【実施例1】
【0014】
本実施例では、早期状況把握装置101を用いて災害対応を行う場合について、説明する。
図1は、本実施例の早期状況把握装置101、およびネットワーク160を介して接続された各利用者端末150のシステム構成例を示した図である。図示するように、本実施例での早期状況把握システムは、災害に関する情報を収集、管理し、災害対応に利用するシステムであり、インターネット等のネットワーク160を介して災害情報を収集し、状況認識に資する情報に分類・分析し、例えば、災害対応を指揮する本部ユーザ170が、迅速かつ効果的な状況把握、および状況に応じた対処を行うために有効な情報を提供する早期状況把握装置101と、該早期状況把握装置101に情報を提供するセンサや災害関連組織が保有する防災システム等の情報ソース130と、ソーシャルネットワークサービス(以下、SNSと呼ぶ)等を提供する情報システム140と、現場ユーザ180が本部ユーザ170からの指示、あるいは早期状況把握装置101から提供される情報に基づいて現場の情報を収集し、ネットワーク160を介して直接、あるいは情報システム140を利用して早期状況把握装置101に情報を提供する端末装置150から構成される。
【0015】
情報ソース130、情報システム140、端末装置150は、それぞれ複数存在しても良い。また本部ユーザ170、あるいは現場ユーザ180は、早期状況把握装置101と端末装置150を両方利用しても良い。なお、ネットワーク160を介して送受信される情報の種類としては、テキスト情報、位置情報、時刻情報、音声情報、画像、動画、その他発信者に関する情報等がある。
【0016】
早期状況把握装置101は、本部ユーザ170や現場ユーザ180が所属する組織の建屋やサーバルームなどに設置してもよいし、組織から物理的に距離が離れたデータセンター等に設置して運用しても良い。
【0017】
更に
図1を使って、早期状況把握装置101、端末装置150における代表的なソフトウェア構成を説明する。
早期状況把握装置101は、データ収集部102、インテリジェンス導出部103、情報表示部104、情報配信部105、ルール管理部106、ルールDB(データベース)107、分析結果DB108、フォーマットDB109、地図データ110、衛星画像DB111、収集分類DB112、業務モデル113から構成される。
【0018】
データ収集部102は、地震計や河川水位計などのセンサ装置、報道やインターネットなどの情報メディア、各防災関係機関が保有する防災システムなどの情報ソース130やSNS等を提供する情報システム140、および端末装置150などから、ルールDB107に格納された収集ルール127に基づき情報を収集するデータ収集機能114と、データ収集機能114によって収集した情報を、ルールDB107に格納された分類ルール128に基づき分類し、各データの収集時刻や収集地域等の情報とともに収集分類DB112に格納するデータ分類機能115から構成される。ここで、収集ルール127には、収集頻度や収集地域、収集キーワードなどのデータ収集機能に必要な情報が記載されている。分類ルール128には、収集した情報を、火災や津波、建物被害などの事象に分類するためのルールが記載されている。例えば、収集した情報に「煙」や「炎」などの火災に関連するキーワードが含まれている場合、「火災」に関連する情報として分類する(以下、「火災」などを分類タグと呼ぶ。)。分類タグは、「地震」「火災」「津波」「交通」「避難」等、予め分類ルールに登録しておいても良いし、運用する中で、追加、修正、削除を加えても良い。
【0019】
インテリジェンス導出部103は、収集分類DB112に格納されたデータについて、ルールDB107に格納された分析ルール129に基づき、データ量が急激に増加または新たに発生、あるいは減少した事象や地域、また地図データ110に含まれる人口分布データやハザードマップ等と比較して収集されたデータ量が少ない、あるいは多い地域、また過去の災害時に収集分類DBに格納されたデータと比較してデータ量の差分が大きい事象や地域を監視・抽出して、その結果を分析結果DB108に格納する監視・分析機能116と、収集分類DB112や分析結果DB108から本部ユーザ170が必要とするデータを検索、あるいは業務モデル113に格納された業務フローに基づいて自動的に検索し、情報表示部104に提供するデータ検索機能117から構成される。ここで、ハザードマップは、シミュレーション等によって、事前、あるいは事後に、災害時の各地域における被害予測を示したものである。また、業務モデル113は、避難勧告業務、避難所管理業務、救援物資配送業務、救急救命業務など、各種業務フローとそれに必要な情報に関する分類タグを含む。例えば、避難勧告業務には、「交通」「避難」等の分類タグが関係付けられる。
【0020】
情報表示部104は、収集分類DB112や分析結果DB108に格納されたデータ、またはデータ検索機能117から提供されたデータについて、各データに含まれる緯度、経度、高度等の地理的位置を示す情報に基づき、地図データ110に含まれる地図データや衛星画像DB111に含まれる衛星画像データにマッピング(前記提供されたデータを、地図データ、又は画像データ上の位置と対応付ける)する地理空間統合機能118と、収集分類DB112や分析結果DB108に格納されたデータについて、各データに含まれる時間等の情報や、地理空間統合機能118によって地図データや衛星画像データとマッピングされた情報に基づき、被害把握画面124や分析結果表示画面125、指示・配信画面126を表示、また本部ユーザ170からの入力を受け付けるユーザインタフェース119から構成される。
【0021】
情報配信部105は、収集分類DB112や分析結果DB108に格納されたデータについて、フォーマットDB109に格納されている各種フォーマットに基づき、各防災関係機関が保有する防災システムやSNS等を提供する情報システム140、端末装置150などで表示、利用できるデータ形式に変換するデータ変換機能120と、収集分類DB112や分析結果DB108に格納されたデータ、あるいはデータ変換機能120で変換されたデータについて、ユーザインタフェース119の指示・配信画面126から入力された指示に基づく、あるいは定期的または収集分類DB112や分析結果DB108に格納されたデータに変化があったタイミングで、各防災関係機関が保有する防災システムやSNS等を提供する情報システム140、端末装置150などにデータを送信するデータ配信機能121から構成される。
【0022】
ルール管理部106は、データ収集部102で利用するデータ収集先や収集頻度、収集キーワード等を記載した収集ルール127と、収集データと付与する分類タグの関係を記載した分類ルール128と、インテリジェンス導出部103で利用する分析アルゴリズムを記載した分析ルール129を、本部ユーザ170の入力に基づき作成し、ルールDB107に格納するルール作成機能122と、収集分類DB112や分析結果DB108に格納されたデータに基づき、収集ルール127、分類ルール128、分析ルール129を自動的に更新、あるいは本部ユーザ170の入力に基づき更新するルール変更機能123から構成される。
【0023】
端末装置150は、現場ユーザ180が情報を入力し、ネットワーク160を介して、早期状況把握装置101に直接、あるいはSNS等を提供する情報システム140を介して、情報を送信する現場情報収集機能151と、早期状況把握装置101から受信したデータを表示、あるいは地図データ153と合わせて表示する情報受信・表示機能152から構成される。
【0024】
早期状況把握装置101で処理される情報や情報ソース130や情報システム140、端末装置150から送信される情報は、テキスト情報、位置情報、時刻情報、音声情報、画像、動画、その他発信者に関する情報等がある。ここで、位置情報については、例えば、GPSを利用して取得したり、利用する携帯電話基地局等の位置情報を利用して取得する。
【0025】
早期状況把握装置101は、平常時から継続的に情報を収集・監視し、収集したデータを用いて災害等の危機的事象が発生した直後の異常検知、および状況の推移を本部ユーザ170に提供し、本部ユーザ170からの指示に基づき、あるいは自動的に情報収集を繰り返しながら、本部ユーザ170の対処指示に資する情報の量と質(信頼性)を高め、かつ対処に資する情報を提供する。以下に、早期状況把握装置101における情報の量と質を高め、かつ対処に資する情報を提供するための情報処理フローについて記載する。
【0026】
図2は、本実施例における情報処理フローについて図示したものである。
本発明の情報処理フローは、主に状況監視・把握フロー201、情報分析フロー202、情報配信フロー203、情報改善フロー204から構成される。
【0027】
状況監視・把握フロー201は、情報ソース130や情報システム140、端末装置150から情報を収集し、収集した情報を情報収集DB112に格納、また本部ユーザ170に提供する。
情報分析フロー202は、状況監視・把握フロー201によって処理され、格納された収集分類DB112内のデータを用いて、情報を分析し、分析した結果を分析結果DB108に格納、また本部ユーザ170に提供する。
指示配信フロー203は、本部ユーザ170からの入力、あるいは、情報改善フロー204から受信したデータに基づいて端末装置150に情報を配信する。
【0028】
情報改善フロー204は、状況監視・把握フロー201によって処理され、格納された収集分類DB112内のデータ、または情報分析フロー202によって格納された分析結果DB108内のデータ、あるいは本部ユーザ170からの入力に基づいて、ルールDB107を更新する。また情報改善フロー204により更新されたルールDB107に基づいて、状況監視・把握フロー201、および情報分析フロー202が実行される。
【0029】
本発明の情報処理フローによれば、災害等発生直後の収集できる情報が少ない時間帯は、一般の住民等から配信される信頼性が比較的低い情報の活用量を増やして、被害状況等の把握や分析を行うための情報を、本部ユーザ170に提供する。その後、本実施例の情報処理フローを継続して実行しながら、徐々に情報の信頼性を高めながら、より精度の高い被害状況等の把握や分析を行い、本部ユーザ170の的確な判断や対処に資する情報を提供することができる。これによって、想定外の事象が発生するような危機的状況下において、例えば、情報源として当初想定していたセンサや情報システム、災害関連機関からの情報が不足する場合であっても、迅速かつ継続的に判断や対処のための意思決定を行うことが可能となる。
【0030】
以下、状況監視・把握フロー201、情報分析フロー202、情報配信フロー203、情報改善フロー204について、図を用いて詳細に説明する。
【0031】
図3は、本実施例における状況監視・把握フローについて図示したものである。
早期状況把握装置101は、データ収集機能114によって、地震計や河川水位計などのセンサ装置、報道やインターネットなどの情報メディア、各防災関係機関が保有する防災システムなどの情報ソース130やSNS等を提供する情報システム140、および端末装置150などから、ルールDB107に格納された収集ルール127に記載された収集頻度や収集地域、収集キーワードなどに基づき情報を収集し、収集分類DB112に格納する(S211)。ここで、データ収集機能114は、収集した情報を収集分類DB112に格納することなく、データ分類機能115に渡しても良い。
【0032】
次に、データ分類機能115によって、S211で収集された情報、または収集分類DB112に格納された情報について、テキスト部分に対して形態素解析などの解析処理を行って、ワード毎に分割し、ルールDB107に格納された分類ルール128に基づき分類して、分類タグを付与し、収集分類DB112に格納する(S212)。ここで、分類ルール128には、火災、洪水、津波、避難者滞留等の緊急時事象とワードとの関係性を記述し、例えば形態素解析の結果、火災と関係性があるワード(例えば、「煙」や「炎」など)が抽出された場合には、例えば1つのキーワードにより、または複数のワードのアンド条件により、分類タグ「火災」を付与する。1つの情報に複数の分類タグを付与しても良い。また、分類ルール128に含まれるいずれのワードも含まない情報については、「分類無し」の分類タグを付与、あるいは、収集分類DBから削除する、若しくは登録しない。「分類無し」を付与、あるいは収集分類DBから削除することにより、災害対処に関係の無い情報を表示しないなど、画面上において必要な情報の埋没を防いだり、DBのデータ量を抑えたりすることができる。
【0033】
収集分類DB112の構成例を
図4に示す。例えば、S211で収集された情報は、データを識別するためにS211で付与したデータID250、取得時刻251、情報源に関する発信者情報(名称、センサ種別など)252、位置情報(例えば、緯度、経度)253、分類タグ254、画像・映像等のリンク先255、信頼度(後述S222で記載)256などを含むメタデータと、データ本体である本文257から成り、レコード260、261のように格納される。
収集分類DB112は、膨大な量の情報を蓄積することになるため、重複データの排除や参照頻度に応じたデータの削除・圧縮など、効率的・効果的にデータを蓄積することが望ましい。ここで、S211で収集される情報について、レコード260のように全ての項目に値を登録する必要はなく、該当する値のない項目は空欄で登録しても良い(例えば、位置情報を持たない情報は、位置情報253を空欄にして登録しても良い)。また、各レコードは、S212が実行されると、分類タグが付与され、項目254に、値として付与されたタグ名称、例えば「津波」「火災」などが登録される。また、取得時刻251について、収集した情報に時刻情報が含まれていない場合は、早期状況把握装置101が当該情報を収集した時刻を値として登録しても良い。また、S212で形態素解析などの解析処理の結果、地名等の位置情報に関するワードを抽出した場合は、それをレコードの位置情報253に登録しても良い。
【0034】
図3に戻り、収集分類DB112に格納された情報は、地理空間統合機能118によって、各レコードに含まれる緯度、経度、高度等の地理的位置を示す位置情報253の値に基づき、地図データ110に含まれる地図データや衛星画像DB111に含まれる衛星画像データにマッピングされる(S213)。地理的位置を示す情報が緯度、経度ではない(県名や建物名称など)である場合は、例えば、県庁の緯度、経度や、建物が存在する場所の緯度、経度に変換してマッピングする。マッピングした情報は、繰り返し使うことも考えられるので、例えば、位置情報253の欄にマッピングした情報を記録することでも良い。また、地理的位置を示す情報が無い場合は、S213をスキップしてS214を実行しても良い。
【0035】
収集分類DB112や分析結果DB108に格納された各レコードについて、各レコードに含まれる取得時刻251や、S213によって地図データや衛星画像データとマッピングされた情報に基づき、本部ユーザ170に対して、被害把握画面124を提供する(S214)。
【0036】
被害把握画面124を
図8に示す。収集分類DB112や分析結果DB108に格納された各レコードについて、S213によってマッピングされた位置に、分類タグ254に応じたアイコン等を表示することにより、本部ユーザ170による状況把握を支援する。例えば、被害把握画面124の画面操作部301において、チェックボックス302にチェックをすることによって、収集分類DB112に登録されたレコードを全て地図表示部311に表示する。表示にあたっては、分類タグに応じて、「火災」アイコン309や「交通」アイコン310などをS213によってマッピングされた位置に表示する。ここで、複数の分類タグを持つレコードについては、複数の分類タグの全て、あるいは一部(例えば、「津波」「交通」の2つの分類タグを持つ場合は、「交通」よりも重要なタグ「津波」を表示する。分類タグの重要性については、予め登録しておく、あるいは本部ユーザ170により、登録しても良い。)を表示する。アイコンを押下することによって、当該アイコンで表示されたレコードの取得時刻251や発信者252、本文257などの値を詳細表示部308に表示する。その際、リンク先255の欄に値を持つ場合は、リンク先の画像や映像等を取得し、リンク先表示部307に表示する。
【0037】
また、画面上に表示するレコードについては、レコードに含まれる取得時刻251の値に基づき、ある一定時間以上経過した古い情報を表示させないようにすることで視認性を維持する。例えば、時間指定バー305には時間軸の座標を表わす目盛りが、時間単位、日単位などで表示され、右端を現在、左方向を過去として、時間指定アイコン306をある一定時間過去へスライドさせることにより指定することができる。また、特定の期間間隔を表わすために二つの時間指定アイコン306を表示して、スライドさせることにより、30分前〜現在の情報を表示させたり、1時間前から30分前までの情報を表示させたりする。表示させる時間間隔については、本部ユーザ170によって自由に変更できることが望ましい。
【0038】
また、収集した情報量と比較して、ある地域に同じ分類タグを持つレコードが少ない場合はそれらのレコードを表示せず、ある一定数以上集まった場合にその地域に分類タグに応じたアイコンを表示するなど視認性を維持する。また、信頼度(後述S222に記載)の低い情報は、信頼度の高い情報よりも多くの情報が集まった時点でその地域に分類タグに応じたアイコンを表示するなど視認性を維持する。また、縮尺変更バー304を操作して、地図表示部311に表示する縮尺を変えた場合、縮尺に応じて表示に必要な情報数を変える、例えば、広域表示にした場合には、ある地域(例えば、10km四方)で同じ分類タグ「火災」を持つレコードが10個以上存在する場合に「火災」のアイコンを当該地域に表示する、あるいは信頼度の高いレコードのみ表示する(あるいは低いレコードのみ表示する)など、視認性を維持する。以上の被害把握画面124の表示によって、早期状況把握装置101によって収集されるデータ量が増大した場合であっても、視認性を維持し、重要情報の埋没を防ぐことができる。
【0039】
早期状況把握装置101は、S211で収集した情報やS212で分類した情報を、端末装置150に配信しても良い。データ変換機能120により、収集分類DB112に登録された1つのレコード、あるいは複数のレコードについて、フォーマットDB109に格納された端末装置150とのデータ送受信用のフォーマットに変換する(S215)。
次に、データ配信機能121により、S215で変換した1つ以上のレコードを端末装置150に送信する(S216)。ここで、S215で変換、S216で送信するレコードは、端末装置150の位置情報や利用する現場ユーザ180に応じて抽出しても良い。例えば、端末装置150において、GPSや携帯電話基地局などから取得される位置情報に基づいて、端末装置150の周辺半径10km以内の値の位置情報253を持つレコードを優先的に送信する。または、現場ユーザ180が避難誘導を担当している場合、分類タグ254に「避難」を値として持つレコードを優先的に送信する。これにより、端末装置150の計算機リソースや送受信に利用するネットワーク帯域に制限がある場合でも、必要な情報を優先的に送信することができる。
【0040】
端末装置150は、情報受信・表示機能152によって、早期状況把握装置101より受信した1つ以上のレコードを、地図データ153を用いてマップ上に表示するか、あるいはそのまま閲覧する(S217)。また、現場情報収集機能151を用いて情報を収集、あるいは入力した情報(テキスト、画像、映像、音声など)を、早期状況把握装置101に送信する(S218)。送信する際には、早期状況把握装置101とのデータ送受信用のフォーマットに変換して送信しても良い。また、GPSや携帯電話基地局などから位置情報を取得し、送信する情報に含めて送信しても良い。S218で送信した情報は、早期状況把握装置101のS211によって処理される。
【0041】
図5は、本実施例における情報分析フロー202について図示したものである。
早期状況把握装置101は、監視・分析機能116によって、収集分類DB112に蓄積されたデータを用いて、ルールDB107に登録された分析ルール129に基づいた分析を行う。
分析手段としては、シミュレーションによって災害等に関する被害や状態の推移などの被害推計を行う(S221)。例えば、各地の震度情報と建物情報を用いて、倒壊や半壊家屋の発生数やそれによる人的被害予測を行う。また、震度情報と震源情報から各港湾における津波の到達時刻や高さ、浸水範囲やそれによる人的被害を予測する。また火災発生情報と気象情報を用いて、今後の火災の延焼推移の予測を行う。この時、算出する被害推計は、1km四方ごと等、サンプリングして算出しても良い。
【0042】
また、別の分析手段としては、収集分類DB112に蓄積された各データレコードについて、信頼度評価を行う(S222)。信頼度を評価するにあたっては、例えば、以下の評価方法がある。各レコードの項目「発信者」252の値を利用する。例えば、発信者の値が、事前に公的ユーザとして登録されている名前であるか否か(公的ユーザであれば信頼度の値を高くする)、発信者の値が同一である他のレコードの項目「信頼度」256の値(他のレコードの信頼度の平均値)、発信者の内容が実名であるか仮称であるか(実名であれば信頼度の値を高くする)など、から信頼度を算出する。
【0043】
またその他の評価方法として、各レコードの項目「位置情報」253や項目「取得時刻」251の値を利用する。例えば、S212において、レコードの項目「本文」257の値(テキスト)に対して、形態素解析などの解析処理により抽出され、項目「位置情報」253の値として登録された地名や建物名称等が、同じくGPSなどで取得されて項目「位置情報」253に登録された値(緯度、経度など)と距離的に離れている場合や、レコードの項目「本文」257の値に含まれる日時が、項目「取得時刻」251に含まれる時刻情報と時間的に離れている場合、また項目「取得時刻」251に含まれる時刻情報が現在時刻と比較して古い場合は、信頼度の値を低くする。
【0044】
また、レコードの項目「本文」257の値に含まれる情報が「〜らしい」「〜だそうだ」などの伝聞調である場合や他の情報発信者の引用文である場合は、信頼度の値を低くする。またその他の評価方法として、各レコードの項目「リンク先」255に映像や画像が付与されている場合、信頼度の値を高くする。また、レコードの項目「位置情報」253を参照して、ある地理的範囲内(例えば、1km四方)に、同一の分類タグを持つレコードが複数存在する場合は、その数に応じて信頼度の値を高くする。
【0045】
以上の評価方法に基づいて設定された信頼度から各レコードの項目「信頼度」256の値を算出し、登録する。算出の際は、各評価方法毎に重みを付け、加点計算や平均値計算などによって算出する。ここで、S222の処理は、前述のS212のデータ分類の前に行っても良い。例えば、S211で収集したデータについて、上記信頼度の評価を行い、信頼度が一定以上高い場合のみ、S212の処理を実行し、レコードに分類タグを付与することにより、そのデータを収集分類DB112に格納することでデータベースの容量を抑えることができる。
【0046】
また、別の分析手段としては、収集分類DB112に格納されたレコードについて、同一の分類タグ254の値を持つレコード数が急激に増える、あるいは減るなどの時間的データ数が変化した場合、ある一定範囲内の位置情報(緯度、経度など)253を持つレコード数が急激に増える、あるいは減るなどの地理的データ数が変化した場合、または、ある一定範囲内の地域(ある地点(緯度、経度)から1km四方など)において、地図データ110に含まれる人口数と、事前のハザードマップ(被害想定)やS221で算出された被害推計の値等と比較して、その範囲内の位置情報(緯度、経度など)253を持つレコード数が少ない場合に、異常発生として検知する(S223)。
また、過去の災害時に収集分類DB112に登録されたレコードの分類タグ254の値を参照し、同一の分類タグを含むレコード(例えば、「火災」の分類タグを持つレコード)の数同士を比較して、差分が大きい分類タグを異常として検知しても良い。
【0047】
また、収集分類DB112に格納されたレコードについて、項目「発信者」252と項目「位置情報」253の内容を参照して、発信者の動きを追跡し、その移動速度やある一定範囲内の地域(緯度、経度など)の発信者数(レコード数)から帰宅困難者数や滞留状態を抽出する。例えば、項目「発信者」252の値が「A」であるレコードを抽出し、抽出したレコードの位置情報253の値を取得する。取得した位置情報253の値をS225によって地図上にマッピングすることによって、発信者Aの動きを可視化することができる。また、地図上にマッピングされたレコードの取得時刻251の値を参照することで、マッピングされた地点間の距離と取得時刻間の差分から移動速度を算出することができる。また、発信者の端末装置150から発信される位置情報(GPSなどから取得)と同一範囲内の地域(緯度、経度など)に「火災」などの分類タグを持つレコードが存在する場合、発信者が危険地域にいるとして抽出することができる。
【0048】
これらS221、S222、S223の監視・分析処理によって、SNSなどから収集される様々な信頼度を持つ情報とその他の情報を融合して、災害対処活動に資する情報を提供することができる。例えば、S221で算出された被害推計は、事前のハザードマップ(被害想定)と比較することによって、計画通りの活動(例えば物資配送量)で良いか、計画以外の活動を行う必要があるか等を判断し、支援計画を立てるという災害対処に資する。S222で算出された信頼度は、信頼度の高いレコードのみを表示するなど、表示する情報全体の信頼性の制御に利用できるとともに、信頼度の低いレコードの本文257の値と同一の分類タグを持ち、かつ一定範囲内の位置情報を持ち、かつ信頼度の高いレコードの本文257の値とを比較することで、信頼度の低いレコードの本文257の値をデマとして抽出し、そのデマを打ち消すための正しい情報を、本部ユーザ170側から発信することによって、ネットワーク160上で発生するデマの拡散を防ぎ、ネットワーク160上で送受信される情報のうちのデマの割合を減らし、早期状況把握装置101で収集する情報の信頼性を向上させることができる。
S223で異常発生として検知された分類タグや地域は、情報収集の効率化や臨機応変な対処活動の指示に資する。例えば、「火災」の分類タグを持ち、かつ信頼度が高いレコードが急激に増えた地域については、消防士を派遣する。また、地図データ110に含まれる人口数と、事前のハザードマップ(被害想定)やS221で算出された被害推計の値等と比較して、その範囲内の位置情報(緯度、経度など)253を持つレコード数が少ない地域については、現場ユーザ180や公的機関職員等に対して、当該地域の情報収集を依頼する。また、帰宅困難者数や滞留状態が抽出された地域については、避難誘導のための人員の派遣や当該地域内の公共施設等に休憩場所や食料などの提供を要請する。また、危険地域に存在する情報端末に対しては、すぐに避難するように警告を発信する。
【0049】
上記S221、S222、S223を実行した結果は、分析結果DB108に登録される。分析結果DB108の構成例を、
図4に示す。例えば、S221を実行した結果は、位置情報とその位置に関して算出された推計値を登録する。例えば、津波の被害推計の場合、位置情報と津波到達時刻、高さ、浸水深等を、津波被害推計結果271として登録する。ハザードマップ(地図上に被害推計結果を重畳したもの)として登録しても良い。
S222を実行した結果は、信頼度を評価したレコードについて、データIDと各評価手法により算出された信頼度を分析結果DBに登録する。例えば、発信者情報で評価した信頼度282、位置情報で評価した信頼度283、時刻で評価した信頼度284、本文の内容(伝聞調、情報引用等)で評価した信頼度285、各評価結果から総合的に評価された総合信頼度286を登録する。ここでは、レコード287、288の総合信頼度286は、各信頼度の平均値としているが、評価毎に重みを付けて総合信頼度を算出しても良く、単位も百分率である必要はない。なお、総合的に評価された信頼度は、収集分類DBの項目「信頼度」に登録しても良い。また、信頼度を評価した各レコードについて、定期的、あるいは本部ユーザ170からの指示に基づいて、全レコード、あるいは一部分のレコードに対して、S222の処理を行い、信頼度を更新しても良い。
【0050】
S223を実行した結果、ある地域で急激に収集されるレコード数が増えた(あるいは減った)分類タグについては、当該地域の(中心点の)位置情報と分類タグの値を登録する(例えば、レコード290のデータ291)。また、地図データ110に含まれる人口数と、事前のハザードマップ(被害想定)やS221で算出された被害推計の値等と比較して、ある一定範囲内(ある地点(緯度、経度)から1km四方など)の位置情報(緯度、経度など)253を持つレコード数が少ない地点については、当該地点の位置情報の値を登録する(例えば、レコード290の292)。また、発信者の動き(位置情報)を抽出した結果は、レコード293のように登録する。上記分析結果DBのレコード270、271、290、293は、必ずしも分析結果DB108に登録する必要はなく、S221、S222、S223の処理を実行した後、分析結果DB108への登録をスキップしてS225を実行しても良い。
【0051】
早期状況把握装置101は、データ検索機能117によって、収集分類DB112や分析結果DB108から、レコードを抽出する(S224)。検索にあたっては、本部ユーザ170が、被害把握画面124や分析結果表示画面125を介して、収集分類DB112や分析結果DB108のレコードの項目名や、項目値(各項目の内容)を指定することによって、該当するレコードを抽出する。例えば、本部ユーザ170は、検索キーとして、分類タグ「火災」、期間「1日」を指定することによって、項目「分類タグ」の内容に「火災」を含み、かつ項目「時刻」の内容が、現在時刻から1日前までの範囲にあるレコードが抽出される。または、業務モデル113に含まれる本部ユーザ170の業務範囲から、該当するレコードを抽出する。例えば、本部ユーザ170がA県の担当であるならば、A県の範囲内のロケーション(緯度、経度など)を持つレコードが抽出される。また、前記S223で異常が検出された場合に、異常検出の要因となったレコードを抽出する。例えば、分類タグ「火災」を持つレコードが急増した場合は、分類タグ「火災」を持つレコードのみ抽出する。また、項目「発信者」の値で検索する場合は、例えば、項目「発信者」252の値が「A」であるレコードを抽出する。
【0052】
分析結果DB108に登録されたレコードや、S224によって抽出されたレコードは、地理空間統合機能118によって、各レコードに含まれる緯度、経度、高度等の地理的位置を示す情報に基づき、地図データ110に含まれる地図データや衛星画像DB111に含まれる衛星画像データにマッピングされる(S225)。地理的位置を示す情報が緯度、経度ではない(県名や建物名称など)である場合は、例えば、県庁の緯度、経度や、建物が存在する場所の緯度、経度に変換してマッピングする。マッピングした情報は、繰り返し使うことも考えられるので、例えば、分析結果DB108にマッピングした情報を記録することでも良い。また、地理的位置を示す情報が無い場合は、S225をスキップしてS226を実行しても良い。
【0053】
分析結果DB108に格納された各レコードについて、各レコードに含まれる取得時刻等の値や、S225によって地図データや衛星画像データとマッピングされた情報に基づき、本部ユーザ170に対して、分析結果表示画面125を提供する(S226)。また、S224によって抽出されたレコードは、各レコードに含まれる取得時刻等の値や、S225によって地図データや衛星画像データとマッピングされた位置情報の値に基づき、本部ユーザ170に対して、被害把握画面124や分析結果表示画面125を介して提供される。
【0054】
分析結果表示画面125を
図9に示す。分析結果DB108に格納された各レコードについて、S225によってマッピングされた位置に、分析結果に応じた画像を表示することにより、本部ユーザ170による状況把握を支援する。例えば、分析結果表示画面125の画面操作部401の被害推計のチェックボックス402、および津波のチェックボックス403にチェックを入れることによって、S221により分析結果DB108に格納された津波被害推計結果271が、地図表示部311に表示される。また、信頼度のチェックボックス404にチェックを入れ、信頼度操作バー405のアイコン406をスライドさせることによって、例えば、▲のアイコンを右側にスライドさせることによって、例えば、被害把握画面124の画面操作部301において、チェックボックス302にチェックを入れた場合であっても、収集分類DB112に登録されたレコードのうち、信頼度が一定以上高いレコードのみを地図表示部311に表示する。▼のアイコンを左側にスライドさせることによって、表示させる信頼度の範囲(例えば、信頼度が低〜中の間)を指定することもできる。
【0055】
また、収集分類DB112や分析結果DB108のレコードの項目名や、項目値(各項目の内容)を入力して検索ボタン408を押下することによって、該当するレコードを抽出し、地図表示部311のS225によってマッピングされた位置に、分類タグに応じたアイコン等を表示する。また、異常検知のチェックボックス407にチェックを入れることによって、ある地域で急激に収集されるレコード数が増えた(あるいは減った)分類タグについて、当該地域の(中心点の)位置に分類タグのアイコン409が表示される。また、ある一定範囲内の地域(ある地点(緯度、経度)から1km四方など)において、地図データ110に含まれる人口数と、事前のハザードマップ(被害想定)やS221で算出された被害推計の値等と比較して、その範囲内の位置情報(緯度、経度など)253を持つレコード数が少ない場合、すなわち情報の空白地域として登録された地域について、情報の空白を示すアイコンを表示する(
図9の410)。ここで、異常検知については、異常検知のチェックボックス407にチェックを入れていない場合でも、S223、S225が実行された時点等で自動的に表示するようにしても良い。また、S223において、収集分類DB112に格納されたレコードについて、同一の分類タグ254の値を持つレコード数の増減を分析した結果を、例えば、各分類タグごとに、レコード数と時間の関係を、411のようにグラフ化して分析結果表示画面125に表示しても良い。
【0056】
図6は、本実施例における指示配信フロー203について図示したものである。
早期状況把握装置101は、前記の状況監視把握フロー201や情報分析フロー202によって蓄積された収集分類DB112や分析結果DB108のレコードについて、S213やS225の処理を実行することによって、地図データ110に含まれる地図データや衛星画像DB111に含まれる衛星画像データにマッピングされ(S231)、本部ユーザ170に対して、被害把握画面124や分析結果表示画面125を介して提供される。ここで、早期状況把握装置101は、被害把握画面124や分析結果表示画面125上で、指示先や指示地域、指示内容等を本部ユーザ170が入力するための指示配信画面126を表示する(S232)。指示配信画面を表示するタイミングとしては、予め被害把握画面124や分析結果表示画面125に起動用のボタンを設置してそれを本部ユーザ170が押下することによって表示しても良いし、被害把握画面124や分析結果表示画面125上に表示された地図や衛星画像を押下することで表示しても良い。
【0057】
指示配信画面126を
図10に示す。指示配信画面126では、本部ユーザ170は、被害把握画面124や分析結果表示画面125から得られた情報を判断に用いて、現場ユーザ180に対して、画面操作部501上の指示内容入力部503に指示や情報を入力し、入力した内容を配信ボタン500を押下することによって送信する。例えば、配信先として現場ユーザ180を配信先入力部502に設定し、分析結果表示画面125に表示された情報不足地域410、すなわち情報収集が必要な地域を押下して、指示内容入力部503に情報収集指示を入力し、送信する。配信先を指定する際には、被害把握画面124や分析結果表示画面125上に表示された地図や衛星画像を指定することによって、その範囲内に存在する複数の端末装置150に対して、同一の指示や情報を送信しても良い。また、端末装置150から発信される位置情報(GPS等から取得)を基に、現場ユーザ180の位置をアイコン表示(例えば、504のように表示)し、そのアイコンを押下することによって、配信先を指定しても良い。情報の入力においては、また、被害把握画面124から信頼度が低い情報のみを表示し、それが誤った情報、すなわちデマ情報である場合は、正しい情報を入力し、端末装置150に送信してデマ情報の拡散を防止しても良い。指示や情報の配信先としては、端末装置150の他、情報ソース130や情報システム140でも良い。ここで、信頼度の低いレコードの本文257の値と同一の分類タグを持ち、かつ一定範囲内の位置情報を持ち、かつ信頼度の高いレコードの本文257の値とを比較することで、信頼度の低いレコードの本文257の値がデマであるかどうかを判断することができる。
【0058】
早期状況把握装置101は、S232の指示配信画面126で入力された情報を、端末装置150に配信する。データ変換機能120により、指示配信画面126で入力された情報を、フォーマットDB109に格納された端末装置150とのデータ送受信用のフォーマットに変換する(S233)。次に、データ配信機能121により、S233で変換されたデータを、指示配信画面126で入力された送信先の端末装置150に送信する(S234)。またS215、S216と同様の処理によって、収集分類DB112や分析結果DB108に登録された1つのレコード、あるいは複数のレコードについて、フォーマットDB109に格納された端末装置150とのデータ送受信用のフォーマットに変換して端末装置150に送信しても良い。
端末装置150は、情報受信・表示機能152によって、早期状況把握装置101のS234で送信されたデータを受信し、地図データ153を用いて、あるいはそのまま閲覧する(S235)。
【0059】
図7は、本実施例における情報改善フロー204について図示したものである。
早期状況把握装置101は、前述のS211やS212によって、収集ルール127に基づいて、平常時から常にデータを収集し、分類ルール128に基づいて、収集したデータを分類し、収集分類DB112にデータの登録を行っている。また、収集分類DBに登録されたデータは、前記のS221、S222、S223によって、分析ルール129に基づいて分析され、分析結果DB108に登録されている。
【0060】
収集分類DB112や分析結果DB108に登録されたデータは、前述のS213やS225と同様の処理によって、地図データ110に含まれる地図データや衛星画像DB111に含まれる衛星画像データにマッピングされる(S241)。また、S214やS226と同様の処理によって、収集分類DB112や分析結果DB108に登録されたデータ、また地図データや衛星画像にマッピングされたデータが、被害把握画面124や分析結果表示画面125を介して、本部ユーザ170に提供される(S242)。
【0061】
ここで、本実施例では、収集分類DB112や分析結果DB108に登録されたデータに応じて、収集ルール127や分類ルール128や分析ルール129を変更することによって、データの量や質を改善させ、本部ユーザ170や現場ユーザ180のより迅速かつ効果的な対処を可能とする。
【0062】
各ルールを変更する手段は、早期状況把握装置101が自動的に行う場合と、本部ユーザ170を介して行う場合がある。まず、早期状況把握装置101が自動的に行う場合について、以下に記載する。
【0063】
早期状況把握装置101は、ルール変更機能123によって、収集ルール127、分類ルール128、分析ルール129を自動的に変更する(S244)。S244は、S241やS242、S243の実行とは関係なく、単独に実行されても良い。各ルールの変更例を以下に示す。
【0064】
収集ルール127は、センサや信頼度の高いデータがある一定以上の数ある地域については、例えば、公的ユーザが発信者である情報以外のデータは、収集頻度を下げるように変更される。また、監視・分析機能116によりS223で異常が検知された場合に、例えば、「火災」の分類タグを持つデータが新規に発生、あるいは急激に増加した場合には、「火災」、あるいはそれに関連するワード「煙」「炎」などを収集キーワードとした収集の頻度を上げるように収集ルール127を変更する。また、ある時間内で収集されるデータ数が一定以上の場合(すなわち収集されるデータ量が多く、早期被害把握装置101の計算能力を超えるような処理負荷がかかった場合)は、画像や映像等が付与されている情報を優先的に収集するように変更される。
【0065】
分類ルール128は、収集分類DB112内のレコードの分類タグ254を参照した結果、同一の分類タグを持つレコードが少ない分類タグ、例えば「火災」の分類タグを持つレコードが少ない場合は、「煙」や「炎」、「消火」などの比較的「火災」と関係性が近いワードに加えて、「臭い」「赤い」など、関係性が遠いワードを含む情報にも「火災」の分類タグを付与するなど、「火災」の分類タグを持つレコードの数を増加させるように、分類ルールを変更する。これにより、「火災」の検知感度を高める。ここで、関係性が遠いワードを含む情報については、S222の信頼度評価において、分類タグ「火災」に関する信頼度を低いとして評価し、レコードの項目「信頼度」に登録しても良い。
【0066】
分析ルール129は、収集分類DB112に登録されるレコードが少ない場合は、異常検知の閾値を下げ、膨大になった場合は、閾値を上げるように変更される。例えば、収集分類DBに登録されるレコードが少ない場合には、ある地域の分類タグ「火災」を持つレコード数が10を超えた段階で検知して、被害把握画面124において、「火災」のアイコンを地図上の該当する地域に表示し、収集分類DB112に登録されるレコード数が増えた場合は、100を超えた段階で表示する。また、過去の災害時の収集分類DB112の内容や分析結果DB108の内容の比較により、類似する災害等を検出し、参考情報として提示するように分析ルールに記載しても良い。
【0067】
次に、本部ユーザ170を介して各ルールを変更する場合について、以下に記載する。
本部ユーザ170は、S242によって提供された被害把握画面124や分析結果表示画面125を閲覧した結果として、前記S244で早期状況把握装置101が各ルールを変更したのと同様の判断に基づいて、上記で示したような変更を行っても良い。または、本部ユーザ170の業務や個人的関心、あるいは分析手法の新規発案から、各ルールを作成し(S243)、更新しても良い。
【0068】
なお、上記では、収集分類DB112や分析結果DB108に登録されたデータが変化した場合、すなわち災害等の危機的事象が発生した場合に、各ルールの変更が行われたが、危機的事象の発生有無にかかわらず、各ルールは変更されても良い。例えば、新たなリスクを想定する、危機的事象とは関係なく平常時の業務に利用するなど、観測すべき対象が変わった場合などに各ルールを変更しても良い。また、災害対処後に、災害時に実際に発生した事象や被害の事実と、収集分類DB112の内容(分類タグの付与状況)や分析結果DB108の内容(分析して抽出した結果)を比較・評価し、分類ルールや分析ルールを変更しても良い。
【0069】
上記指示配信フロー203、および情報改善フロー204によれば、災害等発生直後の収集できる情報が少ない時間帯は、一般の住民等から配信される信頼性が比較的低い情報の活用量を増やして、被害状況等の把握や分析を行うための情報を、本部ユーザ170に提供し、現場ユーザへの指示配信や各ルールの改善によって、徐々に収集する情報の信頼性を高めながら、より精度の高い被害状況等の把握や分析を行い、本部ユーザ170の的確な判断や対処に資する情報を提供することができる。これによって、想定外の事象が発生するような危機的状況下において、例えば、情報源として当初想定していたセンサや情報システム、災害関連機関からの情報が不足する場合であっても、迅速かつ継続的に判断や対処のための意思決定を行うことが可能となる。
【0070】
図8、9、10で示した画面は一例であり、画面を構成するチェックボックスやボタン、表示領域の配置は自由に構成して良い。また、画面を複数に分割しても良い。
【0071】
前記の一連の情報処理フロー(状況監視・把握フロー201、情報分析フロー202、指示配信フロー203、情報改善フロー204)を実行した場合の例を、
図11の画面例を用いて説明する。なお、
図11では、各画面を簡略化し、地図表示領域311を中心に記載している。
【0072】
状況監視・把握フロー201により、センサ等の情報ソース130の他、SNS等の情報システム140から様々な信頼度を持つ情報を収集し、被害把握画面124に表示する(画面601)。情報分析フロー202により、例えば、ある一定範囲内の地域(ある地点(緯度、経度)から1km四方など)において、地図データ110に含まれる人口数と、事前のハザードマップ(被害想定)やS221で算出された被害推計の値等と比較して、その範囲内の位置情報(緯度、経度など)253を持つレコード数が少ない場合、すなわち情報の空白地域として登録された地域について、情報の空白を示すアイコンが表示される(画面602)。指示配信フロー203によって、本部ユーザ170は、例えば、画面602で表示された情報の空白を示す地域に存在する現場ユーザ180に対して、情報空白地域の情報収集を指示する(画面603)。指示を受けた現場ユーザ180は、指示された地域の情報収集を行い、端末装置150などにより、早期状況把握装置101に収集した情報を送信する。送信された情報は、情報監視・把握フロー201により、例えば、信頼度が高い情報605として被害把握画面に表示される(画面604)。同一の現場ユーザや他の地域の現場ユーザにおいてこれを繰り返すことによって、画面606に示すように、信頼度の高い情報607が収集され、表示される。一方で、情報改善フロー204により、量や質が改善された情報608が収集され、表示される。本部ユーザ170は、画面601、604、606と量や質が改善された情報や、情報分析フローで分析された結果を活用して、避難誘導や人命救助、支援部隊派遣などの意思決定を行うことができる。
以上の一連の情報処理フローにより、情報収集、分析、意思決定、対処のサイクルを迅速かつ的確に行い、災害等の緊急時への対処を実施することができる。
【0073】
以上、
図1〜11により、例えば、災害直後には、SNS等からの情報による信頼度の低い情報を中心とした状況把握を行い、時間が経つにつれて必要な地域の情報や信頼度の高い情報が収集され、より精度の高い状況把握を行うことを可能とする方法について述べた。本発明によれば、現場からの報告を待たずに、その時点で収集可能な情報を収集し、状況把握に役立てるとともに、情報収集すべき地域や種類(どういう情報を集めれば良いか)を判断し、現場の情報収集活動や救援・救助等の対処活動に指示を与えるなどの行動が可能となり、効果的な情報を迅速に集める、あるいは効果的な人員配置や対処活動が可能となる。
【0074】
なお、早期状況把握装置101や端末装置150において、ユーザ認証を行い、ユーザに応じて閲覧できる情報を制限するなどのアクセス管理を行っても良い。また、ネットワーク160を介して送受信される情報に対して、暗号化等の処理を行い、送信先の装置でのみ復号できるようにしても良い。
【0075】
また、上記実施例では、早期状況把握装置101を、本部ユーザ170が所属する災害関連機関に設置する場合について記載した。早期被害把握装置101をサービス事業者が活用し、被害把握や情報分析、指示配信などを、サービスとしてサービス利用者に提供しても良い。
【実施例2】
【0076】
早期状況把握装置101を活用したサービス提供形態の例を
図12に示す。
サービス事業者は、自身の所有する建屋やサーバルーム、あるいはデータセンターに、本実施例の早期状況把握装置101を設置し、インターネット等のネットワーク160を介して、サービス利用者や現場ユーザに対し、早期状況把握装置101が行う各処理をサービスとして提供する。以下に、本サービスを利用する場合の代表的な手順を示す。
【0077】
サービス利用者は、サービス利用者端末191から早期状況把握装置101にアクセスして、サービス利用者に関する情報(ユーザ名、メールアドレスなど)を利用登録データ710として送信し、本サービスの利用申し込みを行う。早期状況把握装置101は、サービス利用者端末191に対して、申し込み用の画面データを送信し、サービス利用者がWebブラウザ等のソフトウェアを用いて画面を表示し、その画面上で利用登録データを入力し、当該データを早期状況把握装置101に送信させても良い。
【0078】
サービス利用者から利用登録データ710を受信した早期状況把握装置101は、利用登録データを利用者情報DB193に登録する。
【0079】
なお、本サービスの利用申し込みは、上記手段のほか、電話やFAX、郵送などの別の手段を用いて登録データをサービス事業者に送付し、サービス事業者が早期状況把握装置101に利用者情報を登録しても良い。
【0080】
利用申し込みが完了したサービス利用者は、サービス利用者端末191から早期状況把握装置101にアクセスすることで、早期状況把握装置101が行う各処理をサービスとして利用することができる。例えば、早期状況把握装置101は、サービス利用者端末191にログイン画面データを送信し、サービス利用者がWebブラウザ等のソフトウェアを用いて画面を表示し、その画面上でユーザ名などのログインデータを入力し、当該データを早期状況把握装置101に送信し、早期状況把握装置101は、受信したログインデータと利用者情報193に登録されているデータとを参照して、利用申し込みが完了しているサービス利用者か否かを認証する。利用登録データ710にログイン用のパスワード等を含めることで、パスワードを用いた認証を行っても良い。
【0081】
早期状況把握装置101は、ログインが完了したサービス利用者端末191に対して、前述のS211やS212で、収集分類DB112に登録したレコードについて、S213、S214の処理を行い作成した被害把握画面124の画面データ712を送信し、サービス利用者は、Webブラウザ等のソフトウェアを用いて被害把握画面124を閲覧し、被害把握画面124上の画面操作部301を操作して、収集分類DB112に登録されたレコードを取得し、被害把握画面124上で閲覧する。例えば、サービス利用者は、被害把握画面124上で、分類タグを指定(例えば、分類タグ「火災」を持つレコードのみ表示するなど)して、閲覧するデータを指定し、早期状況把握装置101は、この指定に基づいて、サービス利用者端末191に当該レコードを送信する。この時、早期状況把握装置101は、サービス利用者端末191に対して、S215、S216と同様の処理を行って、収集分類DB112に登録したレコードを送信し、サービス利用者端末191が保有するアプリケーションや地図データを用いて、閲覧しても良い。
【0082】
また、早期状況把握装置101は、ログインが完了したサービス利用者端末191に対して、前述のS221やS222、S223で、収集分類DB112や分析結果DB108に登録したデータについて、S225、S226の処理を行い作成した分析結果表示画面125の画面データ712を送信し、サービス利用者は、Webブラウザ等のソフトウェアを用いて分析結果表示画面125を閲覧し、分析結果表示画面125上の画面操作部401を操作して、収集分類DB112や分析結果DB108に登録されたレコードを取得し、分析結果表示画面125上で閲覧する。
【0083】
また、早期状況把握装置101は、ログインが完了したサービス利用者端末191に対して、指示配信画面126の画面データ712を送信し、サービス利用者は、Webブラウザ等のソフトウェアを用いて指示配信画面126を閲覧し、画面操作部501上の配信先入力部502に配信先を入力し、指示内容入力部503に指示や情報を入力して、配信ボタン500を押下することで、これら入力した情報を、指示配信依頼データ713として早期状況把握装置101に送信し、早期状況把握装置101は、指示配信依頼データ713に基づき、サービス利用者が指示配信画面126で入力した情報を、同じく指示配信画面126で入力した配信先に配信する。
【0084】
サービス利用者は、早期状況把握装置101から提供された被害把握画面124や分析結果表示画面125を閲覧した結果として、前述S244で早期状況把握装置101が各ルールを変更したのと同様の判断に基づいて、収集ルール127、分類ルール128、分析ルール129の変更を行っても良い。または、サービス利用者の業務や個人的関心、あるいは分析手法の新規発案から、各ルールを作成し、ルールDB107に登録しても良い。サービス利用者は、作成あるいは変更したルールを記載した収集・分類・分析依頼711を、早期状況把握装置101に送信する。早期状況把握装置101は、収集・分類・分析依頼711に基づき、ルールDB107に各サービス利用者ごとの収集ルール127、分類ルール128、分析ルール129を登録し、ログイン時の利用者情報を利用して、サービス利用者に対し、各サービス利用者ごとのルールを用いて、上記被害把握や情報分析、指示配信などの各サービスを提供する。
【0085】
現場ユーザは、現場ユーザ端末192から早期状況把握装置101にアクセスして、現場ユーザに関する情報(ユーザ名、メールアドレスなど)を利用登録データ720として送信し、本サービスの利用申し込みを行う。早期状況把握装置101は、現場ユーザ端末192に対して、申し込み用の画面データを送信し、現場ユーザがWebブラウザ等のソフトウェアを用いて画面を表示し、その画面上で利用登録データを入力し、当該データを早期状況把握装置101に送信させても良い。また、前述のサービス利用者が、現場で使用する1つ以上の現場ユーザ端末について一括して利用登録データを、早期状況把握装置101に送信しても良い。
【0086】
早期状況把握装置101は、前述のサービス利用者端末191へのサービス提供と同様に、現場ユーザ端末192に被害把握画面や分析結果表示画面、指示配信画面などを提供する。この時、早期状況把握装置101は、利用登録が完了した現場ユーザ端末192に対して、早期状況把握装置101と現場ユーザ端末192間のデータの送受信を行う、また被害把握画面や分析結果表示画面、指示配信画面などを表示するための支援アプリ721を送信して、現場ユーザ端末192に当該アプリをインストールさせても良い。支援アプリ721は、本サービス利用者専用のアプリケーションであり、計算機リソースやネットワーク帯域に制限がある場合に、送受信するデータサイズの低減や画面を簡略化する。
【0087】
また、早期状況把握装置101は、前述S233、S234と同様の処理により、サービス利用者端末191から送信された指示配信依頼データ713に含まれる情報や指示内容を対応者用情報722として、現場ユーザ端末192に送信する。現場ユーザは、受信した対応者用情報722に基づき、情報収集やその他対処等を行い、収集した情報を現場情報723、あるいは対処状況を対応状況724として、例えば支援アプリ721を用いて早期状況把握装置101に送信する。
【0088】
以上、サービス利用者や現場ユーザが、サービス利用者端末191や現場ユーザ端末192を用いて、早期状況把握装置101から提供される各種画面を通じて、DB内のレコードの参照やルール変更を行う例について示したが、サービス利用者端末191や現場ユーザ端末192から情報収集依頼や情報分析依頼、指示配信依頼、ルール変更依頼などのサービス依頼701をサービス事業者がサービス事業者端末190で受信し、サービス事業者端末190から早期状況把握装置101にアクセスして、前述S243と同様の処理によって、各サービス利用者ごとの収集ルール127、分類ルール128、分析ルール129を登録しても良い。また、サービス事業者が、サービス事業者端末190上で早期状況把握装置101から提供される被害把握画面124、分析結果表示画面125、指示配信画面126を操作して、地図表示領域311に情報を表示し、例えば、表示した画面をキャプチャして、サービス利用者端末191や現場ユーザ端末192に送信する等、サービス利用者端末191や現場ユーザ端末192が画面上で行う処理を代行し、その結果を各端末に送信しても良い。
【0089】
以上、本実施形態によれば、災害等の事象への対応者が、想定外の事象が発生するような状況下においても、誤報やデマの影響を極小化、および情報検索性を確保しながら、発生および発生が懸念される事象について、迅速かつ継続的に情報を収集し、効果的な状況把握を行うことができる。
また、状況把握のために提示された情報を活用して、状況に応じた対処、および更なる有益な情報を収集することができる。
【0090】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0091】
また、上記実施例の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0092】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。