特許第6242731号(P6242731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242731
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】電子機器装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/02 20060101AFI20171127BHJP
   G06K 17/00 20060101ALI20171127BHJP
   G06F 21/60 20130101ALI20171127BHJP
【FI】
   H05F3/02 T
   G06K17/00
   G06F21/60
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-73488(P2014-73488)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-197942(P2015-197942A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】栗林 郁郎
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−098297(JP,A)
【文献】 特開2011−018247(JP,A)
【文献】 特開2004−311878(JP,A)
【文献】 特表2005−507050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/02
G06F 21/60
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置との間でデータの送受信を行うとともに、前記上位装置からの指令に従って処理を実行する電子機器装置において、
異常状態が検出されると前記データが消去される記憶部と、
前記記憶部を含む電子回路系に駆動電力を供給する電源部と、
前記電子機器装置のフレームと前記電源部の接地ラインと共通のグランド部との間に接続され、前記電子機器装置に発生する静電気を抑制するための抑制回路と、を有し、
前記抑制回路は、
前記フレームと前記グランド部との間に直列に接続された非直線性抵抗素子と抵抗素子とを含む第1の回路と、
前記第1の回路の前記非直線抵抗素子および抵抗素子の少なくとも一方に対して並列に接続されたキャパシタを含む第2の回路と、を含むことを特徴とする電子機器装置。
【請求項2】
前記非直線性抵抗素子は、少なくともバリスタ、静電気用ツェナーダイオード、およびガスアレスタのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の電子機器装置。
【請求項3】
前記電子機器装置の異常状態を検出する異常状態検出系を含み、
前記電子回路系は、
前記異常状態検出系の検出結果に応じて、前記記憶部のデータの消去制御を含めた前記電子機器装置制御を行い、接続されるインターフェース線を通して外部装置と通信可能であることを特徴とする請求項1または2記載の電子機器装置。
【請求項4】
前記電源部は、電源線を通して外部電源と接続可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載の電子機器装置。
【請求項5】
前記電子機器装置のフレームにはカード状記録媒体を挿入するカード挿入口が形成され、
前記カード挿入口から挿入されたカード状記録媒体の搬送およびアクセスを含む処理を行うカード処理系を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載の電子機器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気が電子回路系や電源部等に与える影響を抑制する抑制回路を備えた電子機器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、たとえば金融機関において、キャッシュレスや個人認証などを実現するためのカードとして、ICカードや磁気カードなどが用いられている。ICカードは、プラスチック基板内部にICチップが埋設されたカードであり、磁気カードは、プラスチック基板表面に磁気ストライプが形成されたカードである。これらのカードに対する情報の読み取りおよび書き込みは、IC接点や磁気ヘッドを備えた電子機器装置であるカードリーダによって行われる。
【0003】
この種のカードリーダにおいては、機密性等を要する重要なデータ(たとえば、暗号処理に使用する鍵データ、以下重要データという)を、バックアップ用バッテリによりバックアップされているデータ用メモリに保持しておき、必要に応じてその都度、データ用メモリから作業用メモリに重要データが読み出され、各種処理が実行される。
【0004】
この種のカードリーダは、たとえば、銀行等の金融機関に設置されるATM(Automate Teller Machine)等の上位装置に取り付けられている。
【0005】
このようなカードリーダにおいて、上記重要データは、各種処理の実行に際して必要なものであることから、通常は消失することがないように保持されている。ただし、カードリーダは、上位装置からの不正取り外しなど何らかの異常をセンサ等で検知した際には、メモリに対する電力供給を遮断する等して、その重要データが消去されるように構成されている。なお、重要データを内部で監視しておき、これが消去されたら即座に通常動作できない状態に遷移させる機能を備えたカードリーダも知られている。
【0006】
このように、カードリーダは、不正な行為等により重要データを保護するセキュリティ機能を有しているが、基本的に、上述したような異常状態が検知されない限り、重要データは保持される。
【0007】
しかしながら、カードリーダにおいては、たとえば人体とカードリーダの端子が接触したときに発生する静電気パルスにより、機器内部の電子回路、電源部やセンサ系が誤動作や動作不良となる場合が想定される。この機器内部の電子回路、電源部やセンサ系が誤動作や動作不良となると、カードリーダでは、たとえば異常が発生したと認識され、上記重要データの消去処理が強制的に行われる可能性が高い。
【0008】
そこで、カードリーダ等の電子機器装置においては、静電気の影響を抑制する抑制回路が設けられる場合が多い。静電気の抑制回路は、たとえば、特許文献1,2に記載されている。
【0009】
特許文献1には、非直線性抵抗素子であるバリスタ(varistor)、コイルを利用して信号線を介して電子機器装置の電子回路に印加される静電気を抑制する第1の抑制回路が記載されている。
【0010】
この第1の抑制回路においては、バリスタにて高電圧(バリスタ電圧以上)の静電気は接地(グランド)GND等の別の信号線(シグナルグランドGND)に流れる。この第1の抑制回路においては、コイルによって信号線を流れる高周波の静電気の流れがせき止められる。
【0011】
特許文献2には、スロットル弁コントローラのケース体とアース線(GND)とをバリスタで接続した第2の抑制回路が記載されている。この第2の抑制回路においては、ケース体の静電気をアース線にバリスタを介して流すことにより、静電気から電子回路を保護する。
【0012】
また、別の回路として、電子機器装置の筐体(フレーム)と装置内部のグランド(GND)間にキャパシタを実装した第3の抑制回路が実用に供されている。
【0013】
この第3の抑制回路においては、フレームの静電気の高周波の交流電流は、キャパシタを通過して内部グランドを通る。キャパシタに溜まった電荷は、フレームにフレームグランド(FG)線が接続されていれば、フレームグランド線よりアースに流れ、フレームグランド線が未接続の場合には、キャパシタの漏れ電流となって徐々にグランド(GND)に流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−311878号公報
【特許文献2】特表2005−507050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した第1の抑制回路または第2の抑制回路のように、バリスタを使用して静電気をグランドに流す場合、静電気の電荷が電子機器装置に帯電することはない。ところが、この種の回路では、バリスタを通してグランド線に静電気の電荷が流れる。この電荷が流れたとき、装置内部のグランド線(基板のGNDパターン)の電圧が大きく変動する。このグランド線の電圧変動により、CPU等の処理系電子回路の動作が変調し、誤動作等するおそれがある。
【0016】
また、上述した第3の抑制回路にように、電子機器装置のフレームとグランド(GND)間にキャパシタを接続した場合、静電気の高周波の交流電流はグランドに流れる。しかしながら、この第3の抑制回路では、静電気の電荷はキャパシタに溜まってしまう。このため、第3の抑制回路を備えた電子機器装置に人が近づけば、キャパシタに溜まっている電荷が、新たな静電気となって人体に流れる(飛ぶ)可能性がある。
【0017】
本発明は、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、装置内の記憶部におけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することが可能な電子機器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の観点の電子機器装置は、上位装置との間でデータの送受信を行うとともに、前記上位装置からの指令に従って処理を実行する電子機器装置において、異常状態が検出されると前記データが消去される記憶部と、前記記憶部を含む電子回路系に駆動電力を供給する電源部と、前記電子機器装置のフレームと前記電源部の接地ラインと共通のグランド部との間に接続され、前記電子機器装置に発生する静電気を抑制するための抑制回路と、を有し、前記抑制回路は、前記フレームと前記グランド部との間に直列に接続された非直線性抵抗素子と抵抗素子とを含む第1の回路と、前記第1の回路の前記非直線抵抗素子および抵抗素子の少なくとも一方に対して並列に接続されたキャパシタを含む第2の回路と、を含む。
この抑制回路を有することにより、静電気によるグランド部の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランド部に流すことが可能で、電子機器装置の誤動作を防止でき、ひいては記憶部におけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することが可能となる。
【0019】
好適には、前記非直線性抵抗素子は、少なくともバリスタ、静電気用ツェナーダイオード、およびガスアレスタのうちのいずれかである。このように、バリスタ、静電気用ツェナーダイオード、およびガスアレスタのうちのいずれかを非直線性抵抗素子として用いることができ、バリスタ電圧等を超える高電圧については、抵抗素子を通った上でグランド部からアースに静電気(電荷)が流れるようになる。したがって、電子機器装置の内部に不具合が生じた場合、電子機器装置内部の電流が抵抗素子を通してフレーム(筐体等)に流れ出る可能性が低くなり、人がフレーム(筐体等)を触ることにより感電する可能性が低くなる。
【0020】
好適には、前記電子機器装置の異常状態を検出する異常状態検出系を含み、前記電子回路系は、前記異常状態検出系の検出結果に応じて、前記記憶部のデータの消去制御を含めた機器制御を行い、接続されるインターフェース線を通して外部の前記上位装置と通信可能である。
また、好適には、前記電源部は、電源線を通して外部電源と接続可能である。
【0021】
このような構成において、静電気が帯電した電子機器装置に、電源コネクタを通して電源線をつなげた場合、あるいはインターフェースコネクタを通してインターフェース線をつなげた場合、上記抑制回路により、一瞬にして電荷が流れ出すことがなくなり、電荷が静電気となり、電子機器装置内部の異常検出センサ、スイッチ等を通して、電子回路系等の電子機器装置内部回路に侵入することを防止でき、電子機器装置内部回路が誤動作することを防止できる。また、電源コネクタを通して電源線をつなげた場合、あるいはインターフェースコネクタを通してインターフェース線をつなげた場合、一瞬にして電荷が流れ出すことがなくなり、電荷が上位電源や電子機器装置を制御するホスト装置に侵入することを防止でき、電源やホスト装置を誤動作させることを防止できる。
【0022】
好適には、前記電子機器装置のフレームにはカード状記録媒体を挿入するカード挿入口が形成され、前記カード挿入口から挿入されたカード状記録媒体の搬送およびアクセスを含む処理を行うカード処理系を有する。このように、電子機器装置がカードリーダである場合においても、静電気によるグランド部の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランド部に流すことが可能で、電子機器装置の誤動作を防止でき、ひいては記憶部におけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、静電気によるグランド部の電圧変動を抑制し、電子機器装置の記憶部におけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る電子機器装置としてのカードリーダを搭載した上位装置の外観の概要を示す図である。
図2】本実施形態に係るカードリーダの一例を示す正面図および断面図である。
図3】本実施形態に係るカードリーダ内部におけるカード処理系、電子回路系、異常状態検出系、静電気の抑制回路、電源部等の構成例を模式的に示す制御基板の概略図である。
図4】本実施形態に係る静電気の抑制回路の他の構成例であって、バリスタを用いた抑制回路の他の構成例を示す図である。
図5】本実施形態に係る静電気の抑制回路の他の構成例であって、静電気用ツェナーダイオードを用いた抑制回路の構成例を示す図である。
図6】本実施形態に係る静電気の抑制回路の他の構成例であって、ガスアレスタを用いた抑制回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0026】
本実施形態においては、電子機器装置として、カード状をしたICカードや磁気カード等に記録されたデータを読み取りあるいはデータを書き込むカードリーダを例に説明する。本実施形態において、カードリーダは、後述するように、静電気が、電子回路系や電源部に与える影響を抑制する抑制回路およびカードリーダの異常状態が検出されるとデータが消去される記憶部としての重要データ用メモリ(揮発性メモリまたは不揮発性メモリ)を有している。
【0027】
本実施形態の静電気の抑制回路は、後で詳述するように、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランド線に流すことが可能で、カードリーダの誤動作を防止でき、ひいては重要データ用メモリにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるように構成されている。
【0028】
以下では、まず、本実施形態に係るカードリーダおよびカードリーダが取り付けられる上位装置の概略構成を説明した後、電子回路系、異常状態検出系、静電気の抑制回路の回路構成および動作等を説明する。
【0029】
[カードリーダおよび上位装置の概略構成]
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器装置としてのカードリーダを搭載した上位装置の外観の概要を示す図である。
図2(A)および(B)は、本実施形態に係るカードリーダの一例を示す正面図および断面図である。図2(A)はカードリーダをカード挿入側である正面側から見た正面図であり、図2(B)は図2(A)におけるA−A線矢示方向の断面図である。
【0030】
上位装置100は、金融機関等に設置される自動取引装置(ATM(Automated Teller Machine))等により構成される。カードリーダ200は、上位装置100の筐体(フレーム)110の前面を構成するフロントパネル111の内側(奥側)に配置され、取り付けられている。フロントパネル111には、データが記録された記録媒体としてのカードが挿入または排出される開口が形成されている。上位装置100の筐体(フレーム)110の内部(外部でもよい)には上位装置100側の制御装置120が配置され、制御装置120とカードリーダ200は、USBやRSC232C等の通信ケーブル130によって接続される。
【0031】
カードリーダ200は、上位装置100のフロントパネル111の開口から露出するフロントフェイス(前面)211およびカード挿入口212を有する金属製のフレーム(筐体)であるベゼル210、およびネジ213によってベゼル210に取り付けられている一端面側が開口したカバー体220により外観構成が形成されている。
【0032】
ベゼル210には、フロントフェイス211の外周に形成され、カードリーダ200が取り付けられる上位装置100の取り付け面に当接する固定面214が形成されている。フロントフェイス211および固定面214は、パネル111から上位装置100の内側へ後退する段状に形成されている。すなわち、固定面214を含む面よりも前方にフロントフェイス211が形成されている。これにより、フロントパネル111を介して外部から視認することができるのは、フロントフェイス211のみとなり、固定面214については外部から視認することができなくなる。
【0033】
ベゼル210は、上位装置100のフロントパネル111に取り付けられて、上位装置100の筐体(フレーム)110を通して接地(アース)に接続される。ここで、アース(接地)とは、機器のケースなどの大地電位になりやすい部分に接続することをいう。これにより、感電や漏電事故を防止するとともに、信号を伝送する際にノイズ(雑音)を受けにくくすることができる。
【0034】
また、カードリーダ200は、たとえばフロントフェイス211あるいはカバー体220のリアフェイス221側にインターフェースコネクタが配置され、さらにカバー体220のリアフェイス(背面)側には、図示しないが、電源コネクタ、インターネット用コネクタが配置されている。上述したように、カードリーダ200は、ホスト装置(CPU等)120と、RS232CやUSB等の通信ケーブル130によって接続されている。
【0035】
カバー体220内には、図2(B)に示すように、カード搬送路231に配置され、カード挿入口212から挿入されたカードに記録された磁気情報を読み取るプリヘッド234、搬送路を開閉するシャッタ235、カードに記録された情報の読み取りおよび書き込みを行う磁気ヘッド232、IC接点233を含むカード処理系230、電子回路系、一部を除く異常状態検出系、静電気の抑制回路、電源部等が収容される。カード処理系230には、電子回路系等が搭載される制御基板280が配置されている。また、制御基板280には、表示用LED281が搭載されている。カバー体220内には、カード挿入口212から挿入されたカードに記録された情報の読み取りおよび書き込みを行う磁気ヘッド、IC接点、カード搬送系を含むカード処理系、電子回路系、一部を除く異常状態検出系、静電気の抑制回路、電源部等が収容される。
【0036】
次に、図3に関連付けて、重複する部分もあるが、カードリーダ200のカード処理系、異常状態検出系、静電気の抑制回路、電源部等の構成例について説明する。
図3は、本実施形態に係るカードリーダ内部におけるカード処理系、電子回路系、異常状態検出系、静電気の抑制回路、電源部等の構成例を模式的に示す制御基板の概略図である。
【0037】
本実施形態のカードリーダ200は、図3に示すように、カード処理系230、電子回路系240、異常状態検出系250、静電気の抑制回路260、および電源部270を含んで構成されている。
【0038】
[カード処理系230の構成例]
カード処理系230は、カード挿入口212から挿入されるICカードや磁気カード等のカードを搬送するための搬送機構を含む搬送路231、搬送路に沿って所定の位置に配置された磁気ヘッド232、IC接点233等を含んで構成される。カード処理系230は、カード搬送路231内のカードの有無を検出するためのフォトセンサ等が配置される。
【0039】
[電子回路系240の構成例]
電子回路系240は、制御部としてのCPU241、ロジック集積回路(ロジックIC)242、異常検出IC(異常検出集積回路)243、記憶部としてのRAM244、および外部通信用IC245を含んで構成されている。
【0040】
基本的に、CPU241、ロジックIC242、異常検出IC243、および外部通信用IC245は、電源部270で生成される駆動電圧(電源電圧)VCCが電圧供給端子VTに供給される。CPU241は、電圧供給端子VT241に駆動電圧VCCが供給される。ロジックIC242は、電圧供給端子VT242に駆動電圧VCCが供給される。異常検出IC243は、電圧供給端子VT243に駆動電圧VCCが供給される。外部通信用IC245は、電圧供給端子VT245に駆動電圧VCCが供給される。なお、記憶部としてのRAM244は、CPU241の制御の下、たとえば図3中に示す電力制御線PCLを通して異常検出IC243から電力の供給を受ける。そして、CPU241、ロジックIC242、異常検出IC243、RAM244、および外部通信用IC245は、それぞれのグランドラインが、たとえばカードリーダ200のシグナルグランド等の内部グランド(GND)に接続されている。
【0041】
CPU241は、カードリーダ200の全体の制御を司る。CPU241は、図示しないROM等から初期化プログラムや基本プログラムを呼び出し、これらを実行してカードリーダ200の全体の制御を司る。また、CPU241は、上位装置100側の制御装置120からの外部通信用IC245を通してコマンドを受信して、そのコマンドに従って各種処理(アプリケーションプログラム等)を実行する。CPU241は、必要に応じてロジックIC242にアクセスして処理の論理演算等を行う。
【0042】
また、CPU241は、図示しないが、自身に内蔵RAMおよびROMを備えている。内蔵ROMは、CPU241の制御動作を実行させるプログラムを予め格納したメモリであり、内蔵RAMは、CPU241が演算処理に使用する各種のメモリエリアを形成するメモリである。
【0043】
CPU241は、異常検出IC243において、異常状態検出系250の各センサ(スイッチ)系の検出結果により異常があると判断された場合に、RAM244の記憶データを高速に消去して、重要なデータが外部に漏れることを防止する機能を持つように構成することも可能である。
【0044】
異常検出IC243は、異常状態検出系250の各センサ(スイッチ)系により、上位装置100からのカードリーダ200が取り外されたことが検出され、カバー体220が外されたか否かを監視して異常の有無を検出する。異常検出IC243は、異常がない場合には、記憶部としてのRAM244に記憶されている重要データ(たとえば、暗号処理に使用する鍵データ、暗号コード、顧客のデータ等)を、必要に応じてその都度CPU241に供給する。CPU241においては、RAM244からCPU241の作業用内蔵RAMに重要データが読み出され、各種処理が実行される。
【0045】
異常検出IC243は、異常がある場合には、不正行為等が行われたものと判断して、CPU241の制御の下、RAM244に記憶されている重要データを強制的に消去するように処理する。異常検出IC243は、CPU241の制御の下、たとえばRAM244への電力供給を遮断してデータを消去し、もしくは、CPU241より異常検出IC243を介してRAM244の記憶データを高速に消去して、重要なデータが外部に漏れることを防止する。異常検出IC243は、CPU241の制御の下、たとえば図3中に示す電力制御線PCLを通してRAM244への電力の供給を制御する。
【0046】
記憶部としてのRAM244は、上述したように、重要データ(たとえば、暗号処理に使用する鍵データ、暗号コード、顧客のデータ等)を記憶する。なお、記憶部としてのRAM244については、その種類の如何を問わない。たとえば、DRAMのような揮発性メモリであってもよいし、EEPROMやフラッシュメモリのような不揮発性メモリであってもよい。また、記憶部としてのRAM244には、上述した重要データの他に、実行プログラム、誤り検知符号(CRC,チェックSUM,BCC)等の電子情報が格納されていてもよい。
【0047】
また、ここで消去とは、電力供給を遮断しデータを消失させる方法もあるし、「all 0xFF」や「all 0x00」に書き換える方法もある。さらに、別の特定のデータ(たとえば「all 0x11」や「all 0x22」や「0x00,0x01,0x02,0x03,・・・,0x0Fの羅列の繰り返し」など)に書き換えてもよい。その他、乱数で書き換えてもよい。さらには、全データ領域について書き換えるのではなく、予め指定されたまたはランダムに選択された特定のデータ領域のみについて、データを書き換えてもよい。
【0048】
外部通信用IC245は、インターフェースコネクタに接続されるRS232CやUSB等の通信ケーブル130によって接続される制御装置(CPU等)120とCPU241の通信インターフェース回路として機能する。
【0049】
[異常状態検出系250の構成例]
異常状態検出系250は、カードリーダ取り外し検出センサ(またはスイッチ)251、およおびカバー異常検出センサ(またはスイッチ)252を含んで構成されている。
【0050】
カードリーダ取り外し検出センサ251(以下、「機器取り外し検出センサ251」という。)は、カードリーダ200の上位装置100のフロントパネル111への取り付け部あるいはその近傍に配置され、カードリーダ200が上位装置100の筐体から不正に取り外される不正行為(タンパ行為)等が行われているか否かを検出する。機器取り外し検出センサ251は、検出結果を異常検出IC243に出力する。機器取り外し検出センサ251は、カードリーダ200の上位装置100のフロントパネル111における締結状態や圧接状態を検出するフォトセンサや磁気センサ等により構成される。機器取り外し検出センサ251は、レバーやボタン、シートスイッチ等、機械的なスイッチにより構成することも可能である。
【0051】
カバー取り外し検出センサ252は、カバー体220が取り外される不正行為等が行われているか否かを検出する。カバー取り外し検出センサ252は、検出結果を異常検出IC243に出力する。カバー取り外し検出センサ252は、フォトセンサ等により構成される。カバー取り外し検出センサ252は、マイクロスイッチ等により構成することも可能である。
【0052】
[静電気の抑制回路260の構成例]
抑制回路260は、電子機器装置であるカードリーダ200のフレームであるベゼル210と電源部270の接地ラインと共通のグランド部(たとえばシグナルグランド)SGNDとの間に接続され、カードリーダ200に発生する静電気を抑制する。なお、ベゼル210は、上位装置100のフロントパネル111に取り付けられて、上位装置100の筐体(フレーム)110を通してアースに接続される。
【0053】
図3の抑制回路260は、ベゼル(フレーム)210とグランド部(接地部)SGNDとの間に、直列に接続された非直線性抵抗素子であるバリスタVRST1と抵抗素子R1とを含む第1の回路261、および第1の回路261に並列に接続されたキャパシタC1を含む第2の回路262と、により構成されている。
【0054】
より具体的には、抑制回路260は、ベゼル210に接続されたノードND261と、グランド部SGNDに接続されたノードND262との間に、第1の回路261と第2の回路262が並列に接続されている。第1の回路261において、非直線性抵抗素子であるバリスタVRST1の一端(一電極)がノードND261に接続され、他端(他電極)が抵抗素子R1の一端に接続され、抵抗素子R1の他端がノードND262に接続されている。第2の回路262において、キャパシタC1の一端(一電極)がノードND261に接続され、他端(他電極)がノードND262に接続されている。
【0055】
ここで、バリスタとは、2つの電極をもつ電子部品であって、両端子間の電圧が低い場合には電気抵抗が高いが、ある程度の電圧、すなわち、バリスタ電圧以上に両端子間の電圧が高くなると急激に電気抵抗が低くなる、いわゆる非直線性抵抗素子として機能する電子部品である。バリスタ電圧V1mAは、バリスタの動作する電圧の目安となる電圧値であり、ある基準電流が流れるときバリスタの両端子間に発生する電圧で定義される。バリスタ電圧は、一般に、基準電流1mAとして、記号V1mAで表される。なお、実装するバリスタVRST1はバリスタ電圧は、450V〜1000V程度であることが望ましい。
【0056】
また、バリスタVRST1に直列に接続される抵抗素子R1は、その抵抗値が数百オーム程度、たとえば200オームに設定される。
【0057】
ここで、本実施形態の抑制回路260において、非直線性抵抗素子であるバリスタVRST1を含む第1の回路261に対して、キャパシタC1を含む第2の回路262を並列に接続した構成を採用した理由について述べる。
【0058】
バリスタのみを使用して静電気をアースに流す(逃がす)場合、一気に電流(電荷)がグランド部SGNDに流れるため、グランド線の電圧が変動し、カードリーダ等の電子機器装置の内部回路が誤動作することがある。これを防止するため、本実施形態においては、第1の回路261で、筐体部分であるベゼル(フレーム)グランド〜バリスタVRST1〜抵抗素子R1〜グランド部SGNDを直列に接続し、かつ、第1の回路261に並列な第2の回路262で、筐体部分であるベゼル(フレーム)グランド〜キャパシタC1〜グランド部SGNDを接続する。
【0059】
この構成においては、第1の回路261より、バリスタ電圧を超える電圧は、抵抗素子R1を通った上で内部グランドGND→アースに静電気(電荷)が流れるようになる。
かつ、第2の回路262により、筐体部分であるベゼル(フレーム)グランドGNDの高周波の交流波は、キャパシタC1を通してグランド部SGNDに流れる。換言すれば、第2の回路262により、静電気の交流成分をグランド部SGNDに流す。
【0060】
抵抗素子R1のみでベゼル(フレーム、筐体等)とグランド部SGNDを接続した場合、かつ、電子機器装置の内部に不具合が生じた場合、内部の電流が抵抗素子R1を通してフレーム(筐体等)に流れ出る可能性がある。よって、人がフレーム(筐体等)を触ることにより感電するおそれがある。これを防止するには、バリスタVRST1を、バリスタVRST1による電荷(電流)の流れを緩和してグランド部SGNDに流す抵抗素子R1と直列に接続することが有効である。
【0061】
この抑制回路260を電子機器装置であるカードリーダ200に設けることにより、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAM244におけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができる。
【0062】
電源部270は、記憶部としてのRAM244を含む電子回路系240等に駆動電力(電圧VCC)を供給する。図3の電源部270は、主電源(Main Power Supply)としてのレギュレータ271、バックアップ電源としてのバッテリ(Back Up Battery)272、電源制御部(PWCN)273、電圧供給端子VT271、ダイオードD1,D2、電源側ノードND271およびグランド側ノードND272を含んで構成されている。なお、電源制御273は、電子回路系の一部として構成することも可能である。
【0063】
レギュレータ271は、カバー体220に形成されている電源コネクタに接続される外部電源装置の電圧をカードリーダ200内の動作電圧VCCとなるように調整し、この電圧VCCを、ダイオードD1を介して電圧供給端子VT271に供給する。レギュレータ271は、入力端子(IN)、出力端子(OUT)、グラウンド(GND)の3端子を有し、たとえば出力電圧固定型として構成される。入力端子(IN)が電源コネクタ222に接続され、出力端子(OUT)がダイオードD1のアノードに接続され、グランド端子(GND)がグランド部SGNDに接続されたノードND272に接続されている。
このノードND272およびグランド部SGNDは抑制回路260と共用されている。ダイオードD1のカソードがノードND271に接続され、ノードND271が電圧供給端子VT271に接続されている。
【0064】
バッテリ272は、電源部270が電源コネクタ222を通して外部電源装置に接続されていない場合のバックアップ電源として機能し、定電圧VCCBを、ダイオードD2を通して電圧供給端子VT271に供給する。バッテリ272の負極側がグランド部SGNDに接続されたノードND272に接続され、正極側がダイオードD2のアノードに接続されている。ダイオードD2のカソードが電圧供給端子VT271に接続されたノードND271に接続されている。
【0065】
電源部270においては、レギュレータ271の出力およびバッテリ272の正極側から順方向となるように接続されたダイオードD1、D2を有している。これにより、主電源部としてのレギュレータ271が外部電源装置に接続されているときは、電源制御部273の制御の下、レギュレータ271が生成した電圧VCCが、電圧供給端子VT271から、CPU241の電圧供給端子VT241、ロジックIC242の電圧供給端子VT242、異常検出IC243の電圧供給端子VT243、および外部通信用IC245の電圧供給端子VT245に供給される。一方、主電源部としてのレギュレータ271が外部電源装置に接続されていないときは、電源制御部273の制御の下、バッテリ272による電圧VCCが、電圧供給端子VT271から、異常検出IC243の電圧供給端子VT243に供給される。
【0066】
次に、本実施形態の抑制回路260の機能、効果等を、カードリーダ200が出荷される状況を踏まえて説明する。
【0067】
本実施形態のセキュリティ機能付きカードリーダ200は、機器内部に異常検出IC243と各センサ(スイッチ等)からなる異常状態検出系250を搭載している。カードリーダ200は、下記の内容の状態を監視し、異常があれば、RAM244内部の重要データ(暗号キー、暗号コード、顧客のデータ等)を、たとえばRAM244への電力供給を遮断して消去し、もしくは、CPU241よりRAM244の記憶データを高速に消去して、重要なデータが外部に漏れることを防止する。
【0068】
カードリーダ200は、工場から出荷され、市場のATMやPOS等の筐体に設置されるまで、外部からの電力供給がなくとも、機器内部の電源部270のバッテリ272にてRAM244のデータの保管とセキュリティ性を維持する。このため、本カードリーダ200は、市場の上位装置100の筐体(フレーム)に設置されるまで、アースに接続されることはない。よって、本カードリーダ200が上位装置100の筐体に取り付けられるまで(フレームグランド線がアースに接続されるまで)に、静電気を浴びた場合は帯電する。
【0069】
帯電した機器に、電源コネクタ222を通して電源線をつなげた場合、あるいはインターフェースコネクタ215を通してインターフェース線をつなげた場合、一瞬にして電荷が流れ出す。このとき、電荷が静電気となり、機器内部の異常状態検出センサ、スイッチ等を通して、電子回路系240等の内部回路に侵入する。これにより、内部回路が誤動作することがある。
【0070】
または、電源コネクタ222を通して電源線をつなげた場合、あるいはインターフェースコネクタ215を通してインターフェース線をつなげた場合、一瞬にして電荷が流れ出す。このとき、電荷が上位電源やカードリーダ200を制御するホスト装置120に侵入し、電源やホスト装置120を誤動作させることがある。
【0071】
これを防止するために、抑制回路260においては、第1の回路261で、筐体部分であるベゼル(フレーム)グランド〜バリスタVRST1〜抵抗素子R1〜グランド部SGNDを直列に接続し、かつ、第1の回路261に並列な第2の回路262で、筐体部分であるベゼル(フレーム)グランド〜キャパシタC1〜グランド部SGNDを接続してある。これにより、第1の回路261よって、バリスタ電圧を超える電圧は、抵抗素子R1を通った上で内部GND→アースに静電気(電荷)が流れるようになる。かつ、第2の回路262により、筐体部分であるフレームグランドGNDの高周波の交流波は、キャパシタC1を通してグランド部SGNDに流れる。換言すれば、第2の回路262により、静電気の交流成分をグランドGNDに流す。これによって、上記の不具合が抑制される。
【0072】
なお、通常、電子機器装置は、筐体〜グランドGND間の確認のため、電圧250Vで耐圧測定、抵抗値測定を実施している。抵抗値は無限大が理想である。ところが、バリスタ電圧が大きい場合は、静電気が流れにくくなる。よって、実装するバリスタはバリスタ電圧が470V〜1000Vであることが望ましい。
【0073】
[実施形態の主な効果]
上述したように、本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
本実施形態においては、基本的に、第1の回路261で、筐体部分であるベゼル(フレーム)グランド〜バリスタVRST1〜抵抗素子R1〜グランド部SGNDを直列に接続し、かつ、第1の回路261に並列な第2の回路262で、筐体部分であるベゼル(フレーム)グランド〜キャパシタC1〜グランド部SGNDを接続する。この構成においては、第1の回路261より、バリスタ電圧を超える電圧は、抵抗素子R1を通った上で内部グランドGND→アースに静電気(電荷)が流れるようになる。かつ、第2の回路262により、筐体部分であるベゼル(フレーム)グランドGNDの高周波の交流波は、キャパシタC1を通してグランド部SGNDに流れる。換言すれば、第2の回路262により、静電気の交流成分をグランド部SGNDに流す。抵抗素子R1のみでベゼル(フレーム、筐体等)とグランド部SGNDを接続した場合、かつ、電子機器装置の内部に不具合が生じた場合、内部の電流が抵抗素子R1を通してフレーム(筐体等)に流れ出る可能性がある。よって、人がフレーム(筐体等)を触ることにより感電するおそれがある。これを防止するために、本実施形態においては、バリスタVRST1を、バリスタVRST1による電荷(電流)の流れを緩和してグランド部SGNDに流す抵抗素子R1と直列に接続している。
【0074】
したがって、本実施形態によれば、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、カードリーダの誤動作を防止できる。そして、記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができる。
【0075】
[静電気の抑制回路の他の構成例]
静電気の抑制回路は、図3に示す制御基板上に形成された回路に限定されるものではなく、その接続形態や非直性抵抗素子をバリスタ以外の電子部品、たとえば静電気用ツェナーダイオードあるいはガスアレスタを用いて構成することも可能であり、図3の抑制回路と同様の作用効果を得ることができる。以下、抑制回路の他の構成例について、図4図5、および図6に関連付けて説明する。
【0076】
[バリスタを用いた抑制回路の他の構成例]
図4(A)〜(C)は、本実施形態に係る静電気の抑制回路の他の構成例であって、バリスタを用いた抑制回路の他の構成例を示す図である。
【0077】
図4(A)の抑制回路260Aが図3の抑制回路260と異なる点は、第1の回路261Aにおいて直列接続されるバリスタVRST1と抵抗素子R1の接続位置が逆となっていることにある。すなわち、抑制回路260Aの第1の回路261Aにおいては、抵抗素子R1の一端がベゼル210に接続されたノードND261に接続され、他端がバリスタVRST1の一端に接続され、バリスタVRST1の他端がグランド部SGNDに接続されたノードND262に接続されている。その他の構成は、図3の抑制回路と同様である。
【0078】
図4(A)の抑制回路260Aによれば、上述した図3の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0079】
図4(B)の抑制回路260Bが図3の抑制回路260と異なる点は、第2の回路262が第1の回路261の直列接続されたバリスタVRST1および抵抗素子R1のうちの一方の抵抗素子R1と並列に接続されていることにある。すなわち、抑制回路260Bの第2の回路262において、キャパシタC1の一端が第1の回路261のバリスタVRST1と抵抗素子R1の接続ノードND263に接続され、他端がノードND262に接続されている。その他の構成は、図3の抑制回路と同様である。
【0080】
図4(B)の抑制回路260Bによれば、上述した図3の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0081】
図4(C)の抑制回路260Cが図4(A)の抑制回路260Aと異なる点は、第2の回路262が第1の回路261の直列接続されたバリスタVRST1および抵抗素子R1のうちの一方のバリスタVRST1と並列に接続されていることにある。すなわち、抑制回路260Cの第2の回路262において、キャパシタC1の一端が第1の回路261Aの抵抗素子R1とバリスタVRST1の接続ノードND263に接続され、他端がノードND262に接続されている。その他の構成は、図4(A)の抑制回路と同様である。
【0082】
図4(C)の抑制回路260Cによれば、上述した図3および図4(A)の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0083】
[静電気用ツェナーダイオードを用いた抑制回路の構成例]
図5(A)〜(D)は、本実施形態に係る静電気の抑制回路の他の構成例であって、静電気用ツェナーダイオードを用いた抑制回路の構成例を示す図である。
【0084】
図5(A)の抑制回路260Dが図3の抑制回路260と異なる点は、第1の回路261Dにおいて、抵抗素子R1と直列接続されるバリスタVRST1の代わりに静電気用ツェナーダイオードZD1を配置したことにある。すなわち、抑制回路260Dの第1の回路261Dにおいては、ツェナーダイオードZD1のカソード側がベゼル210に接続されたノードND261に接続され、カソード側が抵抗素子R1の一端に接続され、抵抗素子R1の他端がグランド部SGNDに接続されたノードND262に接続されている。その他の構成は、図3の抑制回路と同様である。
【0085】
図5(A)の抑制回路260Dによれば、上述した図3の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線(グランド部SGND)の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランド部SGNDに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0086】
図5(B)の抑制回路260Eが図5(A)の抑制回路260Dと異なる点は、第1の回路261Eにおいて直列接続される静電気用ツェナーダイオードZD1と抵抗素子R1の接続位置が逆となっていることにある。すなわち、抑制回路260Eの第1の回路261Eにおいては、抵抗素子R1の一端がベゼル210に接続されたノードND261に接続され、他端がツェナーダイオードZD1のカソードに接続され、ツェナーダイオードZD1のアノードがグランド部SGNDに接続されたノードND262に接続されている。その他の構成は、図5(A)の抑制回路と同様である。
【0087】
図5(B)の抑制回路260Eによれば、上述した図3および図5(A)の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0088】
図5(C)の抑制回路260Fが図5(A)の抑制回路260Dと異なる点は、第2の回路262が第1の回路261Dの直列接続されたツェナーダイオードZD1および抵抗素子R1のうちの一方の抵抗素子R1と並列に接続されていることにある。すなわち、抑制回路260Fの第2の回路262において、キャパシタC1の一端が第1の回路261DのツェナーダイオードZD1と抵抗素子R1の接続ノードND264に接続され、他端がノードND262に接続されている。その他の構成は、図5(A)の抑制回路と同様である。
【0089】
図5(C)の抑制回路260Fによれば、上述した図3および図5(A)の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0090】
図5(D)の抑制回路260Gが図5(B)の抑制回路260Eと異なる点は、第2の回路262が第1の回路261Eの直列接続されたツェナーダイオードZD1および抵抗素子R1のうちの一方のツェナーダイオードZD1と並列に接続されていることにある。
すなわち、抑制回路260Gの第2の回路262において、キャパシタC1の一端が第1の回路261Eの抵抗素子R1とツェナーダイオードZD1の接続ノードND264に接続され、他端がノードND262に接続されている。その他の構成は、図5(B)の抑制回路と同様である。
【0091】
図5(D)の抑制回路260Gによれば、上述した図3および図5(A)、(B)の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0092】
[ガスアレスタを用いた抑制回路の構成例]
図6(A)〜(D)は、本実施形態に係る静電気の抑制回路の他の構成例であって、ガスアレスタを用いた抑制回路の構成例を示す図である。
【0093】
ちなみに、ガスアレスタGART1は、通常の作動状態においては高抵抗(高インピーダンス)状態を維持し、静電気等の高電圧サージが印加される状態のもとでは低抵抗状態に切り換わる非直線性抵抗素子として機能する。
【0094】
図6(A)の抑制回路260Hが図3の抑制回路260と異なる点は、第1の回路261Hにおいて、抵抗素子R1と直列接続されるバリスタVRST1の代わりにガスアレスタGART1を配置したことにある。すなわち、抑制回路260Hの第1の回路261Hにおいては、ガスアレスタGART1の一端がベゼル210に接続されたノードND261に接続され、他端が抵抗素子R1の一端に接続され、抵抗素子R1の他端がグランド部SGNDに接続されたノードND262に接続されている。その他の構成は、図3の抑制回路と同様である。
【0095】
図6(A)の抑制回路260Hによれば、上述した図3の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0096】
図6(B)の抑制回路260Iが図6(A)の抑制回路260Hと異なる点は、第1の回路261Iにおいて直列接続されるガスアレスタGART1と抵抗素子R1の接続位置が逆となっていることにある。すなわち、抑制回路260Iの第1の回路261Iにおいては、抵抗素子R1の一端がベゼル210に接続されたノードND261に接続され、他端がガスアレスタGART1の一端に接続され、ガスアレスタGART1の他端がグランド部SGNDに接続されたノードND262に接続されている。その他の構成は、図6(A)の抑制回路と同様である。
【0097】
図6(B)の抑制回路260Iによれば、上述した図3および図6(A)の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0098】
図6(C)の抑制回路260Jが図6(A)の抑制回路260Hと異なる点は、第2の回路262が第1の回路261Hの直列接続されたガスアレスタGART1および抵抗素子R1のうちの一方の抵抗素子R1と並列に接続されていることにある。
すなわち、抑制回路260Jの第2の回路262において、キャパシタC1の一端が第1の回路261HのガスアレスタGART1と抵抗素子R1の接続ノードND265に接続され、他端がノードND262に接続されている。その他の構成は、図6(A)の抑制回路と同様である。
【0099】
図6(C)の抑制回路260Jによれば、上述した図3および図6(A)の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0100】
図6(D)の抑制回路260Kが図6(B)の抑制回路260Iと異なる点は、第2の回路262が第1の回路261Iの直列接続されたガスアレスタGART1および抵抗素子R1のうちの一方のガスアレスタGART1と並列に接続されていることにある。すなわち、抑制回路260Kの第2の回路262において、キャパシタC1の一端が第1の回路261Iの抵抗素子R1とガスアレスタGART1の接続ノードND265に接続され、他端がノードND262に接続されている。その他の構成は、図6(B)の抑制回路と同様である。
【0101】
図6(D)の抑制回路260Kによれば、上述した図3および図6(A)、(B)の抑制回路と同様の効果、すなわち、静電気によるグランド線の電圧変動を抑制し、しかも静電気の交流成分をグランドに流すことが可能で、機器の誤動作を防止でき、ひいては記憶部であるRAMにおけるデータを静電気の影響で消去することを抑制することができるという効果を得ることができる。
【0102】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることはいうまでもない。
【0103】
たとえば、上述した実施形態では、異常状態検出系のセンサとして、機器取り外し検出センサ(またはスイッチ)251およびカバー異常検出センサ(またはスイッチ)253の2つを例に示したが、他のセンサを設けても良い。たとえば、上記2つのセンサの他に、ベゼル異常検出センサ(またはスイッチ)、温度検出センサ、あるいは電源異常検出センサを含んで構成することも可能である。
【0104】
ちなみに、ベゼル異常検出センサは、カードリーダ200のベゼル210とカバー体220との取り付け部において不正に取り外される不正行為(タンパ行為)等が行われているか否かを検出する。温度検出センサは、カードリーダ200のカバー体220内における温度を検出する。電源異常検出センサは、電源部270においてカードリーダ200内の各部の動作駆動電圧VCCを生成するレギュレータ等に異常があり、生成する動作駆動電圧VCCが変動したり、所望する電圧値から外れてしまう状態が発生した場合に、これを異常として検出する。
【0105】
なお、以上の説明においては、電子機器装置としてカードリーダ(カードリーダライタを含む)を例に説明したが、本発明はカードリーダだけでなく、一般的なIT機器等に適用可能である。
【符号の説明】
【0106】
100・・・上位装置、110・・・筐体、111・・・フロントパネル、120・・・制御装置、130・・・通信ケーブル、200・・・カードリーダ(電子機器装置)、210・・・ベゼル(フレーム)、212・・・カード挿入口、220・・・カバー体、230・・・カード処理系、231・・・搬送路、232・・・磁気ヘッド、233・・・IC接点、240・・・電子回路系、241・・・CPU、242・・・ロジックIC、243・・・異常検出IC、244・・・記憶部としてのRAM、245・・・外部通信用IC、VT241〜VT243,VT245・・・電圧供給端子、250・・・異常状態検出系、251・・・機器取り外し検出センサ(またはスイッチ)、252・・・カバー異常検出センサ(またはスイッチ)、260,260A〜260K・・・静電気の抑制回路、261・・・第1の回路、VRST1・・・バリスタ(非直線性抵抗素子)、ZD1・・・静電気用ツェナーダイオード(非直線性抵抗素子)、GART1・・・ガスアレスタ(非直線性抵抗素子)、R1・・・抵抗素子、262・・・第2の回路、C1・・・キャパシタ、SGND・・・グランド部(接地部)、270・・・電源部、271・・・レギュレータ、272・・・バッテリ、273・・・電源制御部、VT271・・・電圧供給端子、D1,D2・・・ダイオード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6