8は、第4の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図8に表したように、第4の実施形態に係る半導体装置140は、第1半導体領域10と、第1電極91との間に設けられた第6半導体領域60を備える。第6半導体領域60は、第2導電形の領域である。半導体装置140は、例えばPNダイオードである。
【0056】
第6半導体領域60の導電形は、例えばp
+形である。第6半導体領域60は、例えばSiCを含む。第6半導体領域60は、第1半導体領域10の上に例えばエピタキシャル成長によって形成される。
【0057】
第6半導体領域60の厚さは、例えば数μm程度である。第6半導体領域60にはp形の不純物がドーピングされており、その不純物濃度は、例えば1×10
16cm
−3以上5×10
19cm
−3以下である。
【0058】
半導体装置140では、第6半導体領域60と第1半導体領域10とでpn接合が構成される。第1電極91は、第6半導体領域60とオーミック接触している。
【0059】
半導体装置140において、第1半導体領域10をn
−形、半導体部5をn
+形にしてもよい。この場合、半導体装置140は、PiNダイオードである。PiNダイオードにおいて、第1半導体領域10は第7半導体領域70である。
【0060】
次に、半導体装置140の動作について説明する。
先ず、半導体装置140の第2電極92に対して第1電極91が正になるよう(順方向)電圧を印加した場合の動作を説明する。順方向電圧を印加した場合、第6半導体領域60と、第1半導体領域10と、の間でビルトインポテンシャルを超えた電子及びホールが流れる。これにより、半導体装置140に電流が流れる(順方向動作)。
【0061】
次に、半導体装置140の第2電極92に対して第1電極91が負になるよう(逆方向)電圧を印加した場合の動作を説明する。逆方向電圧を印加した場合、第6半導体領域60と第1半導体領域10との間に空乏層が広がり、半導体装置140に電流はほとんど流れない(逆方向動作)。
【0062】
半導体装置140では、第3半導体領域30と第1電極91との間のコンタクト抵抗が低いため、第2半導体領域20の全体にわたり電位の分布が均一化する。これにより、逆方向動作の際の耐圧が向上する。
【0063】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図9は、第5の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図9に表したように、第5の実施形態に係る半導体装置150は、第1半導体領域10と第1電極91との間に設けられた絶縁膜95を含む。半導体装置150は、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0064】
半導体装置150は、第2半導体領域20の上に設けられた第8半導体領域80と、第8半導体領域80と接する第3電極93とを含む。第8半導体領域80の導電形は第1導電形である。第3電極93は、第2半導体領域20、第3半導体領域30及び第8半導体領域80と接する。
【0065】
第8半導体領域80は、MOSFETの例えばソース領域である。第3電極93は、MOSFETの例えばソース電極である。第1電極91は、MOSFETのゲート電極である。第2電極92は、MOSFETの例えばドレイン電極である。半導体装置150では、第8半導体領域80と、第1半導体領域10との間の第2半導体領域20がチャネル形成領域である。
【0066】
次に、半導体装置150の動作について説明する。
第2電極92に、第3電極93に対して正の電圧が印加された状態で、第1電極91に閾値以上の電圧が印加されると、第2半導体領域20における絶縁膜95との界面付近に反転層(チャネル)が形成される。これにより、半導体装置150はオン状態になり、第2電極92から第3電極93へ電流が流れる。
【0067】
一方、第1電極91に印加される電圧が閾値よりも小さいと、チャネルが消失する。これにより、半導体装置150はオフ状態になって、第2電極92から第3電極93へ流れる電流が遮断される。
【0068】
半導体装置150では、第3半導体領域30と第3電極93との間のコンタクト抵抗が低いため、逆方向動作の際の耐圧が向上する。
【0069】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図10は、第6の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図10に表したように、第6の実施形態に係る半導体装置160は、第1半導体領域10と第2電極92との間に設けられた半導体部5pを含む。半導体装置160において半導体部5p以外の構成は半導体装置150と同様である。半導体装置160は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0070】
半導体部5pの導電形は第2導電形である。第8半導体領域80は、IGBTのエミッタ領域である。第2半導体領域20は、IGBTのベース領域である。第3電極93は、IGBTの例えばエミッタ電極である。第1電極91は、IGBTのゲート電極である。第2電極92は、IGBTの例えばコレクタ電極である。
【0071】
次に、半導体装置160の動作について説明する。
第2電極92に、第3電極93に対して正の電圧が印加された状態で、第1電極91に閾値以上の電圧が印加されると、第2半導体領域20における絶縁膜95との界面付近に反転層(チャネル)が形成される。これにより、電子が第8半導体領域80からチャネルを介して第2半導体領域20に注入され、オン状態になる。このときさらに、第2電極92から正孔が第1半導体領域10に注入される。第1半導体領域10に注入された正孔は、第2半導体領域20を通って第3電極93へ流れる。半導体装置160においては、オン状態のとき、正孔が第2電極92から第1半導体領域10に注入され、伝導度変調が生じて第1半導体領域10の抵抗が低減する。
【0072】
一方、第1電極91に印加される電圧が閾値よりも小さいと、チャネルが消失する。これにより、半導体装置160はオフ状態になって、第2電極92から第3電極93へ流れる電流が遮断される。
【0073】
半導体装置160では、第3半導体領域30と第3電極93との間のコンタクト抵抗が低いため、オフ状態での耐圧が向上する。
【0074】
以上説明したように、実施形態に係る半導体装置によれば、耐圧構造のコンタクト抵抗の低減を図り、安定した耐圧特性を得ることができる。
【0075】
なお、上記に本実施形態およびその変形例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施の形態またはその変形例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施の形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0076】
例えば、前述の各実施形態および各変形例においては、第1の導電形をn形、第2の導電形をp形として説明したが、本発明は第1の導電形をp形、第2の導電形をn形としても実施可能である。また、前述の各実施形態では、半導体材料としてSiCを適用する例を説明したが、半導体材料はSiCに限定されない。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。