(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242672
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】カウルルーバー
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
B62D25/08 H
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-254122(P2013-254122)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112902(P2015-112902A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 久人
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−062472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラスとエンジンフードとの間に配設されて両者の間を塞ぐカウルルーバーであって、
前記フロントガラスと前記エンジンフードとの間を塞ぐ上面と、該上面の前端縁から連続する凹部と、を一体的に備え、
前記凹部の底壁には、該凹部の前後両壁に亘る縦長であり、上下方向に開口することで車室内へ外気を導入する吸気口が設けられており、
前記吸気口を覆うカバー部を備え、
前記カバー部は、前記吸気口の一側縁から上方へ立設する側壁部と、該側壁部の上端から前記吸気口側へ向けて延在し、前記吸気口の上方を覆う遮水部と、を有し、前記側壁部と対向する前記吸気口の他側縁側の側面が開口しており、前記吸気口の前後縁は、凹部の前後壁によってそれぞれ塞がれている、カウルルーバー。
【請求項2】
前記カバー部の前記開口は、車両中心部に向けて開口させている請求項1に記載のカウルルーバー。
【請求項3】
前記吸気口及びこれを覆う前記カバー部は、カウルルーバーの長手方向に複数個並設されている、請求項1または請求項2に記載のカウルルーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントガラスとエンジンフードとの間に配設されて両者の間を塞ぐカウルルーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
カウルルーバーは、車両のエンジンルームと車室との間に配されるカウルボックスの天面を覆うカバー部材であり、フロントガラスとエンジンルームの天面を覆うエンジンフード(ボンネット)との間に配設されて両者の間を塞いでいる。詳しくは、カウルルーバーの先端縁部はエンジンフードの後端縁部と連接され、カウルルーバーの後端縁部はフロントガラスの下端縁部と連接される。そのうえで、カウルボックス及びカウルルーバーを介して外気(空気)を車室内に取り入れるため、カウルボックスには車室内と連通するダクトが設けられており、カウルルーバーにはダクトと連通する吸気口が設けられている。
【0003】
ところで、カウルルーバーの吸気口を介して車室内へ外気を吸入する際、雨天時等では外気と共に雨水等も吸気口からカウルボックス内へ浸入してしまう。しかし、カウルボックス内へ浸入した水がダクトへ吸入されと、ダクトの先に配設されたブロアーやエアコン等の機器の故障の原因となってしまう。そこで、特許文献1では、カウルボックス内へ浸入した水がダクトへ浸入することを防止するため、水切り板及び当該水切り板の前縁に配される樋部からなる遮水板を、ダクトの開口と重複するようにカウルボックス内へ設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−58722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにカウルボックス内へダクトの開口と重複するように遮水板を設けると、カウルルーバーの吸気口から吸入された空気は、遮水板の外側を迂回するような径路を辿ってダクトへ至ることになるので、吸気効率が低下(吸気量が損失)してしまう。これを補うためには、吸気用のブロアーによる吸引力を強くすればよいが、これでは消費電力が大きくなり、燃費性能の悪化にも繋がる。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、カウルボックス内へ遮水板を設けずにダクトへの水の浸入を防止し、以って吸気効率の低減を抑制できるカウルルーバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段として、本発明は車両のフロントガラスとエンジンフードとの間に配設されて両者の間を塞ぐカウルルーバーであって、
車室内へ外気を導入するため上下方向に開口する吸気口を覆うカバー部を備え、
前記カバー部は、前記吸気口の一側縁から上方へ立設する側壁部と、該側壁部の上端から前記吸気口側へ向けて延在し、前記吸気口の上方を覆う遮水部とを有し、前記側壁部と対向する前記吸気口の他側縁側の側面が開口している、カウルルーバー。
【0008】
前記吸気口及びこれを覆う前記カバー部は、カウルルーバーの長手方向に複数個並設することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、カウルルーバーの吸気口を覆うカバー部を設け、当該カバー部は吸気口を上方から覆う遮水部を有する。これによれば、雨水等が吸気口から直接カウルボックス内へ浸入することはなく、一旦遮水部へ衝突してから側面の開口を介して吸気口へ流れ込むことになる。これにより、カウルボックス内へ浸入(滴下)した水がカウルボックスの底面に衝突する勢いが弱まり、当該カウルボックスの底面における水の跳ね返りも少なくなる。これにより、カウルボックス内へ遮水板を設けずとも、滴下した水がダクトへ吸入されることを防止できる。
【0010】
そのうえ、カウルボックス内へ遮水板を設ける必要が無いため、吸気口から吸気された空気は直線的な流路を辿って最短距離でダクトへ流入できるので、吸気効率の低下(吸入空気量の損失)も避けることができる。したがって、吸気用ブロアーの出力を無理に高める必要はなく、消費電力を抑えて燃費性能の低下も避けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のカウルルーバーは、普通自動車、軽自動車、大型自動車など種々の車両に適用可能なものであって、車両のエンジンルームと車室との間において車両幅方向両端に亘って配されるカウルボックスの上面開口を全面的に覆うカバー部材であり、フロントガラスとエンジンフードとの間を塞いでいる。詳しくは、カウルルーバーの先端縁部はエンジンフードの後端縁部と連接され、カウルルーバーの後端縁部はフロントガラスの下端縁部と連接される。当該カウルルーバーによってワイパーモータ等が覆われ、車外から視認できないようになっている。以下に、適宜図面を参照しながら本発明の代表的な実施形態について説明する
【0013】
本実施形態のカウルルーバー10は、一枚板からなるパネル状に形成された合成樹脂製の射出成形品であって、
図1に示すように、フロントガラスとエンジンフードとの間を塞ぐ上面10aと、該上面10aの前端縁から連続する凹部10bとを一体的に備える。
【0014】
凹部10bには、外気を車室内へ導入する吸気口11が設けられている。詳しくは、凹部10bの底壁に、該凹部10bの前後両壁に亘る縦長(車両前後方向に長い)の吸気口11が設けられている。吸気口11は上下方向に開口しており、カウルルーバー10の長手方向(車両幅方向)に複数個の設けられている。本実施形態では、カウルルーバー10の両側方部へ各2箇所ずつ、計4箇所に設けている。
【0015】
各吸気口11は、カウルルーバー10に一体成形されたカバー部12によって覆われている。当該カバー部12は、
図2にも示すように、吸気口11の一側縁から上方へ立設する側壁部12aと、該側壁部12aの上端から吸気口11側へ向けて延在し、該吸気口11の上方を全面的に覆う遮水部12bとを有し、側壁部12aと対向する吸気口11の他側縁側の側面には開口12cが開口している。なお、吸気口11の前後縁は、凹部10bの前後壁によってそれぞれ塞がれている。
【0016】
本実施形態では、カバー部12の開口12cは、車両中心部に向けて開口させている。具体的には、カウルルーバー10の左側方部に設けた2つのカバー部12では右側面に開口12cを設け、右側方部に設けた2つのカバー部12では左側面に開口12cを設けている。これにより、カウルボックスの長手方向(車両幅方向)中心部にダクトを設けた場合に、各吸気口11から吸気された空気がダクトへ効率よく流動でき、吸入空気の損失量をより効果的に低減することができるようになっている。
【0017】
このような構成のカウルルーバー10によれば、雨天走行時などにおいて雨水等が吸気口11から直接カウルボックス内へ浸入することはなく、一旦遮水部12bへ衝突してから側面の開口12cを介して吸気口11へ流れ込むことになる。これにより、カウルボックス内へ浸入(滴下)した水がカウルボックスの底面に衝突する勢いが弱まり、当該カウルボックスの底面における水の跳ね返りも少なくなる。したがって、カウルボックス内へ遮水板を設けずとも、滴下した水がダクトへ吸入されることを防止できる。なお、カウルボックス内へ浸入した水は、当該カウルボックスの底面等へ設けた排水口から外部へ排出される。
【0018】
そのうえ、カウルボックス内へ遮水板を設ける必要が無いため、吸気口11から吸気された空気は直線的な流路を辿って最短距離でダクトへ流入できるので、吸気効率の低下(吸入空気量の損失)も避けることができる。したがって、吸気用ブロアーの出力を無理に高める必要はなく、消費電力を抑えて燃費性能の低下も避けることができる。
【0019】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。特に、本発明のポイントである上下方向に開口する吸気口と、これを覆うカバー部とを有する限り、カウルルーバーそのものの形状やその他の構成は、上記実施形態に限られない。また、本発明のカウルルーバーと対となるカウルボックスも、外気(空気)を車室内に取り入れるためのダクトと、カウルボックス内へ浸入した水を外部へ排水する排水口が設けられている、従来から公知の汎用カウルボックスへ適用でき、その具体的形状や細かな構成に特に制限はない。
【0020】
また、吸気口11は、必ずしも複数個所設ける必要はなく、1箇所のみに設けることもできる。この場合、空気の流動性の観点からはカウルボックスに設けられたダクトにできるだけ近い位置へ吸気口を設けることが好ましく、ダクトへの水の浸入防止の観点からは敢えてダクトからある程度離れた位置へ吸気口を設けることが好ましい。また、吸気口11を複数設ける場合も、上記実施形態のように4箇所に設けるのみならず、2〜8箇所程度の範囲で適宜変更できる。
【0021】
また、カバー部12の開口12cも、必ずしもダクトへ向けて開口させる必要はなく、敢えてダクトとは反対側の側面へ開口12cを設けることもできる。さらに、吸気口11は、必ずしも凹部10bの前後壁に亘って設ける必要も無い。
【符号の説明】
【0022】
10 カウルルーバー
10b 凹部
11 吸気口
12 カバー部
12a 側壁部
12b 遮水部
12c 開口