(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242688
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】半導体装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20171127BHJP
B82B 1/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
H01L21/205
B82B1/00ZNM
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-555936(P2013-555936)
(86)(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公表番号】特表2014-509781(P2014-509781A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】GB2012050458
(87)【国際公開番号】WO2012117247
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2014年9月24日
【審判番号】不服2016-13978(P2016-13978/J1)
【審判請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】1103657.1
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511306963
【氏名又は名称】セレン フォトニクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子
(72)【発明者】
【氏名】ワン、タオ
【合議体】
【審判長】
飯田 清司
【審判官】
鈴木 匡明
【審判官】
加藤 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−516599(JP,A)
【文献】
特表2008−542183(JP,A)
【文献】
特開2006−120841(JP,A)
【文献】
特表2010−518615(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0186764(US,A1)
【文献】
英国特許出願公開第2470097(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 33/06
C30B 25/18
C30B 29/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)III族窒化物で形成されている半導体層を有する半導体ウエハを提供し、
(ii)前記半導体層上に二酸化ケイ素と窒化ケイ素の少なくとも一方で形成される第1のマスク層を形成し、
(iii)前記第1のマスク層上に金属で形成される第2のマスク層を形成し、
(iv)島を形成するために前記第2のマスク層をアニールし、
(v)マスクとして島を使用して、前記第1のマスク層と前記第2のマスク層を介してエッチングすることにより、全数のうち90%以上が1000ナノメータ未満の直径を有するピラーアレイを形成し、
(vi)前記島を取り除き、
(vii)ピラー間においてIII族窒化物で形成されている半導体材料を成長させ、
(viii)次いで前記ピラーの頂部上に前記半導体材料を成長させ、前記半導体材料が成長している間に、前記第1のマスク層から形成されたキャップがそれぞれの前記ピラーの頂部に残されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体層は基板上に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記基板は、少なくともサファイア、シリコン、及び炭化ケイ素の少なくとも一つを有することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2のマスク層はニッケルで形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記半導体材料の成長は前記ピラーの基部周囲に隙間を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記半導体層は基板上に支持され、
隣接する前記ピラーにおける前記半導体材料の成長は前記基板から離れた高さで接触し、前記隙間は前記高さの下で残されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。特に、本発明は、高品質結晶構造を有する半導体装置の製造に関する。例えば、この装置は発光ダイオード及び固体レーザの構成に用いられる。
【背景技術】
【0002】
現状では、固体発光に必要な白色発光ダイオード(LEDs)の製造に、主に次の3つのアプローチが存在する。すなわち、第一のアプローチは、(1)それぞれが赤色、緑色、青色の異なる波長を発光する3つのLEDチップのパッケージである。第二のアプローチは、(2)青色(460ナノメータ)LEDと、そのLEDの青色光によって励起される黄色蛍光体を組み合わせることである。第三のアプローチは、(3)紫外線を発光するシングルチップにおいて、その光を3つの蛍光体(赤色、青色、緑色)に吸収させ、ブロードスペクトルを持った白色光として再発光させることである。第一と第二のアプローチにおける重要な要素は、青色または緑色のLEDであり、これら2つのLEDはいずれもInGaN材料系をベースとするものである。第三のアプローチにおいては、高品質の紫外線(UV)発光体が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
InGaNベースの装置およびAlGaNベースの装置については、高度の成長技術が確立されているが、それらの技術は、通常、c面サファイア基板がベースである。この極性配向は、圧電効果による強いビルトイン電場をもたらし、装置は、電子及び正孔波動関数との発光性再結合時間の重複を減少させ、その結果、低量子効率を生む。これが、いわゆる量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)である。特に、発光体が緑色のスペクトル領域に移行すると、より高次のInNフラクションが必要とされ、内部電場は、通常、極めて強いものとなる。このことは、高性能なInGaNベースの発光体(特に緑色発光体)を得るうえで、大きな障害をもたらす。同様の問題は、AlGaNベースのUV発光体にも起こるが、AlGaNにおける問題の程度は、InGaNにおける問題よりも深刻である。
【0004】
ホモエピタキシャル成長は、III族窒化物ベースの光電子装置にとって理想である。しかし、許容性の問題により、サファイア、SiCやケイ素などの異質な基板上での成長が、III族窒化物の主要な成長アプローチとして、今もなお存続している。このような「格子構造が大きく不整合な、ヘテロエピタキシャルな状態」は、大変高い転位密度をもたらす。これは、InGaNベースの近UV/青色/緑色発光体や、AlGaN/GaNベースのUV発光体のようなIII族窒化物光電子機器の光学性能の大きな劣化を引き起こす。この転位の問題は、InGaNベースの発光体よりも、AlGaN/GaNベースのUV発光体に対して、より大きな影響となって現れる。なぜならば、AlGaN/GaNベースのUV発光体の光学性能は、InGaNベースの発光体よりも、転位の影響を受けやすいためである。
【0005】
前述の2つの問題(QCSEと転位)は、III族窒化物ベース光電子機器の光学性能のさらなる向上を図る上で、2つの根本的な障害である。
【0006】
QCSEの負の影響に対抗するための、最も有望視されているアプローチの一つは、理論的にも実験的にも証明された、非極性又は半極性配向に沿った成長である。非極性又は半極性III族窒化物発光体におけるもう一つの主な利点は、それらが偏光を発光できることである。液晶ディスプレイ(LCDs)は偏光を必要とする上、最近のLCDsは、偏光を得るために、エキストラ偏光素子を必要とする。この偏光素子の低い透過効率は、より低い効率を生じるため、偏光を発する装置は好都合である。
【0007】
非極性又は半極性面での、最近のIII族窒化物の成長は、緑色発光体に大きな進歩をもたらした。しかし、大きな課題も明らかになった。すなわち、これらの高品質の非極性又は半極性のIII族窒化物発光体は、ホモエピタキシャル成長法を採用するため、極めて高価なGaN基板上で専ら成長されることとなる。不運にも、非極性又は半極性GaN基板は大変小さく、そして極めて高価である。加えて、高い不均一性が、これらを大量生産に適さないものとしている。
【0008】
したがって、いかなるサイズ(12インチまで等)でも、サファイア基板上で高結晶テンプレートで非極性又は半極性GaNを得ることが、InGaNベース又はAlGaNベースの装置構造での成長には望ましい。これまで、従来の横方向エピタキシャル成長(ELOG)が、サファイア上の非極性又は半極性GaNの結晶品質を高めるために採用されていた。ELOG技術は、選択領域成長に基づくものである。主として、標準的なGaN層が、有機金属気相成長法(MOVPE)、分子線エピタキシ法(MBE)又はハイドライド気相成長法(HVPE)により、サファイア上に最初に成長される。次いで、その表面は、SiO
2又はSi
3N
4のような誘電体マスクを用いて、エックス・サイチュで覆われる。次いで、マスクは、標準的なフォトリソグラフィを用いて、ミクロンスケールの(ナノメータスケールではない)縞状に形成される。次に、マスクされたサンプルは、MOVPE、MBE又はHVPEによる更なる成長のための、テンプレートとして用いられる。再成長は、GaNは誘電体マスク上では成長しないため、マスク開口部に露出したGaNにおいて始まる。成長面がマスク高さより高くなると、GaNの再成長は縞状マスクを覆うように横方向に進展し、最終的に合体して滑らかな表面を形成する。サファイアとGaNの格子構造の大きな不整合によって発生する縞状マスク下での結晶構造の転位は、効果的に防止される。標準的なリソグラフィの限界のため、マスク縞の幅と開口部の幅は、ナノメータスケールまで小さくすることはできない。したがって、通常、過成長層が10マイクロメータから20マイクロメータより厚くなるまで、滑らかな表面を得ることはできない。加えて、このようなアプローチを、AlGaNの過成長に適用することは困難である。なぜならば、AlGaNの横方向成長速度は、一般的にGaNの横方向成長速度よりかなり遅く、大変遅鈍な合体を生じるからである。
【0009】
したがって、従来のELOGアプローチは大変複雑であり、そのため非常に高価な追加コストを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は半導体装置の製造方法を提供する。この製造方法は、半導体層を持つ半導体ウエハの提供を有する。この製造方法は、半導体層の上の、第1のマスク層の形成を有する。この製造方法は、第1のマスク層の上の、第2のマスク層の形成を有する。この製造方法は、複数の島を形成するための、第2のマスク層のアニーリング又は適用若しくは改造を有する。この製造方法は、複数の島をピラーのアレイを形成するためのマスクとして用い、第1のマスク層及び半導体層を介したエッチングを有する。この製造方法はさらに、ピラー間及びピラー上部を覆う半導体材料の成長を有する。
【0011】
この製造方法は、半導体材料の成長の前に、複数の島の除去を有する。
【0012】
マスク層の1つから形成されたキャップを、半導体材料の成長の間、ピラーそれぞれの頂部上に残してもよい。これは、第1の層となる。
【0013】
半導体層は、基板に支持される。基板は、サファイア、ケイ素及び炭化ケイ素のうち少なくとも1つを有する。
【0014】
複数のピラー上に成長した半導体材料は、半導体層を形成する材料(すなわち、ピラー)と同じ材料又は違う材料でも良い。
【0015】
半導体層は、III族窒化物から形成される。例えば、それは窒化ガリウム、窒化インジウムガリウム又は窒化アルミニウムガリウムである。半導体材料もまた、窒化インジウムガリウム又は窒化アルミニウムガリウムのような、III族窒化物とし得る。
【0016】
第1のマスク層は、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素のうち少なくとも1つから形成される。
【0017】
第2のマスク層は、例えばニッケルのような金属から形成される。
【0018】
さらに、この製造方法は、支持基板の除去工程を有する。これは、除去部分、すなわち複数のピラーの最下部を含む。
【0019】
さらに、本発明は、それぞれが半導体材料から形成される柱を含むピラーアレイを有し、それぞれのピラーアレイの頂部にはマスク材料からなるキャップが形成され、ピラー間、ピラー頂部上及びキャップ上に延在して連続層を形成する半導体材料を有する、半導体装置を提供する。2つの半導体材料は、同じ材料でも、異なる材料でもよい。全てのピラーアレイは、その直径を、1000ナノメータ未満、好ましくは500ナノメータ未満、そしてさらに好ましくは300ナノメータ未満とできる。場合により、いくつかのピラーの直径は、変則的に前述の値より大きなものとなり得る。しかし、好ましくは、少なくとも90%のピラーの直径は、前述の値に収まる。ピラーの高さは、好ましくは、少なくとも500ナノメータであり、さらに好ましくは少なくとも750ナノメータである。ピラーは、実質的に全てを同じ高さとすることができる。マスク材料は金属とすることができる。
【0020】
少なくとも、ナノピラーの幾つかは、それらの基部に空隙を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、いわゆる自己組織型ナノマスクアプローチと、その結果生じる過成長との、組み合わせに基づく。自己組織型ナノマスクの製造は大変簡単であり、余計なフォトリソグラフィを必要としない。過成長層は、従来のELOG法と比べ、比較的薄く出来る。しかし、得られる結晶の品質は、従来のELOGにより得られるものと、同等又はそれ以上である。したがって、コストは著しく削減できる。加えて、このアプローチは、極性、無極性又は半極性のいずれのIII族窒化物成長にも拡張できる。
【0022】
さらに、この方法又は装置は、一例としてのみ後述され、添付する参照図面に表される、本発明の好ましい実施形態の、いずれか1つ又はそれ以上の工程又は特徴を有しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1a】本発明の実施の形態による装置の製造工程を示す図。
【
図1b】本発明の実施の形態による装置の製造工程を示す図。
【
図1c】本発明の実施の形態による装置の製造工程を示す図。
【
図1d】本発明の実施の形態による装置の製造工程を示す図。
【
図1e】本発明の実施の形態による装置の製造工程を示す図。
【
図1f】本発明の実施の形態による装置の製造工程を示す図。
【
図1g】本発明の実施の形態による装置の製造工程を示す図。
【
図1h】本発明の実施の形態による装置の製造工程を示す図。
【
図2】
図1dに示されるナノロッドアレイを示す図。
【
図3】
図1aから
図1hの方法で製造されたサンプルと、無極性GaNの標準サンプルとにおける、入射X線ビーム方位角に対するX線ロッキングカーブ半値幅を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態による半導体装置について説明する。
図1aにおいて、半導体装置を製造する第1の工程は、適切な半導体ウエハ201を提供する。半導体ウエハ201は従来のものであり、基板205を有する。基板は、この場合、サファイア層を有し、さらにそのサファイア層上に窒化ガリウム(GaN)の半導体層210が設けられる。他の材料を用いることも可能である。例えば、基板はケイ素又は炭化ケイ素でもよい。半導体は他の適切な材料でもよい。例えば、窒化インジウムガリウム(InGaN)又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)のような、他のIII族窒化物である。
【0025】
第1のマスク層220が、例えばプラズマ化学気相成長法(PECVD)を用いて、半導体層210の上に設けられる。第1のマスク層220は二酸化ケイ素によって形成されるが、例えば窒化ケイ素のような、この層に対して適切な別の材料でもよく、200ナノメータのほぼ均一な厚さで堆積される。
【0026】
第2のマスク層230が、第1のマスク層220の上に設けられる。第2のマスク層230は金属を有し、本実施例ではニッケルである。この第2のマスク層230は、熱蒸発、スパッタリング又は電子ビーム蒸着によって設けられる。この工程において、5から50ナノメータのほぼ均一な厚さを有するニッケル層が形成され、さらに摂氏600度から900度の温度範囲下で流動窒素(N
2)を流しながらアニーリングされる。アニーリング工程の時間は1分から10分の間であり、その結果、第2のマスク層230が形成される。第2のマスク層230は、自己組織化した複数のニッケル島231が第1のマスク層220の上に不規則に点在するような、ニッケル層を有する。それぞれのニッケル島は、第1のマスク層220上面のそれぞれの、ほぼ円形の複数の領域を覆っており、円形領域の直径は概して100ナノメータ以上、1000ナノメータ以下である。そのため、第2のマスク層230は、その下にあるSiO
2層をエッチングする際のマスクとして働く。このとき、複数のニッケル島231は下層のSiO
2層をマスクし、複数のニッケル島の間の空間はSiO
2層の露出領域となり、エッチングされるべき下層のSiO
2層の領域が定まる。
【0027】
図1cを参照すると、第1のマスク層220は、第2のマスク層230から成る複数の金属島231をマスクとして用いることにより、CHF
3又はSF
6を用いる反応性イオンエッチング法(RIE)で、エッチングされる。この工程は、GaN層210の上に不規則に点在する二酸化ケイ素から成る複数のナノピラー(ナノロッドとも称する)240を提供する。複数のナノピラー240のそれぞれ1つは、第1のマスク層220の一部分221の各々1つと、複数のニッケル島231の各々1つを有する。複数のナノピラー240のそれぞれ1つは、複数のニッケル島のそれぞれ1つと対応しており、それぞれのナノピラーの直径は、対応するそれぞれのニッケル島が覆う表面領域の直径とほぼ一致する。前記工程により形成された複数のナノピラー240は、GaN層210の幾つかの領域をマスクし、GaN層210のどの領域(すなわち、複数のナノピラー240間の複数の空間における露出された領域)がエッチングされるか定める。
【0028】
図1dを参照すると、次工程において、GaN層210は、例えば誘電結合プラズマエッチングにより、エッチングされる。このとき、以前の工程で生成された複数のナノピラー240は、マスクとして用いられる。この工程は、
図1dに示されるように、GaN層210のエッチング又は一部のGaN層210のエッチングを含む。この工程では、
図1dに示されるように、ナノピラー構造が得られ、複数のナノピラー250は、サファイア基板205から上方に伸びる。それぞれのナノピラー250は、GaN層210のそれぞれの部分211と、第1のマスク層220の部分221と、第2のマスク層230から生成された金属島231とを有する。したがって、この工程におけるエッチングは、GaNの露出表面250aを形成する。露出表面250aは、複数のナノピラー250の側面を有する。ナノピラーそれぞれの直径は、底部から上部までほぼ一定であり、ニッケル島のそれぞれで覆われた表面領域の直径ともほぼ一致する。しかしながら、実際のところ、いくつかのナノピラーは、テーパー状となる。
【0029】
図1eを参照すると、第2のマスク層230を形成する複数のニッケル島231は、この工程において除去される。除去の結果、ナノピラー260は、GaN層210のそれぞれの部分211と、第1のマスク層220の部分221とを有する。この工程は、塩酸(HCl)又は硝酸(HNO
3)を用いたウェットエッチングによって実行できる。この工程は、頂部にSiO
2のキャップ221を持つGaN柱211を主に有する、それぞれのナノピラーを形成する。
【0030】
図1fを参照すると、GaNナノロッドアレイは、GaN柱211の側面250aに対するGaN270の蒸着用テンプレートとして用いられる。蒸着では、過成長させるため、有機金属気相成長法(MOCVD)、MBE又はHVPEが用いられる。GaN270の再成長は、GaNナノロッド側面の(最初は横方向に、その後上方向に)、GaNが露出している箇所において始まる。この工程は、ナノピラーの側面に層271を形成する。層271は、ピラーから外側に、互いの方向に向かって成長する。その後、層271のそれぞれは、層厚が最大となる場所で接触する。これは、接触点272の下部における容積273でのさらなる成長を防ぐ。また、接触点の上部における容積274での成長が、継続する。これは、場合によっては、中空の隙間又は空隙としての容積273を、それぞれのナノピラーの基部周囲に残す。これらの隙間は、互いに接続され空隙を作る場合がある。この空隙は、全ての又は実質的に全てのナノピラーの間に延び、迷路状となる。ナノピラー頂部にあるSiO
2マスク221は、その頂部上でのGaNの成長を防ぐ。
図1gを参照すると、GaNの成長面がSiO
2ナノマスク221の高さを越えた場合、GaNの再成長は、SiO
2ナノマスク頂部を覆うように、横方向に進行する。さらに最終的に、
図1fに示すように、GaNは合体し、ナノマスク頂部を覆うように延在する連続した層を形成し、滑らかな表面271を持つに至る。理論上、テンプレート(すなわち、複数のナノピラー260)から発生する全ての転位は、効果的に阻害される。たとえもし、複数のナノピラー260の下部周囲に空隙が無い場合においても、複数のナノピラー間の隙間の底部から発生する成長は、通常、部分的又は完全に、複数のナノピラー側面からの成長によって遮断される。また、したがって、複数のナノピラー頂部まで伸びるような転位の数は、大変少ない。
【0031】
成長が完了すると、基板205は除去される。基板の除去は、通常、複数のナノピラー260の下端の除去を含む。この除去は、複数のナノピラーの基部周囲の中空のボリューム273の存在により、簡易に行うことが可能である。複数のナノピラー260の基部は、接触点272より下部で、すなわち中空のボリューム273の頂部より下のレベルにまで、除去し得る。この場合、ひずみレベルの低い、均一性の高い構造を得ることができる。
【0032】
図2は、前述する工程の結果として得られた、GaNナノロッドの高密度アレイを示す。それぞれのナノロッドの直径は200ナノメータ以下である。特筆すべき点は、GaNナノロッドの側壁が所望の垂直アライメントを示していることである。
【0033】
図3は、前述する工程によって得られたサンプルに対する、X線回折の結果を示す。X線ロッキングカーブの半値幅が、入射X線ビームの全方位角(方位角のゼロ角は、入射ビームの投射が成長したGaN層のc方向と平行になる角度として、定義される。)において、サファイアγ面上に設けられた標準的な非極性GaNサンプルに比べ、大きく減少していることが分かる。このことは、転位密度が、当該発明の本実施例において大きく減少したことを示している。
【0034】
前述の方法を、GaNナノピラー構造におけるAlGaNの過成長にも拡大適用することは、合体の問題を案ずることなく、GaNナノロッド間の空隙をナノメータのスケールに保つので、大変効果的である。このスケールは、前述する従来型ELOGに通常用いられるSiO
2マスクのスケールに比べ、大変小さい。加えて、過成長の過程でナノロッド間に現れる残留空隙により、従来のIII族窒化物の成長において通常現れる、GaN上のAlGaNのクラックの問題が、解消され得る。
【0035】
本発明の他実施例は、前述する実施例に限られず、多岐にわたるものである。本発明の方法は、基板、ナノピラー構造の材料及び成長半導体材料の様々な組み合わせに適用可能である。そして、最適であるのは、半導体の格子構造中の転位の形成が問題となる、基板と成長半導体とが相当異なる格子構造を有する場合である。明らかに、格子構造の正確なスケールは、多様なものとなり得る。さらに、小さなスケールに構造を生産できることは、この方法特有の利点である。
【符号の説明】
【0036】
205 基板
210 半導体層
211 半導体層の部分
220 第1のマスク層
221 第1のマスク層の部分
230 第2のマスク層
231 金属島
240 ナノピラー
250 ナノピラー
250a 露出表面
260 ナノピラー
270 GaN
271 層
272 接触点
273 容積
274 接触点の上部における容積