(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成形工程は、前記光沢層の他方の面がエンボス成形用の凸状金型面に対向された状態で前記成形補助層側から圧力を加えることで、前記成形補助層側が突出するようにエンボス成形することを特徴とする請求項1に記載の立体エンブレムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような立体エンブレムは、車体の曲面形状部位に貼り付けられることもあり、柔軟性を有する立体エンブレムの要請が高まっている。
【0006】
例えば、上記特許文献1の立体エンブレムの基材層を省略した場合、その基材層を省略した分だけ立体エンブレムの柔軟性を高めることができる。ところが、この場合、加工時に設計値どおりに立体形状を加工し難くなることが想定される。
【0007】
そこで本発明は、柔軟性を高めながらもより設計値に近い立体形状を得ることができる立体エンブレムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、透明樹脂層の一方の面に光沢層を積層した積層体において、前記透明樹脂層の他方の面に成形補助層を積層して補助付積層体を得る積層工程と、前記補助付積層体に対して、前記成形補助層側が突出するようにエンボス成形する成形工程と、前記補助付積層体から前記成形補助層を剥離する剥離工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような製造方法によれば、エンボス成形時には成形補助層によって積層体の剛性を高めることができるため、柔軟性を有する積層体であってもより忠実なエンボス形状を積層体に転写させることができる。また、エンボス成形後には成形補助層が剥離されるため、積層体の柔軟性を有効に活用することができ、この結果、基材層がない場合であっても立体エンブレムを曲面形状部位に追従させて貼り付けることが可能となる。こうして、柔軟性を高めながらもより設計値に近い立体形状を得ることができる立体エンブレムの製造方法が提供される。
【0010】
また、前記成形工程は、前記光沢層の他方の面がエンボス成形用の凸状金型面に対向された状態で前記成形補助層側から圧力を加えることで、前記透明樹脂層側が突出するようにエンボス成形することが好ましい。
【0011】
このようにした場合、成形補助層によって積層体の剛性が高められる側に圧力を加えることができる。このため、エンボス成形用の金型面に成形補助層が対向された状態で光沢層側から圧力を加える場合に比べてより忠実なエンボス形状を積層体に転写させることができる。
【0012】
また、前記剥離工程の前に、前記成形工程により前記光沢層の他方の面に形成された凹部に硬化性樹脂を充填する充填工程をさらに備え、前記硬化性樹脂を硬化した後に前記剥離工程を行うことが好ましい。
【0013】
このようにした場合、充填工程前に積層体から成形補助層を剥離する場合に比べて、当該成形補助層を剥離することに起因する積層体の変形を抑制することができる。
【0014】
また、前記充填工程は、前記光沢層の他方の面における前記凹部以外の第一の部位に押圧部材で前記封止フィルムを押しつけるステップと、前記押圧部材を前記第一の部位から前記凹部上方を通過し前記凹部以外の第二の部位まで移動させて前記封止フィルムを前記光沢層に貼り付けるステップとを備えることが好ましい。
【0015】
このようにした場合、硬化性樹脂を充填する場合にも成形補助層によって積層体の剛性を高めることができる。このため、積層体に押圧部材から圧力が加わっても、当該積層体に形成されたエンボス形状を変形させることなく、硬化性樹脂を充填することが可能となる。また、凹部に充填された硬化性樹脂が硬化されることによってエンボス部分における強度を高めることもできる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、柔軟性を高めながらもより設計値に近い立体形状を得ることができる立体エンブレムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)実施形態
本発明の一実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。しかしながら本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(1−1)立体エンブレムの構成
図1は、本実施形態における立体エンブレム1の断面を示す図である。
図1に示すように、本実施形態における立体エンブレム1は、透明樹脂層10、光沢層20、充填層30および封止フィルム40を主な構成要素として備える。
【0020】
透明樹脂層10は、光透過性を有する樹脂層であり、立体エンブレム1の表面に位置する層である。この樹脂層に用いる樹脂としては、光透過性を有するものである限り、特に限定されるものではない。具体例としては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0021】
透明樹脂層10の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm〜300μmである。透明樹脂層10の厚みが10μm未満であると、十分な耐久性を得る事が出来ない場合があるからである。一方、透明樹脂層10の厚みが300μmを超えると、成型性を阻害する場合があり、またコスト高になるからである。
【0022】
光沢層20は、一方の面に透明樹脂層10を積層したものであり、透明樹脂層10から入射する光によって光沢性を帯びる層である。光沢層20に光沢をもたせる材料は、例えば金属蒸着、金属箔、無機顔料、蛍光染料などが挙げられる。好ましくは、アルミ蒸着、インジウム蒸着、スズ蒸着、アルミペースト、パール顔料である。
【0023】
光沢層20の厚みは、特に限定されるものではないが、50μm以下である事が好ましい。光沢層20の厚みが50μmを超えると、成型性を阻害する場合があるからである。
【0024】
このような透明樹脂層10と光沢層20とは、接着剤により密着させ、透明樹脂層側が突出するようにエンボス成形する。なお、接着剤は、透明性を有し、エンボス成形時に割れないことが必要である。また、接着剤は、熱、光、時間経過で変色しないものが望ましい。接着剤の具体例としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。なお、便宜上、
図1では接着剤の塗布により形成される接着剤層を省略した。
【0025】
充填層30は、エンボス成形によって透明樹脂層10および光沢層20に形成した凹部に設けた層である。この充填層30に用いる材料としては、熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂などの硬化性樹脂である。これらのほかに、架橋剤、重合開始剤、安定剤、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防かび剤などのいずれか1つあるいは複数を含有させてもよい。熱硬化性樹脂の具体例としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂の具体例としては、ラジカル重合アクリル樹脂、カチオン重合エポキシ樹脂などが挙げられる。なお、熱硬化性樹脂の場合、使用直前に硬化性樹脂と架橋剤とを混合する2液型を採用する場合がある。
【0026】
封止フィルム40は、充填層30をシールするフィルムである。本実施形態における封止フィルム40は、粘着剤層41と、その粘着剤層41の一方の面に貼着された剥離紙42とで構成する。また、粘着剤層41は両面テープであっても良い。あるいは、硬化性樹脂の種類によっては粘着剤が塗布されない封止フィルムを適用してもよい。
【0027】
(1−2)立体エンブレムの製造方法
図2は、立体エンブレム1の製造方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、立体エンブレムの製造方法は、積層工程P1、成形工程P2、充填工程P3、硬化工程P4、トリミング工程P5および剥離工程P6を主工程として備える。
【0028】
<積層工程>
図3は、積層工程P1の様子を示す図である。
図3に示すように、まず、透明樹脂層10と光沢層20とを接着剤で接着し、透明樹脂層10の一方の面に光沢層20を積層した積層体50を準備する。
【0029】
次に、積層体50において、透明樹脂層10の他方の面に成形補助層60を積層する。具体的には、成形補助層60の表面に粘着剤を塗布または貼り合わせし、その結果形成される粘着剤層上に積層体50における透明樹脂層10側を圧着する。こうして、成形補助層60を積層した積層体(以下、補助付積層体という)70が得られる。
【0030】
なお、便宜上、
図3において、透明樹脂層10と光沢層20との間に形成される接着剤層、および、透明樹脂層10と成形補助層60との間に形成される粘着剤層を省略した。
【0031】
<成形工程>
図4は、成形工程P2におけるエンボス成形前の様子を示す図である。
図5は、成形工程P2におけるエンボス成形後の様子を示す図である。
図4に示すように、まず、補助付積層体70における光沢層20側の表面がエンボス成形用の凸状金型80における凸面に対向するように、当該凸面上に補助付積層体70を載置する。
【0032】
次に、
図5に示すように、補助付積層体70に対して真空あるいは圧空成形により、補助付積層体70の成形補助層60側が突出するようにエンボス成形する。なお、凸状金型と凹状金型とを補助付積層体70にプレスすることによって、当該補助付積層体70の成形補助層60側が突出するようにしてもよい。
【0033】
こうして、所定のエンボス形状が補助付積層体70に転写する。すなわち、補助付積層体70の光沢層20側から見れば凹部が形成され、補助付積層体70の成形補助層60側から見れば凸部が形成される。なお、エンボス成形によって補助付積層体70に形成する凸部の形状は、文字、記号もしくは図形などである。
【0034】
<充填工程>
図6は、充填工程P3に用いる充填装置の構成例を示す図である。
図6に示すように、本実施形態の場合、例えば、搬送路91、押圧ローラ92、樹脂射出ノズル93、台座94を主な構成要素として備えた充填装置を用いて、充填工程P3を行う。
【0035】
搬送路91は、例えばベルトコンベア式の搬送路とする。当該搬送路上に載置した台座94を搬送方向D1に移動する。この台座94の載置面には、成形工程によって補助付積層体70に形成した凸部を収容する収容空間SPを設ける。
【0036】
押圧ローラ92は、搬送路91の上方に配置し、本実施形態では搬送路91に近づく方向または遠ざかる方向に昇降する昇降式のローラとする。この押圧ローラ92の回転方向D2は搬送方向D1と同方向とし、当該押圧ローラ92の表面は例えばゴム製とする。
【0037】
この押圧ローラ92と搬送路91との間には封止フィルム40を配置する。なお、封止フィルム40の剥離紙側が押圧ローラ92のローラ面と対向し、当該封止フィルム40の粘着剤層側が搬送路91の搬送面と対向する状態とする。この封止フィルム40は送り機構によって搬送路91の搬送方向D1に所定の速度で移動する。
【0038】
樹脂射出ノズル93は、搬送路91の上方、かつ、搬送方向D1において押圧ローラ92の上流側に配置しており、硬化性樹脂を規定量だけ所定圧で射出するようになっている。
【0039】
図7は、充填工程P3における充填前の様子を示す図である。
図8は、充填工程P3における充填途中の様子を示す図である。
図7に示すように、まず、補助付積層体70に形成した凸部を台座94の収容空間SPに収容した状態で、当該補助付積層体70を台座94に載置する。
【0040】
なお、補助付積層体70の凸部が押圧によって変形することを抑制するため、収容空間SPの深さDPは、台座94に載置した補助付積層体70の凸部との間に隙間を有する程度の深さにすることが好ましい。
【0041】
次に、補助付積層体70の光沢層側の面における凹部以外の部位に硬化性樹脂100を樹脂射出ノズル93により規定量だけ所定圧で射出し配置する。
【0042】
本実施形態の場合、まず、凹部の周縁のうち、当該凹部を基準として搬送方向D1の下流側に押圧ローラ92を配置する。次に、台座94を搬送方向D1に移動させるとともに押圧ローラ92を回転方向D2に回転させる。こうして、
図8に示すように、補助付積層体70の光沢層20の他方の面における凹部以外の第一の部位に押圧ローラ92で封止フィルム40を押しつける。
【0043】
この状態において、補助付積層体70の光沢層側の面に封止フィルム40を圧着するとともに、当該補助付積層体70の凹部に硬化性樹脂100を封止フィルム40で押しながら充填する。凹部に充填できなかった硬化性樹脂は、当該補助付積層体70の上流端部まで封止フィルム40で押しながら移動させる。あるいは、凹部に充填できなかった硬化性樹脂を上流側の次の補助付積層体70の凹部に充填するようにしてもよい。
【0044】
なお、硬化性樹脂100を補助付積層体70の凹部に充填した後に、当該補助付積層体70を光沢層側の面から再び押圧するようにしてもよい。また、押圧ローラ92に代えてスキージを適用してもよい。
【0045】
<硬化工程>
この硬化工程P4は、凹部に充填した硬化性樹脂100を硬化させる工程である。例えば、硬化性樹脂100が紫外線硬化性樹脂の場合、凹部に充填した硬化性樹脂100に紫外線を照射することによって硬化させる。
【0046】
また、硬化性樹脂100が熱硬化性樹脂の場合、室温放置によって硬化させさせてもよく、室温放置に代えて、加熱して熱硬化性樹脂を短時間で硬化させてもよい。ただし、室温放置によって熱硬化性樹脂を硬化させる場合、加熱設備が不要となるため簡易に立体エンブレム1を製造することが可能となる。
【0047】
<トリミング工程>
このトリミング工程P5は、主に、封止フィルム40を貼り付けた補助付積層体70を所定の大きさに切り出す工程である。なお、補助付積層体70を切り出す前後に、補助付積層体70と封止フィルム40とからはみ出た樹脂を除去するようにしてもよい。また、補助付積層体70を切り出した後にバリを除去するようにしてもよい。
【0048】
<剥離工程>
この剥離工程P6は、補助付積層体70から成形補助層60を剥離する工程である。例えば、成形補助層60の一端における1つまたは複数の位置を把持し、その一端からこれに対向する他端に向けて、一定の力で剥離する。
【0049】
このように積層工程P1、成形工程P2、充填工程P3、硬化工程P4、トリミング工程P5および剥離工程P6を経ることによって、
図1に示したような立体エンブレム1が製造される。
【0050】
なお、このように製造された立体エンブレム1においては、例えば搬入先などで剥離紙42を剥離して層粘着剤41の一方の面を露出した後、例えば車体の表面等の所定の貼付部位に貼り付けられる。
【0051】
以上のとおり、本実施形態における立体エンブレム1の製造方法は、透明樹脂層10の一方の面に光沢層20を積層した積層体50において、当該透明樹脂層10の他方の面に成形補助層60を積層して補助付積層体70を得る。
【0052】
そして、補助付積層体70に対して、成形補助層60側が突出するようにエンボス成形した後、当該補助付積層体70から成形補助層60を剥離する。
【0053】
このような製造方法によれば、成形補助層60を積層した補助付積層体70は、当該成形補助層60を積層しない積層体50に比べて剛性を高めることができるため、柔軟性を有する積層体50であってもより忠実なエンボス形状を積層体50に転写させることができる。
【0054】
また、エンボス成形後には成形補助層60を剥離するため、積層体50の柔軟性を有効に活用することができ、この結果、立体エンブレム1を曲面形状部位に追従させて貼り付けることが可能となる。
【0055】
また、本実施形態における成形工程P2では、補助付積層体70における光沢層20が凸状金型80の金型面に対向された状態で、成形補助層60側から圧力を加える。
【0056】
したがって、補助付積層体70の成形補助層60側に圧力を加えることができる。このため、凸状金型80の金型面に成形補助層60を対向させた状態で光沢層側から圧力を加える場合に比べてより忠実なエンボス形状を補助付積層体70に転写することができる。
【0057】
また、本実施形態の場合、補助付積層体70の成形補助層60を剥離する前に、成形工程P2によって補助付積層体70における光沢層20の他方の面に形成された凹部に硬化性樹脂100を充填する充填工程P3を備える。そして、硬化性樹脂100を硬化した後に、剥離工程P6を行う。
【0058】
したがって、充填工程P3の前に補助付積層体70から成形補助層60を剥離する場合に比べて、当該成形補助層60を剥離することに起因する積層体50の変形を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の充填工程P3の場合、光沢層20の他方の面における凹部以外の第一の部位に押圧ローラ92で封止フィルム40を押しつけるステップと、当該押圧ローラ92を第一の部位から凹部上方を通過し凹部以外の第二の部位まで移動させて封止フィルム40を光沢層20に貼り付けるステップとを経る。
【0060】
したがって、硬化性樹脂100を充填する場合にも補助付積層体70の剛性が高いため、補助付積層体70に押圧ローラ92から圧力が加わっても、当該補助付積層体70に形成されたエンボス形状を変形させることなく、硬化性樹脂100を充填することが可能となる。また、凹部に充填された硬化性樹脂100が硬化することによってエンボス部分の強度を高めることもできる。
【0061】
なお、立体エンブレム1の製造方法は、上記実施形態に示された内容以外に、適宜、本願目的を逸脱しない範囲で組み合わせ、省略、変更、周知技術の付加などをすることができる。