特許第6242670号(P6242670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242670パッケージ駆動ローラの加速度を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242670
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】パッケージ駆動ローラの加速度を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/44 20060101AFI20171127BHJP
   B65H 54/52 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B65H54/44 C
   B65H54/52 B
   B65H54/52 C
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-249303(P2013-249303)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2014-108894(P2014-108894A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2016年10月20日
(31)【優先権主張番号】10 2012 023 557.7
(32)【優先日】2012年12月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トアステン フォアヒェ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ムント
(72)【発明者】
【氏名】ベアント−リューディガー テーレ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ギュンター ヴェーダースホーフェン
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−196465(JP,A)
【文献】 米国特許第04805844(US,A)
【文献】 特開昭63−306163(JP,A)
【文献】 特開平05−070038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00−54/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ駆動ローラ(4)が巻取りパッケージ(3)を摩擦接続式に駆動する、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部においてパッケージ駆動ローラ(4)の加速度を制御する方法であって、パッケージ形成過程中にパッケージ成長を監視しており、
前記パッケージ駆動ローラ(4)を順次、所定の加速段階に向けて加速させ、前記パッケージ駆動ローラ(4)の角速度と、前記巻取りパッケージ(3)の角速度とを検出して互いに比較し、この比較の結果に関連して次の加速段階に向けて加速をスタートさせ、増速運転中の前記パッケージ駆動ローラ(4)の加速段階のスタートを、前記巻取りパッケージ(3)のその時々のパッケージ成長に関連して制御することを特徴とする、パッケージ駆動ローラ(4)の加速度を制御する方法。
【請求項2】
増速運転中の前記パッケージ駆動ローラ(4)の次の加速段階を、前記巻取りパッケージ(3)の周加速度の限界値を下回る度にスタートさせ、前記巻取りパッケージ(3)のパッケージが大きく成長するにつれて、前記限界値を低下させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記巻取りパッケージ(3)のその時々のパッケージ成長に対応する、前記巻取りパッケージ(3)の周加速度の限界値を、前記巻取りパッケージ(3)のパッケージ成長に関連する慣性モーメントに基づいて決定する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記巻取りパッケージ(3)のその時々のパッケージ成長に対応する、前記巻取りパッケージ(3)の周加速度の限界値を、1つ又は複数の作業部での経験に基づいて算出し、次いで残りの作業部のための基礎とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
増速運転の最後の3分の1の加速段階において、前記巻取りパッケージ(3)と前記パッケージ駆動ローラ(4)とに関して周速度の同期を示す値又は該値未満の調節可能な値に到達するまでの時間を測定し、目標時間からの所定の偏差が生じた場合は、次の増速運転過程のための加速段階のスタートを、前記巻取りパッケージ(3)の別のパッケージ成長に対応するように変更する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記パッケージ駆動ローラ(4)の周速度の同期を前記巻取りパッケージ(3)を介して示す値又は該値未満の調節可能な値に到達するための時間を、前記パッケージ駆動ローラ(4)が巻取り速度に到達する加速段階において求める、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記目標時間を上回った場合は、加速段階のスタートを所定の値だけ遅らせる、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記目標時間を下回った場合は、加速段階のスタートを所定の値だけ早める、請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記時間を繰り返し測定し、複数の測定値を考慮して加速段階を適合させる、請求項7又は8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ駆動ローラが巻取りパッケージを摩擦接続式に駆動する、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部においてパッケージ駆動ローラの加速度を制御する方法であって、パッケージ形成過程中にパッケージ成長を監視するものに関する。
【背景技術】
【0002】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械は以前から知られていて、一般に、相並んで列状に配置された、多数の同様の作業部から成っている。例えば自動巻取り機の作業部において、比較的少量の糸材料を有する紡績コップが、大体積の綾巻きパッケージに巻き返される。綾巻きパッケージは、製造過程において下流側に接続された繊維機械、例えば織機において必要とされる。しかし、このような巻取り部は、例えばロータ紡績機、摩擦紡績機又は空気紡績機等の、別の繊維機械においても、紡績部に関連して、綾巻きパッケージの巻取りを可能にするために設けられている。この場合は紡績コップ又は供給ボビンの代わりに、相応の紡績部が糸供給部となる。
【0003】
これに関連して巻取りパッケージとも呼ばれる、作業部の綾巻きパッケージは、周面をパッケージ駆動ローラにより駆動される。パッケージ駆動ローラは、例えば糸ガイドドラムとして形成されていてよく、巻取り過程中、綾巻きパッケージに巻き取る前に、糸を綾振りしながら往復ガイドする。択一的に、糸は別個の糸ガイドによって綾巻きパッケージの手前で綾振りされる。この場合、パッケージ駆動ローラに糸ガイド溝は設けられていない。
【0004】
自動巻取り機における巻取り過程中、供給ボビンの糸品質は、糸欠陥部、例えば太い箇所や細い箇所の除去により改良される。このために走行する糸は、いわゆる糸クリアラによって監視され、この糸クリアラは、糸欠陥部を発見すると、糸欠陥部のクリアラ切断並びに除去を開始する。
【0005】
供給が中断されるか、糸が巻取りテンションに耐えられないか、又はクリアラが糸を切断することにより、糸がパッケージ形成過程中に裂断した場合は、糸破断部を修復するために必要な過程を導入するために、前記事象を検出する必要がある。このために該当する巻取り部は停止される、つまり、巻取りパッケージがパッケージ駆動ローラから持ち上げられて、巻取りパッケージとパッケージ駆動ローラの両方が停止するまで制動される。糸は、糸端継ぎ過程に基づき再形成され、巻取りパッケージ若しくはパッケージ駆動ローラは、停止状態から巻取り速度まで加速されねばならない。この、いわゆる増速運転は、2つの局面に分かれている。増速運転の第1の局面は、ソフトスタートと呼ばれ、例えば糸速度が100m*min−1になるまでの、パッケージ駆動ローラの加速度を有している。巻取り速度に到達するまでの更なる加速は、増速運転と呼ばれ、この増速運転が本発明の対象となる。
【0006】
巻取り速度若しくは巻取り速度に到達するまでの加速度を制御する、このような方法は、特許文献1に記載されている。この特許文献1には、勾配が限界値の下方に位置する、始動速度の異なる特性線を有する複数の始動加速度指令を、中央制御装置に用意することが開示されている。巻取り開始前に、極端に大きなスリップや糸破断がなお回避される、最も急峻な速度勾配を有する始動加速度指令を選択する。
【0007】
この公知の方法における欠点は、所定の複数の特性線から1つを作業員が選択せねばならないという点、及びこの特性線は、そのときどきの巻取りパッケージ用に個別に算出されたのではない加速度を設定するものであるという点にある。このように予め設定された特性線は、巻取りパッケージが対応配置される領域しかカバーすることができないので、必ずしも最適というわけではない。更に、手動入力は、間違えて誤った特性線が選択される、という危険を常にはらんでもいる。
【0008】
別の欠点は、特許文献1に記載されているように、連続的な増速運転は、結果として一様なスリップを生ぜしめる恐れがあり、このこともやはりリボン巻きを生ぜしめる、という点にある。この場合、糸は巻取りパッケージ上で部分的に重なり合って位置しているので、パッケージ外周面には複数の隆起部が生じ、これらの隆起部はパッケージ側面においても見られる。後続の処理に際して、密接して位置する糸層に基づき絡まりが生じるか、又は後で引き出す際に、複数の層が連行されて、糸が破断してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE4230984C2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来技術から出発して本発明の根底を成す課題は、巻取り過程を更に最適化すること、特に巻取り速度に至るまでの巻取りパッケージの加速を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は本発明に基づき、増速運転時にパッケージ駆動ローラを順次、所定の加速段階に向けて加速させ、前記パッケージ駆動ローラの角速度と、巻取りパッケージの角速度とを検出して互いに比較し、この比較の結果に関連して次の加速段階に向けて加速をスタートさせ、高又は増速運転中の前記パッケージ駆動ローラの加速段階のスタートを、前記巻取りパッケージのその時々のパッケージ成長に関連して制御することにより解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0013】
請求項1では、増速運転時にパッケージ駆動ローラを順次、所定の加速段階に向けて加速させ、その際に、パッケージ駆動ローラの角速度と巻取りパッケージの角速度とを検出して互いに比較し、この比較の結果に関連して、次の加速段階に向けて加速をスタートさせ、増速運転中のパッケージ駆動ローラの加速段階のスタートを、巻取りパッケージのその時々のパッケージ成長に関連して制御する。
【0014】
常に変化するスリップを伴うパッケージ駆動ローラのこのような加速形式は、増速運転中もリボン巻きを回避するために、特に適している。周速度と関連する、巻取りパッケージの角速度とパッケージ駆動ローラの角速度との比較は、次の加速段階をスタートさせるための基礎であり且つ、巻取りパッケージが所定の加速度を下回った場合、又はパッケージ駆動ローラに対する所定の速度差を下回った場合に初めて、次の加速段階が導入される、ということを保証するものである。
【0015】
巻取りパッケージのパッケージが成長するにつれて、パッケージの直径、質量又は巻き上げられた糸長さは連続的に増大しており、この場合、これらの値はそれぞれ、パッケージ成長の基準として用いることができる。パッケージが大きく成長するにつれて慣性モーメントもやはり大きくなるので、加速段階のスタートは、その都度パッケージ成長に関連して行われ、これにより、パッケージ形成過程全体にわたり、一方では巻取りパッケージとパッケージ駆動ローラとの間のスリップが制限され、他方ではできるだけ高い加速度の値が取られ、延いては最適化された生産性を保証することができるようになる。これにより、とりわけパッケージ形成過程の開始時に、増速運転時間を著しく減少させる、極めて高い加速度が得られる。このことは、自動巻取り機において特に重要である。それというのも、コップ交換とクリアラ切断とに基づいて、頻繁に増速運転が行われるからである。
【0016】
請求項2に記載したように、好適には、増速運転中のパッケージ駆動ローラの次の加速段階のスタートは、巻取りパッケージの角加速度と直径の積である、周加速度が限界値を下回る度に行われる。この限界値は、巻取りパッケージのパッケージ直径が大きく成長するにつれて、低下される。本発明の意味での加速段階とは、パッケージ駆動ローラが第1の局面において最大限に、場合によっては予め設定された速度まで最大に加速され、次いで、次の加速段階の加速局面が開始されるまでは、この速度レベルに留まることを意味する。巻取りパッケージの慣性モーメントは、パッケージが大きく成長するにつれて増大するので、増速運転中の加速は、極端に大きなスリップを回避するために、パッケージ形成過程の終了間際では、開始時に可能であるよりもゆっくりと行う必要がある。
【0017】
請求項3及び4に記載したように、本発明の構成では、巻取りパッケージのその時々のパッケージ成長に対応して、巻取りパッケージの周加速度の限界値を、パッケージ成長に関連した巻取りパッケージの慣性モーメントに基づいて決定するか、1つ若しくは複数の作業部における経験に基づき算出してから、残りの作業部のための基礎とすることができる。つまり、パッケージ駆動ローラの次の加速段階を開始させる限界値は、計算により求めることができるか、又はパッケージ形成過程中のテストに基づいて求めることができる。
【0018】
円筒形のパッケージの慣性モーメントIは、次のように算出される。
【0019】
【数1】
【0020】
この場合、mは質量を表し、rは巻管若しくはパッケージの半径を表す。
【0021】
中空円筒の体積Vは、次のように算出される。
【0022】
【数2】
【0023】
この場合、hは高さを表す。
【0024】
パッケージの質量mは、次のように算出される。
【0025】
【数3】
【0026】
この場合、ρは密度を表す。
【0027】
これにより、慣性モーメントIに関する次の公式が得られる。
【0028】
【数4】
【0029】
請求項5に記載したように、増速運転の最後の3分の1の加速段階において、巻取りパッケージとパッケージ駆動ローラとに関しての周速度の同期を示す値又は該値未満の調節可能な値に到達するまでの時間を測定し、目標時間からの所定の偏差が生じた場合は、以降の別の増速運転過程の加速段階のスタートを、巻取りパッケージの別のパッケージ成長に対応するように、変更する。このようにして求められた、いわゆる増速運転時間は、増速運転の終了間際にどの程度のスリップが生じたかを示す指標であり、且つ、品質低下をもたらさない可能な加速を推量することを可能にする。巻取りパッケージとパッケージ駆動ローラとに関しての周速度の同期を示す値又は該値未満の調節可能な値に到達するまでの時間と、目標値との比較は、制御回路の枠内で、加速段階をスタートさせるための、巻取りパッケージの周加速度についての算出された限界値又は経験に基づいて算出された限界値の修正に利用することができる。この場合、特に巻取り部固有の事象(例えばパラフィン塗布の欠如又は変動)により、算出された基準と異なる場合にのみ、介入が行われる。
【0030】
請求項6では有利には、パッケージ駆動ローラの周速度の同期を巻取りパッケージを介して示す値又は該値未満の調節可能な値に到達するために必要な時間を、最後の加速段階で求めており、最後の加速段階においてパッケージ駆動ローラは最終的な巻取り速度に到達する。それというのも、増速運転の終了時に最も確実な値を算出することができ、必要な修正が行われた場合には最少の生産損失が見込まれるからである。この最後の加速段階では、例えば増速運転時間を算出するための中間段階の不必要な発動による、増速運転への介入は全く行われない。それというのも、最後の加速段階ではいずれにしろ、最終的な生産速度まで加速されるからである。更に、中断された増速運転は、結果を誤らせる恐れがあるので検出されず、よって加速度制御に影響を及ぼすことはない。
【0031】
請求項7では、目標時間を超過した場合は、以降の増速運転において、加速段階のスタートを、所定の値だけ遅らせて、スリップを減少させる。この場合、加速段階のスタート点の制御は、比較的大きなパッケージ成長に対応している。同様に請求項8には、目標時間を下回った場合は、逆に加速段階のスタートを、所定の値だけ早めることが記載されており、これにより、増速運転時間が短縮され、延いては比較的小さなパッケージ成長に対応する。
【0032】
請求項9に記載したように、有利な構成では、目標時間を繰り返し測定してから、目下の巻取り条件を考慮した適合が行われる。この方法は、いわゆる飛び出た値に基づいて異なる調整間を頻繁に往復切換することはない、ということを保証する。つまり、確定された偏差だけが考慮される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】自動巻取り機の作業部を概略的に示した図である。
図2】巻取りパッケージ直径に関連した増速運転値の特性線の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、概略的に図示した自動巻取り機の1つの作業部に基づいて、本発明を詳しく説明する。
【0035】
図1には、各作業部において供給ボビン1、特にリング精紡機において形成された紡績コップから糸2が引き出されて、綾巻きパッケージ3、例えば円錐形の綾巻きパッケージに巻き上げられるところが示されている。
【0036】
旋回可能なパッケージフレーム(図示せず)によって保持された綾巻きパッケージ3は、パッケージ駆動ローラ4、特にいわゆる糸ガイドドラムに載置されており、パッケージ駆動ローラ4により綾巻きパッケージ3が回転されて、糸2が軸方向で綾振りされながら、綾巻きパッケージ3に供給される。但し、本発明の枠内では、別の形式の糸綾振り装置、例えばいわゆるフィンガ糸ガイドも考えられる。
【0037】
供給ボビン1から綾巻きパッケージ3に至る経路に沿って、一般にリング精紡機で形成された糸2は、糸ガイド5と、制御される糸テンション装置6と、糸テンションセンサ9と、クリアラ8の形態のセンサとを通って走行する。糸テンション装置6は、走行する糸2に所定の締め付け力を加える。クリアラ8は、走行する糸2の欠陥、特に太い箇所又は細い箇所を監視する。
【0038】
糸テンションセンサ9の下流側の糸走行経路には、パラフィン処理装置14と、場合によっては別の糸ガイド10とが配置されている。パラフィン処理装置14によって、糸の走行特性及び滑り特性を改善するパラフィン粒子が糸に塗布される。このことは特に、後続の処理過程において、例えば織ったり編んだりする場合に極めて重要である。
【0039】
糸テンション装置6と、糸テンションセンサ9と、クリアラ8と、次の増速運転前に糸端部を糸継ぎするスプライシング装置7とは、制御兼調整ユニット11、いわゆる作業部コンピュータに接続されている。
【0040】
各作業部のパッケージ駆動ローラ4は、専用の駆動モータ12によって駆動されており、この駆動モータ12には、回転数制御装置、特にドラムモータ最終段13が装備されている。ドラムモータ最終段13の制御は、作業部コンピュータ11により、作業部固有の、例えば糸テンション等のパラメータに関連して行われる。自動巻取り機の中央コンピュータ(図示せず)は、例えばバス線路を介して、多数の作業部の作業部コンピュータ11に接続されている。
【0041】
許容不能な糸欠陥が発生すると、走行している糸2はクリアラ切断により中断されて、欠陥を有する糸部分が切断除去される。このために巻取りパッケージ3は、パッケージ駆動ローラ4から持ち上げられ、巻取りパッケージ3とパッケージ駆動ローラ4とは両方共停止するまで制動される。今存在している2つの糸端部が、公知のスプライシング装置7によって互いに糸継ぎされる。その後、巻取りパッケージ3は再びパッケージ駆動ローラ4に向かって降下され、パッケージ駆動ローラ4は加速される。この場合、例えば100m*min−1の糸速度までは、いわゆるソフトスタートが行われ、その後に、本発明による増速運転が続く。加速段階において、パッケージ駆動ローラ4は所定の速度レベルに向けて加速され、そのレベルに留まる。その間に、巻取りパッケージ3の周速度又は周加速度、つまり、周速度曲線の勾配が検出される。例えば、巻取りパッケージ3の周加速度が、巻取りパッケージ3の直径に適合された加速度限界値を下回ると、次の加速段階がスタートする。パッケージ駆動ローラ4が最終的な巻取り速度に到達すると直ちに、最早加速はせずに、同様に巻取りパッケージ3がその最終的な巻取り速度に到達するために必要とする時間を検出する。この増速運転時間は、いわゆる増速運転時間限界値と比較される。増速運転時間限界値が、例えば900msに設定されていて、巻取りパッケージ3の増速運転時間が1000msを必要とした場合は、後続の増速運転のための加速度限界値が低減される、即ち、加速段階のスタートが遅らされる。増速運転時間の検出は、各増速運転が完全に終了する度に行われる。
【0042】
個々の増速運転後にその都度加速段階の限界値を変更したり、場合によっては加速段階の異なる調整間を絶えず往復して切換えることのないようにするために、複数の増速運転の検出された増速運転時間がまとめられる。このようにして、個々の飛び出た値が限界値に不都合な影響を及ぼすことなく、加速段階の限界値を確実に選択することができるようになっている。
【0043】
図2は、パッケージ駆動ローラ4の次の加速段階を開始させる、巻取りパッケージ3の加速度の限界値の変化を、巻取りパッケージの直径に関連して示したものである。縦座標は、巻取りパッケージ3の加速度限界値を表している。横座標は、空管の直径から始まる巻取りパッケージの直径を表している。パッケージ形成過程の開始時には、巻取りパッケージ3の加速度がまだ比較的高いときに、既にパッケージ駆動ローラ4の次の加速段階が開始される局面が存在する。巻取りパッケージ3の慣性量は、特定の時間にわたって(ここでは約110mmの直径まで)比較的小さいので、高い初期限界値を維持することができる。巻取りパッケージ3の直径が増大するにつれて、加速度限界値は低下する。パッケージ形成過程の終了時に、加速度限界値が下方レベルに到達すると、本発明の枠内で、一定の限界値の局面が生ぜしめられる。このことは、本発明が、パッケージ形成過程全体にわたって加速度限界値の(一様な)低下が行われねばならない、ということを前提条件とはしていない、ということを示している。
【0044】
巻取りパッケージ3の周加速度の限界値は、慣性量にのみ関連しているのではなく、バッチに関係した、例えばパラフィン処理等のパラメータによっても影響を及ぼされる。バッチ毎の増速運転値の推移の曲線が、作業部コンピュータ又は中央コンピュータに記憶されるので、次の同一バッチでは、前記曲線を基礎として再利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 供給ボビン、 2 糸、 3 綾巻きパッケージ、 4 パッケージ駆動ローラ、 5 糸ガイド、 6 糸テンション装置、 7 スプライシング装置、 8 センサ(クリアラ)、 9 糸テンションセンサ、 10 糸ガイド、 11 制御兼調整ユニット、 13 ドラムモータ最終段、 14 パラフィン処理装置
図1
図2