特許第6242676号(P6242676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242676
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】電解セル及び電解槽
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/00 20060101AFI20171127BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C25B15/00 303
   C25B9/00 E
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-264063(P2013-264063)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-120944(P2015-120944A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】内野 陽介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 伸司
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−158775(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/114915(WO,A1)
【文献】 米国特許第04421614(US,A)
【文献】 特開昭61−194190(JP,A)
【文献】 特開昭62−182294(JP,A)
【文献】 特開昭60−221595(JP,A)
【文献】 特開昭57−094586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B1/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を電解する電解セルであって、
陽極が設けられた陽極室と、
陰極が設けられた陰極室と、
前記陽極室と前記陰極室とを隔てる隔壁と、
前記陽極室に電解液を供給する第一供給流路と、
前記陰極室に電解液を供給する第二供給流路と、
前記陽極室から電解液を回収する第一回収流路と、
前記陰極室から電解液を回収する第二回収流路と、
前記第一供給流路及び前記第一回収流路の少なくとも一方の流路に設けられ、電解が止められているときに、当該流路を狭窄する第一流路狭窄部と、
前記第二供給流路及び前記第二回収流路の少なくとも一方の流路に設けられ、電解が止められているときに、当該流路を狭窄する第二流路狭窄部と、を備え
前記第一及び第二流路狭窄部は、電気絶縁性を有する材料から構成される、電解セル。
【請求項2】
前記第一及び第二流路狭窄部は、電解液の循環が止められて電解液の流れが少なくなるにつれ自重で垂下する垂下部材を有する、請求項1に記載の電解セル。
【請求項3】
前記垂下部材は、電気絶縁性を有する材料から構成される、請求項2に記載の電解セル。
【請求項4】
前記第一及び第二流路狭窄部は、垂下した状態の前記垂下部材と当接し、前記垂下部材と協働して前記流路を狭窄する当接部材を更に有する、請求項2又は3に記載の電解セル。
【請求項5】
前記第一及び第二流路狭窄部は、耐蝕性を有する材料から構成される、請求項1〜4の何れか一項に記載の電解セル。
【請求項6】
耐蝕性を有する前記材料は、四フッ化エチレン、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、又はフッ化ビニリデンである、請求項5に記載の電解セル。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の電解セルを備える、電解槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解セル及び電解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
陽極が設けられた陽極室と、陰極が設けられた陰極室と、陽極室と陰極室とを隔てる隔壁と、陽極室に電解液を供給する第一供給流路と、陰極室に電解液を供給する第二供給流路と、陽極室から電解液を回収する第一回収流路と、陰極室から電解液を回収する第二回収流路と、を備えた電解セルが知られている。また、当該電解セルを備えた電解槽が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10―99861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気分解(以下、電解という)は、電解槽を構成する複数の電解セルに電解液を通過させ、陽極と陰極とに電位差を与えることにより行われる。電解が停止され、陽極と陰極とに電位差が与えられないとき、地絡した電解槽と電解液との電位差により、電解時に流れる電流の向きとは逆向きに電流が生じる場合がある。この電流は逆電流と呼ばれている。逆電流が発生すると、電解時とは異なる化学反応が陽極及び陰極それぞれにて起こるため、例えば陰極が酸化し失活するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、逆電流の発生を抑制できる電解セル及び電解槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電解セルは、電解液を電解する電解セルであって、陽極が設けられた陽極室と、陰極が設けられた陰極室と、陽極室と陰極室とを隔てる隔壁と、陽極室に電解液を供給する第一供給流路と、陰極室に電解液を供給する第二供給流路と、陽極室から電解液を回収する第一回収流路と、陰極室から電解液を回収する第二回収流路と、第一供給流路及び第一回収流路の少なくとも一方の流路に設けられ、電解が止められているときに、当該流路を狭窄する第一流路狭窄部と、第二供給流路及び第二回収流路の少なくとも一方の流路に設けられ、電解が止められているときに、当該流路を狭窄する第二流路狭窄部と、を備える。
【0007】
本発明に係る電解セルによれば、第一流路狭窄部により第一流路狭窄部が設けられている流路が狭窄される。第二流路狭窄部により第二流路狭窄部が設けられている流路が狭窄される。流路が狭窄されると電解液が流れる流路の流路面積が小さくなる。流路面積が狭くなると流路の電気抵抗値が高くなるため、電解セルにおける逆電流の発生を抑制することができる。
【0008】
第一及び第二流路狭窄部は、電解液の流れが少なくなるにつれ自重で垂下する垂下部材を有してもよい。この場合、電解液の流れが少なくなるにつれ垂下部材は自重で垂下するため、簡易な構成により電解液の流路面積を小さくすることができる。
【0009】
垂下部材は、電気絶縁性を有する材料から構成されてもよい。この場合、垂下部材が電気絶縁性を有する部材で構成されるため、第一及び第二流路狭窄部は、簡易な構成により電気絶縁性を高めることができる。
【0010】
第一及び第二流路狭窄部は、垂下した状態の垂下部材と当接し、垂下部材と協働して流路を狭窄する当接部材を更に有してもよい。この場合、垂下部材及び当接部材により第一及び第二流路狭窄部の流路がより狭窄される。よって、簡易な構成により電解液の流路面積をより一層小さくすることができる。
【0011】
第一及び第二流路狭窄部は、耐蝕性を有する材料から構成されてもよい。この場合、第一及び第二流路狭窄部は耐蝕性を有する部材であるため、第一及び第二流路狭窄部の長寿命化を図ることができる。
【0012】
第一及び第二流路狭窄部は、電気絶縁性を有する材料から構成されてもよい。この場合、第一及び第二流路狭窄部が電気絶縁性の部材で構成されるため、第一及び第二流路狭窄部は、簡易な構成により電気絶縁性を高めることができる。
【0013】
本発明に係る電解槽は、上述した電解セルを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、逆電流の発生を抑制できる電解セル及び電解槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る電解槽の模式図である。
図2図1のII−II線に沿った断面構成を説明する図である。
図3図1のIII−III線に沿った断面構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の内容に限定されない。
【0017】
図1から図3を参照して、本実施形態に係る電解セル及び電解槽について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電解槽の模式図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面構成を説明する図である。図3は、図1のIII−III線に沿った断面構成を説明する図である。
【0018】
図1に示されているように、本実施形態に係る電解槽4は、複数の電解セル1とイオン透過性の膜2とを備えている。電解槽4は、プレス器3により連結された電解セル1及びイオン透過性の膜2を備えている。電解槽4は、複極式構造の電解槽である。電解槽4は、隣接する電解セル1の間にイオン透過性の膜2を備えている。電解槽4は、電解セル1に電解液を供給するための電解液供給管8a,8bを備えている。電解槽4は、電解セル1から電解液を回収するための電解液回収管9a,9bを備えている。電解液供給管8a,8b及び電解液回収管9a,9bは循環ポンプ(不図示)に接続されている。循環ポンプは、例えば、複数のポンプから構成されていてもよい。この場合、電解液供給管8a,8bと電解液回収管9a,9bとが、それぞれ異なる循環ポンプに接続されていてもよい。電解槽4内の電解液は、循環ポンプにより循環させられる。
【0019】
電解セル1は、電解液を電解する。図2及び図3に示されているように、電解セル1は、陽極室10と、陰極室20と、隔壁30と、第一供給流路41と、第二供給流路42と、第一回収流路51と、第二回収流路52と、第一流路狭窄部61と、第二流路狭窄部62と、を備えている。
【0020】
電解槽4は、陽極11と陰極21とが所定の方向に沿って交互に並ぶように電解セル1とイオン透過性の膜2とを備えている。すなわち、イオン透過性の膜2は、隣接する2つの電解セル1のうち一方の電解セル1の陽極室10と他方の電解セル1の陰極室20との間に備えられている。電解セル1の陽極室10と、この電解セル1に隣接する電解セル1の陰極室20とは、イオン透過性の膜2で隔てられている。
【0021】
イオン透過性の膜2は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、塩化アルカリ等の電解により塩素とアルカリを製造する場合、耐熱性及び耐薬品性等に優れるという観点から、含フッ素系イオン交換膜が好ましい。イオン透過性の膜2としては、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製のイオン交換膜Aciplex(登録商標)のF6801を好適に用いることができる。
【0022】
陽極11は陽極室10に設けられている。陽極11は、電解液に電荷が移動する電極である。クロロアルカリ電解の場合、陽極11は、例えば塩素発生用の電極である。陽極11は、電解セル1の一方の面に設けられている。陽極11は、例えば、エクスパンデッドメッシュ加工されたチタン板の表面に、ルテニウム、イリジウム、及びチタンの少なくとも1つの元素を成分とする酸化物を被覆することにより製造されてもよい。アルカリ水電解の場合、陽極11は、酸素発生用の電極である。陽極11は、例えば、エクスパンドメッシュ加工されたニッケル板の表面に、ニッケル、コバルト、白金、イリジウム、パラジウム、及びルテニウムの少なくとも1つの元素を成分とする酸化物を被覆することにより製造されてもよい。
【0023】
電解槽4は、陽極11と陰極21との対向方向に、複数の電解セル1を備えている。電解槽4は、電源に接続される陽極端子を備えている。電解槽4に備えられた複数の電解セル1において、陽極11と陰極21との対向方向の一方の端に位置している電解セル1の陽極11は、陽極端子と電気的に接続されている。電解槽4に備えられた複数の電解セル1において一方の端に、陽極室のみを有する電解セル(陽極ターミナルセル)5が備えられていてもよい。陽極ターミナルセル5と陽極端子とは電気的に接続されている。
【0024】
陰極21は陰極室20に設けられている。陰極21は、電解液から電荷が移動する電極である。陰極21は、例えば、水素発生用の電極である。陰極21は、陽極11と対向する電解セル1の面に設けられている。陰極21の表面全体は還元反応のための触媒層で被覆されていることが好ましい。陰極21は、例えば、ニッケル製ファインメッシュ基材にルテニウムを含有する酸化物が被覆されている。
【0025】
電解槽4は、電源に接続される陰極端子を備えている。電解槽4に備えられた複数の電解セル1において、陽極11と陰極21との対向方向の他方の端に備えられている電解セル1の陰極21は、陰極端子と電気的に接続されている。電解槽4に備えられた複数の電解セル1において他方の端に、陰極室のみを有する電解セル(陰極ターミナルセル)6が備えられていてもよい。この場合、陰極ターミナルセル6と陰極端子とは電気的に接続されている。
【0026】
電解セル1は、陰極21側に集電体22と、金属弾性体23と、を備えている。集電体22は、陰極21の集電効果を高める。集電体22は、陰極21沿って備えられている。集電体22は、金属弾性体23を介して、陰極21と電気的に接続されている。金属弾性体23は、陰極21と集電体22との間に備えられている。集電体22と陰極21との間に金属弾性体23が備えられることにより、電解槽4が組み立てられた際に、複数の電解セル1の陰極21がイオン透過性の膜2に押し付けられ、陽極11と陰極21との間の距離が短くなる。
【0027】
陽極室10と陰極室20との間には、隔壁30が備えられている。隔壁30は、陽極室10と陰極室20とを隔てている。隔壁30は、導電性の金属板から構成されている。隔壁30は、例えば鋼及びニッケルを含む材料から構成されていてもよい。隔壁30は、陽極リブ15と陰極リブ25とが取り付けられている。陽極リブ15及び陰極リブ25が隔壁30に取り付けられる方法は、例えば、レーザ溶接又はTig溶接である。陽極リブ15は陽極11を支えている。陰極リブ25は陰極21を支えている。
【0028】
第一供給流路41は、陽極室10に電解液を供給するための流路である。電解液は、第一供給流路41を通り陽極室10に供給される。第一供給流路41は、陽極室10において、陽極11と陰極21とが対向する方向と交差する方向における一方の側面に設けられている。第一供給流路41は電解液供給管8aに接続している。
【0029】
第一回収流路51は、陽極室10から電解液を回収するための流路である。電解液は、第一回収流路51を通り陽極室10から回収される。第一回収流路51は、陽極室10において、陽極11と陰極21とが対向する方向と交差する方向における他方の側面に設けられている。第一回収流路51は電解液回収管9aに接続している。
【0030】
第一流路狭窄部61は、電解が止められているときに、第一流路狭窄部61が設けられている流路を狭窄する。本実施形態では、第一流路狭窄部61は、第一供給流路41及び第一回収流路51に設けられている。第一流路狭窄部61は、第一供給流路41及び第一回収流路51の少なくとも一方の流路に設けられていればよい。
【0031】
第一流路狭窄部61は、電気絶縁性を有する材料から構成されている。第一流路狭窄部61は、耐蝕性を有する材料から構成されている。本実施形態において、耐蝕性とは、例えば、アルカリに対する耐腐食性又は酸素に対する耐腐食性である。
【0032】
第一流路狭窄部61は、垂下部材70と当接部材71とを有している。本実施形態では、第一供給流路41及び第一回収流路51に設けられた第一流路狭窄部61が垂下部材70と当接部材71とを有している。
【0033】
垂下部材70は、第一供給流路41及び第一回収流路51に設けられている。垂下部材70は、電解液が流れる方向に対して回動する。第一流路狭窄部61において電解液が流れる速さは、150L/h程度を例示することができる。垂下部材70は、例えば、垂下部材70が設けられる電解液の流路に収容可能な大きさを有する板状の部材であってもよい。垂下部材70は、例えば、ヒンジなどを介して第一供給流路41及び第一回収流路51に設けられている。
【0034】
垂下部材70は、電気絶縁性を有する材料から構成されている。垂下部材70は、耐蝕性を有する材料から構成されている。垂下部材70の材質としては、耐腐食性の観点からフッ素樹脂を採用してもよい。フッ素樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)が挙げられる。垂下部材70は、電解液よりも比重が重い部材又は電解液と略同等の比重を有する部材で構成されていてもよい。
【0035】
このように構成した場合、垂下部材70は、第一流路狭窄部61における電解液の流れが電解時の流れに比べて少なくないときに垂下する。垂下部材70は、電解液の流れが少なくなるにつれ自重で垂下する。
【0036】
当接部材71は、垂下した状態の垂下部材70と当接する。当接部材71は、垂下部材70と協働して、垂下部材70及び当接部材71が設けられている電解液の流路を狭窄する。当接部材71は、電気絶縁性を有する材料から構成されることが好ましい。当接部材71は、耐蝕性を有する材料から構成されることが好ましい。当接部材71は、垂下部材70と同様の材料から構成されてもよい。
【0037】
第二供給流路42は、陰極室20に電解液を供給するための流路である。電解液は、第二供給流路42を通り陰極室20に供給される。第二供給流路42は、陰極室20において、陽極11と陰極21とが対向する方向と交差する方向における一方の側面に設けられている。第二供給流路42は電解液供給管8bに接続している。
【0038】
第二回収流路52は、陰極室20から電解液を回収するための流路である。電解液は、第二回収流路52を通り陰極室20から回収される。第二回収流路52は、陰極室20において、陽極11と陰極21とが対向する方向と交差する方向における他方の側面に設けられている。第二回収流路52は電解液回収管9bに接続している。
【0039】
第二流路狭窄部62は、電解が止められているときに、第二流路狭窄部62が設けられている流路を狭窄する。本実施形態では、第二流路狭窄部62は、第二供給流路42及び第二回収流路52に設けられている。第二流路狭窄部62は、第二供給流路42及び第二回収流路52の少なくとも一方の流路に設けられていればよい。
【0040】
第二流路狭窄部62は、電気絶縁性を有する材料から構成されている。第二流路狭窄部62は、耐蝕性を有する材料から構成されている。
【0041】
第二流路狭窄部62は、垂下部材70と当接部材71とを有している。本実施形態では、第二供給流路42及び第二回収流路52に設けられた第二流路狭窄部62が垂下部材70と当接部材71とを有している。
【0042】
垂下部材70は、第二供給流路42及び第二回収流路52に設けられている。垂下部材70は、電解液が流れる方向に対して回動する。第二流路狭窄部62において電解液が流れる速さは、150L/h程度を例示することができる。垂下部材70は、例えば、ヒンジなどを介して第二供給流路42及び第二回収流路52に設けられている。垂下部材70は、第二流路狭窄部62における電解液の流れが電解時の流れに比べて少なくないときに垂下する。
【0043】
電解槽4における電解について説明する。電解槽4は、例えばアルカリ水、及び塩水からなる電解液を電解して苛性ソーダ、塩素、及び水素を得るための装置である。例えば、塩水の電解を行なう場合、陽極室10へ塩水が供給され、陰極室20へ電解液として純水又は低濃度の水酸化ナトリウム水溶液が供給される。陽極室10に供給される電解液は、電解液供給管8a及び第一供給流路41を通り供給される。陰極室20に供給される電解液は、電解液供給管8b及び第二供給流路42を通り供給される。
【0044】
塩水の電解が行われている場合、塩水中のナトリウムイオンは、一方の電解セル1の陽極室10から、イオン透過性の膜2を通過して、隣の電解セル1の陰極室20へ移動する。よって、電解時の電流は、陽極端子から、イオン透過性の膜2を介して陽極11及び陰極21を経由し、陰極端子へ流れる。塩水の電解が行われている場合、陽極11で塩素ガスが生成し、陰極21で水酸化ナトリウムと水素ガスが生成する。
【0045】
電解により陽極室10において生じる生成物の一部は、電解液とともに電解液回収管9a及び第一回収流路51を通り回収される。電解により陰極室20において生じる生成物の一部は、電解液とともに電解液回収管9b及び第二回収流路52を通り回収される。
【0046】
電解が止められると、第一流路狭窄部61における電解液の電解液の流れが少なくなるにつれ垂下部材70が垂下する。垂下部材70垂下することにより、第一流路狭窄部61が設けられている電解液が流れる流路の流路面積が狭窄される。電気抵抗は電流が流れる面積に反比例するため、電気抵抗値が高くなる。このため、電解セル1にかかる電位差によって逆電流が発生しにくくなる。
【0047】
電解が止められると、第二流路狭窄部62における電解液の電解液の流れが少なくなるにつれ垂下部材70が垂下する。垂下部材70垂下することにより、第二流路狭窄部62が設けられている電解液が流れる流路の流路面積が狭窄される。このため、電解セル1にかかる電位差によって逆電流が発生しにくくなる。
【0048】
なお、本実施形態において、電解が止められているときとは、陽極端子と陰極端子とが接続する電源から電流が止められているとともに、循環ポンプによる電解液の循環が止められているときである。電解が止められているときとは、次の電解のために電圧を印加するまでの期間を含んでいる。
【0049】
逆電流が発生しにくくなることにより、陰極21の酸化、触媒層の溶解又は酸化等、陰極21の劣化が起こりにくくなる。陰極21の触媒層として、例えばルテニウム(Ru)又はスズ(Sn)など逆電流により溶解する触媒材料を使用した場合であっても、逆電流による陰極21の触媒層の溶解が抑制されるため、陰極21の触媒層の寿命が極端に短くなることを防ぐことができる。
【0050】
以上、本実施形態によれば、電解が止められているとき、垂下部材70は、電解液の流れが少なくなるにつれ垂下する。第一流路狭窄部61及び第二流路狭窄部62により電解液の流路が狭窄され流路面積が小さくなる。このため、第一流路狭窄部61及び第二流路狭窄部62における電気抵抗が高くなる。よって、第一供給流路41又は第一回収流路51、及び、第二供給流路42又は第二回収流路52において電解液と地絡した電解槽4と電位差が生じた場合であっても、逆電流の発生を抑制することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0052】
本実施形態では、第一流路狭窄部61は、電気絶縁性を有する材料から構成されている場合を説明したが、これに限定されない。第一流路狭窄部61は、耐蝕性を有する材料から構成されている場合を説明したが、これに限定されない。第一流路狭窄部61は、電気絶縁性を有する材料から構成されていることが好ましいが、耐蝕性を有していなくともよい。
【0053】
本実施形態では、第一流路狭窄部61は垂下部材70及び当接部材71を有している場合を説明したが、これに限定されない。第一流路狭窄部61は、垂下部材70を有し当接部材71を有していなくてもよい。垂下部材70の形状は、板状に限定されず、円形形状であってもよい。垂下部材70は、揺動可能な部材であってもよい。この場合、垂下部材70は、例えば、ゴムから構成される部材であってもよい。垂下部材70は、例えば、ヒンジなどを介さずに第一供給流路41及び第一回収流路51に設けられてもよい。あるいは、第一流路狭窄部61は電磁弁等により流路を狭窄してもよい。
【0054】
本実施形態では、第二流路狭窄部62は垂下部材70及び当接部材71を有している場合を説明したが、これに限定されない。第二流路狭窄部62は、垂下部材70を有し当接部材71を有していなくてもよい。あるいは、第二流路狭窄部62は電磁弁等により流路を狭窄してもよい。
【0055】
本実施形態では、電解液は循環ポンプにより電解槽4内を循環していたが、これに限定されない。例えば、電解により生成した気体が上昇する浮力を利用することにより、電解液を循環させてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…電解セル、4…電解槽、10…陽極室、11…陽極、20…陰極室、21…陰極、41…第一供給流路、42…第二供給流路、51…第一回収流路、52…第二回収流路、61…第一流路狭窄部、62…第二流路狭窄部、70…垂下部材、71…当接部材。
図1
図2
図3