(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242646
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】配管内作業装置および作業方法
(51)【国際特許分類】
B08B 9/04 20060101AFI20171127BHJP
B08B 9/053 20060101ALI20171127BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
B08B9/04
B08B9/053
F24F13/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-205881(P2013-205881)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66538(P2015-66538A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【弁理士】
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 譲
(74)【代理人】
【識別番号】100200137
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 良介
(72)【発明者】
【氏名】穂積 久士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】徳永 泰明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(72)【発明者】
【氏名】東倉 一郎
【審査官】
石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−114513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00−1/04
B08B 5/00−13/00
B61B 13/10
F16L 55/36
G01N 21/954
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記配管内に挿入されるとともに前記装置本体の一端に配置される筒状のガイドホースと、
それぞれが流体を前記ガイドホースの軸方向の速度成分を持たせて噴射可能なノズルを周方向に複数有し、前記ガイドホースの外周に配置可能であり、前記ガイドホースの軸方向に異なる位置に複数設けられた推進ユニットと、
前記推進ユニットを前記ガイドホースに取り付ける把持手段と、
複数の前記ノズルからの流体の噴射を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記把持手段による前記ガイドホースへの取り付けおよび解除を制御し、
前記推進ユニットは、前記把持手段が解除された状態で前記ノズルから前記流体が噴射されると前記ガイドホースの外周に沿って移動可能に構成されたことを特徴とする配管内制御装置。
【請求項2】
装置本体の一端に筒状のガイドホースを配置する工程と、
前記ガイドホースの外周に、前記ガイドホースの軸方向の速度成分を持たせて流体を噴射可能なノズルを周方向に複数備えた推進ユニットを、前記ガイドホースの軸方向に異なる位置に複数取り付ける工程と、
前記装置本体、前記ガイドホースおよび前記推進ユニットを配管内に挿入する工程と、 前記推進ユニットの周方向に設けられた複数の前記ノズルからの流体の噴射をそれぞれ制御して前記装置本体、前記ガイドホースおよび前記推進ユニットを前記管内を移動させる工程と、
前記推進ユニットの少なくとも1つが前記ガイドホースを把持し、かつ少なくとも1つが前記ガイドホースの把持を解除した状態で前記流体を噴射して、前記ガイドホースへの把持を解除した前記推進ユニットを前記ガイドホースの外周に沿って移動させる工程と、を備えることを特徴とする配管内作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の各実施形態は、配管内での検査・作業を行なう配管内作業装置および作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管内での作業を行なう従来の技術としては、ガイドチューブに取り付けられ、流体を噴射して推進力を得る推進ノズルを設けた洗浄装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−114513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力発電所において炉心溶融等の過酷事故が発生した場合など、シールドプラグ、原子炉格納容器の上蓋、及び原子炉圧力容器の上蓋を容易に取外せない状況では、原子炉圧力容器に接続されている配管から検査・作業のために配管内作業装置を挿入することとなる。これらの原子炉圧力容器に接続されている配管には、逆止弁や弁座などの急激の口径が変化する(凸部、凹部)部分、また曲がりやT字状の分岐部が存在する。
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された従来の配管内作業装置では、作業対象となる配管に曲がりやT字状の分岐部が存在する場合に任意の方向へ移動させることについて考慮されていない。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、分岐部や曲がり管を有する複雑な配管内においても所望の箇所に自由に移動して検査・作業を行なうことのできる配管内作業装置および作業方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る配管内作業装置は、装置本体と、 前記配管内に挿入されるとともに前記装置本体の一端に配置される筒状のガイドホースと、それぞれが流体を前記ガイドホースの軸方向の速度成分を持たせて噴射可能なノズルを周方向に複数
有し、前記ガイドホースの外周に配置可能であり、前記ガイドホースの軸方向に異なる位置に複数設けられた推進ユニットと、前記推進ユニットを前記ガイドホースに取り付ける把持手段と、複数の前記ノズルからの流体の噴射を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記把持手段による前記ガイドホースへの取り付けおよび解除を制御
し、前記推進ユニットは、前記把持手段が解除された状態で前記ノズルから前記流体が噴射されると前記ガイドホースの外周に沿って移動可能に構成されたことを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る配管内作業方法は、装置本体の一端に筒状のガイドホースを配置する工程と、前記ガイドホースの外周に、前記ガイドホースの軸方向の速度成分を持たせて流体を噴射可能なノズルを周方向に複数備えた推進ユニットを取り付ける工程と、前記装置本体、前記ガイドホースおよび前記推進ユニットを配管内に挿入する工程と、前記推進ユニットの周方向に設けられた複数の前記ノズルからの流体の噴射をそれぞれ制御して前記装置本体、前記ガイドホースおよび前記推進ユニットを前記管内を移動させる工程と、
前記推進ユニットの前記ガイドホースへの把持を解除した状態で前記流体を噴射して前記推進ユニットを前記ガイドホースの外周に沿って移動させる工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分岐部や曲がり管を有する複雑な配管内においても所望の箇所に自由に移動して検査・作業を行なうことのできる配管内作業装置および作業方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る配管内作業装置および配管内作業方法の概略図。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る配管作業装置の推進ユニットの構成図。
【
図3】本発明の第3の実施の形態に係る配管内作業装置および配管内作業方法の概略図。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る配管内作業方法の概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る配管内作業装置および配管内作業方法の概略図であり、
図2は
図1に示した配管内作業装置のうち推進ユニットの詳細を示した構成図である。なお、
図1および
図2において、同一の構成については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0013】
図1に示したように、配管1は直管部だけでなく、T字状の分岐部などを備える。本実施の形態に係る配管内作業装置は、装置本体2と、配管1内に挿入されるとともに装置本体2の一端に配置される筒状のガイドホース4と、ガイドホース4の外周に配置可能な推進ユニット5、推進ユニット5を制御する制御手段として制御装置12とを備える。
【0014】
本実施の形態においては、装置本体2にはセンサとしてテレビカメラ3が設けられている。ガイドホース4は中空円筒状であり、樹脂等の可撓性のある材料から構成される。
【0015】
図2に示すように、推進ユニット5には圧力流体が圧力流体供給ホース8a,8b,8c,8d,…から供給される。なお、圧力流体供給ホース8a,8b,8c,8d,…は、ガイドホース4内を通って推進ユニット5に接続される構成とすることもできる。推進ユニット5には、複数のノズル6a,6b,6b,6d,…が設けられており、それぞれ圧力流体供給ホース8a,8b,8c,8d,…と接続されている。各ノズル6a,6b,6b,6d,…は、圧力流体供給ホース8a,8b,8c,8d,…から供給された圧力流体をそれぞれガイドホース4の軸方向の速度成分を持たせて噴射可能に配置されている。
【0016】
本実施の形態においては、ノズル6a,6cとノズル6b、6dからの圧力流体の噴射方向がガイドホース4の軸方向について逆方向となるように構成されている。ガイドホース4の軸方向に関する噴射方向が同じ向きのノズル6a,6c,・・・(あるいは6b,6d,…)は、ガイドホース4の周方向の位置がそれぞれ異なるように配置される。すなわち、推進ユニット5には、少なくとも3つの周方向位置が異なり、かつ、ガイドホース4の軸方向に関する噴射方向が同じ向きの複数のノズル6a,6c,・・・(あるいは6b,6d,…)が設けられる。
【0017】
推進ユニット5は、ガイドホース4を把持して推進ユニット5をガイドホース4の外周に配置・固定する把持手段9を備える。また、推進ユニット5には、装置本体2、ガイドホース4および推進ユニット5の進行方向を判断するためのセンサとしてカメラ10a,10bおよび照明11a,11bが設けられている。なお、センサとしては、カメラ10a,10bおよび照明11a,11bのほか、加速度センサやジャイロ、あるいは流体ノズルなどを用いることもできる。
【0018】
推進ユニット5内に設けられた制御装置12は、複数のノズル6a,6b,6c,6d,…からの圧力流体の噴射や、把持手段9によるガイドホース4への推進ユニット5の取り付けおよび取り外し、またカメラ10a,10bおよび照明11a,11bを制御する。
【0019】
このように構成された本実施の形態において、装置本体2の一端にガイドホース4を配置し、ガイドホース4の外周に推進ユニット5を取り付け、装置本体2、ガイドホース4および推進ユニット5を配管1内に挿入する。
【0020】
そして制御装置12により、
図1に示すように周方向に異なる位置に設けられたノズル6a,6c,…から噴射される噴射流体7a,7c,…の強さを制御する。これにより装置本体2,ガイドホース4および推進ユニット5は、その進行方向を調整しながら配管1内を移動する。
【0021】
噴射流体7a,7c…の調整は圧力流体供給ホース8a,8c,…からの圧力流体の圧力を調整することで行なう。なお、本実施の形態では制御装置12を推進ユニット5に設けているが、制御装置12を推進ユニット5内ではなく圧力流体供給ホース8a,8b,8c,8d,・・・の供給元側に設けることも可能である。
【0022】
なお、制御装置12により、推進ユニット5の前方に設けたノズル6b,6d,…から流体を噴射させることによりガイドホース4を逆向きに移動(後退)させることもできる。
【0023】
配管1の分岐部では、装置本体2に登載したカメラ3や推進ユニット5に搭載したカメラ10a,10bを用いて装置本体2、推進ユニット5やガイドホース4の姿勢を確認しながら制御装置12を用いて装置本体2、推進ユニット5およびガイドホース4を所望の方向に移動させる。
【0024】
本実施の形態においては、把持手段9により推進ユニット5がガイドホース4を把持することから、装置本体2とガイドホース4を配管1内の所定位置に移動させることができる。
【0025】
なお、本実施の形態において、装置本体2の一端にガイドホース4をあらかじめ配置した状態として装置本体2、ガイドホース4および推進ユニット5を一体的に配管1内に挿入して移動させるほか、装置本体2をガイドホース4内を移動可能な構成とすることもできる。
【0026】
この場合、まず、推進ユニット5を取り付けたガイドホース4を装置本体2なしで推進ユニット5により所定位置に移動させる。その後、装置本体2をガイドホース4内に挿入し、装置本体2に設けた移動手段などを用いてガイドホース4の端部まで移動させ、装置本体の一端にガイドホース4が位置する(配置される)ようにする。
【0027】
また、装置本体2、ガイドホース4および推進ユニット5を一体化した配管内作業装置として用意し、これを配管1内に挿入して作業を行なうこともできる。この場合、一体化した配管内作業装置を必要な配管、ケーブルなどとともに気密室内に準備し、作業対象となる配管1と気密室を延長ホースで接続し、気密室内の一体化された配管内作業装置を遠隔操作して作業を行なう公正とすることも可能である。
【0028】
本実施の形態によれば、推進ユニット5の周方向に異なる位置に設けられたノズル6a,6c,…から噴射させる噴射流体7a,7c,…の強さを制御装置12により調整することにより進行方向を自由に調整することができるので、配管1が分岐部や曲がり管などを有する複雑な形状であっても配管内作業装置を所望の箇所に自由に移動して検査・作業を行なうことができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施の形態を
図3および
図4を用いて説明する。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る配管内作業装置および配管内作業方法の概略図である。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る配管内作業方法の概略説明図である。なお
図3および
図4において、
図1および
図2と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
本実施の形態においては、
図1で示した第1の実施の形態の推進ユニット5に加えて、ガイドホース4の軸方向の位置が異なる第2の推進ユニット25を設け、2台の推進ユニット5,25を備えるようにしたものである。
【0031】
第2の推進ユニット25の構成は推進ユニット5と同一であり、圧力流体を噴射させるノズル26a,26b,26c,26d,…と、ガイドホース4を把持する把持機構29が設けられる。図示しないが、ノズル26a,26b,26c,26d,…には推進ユニット5と同様、圧力流体供給ホースがそれぞれ接続されている。
【0032】
このように構成された本実施の形態において、第1の実施の形態と同様に、推進ユニット5および推進ユニット26を制御してガイドホース4を配管1内に挿入して移動させる。
図4(a)に示すように配管1のT字状の分岐部やエルボ部等のコーナでは、ガイドホース4が引っかかることがあり、摩擦抵抗等により、ガイドホース4を挿入するための負荷が増大する恐れが生じる。
【0033】
このような場合に、
図4(b)に示すように第2の推進ユニット25の把持手段29を制御装置12により解除して、ノズル26b,26d,…から噴射流体27b,27d,…を噴射させて、ガイドホース4の外面に沿って図中の矢印Rの方向に第2の推進ユニット25を後退移動させる。
【0034】
このとき推進ユニット5はガイドホース4を把持機構9で把持して、矢印F方向に移動しているため、第2の推進ユニット25だけガイドホース4の外面に沿って戻すことができる。
【0035】
ガイドホース4の外面に沿って矢印Rの方向に第2の推進ユニット25が戻されると、制御装置12は第2の推進ユニット25の把持手段29を制御してガイドホース4を再び把持し、ノズル26a,26c,…から噴射流体27a,27c,…を噴射させることにより、ガイドホース4を繰出す。これにより、装置本体2を矢印A方向に進める。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、ガイドホース4の軸方向に対して位置の異なる第2の推進ユニットを設けたことにより、複雑な形状をした配管内において、ガイドホース4の位置を任意に調節しながら配管内作業装置全体を所望の位置に移動させることが可能となる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1…配管 2…装置本体 3…テレビカメラ 4…ガイドホース 5、25…推進ユニット 6a、6b、6c、6d、26a、26b、26c、26d…ノズル 7a、7b、7c、7d、27a、27b、27c、27d…噴射流体 8a、8b,8c、8d…圧力流体供給ホース 9、29…把持手段 10a、10b…カメラ 11a、11b…照明 12…制御装置