特許第6242643号(P6242643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242643
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】通信制御方法、基地局、及びユーザ端末
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20171127BHJP
   H04B 7/10 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H04W16/28
   H04B7/10 A
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-199876(P2013-199876)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-70282(P2015-70282A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】キュリーズ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智春
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
【審査官】 石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−524663(JP,A)
【文献】 特開2012−114790(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/020095(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/10
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて用いられる通信制御方法であって、
基地局によるヌルステアリングの対象となるユーザ端末が、前記ヌルステアリングを制御するための、前記基地局のセルから前記ユーザ端末が受信する参照信号に基づくヌルステアリング制御情報を複数回フィードバックするステップAと、
前記基地局が、前記ユーザ端末からフィードバックされる前記ヌルステアリング制御情報を、他のユーザ端末からフィードバックされるビームフォーミング制御情報と照合するマッチング処理により、前記ユーザ端末とペアをなすペア端末を前記他のユーザ端末の中から選出するステップBと、
前記基地局が、前記ペア端末に対してビームフォーミングを行うとともに、前記ユーザ端末に対して前記ヌルステアリングを行うステップCと、を備え、
前記基地局は、前記ユーザ端末から前回以前にフィードバックされた過去ヌルステアリング制御情報の履歴を管理しており、
前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記ユーザ端末から今回フィードバックされた最新ヌルステアリング制御情報に加えて、前記過去ヌルステアリング制御情報を前記マッチング処理に適用することを特徴とする通信制御方法。
【請求項2】
前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報及び前記過去ヌルステアリング制御情報の何れかと合致する前記ビームフォーミング制御情報をフィードバックする前記他のユーザ端末を前記ペア端末として選出し、
前記ステップCにおいて、前記基地局が、前記合致するビームフォーミング制御情報に基づいて、前記ペア端末に対してビームフォーミングを行うとともに、前記ユーザ端末に対して前記ヌルステアリングを行うことを特徴とする請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項3】
前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、前記ユーザ端末の無線状況に基づいて設定される優先順位を有する複数のヌルステアリング制御情報のうち、最高優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックし、
前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、相対的に新しい前記ビームフォーミング制御情報に対して相対的に高い優先順位を設定することを特徴とする請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項4】
前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、
前記ユーザ端末の無線状況に基づいて設定される優先順位を有する複数のヌルステアリング制御情報を導出し、
最高優先順位のヌルステアリング制御情報が、前回フィードバック時と今回フィードバック時とで異なる場合には、最高優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックし、
最高優先順位のヌルステアリング制御情報が、前回フィードバック時と今回フィードバック時とで同じである場合には、2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックすることを特徴とする請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項5】
前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、最高優先順位のヌルステアリング制御情報及び2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報が、前回フィードバック時と今回フィードバック時とで同じである場合には、3番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックすることを特徴とする請求項4に記載の通信制御方法。
【請求項6】
前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、フィードバックするヌルステアリング制御情報の優先順位と関連付けられた付加情報を、前記フィードバックするヌルステアリング制御情報に付加することを特徴とする請求項4又は5に記載の通信制御方法。
【請求項7】
前記付加情報は、前記フィードバックするヌルステアリング制御情報の優先順位を示す情報であることを特徴とする請求項6に記載の通信制御方法。
【請求項8】
前記付加情報は、前記基地局が管理している前記履歴を消去すべきか否かを示す情報であることを特徴とする請求項6に記載の通信制御方法。
【請求項9】
前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報が最高優先順位のヌルステアリング制御情報である場合、又は前記履歴を消去すべきことが示された場合に、前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記最新ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、前記履歴を消去することを特徴とする請求項4乃至8の何れか一項に記載の通信制御方法。
【請求項10】
前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報が最高優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記最新ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、前記履歴に含まれる前記過去ヌルステアリング制御情報の優先順位を1つ繰り下げることを特徴とする請求項4乃至8の何れか一項に記載の通信制御方法。
【請求項11】
前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報が2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、
前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記履歴の中で最も新しい最高優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、前記最新ヌルステアリング制御情報を2番目に高い優先順位に設定し、かつ、前記履歴に含まれる2番目以降の優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報を消去することを特徴とする請求項7に記載の通信制御方法。
【請求項12】
前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報が2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、
前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記履歴の中で最も新しい最高優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、前記最新ヌルステアリング制御情報を2番目に高い優先順位に設定し、かつ、前記履歴に含まれる2番目以降の前記過去ヌルステアリング制御情報の優先順位を1つ繰り下げることを特徴とする請求項7に記載の通信制御方法。
【請求項13】
前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記履歴を消去すべきではないことが示された場合に、
前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記履歴の中で最も新しい最高優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、当該最も新しい最高優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報の次にフィードバックされた前記過去ヌルステアリング制御情報を2番目に高い優先順位に設定することを特徴とする請求項8に記載の通信制御方法。
【請求項14】
下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて用いられる基地局であって、
前記基地局によるヌルステアリングの対象となるユーザ端末から複数回フィードバックされる、前記基地局のセルから前記ユーザ端末が受信する参照信号に基づくヌルステアリング制御情報を受信する受信部と、
前記ユーザ端末からフィードバックされる前記ヌルステアリング制御情報を、他のユーザ端末からフィードバックされるビームフォーミング制御情報と照合するマッチング処理により、前記ユーザ端末とペアをなすペア端末を前記他のユーザ端末の中から選出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ペア端末に対してビームフォーミングを行うとともに、前記ユーザ端末に対して前記ヌルステアリングを行う制御を実行し、
前記制御部は、前記ユーザ端末から前回以前にフィードバックされた過去ヌルステアリング制御情報の履歴を管理しており、
前記制御部は、前記ユーザ端末から今回フィードバックされた最新ヌルステアリング制御情報に加えて、前記過去ヌルステアリング制御情報を前記マッチング処理に適用することを特徴とする基地局。
【請求項15】
下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて、基地局によるヌルステアリングの対象となるユーザ端末であって、
前記ヌルステアリングを制御するための、前記基地局のセルから前記ユーザ端末が受信する参照信号に基づくヌルステアリング制御情報を、他のユーザ端末からフィードバックされるビームフォーミング制御情報と前記ヌルステアリング制御情報とを照合するマッチング処理により前記ユーザ端末とペアをなすペア端末を前記他のユーザ端末の中から選出し、かつ、前記ペア端末に対してビームフォーミングを行うとともに前記ユーザ端末に対して前記ヌルステアリングを行う前記基地局に複数回フィードバックする制御部を備え、
前記制御部は、フィードバックするヌルステアリング制御情報の優先順位と関連付けられた付加情報を、前記フィードバックするヌルステアリング制御情報に付加することを特徴とするユーザ端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて用いられる通信制御方法、基地局、及びユーザ端末に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)で仕様が策定されているLTE(Long Term Evolution)システムは、下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする(非特許文献1参照)。例えば、基地局は、一のユーザ端末に対してビームを向ける(ビームフォーミング)とともに、他のユーザ端末に対してヌルを向ける(ヌルステアリング)。
【0003】
また、下りリンク・マルチアンテナ伝送の一形態として、CB(Coordinated Beamforming)−CoMP(Coordinated Multi Point)がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP技術仕様書 「TS36.300 V11.6.0」 2013年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CB−CoMPにおいては、セルを管理する基地局は、自セルと接続する複数のビームフォーミング対象端末のそれぞれからフィードバックされるビームフォーミング制御情報と、隣接セルと接続するヌルステアリング対象端末からフィードバックされるヌルステアリング制御情報と、を受信する。そして、基地局は、ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報をフィードバックするビームフォーミング対象端末を、ヌルステアリング対象端末とペアをなすペア端末として選出する。
【0006】
しかしながら、基地局は、ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報をフィードバックするビームフォーミング対象端末が存在しない場合には、ペア端末を選出できない。この場合、下りリンク・マルチアンテナ伝送を有効に活用することができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、下りリンク・マルチアンテナ伝送を有効に活用可能な通信制御方法、基地局、及びユーザ端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の特徴に係る通信制御方法は、下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて用いられる。前記通信制御方法は、基地局によるヌルステアリングの対象となるユーザ端末が、前記ヌルステアリングを制御するためのヌルステアリング制御情報を複数回フィードバックするステップAと、前記基地局が、前記ユーザ端末からフィードバックされる前記ヌルステアリング制御情報を、他のユーザ端末からフィードバックされるビームフォーミング制御情報と照合するマッチング処理により、前記ユーザ端末とペアをなすペア端末を前記他のユーザ端末の中から選出するステップBと、を備える。前記基地局は、前記ユーザ端末から前回以前にフィードバックされた過去ヌルステアリング制御情報の履歴を管理している。前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記ユーザ端末から今回フィードバックされた最新ヌルステアリング制御情報に加えて、前記過去ヌルステアリング制御情報を前記マッチング処理に適用する。
【0009】
第2の特徴に係る基地局は、下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて用いられる。前記基地局は、前記基地局によるヌルステアリングの対象となるユーザ端末から複数回フィードバックされるヌルステアリング制御情報を受信する受信部と、前記ユーザ端末からフィードバックされる前記ヌルステアリング制御情報を、他のユーザ端末からフィードバックされるビームフォーミング制御情報と照合するマッチング処理により、前記ユーザ端末とペアをなすペア端末を前記他のユーザ端末の中から選出する制御部と、を備える。前記制御部は、前記ユーザ端末から前回以前にフィードバックされた過去ヌルステアリング制御情報の履歴を管理している。前記制御部は、前記ユーザ端末から今回フィードバックされた最新ヌルステアリング制御情報に加えて、前記過去ヌルステアリング制御情報を前記マッチング処理に適用する。
【0010】
第3の特徴に係るユーザ端末は、下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて、基地局によるヌルステアリングの対象となるユーザ端末である。前記ユーザ端末は、前記ヌルステアリングを制御するためのヌルステアリング制御情報を複数回フィードバックする制御部を備える。前記制御部は、フィードバックするヌルステアリング制御情報の優先順位と関連付けられた付加情報を、前記フィードバックするヌルステアリング制御情報に付加する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下りリンク・マルチアンテナ伝送を有効に活用可能な通信制御方法、基地局、及びユーザ端末を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るLTEシステムの構成図である。
図2】実施形態に係るUEのブロック図である。
図3】実施形態に係るeNBのブロック図である。
図4】実施形態に係る無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。
図5】実施形態に係る無線フレームの構成図である。
図6】実施形態に係るCB−CoMPを説明するための図である(その1)。
図7】実施形態に係るCB−CoMPを説明するための図である(その2)。
図8】実施形態に係る動作パターン1を説明するための図である。
図9】実施形態に係る動作パターン2を説明するための図である。
図10】実施形態に係る動作パターン3を説明するための図である。
図11】実施形態の変更例に係るMU−MIMOを説明するための図である(その1)。
図12】実施形態の変更例に係るMU−MIMOを説明するための図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態の概要]
実施形態に係る通信制御方法は、下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて用いられる。前記通信制御方法は、基地局によるヌルステアリングの対象となるユーザ端末が、前記ヌルステアリングを制御するためのヌルステアリング制御情報を複数回フィードバックするステップAと、前記基地局が、前記ユーザ端末からフィードバックされる前記ヌルステアリング制御情報を、他のユーザ端末からフィードバックされるビームフォーミング制御情報と照合するマッチング処理により、前記ユーザ端末とペアをなすペア端末を前記他のユーザ端末の中から選出するステップBと、を備える。前記基地局は、前記ユーザ端末から前回以前にフィードバックされた過去ヌルステアリング制御情報の履歴を管理している。前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記ユーザ端末から今回フィードバックされた最新ヌルステアリング制御情報に加えて、前記過去ヌルステアリング制御情報を前記マッチング処理に適用する。
【0014】
実施形態では、前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報及び前記過去ヌルステアリング制御情報の何れかと合致する前記ビームフォーミング制御情報をフィードバックする前記他のユーザ端末を前記ペア端末として選出する。前記通信制御方法は、前記基地局が、前記合致するビームフォーミング制御情報に基づいて、前記ペア端末に対してビームフォーミングを行うとともに、前記ユーザ端末に対して前記ヌルステアリングを行うステップCをさらに備える。
【0015】
実施形態の動作パターン1では、前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、前記ユーザ端末の無線状況に基づいて設定される優先順位を有する複数のヌルステアリング制御情報のうち、最高優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックする。前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、相対的に新しい前記ビームフォーミング制御情報に対して相対的に高い優先順位を設定する。
【0016】
実施形態の動作パターン2及び3では、前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、前記ユーザ端末の無線状況に基づいて設定される優先順位を有する複数のヌルステアリング制御情報を導出する。前記ユーザ端末は、最高優先順位のヌルステアリング制御情報が、前回フィードバック時と今回フィードバック時とで異なる場合には、最高優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックする。前記ユーザ端末は、最高優先順位のヌルステアリング制御情報が、前回フィードバック時と今回フィードバック時とで同じである場合には、2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックする。
【0017】
実施形態の動作パターン2及び3では、前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、最高優先順位のヌルステアリング制御情報及び2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報が、前回フィードバック時と今回フィードバック時とで同じである場合には、3番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックする。
【0018】
実施形態の動作パターン2及び3では、前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、フィードバックするヌルステアリング制御情報の優先順位と関連付けられた付加情報を、前記フィードバックするヌルステアリング制御情報に付加する。
【0019】
実施形態の動作パターン2では、前記付加情報は、前記フィードバックするヌルステアリング制御情報の優先順位を示す情報である。
【0020】
実施形態の動作パターン3では、前記付加情報は、前記基地局が管理している前記履歴を消去すべきか否かを示す情報である。
【0021】
実施形態の動作パターン2及び3では、前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報が最高優先順位のヌルステアリング制御情報である場合、又は前記履歴を消去すべきことが示された場合に、前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記最新ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、前記履歴を消去する。
【0022】
実施形態の動作パターン2及び3では、前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報が最高優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記最新ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、前記履歴に含まれる前記過去ヌルステアリング制御情報の優先順位を1つ繰り下げる。
【0023】
実施形態の動作パターン2では、前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報が2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記履歴の中で最も新しい最高優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、前記最新ヌルステアリング制御情報を2番目に高い優先順位に設定し、かつ、前記履歴に含まれる2番目以降の優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報を消去する。
【0024】
或いは、実施形態の動作パターン2では、前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記最新ヌルステアリング制御情報が2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記履歴の中で最も新しい最高優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、前記最新ヌルステアリング制御情報を2番目に高い優先順位に設定し、かつ、前記履歴に含まれる2番目以降の前記過去ヌルステアリング制御情報の優先順位を1つ繰り下げる。
【0025】
実施形態の動作パターン3では、前記ステップBにおいて、前記基地局は、前記履歴を消去すべきではないことが示された場合に、前記マッチング処理に適用する前記ビームフォーミング制御情報の優先順位として、前記履歴の中で最も新しい最高優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、当該最も新しい最高優先順位の前記過去ヌルステアリング制御情報の次にフィードバックされた前記過去ヌルステアリング制御情報を2番目に高い優先順位に設定する。
【0026】
実施形態に係る基地局は、下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて用いられる。前記基地局は、前記基地局によるヌルステアリングの対象となるユーザ端末から複数回フィードバックされるヌルステアリング制御情報を受信する受信部と、前記ユーザ端末からフィードバックされる前記ヌルステアリング制御情報を、他のユーザ端末からフィードバックされるビームフォーミング制御情報と照合するマッチング処理により、前記ユーザ端末とペアをなすペア端末を前記他のユーザ端末の中から選出する制御部と、を備える。前記制御部は、前記ユーザ端末から前回以前にフィードバックされた過去ヌルステアリング制御情報の履歴を管理している。前記制御部は、前記ユーザ端末から今回フィードバックされた最新ヌルステアリング制御情報に加えて、前記過去ヌルステアリング制御情報を前記マッチング処理に適用する。
【0027】
実施形態に係るユーザ端末は、下りリンク・マルチアンテナ伝送をサポートする移動通信システムにおいて、基地局によるヌルステアリングの対象となるユーザ端末である。前記ユーザ端末は、前記ヌルステアリングを制御するためのヌルステアリング制御情報を複数回フィードバックする制御部を備える。前記制御部は、フィードバックするヌルステアリング制御情報の優先順位と関連付けられた付加情報を、前記フィードバックするヌルステアリング制御情報に付加する。
【0028】
[実施形態]
以下において、本発明をLTEシステムに適用する場合の実施形態を説明する。
【0029】
(システム構成)
図1は、実施形態に係るLTEシステムの構成図である。図1に示すように、実施形態に係るLTEシステムは、UE(User Equipment)100、E−UTRAN(Evolved−UMTS Terrestrial Radio Access Network)10、及びEPC(Evolved Packet Core)20を備える。
【0030】
UE100は、ユーザ端末に相当する。UE100は、移動型の通信装置であり、接続先のセル(サービングセル)との無線通信を行う。UE100の構成については後述する。
【0031】
E−UTRAN10は、無線アクセスネットワークに相当する。E−UTRAN10は、eNB200(evolved Node−B)を含む。eNB200は、基地局に相当する。eNB200は、X2インターフェイスを介して相互に接続される。eNB200の構成については後述する。
【0032】
eNB200は、1又は複数のセルを管理しており、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。eNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータのルーティング機能、モビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能などを有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として使用される他に、UE100との無線通信を行う機能を示す用語としても使用される。
【0033】
EPC20は、コアネットワークに相当する。E−UTRAN10及びEPC20によりLTEシステムのネットワークが構成される。EPC20は、MME(Mobility Management Entity)/S−GW(Serving−Gateway)300を含む。MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御などを行う。S−GWは、ユーザデータの転送制御を行う。MME/S−GW300は、S1インターフェイスを介してeNB200と接続される。
【0034】
図2は、UE100のブロック図である。図2に示すように、UE100は、複数のアンテナ101、無線送受信機110、ユーザインターフェイス120、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機130、バッテリ140、メモリ150、及びプロセッサ160を備える。メモリ150及びプロセッサ160は、制御部を構成する。UE100は、GNSS受信機130を有していなくてもよい。また、メモリ150をプロセッサ160と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサ160’としてもよい。
【0035】
複数のアンテナ101及び無線送受信機110は、無線信号の送受信に用いられる。無線送受信機110は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換して複数のアンテナ101から送信する。また、無線送受信機110は、複数のアンテナ101が受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換してプロセッサ160に出力する。
【0036】
ユーザインターフェイス120は、UE100を所持するユーザとのインターフェイスであり、例えば、ディスプレイ、マイク、スピーカ、及び各種ボタンなどを含む。ユーザインターフェイス120は、ユーザからの操作を受け付けて、該操作の内容を示す信号をプロセッサ160に出力する。GNSS受信機130は、UE100の地理的な位置を示す位置情報を得るために、GNSS信号を受信して、受信した信号をプロセッサ160に出力する。バッテリ140は、UE100の各ブロックに供給すべき電力を蓄える。
【0037】
メモリ150は、プロセッサ160により実行されるプログラム、及びプロセッサ160による処理に使用される情報を記憶する。プロセッサ160は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ150に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、を含む。プロセッサ160は、さらに、音声・映像信号の符号化・復号を行うコーデックを含んでもよい。プロセッサ160は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0038】
図3は、eNB200のブロック図である。図3に示すように、eNB200は、複数のアンテナ201、無線送受信機210、ネットワークインターフェイス220、メモリ230、及びプロセッサ240を備える。メモリ230及びプロセッサ240は、制御部を構成する。
【0039】
複数のアンテナ201及び無線送受信機210は、無線信号の送受信に用いられる。無線送受信機210は、プロセッサ240が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換して複数のアンテナ201から送信する。また、無線送受信機210は、複数のアンテナ201が受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換してプロセッサ240に出力する。
【0040】
ネットワークインターフェイス220は、X2インターフェイスを介して隣接eNB200と接続され、S1インターフェイスを介してMME/S−GW300と接続される。ネットワークインターフェイス220は、X2インターフェイス上で行う通信及びS1インターフェイス上で行う通信に用いられる。
【0041】
メモリ230は、プロセッサ240により実行されるプログラム、及びプロセッサ240による処理に使用される情報を記憶する。プロセッサ240は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ230に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を含む。プロセッサ240は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0042】
図4は、LTEシステムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。図4に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルの第1層乃至第3層に区分されており、第1層は物理(PHY)層である。第2層は、MAC(Media Access Control)層、RLC(Radio Link Control)層、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)層を含む。第3層は、RRC(Radio Resource Control)層を含む。
【0043】
物理層は、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。eNB200の物理層は、プリコーダ行列(送信アンテナウェイト)及びランク(信号系列数)を適用して下りリンク・マルチアンテナ伝送を行う。実施形態に係る下りリンク・マルチアンテナ伝送の詳細については後述する。UE100の物理層とeNB200の物理層との間では、物理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
【0044】
MAC層は、データの優先制御、及びハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理などを行う。UE100のMAC層とeNB200のMAC層との間では、トランスポートチャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。eNB200のMAC層は、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式)及びUE100への割当リソースブロックを決定するスケジューラを含む。
【0045】
RLC層は、MAC層及び物理層の機能を利用してデータを受信側のRLC層に伝送する。UE100のRLC層とeNB200のRLC層との間では、論理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
【0046】
PDCP層は、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0047】
RRC層は、制御信号を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRC層とeNB200のRRC層との間では、各種設定のための制御信号(RRCメッセージ)が伝送される。RRC層は、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100は接続状態(RRC接続状態)であり、そうでない場合、UE100はアイドル状態(RRCアイドル状態)である。
【0048】
RRC層の上位に位置するNAS(Non−Access Stratum)層は、セッション管理及びモビリティ管理などを行う。
【0049】
図5は、LTEシステムで使用される無線フレームの構成図である。LTEシステムは、下りリンクにはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)、上りリンクにはSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)がそれぞれ適用される。
【0050】
図5に示すように、無線フレームは、時間方向に並ぶ10個のサブフレームで構成される。各サブフレームは、時間方向に並ぶ2個のスロットで構成される。各サブフレームの長さは1msであり、各スロットの長さは0.5msである。各サブフレームは、周波数方向に複数個のリソースブロック(RB)を含み、時間方向に複数個のシンボルを含む。各リソースブロックは、周波数方向に複数個のサブキャリアを含む。UE100に割り当てられる無線リソースのうち、周波数リソースはリソースブロックにより特定でき、時間リソースはサブフレーム(又はスロット)により特定できる。
【0051】
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に制御信号を伝送するための物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)として使用される領域である。また、各サブフレームの残りの部分は、主にユーザデータを伝送するための物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)として使用できる領域である。
【0052】
上りリンクにおいて、各サブフレームにおける周波数方向の両端部は、主に制御信号を伝送するための物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)として使用される領域である。各サブフレームにおける残りの部分は、主にユーザデータを伝送するための物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)として使用できる領域である。
【0053】
(CB−CoMP)
実施形態に係るLTEシステムは、下りリンク・マルチアンテナ伝送の一形態であるCB−CoMPをサポートする。CB−CoMPでは、複数のeNB200が協調してビームフォーミング及びヌルステアリングを行う。
【0054】
図6及び図7は、CB−CoMPを説明するための図である。図6に示すように、eNB200−1及びeNB200−2は、互いに隣接するセルを管理する。また、eNB200−1のセル及びeNB200−2のセルは、同一の周波数に属する。
【0055】
UE100−1は、eNB200−1のセルとの接続を確立した状態(接続状態)である。すなわち、UE100−1は、eNB200−1のセルをサービングセルとして通信を行う。
【0056】
これに対し、UE100−2は、eNB200−2のセルとの接続を確立した状態(接続状態)である。すなわち、UE100−2は、eNB200−2のセルをサービングセルとして通信を行う。図6では、eNB200−2のセルとの接続を確立するUE100−2を1つのみ図示しているが、実環境では、複数のUE100−2がeNB200−2のセルとの接続を確立している。
【0057】
UE100−1は、eNB200−1のセル及びeNB200−2のセルの境界領域に位置する。この場合、UE100−1は、eNB200−2のセルからの干渉の影響を受ける。UE100−1に対してCB−CoMPを適用することにより、UE100−1が受ける干渉を抑圧できる。
【0058】
以下において、UE100−1に対してCB−CoMPを適用する場合のCB−CoMPの通信手順について説明する。尚、CB−CoMPが適用されるUE100−1は、「CoMP UE」と称されることがある。すなわち、UE100−1は、ヌルステアリング対象端末に相当する。UE100−1(CoMP UE)のサービングセルは、「アンカーセル」と称されることがある。
【0059】
UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、サービングセルから受信する参照信号などに基づいて、自身に対してビームを向けるためのビームフォーミング制御情報をサービングセルにフィードバックする。実施形態では、ビームフォーミング制御情報は、プリコーダ行列インジケータ(PMI)及びランクインジケータ(RI)を含む。PMIは、サービングセルに推奨されるプリコーダ行列(送信アンテナウェイト)を示すインジケータである。RIは、サービングセルに推奨されるランク(信号系列数)を示すインジケータである。UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、プリコーダ行列及びインジケータを関連付けたテーブル(コードブック)を保持しており、所望波の通信品質が向上するプリコーダ行列を選択し、選択したプリコーダ行列に対応するインジケータをPMIとしてフィードバックする。
【0060】
UE100−1は、さらに、隣接セルから受信する参照信号などに基づいて、自身に対してヌルを向けるためのヌルステアリング制御情報をサービングセルにフィードバックする。実施形態では、ヌルステアリング制御情報は、BCI(Best Companion PMI)及びRIを含む。BCIは、隣接セルに推奨されるプリコーダ行列(送信アンテナウェイト)を示すインジケータである。UE100−1は、プリコーダ行列及びインジケータを関連付けたテーブル(コードブック)を保持しており、干渉波の受信レベルが低減する、或いは所望波への影響が低減するプリコーダ行列を選択し、選択したプリコーダ行列に対応するインジケータをBCIとしてフィードバックする。
【0061】
eNB200−1は、UE100−1からフィードバックされるヌルステアリング制御情報(BCI、RI)をeNB200−2に転送する。
【0062】
eNB200−2は、自セルと接続する複数のUE100−2のそれぞれからフィードバックされるビームフォーミング制御情報(PMI、RI)と、隣接セルと接続するUE100−1からフィードバックされるヌルステアリング制御情報(BCI、RI)と、を受信する。そして、eNB200−2は、ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報をフィードバックするUE100−2を、UE100−1とペアをなすペアUE(ペア端末)として選出する。実施形態では、「ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報」とは、ヌルステアリング制御情報に含まれるBCI及びRIの組み合わせと一致するPMI及びRIの組み合わせを含むビームフォーミング制御情報である。
【0063】
eNB200−2は、ペアUE(UE100−2)を選出すると、UE100−1に割り当てられる無線リソースと同一の無線リソースをペアUEに割り当てる。そして、eNB200−2は、ペアUEからフィードバックされたビームフォーミング制御情報(PMI、RI)を適用してペアUEへの送信を行う。その結果、図7に示すように、eNB200−2は、ペアUEに対してビームを向けつつ、UE100−1にヌルを向けて、ペアUEへの送信を行うことができる。
【0064】
(実施形態に係る動作)
(1)動作概要
上述したように、eNB200−2は、UE100−1からフィードバックされるヌルステアリング制御情報(BCI、RI)と合致するビームフォーミング制御情報(PMI、RI)をフィードバックするUE100−2を、UE100−1とペアをなすペアUEとして選出する。ここで、UE100−1はヌルステアリング対象端末に相当し、UE100−2はビームフォーミング対象端末に相当する。
【0065】
しかしながら、ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報をフィードバックするUE100−2が存在しない場合には、eNB200−2は、UE100−1とペアをなすペアUEを選出できない。以下において、このような問題を解決するための通信制御方法について説明する。
【0066】
実施形態に係る通信制御方法は、eNB200−2によるヌルステアリングの対象となるUE100−1が、ヌルステアリングを制御するためのヌルステアリング制御情報を複数回フィードバックするステップAを有する。「複数回フィードバック」とは、例えば周期的なフィードバックである。但し、周期的なフィードバックに限らず、非周期的なフィードバックであってよい。
【0067】
また、実施形態に係る通信制御方法は、eNB200−2が、UE100−1からフィードバックされるヌルステアリング制御情報を、UE100−2からフィードバックされるビームフォーミング制御情報と照合するマッチング処理により、UE100−1とペアをなすペアUEをUE100−2の中から選出するステップBを有する。
【0068】
eNB200−2は、UE100−1から前回以前にフィードバックされた過去ヌルステアリング制御情報の履歴を管理している。ステップBにおいて、eNB200−2は、UE100−1から今回フィードバックされた最新ヌルステアリング制御情報に加えて、過去ヌルステアリング制御情報をマッチング処理に適用する。
【0069】
よって、最新ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報をフィードバックするUE100−2が存在しない場合であっても、過去ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報をフィードバックするUE100−2をペアUEとして選出できる。よって、UE100−1に対してCB−CoMPを適用可能とすることができる。
【0070】
実施形態では、ステップBにおいて、eNB200−2は、最新ヌルステアリング制御情報及び過去ヌルステアリング制御情報の何れかと合致するビームフォーミング制御情報をフィードバックするUE100−2をペアUEとして選出する。実施形態に係る通信制御方法は、eNB200−2が、当該合致するビームフォーミング制御情報に基づいて、ペアUEに対してビームフォーミングを行うとともに、UE100−1に対してヌルステアリングを行うステップCをさらに備える。
【0071】
(2)動作具体例
次に、実施形態に係る動作具体例として、動作パターン1乃至3を説明する。
【0072】
(2.1)動作パターン1
図8は、実施形態に係る動作パターン1を説明するための図である。
【0073】
図8に示すように、実施形態の動作パターン1では、ステップAにおいて、UE100−1は、UE100−1の無線状況に基づいて設定される優先順位を有する複数のヌルステアリング制御情報のうち、最高優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックする。
【0074】
例えば、UE100−1は、コードブックに含まれる複数のPMI(及びRI)のそれぞれについて、干渉波の受信レベルが低減する度合い、或いは所望波への影響が低減する度合いを評価指標として、PMI及びRIの組み合わせごとに優先順位を設定する。具体的には、干渉波の受信レベルが低減する度合い、或いは所望波への影響が低減する度合いが最も高いPMI及びRIの組み合わせに最高優先順位を設定する。そして、UE100−1は、最高優先順位のPMI及びRIの組み合わせ(ヌルステアリング制御情報)をフィードバックする。
【0075】
図8の例では、時間T1において、最高優先順位のヌルステアリング制御情報は「A」であり、2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報は「B」であるため、UE100−1は、「A」をフィードバックする。時間T2以降も同様の規則に則って動作する。
【0076】
実施形態の動作パターン1では、ステップBにおいて、eNB200−2は、マッチング処理に適用するビームフォーミング制御情報の優先順位として、相対的に新しいビームフォーミング制御情報に対して相対的に高い優先順位を設定する。
【0077】
図8の例では、eNB200−2は、連続する異なる2フィードバックを、時系列順に、2番目優先順位及び最高優先順位として扱う。例えば、時間T3のフィードバックに着目すると、eNB200−2は、最新ヌルステアリング制御情報である「B」に対して最高優先順位を設定し、時間T2(前回フィードバック)に対応する過去フィードバック情報である「A」に対して2番目に高い優先順位を設定する。但し、同じフィードバックが長時間連続した場合には、その前のフィードバックは無視してもよい。
【0078】
(2.2)動作パターン2
図9は、実施形態に係る動作パターン2を説明するための図である。ここでは、動作パターン1との相違点を主として説明する。
【0079】
図9に示すように、実施形態の動作パターン2では、ステップAにおいて、UE100−1は、最高優先順位のヌルステアリング制御情報が、前回フィードバック時と今回フィードバック時とで異なる場合には、最高優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックする。また、UE100−1は、最高優先順位のヌルステアリング制御情報が、前回フィードバック時と今回フィードバック時とで同じである場合には、2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックする。さらに、UE100−1は、最高優先順位のヌルステアリング制御情報及び2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報が、前回フィードバック時と今回フィードバック時とで同じである場合には、3番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックする。それ以降も同様の規則に則って動作する。
【0080】
図9の例では、時間T2に対応する最高優先順位のヌルステアリング制御情報は「A」であり、かつ、前回フィードバック時である時間T1に対応する最高優先順位のヌルステアリング制御情報も「A」であるため、UE100−1は、時間T2において、2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報「B」をフィードバックする。また、時間T3に対応する最高優先順位のヌルステアリング制御情報は「B」であり、かつ、前回フィードバック時である時間T2に対応する最高優先順位のヌルステアリング制御情報は「A」であるため、UE100−1は、時間T3において、最高優先順位のヌルステアリング制御情報「B」をフィードバックする。
【0081】
このように、実施形態の動作パターン2では、UE100−1は、前回フィードバックと今回フィードバックとで重複を避けながら、優先順位の高いヌルステアリング制御情報を優先的にフィードバックする。
【0082】
また、実施形態の動作パターン2では、ステップAにおいて、UE100−1は、フィードバックするヌルステアリング制御情報の優先順位と関連付けられた付加情報(フィールド)を、フィードバックするヌルステアリング制御情報に付加する。具体的には、付加情報は、フィードバックするヌルステアリング制御情報の優先順位を示す情報である。これにより、eNB200−2は、フィードバックされたヌルステアリング制御情報に設定された優先順位を把握できる。
【0083】
実施形態の動作パターン2では、ステップBにおいて、eNB200−2は、最新ヌルステアリング制御情報が最高優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、マッチング処理に適用するビームフォーミング制御情報の優先順位として、最新ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、履歴を消去する。ここで、履歴を消去するのは、次の理由による。UE100−1において最高優先順位を有するヌルステアリング制御情報が変化したということは、UE100−1における無線環境が変化したとみなすことができる。よって、履歴の信頼性が低いため、履歴を消去する。
【0084】
実施形態の動作パターン2では、ステップBにおいて、eNB200−2は、最新ヌルステアリング制御情報が2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、マッチング処理に適用するビームフォーミング制御情報の優先順位として、履歴の中で最も新しい最高優先順位の過去ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、最新ヌルステアリング制御情報を2番目に高い優先順位に設定し、かつ、履歴に含まれる2番目以降の優先順位の過去ヌルステアリング制御情報を消去する。それ以降も同様の規則に則って動作する。
【0085】
或いは、eNB200−2において履歴を消去する動作に代えて、次のような動作に変更してもよい。ステップBにおいて、eNB200−2は、最新ヌルステアリング制御情報が最高優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、マッチング処理に適用するビームフォーミング制御情報の優先順位として、最新ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、履歴に含まれる過去ヌルステアリング制御情報の優先順位を1つ繰り下げる。この場合、履歴を消去しないので、履歴を有効活用できる。
【0086】
また、ステップBにおいて、eNB200−2は、最新ヌルステアリング制御情報が2番目に高い優先順位のヌルステアリング制御情報である場合に、マッチング処理に適用するビームフォーミング制御情報の優先順位として、履歴の中で最も新しい最高優先順位の過去ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、最新ヌルステアリング制御情報を2番目に高い優先順位に設定し、かつ、履歴に含まれる2番目以降の過去ヌルステアリング制御情報の優先順位を1つ繰り下げる。
【0087】
(2.3)動作パターン3
図10は、実施形態に係る動作パターン3を説明するための図である。動作パターン3は動作パターン2と類似する動作であるため、動作パターン2との相違点を主として説明する。
【0088】
図10に示すように、実施形態の動作パターン3では、UE100−1においてフィードバックするヌルステアリング制御情報を選択する方法については、動作パターン2と同様である。
【0089】
但し、実施形態の動作パターン3では、フィードバックするヌルステアリング制御情報に付加する付加情報は、eNB200−2が管理している履歴を消去すべきか否かを示す情報である。UE100−1は、最高優先順位のヌルステアリング制御情報をフィードバックする場合に、履歴を消去すべきことを示す情報(new)を付加情報として当該ヌルステアリング制御情報に付加する。また、UE100−1は、2番目以降のヌルステアリング制御情報をフィードバックする場合に、履歴を消去すべきではないことを示す情報(hold)を付加情報として当該ヌルステアリング制御情報に付加する。
【0090】
実施形態の動作パターン3では、ステップBにおいて、eNB200−2は、履歴を消去すべきことが示された場合に、マッチング処理に適用するビームフォーミング制御情報の優先順位として、最新ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、履歴を消去する。
【0091】
また、実施形態の動作パターン3では、ステップBにおいて、eNB200−2は、履歴を消去すべきではないことが示された場合に、マッチング処理に適用するビームフォーミング制御情報の優先順位として、履歴の中で最も新しい最高優先順位の過去ヌルステアリング制御情報を最高優先順位に設定するとともに、当該最も新しい最高優先順位の過去ヌルステアリング制御情報の次にフィードバックされた過去ヌルステアリング制御情報を2番目に高い優先順位に設定する。
【0092】
このように、実施形態の動作パターン3は、付加情報がnew/holdの2種類のみであるため、動作パターン2に比べ、付加情報の情報量を削減できる。
【0093】
[変更例]
上述した実施形態では、下りリンク・マルチアンテナ伝送の一形態であるCB−CoMPに本発明を適用する一例を説明したが、下りリンク・マルチアンテナ伝送の他の形態であるMU(Multi User)−MIMO(Multiple−Input And Multiple−Output)に本発明を適用してもよい。実施形態の変更例では、本発明をMU−MIMOに適用するケースについて説明する。
【0094】
図11及び図12は、MU−MIMOを説明するための図である。図11に示すように、UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、eNB200のセルとの接続を確立した状態(接続状態)である。すなわち、UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、eNB200のセルをサービングセルとして通信を行う。図11では、eNB200のセルとの接続を確立するUE100を2つのみ図示しているが、実環境では、3以上のUE100がeNB200のセルとの接続を確立している。
【0095】
以下において、UE100−1に対してMU−MIMOを適用する場合のMU−MIMOの通信手順について説明する。ここで、UE100−1はヌルステアリング対象端末に相当し、UE100−2はビームフォーミング対象端末に相当する。尚、上述した実施形態と重複する説明については省略する。
【0096】
UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、サービングセルから受信する参照信号などに基づいて、自身に対してビームを向けるためのビームフォーミング制御情報をサービングセルにフィードバックする。ビームフォーミング制御情報は、PMI及びRIを含む。
【0097】
UE100−1は、さらに、サービングセルから受信する参照信号などに基づいて、自身に対してヌルを向けるためのヌルステアリング制御情報をサービングセルにフィードバックする。ヌルステアリング制御情報は、BCI(Best Companion PMI)及びRIを含む。
【0098】
eNB200は、自セルと接続する複数のUE100−2のそれぞれからフィードバックされるビームフォーミング制御情報(PMI、RI)と、自セルと接続するUE100−1からフィードバックされるヌルステアリング制御情報(BCI、RI)と、を受信する。そして、eNB200は、ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報をフィードバックするUE100−2を、UE100−1とペアをなすペアUE(ペアUE)として選出する。
【0099】
eNB200は、ペアUE(UE100−2)を選出すると、UE100−1に割り当てられる無線リソースと同一の無線リソースをペアUEに割り当てる。そして、eNB200は、ペアUEからフィードバックされたビームフォーミング制御情報(PMI、RI)を適用してペアUEへの送信を行う。その結果、図12に示すように、eNB200は、ペアUEに対してビームを向けつつ、UE100−1にヌルを向けて、ペアUEへの送信を行うことができる。
【0100】
本変更例では、上述した実施形態に係る通信制御方法において、eNB200−1及びeNB200−2をまとめて1つのeNB200とみなすことにより、MU−MIMOにおいても、UE100−1とペアをなすペアUEを適切に選出できる。
【0101】
[その他の実施形態]
上述した実施形態では、UE100−1が送信するヌルステアリング制御情報は、eNB200−1を介してeNB200−2に間接的にフィードバックされていたが、eNB200−1を介さずにeNB200−2に直接的にフィードバックされてもよい。
【0102】
上述した実施形態及びその変更例では、ヌルステアリング制御情報の一例としてBCIについて説明したが、BCIに代えてWCI(Worst Companion PMI)を使用してもよい。WCIは、干渉源からの干渉レベルが高くなるプリコーダ行列を示すインジケータである。eNB200は、複数のUE100−2のそれぞれからフィードバックされるビームフォーミング制御情報(PMI、RI)と、UE100−1からフィードバックされるヌルステアリング制御情報(WCI、RI)と、を受信する。そして、eNB200は、ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報をフィードバックするUE100−2を、UE100−1とペアをなすペアUE(ペア端末)として選出する。この場合、ヌルステアリング制御情報と合致するビームフォーミング制御情報とは、ヌルステアリング制御情報に含まれるWCIと一致しないPMIを含む、又は、ヌルステアリング制御情報に含まれるRIと一致するRIを含むビームフォーミング制御情報である。
【0103】
上述した実施形態では、セルラ通信システムの一例としてLTEシステムを説明したが、LTEシステムに限定されるものではなく、LTEシステム以外のシステムに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0104】
10…E−UTRAN、20…EPC、100…UE、101…アンテナ、110…無線送受信機、120…ユーザインターフェイス、130…GNSS受信機、140…バッテリ、150…メモリ、160…プロセッサ、200…eNB、201…アンテナ、210…無線送受信機、220…ネットワークインターフェイス、230…メモリ、240…プロセッサ、300…MME/S−GW
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12