(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの本実施形態にのみ限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0014】
≪ポリアセタール樹脂組成物≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部と、結晶質珪酸カルシウム水和物(B)0.001〜1.0質量部と、を含む。
【0015】
[ポリアセタール樹脂(A)]
本実施形態で用いるポリアセタール樹脂(A)は、公知のポリアセタール樹脂であってもよく、特に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態で用いるポリアセタール樹脂(A)としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ポリアセタールホモポリマーやポリアセタールコポリマーが挙げられる。ポリアセタールホモポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるポリアセタールホモポリマーが代表例として挙げられる。また、ポリアセタールコポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとを共重合させて得られるポリアセタールコポリマーが代表例として挙げられる。ホルムアルデヒドの環状オリゴマーとしては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等が挙げられる。環状エーテル及び環状ホルマールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等が挙げられる。
【0017】
さらに、ポリアセタールコポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマーや、多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーも用いることができる。
【0018】
またさらに、ポリアセタールホモポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、両末端又は片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーも用いることができる。また、ポリアセタールコポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、同じく両末端又は片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーも用いることができる。
【0019】
以上のように、本実施形態においては、ポリアセタール樹脂(A)として、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーのいずれを用いてもよく、特に限定するものではない。これらのポリアセタール樹脂(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0020】
[結晶質珪酸カルシウム水和物(B)]
本実施形態で用いる結晶質珪酸カルシウム水和物(B)としては、特に限定されないが、例えば、トバモライト系、ワラストナイト系、ジャイロライト系等が挙げられる。具体的には、結晶質珪酸カルシウム水和物(B)としては、特に限定されないが、例えば、トバモライト、ゾノライトとが挙げられる。結晶質珪酸カルシウム水和物(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。結晶質珪酸カルシウム水和物(B)としては、特にトバモライトが入手の容易さの観点から好ましい。本実施形態において、トバモライトとしては、周知のケイ酸カルシウム水和物を用いることができる。トバモライトの合成方法は、特に限定されることなく、例えば、ケイ酸質原料と石灰質原料とを水中に分散させた後、水熱合成する方法等、周知の方法が用いられる。
【0021】
トバモライトの構造式は、特に限定されないが、一例を挙げると、(5CaO・6SiO
2・0〜4H
2O)で表される。
【0022】
結晶質珪酸カルシウム水和物(B)の形状は、特に限定されないが、例えば、層状、繊維状、短冊状、繊維束、はく状等が挙げられる。結晶質珪酸カルシウム水和物(B)は、好ましくは層状構造及び/又はカードハウス構造であるが、繊維状、繊維束、短冊状及びはく状からなる群より選択される1種の構造をさらに併用してもよい。
【0023】
結晶質珪酸カルシウム水和物(B)の平均粒子径は、十分な耐熱性及び剛性付与の観点から0.01μm以上が好ましく、十分な分散性付与の観点から100.0μm以下であることが好ましい。結晶質珪酸カルシウム水和物(B)の平均粒子径は、より好ましくは0.05〜80μmであり、さらに好ましくは0.1〜50μmである。
【0024】
なお、本実施形態において、結晶質珪酸カルシウム水和物(B)の平均粒子径は、レーザー光回折測定法により測定して得られる粒度分布の中心粒径D50%である。
【0025】
結晶質珪酸カルシウム水和物(B)の平均粒子径を前記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、容器回転式圧縮せん断型ミル法、及び磁器乳鉢で粉砕する方法等が挙げられる。
【0026】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)に、特定量の結晶質珪酸カルシウム水和物(B)を含有させることにより、効果的に機械的特性を維持し長期間の熱エージング後の機械的特性を向上させ、且つ熱エージング後の変色を少なくさせることが可能となる。
【0027】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、結晶質珪酸カルシウム水和物(B)は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜1.0質量部含有されており、さらには、0.01〜0.5質量部含有されていることが好ましい。これにより、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂本来の熱安定性や剛性、靭性等の機械的特性を維持し、長期間の熱エージング後の機械的特性に優れ、且つ熱エージング後の変色が少ないという効果を奏する。
【0028】
<その他の材料>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、上記結晶質珪酸カルシウム水和物(B)とともに、他の無機充填剤、有機充填剤、並びに有機化剤で処理した無機充填剤粉体を用いてもよい。
【0029】
他の無機充填剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、タルク、ガラス繊維、炭素繊維、窒化硼素、ハイドロタルサイト、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等が挙げられる。
【0030】
有機充填剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、セルロース、ポリウレタン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0031】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、さらに他の特性を付与するため、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などの安定剤、帯電防止剤、離型剤、染顔料、着色剤、あるいはその他の樹脂を添加してもよい。
【0032】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、用途に応じて適当な添加剤を配合することにより、長期耐熱エージング性をより一層向上させることができる。好適な具体的としては、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、酸化防止剤及び/又はギ酸捕捉剤を0.01〜5質量部含有させることにより、さらに長期耐熱エージング性を向上させたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。また、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体若しくは化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤及び離型(潤滑)剤からなる群より選択される少なくとも1種を0.01〜10質量部含有させることにより、長期耐熱エージング性をより一層向上させたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0033】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4 −ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4− ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル −5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物)
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物の例としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの重合体(例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等)を挙げることができる。また他に、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。その他にアミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物を挙げることができる。
【0035】
アミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2,4 −ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N− フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N, N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6− ブチル−sym−トリアジン等が挙げられる。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンを挙げることができる。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの縮合物を挙げることができる。尿素誘導体の例としては、特に限定されないが、例えば、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物を挙げることができる。N−置換尿素の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アーリル置換尿素を挙げることができる。尿素縮合体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、尿素とホルムアルデヒドとの縮合体等が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アラントイン等が挙げられる。イミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドを挙げることができる。ヒドラジン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ヒドラジド化合物を挙げることができる。ヒドラジド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸ジヒドラジドを挙げることができ、更に具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げることができる。
【0036】
これらのホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む重合体又化合物は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(ギ酸捕捉剤)
ギ酸捕捉剤としては、特に限定されないが、例えば、上記のアミノ置換トリアジン化合物やアミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(例えばメラミンとホルムアルデヒドとの縮合物等)を挙げることができる。他のギ酸捕捉剤としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機 酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。これらの具体例としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウムなどの金属の水酸化物、上記金属の炭酸塩、上記金属のリン酸塩、上記金属の珪酸塩、上記金属のホウ酸塩、上記金属のカルボン酸塩、さらには上記金属の層状複水酸化物を挙げることができる。
【0038】
上記金属のカルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、また、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩の具体的な例としては、特に限定されないが、例えば、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムが挙げられ、中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。
【0039】
上記金属の層状複水酸化物としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表されるハイドロタルサイト類を挙げることができる。
〔(M
2+)
1-X(M
3+)
X(OH)
2〕
X+〔(A
n-)
x/n・mH
2O〕
X- (1)
〔式(1)中、M
2+は2価金属、M
3+は3価金属、A
n-はn価(nは1以上の整数)のアニオン表わし、Xは、0<X≦0.33の範囲にあり、mは正の数である。〕
【0040】
一般式(1)において、M
2+の例としては、特に限定されないが、例えば、Mg
2+、Mn
2+、Fe
2+、Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、Zn
2+等が挙げられ、M
3+の例としては、特に限定されないが、例えば、Al
3+、Fe
3+、Cr
3+、Co
3+、In
3+等が挙げられ、A
n-の例としては、特に限定されないが、例えば、OH
-、F
-、Cl
-、Br
-、NO
3-、CO
32-、SO
42-、Fe(CN)
63-、CH
3COO
-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等が挙げられる。特に好ましい例としてはCO
32-、OH
-が挙げられる。具体例としては、特に限定されないが、例えば、Mg
0.75Al
0.25(OH)
2(CO
3)
0.125・0.5H
2Oで示される天然ハイドロタルサイト、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3・3.5H
2O、Mg
4.3Al
2(OH)
12.6CO
3等で示される合成ハイドロタルサイトを挙げることができる。
【0041】
これらのギ酸捕捉剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(耐候(光)安定剤)
本実施形態で用いる耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上が好ましい。
【0043】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、特に限定されないが、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス (α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、特に限定されないが、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル− 2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2− エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。好ましくは2−[2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、特に限定されないが、例えば、N,N',N'',N'''−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N'−ビス(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3―テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6,テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの縮合物、デカン2酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物などが挙げられる。好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9− [2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(離型(潤滑)剤)
離型(潤滑)剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール、脂肪酸及びそれらのエステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーン等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。
【0046】
(その他の添加剤)
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。このような添加剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、摺動剤、顔料などを挙げることができる。
【0047】
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で示されるオレフィン系不飽和化合物のホモ重合体、又は共重合体、あるいはその変性体が挙げられる。
【化1】
〔式(2)中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、2〜5個の炭素原子を含むアルキル化カルボキシ基、2〜5個の炭素原子を有するアシルオキシ基、又はビニル基を表わす。〕
【0048】
ポリオレフィン樹脂の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0049】
これら重合体の変性体としては、特に限定されないが、例えば、他のビニル化合物の一種以上をグラフトさせたグラフト共重合体が挙げられる。これらの中で、ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体が好ましい。
【0050】
これらのポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは10,000〜300,000の範囲であり、より好ましくは10,000〜100,000であり、さらに好ましくは15,000〜80,000である。ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が10,000以上では、自材どうしの摩擦摩耗性が良好となり、ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量300,000以下であるとポリアセタール樹脂(A)との摩擦摩耗性が良好となる。
【0051】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、ポリオレフィン樹脂の配合割合は、ポリアセタール樹脂(A)と結晶質珪酸カルシウム水和物(B)との合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.2〜5質量部である。ポリオレフィン樹脂の配合割合が、0.1質量部以下では、摺動性の改良効果が不十分な場合があり、10質量部を超えると、成形品が剥離することがある。
【0052】
ポリオレフィン樹脂の配合割合0.1〜10質量部では、摺動性、衝撃性、剛性のバランスが取れ、表面外観性の良好な成形加工が可能となる。
【0053】
摺動剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコールと脂肪酸のエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、及びポリオキシアルキレングリコール化合物が挙げられる。
【0054】
アルコールと脂肪酸のエステルとしては、特に限定されないが、例えば、下記に示すアルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられる。アルコールは、1価アルコール、及び多価アルコールである。1価アルコールの例としては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、などの飽和又は不飽和アルコールが挙げられる。
【0055】
多価アルコールは、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、などが挙げられる。
【0056】
脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸、などが挙げられ、及びかかる成分を含有する天然に存在する脂肪酸又はこれらの混合物なども挙げられる。これらの脂肪酸はヒドロキシ基で置換されていてもよい。これら、アルコールと脂肪酸とのエステルの中では、摩擦及び摩耗性能の改良の観点から、それぞれ炭素数10以上の脂肪酸とアルコールとのエステルが好ましく、炭素数12以上の脂肪酸と炭素数10以上のアルコールとのエステルがより好ましく、炭素数12〜30の脂肪酸と炭素数10〜20のアルコールとのエステルがさらに好ましい。
【0057】
アルコールとジカルボン酸とのエステルは、特に限定されないが、例えば、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、などの飽和、又は不飽和の一級アルコールとシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、などのジカルボン酸とのモノエステル、ジエステル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
これらのアルコールとジカルボン酸とのエステルの中では、炭素数10以上のアルコールとジカルボン酸とのエステルが好ましい。ポリオキシアルキレングリコール化合物としては、特に限定されないが、例えば、以下の3種類の化合物が挙げられる。第1のグループの化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールをモノマーとする重縮合物が挙げられる。具体例としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロックポリマーなどが挙げられる。これらの重合度の好ましい範囲は5〜1,000、より好ましい範囲は10〜500である。第2のグループは、第1のグループの化合物と脂肪族アルコールとのエーテル化物である。具体例としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜50)、ポリエチレングリコールセチルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜50)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合度2〜100)、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合度4〜50)などが挙げられる。第3のグループの化合物は、第1のグループの化合物と高級脂肪酸とのエステル化物である。具体例としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート(エチレンオキサイド重合度2〜30)、ポリエチレングリコールモノステアレート(エチレンオキサイド重合度2〜50)、ポリエチレングリコールモノオレート(エチレンオキサイド重合度2〜50)などが挙げられる。
【0059】
顔料としては、特に限定されないが、例えば、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料とは樹脂の着色用として一般的に使用されているものを言う。無機系顔料としては、特に限定されないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。有機系顔料としては、特に限定されないが、例えば、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料が挙げられる。
【0060】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、顔料の添加割合は色調により大幅に変わるため明確にする事は難しいが一般的には、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0061】
≪ポリアセタール樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、例えば、上述した成分を混合し、押出機、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより得られる。
【0062】
特に、押出機を用いて上述した成分を混練する方法が、生産性の観点から好ましい。
【0063】
混練温度は、ベース樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては140〜260℃の範囲、好ましくは180〜230℃の範囲が多く使われる。
【0064】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を、大量に安定して製造するには、単軸又は二軸の押出機が好適に用いられる。
【0065】
≪成形品≫
本実施形態の成形品は、上述したポリアセタール樹脂組成物を含む。
【0066】
上述のポリアセタール樹脂組成物は、機械的バランスを有し、熱安定性、耐モールドデポジット性、熱エージング後の色調変化が少なく、又耐クリープ性能に優れる。従って、上述したポリアセタール樹脂組成物を含む本実施形態の成形品は特性に優れ、特に耐熱エージング性に優れるため様々な用途の成形品として使用することが可能である。
【0067】
例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、軸、軸受け及び、ガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるデジタルビデオカメラ、カメラ及び、デジタルカメラに代表されるカメラ、又はビデオ機器用部品、カセットプレイヤー、音楽、映像又は情報機器、通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品、に用いられる。また、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、ドア廻り部品、シートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類が好適に使用される。さらに、住宅設備機器に代表される工業部品として好適に使用できる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例よって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中の測定法は以下のとおりとした。
【0069】
<熱エージング後の機械的特性>
東芝機械(株)製IS−100GN射出成形機を用いて、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOの試験片を作製した。製作した試験片を、140℃設定したタバイ製ギアーオーブンに仕込み、熱エージング処理を行った。
【0070】
熱エージング処理後の試験片を、1週間おきに取り出し、23℃で50%の湿度に保たれた恒温室で、24時間放置した。放置後の試験片について下記条件にて引張速度及び引張伸度を測定した。測定値はn=3の平均値とした。
【0071】
引張試験機:(株)島津製作所製AG−IS
引張速度:50mm/分
【0072】
上記測定を継続して行い、試験片の引張強度が50MPaとなるまでの日数を求めた。該日数の長い方ほど熱エージング後の引張強度が良好であると判定した。
【0073】
また、引張伸度は、下記式より算出した。
【0074】
引張伸度(%)=破断までの伸び(mm)/チャック間(=115mm)×100
【0075】
上記測定を継続して行い、試験片の引張伸度が10%となるまでの日数を求めた。該日数の長い方ほど熱エージング後の引張伸度が良好であると判定した。
【0076】
<熱エージング後の色調特性>
上記機械的特性の測定の場合と同様にして東芝機械の射出成形機で製作した試験片を、140℃設定したタバイ製ギアーオーブンに仕込み、熱エージング処理を行った。
【0077】
なお、熱エージング処理前に、ミノルタ製ハンディカラーテスター(CR−200)を用いて、試験片を2枚重ねて、D65の光源にて試験片の黄度(b値)を測定した。
【0078】
30日間熱エージング処理した後の試験片を取出し、23℃で50%の湿度に保たれた恒温室に24時間放置した。放置後の試験片について上記と同様の方法で黄度(b値)を測定した。
【0079】
熱エージング後の黄度(b値)が小さく、かつ熱エージング前後の黄度(b値)の変化が少ないほど、熱エージング後の色調特性に優れると判断した。
【0080】
実施例及び比較例には下記成分を用いた。
【0081】
<ポリアセタール樹脂(A)>
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整した。該重合機に、トリオキサンを4kg/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/時間(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1molに対して0.20×10
-3molを連続的に添加した。さらに前記重合機に、重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10
-5molの割合で連続的に添加し重合を行なった。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過し、乾燥した。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行なった。不安定末端部分が分解除去されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出され、ペレタイズされた。得られたペレットをポリアセタール樹脂(A−1)として用いた。
【0082】
〈結晶質珪酸カルシウム水和物(B)〉
本実施例において、トバモライトは以下の方法で合成した。
【0083】
二酸化ケイ素(株式会社ニッチツ製 精製珪石粉ハイシリカF3)と酸化カルシウム(河合石灰工業株式会社製生石灰特号)とを水に分散させてスラリー状とした後、190℃の飽和水蒸気下で15時間オートクレーブ養生することによりトバモライトを得た。ここで、二酸化ケイ素に対する酸化カルシウムの混合比は、モル比で0.83であり、二酸化ケイ素と酸化カルシウムとを合わせた全固形分に対する水の混合比は、重量比で1.5とした。
【0084】
得られたトバモライトは、磁器乳鉢(株式会社石川工場製 石川式攪拌擂潰機16号)によって粉砕された。粉砕されたトバモライトを結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)として用いた。
【0085】
結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)の平均粒子径は、45μmであった。なお、本実施例において、結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)の平均粒子径は、レーザー光回折測定法により測定して得られる粒度分布の中心粒径D50%とした。
【0086】
また、結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)を、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、層状構造及び/又はカードハウス構造であることを確認した。
【0087】
〈ギ酸捕捉剤(C)〉
ジステアリン酸カルシウム(日東化成工業(株)社製、製品名:CS−2)をギ酸捕捉剤(C−1)として用いた。
【0088】
〈酸化防止剤(D)〉
トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、製品名:IRGANOX245)を酸化防止剤(D−1)として用いた。
【0089】
[実施例1]
上記の方法で得られたポリアセタール樹脂(A−1)100質量部と、酸化防止剤(D−1)0.3質量部と、上記の方法で得られた結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)0.005質量部とをヘンシェルミキサーを用いて均一に混合して混合物を得た。この混合物を、200℃に設定されたL/D=30の30mmベント付2軸押出機に、該押出機のメインフィード口からフィードし、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0090】
上記の得られたポリアセタール樹脂組成物の熱エージング後の機械的特性及び色調特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例2〜4]
結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)の配合割合を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例5]
上記の方法で得られたポリアセタール樹脂(A−1)100質量部と、酸化防止剤(D−1)0.3質量部と、上記の方法で得られた結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)0.01質量部と、ギ酸捕捉剤(C−1)0.1質量部とをヘンシェルミキサーを用いて均一に混合して混合物を得た。この混合物を、200℃に設定されたL/D=30の30mmベント付2軸押出機に、該押出機のメインフィード口からフィードし、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0093】
上記の得られたポリアセタール樹脂組成物の熱エージング後の機械的特性及び色調特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
【0094】
[実施例6〜8]
原料の配合割合を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例5と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
【0095】
[比較例1]
結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)を用いなかった以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
【0096】
[比較例2]
結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)を用いなかった以外は、実施例8と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
【0097】
[比較例3]
結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)の配合割合を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示した様に、実施例1〜4で得られたポリアセタール樹脂組成物は、比較例1で得られたポリアセタール樹脂組成物に比べ、結晶質珪酸カルシウム水和物(B−1)(トバモライト)の添加により、熱エージング後の引張強度及び引張伸度の維持日数が向上することが確認された。また、実施例5〜8で得られたポリアセタール樹脂組成物は、ギ酸捕捉剤(C−1)(ステアリン酸カルシウム)をさらに添加することにより、熱エージング後の引張強度及び引張伸度の維持日数がより向上することが確認された。また、色調特性について考察したところ、実施例1〜8で得られたポリアセタール樹脂組成物は、比較例2で得られたポリアセタール樹脂組成物と比べ、熱エージング後の黄度(b値)が良好であり、熱エージング前後の黄度(b値)の変化が少ないことが確認された。なお、比較例1で得られたポリアセタール樹脂組成物は、30日間熱エージング後の劣化が激しいため、黄度(b値)の測定が出来なかった。