特許第6242775号(P6242775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242775
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20171127BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F04D29/44 R
   F04D29/44 X
   F04D29/66 H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-190467(P2014-190467)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-61240(P2016-61240A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】枡谷 穣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟
【審査官】 北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−72775(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/070808(WO,A1)
【文献】 特開2013−204550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラの出口側に設けられたベーンレスディフューザと、
前記ベーンレスディフューザを形成するハブケーシングの第1壁部に流体入口が開口され、前記インペラのハブディスク背面と対向する前記ハブケーシングの第2壁部に流体出口が開口される流体循環流路と、を備え、
前記ベーンレスディフューザは、少なくとも前記ハブケーシングの第1壁部を、該第1壁部に対向するシュラウドケーシングの壁部側に突出させることにより、該ベーンレスディフューザの流路幅を前記インペラの出口幅よりも小さく形成し、かつ、前記ハブケーシングは、前記インペラの出口と前記ベーンレスディフューザの入口との間を起端とし、前記第2壁部と前記第1壁部とを接続する傾斜壁部を備えることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記傾斜壁部は、前記第1壁部に連なる終端が、前記シュラウドケーシングの壁部における前記インペラの径方向内側の端部よりも、該径方向外側に位置することを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記ハブケーシングの第1壁部は、前記インペラの出口から前記径方向外側に延びるハブ側延長線よりも前記シュラウドケーシングの壁部側に突出し、前記ハブ側延長線から前記第1壁部までのハブ側突出長は、前記インペラの出口幅の50%以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
シュラウドケーシングの壁部は、前記インペラの出口から前記径方向外側に延びるシュラウド側延長線よりも前記ハブケーシングの第1壁部側に突出し、前記シュラウド側延長線から前記壁部までのシュラウド側突出長は、前記インペラの出口幅の20%以下とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラの出口側にベーンレスディフューザが設けられている遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、石油化学プラントや天然ガスプラント等においては、産業用遠心圧縮機が用いられている。この種の遠心圧縮機では、インペラの出口側にディフューザ部にベーンを備えていないベーンレスディフューザを用いた構成が広く採用されている。ベーンレスディフューザを用いた構成では、構造が簡単であり、流れ角が適正であれば損失が少なく、しかも作動範囲が広く、また、インペラに対して流体加振力が生じない利点がある。しかし、ベーンレスディフューザは、流れ角が大きくなると、損失が大きくなるほか、円周方向の流れが不均一となる旋回失速を生じ、それが原因と考えられる圧力変動や軸振動、吐出配管振動等が発生する。この旋回失速は、特に、遠心圧縮機を小流量域で運転した場合に発生することが知られている。
【0003】
このため、旋回失速の発生を抑制するために、従来、ベーンレスディフューザの出口側に入口が開口され、インペラのハブディスクの背面と対向するケーシングの壁面に出口が開口されている流体循環流路を設け、高圧流体の一部を、流体循環流路を介して再循環させるようにした遠心圧縮機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−38894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した流体循環流路を設けることにより、遠心圧縮機の効率低下を抑えつつ、ベーンレスディフューザで最初に旋回失速が発生する際の旋回失速開始流量の小流量化を図っている。一方で、旋回失速開始流量を更に小流量化するための構成が模索されている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、流体循環流路を設けた構成において、旋回失速開始流量の小流量化を図った遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の遠心圧縮機は、インペラの出口側に設けられたベーンレスディフューザと、ベーンレスディフューザを形成するハブケーシングの第1壁部に流体入口が開口され、インペラのハブディスク背面と対向するハブケーシングの第2壁部に流体出口が開口される流体循環流路と、を備え、ベーンレスディフューザは、少なくともハブケーシングの第1壁部を、該第1壁部に対向するシュラウドケーシングの壁部側に突出させることにより、該ベーンレスディフューザの流路幅をインペラの出口幅よりも小さく形成し、かつ、ハブケーシングは、インペラの出口とベーンレスディフューザの入口との間を起端とし、第2壁部と第1壁部とを接続する傾斜壁部を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ベーンレスディフューザを形成するハブケーシングの第1壁部に流体入口が開口され、インペラのハブディスク背面と対向するハブケーシングの第2壁部に流体出口が開口される流体循環流路を備えるため、流体循環流路により高圧流体の一部をベーンレスディフューザの入口側に循環させ、ベーンレスディフューザを流れる流体流量を増加させることができる。このため、増加された流量比率分だけ旋回失速発生点を小流量側へシフトさせ、旋回失速の発生を抑制することができる。また、ベーンレスディフューザは、少なくともハブケーシングの第1壁部を、該第1壁部に対向するシュラウドケーシングの壁部側に突出させることにより、該ベーンレスディフューザの流路幅をインペラの出口幅よりも小さく形成し、かつ、ハブケーシングは、インペラの出口とベーンレスディフューザの入口との間を起端とし、第2壁部と第1壁部とを接続する傾斜壁部を備えたため、流体循環流路の出口から吹き出される循環流を傾斜壁部に沿って流すことで、インペラの出口から吹き出される流体主流とスムーズに合流させることができ、ベーンレスディフューザ内の流体の流れが乱されることがない。さらに、ベーンレスディフューザの流路幅が傾斜壁部により絞られているため、流体流量が少ない小流量時においても、ベーンレスディフューザ内の流れが円滑になり、旋回失速発生点をさらに小流量側へシフトさせることができる。
【0009】
この構成において、傾斜壁部は、第1壁部に連なる終端が、シュラウドケーシングの壁部におけるインペラの径方向内側の端部よりも、該径方向外側に位置することが好ましい。この構成によれば、ハブケーシング側の傾斜壁部の傾斜角度をシュラウドケーシング側に比べて緩やかに形成できるため、インペラの出口から吹き出される流体主流の流れを乱すことなく、この流体主流に循環流をスムーズに合流させることができる。
【0010】
また、ハブケーシングの第1壁部は、インペラの出口から径方向外側に延びるハブ側延長線よりもシュラウドケーシングの壁部側に突出し、ハブ側延長線から第1壁部までのハブ側突出長は、インペラの出口幅の50%以下とすることが好ましい。この構成によれば、旋回失速発生点を小流量側にシフトしつつ、遠心圧縮機の効率の低下を抑制できる。
【0011】
また、シュラウドケーシングの壁部は、インペラの出口から径方向外側に延びるシュラウド側延長線よりもハブケーシングの第1壁部側に突出し、シュラウド側延長線から壁部までのシュラウド側突出長は、インペラの出口幅の20%以下とすることが好ましい。この範囲内では、旋回失速発生点を小流量側にシフトできる効果を発揮する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる遠心圧縮機によれば、ベーンレスディフューザは、少なくともハブケーシングの第1壁部を、該第1壁部に対向するシュラウドケーシングの壁部側に突出させることにより、該ベーンレスディフューザの流路幅をインペラの出口幅よりも小さく形成し、かつ、ハブケーシングは、インペラの出口とベーンレスディフューザの入口との間を起端とし、第2壁部と第1壁部とを接続する傾斜壁部を備えたため、流体循環流路の出口から吹き出される循環流を傾斜壁部に沿って流すことで、インペラの出口から吹き出される流体主流とスムーズに合流させることができ、ベーンレスディフューザ内の流体の流れが乱されることがない。さらに、ベーンレスディフューザの流路幅が傾斜壁部により絞られているため、流体流量が少ない小流量時においても、ベーンレスディフューザ内の流れが円滑になり、旋回失速発生点をさらに小流量側へシフトさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る遠心圧縮機の縦断面図である。
図2図2は、ベーンレスディフューザ付近の構成を示す要部断面図である。
図3図3は、比較例1〜比較例8、実施例における流量係数と、圧力係数及び効率との関係を示すグラフである。
図4図4は、旋回失速開始点の流量係数と設計点の効率との関係を示すグラフである。
図5図5は、別の実施形態に係るベーンレスディフューザ付近の構成を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる遠心圧縮機の縦断面図である。遠心圧縮機1は、複数のパーツを組み合わせて構成されるケーシング2と、ケーシング2内に図示省略の軸受を介してその軸線L回りに回転可能に支持される回転軸5と、の回転軸5に固定されて該回転軸5と一体に回転するように設けられたクローズドタイプのインペラ6,6とを備える。すなわち、本実施形態の遠心圧縮機1は、2段式の遠心圧縮機である。
【0016】
この遠心圧縮機1は、図示省略の駆動装置により回転軸5が駆動され、インペラ6,6が回転されることによって、ケーシング2に設けられている吸込口10を介して圧縮対象のガスあるいは空気等の流体が吸い込まれる。吸込口10には、ケーシング2内に形成された吸込空間10Aを介して、吸入流路11が接続され、この吸入流路11は、回転軸5の軸線L方向(軸方向)に沿って曲がり、1段目のインペラ6の吸入口6Aに対向して開口している。
【0017】
吸込口10から吸い込まれた流体は、1段目のインペラ6の回転によって遠心力が付与され、その運動エネルギーがインペラ6の吹出口6Bに設けられている1段目のベーンレスディフューザ12で圧力エネルギーに変換される。さらに、この流体は、リターンベンド14、リターンベーン15を経て、次段圧縮ステージである2段目のインペラ6の吸入口6Aに導かれるようになっている。
【0018】
この圧縮流体は、2段目のインペラ6によっても同様に遠心力が付与され、2段目のベーンレスディフューザ12で運動エネルギーが圧力エネルギーに変換され、さらに高圧の圧縮流体となってスクロール16に吐出される。そして、スクロール16からケーシング2に設けられている吐出口17を経て図示省略の吐出配管へと送出されるようになっている。なお、図1中の符号18は、インペラ6のスラストを調整するために設けられているバランスピストンである。
【0019】
ところで、ベーンレスディフューザ12は、インペラ6が回転する空間の出口側に連通して設けられ、このインペラ6により遠心力が与えられた流体の運動エネルギーを圧力エネルギーに変換して送出する流路を構成する。ベーンレスディフューザ12では、遠心圧縮機1を小流量域で運転した場合に、円周方向の流れが不均一となる旋回失速が発生することがある。この旋回失速の発生を抑制するため、本実施形態では、以下の構成を採用している。
【0020】
図2は、ベーンレスディフューザ付近の構成を示す要部断面図である。ベーンレスディフューザ12は、ケーシング2を構成するシュラウドケーシング2Aとハブケーシング2Bとによって形成されている。そして、ハブケーシング2Bには、ベーンレスディフューザ12内の流体を、インペラ6の吹出口(インペラ出口)6B近傍に戻して循環させる流体循環流路(バイパス流路、単にバイパスともいう)21が設けられている。具体的には、図2に示すように、流体循環流路21は、入口21Aと出口21Bとを備え、入口21Aは、ベーンレスディフューザ12を形成するハブケーシング2Bの第1壁部22に開口し、出口21Bは、インペラ6を構成するハブディスク6Cの背面と対向するハブケーシング2Bの第2壁部23に開口する。
【0021】
この流体循環流路21は、上記した入口21Aからベーンレスディフューザ12を経た高圧の圧縮流体の一部を取り込み、これを上記した出口21Bから吹き出して、ベーンレスディフューザ12とインペラ6の吹出口6Bとで圧縮流体の一部が循環されるよう構成されたものである。流体循環流路21は複数路設けても良く、流体循環流路21の出口21Bは、インペラ6のハブディスク6Cの背面に対向して形成される。これによって、出口21Bから吹き出された流体は、インペラ6の回転に伴って該インペラ6のハブディスク6Cの背面により周方向の流速が付与される。これにより、出口21Bからの吹き出された流体がインペラ6から吹き出された流体主流と合流する際の周方向流速を、該流体主流と略同程度の周方向流速とすることができる。
【0022】
また、ハブケーシング2Bの第1壁部22は、第2壁部23よりも、該第1壁部22に対向するシュラウドケーシング2Aの壁部31側に突出させるように形成されている。具体的には、ハブケーシング2Bの第1壁部22は、インペラ6の吹出口6Bのハブケーシング2B側の端部から該インペラ6の径方向外側(図2中矢印A方向)に延びるハブ側延長線HAよりもシュラウドケーシング2Aの壁部31側に突出している。第1壁部22と第2壁部23とは、傾斜壁部24によって連結されている。
【0023】
一方、本実施形態では、シュラウドケーシング2Aの壁部31も、インペラ6の吹出口6Bのシュラウドケーシング2A側の端部から該インペラ6の径方向外側に延びるシュラウド側延長線SAよりもハブケーシング2Bの第1壁部22側に突出して形成される。シュラウドケーシング2Aは、インペラ6の吹出口6Bと対向して回転軸5の軸線L方向に延びる水平壁30を備え、この水平壁30と壁部31とが連結壁32を介して連結される。この連結壁32は、様々な形状を採用することができ、所定の曲率半径で形成されたR壁や傾斜壁としても良い。このような連結壁32を設けた場合には、上記した壁部31におけるインペラ6の径方向内側の端部31Aは、連結壁32との連結部となる。
【0024】
本実施形態では、シュラウドケーシング2Aの壁部31及びハブケーシング2Bの第1壁部22は、いずれもインペラ6の吹出口6Bの投影面内に延在し、壁部31と第1壁部22とで形成されるベーンレスディフューザ12の流路幅Dは、インペラ6の吹出口6Bの幅(出口幅)Wよりも小さく形成されている。このように、ベーンレスディフューザ12の流路幅Dは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wを絞るように形成される。
【0025】
また、ハブ側延長線HAから第1壁部22までの軸線L方向における長さをハブ側突出長HDとした場合、このハブ側突出長HDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの50%以下とすることが好ましい。さらに、本実施形態のように、ハブケーシング2Bの第1壁部22とシュラウドケーシング2Aの壁部31の両方がインペラ6の吹出口6Bの投影面内に延在するように突出する構成では、シュラウド側延長線SAから壁部31までの軸線L方向における長さをシュラウド側突出長SDとした場合、ハブ側突出長HDとシュラウド側突出長SDの合計がインペラ6の吹出口6Bの幅Wの50%以下とすることが好ましい。また、シュラウド側突出長SDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの20%以下とすることが好ましい。
【0026】
次に、ハブケーシング2Bの第1壁部22の絞りについて説明する。上記のように、第1壁部22は、傾斜壁部24によって徐々にインペラ6の吹出口6Bの投影面内に延在するように突き出している。この傾斜壁部(突出し)24の形状が重要であることが実験等によって判明している。本実施形態では、傾斜壁部24は、インペラ6の径方向における、インペラ6の吹出口6Bとベーンレスディフューザ12の入口(水平壁30の位置)との間に第2壁部23と連結される起端24Aが設けられる。また、傾斜壁部24の終端24Bは、上記したシュラウドケーシング2Aの壁部31におけるインペラ6の径方向内側の端部31Aよりも、該径方向外側の位置に設けられている。この構成によれば、傾斜壁部24を緩やかな絞りの傾斜に形成することができ、インペラ6の吹出口6Bから吹き出される流体主流の流れを乱すことなく、この流体主流に循環流をスムーズに合流させることができる。なお、傾斜壁部24は、所定角度に形成された平面壁のみならず、例えば、表面が湾曲した曲面壁も含むものとする。次に、実施例及び比較例について説明する。
【0027】
[比較例1]
比較例1では、シュラウドケーシング2Aの壁部31がシュラウド側延長線SAよりも突き出され、ハブケーシング2Bの第1壁部22は、ハブ側延長線HA上に位置して形成される。シュラウドケーシング2A及びハブケーシング2Bは、それぞれ不図示の傾斜壁部を有し、シュラウドケーシング2A側の傾斜壁部の終端は、ハブケーシング2Bの傾斜壁部の終端より半径方向外側に形成されている(SH側緩突出し)。また、シュラウドケーシング2Aの壁部31のシュラウド側突出長SDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの40%であり、ベーンレスディフューザ12の流路幅Dと吹出口6Bの幅Wとの比D/Wは、0.6となっている。また、この比較例1では、流体循環流路21は設けられていない。
【0028】
[比較例2]
比較例2では、シュラウドケーシング2Aの壁部31のシュラウド側突出長SDが変更されると共に、シュラウドケーシング2Aの壁部31と水平壁30との間に曲率半径Rの小さな角R部があるのみである(SH側急突出し)。シュラウド側突出長SDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの17%であり、ベーンレスディフューザ12の流路幅Dと吹出口6Bの幅Wとの比D/Wは、0.83となっている。この他の構成は、比較例1と同一である。
【0029】
[比較例3]
比較例3では、シュラウドケーシング2Aの壁部31と水平壁30との間に曲率半径Rの小さな角R部があるのみである(SH側急突出し)。この他の構成は比較例1と同一である。
【0030】
[比較例4]
比較例4では、シュラウドケーシング2Aの壁部31のシュラウド側突出長SDが変更されている。シュラウド側突出長SDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの60%であり、ベーンレスディフューザ12の流路幅Dと吹出口6Bの幅Wとの比D/Wは、0.4となっている。この他の構成は、比較例1と同一である。
【0031】
[比較例5]
比較例5では、シュラウドケーシング2Aの壁部31と水平壁30との間に曲率半径Rの小さな角R部があるのみである(SH側急突出し)。この他の構成は比較例4と同一である。
【0032】
[比較例6]
比較例6では、ハブケーシング2Bの第1壁部22と第2壁部23とに流体循環流路21が設けられている。この流体循環流路21は、インペラ6の吹出口6Bの半径をR1としたとき、流体循環流路21の入口21Aの開口中心の半径R2が、1.1R1≦R2≦1.4R1を満たす位置に開口されている。この他の構成は比較例1と同一である。
【0033】
[比較例7]
比較例7では、シュラウドケーシング2Aの壁部31と水平壁30との間に曲率半径Rの小さな角R部があるのみである(SH側急突出し)。この他の構成は比較例6と同一である。
【0034】
[比較例8]
比較例8では、シュラウドケーシング2Aの壁部31のシュラウド側突出長SDが変更されると共に、シュラウドケーシング2Aの壁部31と水平壁30との間に曲率半径Rの小さな角R部があるのみである(SH側急突出し)。シュラウド側突出長SDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの17%であり、ベーンレスディフューザ12の流路幅Dと吹出口6Bの幅Wとの比D/Wは、0.83となっている。この他の構成は、比較例6と同一である。
【0035】
[実施例]
実施例では、シュラウドケーシング2Aの壁部31がシュラウド側延長線SAよりも突き出されると共に、ハブケーシング2Bの第1壁部22もハブ側延長線HAより突き出して形成される。シュラウド側突出長SDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの17%であり、ハブ側突出長HDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの23%である。このため、ベーンレスディフューザ12の流路幅Dと吹出口6Bの幅Wとの比D/Wは、0.6となっている。また、シュラウドケーシング2Aの壁部31と水平壁30との間に曲率半径Rの小さな角R部があるのみである(SH側急突出し)。また、ハブケーシング2Bの傾斜壁部24は、終端24Bが流体循環流路21の入口21Aの近傍に設けられ、緩やかな傾斜でベーンレスディフューザ12の流路幅Dを絞っている(ハブ側緩突出し)。この他の構成は、比較例6と同一である。
【0036】
図3は、比較例1〜比較例8、実施例における流量係数と、圧力係数及び効率との関係を示すグラフであり、図4は、旋回失速開始点の流量係数と設計点(図3の縦の破線位置)の効率との関係を示すグラフである。この図4では、比較例1を基準とした比で表されている。
【0037】
図4に破線の長円で囲んだ領域に示すように、流体循環流路を設けない構成(比較例1〜比較例5)では、大まかにシュラウド側突出長SDが大きくなると、効率が低下する傾向はみられるものの、旋回失速開始点を小流量側にシフトすることができる。
【0038】
一方、流体循環流路21を設けた構成(比較例6〜比較例8:バイパス付)では、シュラウド側突出長SDを大きくすれば良いわけではない。具体的には、比較例7、8に示すように、シュラウド側突出長SDをインペラ6の吹出口6Bの幅Wの17%(比較例8)から40%(比較例7)にすると、旋回失速開始点の流量係数が大きくなると共に効率が低下する結果となった。これは、流体循環流路21の循環流が吹き出す壁と反対側の壁(シュラウドケーシング2Aの壁部31)を大きく突き出すと、壁部31と循環流とが衝突干渉して、かえって壁部31の壁面での剥離流れ部分を助長させるものと思われる。このため、シュラウドケーシング2Aの壁部31を突き出す場合には、シュラウド側突出長SDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの20%以下とすることが好ましい。
【0039】
実施例では、上述したように、シュラウド側突出長SDを、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの17%とし、ハブ側突出長HDを、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの23%とし、ベーンレスディフューザ12の流路幅Dと吹出口6Bの幅Wとの比D/Wを0.6としている。さらに、図2に示すように、ハブケーシング2Bの傾斜壁部24の終端24Bは、シュラウドケーシング2Aの壁部31におけるインペラ6の径方向内側の端部31Aよりも、該径方向外側の位置に設けられている。このため、傾斜壁部24を緩やかな絞りの傾斜に形成することができ、インペラ6の吹出口6Bから吹き出される流体主流の流れを乱すことなく、この流体主流に循環流をスムーズに合流させることができる。従って、図4に示すように、旋回失速開始点を小流量側へ大幅にシフトすることができ、サージ点までの間で旋回失速が発生を抑えることが可能となった。さらに、流体循環流路21を設けない状態でベーンレスディフューザ12の流路幅Dを大きく絞り同じ程度の旋回失速発生点にした構成よりも効率を高くすることができる。実施例では、幅比D/Wを比較例5の0.4まで絞らなくても、0.6で同じ旋回失速発生点を実現できており、かつ、比較例5よりも効率が高いことが理解できる。
【0040】
また、実施例では、シュラウド側突出長SD及びハブ側突出長HDを、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの40%としているが、これらの突出長を50%よりも大きくした場合、旋回失速開始点がサージ点をはるかに追い越してしまうことに加え、効率だけ下がってしまうため、突出しを形成する意義が低下することとなる。従って、ハブ側突出長HD(及びシュラウド側突出長SD)は、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの50%以下に設定することが好ましい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の遠心圧縮機1は、インペラ6の吹出口6B側に設けられたベーンレスディフューザ12と、ベーンレスディフューザ12を形成するハブケーシング2Bの第1壁部22に入口21Aが開口され、インペラ6のハブディスク6C背面と対向するハブケーシング2Bの第2壁部23に出口21Bが開口される流体循環流路21とを備え、ベーンレスディフューザ12は、第1壁部22をシュラウドケーシング2Aの壁部31側に突出させることにより、該ベーンレスディフューザ12の流路幅Dをインペラ6の吹出口6Bの幅Wよりも小さく形成し、かつ、ハブケーシング2Bは、インペラ6の吹出口6Bとベーンレスディフューザ12の入口との間を起端24Aとし、第2壁部23と第1壁部22とを接続する傾斜壁部24を備える。このため、流体循環流路21の出口21Bから吹き出される循環流を傾斜壁部24に沿って流すことで、インペラ6の吹出口6Bから吹き出される流体主流とスムーズに合流させることができ、ベーンレスディフューザ12内の流体の流れが乱されることがない。さらに、ベーンレスディフューザ12の流路幅Dが傾斜壁部24により絞られているため、流体流量が少ない小流量時においても、ベーンレスディフューザ12内の流れが円滑になり、旋回失速発生点をより小流量側へシフトさせることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、傾斜壁部24は、第1壁部22に連なる終端24Bが、シュラウドケーシング2Aの壁部31におけるインペラ6の径方向内側の端部31Aよりも、径方向外側に位置するため、ハブケーシング2Bの傾斜壁部24の傾斜角度をシュラウドケーシング2A側に比べて緩やかに形成できるため、インペラ6の吹出口6Bから吹き出される流体主流の流れを乱すことなく、この流体主流に循環流をスムーズに合流させることができる。従って、小流量時に、ベーンレスディフューザ12内の流れを円滑に保つことができ、旋回失速発生点を小流量側へシフトさせることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、ハブケーシング2Bの第1壁部22は、インペラ6の吹出口6Bから径方向外側に延びるハブ側延長線HAよりもシュラウドケーシング2Aの壁部31側に突出し、ハブ側延長線HAから第1壁部22までのハブ側突出長HDは、インペラ6の吹出口6Bの幅Wの50%以下としたため、旋回失速発生点を小流量側にシフトしつつ、遠心圧縮機1の効率の低下を抑制できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、シュラウドケーシング2Aの壁部31は、インペラ6の吹出口6Bから径方向外側に延びるシュラウド側延長線SAよりもハブケーシング2Bの第1壁部22側に突出し、シュラウド側延長線SAから壁部31までのシュラウド側突出長SDは、インペラ6の出口幅Wの20%以下としたため、旋回失速発生点を小流量側にシフトできる効果を発揮する。
【0045】
図5は別の実施形態に係るベーンレスディフューザ付近の構成を示す要部断面図である。この実施形態において、上記した実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。上記した実施形態では、シュラウドケーシング2Aの壁部31及びハブケーシング2Bの第1壁部22の両方を、インペラ6の吹出口6Bの投影面内に延在させる構成としたが、シュラウドケーシング2Aの壁部31を、シュラウド側延長線SA上に配置する構成としても良い。すなわち、少なくともハブケーシング2Bの第1壁部22を、上記ハブ側延長線HAよりも内側(壁部31側)に突出させる構成とすれば、旋回失速発生点を小流量側にシフトできる効果を発揮することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した内容により本発明が限定されるものではない。例えば、上記した実施形態では、インペラ6及びベーンレスディフューザ12は、2段式の遠心圧縮機1に設けられているが、インペラ及びベーンレスディフューザを備える圧縮機であれば、単段式の遠心圧縮機や3段以上の多段遠心圧縮機に適用可能である。
【0047】
また、上記した実施形態では、シュラウドケーシング2Aの壁部31は、水平壁30と所定の曲率半径で形成された連結壁32を介して連結される構成としたが、この連結壁32は、様々な形状を採用することができ、水平壁30の先端から壁部31の端部31Aに向けて延びる傾斜壁としても良い。このような連結壁32を設けた場合には、上記した壁部31におけるインペラ6の径方向内側の端部31Aが連結壁32との連結部となる。
【符号の説明】
【0048】
1 遠心圧縮機
2 ケーシング
2A シュラウドケーシング
2B ハブケーシング
5 回転軸
6 インペラ
6A 吸入口
6B 吹出口(出口)
6C ハブディスク
10 吸込口
10A 吸込空間
11 吸入流路
12 ベーンレスディフューザ
14 リターンベンド
15 リターンベーン
16 スクロール
17 吐出口
18 バランスピストン
21 流体循環流路(バイパス流路)
21A 入口(流体入口)
21B 出口(流体出口)
22 第1壁部
23 第2壁部
24 傾斜壁部
24A 起端
24B 終端
30 水平壁
31 壁部
31A 端部
32 連結壁
D 流路幅
HA ハブ側延長線
HD ハブ側突出長
SA シュラウド側延長線
SD シュラウド側突出長
W 幅(出口幅)
L 軸線
図1
図2
図3
図4
図5