特許第6242761号(P6242761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242761
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】排水の処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20171127BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20171127BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20171127BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20171127BHJP
   G21F 9/32 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C02F1/28 D
   B01J20/34 D
   B01J20/20 B
   G21F9/12 501C
   G21F9/12 501J
   G21F9/32 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-143842(P2014-143842)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-19933(P2016-19933A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−165938(JP,A)
【文献】 特開2014−036940(JP,A)
【文献】 特開昭51−016750(JP,A)
【文献】 特開2005−298268(JP,A)
【文献】 特開平05−253068(JP,A)
【文献】 特開昭59−116113(JP,A)
【文献】 特開2008−279435(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/007365(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01D 15/00
B01J 20/20
B01J 20/34
G21F 9/12
G21F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水中の汚れ成分を活性炭に吸着させて浄化する浄化槽(1)と、前記活性炭を取り出して加熱し吸着した汚れ成分を熱分解する熱分解機構(4)と、前記熱分解後の活性炭をコーティングするコーティング機構(6)とを有し、コーティングされた活性炭を再び浄化槽(1)へ供給するようにしたことを特徴とする排水の処理装置。
【請求項2】
排水中の汚れ成分を活性炭に吸着させて浄化する浄化工程と、前記活性炭を取り出して加熱し吸着した汚れ成分を熱分解する熱分解工程と、前記熱分解工程後の活性炭をコーティングするコーティング工程とを有し、コーティングされた活性炭を再び浄化工程へ供給するようにしたことを特徴とする排水の処理方法。
【請求項3】
前記浄化工程では排水を濾過して汚れ成分を活性炭に吸着させるようにした請求項2記載の排水の処理方法。
【請求項4】
前記浄化工程では排水に電解水(11)を注入するようにした請求項2又は3記載の排水の処理方法。
【請求項5】
前記排水として放射能汚染土壌を含む排水を処理するようにした請求項2乃至4のいずれかに記載の排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、効率に優れた排水の処理装置及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物質を含有する排水から有機物質を除去することで排水を正常化する排水処理システムに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、排水中から有機物質の除去方法として、有機物質含有排水を吸着素子に通液吸着させ、吸着された有機物質を加熱ガスにて吸着素子から脱着し、この吸着と脱着とを連続的に繰り返して実施しできる手段を用いて排水処理するとともに、脱着の際に排出された有機物質を含むガスを後処理装置へ導入して処理する連続吸脱着式排水処理装置が有効である事が知られている。後処理装置としては、触媒燃焼装置などの酸化分解処理装置などが知られている。また、上記連続吸脱着式排水処理装置の処理効率を高めるためなどの目的で、曝気槽などを上記連続吸脱着式排水処理装置の前段に接続して、前処理する方法も有効であることが知られている。
有機物質を含む排水を接触させることで有機物質を吸着処理して、加熱ガスを接触させることによって有機物質を脱着処理する吸着素子を含む連続吸脱着式排水処理装置に導入されて、連続的な吸着処理と脱着処理の繰り返しによって有機物質を除去し、清浄化された処理水として排出される。連続吸脱着式排水処理装置から排出される脱着ガスは混合され、脱着ガスとして燃焼装置に導入され後処理される。脱着ガスは、熱交換器を通過することで加熱された後、燃焼炉に導入されてガス中の有機物質が酸化分解され、清浄化された分解ガスを排出する。分解ガスは熱交換器を通過し、大気中に放出される。
この連続吸脱着式排水処理装置は、吸着処理後、加熱空気、加熱窒素、水蒸気、過熱水蒸気などの加熱ガスを用いて脱着処理を行うことで、吸着素子に吸着された有機物質を吸着素子から脱着させて、吸着素子を再生させて、再び吸着処理へ移行し、この処理を繰り返すことで、少量の吸着材量で効率的に排水中の有機物を除去することができる排水処理装置である。
しかし、排水中には、上記の加熱ガスの温度よりも高沸点な有機物や、揮発しない無機物等が含有しているケースがしばしばあり、これらの物質は脱着処理においても吸着素子から脱着が困難である場合がある。これらの物質を含む排水を連続吸脱着処理した場合、脱着困難物質がサイクル毎に吸着素子に蓄積して、所定の吸着性能を得られなくなるので、吸着素子の交換頻度が高くなり、ランニングコストが高くなる問題があった。
前記従来提案は上記のような問題を解決するため、前記脱着困難物質と有機物質を含んだ排水を連続吸脱着式排水処理装置を用いて処理する排水処理システムに関し、吸着素子の劣化の抑制効率の高い手段を付帯することで、吸着素子の交換頻度を減らし、ランニングコストや交換時の労力を削減できる排水処理システムを提供するものであり、以下の構成からなる。
すなわち、有機物質を含有する排水から有機物質を除去することで当該排水を清浄化する排水処理システムであって、有機物質を含有する排水を加熱させて、有機物質を蒸発させる加熱器と、蒸発した前記有機物質を液化凝縮させた凝縮水を一次処理水として排出させる冷却器とを含む蒸発凝縮装置と、前記蒸発凝縮装置に接続され、前記一次処理水を接触させることで有機物質を吸着し、加熱ガスを接触させることで吸着した有機物質を脱着する吸着素子を含み、前記吸着素子に排水を供給することで有機物質を前記吸着素子に吸着させて二次処理水として排出し、前記吸着素子に加熱ガスを供給することで有機物質を前記吸着素子から脱着させて有機物質を含有する脱着ガスとして排出し、前記吸着素子の脱着処理が完了した部分を、吸着処理を行なう部分に移行させるとともに前記吸着素子の吸着処理が完了した部分を、脱着処理を行なう部分に移行させる操作を繰り返し実施できる手段を有した連続吸脱着式排水処理装置と、前記連続吸脱着式排水処理装置に接続され、連続吸脱着式排水処理装置から排出された有機物質を含有する脱着ガスを燃焼させて酸化分解した清浄ガスを排出する燃焼装置を備える。
そして、この水処理システムによれば、連続吸脱着式排水処理装置の吸着素子の劣化を抑制させて、吸着素子の交換頻度を減らし、ランニングコストや交換時の労力を削減することができる、というものである。
しかし、より効率に優れた排水の処理方法が得たいという要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−104407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、より効率に優れた排水の処理装置及び処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の排水の処理装置は、排水中の汚れ成分を活性炭に吸着させて浄化する浄化槽と、前記活性炭を取り出して加熱し吸着した汚れ成分を熱分解する熱分解機構と、前記熱分解後の活性炭をコーティングするコーティング機構とを有し、コーティングされた活性炭を再び浄化槽へ供給するようにしたことを特徴とする。
この排水の処理装置では、浄化槽で排水中の汚れ成分を活性炭に吸着させて浄化するようにしたので、汚れ成分を分解するための酸化剤(次亜塩素酸ナトリウムNaOCl、電解次亜塩素酸HOClなど)の添加を抑制乃至省略して浄化後の排水の残留塩素濃度を大きく低減乃至0に近くすることが出来る。
また、熱分解機構で前記活性炭を取り出して加熱し吸着した汚れ成分を熱分解するようにしたので、排水中の汚れ成分の濃度(COD、TOC等)が高くても活性炭の貯留量や処理時間(LV、SV)で調整することが出来る。
さらに、コーティング機構で前記熱分解後の活性炭をコーティングするようにし、コーティングされた活性炭を再び浄化槽へと供給するようにしたので、コーティング剤によって活性炭の劣化を抑制しつつ排水の処理を行うことが出来る。
【0006】
(2)この発明の排水の処理方法は、排水中の汚れ成分を活性炭に吸着させて浄化する浄化工程と、前記活性炭を取り出して加熱し吸着した汚れ成分を熱分解する熱分解工程と、前記熱分解工程後の活性炭をコーティングするコーティング工程とを有し、コーティングされた活性炭を再び浄化工程へ供給するようにしたことを特徴とする。
この排水の処理方法では、浄化工程で排水中の汚れ成分を活性炭に吸着させて浄化するようにしたので、汚れ成分を分解するための酸化剤(次亜塩素酸ナトリウムNaOCl、電解次亜塩素酸HOClなど)の添加を抑制乃至省略して浄化後の排水の残留塩素濃度を大きく低減乃至0に近くすることが出来る。
【0007】
また、熱分解工程で前記活性炭を取り出して加熱し吸着した汚れ成分を熱分解するようにしたので、排水中の汚れ成分の濃度(COD、TOC等)が高くても活性炭の貯留量や処理時間(LV、SV)で調整することが出来る。
さらに、コーティング工程で前記熱分解工程後の活性炭をコーティングするようにし、コーティングされた活性炭を再び浄化工程へと供給するようにしたので、コーティング剤によって活性炭の劣化を抑制しつつ排水の処理を行うことが出来る。
【0008】
ここで、熱分解工程では誘導加熱(IH)により例えば600〜900℃程度に昇温することができ、このようにすると活性炭に吸着している汚れ成分(主として有機物)が熱分解して活性炭が賦活・再生することとなる。また、有機物が熱分解してなる炭が、次のサイクルで活性炭として機能することとなる。さらに、活性炭に付着したコーティング剤が熱分解してなる炭が、次のサイクルで活性炭として機能することとなる。
前記コーティング工程におけるコーティング剤として、例えば紛体塗装用のエポキシ樹脂や、フッ素樹脂、ウレタン変性樹脂エマルジョンその他の形態安定性を付与することが出来る又は/及び耐薬品性を有する樹脂を使用することが出来る。前記エポキシ樹脂の紛体(エポキシ・パウダー、粒径約5〜50μm)を活性炭に対して約2〜10%の重量割合で添加し、200℃で10〜30分、スクリュー・コンベアなどを用いて加熱処理することが出来る。
【0009】
そして、コーティングされた活性炭は活性炭そのものの吸着作用を維持していたと共に、コーティング剤の形態安定性付与機能によって排水処理中に活性炭同士が衝突しても潰れたり破砕にくくなっていた。
また、形態安定性を付与することが出来ると共に耐薬品性を有するコーティング剤を使用すると、排水処理時に電解塩素(Cl2、HOCl、ClO)や薬剤次亜塩素酸(NaOCl)の影響を低減して形態安定性付与機能を発揮することが出来る。
【0010】
(3)前記浄化工程では排水を濾過して汚れ成分を活性炭に吸着させるようにしてもよい。
このように構成すると、活性炭を固定床として排水を濾過することにより円滑に浄化することが出来る。
【0011】
(4)前記浄化工程では排水に電解水を注入するようにしてもよい。
このように構成すると、電解水(食塩水や次亜塩素酸ナトリウム含有水を電気分解する)中の電解次亜塩素酸HOClの酸化作用により、活性炭表面や排水中の汚れ成分を分解することが出来る。この浄化工程は、例えば流動床として行うことが出来る。
【0012】
(5)前記排水として、放射能汚染土壌を含む排水を処理するようにしてもよい。
このように構成し、放射能汚染土壌を含む排水中のシルト・粘土質に固着したセシウムイオン(Cs+)を、前記活性炭に吸着させる。次いで、電解水(HOCl、例えば3%食塩水を電気分解して得る)や次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)水で前記活性炭を洗浄することにより、セシウムイオン(Cs+)が固着したシルト・粘土質を活性炭から離脱させる。さらに、離脱した前記シルト・粘土質を、酸・アルカリで沈降させることにより、放射性物質(Cs+)を沈殿物中に濃縮することが出来る。
なお、セシウムイオン(Cs+)が固着したシルト・粘土質をゼオライトに吸着させた場合、このゼオライトからシルト・粘土質を離脱させることはできなかった。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
活性炭の劣化を抑制しつつ排水の処理を行うことが出来るので、より効率に優れた排水の処理装置及び処理方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の排水の処理装置の実施形態を説明するシステム・フロー図。
図2】コーティング前の活性炭表面の電子顕微鏡写真(倍率;×45倍)。
図3】コーティング後の活性炭表面の電子顕微鏡写真(倍率;×55倍)。
図4】コーティング後の活性炭表面の電子顕微鏡写真(倍率;×1300倍)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態の排水の処理装置は、排水中の汚れ成分を活性炭に吸着させて浄化する浄化槽1と、前記活性炭の一部をスパイラル・コンベアSCで取り出して、スクリュー・コンベア2と誘導加熱機構IHを利用した脱水・乾燥機構3を経由して、誘導加熱機構IHを利用した加熱し吸着した汚れ成分を熱分解する熱分解機構4と、前記熱分解後の活性炭をコーティングするスクリュー・コンベア5と誘導加熱機構IHを利用したコーティング機構6とを有する。
そして、コーティングされた活性炭を活性炭貯留槽7を介してスパイラル・コンベアSCにより再び浄化槽1へ供給するようにした。なお、図中Mはモータ、Hはホッパーを示す。
【0016】
前記浄化槽1では、排水を濾過して汚れ成分を活性炭に吸着させるようにした。具体的には、活性炭からなる濾過材層8の下段に砂濾過材層9を配置し、上方から排水を供給し、下方から浄化された濾過水10を取り出して再利用するようにした。
また、前記浄化槽1では、排水に電解水11(次亜塩素酸ナトリウムを電気分解した電解次亜塩素酸)を注入するようにした。
【0017】
前記コーティング機構6におけるコーティング剤として、紛体塗装用のエポキシ樹脂を使用した。このエポキシ樹脂の紛体(エポキシ・パウダー、粒径約5〜50μm)を活性炭に対して約2〜10%の重量割合で添加し、200℃で10分間、スクリュー・コンベア5を用いて加熱処理した。
熱分解機構4では、誘導加熱IHにより700℃程度に昇温するようにしており、これにより活性炭に吸着している汚れ成分(主として有機物)が熱分解して活性炭が賦活・再生することとなる。また、有機物が熱分解してなる炭が、次のサイクルで活性炭として機能することとなる。さらに、活性炭に付着したコーティング剤が熱分解してなる炭が、次のサイクルで活性炭として機能することとなる。
【0018】
次に、この実施形態の排水の処理装置の使用状態を説明する。
この排水の処理装置では、浄化槽1で排水中の汚れ成分を活性炭に吸着させて浄化するようにしたので、汚れ成分を分解するための酸化剤(次亜塩素酸ナトリウムNaOCl、電解次亜塩素酸HOClなど)の添加を抑制して浄化後の排水の残留塩素濃度を大きく低減することが出来る。
また、熱分解機構4で前記活性炭を取り出して加熱し吸着した汚れ成分を熱分解するようにしたので、排水中の汚れ成分の濃度(COD、TOC等)が高くても活性炭の貯留量や処理時間(LV、SV)で調整することが出来る。
【0019】
さらに、コーティング機構6で前記熱分解後の活性炭をコーティングするようにし、コーティングされた活性炭を再び浄化槽1へと供給するようにしたので、コーティング剤によって活性炭の劣化を抑制しつつ排水の処理を行うことができ、より効率に優れるという利点がある。
そして、コーティングされた活性炭は活性炭そのものの吸着作用を維持していたと共に、処理時に崩れた微細な活性炭粒子が細孔中に入り込に難く目が詰まりにくくなっていた。また、排水処理中に活性炭同士が衝突しても破砕にくくなっていた。
ここで、図2に示すコーティング前の活性炭表面の電子顕微鏡写真と、図3及び図4に示すコーティング後の活性炭表面の電子顕微鏡写真を対比すると、コーティング後は活性炭粒子12の表面に溶融エポキシ13が点在してコーティングされ構造的に強度が強化されている一方、多くの細孔14の目は詰められておらず残存しており吸着性を維持していることが把握できる。
【0020】
また、前記浄化槽1では排水を濾過して汚れ成分を活性炭に吸着させるようにしたので、活性炭を固定床として排水を濾過することにより円滑に浄化することが出来るという利点がある。
さらに、前記浄化槽1では排水に電解水11を注入するようにしたので、電解水中の電解次亜塩素酸HOClの酸化作用により、活性炭表面や排水中の汚れ成分を分解することが出来るという利点がある。この浄化槽1は、流動床として行うことも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0021】
より効率に優れることによって、種々の排水の処理装置・処理方法の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 浄化槽
4 熱分解機構
6 コーティング機構
11 電解水
図1
図2
図3
図4