(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つのエステル化合物を形成するように、触媒が存在する不活性雰囲気下でカルボン酸とAbitol Eアルコールとを溶解し、前記溶解したカルボン酸とAbitol Eとを110℃〜230℃の高温度で不活性雰囲気下で反応させるステップであって、必要に応じて溶媒存在下で実行するステップと、
前記少なくとも1つのエステル化合物を冷却し、分離するステップと、を含み、
前記少なくとも1つのエステル化合物が一般式Iによってあらわされる少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載の前記組成物を形成する方法。
エステル化合物を形成するように、触媒が存在する不活性雰囲気下でカルボン酸とAbitol Eアルコールとを溶解し、前記溶解したカルボン酸とAbitol Eとを110℃〜230℃の高温度で不活性雰囲気下で反応させるステップであって、必要に応じて溶媒存在下で実行するステップと、
前記エステル化合物を冷却し、分離するステップと、を含み、
前記エステル化合物が一般式IIIおよびIVによってあらわされる化合物の混合物を含む、請求項4に記載の前記組成物を形成する方法。
前記エステル化合物を形成するように、前記溶解したカルボン酸とAbitol Eと反応させるステップが水分を除去するステップを含む、請求項8又は9に記載の方法。
前記触媒が、チタン酸テトラアルキル、ジアルキルスズオキシド、ジブチルスズオキシド、ジブチルオキソスタンナン、テトラアルキルスズオキシド化合物、ジブチルスズジラウレート、ジアルキルスズ酸化合物、ブチルスズ酸、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、酸化チタン、p−トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸およびこれらの混合物から選択される、請求項8又は9に記載の方法。
一般式IIによってあらわされる少なくとも1つのエステル化合物の量が、前記組成物の5重量%〜50重量%の範囲である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
転相インク(時に、「固体インク」、「ホットメルトインク」とも呼ばれる)は、種々の液相堆積技術で使用されてきた。転相インクは、周囲温度ではインクを固相に存在させることができるだけではなく、インクジェット印刷機器の操作温度である高温では液相にも存在させることができる「転相剤」を含有することが多い。堆積物の操作温度では、液体インクの液滴を印刷機器から放出し、直接的に、または加熱した中間転写ベルトまたはドラムを介し、記録基材表面に向かってインクが吐出されるか、または記録基材表面とインクが接触すると、インクは基材の上ですばやく固化し、固化したインクによる所定の模様の印が生成する。転相インクは、例えば、米国特許第5,496,879号(その開示内容全体は、参照することで本明細書に全体的に組み込まれる)に開示されるようなグラビア印刷といった他の印刷技術にも使用されてきた。転相インクは、郵便消印、産業用の印付け、ラベル付けのような用途にも使用されてきた。
【0003】
インクジェットプリンターには、転相インクは、室温では固体のままであるため運搬やインクを取り扱うときには簡便であり、長期間にわたって保存することができ、使用も容易であるため、転相インクが望ましい。それに加え、液体インクジェットインクからインクが蒸発することによるノズルの詰まりに関連する問題は、大部分がなくなり、そのため、インクジェット印刷の信頼性を大きく向上させる。さらに、インク液滴を最終的な記録基材(例えば、紙、透明材料など)に直接塗布する転相インクジェットプリンターでは、基材と液滴が接触すると液滴がすばやく固化し、その結果、印刷媒体に沿ったインクの移動が抑えられ、画質が向上する。
【0004】
インクジェット印刷システムには、一般的に、米国特許第6,547,380号に記載されているように、連続流式とドロップオンデマンド式の2種類がある。米国特許第5,195,430号および同第6,547,380号の開示内容全体は、本明細書に全体的に参考として組み込まれる。
【0005】
少なくとも3種類のドロップオンデマンド式インク・ジェット・システムが存在する。1つめのドロップオンデマンド式インク・ジェット・システムは、主要な構成要素として、インクが充填されたチャネルまたは経路を備えており、その片方の末端にノズル、他端付近に圧電式トランスデューサーを備えており、圧力パルスが生成する圧電式機器である。別の種類のドロップオンデマンド式システムは、音響インク印刷として知られている。さらに別の種類のドロップオンデマンド式システムは、サーマル・インク・ジェットまたはバブルジェット(登録商標)として知られており、高速の液滴を発生させる。
【0006】
基材に直接、または中間転写体に印刷する転相インクを利用する圧電式インクジェット機器の典型的なデザイン、例えば、米国特許第5,372,852号、第7,063,410号、第7,448,719号に記載されているものがある(開示内容は、参照することでその全体が本明細書に組み込まれる)。吐出部の操作温度では、液体インクの液滴が印刷機器から放出され、インクの液滴が、直接的に、または加熱した中間転写ベルトまたはドラムを介し、記録基材表面に接触すると、インクの液滴はすばやく固化し、インク液滴が固化したものによって所定の模様が生成する。この手法は、印刷ヘッドの設計を単純化し、小さな動きによって、液滴の良好なレジストレーションを確保し、基材に直接的に、または中間転写体に印刷することができる。
【0007】
このようなジェット印刷システムに使用ための転相インクは、一般的に、例えば、周囲温度または室温(例えば、約20℃〜約25℃)では固相であるが、インクジェット印刷機器の操作温度である高温では液相で存在する。吐出部の操作温度では、インクは溶融し、液体インクの液滴が印刷機器から放出される。このような性質を発揮するために、既知の転相インクは、一般的に、結晶性ワックスや、溶融した液体状態から固体状態への鋭敏で迅速な相転移を可能にする他の材料のような成分を含有する。しかし、多くの既知の転相インクは、コーティングされた紙基材への接着性が悪いため、耐引っ掻き性が悪く、画像の堅牢性が悪く、硬くて脆い性質を有し、「紙の折りたたみ」性能が悪い(例えば、書類を折りたたんだときに画像が割れたり、しわがついたりする)、書類の裏移りなどの欠点を示す。さらに、これらのインク成分は非極性であり、一般的に利用される染料および顔料との相溶性の問題があることが多く、インク担体中での良好な溶解度または分散性を確保し、着色剤の分解または着色剤の移動を防ぐために、良好な長期間にわたる熱安定性を確保するには、もっと高価な着色剤または特注の着色剤を必要とする。
【0008】
顧客にとって、バイオ再生可能であるか、または少なくとも部分的に再生可能な資源から誘導される材料に対する需要も生じている。エネルギーおよび環境に関する政策、高騰しつつある揮発性油の価格、地球規模で化石資源がすぐに枯渇するという公共/政治的な喚起によって、バイオ再生可能な材料から誘導される持続可能なモノマーを見つける必要性が生じてきた。バイオ再生可能な原料を用いることによって、製造業者は、自身のカーボンフットプリントを減らすことができ、ゼロカーボンまたはカーボンニュートラルなフットプリントへと移行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書には、エステル樹脂または化合物、例えば、Abitol Eエステル樹脂または化合物を含む組成物が記載されている。いくつかの実施形態では、例えば、インク組成物のための成分、例えば、結合剤および/または樹脂として、このような組成物を用いてもよい。
【0012】
エステル樹脂、例えば、本開示のAbitol Eエステル樹脂としては、種々のモノAbitol Eエステルおよびスペーサー基で接続されたダイマーAbitol Eエステルが挙げられる。エステル樹脂または化合物の置換基の属性に依存して、本開示の化合物は、レオロジー特性を調節し得るような、バインダー樹脂にとって望ましい種々の物理特性を示す能力を有する。官能基を適切に選択することによって本開示のエステル樹脂または化合物のいくつかのレオロジー特性を調節する能力は、転相インク組成物のインクジェット印刷のような特定の用途で使用するのに有利である。
【0013】
「飽和」との用語は、例えば、単結合のみを含む化合物を指し、本明細書では、環状構造も含む。「不飽和」との用語は、例えば、1つ以上の二重結合および/または1つ以上の三重結合を含み、炭素原子および/またはO、N、Pのようなヘテロ原子を含んでいてもよい化合物を指す。
【0014】
「炭化水素」および「アルカン」との用語は、例えば、一般式C
nH
2n+2を有し、nが1以上の整数、例えば、1〜約60である分岐した分子および分岐していない分子を指す。例示的なアルカンとしては、メタン、エタン、n−プロパン、イソプロパン、n−ブタン、イソブタン、tert−ブタン、オクタン、デカン、テトラデカン、ヘキサデカン、エイコサン、テトラコサン、これらの異性体形態などが挙げられる。アルカンは、水素原子を1つ以上の置換基で置き換えることによって置換されていてもよい。「脂肪族」との用語は、例えば、非環状の直鎖または分枝鎖のアルカンである炭化水素分子を指す。「長鎖」との用語は、例えば、nが、約8〜約60、例えば、約18〜約45または約24〜約40の数である直鎖炭化水素鎖を指す。「短鎖」との用語は、例えば、nが、1〜約7、例えば、約2〜約5または約3〜約4の数である直鎖炭化水素鎖を指す。「環状」または「脂環式」との用語は、例えば、1つ以上の環で構成され、この環が、縮合していてもよく、分岐していてもよく、または多環(例えば、二環)であってもよい環状炭化水素分子を指す。
【0015】
「アルキル」との用語は、例えば、非環状または環状であり、分岐しているかまたは分岐しておらず、一般式C
nH
2n+1またはC
nH
2n−1を有するアルカンから誘導され、nが1以上の値を有する整数である飽和炭化水素基を指す。例えば、nは、1〜約60の範囲にあってもよい。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、neo−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、iso−オクチル、シクロオクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル、これらの異性体形態などが挙げられる。「低級アルキル」との用語は、例えば、1〜約12個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0016】
「アルケン」との用語は、例えば、アルケンから誘導され、炭素原子の間に1個以上の二重結合を含む分岐した不飽和分子および分岐していない不飽和分子を指す。例示的なアルケンとしては、エチレン、プロペン、ブテン、ブタジエン、オクテン、デセン、テトラデセン、ヘキサデセン、エイコセン、テトラコセンなどが挙げられる。アルケンは、水素原子を1つ以上の官能基で置き換えることによって置換されていてもよい。
【0017】
「アリール」との用語は、芳香族化合物から誘導され、芳香族化合物と同じ一般的な構造を有する有機基を指す。芳香族化合物の例としては、例えば、フェニル(C
6H
5)、ベンジル(C
7H
7)、ナフチル(C
10H
7)、アントラセニル(C
14H
9)、フラニル(C
4H
3O)、ピリジニル(C
5H
4N)、チオフェニル(C
4H
3S)などが挙げられる。場合により、これらの芳香族基は、アルキルおよびシクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、ヒドロキシル、チオール、ハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、(チオ)エステル、カルボン酸、アシル、(アルキル)アミノ、(アリール)アミノ、ニトロ基を含む、独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0018】
「アリールアミン」との用語は、例えば、アリール基およびアミン基を両方とも含む部分を指す。
【0019】
「アルコール」は、例えば、1個以上の水素原子が−OH基と置き換わったアルキル部分を指す。「低級アルコール」との用語は、例えば、約1〜約6個の炭素原子を含み、1個以上の水素原子が−OH基と置き換わったアルキル基を指す。「一級アルコール」との用語は、例えば、−OH基が末端炭素原子に結合したアルコール、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノールなどを指す。「二級アルコール」との用語は、例えば、−OH基が、2個の他の炭素原子に結合した炭素原子に結合するアルコール、例えば、2−プロパノール(イソプロパノール)、2−ブタノール、2−ヘキサノールなどを指す。「三級アルコール」との用語は、例えば、−OH基が、3個の他の炭素原子に結合した炭素原子に結合するアルコール、例えば、メチルプロパノール(tert−ブタノール)などを指す。
【0020】
「ハロゲン」または「ハロゲン原子」との用語は、例えば、7族元素、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)を指す。「ハロ」との用語は、例えば、有機化合物中、水素原子をハロゲン原子で置換することを指す。「ハロアルキル」は、例えば、1個以上の水素原子がハロゲン原子と置き換わったアルキル部分を指す。「ペルハロゲン化」との用語は、例えば、すべての水素原子がハロゲン原子と置き換わった化合物を指し、一方、「部分的にハロゲン化」は、例えば、すべてではない水素原子がハロゲン原子と置き換わった化合物を指す。
【0021】
「アルキルアリール」との用語は、例えば、アルキル部分とアリール部分とを含み、アルキルアリール基のアルキル部分が、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子が、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、または存在していなくてもよく、例えば、アルキルアリール鎖中に約6〜約50個の炭素原子、例えば、約6〜約40個または約7〜約20個の炭素原子を含み、置換されたアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基の置換基は、例えば、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、イミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2つ以上の置換基が接続して環を形成していてもよい。
【0022】
「アルキレン」との用語は、例えば、直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素、Mg、Li、Al、Ge、Cu、Fe、Ni、Pd、Ptなどがアルキレン基に存在していてもよく、または存在していなくてもよい、二価の脂肪族基またはアルキル基を指す。例えば、アルキレン基は、構造−(CH
2)
p−を有していてもよく、pは、1〜約60、例えば、約5〜約25、または約7〜約15の範囲の整数である。
【0023】
「アリーレン」という用語は、例えば、置換および非置換のアリーレン基を含め、ヘテロ原子、例えば、O、N、S、P、Si、B、Al、Li、Mg、Cu、Feなどがアリーレン基に存在していてもよく、または存在していなくてもよい、二価の芳香族基またはアリール基を指す。例えば、アリーレン基は、アリーレン鎖中に約5〜約20個の炭素原子、例えば、約6〜約14個または約6〜約10個の炭素原子を含む。
【0024】
「アリールアルキレン」との用語は、例えば、置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子、例えば、O、N、S、P、Si、B、Al、Li、Mg、Cu、Feなどが、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、または存在していなくてもよい、二価のアリールアルキル基を指す。例えば、アリールアルキレン基は、アリールアルキレン鎖中に約6〜約32個の炭素原子、例えば、約7〜約22個または約7〜約20個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0025】
「アルキルアリーレン」との用語は、例えば、置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子、例えば、O、N、S、P、Si、Ge、B、Al、Li、Mg、Cu、Fe、Pd、Ptなどが、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、または存在していなくてもよい、二価のアルキルアリール基を指す。例えば、アルキルアリーレンは、アルキルアリーレン鎖中に約6〜約32個の炭素原子、例えば、約7〜約22個または約7〜約20個の炭素原子を含んでいてもよく、置換されたアルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基の置換基は、例えば、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、イミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、グアニジニウム基、アミジン基、イミダゾリウム基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2つ以上の置換基が接続して環を形成していてもよい。
【0026】
本明細書で使用する場合、「粘度」との用語は、複素粘度を指し、複素粘度は、強制的なせん断応力の調和振動中に決定される周波数に依存する粘度関数である。複素粘度は、典型的には、サンプルに一定のせん断応力を加えることができるレオメーターによって与えられる測定値である。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、1つ以上のエステル樹脂または化合物、例えば、二酸およびアルコールから調製され、二酸とアルコールの反応生成物が生分解性であるエステル樹脂または化合物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、二酸および/またはアルコールは、再生可能な資源から誘導されるように選択されてもよい。具体的な実施形態では、1つ以上のエステル樹脂または化合物は、以下の一般構造を有する一般式Iおよび/または一般式IIの化合物によってあらわされるAbitol Eエステル樹脂または化合物
【化1】
または一般式Iおよび/またはIIの1つ以上の化合物の混合物であってもよく、式中、R
1は、置換および非置換のアルキレン基を含み、アルキレン基にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基であり、例えば、2〜約60個の炭素原子、または約2〜約40個の炭素原子、または約4〜約10個の炭素原子を含むアルキレン基、または置換および非置換のアリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基を含み、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基、約7〜約20個の炭素原子、例えば、約7〜約18個の炭素原子、または約7〜約14個の炭素原子を含む、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基であり、
R
2〜R
25基は、独立して、水素、アルキル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロ環基からなる群から選択され、(CH
2)xは、1つ以上のメチレン基を示し、xは、1〜約36の整数、例えば、1〜約24の整数、または約1〜約20の整数である。
【0028】
いくつかの実施形態では、R基、例えば、本開示の一般式のR
2〜R
25基のうち、1つ以上は、互いに同じであってもよく、または異なっていてもよい。他の意味であると指定されていない限り、この概念は、本開示のすべての式に適用される。この概念の例示的な説明のために一般式Iを使用してもよい。例えば、一般式IのR
2〜R
25基のうち、1つ以上は、同じであってもよい。または、いくつかの実施形態では、一般式IのR
2〜R
25基のうち、1つ以上は、異なっていてもよい。
【0029】
適切な二酸と、適切な量の望ましいアルコールとの縮合反応によって、上の一般式の化合物を調製してもよい。いくつかの実施形態では、この反応は、減圧下(無溶媒プロセス、または溶媒存在下)、例えば、約100mmHg未満、または約0.1mmHg〜約50mmHgで行われてもよい。いくつかの実施形態では、この反応は、無溶媒プロセス、または溶媒存在下、望ましい程度に反応を終了させるのに適切な温度で、例えば、約110℃〜約230℃、または約130℃〜約220℃、または約150℃〜約210℃で行われてもよい。いくつかの実施形態では、縮合反応は、触媒を使用しつつ、または触媒を使用せずに行われてもよい(無溶媒プロセス、または溶媒存在下)が、反応を迅速に終了させるために触媒を用いてもよい。使用可能なさまざまな種類の触媒としては、例えば、チタン酸テトラアルキル、ジアルキルスズオキシド、例えば、ジブチルスズオキシド(ジブチルオキソスタンナン)、テトラアルキルスズオキシド化合物、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジアルキルスズ酸化合物、例えば、ブチルスズ酸、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、二酸化チタンまたはこれらの混合物が挙げられ、触媒は、出発物質の二酸を基準として、例えば、約0.005重量%〜約5重量%の量になるように選択される。いくつかの実施形態では、縮合反応は、約24時間未満、例えば、約20時間未満、または約15時間未満で終了する(すなわち、少なくとも95%、例えば、99%の二酸が反応した)。
【0030】
一例として、一般スキーム1(以下)において、例示的なアルコール(例えば、ABITOL E(商標)(Eastrman Chemicalから入手可能)を出発試薬として利用する。ABITOL Eは、代表的な構造によって示され、ヒドロアビエチルアルコール(CAS[13393−93−6])、水素化ロジンのメチルエステル(CAS[8050−15−5])、脱炭酸ロジン(CAS[8050−18−8]))を含み、これを二酸と反応させ、反応条件に応じて、ジエステルとモノエステルの混合物を得る。ここで、二酸のRは、一般式IのR
1に関して上に記載したものであると定義されてもよい。
【化2】
【0031】
この生成物を精製せずに使用することができる。このプロセスは、反応が無溶媒で行われ、さらなる精製を必要としない好ましいプロセスである。無溶媒反応は、環境にとって優しく、費用対効果も高い。
【0032】
モノエステルは、生成物中に、ジエステルに対して約1%〜約50%、または約1.5%〜約40%の量で存在していてもよい。
【0033】
具体的な実施形態では、本開示の組成物は、一般式IIIおよび/またはIVによってあらわされる少なくとも1つのエステル化合物
【化3】
または一般式IIIおよび/またはIVの1つ以上の化合物の混合物を含み、式中、R
1は、上のように(一般式Iについて)定義されたものであり、すなわち、(a)置換および非置換のアルキレン基を含み、アルキレン基にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アルキレン基、(b)置換および非置換のアリーレン基を含め、アリーレン基にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アリーレン基、(c)置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分およびアリール部分の片方または両方にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アリールアルキレン基、または(d)置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分およびアリール部分の片方または両方にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アルキルアリーレン基であり、2つ以上の置換基が接続して環を形成していてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、二酸とアルコールの反応のエステル生成物は、生分解性であり、および/または二酸および/またはアルコールは、再生可能な資源から誘導されるように選択される。生成物が石油由来であるか、または再生可能な資源由来であるかは、
14C放射性炭素年代測定法によって調べることができる。石油由来の生成物は、再生可能な資源から誘導される生成物の場合には、非常に最近または現在の放射性炭素値を有するのに対し、数百年のかなり高い
14C放射性炭素年代値を有するだろう。適切なバイオ再生可能な二酸の例としては、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、イタコン酸、アゼライン酸が挙げられ、これらは農業および森林の供給源から誘導される。この様式で、エステル樹脂または化合物全体が、バイオ再生可能であるように、または持続可能であるように選択されてもよい。
【0035】
樹脂エステルの具体例としては、以下に示す構造が挙げられるが、これに限定されない。
【化4】
【0036】
バイオ再生可能なエステル樹脂または化合物は、組成物(例えば、インク担体)中に任意の望ましい量または有効な量で、例えば、少なくとも約40重量%、または少なくとも約35重量%、および/または少なくとも約30重量%、および/または約5重量%未満の量で存在していてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、組成物の供給源となる成分、例えば、インク担体内容物の成分は、組成物が、バイオ再生可能な内容物(BRC)を多く含むことができるように選択されてもよい。例えば、インク組成物の場合、松脂から誘導されるロジンアルコール、Abitol Eを二酸(例えば、100%BRCであるコハク酸、イタコン酸、アゼライン酸)と反応させ、本開示のインク組成物のためのアモルファス組成物を作成してもよい。このようなインクは、さらに結晶性転相剤を含んでいてもよい。trans−桂皮酸は、シナモン油またはバルサム、例えば、ストラックスまたはシアバター中に見いだされる天然材料である。trans−桂皮酸は、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ酵素を用いて天然アミノ酸であるフェニルアラニンから誘導することもできる。このようなインクは、以下の一般式を有する結晶性trans−桂皮酸ジエステルを含んでいてもよく、
【化5】
式中、Rは、
(a)置換および非置換のアルキレン基を含め、アルキレン基にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アルキレン基、
(b)置換および非置換のアリーレン基を含め、アリーレン基にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アリーレン基、
(c)置換および非置換のアリールアルキレン基を含め、アリールアルキレン基のアルキル部分およびアリール部分の片方または両方にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アリールアルキレン基、または
(d)置換および非置換のアルキルアリーレン基を含め、アルキルアリーレン基のアルキル部分およびアリール部分の片方または両方にヘテロ原子が存在していてもよく、または存在していなくてもよい、アルキルアリーレン基
であり、
2つ以上の置換基が接続して環を形成していてもよい。
【0038】
適切なtrans−桂皮酸から誘導されるジエステルの具体例としては、(限定されないが)、以下の式を有するプロパン−1,3−trans−シンナメート
【化6】
以下の式を有するブタン−1,4−trans−シンナメート
【化7】
以下の式を有するヘキサン−1,6−trans−シンナメート
【化8】
以下の式を有するtrans−シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−trans−シンナメート、
【化9】
以下の式を有するpara−フェニル−1,4−ジメタノール−trans−シンナメート
【化10】
以下の式を有するビス(ヒドロキシメチル)フラン−trans−シンナメート
【化11】
以下の式を有する2,5−ジヒドロキシメチル−テトラヒドロフラン−trans−シンナメート、
【化12】
以下の式を有するtrans−桂皮酸−2,3−ブタンジオールジエステル
【化13】
など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
ある具体的な実施形態では、ジオールは、再生可能な資源から誘導されるように選択される。生成物が石油由来であるか、または再生可能な資源由来であるかは、
14C放射性炭素年代測定法によって調べることができる。石油由来の生成物は、再生可能な資源から誘導される生成物の場合には、非常に最近または現在の放射性炭素値を有するのに対し、数百年のかなり高い
14C放射性炭素年代値を有するだろう。適切なバイオ再生可能なジオールの例としては、限定されないが、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられ、これらは糖から得ることができる。この様式で、trans−桂皮酸ジエステル材料全体が、バイオ再生可能であるように選択されてもよい。
【0040】
以下の一般式を有するジエステルであり、
【化14】
式中、R
1およびR
2は、それぞれ他と独立して、つまり、同じであってもよく、または異なっていてもよいことを意味し、以下のものからなる群から選択されるアルコールR
1−OHおよびR
2−OH
【化15】
およびこれらの混合物から誘導され、酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される、結晶性成分。
【0041】
以下の一般式を有するジウレタンであり、
【化16】
式中、ジウレタンのR’およびR’’は、それぞれ独立して、ベンジル、2−フェニルエチル、2−フェノキシエチル、C
6H
5(CH
2)
4−、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、3−メチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−メチルシクロヘキシルメチル、3−メチルシクロヘキシルメチル、4−メチルシクロヘキシルメチルから選択される、結晶性成分。
【0042】
いくつかの実施形態では、この組成物は、インク担体(着色剤および他の少量添加剤(例えば、酸化防止剤など)以外のインク部分であると定義される)を含み、BRCは、インク担体の少なくとも約5%、例えば、少なくとも約10%、または少なくとも約15重量%である。このような実施形態では、結晶性転相剤(例えば、結晶性trans−桂皮酸ジエステル)と本開示のアモルファスエステル樹脂または化合物(例えば、一般式IおよびIIの化合物)は、両方とも容易に生分解可能であることが知られており、環境でのインクの持続可能性を高める材料群である。
【0043】
いくつかの実施形態では、エステル樹脂、例えば、Abitol Eエステル樹脂または化合物(例えば、一般式I〜IVの一般的な構造を有する1つ以上のエステル樹脂または化合物)は、例えば、転相インク組成物の約5重量%〜約40重量%、または約10重量%〜約35重量%、または約15重量%〜約30重量%の量で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、本開示のエステル樹脂、例えば、Abitol Eエステル樹脂または化合物は、着色した転相インク組成物または着色していない(または無色の)転相インク組成物に組み込まれてもよく、染料または顔料の約0.5〜約10重量%、または約1〜約8重量%、または約2〜約5重量%含まれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも2種類の異なるエステル樹脂(例えば、Abitol Eエステル樹脂または化合物)を任意の望ましい量で含んでいてもよく、これらを結合剤として機能してもよいようなインク組成物であってもよく、結晶性転相剤と結合剤(例えば、エステル樹脂)の重量比は、約95:5〜約60:40、例えば、約90:10〜約70:30であってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、このようなインク組成物は、着色剤と、結晶性転相剤と、アモルファス結合剤または樹脂とを含んでいてもよく、インクは、1つ以上のエステル樹脂、例えば、Abitol Eエステル樹脂または化合物を含む。具体的な実施形態では、インク組成物は、約20℃〜約60℃で固体であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、転相インクであってもよく、転相インクは、例えば、示差走査熱量測定によって決定される場合、融点が約65℃〜約150℃、例えば、約66℃〜約145℃、約70℃〜約140℃の固体インクであってもよい。いくつかの実施形態では、転相インクは、結晶化温度が約65℃〜約120℃、または約60〜約115℃である。
【0046】
さらなる実施形態では、組成物は、転相インクであってもよく、この転相インクは、溶融状態での複素粘度が、例えば、130℃より高い温度で約1〜約20cP(センチポイズ、またはmPa−秒)、または約2〜約18cP、または約3〜約15cPであってもよい。転相インクの複素粘度は、例えば、約1Hz〜約100Hzの周波数で測定されてもよい。室温で、転相インクは、複素粘度が約1×10
6cP以上であってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態の組成物、例えば、インク組成物は、さらに、従来の添加剤に関連する既知の機能を利用するために、従来の添加剤を含んでいてもよい。
【0048】
インクまたはコーティングに組み込まれてもよい実施形態の組成物は、さらに、従来の添加剤に関連する既知の機能を利用するために、従来の添加剤を含んでいてもよい。このような任意要素の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、消泡剤、UV吸収剤、すべり剤およびレベリング剤、共力剤、補助剤、清澄剤、粘着剤、接着剤、可塑剤などを挙げることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、組成物(例えば、インク組成物)は、場合により、画像が酸化するのを防ぎ、さらに、インク容器中で加熱した溶融物として存在している間に成分(例えば、インク成分)が酸化するのを防ぎ得る酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤が存在する場合、酸化防止剤は、組成物中に任意の望ましい量または有効な量で、例えば、組成物の約0.25重量%〜約10重量%または約0.5重量%〜約5重量%の量で存在していてもよい。
【0050】
本開示のインク組成物は、さらに、任意要素の粘着剤、例えば、ロジンガムまたはトール油樹脂から誘導される市販のロジン酸誘導体を含んでいてもよい。粘着剤は、インク中に任意の有効な量で、例えば、インクの約0.01重量%〜約30重量%、約0.1重量%〜約25重量%、約1重量%〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0051】
可塑剤は、インクの約0.01〜約30重量%、約0.1〜約25重量%、約1〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物(例えば、インク組成物)は、少なくとも1つの着色剤も含む。着色剤をインク担体に溶解または分散させることができる限り、染料、顔料、これらの混合物などを含め、任意の望ましい着色剤または有効な着色剤をインク組成物に使用してもよい。インク担体中に分散または溶解させることができ、他のインク成分と相溶性である限り、任意の染料または顔料が選択されてもよい。
【0053】
さらに溶媒染料を使用してもよい。顔料は、本明細書に記載するインク組成物に適した着色剤でもある。存在する場合、任意要素の添加剤は、それぞれ、または組み合わせた状態で、組成物中に任意の望ましい量または有効な量で、例えば、組成物の約0.1〜約15重量%または約0.5〜約12重量%の量で存在していてもよい。
【0054】
本開示の組成物中の着色剤(例えば、転相インク)の量は、組成物の約0.5重量%〜約20重量%または約1重量%〜約15重量%、または約2重量%〜約10重量%の量であってもよい。
【0055】
組成物(例えば、インク組成物)は、任意の望ましい方法または適切な方法によって調製することができる。例えば、インク組成物の場合、インク担体の各成分を一緒に混合した後、混合物をその融点まで、例えば、約60〜約150℃、例えば、約80〜約140℃または約85〜約120℃まで加熱してもよい。
【0056】
例えば、インクジェット印刷プロセスで使用するための装置で、紙に直接的に、または中間転写体に間接的に組成物(例えば、インク組成物)を使用してもよい。本明細書に記載する転相インクを印刷するのに適した装置の例としては、少なくとも1つの熱によって制御されるインクを保持し、溶融した転相インクを保存または保有する容器で構成される装置と、インクを印刷するためのインクジェットヘッドと、転相インクをインクジェットヘッドに与えるためのインク供給ラインとを備える。
【0057】
本明細書に開示する別の実施形態は、本明細書に開示する組成物(例えば、インク組成物)をインクジェット印刷装置に組み込むことと、インクを溶融させることと、溶融したインクの液滴を記録基材の上に画像の模様になるように放出させることとを含むプロセスに関する。既知の直接印刷プロセスは、基材の上に本開示のインク組成物を塗布するのに適していてもよい。
【0058】
本明細書に開示するさらに別の実施形態は、本明細書に開示する組成物(例えば、インク組成物)をインクジェット印刷装置に組み込むことと、インクを溶融させることと、溶融したインクの液滴を中間転写体の上に画像の模様になるように放出させることと、画像の模様になったインクを中間転写体から最終的な記録基材に転写することとを含むプロセスに関する。例えば、普通紙、コーティングされた紙ストック、厚紙ストック、透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、可撓性ポリマーフィルム、無機基材、例えば、金属またはシリコンウエハ、木材などの任意の適切な基材または記録シートを使用してもよい。
【実施例】
【0059】
本明細書に記載する組成物を、以下の実施例にさらに示す。あらゆる部およびパーセントは、他の意味であると示されていない限り、重量基準である。
【0060】
(実施例1:Abitol Eサクシネート(化合物1、表1)の合成)
3ッ口の100mL丸底フラスコにディーンスタークトラップ、凝縮器、熱電対、アルゴン注入口を取り付け、これにAbitol E(40グラム、Eastman Chemcialから入手可能)、コハク酸(8.07グラム、Sigma Aldrichから入手可能)、Fascat 4100(0.05グラム、Arkema Inc.から入手可能)を加えた。この混合物をアルゴン下、180℃までゆっくりと加熱し、この間にすべての試薬が溶融した。反応混合物を180℃で約12時間撹拌し、この間に約1mLの水がディーンスタークトラップ中に集まった。減圧状態(1〜2mm−Hg)を約15分間適用し、さらに0.5mLの水を得た。反応物をアルゴン下で約120℃まで冷却し、アルミニウム皿に取り出し、次いで、室温まで冷却し、40グラムの粘着性オフホワイト色固体を得た。この粘着性オフホワイト色固体をジクロロメタン(約150mL)に溶解し、NaHCO
3(100mL×2回)で洗浄した。次いで、有機層を水で洗浄し(100mL×2回)、MgSO
4で乾燥させ、次いで、ロータリーエバポレーターで乾燥させて溶媒を除去し、減圧ポンプで乾燥させ(一晩)、粘着性固体を得た。この化合物の物理特性を表1に示す。
【0061】
(実施例2:Abitol Eサクシネート(化合物2、表1)の合成)
1ッ口の250mL丸底フラスコにディーンスタークトラップ、凝縮器、アルゴン注入口を取り付け、これにAbitol E(20グラム、Eastman Chemicalから入手可能)、コハク酸(4.06グラム、Sigma Aldrichから入手可能)、p−トルエンスルホン酸(0.12グラム、Sigma Aldrichから入手可能)、トルエン(180mL)を加えた。この混合物を一晩還流させ(約20時間)、この間に0.5mLの水が集まった。混合物を室温まで冷却し、この間に未反応のコハク酸が析出した。次いで、混合物を再び加熱し、すべてのトルエンを留去し、キシレン(150mL)を加え、一晩還流させ(20時間)、この間に、さらに0.2mLの水が集まった。次いで、混合物をロータリーエバポレーターで乾燥させて溶媒を除去してガム状固体を得て、これをジクロロメタン(約150mL)に溶解し、NaHCO
3(100mL×2回)で洗浄した。次いで、次いで、有機層を水で洗浄し(100mL×2回)、MgSO
4で乾燥させ、次いで、ロータリーエバポレーターで乾燥させて溶媒を除去し、減圧ポンプで乾燥させ(一晩)、粘着性固体を得た。この化合物の物理特性を表1に示す。
【0062】
(実施例3:酒石酸Abitol E(化合物3、表1)の合成)
実施例2と同じ手順を用い、但し、開始時から溶媒としてキシレンのみを用い、化合物3を調製した。この化合物の物理特性を表1に示す。
【表1】
【0063】
(インク実施例1:転相インクの調製)
30mLの褐色瓶に、3.92グラムの結晶性転相剤(1,4−ブタンジオール−ジ−シンナメート、78.4重量%、代理人整理番号20101649−US−NPに記載)、0.98gのAbitol Eバインダー(表1の化合物1、19.6重量%)をこの順で入れた。これらの材料を140℃で溶融し、磁気撹拌棒を用いて30分間撹拌した後、0.1グラムのKeyplast Solvent blue 101染料(2重量%、Keystoneから購入)を溶融混合物に加えた。インクを140℃でさらに1時間撹拌し、アルミニウム皿に注ぎ、室温まで冷却した。このインクの物理特性を表2に示す。
【0064】
(インク実施例2〜6)
これらのインク実施例をインク実施例1と同じ手順を用いて調製した。これらのインクの物理特性を表2に示す。
【0065】
(インク実施例7:転相インクの調製)
600mLビーカーに、78.40グラムのAbitol Eバインダー(表1の化合物1、19.6重量%)、313.60gの結晶性転相剤(1,4−ブタンジオール−ジ−シンナメート、78.4%)を加えた。これらの材料を140℃で溶融し、磁気撹拌棒を用いて30分間撹拌した後、8gのKeyplast Solvent blue 101染料(2重量%、Keystoneから購入)を溶融混合物に滴下した。インクを140℃でさらに1時間撹拌し、1ミクロンのPallフィルターで濾過し、アルミニウム皿に注ぎ、室温まで冷却した。このインクの物理特性を表2に示す。
【表2】
【0066】
歪みが制御されたRFS3 Rheometer(TA instruments)にPeltier加熱プレートを取り付け、25mmの平行板を用い、インクサンプルの複素粘度を測定した。使用した方法は、それぞれの温度のソーク(平衡)時間が120秒、1Hzの一定周波数での高温から低温までの5℃ずつの温度掃引であった。本開示の転相インクのレオロジーデータを
図1に示す。
【0067】
レオロジープロフィールは、インクが紙に当たったときにインクをすばやく冷却するのに必要な鋭敏な転相を有し、吐出温度で低い粘度を有する。インクの結晶化温度は、使用する結晶性成分によって変わる。
【0068】
表2の実施例1〜6のインクを、コーティングされたDigital Color Elite Gloss(DCEG)紙(120gsmストック)にK−プルーファーグラビア印刷板を用いてそれぞれ印刷し、加圧ロールセットに低圧で取り付けた。グラビア板の温度を142℃に設定したが、実際の板の温度は約134℃であった。K−プルーファー装置(RK Print Coat Instrument Ltd.、Litlington、Royston、Heri、SG8 0OZ、U.K.によって製造)は、種々のインクを小スケールでスクリーニングし、種々の基材での画質を評価する印刷ツールとして有用である。6種類のインクはすべて、堅牢性の高い画像を与え、基材から簡単にはがすことはできなかった。528gの重りを適用し、垂直方向から約15°の角度にある湾曲した先端を有する引っ掻き部/丸い指部を用い、約13mm/sの速度で画像の上を引っ掻いたとき、目で見て、インクは画像からはずれなかった。引っ掻き部/丸い先端は、曲率半径が約12mmの旋盤で先端を丸く切断した小片と似ている。
【0069】
実施例7のインクは、改変したXerox Phaser 8860を用い、108℃でDigital Color Elite Glos 120gsm(DCEG)の上に首尾よく吐出され、堅牢性が高く、基材から簡単にはがすことができない画像を生成した。