(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取水槽の水位を計測する水位計と、水位計が計測した水位が予め設定された所定水位より低下したときに前記開閉弁を開放する制御装置とが設けられることを特徴とする請求項2に記載の原子力発電プラントの取水設備。
前記給気通路は、上端部が大気に開放して前記取水槽とほぼ同じ高さまで延出される大気開放管を有することを特徴とする請求項1に記載の原子力発電プラントの取水設備。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を有する原子力発電プラントは、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、原子炉の炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水(1次冷却材)を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気(2次冷却材)をタービン発電機へ送って発電するものである。この蒸気発生器は、原子炉からの高温高圧の1次冷却材の熱を2次冷却材に伝え、ここで水蒸気を発生させるものである。
【0003】
このような原子力発電プラントでは、海岸や河川の近傍に取水設備を設置し、海水や河川水を冷却水として使用している。例えば、循環水ポンプにより海水を取り込んでタービン建屋内の復水器へ供給し、タービンから排出された蒸気(2次冷却材)を冷却する。また、海水ポンプにより海水を取り込んで原子炉建屋内の原子炉補機冷却水冷却器へ供給し、原子炉格納容器から排出された冷却水(1次冷却材)を冷却する。
【0004】
原子力発電プラントの取水設備は、常時、十分な冷却水量を確保することが重要であり、取水路における所定の水位を維持しなければならない。ところが、津波の発生時に、引き波により取水路の水位が低下してしまうおそれがある。即ち、津波は、沖合から海岸に近づいて海底が浅くなるにつれて波高が高くなり、海岸線で沖合の数倍に達する。そして、上陸した津波は、大きな水圧を伴って押し寄せた後、今度は海水を沖へ引きずり続ける引き波が作用する。このとき、取水路は、引き波により冷却水(海水)の水位が低下し、各種のポンプが冷却水を取水することができず、空気渦が発生して損傷するおそれがある。
【0005】
このような問題を解決するものとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された原子力プラントの取水設備は、取水用共用開渠における海水取水口に、津波時における取水用共用開渠の海水の流出を防止するための堰を設け、堰の上端をポンプ建屋内に設けられた常用系海水ポンプにおける常用系海水ポンプ吸込口よりも下位に設定し、非常用系海水ポンプにおける非常用系海水ポンプ用吸込口により吸引する海水の有効水源エリアを確保するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の原子力プラントの取水設備のように、取水路(取水用共用開渠)に堰を設けると、引き波の発生時に、取水路からの冷却水の流出を防止することができるが、通常時には、堰を越流する流れが強く速度分布が大きく変わり、ポンプ吸い込み口で水柱渦が発生したり、また、水面より空気を巻き込んだりするおそれがある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、取水槽に常時適正量の冷却水を確保することでポンプにより所定の冷却位置に冷却水を供給可能とする原子力発電プラントの取水設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の原子力発電プラントの取水設備は、一端部が取水源に連通する取水路と、前記取水路の他端部に連結されて上方が開放する取水槽と、前記取水槽に設けられる取水ポンプと、前記取水路に設けられるサイフォン部と、前記サイフォン部に空気を供給可能な給気通路と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
従って、取水源からの水が取水路を通して取水槽に流入するため、取水ポンプは、この取水槽の水を取水して所定の冷却位置に供給することができる。そして、引き波の発生時、取水槽の水が取水路を通して取水源側に流出しようとするが、このとき、給気通路から空気がサイフォン部に供給されることでこのサイフォン部が堰となり、取水槽からの水の流出が阻止される。その結果、取水槽に常時適正量の冷却水を確保することでポンプにより所定の冷却位置に冷却水を供給することができる。
【0011】
本発明の原子力発電プラントの取水設備では、前記給気通路に開閉弁が設けられることを特徴としている。
【0012】
従って、通常時は、開閉弁を閉止し、給気通路からサイフォン部への給気を停止すると、サイフォン部が水で満たされるため、取水源からの水が取水路及びサイフォン部を通して取水槽に流入可能となる。一方、引き波の発生時は、開閉弁を開放し、給気通路からサイフォン部へ給気を行うと、取水源側と取水槽側とがサイフォン部により分断されるため、取水槽からの水の流出を防止して取水槽に適正量の冷却水が確保可能となる。
【0013】
本発明の原子力発電プラントの取水設備では、前記取水槽の水位を計測する水位計と、水位計が計測した水位が予め設定された所定水位より低下したときに前記開閉弁を開放する制御装置とが設けられることを特徴としている。
【0014】
従って、引き波の発生時に、取水槽からの水が流出することで水位が低下し、制御装置は、水位計が計測した取水槽の水位が所定水位より低下したときに開閉弁を開放するため、ここで、給気通路からサイフォン部へ給気が行われ、取水源側と取水槽側とがサイフォン部により分断されることとなり、開閉弁を手動操作する必要がなく、自動的に開閉弁を開放して取水槽からの水の流出を防止することができ、信頼性を向上することができる。
【0015】
本発明の原子力発電プラントの取水設備では、前記サイフォン部から空気を排出可能な排気装置が設けられることを特徴としている。
【0016】
従って、取水源からの水が取水路を通して取水槽に流入するとき、サイフォン部に内部空気が残留するため、排気装置によりサイフォン部内の空気を排出することで内部を水で満たすことができ、サイフォン部での水の流動を適正化し、取水ポンプが取水槽から適正に取水することができる。
【0017】
本発明の原子力発電プラントの取水設備では、前記給気通路は、上端部が大気に開放して前記取水槽とほぼ同じ高さまで延出される大気開放管を有することを特徴としている。
【0018】
従って、引き波の発生時に、取水槽からの水が流出することで水位が低下すると、大気開放管の水位も低下してサイフォン部へ給気が行われるため、取水源側と取水槽側とがサイフォン部により分断され、取水槽からの水の流出を防止することができ、また、給気通路を大気開放管とすることで、装置を簡素化することができる。
【0019】
本発明の原子力発電プラントの取水設備では、前記サイフォン部は、水平方向の長さが鉛直方向の長さより大きく設定されることを特徴としている。
【0020】
従って、サイフォン部にて、水平方向の長さを鉛直方向の長さより大きく設定することで、サイフォン部の高さを低く抑えることで、装置の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の原子力発電プラントの取水設備によれば、取水路にサイフォン部を設け、このサイフォン部に給気通路を設けるので、引き波の発生時に、給気通路からサイフォン部に給気することでサイフォン部を堰とし、取水槽からの水の流出を阻止し、取水槽に常時適正量の冷却水を確保することでポンプにより所定の冷却位置に冷却水を供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、本発明の原子力発電プラントの取水設備の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0024】
[第1実施形態]
図2は、原子力発電プラントを表す概略構成図、
図3は、原子力発電プラントにおける冷却水を用いた冷却系統を表す概略図である。
【0025】
第1実施形態の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0026】
第1実施形態の加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、
図2に示すように、原子炉格納容器11は、内部に加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは配管14,15を介して連結されており、配管14に加圧器16が設けられ、配管15に一次冷却水ポンプ17が設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により150〜160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。従って、加圧水型原子炉12にて、燃料(原子燃料)として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高温高圧の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0027】
蒸気発生器13は、配管18を介して蒸気タービン19と連結されており、この配管18に主蒸気隔離弁20が設けられている。蒸気タービン19は、高圧タービン21と低圧タービン22を有すると共に、発電機(発電装置)23が接続されている。また、高圧タービン21と低圧タービン22との間には、湿分分離加熱器24が設けられており、配管18から分岐した冷却水分岐配管25が湿分分離加熱器24に連結される一方、高圧タービン21と湿分分離加熱器24は低温再熱管26により連結され、湿分分離加熱器24と低圧タービン22は高温再熱管27により連結されている。
【0028】
蒸気タービン19の各低圧タービン22は、復水器28を有しており、各低圧タービン22から蒸気が排出される。また、この復水器28は、配管18からバイパス弁29を有するタービンバイパス配管30が接続されている。
【0029】
そして、この復水器28は、配管31が接続されており、復水ポンプ32、グランドコンデンサ33、復水脱塩装置34、復水ブースタポンプ35、低圧給水加熱器36が接続されている。また、配管31は、脱気器37が連結されると共に、主給水ポンプ38、高圧給水加熱器39、主給水制御弁40が設けられている。
【0030】
従って、蒸気発生器13にて、高温高圧の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、配管18を通して蒸気タービン19(高圧タービン21から低圧タービン22)に送られ、この蒸気により蒸気タービン19を駆動して発電機23により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン21を駆動した後、湿分分離加熱器24で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン22を駆動する。そして、蒸気タービン19を駆動した蒸気は、復水器28で海水を用いて冷却されて復水となり、グランドコンデンサ33、復水脱塩装置34、低圧給水加熱器36、脱気器37、高圧給水加熱器39などを通して蒸気発生器13に戻される。そして、蒸気発生器13は、配管18,31を介して蒸気タービン19と連結されており、復水ブースタポンプ35、主給水ポンプ38などにより冷却水(蒸気)が循環している。
【0031】
ところで、上述した原子力発電プラントは、海岸や河川の近傍に設けられており、この海岸や河川に取水設備を設置し、海水や河川水を冷却水として使用している。
図3に示すように、取水設備50は、取水路51と取水槽52を有し、取水源としての海から海水を冷却水として取水槽52に貯留可能となっている。取水槽52は、取水ポンプとして、海水ポンプ53と循環水ポンプ54が設けられており、この海水ポンプ53と循環水ポンプ54は、貯水槽52の冷却水(海水)を取水することができる。
【0032】
海水ポンプ53は、取水管55を介して原子炉建屋(図示略)内の原子炉補機冷却水冷却器56に連結され、原子炉補機冷却水冷却器56は、排水管57を介して放水路58に連結されている。原子炉補機冷却水冷却器56は、例えば、原子炉格納容器11(
図2参照)内に設置された使用済燃料プール59の冷却水を冷却するものであり、この使用済燃料プールの冷却水を循環する冷却水循環配管60が配設され、冷却水循環配管60にポンプ61が設けられている。そのため、原子炉補機冷却水冷却器56は、海水ポンプ53が取水した海水と冷却水循環配管60を循環する使用済燃料プール59の冷却水(1次冷却水)との間で熱交換を行い、冷却水により1次冷却水を冷却することができる。なお、海水ポンプ53が取水した海水は、原子炉補機冷却水冷却器56により使用済燃料プールの冷却水を冷却するだけでなく、空調用冷凍機や非常用ディーゼル発電機用冷却器などを冷却する冷却水としていようされる。即ち、海水ポンプ53が取水した海水は、原子炉格納容器11内の1次冷却水を冷却するために使用される。
【0033】
循環水ポンプ54は、取水管62を介してタービン建屋(図示略)内の復水器28に連結され、復水器28は、排水管63を介して放水路58に連結されている。復水器28は、前述したように、低圧タービン22から排出された蒸気を冷却するものである。そのため、復水器28は、循環水ポンプ54が取水した冷却水と内部を流れる蒸気(2次冷却水)との間で熱交換を行い、冷却水により2次冷却水を冷却することができる。
【0034】
ところで、原子力発電プラントの取水設備50は、津波の発生時に、引き波により取水槽52の水位が低下し、海水ポンプ53と循環水ポンプ54が適正量の冷却水を取水することができなくなるおそれがある。そのため、本実施形態では、取水路51に後述するサイフォン部を設けることで、引き波の発生時であっても、取水槽52に常時適正量の冷却水を確保することで、各ポンプ53,54により冷却水を取水可能としている。
【0035】
ここで、原子力発電プラントの取水設備50について詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の原子力発電プラントの取水設備を表す概略図である。
【0036】
原子力発電プラントの取水設備50は、一端部が取水源としての海に連通する取水路51と、この取水路51の他端部に連結されて上方が開放する取水槽52と、取水槽52に設けられる海水ポンプ53及び循環水ポンプ54と、取水路51に設けられるサイフォン部71と、このサイフォン部71に空気を供給可能な給気通路72とを有している。
【0037】
取水槽52は、所定量の冷却水を貯留可能であり、上方が開放されている。海水ポンプ53及び循環水ポンプ54は、この取水槽52に貯留されている冷却水を取水可能であり、取水口53a,54aが取水槽52の底部の近傍まで延出されている。取水路51は、配管であって、一端部が海に連通し、他端部が取水槽52の側部に連結されている。
【0038】
サイフォン部71は、取水路51の配管と同径の配管であって、この取水路51の中間部に設けられている。このサイフォン部71は、第1傾斜部81と上水平部82と第2傾斜部83とから構成されており、取水路51とほぼ同様の通路面積に設定されている。ここで、取水槽52は、サイフォン部71における上水平部82の底面高さL1より上方の通常水位L2まで冷却水を貯留可能であり、上水平部82の底面高さL1が取水槽52における予め設定された所定水位L3とほぼ同じ高さに設定されている。なお、所定水位L3とは、海水ポンプ53及び循環水ポンプ54の吸込最低水位より高く、且つ、引き潮などにより低くなる通常最低水位より低い水位である。
【0039】
給気通路72は、一端部(下端部)がサイフォン部71の上水平部82に連通し、他端部(上端部)が大気に開放されている。この給気通路72は、電磁式開閉弁73が設けられている。また、取水槽52は、冷却水の水位を計測する水位計74が設けられている。制御装置75は、電磁式開閉弁73及び水位計74が接続されており、水位計74が計測した冷却水の水位に基づいて電磁式開閉弁73を開閉可能となっている。具体的には、制御装置75は、水位計74が計測した冷却水の水位が所定水位L3より低下したときに電磁式開閉弁73を開放する。
【0040】
また、給気通路72は、サイフォン部71の上水平部82と電磁式開閉弁73との間に排気通路76が設けられており、この排気通路76に真空ポンプ77が設けられている。制御装置75は、真空ポンプ77を駆動制御可能となっている。ここで、サイフォン部71から空気を排出可能な本発明の排気装置は、排気通路76と真空ポンプ77により構成される。なお、この排気通路76を給気通路72に連結したが、サイフォン部71の上水平部82に直接連結してもよい。
【0041】
従って、海からの海水は、
図1に実線で表す矢印にように、取水路51を通して取水槽52に流入するが、サイフォン部71があるため、上水平部82に空気が残留する。そのため、制御装置75は、真空ポンプ77を駆動することで、上水平部82に残留する空気を給気通路72及び排気通路76を通して排出し、サイフォン部71の上水平部82を海水で充満させる。そのため、海水ポンプ53及び循環水ポンプ54を作動すると、各取水口53a,54aから冷却水(海水)を吸入して所定の冷却位置に供給することができる。
【0042】
一方、津波により引き波が発生したとき、取水槽52の冷却水が、
図1に点線で表す矢印のように、取水路51を通して海に流出する。取水槽52の冷却水が流出すると、取水槽52に貯留されている冷却水の水位が低下する。制御装置75は、水位計74が計測した冷却水の水位を監視しており、水位計74が計測した冷却水の水位が所定水位L3より低下したときに電磁式開閉弁73を開放する。すると、外部の空気が給気通路72を通してサイフォン部71の上水平部82に供給され、このサイフォン部71が堰として機能する。
【0043】
即ち、サイフォン部71の上水平部82の底面高さL1が取水槽52における所定水位L3とほぼ同じ高さに設定されていることから、引き波がサイフォン部71の第2傾斜部83から取水槽52までの冷却水に対して作用することはなく、この冷却水の外部流出が阻止される。その結果、取水槽52に所定量の冷却水が確保されることとなり、少なくとも海水ポンプ53は、所定の冷却位置に冷却水を供給することができる。このとき、一般的には、海水ポンプ53のみを稼動し、循環水ポンプ54を停止することから、加圧水型原子炉12を停止する。
【0044】
なお、津波及び引き波の影響がなくなったら、制御装置75は、電磁式開閉弁73を閉止し、真空ポンプ77を駆動して上水平部82に残留する空気を排出することで、サイフォン部71の上水平部82を海水で充満させる。すると、再び、海水ポンプ53及び循環水ポンプ54を作動することができる。
【0045】
このように第1実施形態の原子力発電プラントの取水設備にあっては、一端部が海に連通する取水路51と、取水路51の他端部に連結されて上方が開放する取水槽52と、取水槽52に設けられる海水ポンプ53及び循環水ポンプ54と、取水路51に設けられるサイフォン部71と、サイフォン部71に空気を供給可能な給気通路72とを設けている。
【0046】
従って、海からの海水が取水路51を通して取水槽52に流入するため、海水ポンプ53及び循環水ポンプ54は、この取水槽52の冷却水を取水して所定の冷却位置に供給することができる。そして、引き波の発生時、取水槽52の冷却水が取水路51を通して海側に流出しようとするが、このとき、給気通路72から空気がサイフォン部71に供給されることでこのサイフォン部71が堰となり、取水槽52からの冷却水の流出が阻止される。その結果、取水槽52に常時適正量の冷却水を確保することで海水ポンプ53及び循環水ポンプ54により所定の冷却位置に冷却水を供給することができる。
【0047】
第1実施形態の原子力発電プラントの取水設備では、給気通路72に電磁式開閉弁73を設けている。従って、通常時は、電磁式開閉弁73を閉止し、給気通路72からサイフォン部71への給気を停止すると、サイフォン部71が水で満たされるため、海からの冷却水が取水路51及びサイフォン部71を通して取水槽52に流入可能となる。一方、引き波の発生時は、電磁式開閉弁73を開放し、給気通路72からサイフォン部71へ給気を行うと、海側と取水槽52側とがサイフォン部71により分断されるため、取水槽52からの冷却水の流出を防止して取水槽に適正量の冷却水が確保可能となる。
【0048】
第1実施形態の原子力発電プラントの取水設備では、取水槽52の水位を計測する水位計74と、水位計74が計測した水位が予め設定された所定水位より低下したときに電磁式開閉弁73を開放する制御装置75を設けている。従って、引き波の発生時に、取水槽52からの冷却水が流出することで水位が低下し、制御装置75は、水位計74が計測した取水槽52の水位が所定水位より低下したときに電磁式開閉弁73を開放するため、ここで、給気通路72からサイフォン部71へ給気が行われ、海側と取水槽52側とがサイフォン部71により分断されることとなり、電磁式開閉弁73を手動操作する必要がなく、自動的に電磁式開閉弁73を開放して取水槽52からの冷却水の流出を防止することができ、信頼性を向上することができる。
【0049】
第1実施形態の原子力発電プラントの取水設備では、サイフォン部71から空気を排出可能な排気装置として排気通路76及び真空ポンプ77を設けている。従って、海からの冷却水が取水路51を通して取水槽52に流入するとき、サイフォン部71に内部空気が残留するため、真空ポンプ77を駆動することで、サイフォン部71に残留する空気を排気通路76を通して排出し、サイフォン部71を冷却水で充満させることができ、サイフォン部71での冷却水の流動を適正化し、海水ポンプ53及び循環水ポンプ54が取水槽52から適正に取水することができる。
【0050】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の原子力発電プラントの取水設備を表す概略図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
第2実施形態において、
図4に示すように、原子力発電プラントの取水設備90は、一端部が取水源としての海に連通する取水路91と、この取水路91の他端部に連結されて上方が開放する取水槽92と、取水槽92に設けられる海水ポンプ93及び循環水ポンプ94と、取水路91に設けられるサイフォン部95と、このサイフォン部95に空気を供給可能な給気通路としての大気開放管96とを有している。
【0052】
取水槽92は、所定量の冷却水を貯留可能であり、上方が開放されている。海水ポンプ93及び循環水ポンプ94は、この取水槽92に貯留されている冷却水を取水可能であり、取水口93a,94aが取水槽92の底部の近傍まで延出されている。取水路91は、配管であって、一端部が海に連通し、他端部が取水槽92の側部に連結されている。
【0053】
サイフォン部95は、取水路91の配管と同径の配管であって、この取水路91の中間部に設けられている。このサイフォン部95は、第1傾斜部101と上水平部102と第2傾斜部103とから構成されており、取水路91とほぼ同様の通路面積に設定されている。大気開放管96は、一端部(下端部)がサイフォン部95の上水平部102に連通し、他端部(上端部)が大気に開放されている。この大気開放管96は、サイフォン部95における上水平部102から取水槽92とほぼ同じ高さまで上方に延出されている。ここで、取水槽92は、サイフォン部95における上水平部102の天井面高さL11より上方の通常水位L12まで冷却水を貯留可能であり、大気開放管96における冷却水の液面高さL13と、取水槽92における冷却水の通常水位L12とが同等となる。また、サイフォン部95における上水平部102の底面高さL15が取水槽92における予め設定された所定水位L14とほぼ同じ高さに設定されている。なお、所定水位L14とは、海水ポンプ93及び循環水ポンプ94の吸込最低水位より高く、且つ、引き潮などにより低くなる通常最低水位より低い水位である。
【0054】
従って、海からの海水は、
図4に実線で表す矢印のように、このとき、取水路91を通して取水槽92に流入する。このとき、取水槽92の通常水位L12がサイフォン部95における上水平部102の天井面高さL11より高く、この上水平部102に大気開放管96が設けられていることから、サイフォン部95内の空気が大気開放管96を通して排出され、サイフォン部95の上水平部102が海水で充満される。そのため、海水ポンプ93及び循環水ポンプ94を作動すると、各取水口93a,94aから冷却水(海水)を吸入して所定の冷却位置に供給することができる。
【0055】
一方、津波により引き波が発生したとき、取水槽92の冷却水が、
図4に点線で表す矢印のように、取水路91を通して海に流出する。取水槽92の冷却水が流出すると、取水槽92に貯留されている冷却水の水位が低下する。このとき、取水槽92の冷却水の水位が低下すると、大気開放管96における冷却水の液面高さL13も低下し、大気開放管96を通してサイフォン部95の上水平部102に給気される。そして、サイフォン部95の上水平部102の底面高さL15が取水槽92における所定水位L14とほぼ同じ高さに設定されていることから、引き波がサイフォン部95の第2傾斜部103から取水槽92までの冷却水に対して作用することはなく、この冷却水の外部流出が阻止される。その結果、取水槽92に所定量の冷却水が確保されることとなり、少なくとも海水ポンプ93は、所定の冷却位置に冷却水を供給することができる。
【0056】
このように第2実施形態の原子力発電プラントの取水設備にあっては、一端部が海に連通する取水路91と、取水路91の他端部に連結されて上方が開放する取水槽92と、取水槽92に設けられる海水ポンプ93及び循環水ポンプ94と、取水路91に設けられるサイフォン部95と、サイフォン部95に空気を供給可能な給気通路としての大気開放管96とを設けている。
【0057】
従って、海からの海水が取水路91を通して取水槽92に流入するため、海水ポンプ93及び循環水ポンプ94は、この取水槽92の冷却水を取水して所定の冷却位置に供給することができる。そして、引き波の発生時、取水槽92の冷却水が取水路91を通して海側に流出しようとするが、このとき、大気開放管96から空気がサイフォン部95に供給されることでこのサイフォン部95が堰となり、取水槽92からの冷却水の流出が阻止される。その結果、取水槽92に常時適正量の冷却水を確保することで海水ポンプ93及び循環水ポンプ94により所定の冷却位置に冷却水を供給することができる。また、給気通路を大気開放管96とすることで、装置を簡素化することができる。
【0058】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態の原子力発電プラントの取水設備を表す概略図、
図6は、取水路の断面を表す
図5のVI−VI断面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
第3実施形態において、
図5に示すように、原子力発電プラントの取水設備110は、一端部が取水源としての海に連通する取水路51と、この取水路51の他端部に連結されて上方が開放する取水槽52と、取水槽52に設けられる海水ポンプ53及び循環水ポンプ54と、取水路51に設けられるサイフォン部111と、このサイフォン部111に空気を供給可能な給気通路72とを有している。
【0060】
ここで、取水路51、取水槽52、海水ポンプ53及び循環水ポンプ54、給気通路72については、上述した第1実施形態と同様であることから説明は省略する。
【0061】
サイフォン部111は、取水路51の中間部に設けられており、第1傾斜部112と上水平部113と第2傾斜部114とから構成されている。このサイフォン部111は、
図5及び
図6に示すように、上水平部113における水平方向の長さ(幅)Wが、鉛直方向の長さ(高さ)Hより大きく設定されている。但し、サイフォン部111における第1傾斜部112と上水平部113と第2傾斜部114は、ほぼ同様の通路面積に設定され、且つ、取水路51ともほぼ同様の通路面積に設定されている。
【0062】
なお、本実施形態における原子力発電プラントの取水設備110の作用は、上述した第1実施形態と同様であることから説明は省略する。
【0063】
このように第3実施形態の原子力発電プラントの取水設備にあっては、一端部が海に連通する取水路51と、取水路51の他端部に連結されて上方が開放する取水槽52と、取水槽52に設けられる海水ポンプ53及び循環水ポンプ54と、取水路51に設けられるサイフォン部111と、サイフォン部111に空気を供給可能な給気通路72とを設けている。
【0064】
従って、海からの海水が取水路51を通して取水槽52に流入するため、海水ポンプ53及び循環水ポンプ54は、この取水槽52の冷却水を取水して所定の冷却位置に供給することができる。そして、引き波の発生時、取水槽52の冷却水が取水路51を通して海側に流出しようとするが、このとき、給気通路72から空気がサイフォン部111に供給されることでこのサイフォン部111が堰となり、取水槽52からの冷却水の流出が阻止される。その結果、取水槽52に常時適正量の冷却水を確保することで海水ポンプ53及び循環水ポンプ54により所定の冷却位置に冷却水を供給することができる。
【0065】
第3実施形態の原子力発電プラントの取水設備では、サイフォン部111における上水平部113は、水平方向の長さWが鉛直方向の長さHより大きく設定されている。従って、サイフォン部111の高さを低く抑えることで、装置の大型化を抑制することができる。
【0066】
なお、上述した実施形態では、サイフォン部を第1傾斜部と上水平部と第2傾斜部とから構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、サイフォン部を第1鉛直部と上水平部と第2鉛直部とから構成してもよく、また、上水平部を湾曲部としてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、サイフォン部の位置は、なるべく取水源側に設けることが望ましい。
【0068】
また、上述した実施形態では、本発明の原子力発電プラントの取水設備を加圧水型原子炉に適用して説明したが、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)に適用することもでき、いずれの原子炉に適用してもよい。