特許第6242679号(P6242679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242679半導体装置用樹脂フィルム、及び、半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242679
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】半導体装置用樹脂フィルム、及び、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   H01L21/52 E
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-267575(P2013-267575)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-126018(P2015-126018A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】三隅 貞仁
(72)【発明者】
【氏名】大西 謙司
(72)【発明者】
【氏名】菅生 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 雄一郎
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−241157(JP,A)
【文献】 特開2013−030500(JP,A)
【文献】 特開2013−004813(JP,A)
【文献】 特開2011−052109(JP,A)
【文献】 特開2013−030504(JP,A)
【文献】 特開2015−126019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/301
C09J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置用樹脂フィルムであって、
陽イオンを捕捉する無機イオン捕捉剤を含有し、
10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、熱硬化前の重さ2.5gの半導体装置用樹脂フィルムを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度(ppm)をX、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、175℃で5時間熱硬化させた後の重さ2.5gの半導体装置用樹脂フィルムを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度(ppm)をYとしたときに、下記式(1)により算出される銅イオン捕捉率Aと下記式(2)により算出される銅イオン捕捉率Bとの比B/Aが1以上であることを特徴とする半導体装置用樹脂フィルム。
式(1):[(10−X)/10]×100(%)
式(2):[(10−Y)/10]×100(%)
【請求項2】
5%重量減少温度が200℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用樹脂フィルム。
【請求項3】
前記無機イオン捕捉剤の含有量が、1〜30重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置用樹脂フィルム。
【請求項4】
10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、175℃で5時間熱硬化させた後の重さ2.5gの半導体装置用樹脂フィルムを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液のpHが、4〜6の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の半導体装置用樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1に記載の半導体装置用樹脂フィルムを準備する工程と、
前記半導体装置用樹脂フィルムを介して、半導体チップを被着体上にダイボンドするダイボンド工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用樹脂フィルム、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置において、基板に形成されている配線(例えば、銅配線)や、基板と半導体チップとを電気的に接続するワイヤー(例えば、銅ワイヤー)から金属イオン(例えば、銅イオン)が発生し、動作不良を起こす場合があることが知られている。
【0003】
そこで、近年、半導体チップをリードフレーム等の基板に接着するための樹脂に金属イオンを捕捉する添加剤を添加することにより、半導体装置の動作不良を予防することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−333085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体装置の製造においては、種々の加熱工程を経るため、前記添加剤が熱分解等するおそれがあり、充分なイオン捕捉性を発揮できない場合があるといった問題がある。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、熱履歴を経た後も充分なイオン捕捉性を有する半導体装置用樹脂フィルム、及び、当該半導体装置用樹脂フィルムを用いた半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、半導体装置用樹脂フィルムについて鋭意研究した。その結果、驚くべきことに、特定の半導体装置用樹脂フィルムにおいては、熱硬化後と熱硬化前とでイオン捕捉性が同等であるか、熱硬化後の方が熱硬化前よりもイオン捕捉性が高いことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る半導体装置用樹脂フィルムは、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、熱硬化前の重さ2.5gの半導体装置用樹脂フィルムを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度(ppm)をX、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、175℃で5時間熱硬化させた後の重さ2.5gの半導体装置用樹脂フィルムを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度(ppm)をYとしたときに、下記式(1)により算出される銅イオン捕捉率Aと下記式(2)により算出される銅イオン捕捉率Bとの比B/Aが1以上であることを特徴とする。
式(1):[(10−X)/10]×100(%)
式(2):[(10−Y)/10]×100(%)
【0009】
前記構成によれば、熱硬化前の銅イオン捕捉率Aと、熱硬化後の銅イオン捕捉率Bとの比B/Aが1以上であり、熱硬化前に比較して熱硬化後も、陽イオン捕捉性が低下しない。従って、半導体装置の製造において熱履歴を経た後も充分なイオン捕捉性を有する。
【0010】
前記構成においては、5%重量減少温度が200℃以上であることが好ましい。
【0011】
5%重量減少温度が200℃以上であると、半導体装置用樹脂フィルム全体としての耐熱性に優れる。
【0012】
前記構成においては、陽イオンを捕捉する無機イオン捕捉剤を含有することが好ましい。
【0013】
無機イオン捕捉剤は、比較的熱分解し難い。従って、無機イオン捕捉剤を含有すると、熱履歴を経た後もより充分なイオン捕捉性を有する。
【0014】
前記構成においては、前記無機イオン捕捉剤の含有量が、1〜30重量%であることが好ましい。
【0015】
前記無機イオン捕捉剤の含有量を1重量%とすることにより、陽イオンを効率的に捕捉することができ、30重量%以下とすることにより、良好なフィルム成形性が得られる。
【0016】
前記構成においては、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、175℃で5時間熱硬化させた後の重さ2.5gの半導体装置用樹脂フィルムを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液のpHが、4〜6の範囲内であることが好ましい。
【0017】
無機イオン捕捉剤は、一般的にイオン交換により陽イオンを捕捉する。そのため、陽イオン捕捉性は、pHに影響される。具体的には、pHが過度に酸性になると陽イオンの捕捉性が低下する場合がある。そこで、前記pHを4〜6の範囲内とすることにより陽イオン捕捉性をより良好とすることができる。
【0018】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記半導体装置用樹脂フィルムを準備する工程と、
前記半導体装置用樹脂フィルムを介して、半導体チップを被着体上にダイボンドするダイボンド工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、半導体装置用樹脂フィルムの熱硬化前の銅イオン捕捉率Aと、熱硬化後の銅イオン捕捉率Bとの比B/Aが1以上であり、熱硬化前に比較して熱硬化後も、陽イオン捕捉性が低下しない。従って、半導体装置の製造において熱履歴を経た後も充分なイオン捕捉性を有する。その結果、製造される半導体装置の動作不良を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
図2】本発明の他の実施形態に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
図3】本実施形態に係る半導体装置の一製造方法を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、まず、本発明の好適な実施形態として、本発明の半導体装置用樹脂フィルムがダイボンドフィルムである場合について説明する。本実施形態に係るダイボンドフィルムは、以下に説明するダイシングシート付きダイボンドフィルムにおいて、ダイシングシートが貼り合わせられていない状態のものを挙げることができる。従って、以下では、ダイシングシート付きダイボンドフィルムについて説明し、ダイボンドフィルムについては、その中で説明することとする。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムを示す断面模式図である。図2は、本発明の他の実施形態に係る他のダイシングシート付きダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【0023】
図1に示すように、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10は、ダイシングシート11上にダイボンドフィルム3が積層された構成を有する。ダイシングシート11は基材1上に粘着剤層2を積層して構成されており、ダイボンドフィルム3はその粘着剤層2上に設けられている。なお、ダイシングシート付きダイボンドフィルムは、図2に示すダイシングシート付きダイボンドフィルム12のように、ワーク貼り付け部分にのみダイボンドフィルム3’を形成した構成であってもよい。ダイボンドフィルム3’は、ダイボンドフィルム3と形状のみ異なり、フィルムを構成する各種の樹脂、添加剤、フィラー等は、ダイボンドフィルム3と同様のものを用いることができる。
以下では、図1に示すダイシングシート付きダイボンドフィルム10の各構成について主に説明する。
【0024】
(ダイボンドフィルム)
ダイボンドフィルム3は、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、熱硬化前の重さ2.5gのダイボンドフィルム3を浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度(ppm)をX、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、175℃で5時間熱硬化させた後の重さ2.5gのダイボンドフィルム3を浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度(ppm)をYとしたときに、下記式(1)により算出される銅イオン捕捉率Aと下記式(2)により算出される銅イオン捕捉率Bとの比B/Aが1以上である。
式(1):[(10−X)/10]×100(%)
式(2):[(10−Y)/10]×100(%)
【0025】
前記比B/Aは、1以上であり、1.1以上であることが好ましい。また、前記比B/Aは大きい方が好ましいが、例えば10以下である。ダイボンドフィルム3は、前記比B/Aが1以上であり、熱硬化前に比較して熱硬化後も、陽イオン捕捉性が低下しない。従って、半導体装置の製造において熱履歴を経た後も充分なイオン捕捉性を有する。
【0026】
ダイボンドフィルム3は、5%重量減少温度が200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがより好ましい。ダイボンドフィルム3の5%重量減少温度が200℃以上であると、ダイボンドフィルム3全体としての耐熱性に優れる。5%重量減少温度の測定方法は実施例記載の方法による。ダイボンドフィルム3の5%重量減少温度は、ダイボンドフィルム3を構成する樹脂、添加剤、フィラー等の選択や、ダイボンドフィルム3を形成する際の製造条件(例えば、塗工製膜後の乾燥温度や乾燥時間)により調整できる。
【0027】
ダイボンドフィルム3は、陽イオンを捕捉する添加剤を含有することが好ましい。ダイボンドフィルム3に、陽イオンを捕捉する添加剤を含有させると、容易にイオン捕捉性を待たせることができる。
【0028】
前記陽イオンを捕捉する添加剤により捕捉する陽イオンとしては、例えば、Na、K、Ni、Cu、Cr、Co、Hf、Pt、Ca、Ba、Sr、Fe、Al、Ti、Zn、Mo、Mn、V等のイオン(陽イオン)を挙げることができる。前記陽イオンを捕捉する添加剤は、なかでも、Cuイオン(銅イオン)を少なくとも捕捉するものであることが好ましい。銅イオンは、他のイオンに比較して多量に発生し易く、半導体装置の動作不良に大きな影響を及ぼす可能性が高いからである。
【0029】
前記陽イオンを捕捉する添加剤としては、無機イオン捕捉剤、陽イオンと錯体を形成する錯体形成化合物などを挙げることができる。なかでも、無機イオン捕捉剤が好ましい。無機イオン捕捉剤は、比較的熱分解し難いため、熱履歴を経た後もより充分なイオン捕捉性を有するからである。
【0030】
(無機イオン捕捉剤)
前記無機イオン捕捉剤は、イオン交換により陽イオンを捕捉する無機イオン交換体である。前記無機イオン捕捉剤は、陽イオンのみならず、陰イオンも捕捉できる無機両イオン捕捉剤であることが好ましい。前記無機イオン捕捉剤が両イオン捕捉剤であると、pHの変化が少ない。その結果、経時によるイオン捕捉性の低下を抑制することができる。具体的には、陽イオンを捕捉する際にカウンターイオンとして放出するイオン(例えば、水素イオン)を、陰イオンを捕捉する際にカウンターイオンとして放出するイオン(例えば、水酸化物イオン)が中和する。イオン捕捉は平衡反応(イオン交換)によって行われるため、カウンターイオンの濃度が減少することで、ターゲットイオンのイオン交換が促進される。
本明細書において、両イオン捕捉剤とは、銅イオンと塩化物イオンとの双方を一定量以上捕捉できる無機両イオン交換体をいう。前記無機両イオン交換体としては、具体的には、下記銅(II)イオン分配係数の測定方法に従って求められる銅(II)イオン分配係数(Kd)が10以上であり、かつ、下記イオン交換容量の測定方法に従って求められるイオン交換容量(meq/g)が0.5以上であるものを挙げることができる。
<銅(II)イオン分配係数の測定方法>
100mlポリ容器に無機両イオン交換体5.0gと銅(II)イオンを0.01N含有する試験液50mlを入れ、密栓して25℃で24時間振とうする。振とう後、0.1μmのメンブレンフィルターで濾過し、濾液中の銅(II)イオン濃度をICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)で測定することで、銅(II)イオン分配係数Kdを求める。Kd(ml/g)は(C−C)×V/(C×m)で表し、Cは初期イオン濃度、Cは試験液イオン濃度、Vは試験液体積(ml)、mは無機両イオン交換体の重量(g)である。
<イオン交換容量の測定方法>
50mlのNaCl飽和水溶液に、1.0gの無機両イオン交換体を浸漬し20時間室温で放置する。無機両イオン交換体によって発生した水酸化物イオンの量を0.1NのHCl水溶液による滴定で定量してイオン交換容量(meq./g)を求める。
【0031】
ダイボンドフィルム3は、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、175℃で5時間熱硬化させた後の重さ2.5gのダイボンドフィルム3を浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液のpHが、4〜6の範囲内であることが好ましく、4.2〜5.8の範囲内であることがより好ましく、4.4〜5.5の範囲内であることがさらに好ましい。無機イオン捕捉剤は、一般的にイオン交換により陽イオンを捕捉する。そのため、陽イオン捕捉性は、pHに影響される。具体的には、pHが過度に酸性になると陽イオンの捕捉性が低下する場合がある。そこで、前記pHを4〜6の範囲内とすることにより陽イオン捕捉性をより良好とすることができる。前記pHを4〜6の範囲内とする方法としては、下記の無機両イオン捕捉剤を用いる方法が挙げられる。無機両イオン捕捉剤を用いると、pHが過度に酸性になることを抑制し、高いイオン捕捉性が維持できる。
【0032】
前記無機イオン捕捉剤は特に制限されるものではなく、種々の無機イオン捕捉剤を用いることができ、例えば、アンチモン、ビスマス、ジルコニウム、チタン、スズ、マグネシウム及びアルミニウムからなる群より選ばれる元素の酸化水和物を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、マグネシウム、アルミニウム及びジルコニウムの3成分系酸化水和物が好ましい。マグネシウム、アルミニウム及びジルコニウムの3成分系は、陽イオンと陰イオンとの両方のイオンをイオン交換によって捕捉するため、イオンを捕捉してもpHが中性付近に保たれる。そのため、より良好なイオン捕捉性が得られる。また、マグネシウム、アルミニウム及びジルコニウムの3成分系は、アンチモンフリーが要求される半導体用途において特に好適である。
【0033】
前記無機イオン捕捉剤の市販品としては、東亜合成株式会社製の商品名:IXEPLAS−A1、IXEPLAS−A2等を挙げることができる。これらは、無機両イオン捕捉剤である。
【0034】
前記無機イオン捕捉剤の平均粒径は、0.1〜1μmであることが好ましく、0.2〜0.6μmであることがより好ましい。前記無機イオン捕捉剤の平均粒径を1μm以下とすることにより、比表面積を大きくすることができる。その結果、イオン捕捉性をより向上させることができる。また、前記無機イオン捕捉剤の平均粒径を1μm以下とすることにより、ダイボンドフィルム3の厚さを薄くすることができる。また、前記無機イオン捕捉剤の平均粒径を0.1μm以上とすることにより、分散性を向上させることができる。
【0035】
前記無機イオン捕捉剤は、シランカップリング剤により処理(前処理)されたものが好ましい。シランカップリング処理されていると、無機イオン捕捉剤の分散性が良好になり、ダイボンドフィルム3の製膜性に優れる。特に、粒径の小さい無機イオン捕捉剤ほど凝集を起こし易いが、シランカップリング処理を行なえば、分散性が良好になる。その結果、無機イオン捕捉剤を含有する厚さの薄いダイボンドフィルム3を好適に製造することが可能となる。なお、無機イオン捕捉剤をシランカップリング処理しても、陽イオン捕捉性は、処理しない状態と比較して同等、又は、大きく落ちることはないことを本発明者らは確認している。
【0036】
シランカップリング剤としては、ケイ素原子、加水分解性基及び有機官能基を含むものが好ましい。
【0037】
加水分解性基は、ケイ素原子に結合している。
【0038】
加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。なかでも、加水分解速度が速く処理が容易という理由から、メトキシ基が好ましい。
【0039】
シランカップリング剤中の加水分解性基の数は、無機イオン捕捉剤と架橋しつつシランカップリング剤同士で架橋することが可能で、無機イオン捕捉剤表面の架橋点が少なくても無機イオン捕捉剤全体をシランカップリング剤で表面処理できるという点から、好ましくは2〜3個、より好ましくは3個である。
【0040】
有機官能基は、ケイ素原子に結合している。
【0041】
有機官能基としては、例えば、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、フェニルアミノ基などを含むものが挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂と反応性を有さず、処理を行った無機イオン捕捉剤の保存安定性が良好なことからアクリル基が好ましい。
【0042】
なお、エポキシ基と反応性が高い官能基を有するとエポキシ樹脂と反応するため、保存安定性、流動性が低下する。流動性の低下を抑制するという点から、有機官能基としては、一級アミノ基、メルカプト基又はイソシアネート基を含まないものが好ましい。
【0043】
シランカップリング剤中の有機官能基の数は、好ましくは1個である。ケイ素原子は結合を4つつくるため、有機官能基が多いと加水分解基の数が不足する。
【0044】
シランカップリング剤は、ケイ素原子に結合するアルキル基をさらに含んでもよい。シランカップリング剤がアルキル基を含むことにより、メタクリル基よりも反応性を低くすることが可能で、急激な反応による表面処理の偏りを防ぐことができる。アルキル基としては、メチル基、ジメチル基などが挙げられる。なかでも、メチル基が好ましい。
【0045】
シランカップリング剤として、具体的には、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0046】
シランカップリング剤により無機イオン捕捉剤を処理する方法としては特に限定されず、溶媒中で無機イオン捕捉剤とシランカップリング剤を混合する湿式法、気相中で無機イオン捕捉剤とシランカップリング剤を処理させる乾式法などが挙げられる。
【0047】
シランカップリング剤の処理量は特に限定されないが、無機イオン捕捉剤100重量部に対して、シランカップリング剤を0.05〜5重量部処理することが好ましい。
【0048】
前記陽イオンを捕捉する添加剤の含有量は、1〜30重量%であることが好ましく、2〜25重量%であることがより好ましく、3〜20重量%であることがさらに好ましい。前記陽イオンを捕捉する添加剤の含有量を1重量%とすることにより、陽イオンを効率的に捕捉することができ、30重量%以下とすることにより、良好なフィルム成形性が得られる。
【0049】
ダイボンドフィルム3は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とのいずれか一方、又は、両方を含有することが好ましい。前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができ、特に、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくともいずれか一方を用いることが好ましい。なかでも、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂を含有すると、高温において、ダイボンドフィルム3とウエハとの高い接着力が得られる。その結果、ダイボンドフィルム3とウエハとの接着界面に水が入りにくくなり、イオンが移動し難くなる。これにより、信頼性が向上する。
【0050】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0051】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0052】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0053】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0054】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上をモノマー成分とする重合体(アクリル共重合体)等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0055】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0056】
前記熱硬化性樹脂の配合割合としては、所定条件下で加熱した際にダイボンドフィルム3が熱硬化型としての機能を発揮する程度であれば特に限定されないが、5〜60重量%の範囲内であることが好ましく、10〜50重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0057】
ダイボンドフィルム3は、なかでも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及び、アクリル樹脂を含有し、アクリル樹脂100重量部に対するエポキシ樹脂、及び、フェノール樹脂の合計量が10〜2000重量部であることが好ましく、10〜1500重量部であることがより好ましく、10〜1000重量部であることがさらに好ましい。アクリル樹脂100重量部に対するエポキシ樹脂、及び、フェノール樹脂の合計量を10重量部以上とすることにより、硬化による接着効果が得られ、剥離を抑制することができ、2000重量部以下とすることより、フィルムが脆弱化して作業性が低下することを抑制することができる。
【0058】
ダイボンドフィルム3を予めある程度架橋をさせておく場合には、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0059】
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量を7重量部以下とすることすることにより、接着力の低下を抑制できる。また、0.05重量部以上とすることにより、凝集力を向上させることができる。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0060】
また、ダイボンドフィルム3には、その用途に応じてフィラーを適宜配合することができる。フィラーの配合は、ダイボンドフィルム3への熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記フィラーとしては、無機フィラー、及び、有機フィラーが挙げられるが、取り扱い性の向上、熱伝導性の向上、溶融粘度の調整、チキソトロピック性付与等の特性の観点から、無機フィラーが好ましい。前記無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウィスカ、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。熱電導性の向上の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカが好ましい。また、上記各特性のバランスがよいという観点からは、結晶質シリカ、又は、非晶質シリカが好ましい。
【0061】
前記フィラーの平均粒径は、0.005〜10μmとすることができる。前記フィラーの平均粒径を0.005μm以上とすることにより、被着体への濡れ性、及び、接着性を良好とすることができる。また、10μm以下とすることにより、上記各特性の付与のために加えたフィラーの効果を十分なものとすることができるとともに、耐熱性を確保することができる。なお、フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0062】
なお、ダイボンドフィルム3には、前記陽イオンを捕捉する添加剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、陰イオン捕捉剤、分散剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、硬化促進剤などが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0063】
ダイボンドフィルム3の厚さは、特に限定されないが、1〜40μmであることが好ましく、3〜35μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがさらに好ましい。厚さが40μm以下であり、比較的薄いと、当該ダイボンドフィルム3を用いた半導体装置全体の厚さを薄くすることができる。また、厚さが1μm以上であると、良好なイオン捕捉性を発揮できる。
【0064】
(ダイシングシート)
ダイシングシート11は、基材1上に粘着剤層2が積層された構成を有する。
【0065】
基材1は、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10の強度母体となるものである。基材1は、紫外線透過性を有することが好ましい。基材1としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。
【0066】
また基材1の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその基材1を熱収縮させることにより粘着剤層2とダイボンドフィルム3との接着面積を低下させて、半導体チップの回収の容易化を図ることができる。
【0067】
基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。前記基材1は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。
【0068】
基材1の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0069】
粘着剤層2の形成に用いる粘着剤としては特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤を用いることができる。前記感圧性粘着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0070】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0071】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0072】
さらに、前記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0073】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは10万以上、さらに好ましくは20万〜300万程度であり、特に好ましくは30万〜100万程度である。
【0074】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高めるため、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、さらには0.1〜5重量部配合するのが好ましい。さらに、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0075】
粘着剤層2は放射線硬化型粘着剤により形成することができる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線等の放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができ、図2に示す粘着剤層2のワーク貼り付け部分に対応する部分2aのみを放射線照射することにより他の部分2bとの粘着力の差を設けることができる。
【0076】
また、図2に示すダイボンドフィルム3’に合わせて放射線硬化型の粘着剤層2を硬化させることにより、粘着力が著しく低下した前記部分2aを容易に形成できる。硬化し、粘着力の低下した前記部分2aにダイボンドフィルム3’が貼付けられるため、粘着剤層2の前記部分2aとダイボンドフィルム3’との界面は、ピックアップ時に容易に剥がれる性質を有する。一方、放射線を照射していない部分は十分な粘着力を有しており、前記部分2bを形成する。なお、粘着剤層への放射線の照射は、ダイシング後であってかつピックアップ前に行ってもよい。
【0077】
前述の通り、図1に示すダイシングシート付きダイボンドフィルム10の粘着剤層2において、未硬化の放射線硬化型粘着剤により形成されている前記部分2bはダイボンドフィルム3と粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。この様に放射線硬化型粘着剤は、チップ状ワーク(半導体チップ等)を基板等の被着体に固着するためのダイボンドフィルム3を、接着・剥離のバランスよく支持することができる。図2に示すダイシングシート付きダイボンドフィルム11の粘着剤層2においては、前記部分2bがウェハリングを固定することができる。
【0078】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。
【0079】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0080】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができるため好ましい。
【0081】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0082】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計の点で容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0083】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0084】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0085】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0086】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0087】
前記放射線硬化型の粘着剤層2中には、必要に応じて、放射線照射により着色する化合物を含有させることもできる。放射線照射により、着色する化合物を粘着剤層2に含ませることによって、放射線照射された部分のみを着色することができる。すなわち、図1に示すワーク貼り付け部分3aに対応する部分2aを着色することができる。従って、粘着剤層2に放射線が照射されたか否かが目視により直ちに判明することができ、ワーク貼り付け部分3aを認識し易く、ワークの貼り合せが容易である。また光センサー等によって半導体チップを検出する際に、その検出精度が高まり、半導体チップのピックアップ時に誤動作が生ずることがない。
【0088】
放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物である。かかる化合物の好ましい具体例としてはロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料としては、慣用のトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系のものが好ましく用いられる。具体的には3−[N−(p−トリルアミノ)]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−メチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−エチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフエニルメタノール、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0089】
これらロイコ染料とともに好ましく用いられる顕色剤としては、従来から用いられているフェノールホルマリン樹脂の初期重合体、芳香族カルボン酸誘導体、活性白土等の電子受容体があげられ、さらに、色調を変化させる場合は種々公知の発色剤を組合せて用いることもできる。
【0090】
この様な放射線照射によって着色する化合物は、一旦有機溶媒等に溶解された後に放射線硬化型接着剤中に含ませてもよく、また微粉末状にして当該粘着剤中に含ませてもよい。この化合物の使用割合は、粘着剤層2中に10重量%以下、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%であるのが望ましい。該化合物の割合が10重量%を超えると、粘着剤層2に照射される放射線がこの化合物に吸収されすぎてしまうため、粘着剤層2の前記部分2aの硬化が不十分となり、十分に粘着力が低下しないことがある。一方、充分に着色させるには、該化合物の割合を0.01重量%以上とするのが好ましい。
【0091】
粘着剤層2を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、粘着剤層2における前記部分2aの粘着力<その他の部分2bの粘着力、となるように粘着剤層2の一部を放射線照射してもよい。
【0092】
前記粘着剤層2に前記部分2aを形成する方法としては、支持基材1に放射線硬化型の粘着剤層2を形成した後、前記部分2aに部分的に放射線を照射し硬化させる方法が挙げられる。部分的な放射線照射は、ワーク貼り付け部分3a以外の部分3b等に対応するパターンを形成したフォトマスクを介して行うことができる。また、スポット的に紫外線を照射し硬化させる方法等が挙げられる。放射線硬化型の粘着剤層2の形成は、セパレータ上に設けたものを支持基材1上に転写することにより行うことができる。部分的な放射線硬化はセパレータ上に設けた放射線硬化型の粘着剤層2に行うこともできる。
【0093】
また、粘着剤層2を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、支持基材1の少なくとも片面の、ワーク貼り付け部分3aに対応する部分以外の部分の全部又は一部が遮光されたものを用い、これに放射線硬化型の粘着剤層2を形成した後に放射線照射して、ワーク貼り付け部分3aに対応する部分を硬化させ、粘着力を低下させた前記部分2aを形成することができる。遮光材料としては、支持フィルム上でフォトマスクになりえるものを印刷や蒸着等で作成することができる。かかる製造方法によれば、効率よく本発明のダイシングシート付きダイボンドフィルム10を製造可能である。
【0094】
なお、放射線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、放射線硬化型の粘着剤層2の表面よりなんらかの方法で酸素(空気)を遮断するのが望ましい。例えば、前記粘着剤層2の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の放射線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0095】
粘着剤層2の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止や接着層の固定保持の両立性等の点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、さらには5〜25μmが好ましい。
【0096】
(ダイシングシート付きダイボンドフィルムの製造方法)
ダイシングシート付きダイボンドフィルム10は、例えば、次の通りにして作製される。
まず、基材1は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0097】
次に、基材1上に粘着剤組成物溶液を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層2を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層2を形成してもよい。その後、基材1上に粘着剤層2をセパレータと共に貼り合わせる。これにより、ダイシングシート11が作製される。
【0098】
ダイボンドフィルム3は、例えば、次の通りにして作製される。
まず、ダイボンドフィルム3の形成材料である樹脂組成物溶液を作製する。前記樹脂組成物溶液は、必要に応じて、適宜、陽イオンを捕捉する添加剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フィラー等を容器に投入して、有機溶媒に溶解させ、均一になるように攪拌することによって得ることができる。
【0099】
前記有機溶媒としては、ダイボンドフィルム3を構成する成分を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレン等が挙げられる。乾燥速度が速く、安価で入手できる点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどを使用することが好ましい。
【0100】
次に、樹脂組成物溶液を基材セパレータ上に所定厚さとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ、接着剤層(ダイボンドフィルム3)を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に樹脂組成物溶液を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させてダイボンドフィルム3を形成してもよい。その後、基材セパレータ上にダイボンドフィルム3をセパレータと共に貼り合わせる。
【0101】
続いて、ダイシングシート11及びダイボンドフィルム3からそれぞれセパレータを剥離し、ダイボンドフィルム3と粘着剤層2とが貼り合わせ面となる様にして両者を貼り合わせる。貼り合わせは、例えば圧着により行うことができる。このとき、ラミネート温度は特に限定されず、例えば30〜50℃が好ましく、35〜45℃がより好ましい。また、線圧は特に限定されず、例えば0.1〜20kgf/cmが好ましく、1〜10kgf/cmがより好ましい。次に、ダイボンドフィルム3上の基材セパレータを剥離し、本実施の形態に係るダイシングシート付きダイボンドフィルム10が得られる。
【0102】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、前記熱硬化型ダイボンドフィルムを準備する工程と、
前記熱硬化型ダイボンドフィルムを介して、半導体チップを被着体上にダイボンドするダイボンド工程とを含む(以下、第1実施形態ともいう)。
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、前記に記載のダイシングシート付きダイボンドフィルムを準備する工程と、
前記ダイシングシート付きダイボンドフィルムの熱硬化型ダイボンドフィルムと、半導体ウェハの裏面とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記半導体ウェハを前記熱硬化型ダイボンドフィルムと共にダイシングして、チップ状の半導体チップを形成するダイシング工程と、
前記半導体チップを、前記ダイシングシート付きダイボンドフィルムから前記熱硬化型ダイボンドフィルムと共にピックアップするピックアップ工程と、
前記熱硬化型ダイボンドフィルムを介して、前記半導体チップを被着体上にダイボンドするダイボンド工程とを含むものであってもよい(以下、第2実施形態ともいう)。
第1実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法が、ダイシングシート付きダイボンドフィルムを用いているのに対して、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法では、ダイボンドフィルムを単体で用いている点で異なりその他の点で共通する。第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、ダイボンドフィルムを準備した後、これをダイシングシートと貼り合わせる工程を行なえば、その後は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法と同様とすることができる。そこで、以下では、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明することとする。
【0103】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、まず、ダイシングシート付きダイボンドフィルムを準備する(準備する工程)。ダイシングシート付きダイボンドフィルム10は、ダイボンドフィルム3上に任意に設けられたセパレータを適宜に剥離して、次の様に使用される。以下では、図3を参照しながらダイシングシート付きダイボンドフィルム10を用いた場合を例にして説明する。
【0104】
まず、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10におけるダイボンドフィルム3の半導体ウェハ貼り付け部分3a上に半導体ウェハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(貼り合わせ工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。マウントの際の貼り付け温度は特に限定されず、例えば40〜90℃の範囲内であることが好ましい。
【0105】
次に、半導体ウェハ4のダイシングを行う(ダイシング工程)。これにより、半導体ウェハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を製造する。ダイシングの方法は特に限定されないが、例えば半導体ウェハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイシングシート付きダイボンドフィルム10まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハは、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハ4の破損も抑制できる。
【0106】
次に、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10に接着固定された半導体チップを剥離するために、半導体チップ5のピックアップを行う(ピックアップ工程)。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシングシート付きダイボンドフィルム10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0107】
ピックアップ条件としては、チッピング防止の点で、ニードル突き上げ速度を5〜100mm/秒とすることが好ましく、5〜10mm/秒とすることがより好ましい。
【0108】
ここでピックアップは、粘着剤層2が紫外線硬化型である場合、該粘着剤層2に紫外線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層2のダイボンドフィルム3に対する粘着力が低下し、半導体チップ5の剥離が容易になる。その結果、半導体チップ5を損傷させることなくピックアップが可能となる。紫外線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。また、紫外線照射に使用する光源としては、前述のものを使用することができる。なお、粘着剤層に予め紫外線照射し硬化させておき、この硬化した粘着剤層とダイボンドフィルムとを貼り合わせている場合は、ここでの紫外線照射は不要である。
【0109】
次に、ピックアップした半導体チップ5を、ダイボンドフィルム3を介して被着体6に接着固定する(ダイボンド工程)。被着体6としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体6は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であってもよい。
【0110】
前記基板としては、従来公知のものを使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体チップをマウントし、半導体チップと電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0111】
次に、ダイボンドフィルム3は熱硬化型であるので、熱硬化により、半導体チップ5を被着体6に接着固定し、耐熱強度を向上させる(熱硬化工程)。加熱温度は、80〜200℃、好ましくは100〜175℃、より好ましくは100〜140℃で行うことができる。また、加熱時間は、0.1〜24時間、好ましくは0.1〜3時間、より好ましくは0.2〜1時間で行うことができる。また、熱硬化は、加圧条件下で行なってもよい。加圧条件としては、1〜20kg/cmの範囲内が好ましく、3〜15kg/cmの範囲内がより好ましい。加圧下での熱硬化は、例えば、不活性ガスを充填したチャンバー内で行なうことができる。なお、ダイボンドフィルム3を介して半導体チップ5が基板等に接着固定されたものは、リフロー工程に供することができる。
【0112】
熱硬化後のダイボンドフィルム3の剪断接着力は、被着体6に対して0.2MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10MPaである。ダイボンドフィルム3の剪断接着力が少なくとも0.2MPa以上であると、ワイヤーボンディング工程の際に、当該工程における超音波振動や加熱により、ダイボンドフィルム3と半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形を生じることがない。すなわち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体チップが動くことがなく、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0113】
次に、必要に応じて、図3に示すように、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続する(ワイヤーボンディング工程)。前記ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着工ネルギーの併用により行われる。本工程は、ダイボンドフィルム3の熱硬化を行うことなく実行することができる。また、本工程の過程でダイボンドフィルム3により半導体チップ5と被着体6とが固着することはない。
【0114】
次に、必要に応じて、図3に示すように、封止樹脂8により半導体チップ5を封止する(封止工程)。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ5やボンディングワイヤー7を保護するために行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行うことができる。封止樹脂8としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。これにより、封止樹脂を硬化させると共に、ダイボンドフィルム3を介して半導体チップ5と被着体6とを固着させる。すなわち、本発明においては、後述する後硬化工程が行われない場合においても、本工程においてダイボンドフィルム3による固着が可能であり、製造工程数の減少及び半導体装置の製造期間の短縮に寄与することができる。また、本封止工程では、シート状の封止用シートに半導体チップ5を埋め込む方法(例えば、特開2013−7028号公報参照)を採用することもできる。
【0115】
次に、必要に応じて加熱を行い、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化させる(後硬化工程)。封止工程においてダイボンドフィルム3が完全に熱硬化していない場合でも、本工程において封止樹脂8と共にダイボンドフィルム3の完全な熱硬化が可能となる。本工程における加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。
【0116】
これにより、図3に示す半導体装置が得られる。このようにして製造された半導体装置は、前記比B/Aが1以上であり、熱履歴を経た後も充分なイオン捕捉性を有するダイボンドフィルム3を有しているため、陽イオンを原因とする動作不良を抑制することが可能となる。
【0117】
なお、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ダイボンド工程による仮固着の後、ダイボンドフィルム3の加熱処理による熱硬化工程を経ることなくワイヤーボンディングを行い、さらに半導体チップ5を封止樹脂で封止して、当該封止樹脂を硬化(後硬化)させてもよい。この場合、ダイボンドフィルム3の仮固着時の剪断接着力は、被着体6に対して0.2MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10MPaである。ダイボンドフィルム3の仮固着時における剪断接着力が少なくとも0.2MPa以上であると、加熱工程を経ることなくワイヤーボンディング工程を行っても、当該工程における超音波振動や加熱により、ダイボンドフィルム3と半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形を生じることがない。すなわち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体チップが動くことがなく、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。なお、仮固着とは、以降の工程において支障がないように、熱硬化型ダイボンドフィルムの硬化反応を完全に進行した状態に至らない程度で該ダイボンドフィルムを硬化させて(半硬化状態にして)半導体チップ5を固定した状態をいう。なお、ダイボンドフィルムの加熱処理による熱硬化工程を経ることなくワイヤーボンディングを行う場合、上記後硬化させる工程は、本明細書における熱硬化工程に相当する。
【0118】
なお、本発明のダイシングシート付きダイボンドフィルムは、複数の半導体チップを積層して3次元実装をする場合にも好適に用いることができる。このとき、半導体チップ間にダイボンドフィルムとスペーサとを積層させてもよく、スペーサを積層することなく、ダイボンドフィルムのみを半導体チップ間に積層させてもよく、製造条件や用途等に応じて適宜変更可能である。
【0119】
上述した実施形態では、本発明の半導体装置用樹脂フィルムがダイボンドフィルムである場合について説明した。しかしながら、本発明に係る半導体装置用樹脂フィルムは、半導体装置に用いられるものであればこの例に制限されず、被着体上にフリップチップ接続された半導体素子の裏面に形成するためのフリップチップ型半導体裏面用フィルムであってもよく、半導体素子を封止するための封止フィルムであってもよい。
【実施例】
【0120】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0121】
実施例で使用した成分について説明する。
アクリル共重合体:ナガセケムテックス(株)製のテイサンレジンSG−P3(重量平均分子量:85万、ガラス転移温度:12℃)
フェノール樹脂:明和化成社製のMEH−7851SS(ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂、軟化点67℃、水酸基当量203g/eq.)
エポキシ樹脂:新日鐵化学(株)製のYDCN−700−2(o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量200、軟化点61℃)
無機フィラー:アドマテックス社製のSO−E2(溶融球状シリカ、平均粒径0.5μm)
陽イオンを捕捉する添加剤:東亜合成(株)製のIXEPLAS−A1(マグネシウム、アルミニウム及びジルコニウムの3成分系酸化水和物、平均粒径0.5μm)
陽イオンを捕捉する添加剤:城北化学工業(株)製のBT−120(1,2,3−ベンゾトリアゾール)
陽イオンを捕捉する添加剤:東亜合成(株)製のIXE−100(ジルコニウム系酸化水和物、平均粒径1.0μm)
【0122】
なお、陽イオンを捕捉する添加剤としてのIXEPLAS−A1及びIXE−100は、予め表面処理を行なった。表面処理は乾式法で行い、表1に示す量(シランカップリング剤処理量)のシランカップリング剤で処理した。シランカップリング剤は信越化学のKBM503(3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)を用いた。また、陽イオンを捕捉する添加剤としてのBT−120を用いる場合、シランカップリング剤は、他の成分とともに有機溶媒に溶解させた。
【0123】
[実施例、及び、比較例]
表1に記載の配合比に従い、各成分を有機溶媒としてのメチルエチルケトンに溶解、分散させ、濃度20重量%の樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、110℃で5分間乾燥させた。これにより、厚さ25μmの樹脂フィルムを得た。
【0124】
(比B/Aの算出)
[1.熱硬化前の樹脂フィルムの銅イオン捕捉率Aの算出]
各樹脂フィルム(厚さ25μm)を、それぞれ2.5g切り出し、折り曲げて、直径58mm、高さ37mmの円柱状の密閉式テフロン(登録商標)製容器にいれ、10ppmの銅(II)イオン水溶液(CuCl水溶液)50mlを加えた。その後、恒温乾燥機(エスペック(株)製、PV−231)に120℃で20時間放置した。その後、室温にまで冷却した。フィルムを取り出した後、ICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)を用いて水溶液中の銅イオンの濃度(銅イオン濃度X)を測定した。
その後、下記式(1)により熱硬化前の樹脂フィルムの銅イオン捕捉率Aを算出した。結果を表1に示す。
式(1):[(10−X)/10]×100(%)
【0125】
[2.熱硬化後の樹脂フィルムの銅イオン捕捉率Bの算出]
各樹脂フィルム(厚さ25μm)を、離型処理フィルム剥離後の重さが2.5gとなるように切り出し、折り曲げた後、175℃で5時間熱硬化させた。次に、離型処理フィルムを剥離し、直径58mm、高さ37mmの円柱状の密閉式テフロン(登録商標)製容器にいれ、10ppmの銅(II)イオン水溶液(CuCl水溶液)50mlを加えた。その後、恒温乾燥機(エスペック(株)製、PV−231)に120℃で20時間放置した。その後、室温にまで冷却した。フィルムを取り出した後、ICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)を用いて水溶液中の銅イオンの濃度(銅イオン濃度Y)を測定した。
その後、下記式(2)により熱硬化後の樹脂フィルムの銅イオン捕捉率Bを算出した。結果を表1に示す。
式(2):[(10−Y)/10]×100(%)
【0126】
算出した銅イオン捕捉率A及び銅イオン捕捉率Bに基づき、比B/Aを算出した。結果を表1に示す。
【0127】
(5%重量減少温度の測定)
サンプルを10mg秤量し、示差熱天秤(TG−DTA(株式会社リガク製))で空気雰囲気化、昇温速度10℃/分で40〜550℃の間で測定を行った。重量が5%減少した際の温度を読み取った。
【0128】
(銅イオン捕捉後の水溶液のpH)
上記の「2.熱硬化後の樹脂フィルムの銅イオン捕捉率Bの算出」の際に得られた水溶液(銅イオン濃度Yを測定した際の水溶液)を、カスタニーACTpHメーター(D−51、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
なお、樹脂フィルムを浸漬する前の10ppm銅(II)イオン水溶液のpHは、5.6であった。
IXEPLASE−A1を用いた実施例1、及び実施例2は、pHが4.5〜5.5の間であり、イオン交換による銅イオンの捕捉が行なわれた後も、pHが酸性になるのが抑えられていた。そのため、熱硬化後もイオン補足性が高く維持されていると推測される。
一方、IXE−100を用いた比較例2は、pHが3.5程度であり、酸性が強くなっていた。そのため、熱硬化後のイオン補足性が低下したと推測される。
【0129】
【表1】
図1
図2
図3