(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、汚染水又は汚染土壌がケイ素化合物を含有する場合、鉄粉が上記重金属を吸着する性能が低下する。そのため、ケイ素化合物を含有する汚染水又は汚染土壌に対しては、上記従来の処理剤及び処理方法では上記重金属の除去性能が不十分である。
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、ケイ素化合物を含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去可能な浄化処理剤及び浄化処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、誠意検討した結果、鉄又はその合金粉とアルカリ土類金属又はその塩とを含有する浄化処理剤及びこの浄化処理方法を用いることにより、ケイ素化合物を含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去可能であるということを知見した。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、ケイ素化合物を含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理剤であって、鉄又はその合金粉とアルカリ土類金属又はその塩とを含有する浄化処理剤である。
【0009】
ケイ素化合物を含む汚染水又は汚染土壌では、浄化処理において汚染水又は汚染土壌溶出液中にケイ素化合物に由来するケイ素イオン又はケイ酸イオン(以下、「ケイ素イオン等」ともいう。)と重金属又は重金属含有化合物(以下、「重金属等」ともいう。)に由来する重金属イオンとが存在する。そのため、鉄又はその合金粉(以下、「鉄粉」ともいう。)のみを浄化処理剤として加えた場合、このケイ素イオン等と鉄粉とが反応することで、鉄粉の表面にケイ素が析出する。これにより鉄粉と重金属イオンとの反応性が低下し、鉄粉の表面に重金属が析出し難くなる。その結果、浄化処理剤の重金属等の除去性能が低下すると考えられる。これに対し、当該浄化処理剤はアルカリ土類金属又はその塩を含有するため、アルカリ土類金属イオンがケイ素化合物に由来するケイ素イオン等と反応し、汚染水又は汚染土壌溶出液中からケイ素イオン等を除去することで、ケイ素の鉄粉の表面への析出を抑制する。これにより、鉄粉の反応性の低下を防止でき、鉄粉の表面に重金属が効率良く析出し吸着されるため、当該浄化処理剤は重金属等の除去性能に優れると考えられる。従って、当該浄化処理剤は、上記ケイ素化合物を含有する汚染水又は汚染土壌の浄化に好適に用いることができる。
【0010】
上記重金属又は重金属含有化合物の金属種として少なくともセレンを含むとよい。このように上記重金属又は重金属含有化合物の金属種として少なくともセレンを含む汚染水又は汚染土壌に対し、当該浄化処理剤はより高い効果を発揮する。つまり、当該浄化処理剤は、セレンを効率良く除去することができる。
【0011】
当該浄化処理剤は塩化第一鉄又は塩化第二鉄をさらに含有するとよい。このように当該浄化処理剤が上記塩化第一鉄又は塩化第二鉄(以下、「塩化鉄」ともいう。)をさらに含有することで、上記塩化鉄が汚染水又は汚染土壌溶出液の酸化還元電位を低下させ、汚染水又は汚染土壌溶液中の重金属イオンが還元されやすくなる。これにより、鉄粉表面に重金属が析出しやすくなると考えられる。また、上記塩化鉄により汚染水又は汚染土壌溶出液のpHが低下し、鉄粉の表面が腐食し易くなることで、鉄粉から生じる2価の鉄イオンと重金属イオンとの反応が促進されると考えられる。これらの結果、上記重金属等の除去性能がより向上する。
【0012】
上記アルカリ土類金属塩が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素カルシウム又は酢酸カルシウムであるとよい。このように上記アルカリ土類金属塩が上記化合物であることで、汚染水及び汚染土壌の溶出液へのアルカリ土類金属塩の溶解性が向上すると考えられる。その結果、上述のアルカリ土類金属イオンとケイ素イオン等との反応が促進される。また、上記化合物は入手が容易であり、安価であるため、上記重金属等の除去を低コストで促進することができる。
【0013】
上記鉄又はその合金粉がアトマイズ法により製造されたものであるとよい。このように上記鉄粉がアトマイズ法により製造されたアトマイズ鉄粉であることで、鉄粉の成分及び粒径の均一性を向上させることができる。その結果、上述の鉄粉と上記重金属イオンとの反応効率がより向上する。
【0014】
上記鉄又はその合金粉が硫黄分を含むとよい。このように鉄粉が硫黄分を含むことで、鉄粉表面の酸化が促進され、上記重金属の鉄粉への吸着が促進されると考えられる。その結果、上記重金属等の除去性能がさらに向上する。
【0015】
上記鉄又はその合金粉における硫黄分の含有量としては0.6質量%以上5質量%以下が好ましい。上記鉄粉における硫黄分の含有量を上記範囲とすることで、上述の重金属等の除去性能をさらに向上させることができる。また、コストの不必要な増加を防止することができる。
【0016】
上記課題を解決するためになされた別の本発明は、ケイ素化合物を含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理方法であって、鉄又はその合金粉とアルカリ土類金属又はその塩とを含有する浄化処理剤を上記汚染水又は汚染土壌溶出液と接触させる工程を備える浄化処理方法である。
【0017】
当該浄化処理方法は、鉄粉とアルカリ土類金属又はその塩とを含有する浄化処理剤を用いるため、ケイ素化合物を含有する汚染水中又は汚染土壌溶出液中でも、上記重金属イオンと鉄粉とが効率良く反応し、上記重金属等の除去性能が向上する。そのため、当該浄化処理方法は、上記ケイ素化合物を含有する汚染水又は汚染土壌の浄化に好適に用いることができる。
【0018】
当該浄化処理方法は、上記汚染水又は汚染土壌溶出液のpHが3以上7以下となるようpH調整剤を添加する工程をさらに備えるとよい。このように、上記汚染水又は汚染土壌溶出液のpHを上記範囲とすることで、鉄粉の活性を適度なものとすることができる。その結果、上述の重金属イオンと鉄粉との反応効率をより向上させることができる。
【0019】
ここで、「ケイ素化合物」には、ケイ素を含む化合物であって水の存在下でケイ素イオン又はケイ酸イオンを生じ得る化合物、ケイ素イオン及びケイ酸イオンが含まれる。「重金属」とは、25℃における比重が4.5以上の金属種であって、例えばヒ素、セレン、鉛、カドミウム、クロム、水銀等が挙げられる。「重金属又は重金属含有化合物」には、重金属の単体、その化合物及びイオンが含まれる。「アルカリ土類金属又はその塩」には、アルカリ土類金属の単体、その塩及びイオンが含まれる。「硫黄分」には、硫黄単体及びその化合物が含まれる。「硫黄分の含有量」とは、炭素・硫黄分析装置(LECO社)を用いて測定される値である。「汚染土壌溶出液」とは、汚染土壌に雨水等が接触することで汚染土壌中の水溶性成分が溶出した溶液、及び汚染土壌に水を添加し汚染土壌中の水溶性成分を溶出した溶液を指す。この汚染土壌溶出液には、水に溶解しない鉱物等の固形分は含まれないものとする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の浄化処理剤及び浄化処理方法はケイ素化合物を含有する汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を効率良く除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、当該浄化処理剤の実施形態について詳説する。
【0023】
[浄化処理剤]
本発明の浄化処理剤は、ケイ素化合物を含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理剤であって、鉄又はその合金粉とアルカリ土類金属又はその塩とを主に含有する。また、当該浄化処理剤は塩化第一鉄又は塩化第二鉄をさらに含有することが好ましく、発明の効果を妨げない範囲で、溶媒等のその他の成分を含有してもよい。また、当該浄化処理剤の態様としては、例えばアルカリ土類金属イオンを含有する液体に鉄粉が分散したもの、固体のアルカリ土類金属又はその塩と鉄粉とを混合したもの等が挙げられる。
【0024】
<鉄又はその合金粉>
上記鉄又はその合金粉は、その表面に重金属を吸着する。重金属等は水中で重金属イオンとして存在しており、この重金属イオンと鉄粉とを反応させることで重金属イオンが還元され、重金属が鉄粉の表面に析出する。その結果、鉄粉はその表面に重金属を吸着できる。
【0025】
上記鉄粉としては、鉄を主成分とする粉体であれば特に限定されず、工業的に入手可能なあらゆる鉄粉を用いることができる。鉄粉の種類としては、例えばアトマイズ鉄粉、鋳鉄粉、スポンジ鉄粉、これらの鉄粉の合金粉等が挙げられる。また、上記合金が含有する鉄以外の元素としては、例えば炭素、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、コバルト等が挙げられる。ここで「主成分」とは、鉄又はその合金粉を構成する成分のうち質量基準で最も多く含まれる成分(例えば50質量%以上)を指す。
【0026】
鉄粉としては、アトマイズ法により製造されたアトマイズ鉄粉又はアトマイズ合金粉が好ましい。アトマイズ鉄粉は大量生産が可能であるため、当該浄化処理剤を処理施設等における大規模な処理に用いることができる。このアトマイズ合金粉としては、鉄合金をアトマイズした完全合金粉でもよく、鉄粉をアトマイズした後合金粉を付着させた部分合金化粉でもよい。
【0027】
上記鉄粉の平均粒径の上限としては、1000μmが好ましく、500μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。一方、鉄粉の平均粒径の下限としては、5μmが好ましい。上記平均粒径が上記上限を超えると、鉄粉の表面積が小さくなり重金属等の除去速度が低下するおそれがある。逆に、上記平均粒径が上記下限未満の場合、歩留まりが低くなり取り扱い性が低下するおそれがある。ここで「平均粒径」とは、JIS−Z−8801(2006)に規定されるふるいを用いた乾式ふるい分け試験により粒子径分布を求め、この粒子径分布において累積質量が50%となる粒径をいう。
【0028】
上記鉄粉は、硫黄分を含むことが好ましい。硫黄分の存在により鉄粉の重金属等の除去性能が向上する。このような結果を奏する理由としては、例えば以下のように推測することができる。硫黄の作用により鉄粉の表面において鉄のアノード反応が起こり、鉄が酸化され、汚染水又は汚染土壌溶出液中に電子が放出される。この電子により汚染水又は汚染土壌溶出液中に溶出した重金属イオンが還元され、鉄粉の表面に重金属が析出すると考えられる。
【0029】
鉄粉中における硫黄分の含有量の上限としては、5質量%が好ましく、4質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。一方、上記含有量の下限としては、0.6質量%が好ましく、0.7質量%がより好ましく、0.8質量%がさらに好ましい。上記含有量が上記上限を超えると、鉄粉の重金属の吸着効率が低下するおそれがある。また、当該浄化処理剤のコストが不必要に増加するおそれがある。逆に、上記含有量が上記下限未満の場合、上述の硫黄分による鉄の酸化作用が不十分となるおそれがある。
【0030】
<アルカリ土類金属又は塩>
アルカリ土類金属又はその塩は、汚染水又は汚染土壌溶出液中においてイオン化し、ケイ素化合物から生じるケイ素イオン等と反応する。これにより、汚染水又は汚染土壌溶出液中のケイ素イオン等が減少する。
【0031】
上述のアルカリ土類金属イオンとケイ素イオン等との相関関係について
図1に示す。
図1は、ケイ素イオンを含有する水中にカルシウムイオンを添加した場合の、カルシウムイオンの濃度(mg/L)とケイ素イオンの相対濃度(%)とを表すグラフである。この相対濃度は、カルシウムイオンの濃度が20mg/Lである場合のケイ素イオンの濃度を基準(100%)とするものである。
図1に示すように、カルシウムイオンの濃度が増加するにつれて、ケイ素イオンの相対濃度は低下している。この結果から、アルカリ土類金属イオンを添加することにより水中のケイ素イオン等を除去できることが分かる。
【0032】
アルカリ土類金属又はその塩としては、ケイ素化合物由来のケイ素イオン等と反応でき、かつ鉄粉の重金属等との反応効率を低下させないものであれば特に限定されないが、水への溶解性、入手容易性及びコストの観点から、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素カルシウム又は酢酸カルシウムが好ましく、塩化カルシウムがより好ましい。
【0033】
当該浄化処理剤におけるアルカリ土類金属又はその塩の含有量としては、浄化する汚染水又は汚染土壌溶出液中のケイ素化合物の量に応じ適宜変更できる。当該浄化処理剤が液体でアルカリ土類金属又はその塩をアルカリ土類金属イオンとして含有する場合、当該浄化処理剤におけるアルカリ土類金属イオンの濃度の上限としては、5000ppmが好ましく、2500ppmがより好ましい。一方、上記アルカリ土類金属イオンの濃度の下限としては、300ppmが好ましく、500ppmがより好ましい。上記アルカリ土類金属イオンの濃度が上記上限を超えると、イオン濃度の増加に比してケイ素除去能が向上し難くなり、コストが増大するおそれがある。逆に、上記アルカリ土類金属イオンの濃度が上記下限未満の場合、当該浄化処理剤を汚染水又は汚染土壌溶出液中のアルカリ土類金属イオンの濃度が不十分となり、上述のケイ素除去能が低下するおそれがある。
【0034】
また、当該浄化処理剤が固体でアルカリ土類金属又はその塩をアルカリ土類金属単体又はその塩の固体で含有し、汚染水又は汚染土壌溶出液のケイ素イオン濃度が10ppmである場合、汚染水又は汚染土壌溶出液1Lに対するアルカリ土類金属又はその塩の含有量の上限としては、200gが好ましく、160gがより好ましく、140gがさらに好ましい。一方、上記含有量の下限としては、0.04gが好ましく、0.2gがより好ましい。上記含有量が上記上限を超えると、汚染水又は汚染土壌溶出液が過剰にアルカリ性に傾くおそれがある。逆に、上記含有量が上記下限未満の場合、汚染水又は汚染土壌溶出液中のアルカリ土類金属イオンの濃度が不十分となり、上述のケイ素除去能が低下するおそれがある。
【0035】
<塩化第一鉄又は塩化第二鉄>
上記塩化第一鉄又は塩化第二鉄は、当該浄化処理剤の重金属等の除去性能をより向上させる。この理由としては、以下のように推測できる。塩化鉄は汚染水又は汚染土壌溶出液に溶解し、塩素イオンと鉄イオンとが生じる。この鉄イオンにより、汚染水又は汚染土壌溶出液の酸化還元電位が低下し、重金属イオンが還元されやすくなることで、鉄粉表面に重金属が析出しやすくなる。さらに、塩化鉄により汚染水又は汚染土壌溶出液のpHが低下し、鉄粉の表面が腐食し易くなることで、鉄粉から生じる2価の鉄イオンと重金属イオンとの反応が促進されると考えられる。これらの結果、上記重金属等の除去性能がより向上する。
【0036】
当該浄化処理剤における塩化鉄と鉄粉との添加量の比の下限としては、5:95が好ましく、10:90がより好ましい。一方、上記比の上限としては、50:50が好ましく、40:60がより好ましい。上記比が上記上限を超えると、当該浄化処理剤を汚染水又は汚染土壌に添加した際のpHが過度に酸性に傾くおそれがある。逆に、上記比が上記下限未満の場合、上述の塩化鉄による効果が不十分となるおそれがある。
【0037】
また、上記塩化鉄を後述するpH調整剤として用いる場合、塩化鉄の添加量としては、汚染水又は汚染土壌溶出液のpHを3以上7以下とできる量であればよいが、通常、鉄粉100質量部に対して2000質量部以下が好ましく、1500質量部以下がより好ましく、1000質量部以下がさらに好ましい。
【0038】
<汚染水及び汚染土壌>
当該浄化処理剤が浄化する汚染水又は汚染土壌は、ケイ素化合物を含み、重金属又は重金属含有化合物をさらに含む。この汚染水又は汚染土壌はケイ素化合物を含有するため、後述するように鉄粉のみを用いた浄化処理剤では重金属等の除去性能が低下する。
【0039】
(重金属又は重金属化合物)
上記重金属又は重金属化合物は、汚染水又は汚染土壌溶出液中では重金属イオンとして存在し、汚染水又は汚染土壌溶出液中に溶解している。
【0040】
上記重金属イオンとしては、例えばヒ酸イオン(AsO
43−)、セレン酸イオン(SeO
42−)、鉛イオン(Pb
2+)、カドミウムイオン(Cd
2+)、クロムイオン(Cr
3+、Cr
6+)、水銀イオン(Hg
22+、Hg
2+)等が挙げられる。上記重金属化合物としては、例えばヒ酸水素ナトリウム、セレン酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、硝酸塩、硝酸カドミウム、硫化水銀等が挙げられる。
【0041】
当該浄化処理剤は、上記重金属等の中でも特にセレンを含む汚染水又は汚染土壌に対しより高い効果を発揮する。つまり、当該浄化処理剤は、セレンを効率良く除去することができる。
【0042】
(ケイ素化合物)
上記ケイ素化合物は、汚染水又は汚染土壌溶出液中ではケイ素イオン、ケイ酸イオン等のイオンで存在し、汚染水又は汚染土壌溶出液中に溶解している。また、汚染土壌中ではケイ酸、ケイ酸塩等の化合物又は単体のケイ素として存在する。
【0043】
上述のように、ケイ素化合物を含有する汚染水又は汚染土壌では、重金属等の除去性能が低下する。このケイ素化合物及び除去性能の低下の相関関係を
図2に示す。
図2は、セレンを1mg/L含有する汚染水中にケイ素化合物を添加し、その後鉄粉を浸漬し浄化処理を行った際の残留セレン濃度(mg/L)を表すグラフである。
図2に示すように、ケイ素化合物の添加濃度(ppm)が上昇するにつれて残留セレン濃度も向上している。すなわち、ケイ素化合物により鉄粉のセレン除去性能が低下していることが分かる。
【0044】
<利点>
当該浄化処理剤はアルカリ土類金属又はその塩を含有するため、当該浄化処理剤を添加した汚染水又は汚染土壌溶出液中にはアルカリ土類金属イオンが存在する。このアルカリ土類金属イオンがケイ素化合物に由来するケイ素イオン等と反応し、汚染水又は汚染土壌溶出液中からケイ素イオン等を除去することで、ケイ素の鉄粉の表面への析出を抑制する。これにより、鉄粉の反応性の低下を防止でき、鉄粉の表面に重金属が効率良く析出し吸着されるため、当該浄化処理剤は重金属等の除去性能に優れると考えられる。従って、当該浄化処理剤は、上記ケイ素化合物を含有する汚染水又は汚染土壌の浄化に好適に用いることができる。
【0045】
[浄化処理方法]
次に、上述の浄化処理剤を用い、本発明の浄化処理方法の実施形態について詳説する。
【0046】
当該浄化処理方法は、ケイ素化合物を含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理方法であって、鉄粉とアルカリ土類金属又はその塩とを含有する当該浄化処理剤を上記汚染水又は汚染土壌溶出液と接触させる工程(以下、「接触工程」ともいう)を主に備える。また、当該浄化処理方法は、上記汚染水又は汚染土壌溶出液のpHが3以上7以下となるようpH調整剤を添加する工程(以下、「pH調節工程」ともいう)をさらに備えることが好ましい。
【0047】
<接触工程>
本工程では、当該浄化処理剤とケイ素化合物を含む汚染水又は汚染土壌溶出液とを接触させる。この接触方法には特に限定は無く、例えば当該浄化処理剤を適当な容器に充填し、この容器中に汚染水又は汚染土壌溶出液を連続的に通過させる方法、当該浄化処理剤を汚染水又は汚染土壌溶出液に添加し撹拌等する方法等が挙げられる。
【0048】
上記の当該浄化処理剤を汚染水又は汚染土壌溶出液に添加する場合の当該浄化処理剤の添加量の上限としては、汚染水又は汚染土壌溶出液中の重金属等1mgに対する鉄粉の質量で3gが好ましく、2gがより好ましい。一方、上記添加量の下限としては、汚染水又は汚染土壌溶出液中の重金属等1mgに対する鉄粉の質量で0.3gが好ましく、0.5gがより好ましい。当該浄化処理剤の添加量が上記上限を超えると、鉄粉の量の増加に比して重金属等の除去効率が向上し難くなるおそれがある。逆に、上記添加量が上記下限未満の場合、重金属等が十分に除去されないおそれがある。
【0049】
当該浄化処理剤の添加後の汚染水又は汚染土壌溶出液中の、ケイ素イオン10ppmに対するアルカリ土類金属イオンの濃度の上限としては、2000ppmが好ましく、1800ppmがより好ましく、1500ppmがさらに好ましい。一方、上記濃度の下限としては、0.5ppmが好ましく、0.7ppmがより好ましく、0.8ppmがさらに好ましい。上記濃度が上記上限を超えると、汚染水又は汚染土壌溶出液のpHが過度にアルカリ性に傾くおそれがある。また、当該浄化方法のコストが不要に増加するおそれがある。逆に、上記濃度が上記下限未満の場合、上述のケイ素の除去が不十分となるおそれがある。
【0050】
上記の当該浄化処理剤を汚染水又は汚染土壌溶出液に添加する場合の攪拌時間の上限としては、72時間が好ましく、48時間がより好ましく、36時間がさらに好ましい。一方、上記攪拌時間の下限としては、1分が好ましく、1時間がより好ましく、10時間がさらに好ましく、15時間が特に好ましい。上記攪拌時間が上記上限を超えると、攪拌時間に比して重金属等の除去量が向上し難くなり重金属等の除去効率が低下するおそれがある。逆に、上記攪拌時間が上記下限未満の場合、重金属等が十分に除去できないおそれがある。
【0051】
上記汚染土壌溶出液の調製方法としては、特に限定されず、例えば汚染土壌を水等の溶媒と混合する方法などが挙げられる。この溶媒としては、重金属等及びアルカリ土類金属又はその塩を溶解できるものであれば限定されないが、水が好ましい。溶媒が水である場合、汚染土壌100質量部に対する水の混合量の上限としては、1500質量部が好ましく、1200質量部がより好ましい。一方、上記混合量の下限としては、800質量部が好ましく、750質量部がより好ましく、500質量部がさらに好ましい。上記混合量が上記上限を超えると、鉄粉と重金属イオンとの反応が起こり難くなるおそれがある。逆に、上記混合量が上記下限未満の場合、汚染土壌中の重金属等が十分にイオン化しないおそれがある。
【0052】
<pH調整工程>
本工程では、汚染水又は汚染土壌溶出液のpHが3以上7以下となるようpH調整剤を添加する。当該浄化処理剤はアルカリ土類金属又はその塩を含有するため、汚染水又は汚染土壌溶出液に当該浄化処理剤を接触させることで、汚染水又は汚染土壌溶出液がアルカリ性に傾く場合がある。この場合、pH調整剤を添加し汚染水又は汚染土壌溶出液のpHを上記範囲内とすることで、当該浄化処理剤が含有する鉄粉の重金属の吸着効率の低下を防止できる。
【0053】
(pH調整剤)
pH調整剤としては、汚染水又は汚染土壌溶出液のpHを上記範囲内とでき、当該浄化処理剤の働きを阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、蟻酸、酢酸等の有機酸、塩化鉄等の無機塩化物、カルボン酸塩化物等の有機塩化物、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機アルカリなどが挙げられる。これらの中で、無機酸、無機塩化物又は無機アルカリが好ましく、塩酸、塩化鉄又は水酸化ナトリウムがより好ましい。また、pH調整剤の形状としては、固体、液体等を適宜選択し使用できる。
【0054】
pH調整工程は、上記接触工程と同時に行ってもよく、汚染水、汚染土壌溶出液又は当該浄化処理剤に予めpH調整剤を添加することで接触工程の前に行ってもよいが、接触工程と同時に行うことが好ましい。このように接触工程と同時にpH調整工程を行うことで、汚染水又は汚染土壌溶出液をより確実に所望のpHとすることができる。また、当該浄化処理剤が塩化鉄を含有する場合、この塩化鉄はpH調整剤としても作用するため、接触工程とpH調整工程とを同時に行える。
【0055】
<利点>
当該浄化処理方法は、鉄粉とアルカリ土類金属又はその塩とを含有する浄化処理剤を用いているため、ケイ素化合物を含有する汚染水中又は汚染土壌溶出液中でも、上記重金属イオンと鉄粉とが効率良く反応し、上記重金属等の除去性能が向上する。そのため、当該浄化処理方法は、上記ケイ素化合物を含有する汚染水又は汚染土壌の浄化に好適に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
<汚染水の調製及び処理>
内容積500mLのポリエチレン製容器に、イオン交換水で1mg/Lに調整したセレン酸ナトリウム溶液247.25mL、Si標準液(1000ppm)2.5mL及びCa標準液(1000ppm)0.25mLを投入し混合液とした。この混合液のpHを測定したところ、アルカリ性であったため、pHが7以下となるように濃度が10質量%の塩酸を添加し混合液を酸性とした。次いで混合液に鉄粉0.25gを添加し、浄化処理剤と汚染水との混合物を得た。この混合物における固体/液体比(g/mL)は1:1000であった。ここで「固体/液体比とは、上記浄化処理剤と汚染水との混合物における全固体量(g)に対する全液体量(mL)の比である。その後、水平振とう機を用い、温度25℃、回転数140rpm、振とう幅4cmの条件下で、上記浄化処理剤と汚染水との混合物を24時間振とうし、攪拌した。振とう後、混合液を孔径0.45μmのメンブレンフィルタで吸引ろ過し、処理後汚染水を得た。
【0058】
[実施例2〜6、比較例1]
各成分の含有量を表1に記載の通りとしたほかは、実施例1と同様にして処理後汚染水の調製を行った。なお、実施例2の混合液のpHはアルカリ性であったため、実施例1と同様に、pHが7以下となるように濃度が10質量%の塩酸を添加し、混合液を酸性とした。実施例3〜6及び比較例1の混合液のpHは酸性であったため、塩酸を添加せずに攪拌を行った。
【0059】
上記実施例1〜6及び比較例1において、鉄又はその合金粉として、アトマイズ鉄粉(神戸製鋼所の「エコメル
TM」53NJを用いた。また、アルカリ土類金属又はその塩として、1000ppmCa標準液(CaCl
2で調整)(和光純薬社)を用いた。さらに、塩化第一鉄又は塩化第二鉄として、塩化第一鉄(FeCl
2・4H
2O(和光純薬社)を用いた。重金属又は重金属含有化合物として、セレン酸ナトリウム(Se(VI))(和光純薬社)を用いた。また、ケイ素化合物として、1000ppmSi標準液(和光純薬社)を用いた。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1〜6及び比較例1における処理後の汚染水について、溶液中の残留セレン濃度をICP発光分光分析装置を用い測定した。測定結果を表1及び
図3に示す。
【0062】
表1及び
図3に示されるように、アルカリ土類金属又はその塩を含有する実施例では、残存するセレンの濃度が大きく低下していた。特に、塩酸を添加してpHを調整した実施例1及び2では塩酸を添加していない実施例3よりもセレンの濃度がより低下していた。また、塩化鉄を含有する実施例5及び6もセレンの濃度がより低下していた。一方、アルカリ土類金属又はその塩を含有していない比較例1では、セレンの濃度が十分に低下しなかった。
【0063】
[実施例7〜13及び比較例2、3]
各成分の含有量を表2に記載の通りとしたほかは、実施例1と同様にして処理後汚染水の調製を行った。なお、実施例7〜13では、実施例2の混合液のpHはアルカリ性であったため、pH調整剤として塩化第一鉄を添加した。これらの実施例及び比較例における混合液の攪拌前及び攪拌後のpHを表2に示す。
【0064】
上記実施例7〜13及び比較例2、3において、アルカリ土類金属又はその塩として、塩化カルシウム(CaCl
2・2H
2O)(和光純薬社)、塩化マグネシウム(MgCl
2・2H
2O)(和光純薬社)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H
2PO
4)2H
2O)(和光純薬社)又は酢酸カルシウム((CH
3COO)
2Ca・H
2O)(和光純薬社)を用いた。pH調整剤として、塩化第一鉄(FeCl
2・4H
2O(和光純薬社))を用いた。また、その他の添加物として、チオ硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
3・5H
2O)(和光純薬社)又は1000ppmAl標準液(IIIB族塩、硝酸アルミニウムで調整)(和光純薬社)を用いた。なお、鉄又はその合金粉、重金属又は重金属含有化合物、並びにケイ素化合物は上記実施例1〜6及び比較例1と同じものを用いた。
【0065】
実施例7〜13及び比較例2、3における処理後の汚染水について、溶液中の残留セレン濃度を実施例1等と同様に測定した。測定結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示されるように、アルカリ土類金属又はその塩を含有する実施例では、残存するセレンの濃度が大きく低下していた。特に、アルカリ土類金属塩としてリン酸二水素カルシウムを用いた実施例12では、アルカリ土類金属又はその塩の濃度がより高い他の実施例と同等のセレン除去性能が示された。
【0068】
一方、比較例2及び3では、セレンの除去量が低下しており、特にチオ硫酸ナトリウムを添加した比較例2では、セレンがほとんど除去されていなかった。
【0069】
以上説明したように、本発明の浄化処理剤及び浄化処理方法はケイ素化合物を含有する汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を効率良く除去できる。