(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記力伝達手段は、前記第1動滑車に略対向するように前記セグメントリングの前記第1側面又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)と、前記第2動滑車に略対向するように前記セグメントリングの前記第2側面又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)と、を有し、
前記ガイド手段は、前記固定滑車と離間する位置にて前記突設部材に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)、を有し、
前記索条部材は、前記各動滑車及び前記各固定滑車に巻き掛けられると共に両端が前記ガイド手段の側に固定され、
前記牽引手段は前記索条部材の両方向に牽引力を作用せしめるように構成されて、前記第1対向動滑車及び前記第2対向動滑車には前記他の周方向に力を作用させると共に前記対向固定滑車は前記一の周方向の反力を受けるように構成された、
ことを特徴とする請求項3に記載のシールド掘進機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来装置の場合、セグメント掴取装置101は既設トンネルAの中心部分(トンネル軸を含む部分)に配置されているためにその部分に作業用スペースを確保できないという問題があった。
【0006】
また、従来は、洞道(つまり、通信ケーブルやガス管や送電線等の種々のラインが敷設されているトンネル)のセグメントを更新する場合は、該ラインの使用を止めることが困難であることから、該ラインを一時的に移設して前記シールド掘進機を設置するためのスペースをトンネル内に確保する必要があり、その更新工事に莫大な日数やコストが掛かってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解消することのできるシールド掘進機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、
図1及び
図2に例示するものであって、複数のセグメントリング(A
1,A
2,…)が接続されてなる既設トンネル(A)を解体するシールド掘進機(1)において、
前記セグメントリング(A
1)の内周面(A
1a)の2つの周方向(
図1の符号C
1,C
2参照)の内の一方の周方向(C
1)を“一の周方向”とし、該一の周方向(C
1)とは反対の周方向(C
2)を“他の周方向”とした場合に、
可撓性に富む索条部材(10)と、
前記セグメントリング(A
1)の内周面(A
1a)の前記一の周方向(C
1)に沿うように前記索条部材(10)を移動自在にガイドするガイド手段(11)と、
該ガイド手段(11)を支持する掘進機本体(
図2の符号12参照)と、
前記索条部材(10)を少なくとも前記一の周方向(C
1)に牽引する牽引手段(13)と、
前記索条部材(10)と前記セグメントリング(A
1)との間に介装されることにより前記牽引手段(13)の牽引力を該セグメントリング(A
1)に伝達する力伝達手段(14)と、
を備え、
前記索条部材(10)を前記牽引手段(13)によって牽引することに基づき、該セグメントリング(A
1)を少なくとも前記一の周方向(C
1)に回転せしめることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、
図3に例示するものであって、請求項1に係る発明において、前記力伝達手段(14)が、前記セグメントリング(A
1)を挟んで略対向するように該セグメントリング(A
1)の両方の側面(A
1b,A
1c)又は該側面(A
1b,A
1c)の近傍にそれぞれ取り付けられてなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、
図3に例示するものであって、請求項1又は2に係る発明において、前記セグメントリング(A
1)の2つの側面の内の一方の側面(A
1b)を“第1側面”とし、他方の側面(A
1c)を“第2側面”とした場合に、
前記力伝達手段(14)は、前記セグメントリング(A
1)の前記第1側面(A
1b)又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第1動滑車”とする)(141)と、前記セグメントリング(A
1)の前記第2側面(A
1c)又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第2動滑車”とする)(142)と、を有し、
前記ガイド手段(11)は、前記掘進機本体(12)からトンネル軸方向(B)に突設された突設部材(110)と、該突設部材(110)に回転自在に支持された滑車(以下、“固定滑車”とする)(112,113)と、を有し、
前記第1動滑車(141)及び前記第2動滑車(142)には前記一の周方向(C
1)に力を作用させると共に前記固定滑車(112,113)は前記他の周方向(C
2)の反力を受けるように、前記索条部材(10)を前記第1動滑車(141)、前記固定滑車(112,113)及び前記第2動滑車(142)に巻き掛けてなることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、
図3に例示するものであって、請求項3に係る発明において、前記力伝達手段(14)が、前記第1動滑車(141)に略対向するように前記セグメントリング(A
1)の前記第1側面(A
1b)又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)(143)と、前記第2動滑車(142)に略対向するように前記セグメントリング(A
1)の前記第2側面(A
1c)又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)(144)と、を有し、
前記ガイド手段(11)は、前記固定滑車(112,113)と離間する位置にて前記突設部材(110)に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)(114,115)、を有し、
前記索条部材(10)は、前記各動滑車(141,…)及び前記各固定滑車(112,…)に巻き掛けられると共に両端(10a,10b)が前記ガイド手段(11)の側に固定され、
前記牽引手段(13)は前記索条部材(10)の両方向に牽引力を作用せしめるように構成されて、前記第1対向動滑車(143)及び前記第2対向動滑車(144)には前記他の周方向(C
2)に力を作用させると共に前記対向固定滑車(114,115)は前記一の周方向(C
1)の反力を受けるように構成されたことを特徴とする。
【0012】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、前記セグメントリングを少なくとも前記一の周方向に回転させることができる。したがって、該セグメントリングを順次回転させながら電動カッター等で切断したりすることで、該セグメントリングの解体を行うことができる。また、本発明によれば、前記索条部材や前記ガイド手段は前記セグメントリングの内周面に沿うように該内周面に近接した位置に配置されているため、既設トンネルの中心部分(つまり、トンネル軸に沿った部分)にスペースを設けることができ、そのスペースを作業用等のスペースとして利用することができる。さらに、中心部分にライン(つまり、通信ケーブルやガス管や送電線等のライン)が敷設されている洞道(既設トンネル)であっても該ラインとの干渉を避けるようにして前記索条部材や前記ガイド手段を配置することができ、トンネル内のラインは移設せずにそのままにしておいてトンネルのセグメントだけを解体することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、前記牽引手段が発生させた力(牽引力)は前記索条部材及び前記力伝達部材を介してセグメントリングの両側面(該セグメントリングを挟んで略対向する部分)に作用することとなり、該セグメントリングのトンネル軸方向(或いはその逆方向)への傾動が防止される。
【0015】
請求項3及び4に係る発明によれば、動滑車の使用により牽引力をアップさせることができると共に、前記牽引手段に小出力で小型のものを使用することができて占有スペースを小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1乃至
図7に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明に係るシールド掘進機は、複数のセグメントリング(円弧状のセグメントピースが環状に連結されて構成されたセグメントリング)がトンネル軸方向に接続されてなる既設トンネルを埋め戻したり更新したりする際に使用される装置であって、該既設トンネルを解体する機能を有する装置である。
図1に例示するように、前記セグメントリングA
1の内周面A
1aの2つの周方向C
1,C
2の内の一方の周方向C
1を“一の周方向”とし、該一の周方向C
1とは反対の周方向C
2を“他の周方向”とした場合に、本発明に係るシールド掘進機は、
図1及び
図2に符号1で例示するように、
・ 可撓性に富む索条部材(例えば、チェーンやワイヤーなど)10と、
・ 前記セグメントリングA
1の内周面A
1aの前記一の周方向C
1に沿うように(つまり、前記セグメントリングA
1の内周面A
1aに近接した状態で、該内周面A
1aの前記一の周方向C
1に沿って延設されるように)前記索条部材10を移動自在にガイドするガイド手段11と、
・ 該ガイド手段11を支持する掘進機本体12と、
・ 前記索条部材10を少なくとも前記一の周方向C
1に牽引する牽引手段(ウインチ)13と、
・ 前記索条部材10と前記セグメントリングA
1との間に介装されることにより前記牽引手段13の牽引力を該セグメントリングA
1に伝達する力伝達手段14と、
により構成されたセグメント解体装置Dを備えていて、前記索条部材10を前記牽引手段13によって牽引することに基づき、該セグメントリングA
1を少なくとも前記一の周方向C
1に回転せしめるように構成されている。この場合、C形鋼のような適当な剛性カバー(不図示)で前記索条部材10を覆うようにしておいて、作業者が該索条部材10に触れにくいようにしておくと良い。また、本発明に係るシールド掘進機1はセグメントリングA
1を1つずつ回転させるように構成されていることが好ましいが、複数のセグメントリングを同時に回転させる構成のものを本発明の範囲から除外するものでは無い。さらに、本発明に係るシールド掘進機1により回転させるセグメントリングA
1の下面にはローラーコンベヤE,…等の公知の転動部材を設けておいて、該セグメントリングA
1が円滑に周方向C
1,C
2に回転されるようにしておくと良い。そして、そのローラーコンベヤEの発進立坑側(
図2の右側)及び到達立坑側(
図2の左側)には、前記セグメントリングA
1の両方又は一方の側面(トンネル軸方向Bに直交する面の意である)A
1b,A
1cに接触し得る部材(ガイド部材)G,Gを配置しておいて、該セグメントリングA
1が回転中にトンネル軸方向B(又はその逆方向)に移動してしまわないようにしておくと良い。これらのガイド部材G,GはセグメントリングA
1の下側に配置されていて、該セグメントリングA
1がローラーコンベヤE上に載置された状態でのみ該セグメントリングA
1の位置規制を行うようになっているので、該セグメントリングA
1を既設トンネルAから切り離してローラーコンベヤEに載置するまでの移動を阻害することはない。
【0019】
本発明によれば、前記セグメントリングA
1を少なくとも前記一の周方向C
1に回転させることができる。したがって、該セグメントリングA
1を順次回転させながら不図示の電動カッター(いわゆる電気丸のこと呼ばれるカッターや、チェーンソーなど)や他の破砕装置でセグメントリングA
1を順次切断したり、セグメントピースを接合しているボルト(不図示)を外したりすることで、
図4(a) →(b) →(c) →
図5(a) →(b) →(c) →
図6(a) →(b) →(c) に示すように、該セグメントリングA
1の解体を行うことができる。また、本発明によれば、前記索条部材10や前記ガイド手段11は前記セグメントリングA
1の内周面A
1aに沿うように該内周面A
1aに近接した位置に配置されていると共に(滑車等を用いて索条部材10の経路を変更することで)前記牽引手段13の設置位置は比較的自由に変更することができるため、前記既設トンネルAの中心部分(つまり、トンネル軸Hに沿った部分)にスペースを設けることができ、そのスペースを作業用等のスペースとして利用することができる。さらに、中心部分にライン(つまり、通信ケーブルやガス管や送電線等のライン)が敷設されている洞道(既設トンネル)であっても該ラインとの干渉を避けるようにして前記索条部材10や前記ガイド手段11を配置することができ、トンネル内のラインは移設せずにそのままにしておいてトンネルのセグメントだけを解体することができる。またさらに、前記セグメントリングA
1の内周面A
1aに沿う位置には前記ガイド手段11が配置されているので、解体中のセグメントリングA
1が前記既設トンネルAの中心部分(つまり、トンネル軸Hに沿った部分)の側へ傾動するのを防止することが可能となる。
【0020】
なお、
図1に示す力伝達手段14は、前記セグメントリングA
1に回転自在に支持されてなる滑車であるが、前記牽引手段13の牽引力を前記セグメントリングA
1に伝えるものであれば滑車以外のものであっても良く、ボルトボックス(
図3に符号A
1dで例示するものであって、セグメントリングどうしを接合するために使用されていたボルトボックス)に装着されるボルト(不図示)であっても、該ボルトボックスA
1dを利用せずにセグメントリングA
1自体に打ち込まれるアンカーボルトであっても、ボルト以外の公知の何らかの部品であっても良い。
【0021】
また、
図1に示す前記力伝達手段14は前記セグメントリングA
1の側面に取り付けられているが、該セグメントリングA
1の内周面A
1aに1つ以上取り付けるようにしても良い。さらに、前記力伝達手段を前記セグメントリングA
1の側面に取り付ける場合には、前記セグメントリングA
1を挟んで略対向するように該セグメントリングA
1の両方の側面A
1b,A
1c又は該側面A
1b,A
1cの近傍にそれぞれ取り付けておくと良い。つまり、前記セグメントリングA
1の2つの側面A
1b,A
1cの内の一方の側面A
1bを“第1側面”とし、他方の側面A
1cを“第2側面”とした場合に、前記力伝達手段14を、
・ 前記セグメントリングA
1の前記第1側面A
1b又はその近傍と、
・ 前記セグメントリングA
1の前記第2側面A
1c又はその近傍と、
にそれぞれ取り付けておくと良い。そのようにした場合には、前記牽引手段13が発生させた力(牽引力)は前記索条部材10及び前記力伝達部材14を介してセグメントリングA
1の両側面A
1b,A
1c(該セグメントリングA
1を挟んで略対向する部分)に作用することとなり、該セグメントリングA
1のトンネル軸方向B(或いはその逆方向)への傾動が防止される。
【0022】
なお、
図3に示す例では、前記力伝達手段14は、ボルトボックスA
1d(つまり、セグメントリングどうしを連結するために使用されていたボルトボックスA
1d)に取り付けられている。このようにすることにより、該力伝達手段14を確実かつ簡便にセグメントリングA
1に取り付けることができる。
【0023】
一方、上述のガイド手段11は、
・
図2及び
図3に明示するように、前記セグメントリングA
1の内周面A
1aに沿うように(該内周面A
1aに近接した位置に)前記掘進機本体12からトンネル軸方向Bに突設された突設部材110と、
・
図3に明示するように、該突設部材110に支持されて前記セグメントリングA
1の内周面A
1aの前記一の周方向C
1に沿うように前記索条部材10を移動自在にガイドするガイド部111と、
により構成すると良い。なお、
図3に示す突設部材110は、トンネル軸方向Bに延設された複数本の円柱状の部材であるが、もちろんこれに限られるものではなく、どのような形状(例えば、角柱状や円筒状や角筒状や)であっても良く、或いは、前記セグメントリングA
1の内径より少し小さい外径を持つ1つの筒状部材であっても良い。また、上述のガイド部111としては、
・ 前記索条部材10をガイドするように前記突設部材110に回転自在に支持された滑車や、
・ 該索条部材10を摺動自在に支持する溝部
などを挙げることができる。また、前記牽引手段13はブレーキ付きのものにしておいて、セグメントリングの切断をカッターで行う場合に該ブレーキを働かせて、セグメントリングによる切断刃の挟み込み及びセグメント自重による落下回動を防止するようにすると良い。
【0024】
ところで、
図3に詳示するように、前記力伝達手段14を、前記セグメントリングA
1の前記第1側面A
1b又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第1動滑車”とする)141と、前記セグメントリングA
1の前記第2側面A
1c又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第2動滑車”とする)142と、により構成しておき、前記ガイド手段11には、前記突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“固定滑車”とする)112,113を設けておいて、前記第1動滑車141及び前記第2動滑車142には前記一の周方向C
1に力を作用させると共に前記固定滑車112,113は前記他の周方向C
2の反力を受けるように、前記索条部材10を前記第1動滑車141、前記固定滑車112,113及び前記第2動滑車142に巻き掛けておくと良い。そのようにした場合には、動滑車141,142の使用により牽引力をアップさせることができると共に、前記牽引手段13に小出力で小型のものを使用することができて占有スペースを小さくすることができる。なお、
図3に示す固定滑車112,113は、
・ 前記第1動滑車141に略対向するように前記セグメントリングA
1の前記第1側面A
1b又はその近傍にて回転自在に支持される第1固定滑車112と、
・ 該第1固定滑車112及び前記第2動滑車142に略対向するように前記セグメントリングA
1の前記第2側面A
1c又はその近傍にて回転自在に支持される第2固定滑車113と、
であるが、前記他の周方向C
2の反力を受けるように配置されるものであれば配置位置や個数をどのように設定しても良い。
【0025】
さらに、前記力伝達手段14は、前記第1動滑車141に略対向するように前記セグメントリングA
1の前記第1側面A
1b又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)143と、前記第2動滑車142に略対向するように前記セグメントリングA
1の前記第2側面A
1c又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)144と、を有するようにし、前記ガイド手段11は、前記固定滑車112,113と離間する位置にて前記突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)114,115を有するようにして、前記索条部材10は、前記各動滑車141,…,144及び前記各固定滑車112,…,115に適切な順序で巻き掛けられると共に両端(
図3の符号10a,10b参照)が前記ガイド手段11の側に固定され、前記牽引手段13は前記索条部材10の両方向に牽引力を作用せしめるように構成されて、前記第1対向動滑車143及び前記第2対向動滑車144には前記他の周方向C
2に力を作用させると共に前記対向固定滑車114,115は前記一の周方向C
1の反力を受けるように構成しておくと良い。そのようにした場合には、前記セグメントリングA
1を前記一の周方向C
1だけでなく前記他の周方向C
2にも回転させることが可能となる。前記セグメント解体装置Dによって前記セグメントリングA
1を一の周方向C
1にしか回転させられない場合には、
図4(a) →(b) →(c) →
図5(a) →(b) →(c) →
図6(a) →(b) に示すように該セグメントリングA
1を回転させながら解体すると、前記力伝達手段14は、
図6(c) に示す位置(つまり、前記一の周方向C
1の回転終点端)に到達することとなる。そして、次のセグメントリングA
2を回転させるためには、該力伝達手段14を元の位置(つまり、
図4(a) に示す位置であって、前記一の周方向C
1の回転始点端)にまで作業者が手動で戻さなければならないが、その際に前記索条部材10が前記ガイド部111や滑車141,…等から外れてしまうおそれがある。しかし、セグメントリングを上述のように前記一の周方向C
1だけでなく前記他の周方向C
2にも回転させることができるようにしておくと、次のセグメントリングA
2は逆方向(前記他の周方向C
2)に回転させれば良いので、前記力伝達手段14を元の位置にまで戻す必要はなく、効率的に解体作業を進めることができる。また、セグメントリングの切断をカッターで行う場合に前記索条部材10を逆方向に少し回転させて該セグメントリングを持ち上げることも可能となり、セグメントリングによる切断刃の挟み込みを防止することも可能となる。ところで、上述の牽引手段13としては、
・ いわゆるエンドレスウインチと呼ばれるような往復牽引型のものを1つだけ用いても、
・ 一方向牽引型のウインチを2つ用いて往復牽引できるように構成しても、
どちらでも良い。
【0026】
次に、前記シールド掘進機1を用いて前記セグメントリングA
1を解体する既設トンネル解体方法について説明する。
【0027】
複数のセグメントリングA
1,…が接続されてなる既設トンネルAの解体方法は、
図7等に例示するものであって、少なくとも以下の工程を備えている。すなわち、
・ 発進立坑及び到達立坑を構築する工程(立坑構築工程)S1
・ 公知のカッターヘッド(
図2の符号2参照)などを使って既設トンネルAの外周(周囲)の地山(
図2の符号J参照)を掘削する工程(地山掘削工程)S2
・ 発進立坑側の少なくとも1つのセグメントリングA
1を前記既設トンネルAから切り離す工程(セグメントリング切り離し工程)S3
・ 該切り離したセグメントリングA
1を移動装置(
図2の符号4参照。例えば、油圧ジャッキ)により発進立坑側に所定距離(例えば、400mm程度)だけ移動させて該セグメントリングA
1の到達立坑側にスペース(
図2の符号K
1参照)を設ける工程(セグメントリング移動工程)S4
・ 該移動が終了したセグメントリングA
1の位置を仮固定装置(
図2の符号3参照)によって仮固定(装置移動工程中は、発進立坑側に移動しないように該セグメントリングA
1を固定するという意味)した後に、前記移動装置4を発進立坑側に所定距離だけ移動させて該セグメントリングA
1の発進立坑側にスペース(
図2の符号K
2参照)を設ける工程(装置移動工程)S5
・ 前記セグメントリング移動工程S4及び前記装置移動工程S5によって形成された到達立坑側及び発進立坑側のスペースK
1,K
2を利用して前記セグメントリングA
1の切断を行う工程(第1切断工程:
図4(a) 参照)S6
・ 前記セグメントリングA
1の内周面A
1aの前記一の周方向C
1に沿うようにガイド手段11を設置すると共に、該一の周方向C
1に移動自在となるように索条部材10を該ガイド手段11にガイドさせる工程(索条部材設置工程)S7
・ 力伝達手段14を介して前記索条部材10を前記セグメントリングA
1に係止させる工程(索条部材係止工程)S8
・ 牽引手段13により前記索条部材10を介して前記力伝達手段14を牽引することにより前記セグメントリングA
1を所定角度だけ少なくとも前記一の周方向C
1に回転させる工程(セグメントリング回転工程)S9
・ 前記セグメントリング移動工程S4及び前記装置移動工程S5によって形成された到達立坑側及び発進立坑側のスペースK
1,K
2を利用して前記セグメントリングA
1の切断を行う工程(第2切断工程)S10
・ 該第2切断工程S10により切断されたセグメント片(つまり、ボルトによる接合が解除されたセグメントピースや、カッターや破砕装置で切断等されたセグメントの欠片)を他の場所までウインチ等によって搬出する工程(セグメント片搬出工程)S11
【0028】
そして、前記セグメントリング回転工程S9→前記第2切断工程S10→前記セグメント片搬出工程S11を順次実施することにより、前記セグメントリングA
1の解体を行うようになっている。
【0029】
なお、前記セグメントリング切り離し工程S4における前記セグメントリングA
1の切り離しは、
・ セグメントリングどうしを接続しているボルトを回して抜き取ることにより行っても、或いは、
・ 何らかの工具で該ボルトを切断することに行っても、
どちらでも良い。また、
図2に示す仮固定装置3は、シールド掘進機本体12の側から到達立坑側に突設された棒状の部材であって、該棒状の部材を前記セグメントリングA
1の側面A
1cに押し当てることにより該セグメントリングA
1の発進立坑側への移動を規制するようになっているが、もちろんこれに限られるものではない。例えば、既設トンネルAと前記セグメントリングA
1とを何らかの部材(例えば、棒状の部材)で接続することで、セグメントリングA
1の発進立坑側への移動を規制するようにしても良い。さらに、該装置移動工程S5における前記移動装置4の移動は油圧ジャッキ等により行うようにすると良い。またさらに、前記第1切断工程S6及び前記第2切断工程S10における前記セグメントリングA
1の切断は、
・ 電動カッター(いわゆる電気丸のこと呼ばれるカッターや、チェーンソーなど)や他の破砕装置によって行うようにしても、
・ セグメントピースどうしを接合しているボルトの取り外し(回して抜き取ること、及び切断することのいずれか)によって行うようにしても、
どちらでも良い。また、
図4乃至6に示す例では、前記第1切断工程S6及び前記第2切断工程S10における前記セグメントリングA
1の切断は、一番下方の部分で行っているが、もちろんこれに限られるものではなく、他の個所で行うようにしても良い。さらに、前記セグメント解体装置Dによる最後のセグメントリング回転工程S9が終了した時点で、前記力伝達手段14を前記セグメントリングA
1(正確には、ほとんどの部分が除去され搬出された後のセグメント片)から取り外す工程(解除工程)S12を実施すると良い。そして、次のセグメントリングA
2については、上記セグメントリング切り離し工程S3〜前記セグメント片搬出工程S11を同様に実施すると良い。なお、前記第1切断工程S6と前記索条部材設置工程S7と前記索条部材係止工程S8とは、必ずしもその順序で実施する必要は無く、どのような順序で実施するようにしても良い。
【0030】
ところで、前記索条部材係止工程S8を、前記セグメントリングA
1を挟んで略対向するように該セグメントリングA
1の両方の側面A
1b,A
1c又は該側面A
1b,A
1cの近傍に前記力伝達手段14をそれぞれ取り付ける工程とすると良い。そのようにした場合には、前記牽引手段13が発生させた力(牽引力)は前記索条部材10及び前記力伝達部材14を介してセグメントリングA
1の両側面A
1b,A
1c(該セグメントリングA
1を挟んで略対向する部分)に作用することとなり、該セグメントリングA
1のトンネル軸方向B(或いはその逆方向)への傾動が防止される。
【0031】
また、前記ガイド手段11が、前記掘進機本体12からトンネル軸方向Bに突設された突設部材110と、該突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“固定滑車”とする)112,113と、を有するようにし、前記索条部材係止工程S8では、
・ 前記セグメントリングA
1の前記第1側面A
1b又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第1動滑車”とする)141を回転自在に支持させ、
・ 前記セグメントリングA
1の前記第2側面A
1c又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第2動滑車”とする)142を回転自在に支持させ、
・ 前記第1動滑車141及び前記第2動滑車142には前記一の周方向C
1に力を作用させると共に前記固定滑車112,113は前記他の周方向C
2の反力を受けるように、前記索条部材10を前記第1動滑車141、前記固定滑車112,113及び前記第2動滑車142に巻き掛ける、
ようにすると良い。そのようにした場合には、動滑車141,142の使用により牽引力をアップさせることができると共に、前記牽引手段13に小出力で小型のものを使用することができて占有スペースを小さくすることができる。
【0032】
さらに、前記ガイド手段11が、前記固定滑車112,113と離間する位置にて前記突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)114,115、を有するようにし、前記索条部材係止工程S8では、
・ 前記第1動滑車141に略対向するように前記セグメントリングA
1の前記第1側面A
1b又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)143を回転自在に支持させ、
・ 前記第2動滑車142に略対向するように前記セグメントリングA
1の前記第2側面A
1c又はその近傍にて滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)144を回転自在に支持させ、
・ 前記索条部材10の両端(
図3の符号10a,10b参照)を前記ガイド手段11の側に固定し、
・ 前記索条部材10は、前記各動滑車141,…,144及び前記各固定滑車112,…,115に適切な順序で巻き掛ける、
ようにし、前記セグメントリング回転工程S9では、前記牽引手段13により前記索条部材10を介して前記力伝達手段14を前記一の周方向C
1又は前記他の周方向C
2に牽引することにより前記セグメントリングA
1を所定角度だけ前記一の周方向C
1又は前記他の周方向C
2に回転させるようにすると良い。その場合、一のセグメントリングA
1については前記セグメントリング回転工程S9にて前記一の周方向C
1に回転させながら前記第2切断工程S10による切断を行い、該一のセグメントリングA
1に隣接する他のセグメントリングA
2については前記セグメントリング回転工程S9にて前記他の周方向C
2に回転させながら前記第2切断工程S10による切断を行うようにすると良い。そのようにした場合には、前記エレクタ装置Dによって前記セグメントリングA
1を一の周方向C
1にしか回転させられない場合には、
図4(a) →(b) →(c) →
図5(a) →(b) →(c) →
図6(a) →(b) に示すように該セグメントリングA
1を回転させながら解体すると、前記力伝達手段14は、
図6(c) に示す位置(つまり、前記一の周方向C
1の回転終点端)に到達することとなる。そして、次のセグメントリングA
2を回転させるためには、該力伝達手段14を元の位置(つまり、
図4(a) に示す位置であって、前記一の周方向C
1の回転始点端)にまで作業者が手動で戻さなければならないが、その際に前記索条部材10が前記ガイド部111や滑車141,…等から外れてしまうおそれがある。しかし、セグメントリングを上述のように前記一の周方向C
1だけでなく前記他の周方向C
2にも回転させることができるようにしておくと、次のセグメントリングA
2は逆方向(前記他の周方向C
2)に回転させれば良いので、前記力伝達手段14を元の位置にまで戻す必要はなく、効率的に解体作業を進めることができる。