特許第6242754号(P6242754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242754
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】開口枠の組立構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/964 20060101AFI20171127BHJP
   E06B 1/56 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   E06B3/964 B
   E06B1/56 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-116895(P2014-116895)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-229877(P2015-229877A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】増田 政勝
(72)【発明者】
【氏名】芦田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】高見 綾一
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 康生
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−241575(JP,A)
【文献】 特開2014−88728(JP,A)
【文献】 実開昭53−136314(JP,U)
【文献】 米国特許第6253507(US,B1)
【文献】 特開平10−317820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/96−3/99
E06B 1/00−1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
見込み面に戸当たり材を配置するための収容溝が長手方向に沿って形成された一対の縦枠と、前記一対の縦枠の上端部間に掛け渡すように配置される上枠とを備え、躯体に設けた開口部の両側縁にそれぞれ前記縦枠を取り付けた後、前記開口部の上縁に沿って前記上枠を取り付けることにより、障子をスライド可能に支持するための開口枠を構成するようにした組立構造であって、
前記縦枠の見込み面から突出した状態で配置され、前記縦枠に対して前記上枠を下方から上方へ移動させた場合には前記収容溝の内部に向けて弾性的に変形することにより前記上枠の通過を許容する一方、前記上枠を上方から下方へ移動させた場合には前記上枠の下面に当接して通過を阻止する弾性係合部材を前記縦枠の収容溝に配設し、前記弾性係合部材によって前記上枠の端部を前記縦枠に係止させることを特徴とする開口枠の組立構造。
【請求項2】
前記弾性係合部材は、上方に向かうに従って前記収容溝から漸次離隔するように傾斜した薄板状の当接片部を有したものであり、前記当接片部の上端部を前記上枠の下面に当接させることによって前記上枠を前記縦枠に係止させることを特徴とする請求項1に記載の開口枠の組立構造。
【請求項3】
前記弾性係合部材は、基板部の下端に前記当接片部を有するとともに、前記基板部の上端にクリップ部を有し、前記クリップ部を介して前記縦枠の上端に掛かり留めたことを特徴とする請求項2に記載の開口枠の組立構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体に設けた開口部の両側縁に縦枠を取り付けた後、開口部の上縁に沿って上枠を取り付けることにより、障子をスライド可能に支持するための開口枠を構成するようにした組立構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
仕切壁等の躯体に設けられた開口部の縁に沿って開口枠を構成する方法としては、予め上枠、下枠及び左右の縦枠を組み立てて構成した開口枠を開口部に設置する方法と、開口部に縦枠や上枠を順次取り付けて開口枠を構成する方法とがある。特に、室内の仕切壁に設けられた開口部に開口枠を構成する場合には、下枠が省略されることが多いため、開口部に縦枠や上枠を順次組み付ける方法が多く用いられる。具体的には、左右の縦枠を開口部の両側縁に沿って取り付けた後、開口部の上縁に沿って上枠を取り付けることによって仕切壁の開口部に開口枠が構成される。
【0003】
縦枠を開口部に取り付ける場合には、縦枠の下端を床面に載置した状態で取付作業を行うことができるため、開口部に対する位置決めも容易となり、一人での施工が可能である。しかしながら、上枠を開口部に取り付ける場合には、上枠を床面から離隔した位置に保持しながら取付作業を行う必要があり、一人での施工が難しい。特に、開口部の幅が大きい場合には、上枠の全長も大きなものとなるため、上述した問題が一層顕著となる。
【0004】
このため従来では、縦枠の上端部に係合具を設けるとともに、上枠の端部に被係合具を設けるようにした組立構造が提供されている。縦枠の係合具には係合突起が設けられており、上枠の被係合具には被係合突起が設けられている。係合具の係合突起と被係合具の被係合突起とは、縦枠に対して上枠を下方から上方に向けて移動させた場合に互いに係合するように構成されたものである。この組立構造によれば、縦枠に対して上枠を上方に移動させれば、上枠の端部を縦枠に係止させることができ、その後、両手を使って取付作業を行うことができるため、一人での施工が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−241575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の組立構造は、縦枠の係合具が上枠の端面と上枠の被係合具との間に挿入される構成である。つまり、縦枠の見込み面と上枠の端面との間には、係合具と被係合具とが重なった状態で配置されることになる。従って、組み立て後の開口枠にあっても、縦枠の見込み面と上枠の端面との間に隙間が残ることになり、外観品質を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、縦枠の見込み面と上枠の端面との間の隙間をできるだけ小さく設定した状態で、容易に上枠を取り付けることのできる開口枠の組立構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る開口枠の組立構造は、見込み面に戸当たり材を配置するための収容溝が長手方向に沿って形成された一対の縦枠と、前記一対の縦枠の上端部間に掛け渡すように配置される上枠とを備え、躯体に設けた開口部の両側縁にそれぞれ前記縦枠を取り付けた後、前記開口部の上縁に沿って前記上枠を取り付けることにより、障子をスライド可能に支持するための開口枠を構成するようにした組立構造であって、前記縦枠の見込み面から突出した状態で配置され、前記縦枠に対して前記上枠を下方から上方へ移動させた場合には前記収容溝の内部に向けて弾性的に変形することにより前記上枠の通過を許容する一方、前記上枠を上方から下方へ移動させた場合には前記上枠の下面に当接して通過を阻止する弾性係合部材を前記縦枠の収容溝に配設し、前記弾性係合部材によって前記上枠の端部を前記縦枠に係止させることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、縦枠の収容溝から突出した弾性係合部材を上枠の下面に当接させるようにしているため、縦枠の見込み面と上枠の端面との間に弾性係合部材を介在させることなく上枠を縦枠に係止させることが可能となる。
【0010】
また本発明は、上述した開口枠の組立構造において、前記弾性係合部材は、上方に向かうに従って前記収容溝から漸次離隔するように傾斜した薄板状の当接片部を有したものであり、前記当接片部の上端部を前記上枠の下面に当接させることによって前記上枠を前記縦枠に係止させることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、縦枠に対して上枠を上方に移動させた場合には当接片部の傾斜作用によって弾性係合部材が収容溝に向けて弾性的に変形し、上枠の通過を許容する。上枠の下面が当接片部の上端部を通過した後においては、弾性復元力によって当接片部の上端部が縦枠の見込み面から突出した状態に復帰するため、上枠を下方に移動させれば、当接片部の上端部が上枠の下面に当接することによって上枠が縦枠に係止される。
【0012】
また本発明は、上述した開口枠の組立構造において、前記弾性係合部材は、基板部の下端に前記当接片部を有するとともに、前記基板部の上端にクリップ部を有し、前記クリップ部を介して前記縦枠の上端に掛かり留めたことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、クリップ部に縦枠の上端を挟み込めば、縦枠に対して弾性係合片を容易に取り付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、縦枠の収容溝から突出した弾性係合部材を上枠の下面に当接させるようにしているため、縦枠の見込み面と上枠の端面との間に弾性係合部材を介在させることなく上枠を縦枠に係止させることが可能となる。従って、組み立て作業を一人で施工することが可能になるとともに、組み立て後の開口枠においては縦枠の見込み面と上枠の端面との間の隙間をできるだけ小さく設定することができ、外観品質の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態である組立構造を適用して開口枠を構成した建具の斜視図である。
図2図2は、図1に示した建具の上枠部分を示す要部拡大縦断面図である。
図3図3は、図1に示した建具の上枠と縦枠との連結部分を示す要部拡大一部破断図である。
図4図4は、図3におけるA−A線断面図である。
図5図5は、図1に示した建具の縦枠を上方から見た図である。
図6図6は、躯体の開口部に縦枠を取り付けた状態を示す要部斜視図である。
図7図7は、躯体の開口部に対する上枠の取付過程を示したもので、(a)は、躯体の開口部に上枠を配置した状態の図、(b)は縦枠の弾性係合部材に上枠を係止させた状態の図である。
図8図8は、図7に示した上枠の取付課程を拡大したもので、(a)は上枠の端部が弾性係合部材に当接した状態の要部拡大図、(b)は弾性係合部材に上枠を係止させた状態の要部拡大図である。
図9図9は、弾性係合部材に上枠を係止させた状態の縦断面図である。
図10図10は、本発明に係る開口枠の取付構造において一方の縦枠にブロック部材を配設するようにした変形例1の要部斜視図である。
図11図11は、本発明に係る開口枠の取付構造において弾性係合部材をネジによって縦枠に取り付けるようにした変形例2の要部拡大一部破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る開口枠の組立構造の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態である組立構造を適用して開口枠を構成した建具を示したものである。ここで例示する建具は、室内の仕切壁(躯体)Wに設けた矩形状の開口部Eに開口枠10を介して2枚の障子20を左右方向に移動可能に配設したものである。
【0018】
開口枠10は、開口部Eの両側縁に取り付けた縦枠11と、縦枠11の上端部間に掛け渡すように開口部Eの上縁に沿って取り付けた上枠12とを備えて構成したものである。縦枠11及び上枠12は、それぞれアルミニウムやアルミニウム合金、あるいは樹脂材によって成形した押し出し形材であり、長手方向の全長にわたってほぼ一様な断面形状を有するように構成してある。
【0019】
障子20は、矩形状を成す面材21と、図2及び図3に示すように、それぞれの面材21材の上部に取り付けられた戸車22とを備えたものである。戸車22は、戸車本体22aの両側にそれぞれ走行車輪22bを有したもので、戸車本体22aから下方に延在した連結ロッド22c及び連結ブロック22dを介して面材21の上部に取り付けてある。この実施の形態の建具では、戸車22を介して2枚の障子20が上枠12に吊り下げた状態で支持され、かつ上枠12の長手方向に沿って移動することが可能である。
【0020】
以下、開口枠10の構成について詳細に説明し、併せて本発明の特徴部分について詳述する。開口枠10の上枠12は、上壁部12a、一対の側壁部12b及び中壁部12cを有したものである。上壁部12aは、開口部Eのまぐさ(躯体)E1に取り付けられる部分であり、上面が平坦な板状に形成してある。側壁部12bは、上壁部12aの両側縁から下方に向けて延在したもので、個々の下端に側方レール部12dを有している。側方レール部12dは、側壁部12bの下端から互いに近接する方向に向けて水平に延在した平板状を成すものである。中壁部12cは、上壁部12aの下面において側壁部12bの間に位置する部分から下方に向けて延在したもので、下端に一対の中央レール部12eを有している。中央レール部12eは、それぞれの側壁部12bに設けた側方レール部12dに近接する方向に向けて水平に延在したものである。中央レール部12e及び側方レール部12dは、上面の高さが互いに同じとなるように構成してある。
【0021】
上枠12には、側壁部12bの外表面となる位置にそれぞれ上方カバープレート13が配設してある。上方カバープレート13は、見付け方向に沿った寸法が側壁部12bよりも大きな薄板状部材であり、側壁部12bに対して上壁部12aに直交する方向にスライドできるように配設してある。この上方カバープレート13は、上枠12をまぐさE1に取り付けた際に適宜スライドさせることにより、まぐさE1との間に生じた隙間を覆うことが可能である。尚、図3中の符号23は、上壁部12a、側壁部12b及び中壁部12cによって囲まれる空間(以下、ガイド空間という)の両端部に配設したキャップである。図からも明らかなように、キャップ23において上枠12の端面から外部に露出する部分には、上壁部12aとの間に逃げ部23aが設けてある。
【0022】
縦枠11は、図4及び図5に示すように、見込み壁部11a及び一対の側壁部11bを有したものである。見込み壁部11aは、開口部Eの間柱(躯体)E2に取り付けられ、かつ縦枠11の見込み面を構成する部分である。この見込み壁部11aには、長手方向に沿って一対の収容溝11cが形成してある。収容溝11cは、障子20が当接した場合にクッションとなる戸当たり材30を配設するために設けた凹所であり、縦枠11においてそれぞれの障子20に対向する部位の全長に形成してある。
【0023】
図4に示すように、本実施の形態では、開口縁部に内向きの第1リブ11dを有するとともに、第1リブ11dよりも奥方に突出量の大きな第2リブ11eを有した収容溝11cが縦枠11に形成してあり、これら第1リブ11d及び第2リブ11eによって戸当たり材30を保持するようにしている。戸当たり材30は、縦枠11の下端から上方に向けて連続した長尺部材であり、図9に示すように、上枠12に設けた側方レール部12dの下面よりもわずかに下方となる位置で終端している。図4及び図5に示すように、側壁部11bは、見込み壁部11aの両側縁部から外周側に向けて延在したものである。側壁部11bには、外表面となる位置にそれぞれ側方カバープレート14が配設してある。側方カバープレート14は、見付け方向に沿った寸法が側壁部11bよりも大きな薄板状部材であり、側壁部11bに対して見込み壁部11aに直交する方向にスライドできるように配設してある。この側方カバープレート14は、縦枠11を開口部Eの間柱E2に取り付けた際に適宜スライドさせることにより、間柱E2との間に生じた隙間を覆うことが可能である。
【0024】
図3に示すように、縦枠11の上端部において収容溝11cを形成した部分には、それぞれ弾性係合部材40が配設してある。弾性係合部材40は、収容溝11cに収容可能となる幅を有した金属性の薄板部材であり、基板部41の上端にクリップ部42を有するとともに、基板部41の下端に当接片部43を有している。クリップ部42は、基板部41の上端からほぼ直角に屈曲した後、下方に向けて延在した平板状部分である。このクリップ部42に対して基板部41は、下方に向かうに従って漸次クリップ部42に近接するように傾斜し、さらにその下端部がクリップ部42とほぼ平行となるように延在している。当接片部43は、基板部41の下端からクリップ部42から離隔する方向に湾曲した後、上方に延在した部分である。この当接片部43は、上方に向かうに従って漸次基板部41から離隔するように傾斜している。当接片部43の上端は、クリップ部42をほぼ鉛直に沿って配置した場合、基板部41の上端よりも下方に位置する長さに設定してある。この弾性係合部材40は、基板部41とクリップ部42との間に縦枠11の上端を挿入することによって縦枠11に保持してあり、図3及び図6に示すように、当接片部43の上端部が収容溝11cを超えて縦枠11の見込み面から突出している。
【0025】
上記のように構成した建具の開口枠10を組み立てる場合には、図7の(a)に示すように、仕切壁Wの開口部Eに対して、まずそれぞれの側縁に沿って縦枠11を取り付ける。具体的には、図4に示すように、収容溝11cを介して開口部Eの間柱E2にネジBを螺合させることにより、縦枠11を間柱E2に固定する。このとき、縦枠11の上端に予め弾性係合部材40を配設しておけば、弾性係合部材40のクリップ部42が縦枠11の上端とまぐさE1との間に挟まれることになり、下方から外力を受けた場合にも弾性係合部材40が縦枠11から脱落することがない。縦枠11を取り付ける場合には、縦枠11の下端を床面に載置した状態で取付作業を行うことができるため、片手で縦枠11の位置決めを行うことも容易となり、一人で施工を行うことが可能である。
【0026】
開口部Eの両側縁にそれぞれ縦枠11を取り付けた後には、上枠12を左右方向に沿った姿勢で縦枠11の間に配置し、上枠12の端面をそれぞれ縦枠11の見込み面に対向させた状態で上枠12を上方に移動させる。上枠12を上方に移動させると、図8の(a)に示すように、やがて上枠12の上壁部12aが、収容溝11cから突出した弾性係合部材40の当接片部43に当接する。この状態からさらに上枠12を上方に移動させると、当接片部43が収容溝11cの内部に向けて弾性的に変形することになり、図8の(b)に示すように、当接片部43の上端を超えて上枠12を上方に移動させることが可能となる。上枠12が当接片部43の上端を超えて上方に移動した場合には、当接片部43が弾性復元力によって収容溝11cから突出し、上壁部12aの下面に対向した状態となる。このとき、上枠12の両端部に配設したキャップ23に逃げ部23aを形成しているため、当接片部43が弾性復帰する際にキャップ23と干渉するおそれはなく、当接片部43が確実に上壁部12aの下面と対向する位置まで突出する。
【0027】
この状態においては、上枠12を下方に移動させると、図7の(b)、図8の(b)及び図9に示すように、上壁部12aの下面が当接片部43の上端に当接することになり、その後、上枠12から手を離した場合にも脱落することなく上枠12が縦枠11に係止される。ここで、上枠12の荷重を受けた弾性係合部材40は、変形することになる。しかしながら、弾性係合部材40の当接片部43は、上方に向かうに従って漸次基板部41から離隔するように傾斜したものである。従って、上枠12の荷重に伴う弾性係合部材40の変形は、当接片部43が収容溝11cから突出する方向となり、上枠12の下方への移動を確実に阻止する方向に作用する。
【0028】
このように、上枠12が弾性係合部材40を介して縦枠11の上方部に係止された状態にあっては、片手でまぐさE1に対する上枠12の位置決めを行うことも容易となる。これにより、開口枠10の幅が大きく、上枠12の長手方向に沿った寸法が3000〜4000mmといった大きい場合であっても、組み立て作業を一人で施工することが可能になる。しかも、上枠12を係止するための弾性係合部材40は、当接片部43の上端のみが縦枠11の見込み面から突出し、かつ縦枠11に対して上枠12を下方から上方へ移動させた場合には収容溝11cの内部に向けて弾性的に変形する構成である。従って、上枠12の端面を縦枠11の見込み面に摺接させながら上方へ移動させることも可能であり、縦枠11の見込み面と上枠12の端面との間の隙間をできるだけ小さく設定した状態で縦枠11の上端部間に掛け渡すように上枠12を取り付けることが可能となる。さらに、上枠12をまぐさE1に取り付けた後においては、弾性係合部材40の当接片部43が上枠12の側壁部12bによって覆われることになり、外観品質が大きく損なわれるおそれもない。
【0029】
尚、上述した実施の形態では、開口部Eの両側縁に取り付けた縦枠11のそれぞれに弾性係合部材40を配設するようにしているが、本発明では少なくとも一方の縦枠11にのみ弾性係合部材40を配設すれば良い。例えば、図10に示す変形例1では、一方の縦枠11の収容溝11cに、見込み面から突出するようにブロック部材50を配設するようにしている。ブロック部材50は、例えば樹脂材によって成形したもので、まぐさE1の下面からわずかに離隔した位置が上面となるように縦枠11の収容溝11cに取り付けてある。図には示していないが、他方の縦枠11の収容溝11cには、実施の形態1と同様に収容溝11cの上端部に弾性係合部材40が配設してある。
【0030】
この変形例1においても、上枠12をわずかに傾けて一方の端部の上壁部12aを先にブロック部材50の上面とまぐさE1の間に挿入し、その後、上枠12の他方の端部を上方に移動させれば、縦枠11の上方部に上枠12を係止することができる。従って、片手でまぐさE1に対する上枠12の位置決めを容易に行うことができ、開口枠10の幅が大きく、上枠12の長手方向に沿った寸法が大きい場合であっても、組み立て作業を一人で施工することが可能になる。さらに、実施の形態1と同様、弾性係合部材40は、当接片部43の上端のみが縦枠11の見込み面から突出し、かつ縦枠11に対して上枠12を下方から上方へ移動させた場合には収容溝11cの内部に向けて弾性的に変形する構成である。従って、上枠12の端面を縦枠11の見込み面に摺接させながら上方へ移動させることも可能であり、縦枠11の見込み面と上枠12の端面との間の隙間をできるだけ小さく設定した状態で縦枠11の上端部間に掛け渡すように上枠12を取り付けることが可能となる。収容溝11cに配設したブロック部材50についても、上枠12をまぐさE1に取り付けた後においては、弾性係合部材40の当接片部43が上枠12の側壁部12bによって覆われることになり、外観品質が大きく損なわれるおそれはない。
【0031】
また、上述した実施の形態では、弾性係合部材40にクリップ部42を設け、基板部41とクリップ部42との間に縦枠11の上端を挿入することによって弾性係合部材40を縦枠11に保持するようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図11に示す変形例2ように、弾性係合部材140をネジ150によって縦枠11の収容溝11cに取り付けるようにしても良い。この場合の弾性係合部材140としては、クリップ部を有している必要はなく、例えば基板部141と、基板部141の上端から上方に向かうに従って漸次基板部141から離隔するように傾斜した当接片部143とを有したものを適用すれば良い。
【0032】
弾性係合部材140を取り付けるためのネジ150を螺合する部分としては、縦枠11に直接ネジ孔を形成するようにしても良いが、板厚の大きなブラケット板151を別途用意し、このブラケット板151にネジ孔151aを形成するようにしても良い。ブラケット板151としては、第2リブ11eの相互間隔よりも幅の広いものを適用し、これを第2リブ11eよりも奥方に配置すれば、ネジ150を螺合することにより、ブラケット板151と弾性係合部材140とによって第2リブ11eを挟んだ状態で弾性係合部材140が収容溝11cに取り付けられることになる。
【0033】
尚、上述した実施の形態及び変形例1、変形例2では、戸車を介して障子を上枠に吊り下げた状態で支持するようにした開口枠の組立構造について説明したが、本発明は障子を上枠に吊り下げた状態で支持するものに限らない。また、下枠を備えていない開口枠について例示しているが、下枠を備えた開口枠を組み立てる場合にももちろん適用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 開口枠、11 縦枠、11a 見込み壁部、11b 側壁部、11c 収容溝、12 上枠、20 障子、30 戸当たり材、40 弾性係合部材、41 基板部、42 クリップ部、43 当接片部、140 弾性係合部材、141 基板部、143 当接片部、E 開口部、E1 まぐさ、E2 間柱、W 仕切壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11