特許第6242803号(P6242803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242803
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】成形品へのインクジェット印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20171127BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20171127BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20171127BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B41M5/00 132
   B41M5/00 112
   C09D11/30
   C09D11/40
   B41J2/01 109
   B41J2/01 123
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-545656(P2014-545656)
(86)(22)【出願日】2013年10月29日
(86)【国際出願番号】JP2013079205
(87)【国際公開番号】WO2014073417
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-244074(P2012-244074)
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-257073(P2012-257073)
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】中川 征
(72)【発明者】
【氏名】菊地 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勝己
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−017969(JP,A)
【文献】 特表2009−507692(JP,A)
【文献】 特開2006−137185(JP,A)
【文献】 特開2007−099830(JP,A)
【文献】 特開2005−290216(JP,A)
【文献】 特開昭57−187288(JP,A)
【文献】 特開2002−283575(JP,A)
【文献】 特開2007−301871(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133667(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00 − 5/52
B41J 2/01 − 2/215
C09D 11/00 − 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂製キャップの天面にインクジェット印刷により局部画像を形成する印刷方法において、
油性インクを用いてのインクジェット印刷による局部画像の形成に先立って、該局部画像に対応して、インクジェット印刷によりインク受容層を形成しておくと共に、
前記インク受容層は、湿潤型樹脂と無機微粒子とが溶剤に分散された受容層用インクを用いて
インクを用いて形成されるものであり、
前記湿潤型樹脂は、油性インクに含まれる溶剤中に、室温(25℃)で浸漬したとき、体積が増大するものであり、前記無機微粒子が、コロイダルシリカまたは層状ケイ酸塩化合物であり且つ5μm以下の体積平均粒径を有していることを特徴とするインクジェット印刷方法。
【請求項2】
前記キャップの天面は、厚みが2.0mm以下の薄肉の頂板部に形成されている請求項1に記載のインクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品へのインクジェット印刷方法に関するものであり、特にプラスチックキャップの天面に印刷像を形成するのに適したインクジェット印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種成形品、例えばプラスチックキャップや容器、プラスチックフィルム、その他、種々のプラスチック成形品の表面への工業的な印刷手段として、グラビア印刷やフレキソ印刷などが広く採用されていたが、最近では、インクジェット方式による印刷手段も採用されるようになっている。
【0003】
インクジェット方式による印刷手段は、インクの小滴をノズルヘッドにより飛翔させ、所定の記録媒体に付着、定着することにより、入力された印刷情報に基づいた印刷像を形成することができるというものである。かかる印刷手段は、製版の必要が無く、デザイン変更が容易に行うことができるため、特に小ロット、多品種製品の印刷に好適であり、さらにはランニングコストが安価であるという利点がある。
【0004】
上記のような利点を有していることから、例えば、特許文献1には、プラスチックキャップの天面に形成される印刷像をインクジェット方式により形成することが提案されている。
【0005】
ところで、インクジェット方式により印刷を行う場合、インクの滲みなどの発生を回避するために、印刷が施される印刷媒体の表面にインク流れなどによる滲みの発生や印刷像の剥がれなどを防止するために、インク受容層を塗工しておくことが一般的に行われる(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−11342号公報
【特許文献2】特開2008−213199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようなインク受容層が形成された印刷媒体の表面にインクジェットによる印刷像を形成する場合、印刷媒体がプラスチック製であるときには生産性の大きな低下をもたらすという問題がある。即ち、インク受容層の形成に用いる塗工液には溶剤が含まれているため、これを乾燥除去した後にインクジェットによる印刷が行われるが、印刷媒体がプラスチックの場合、溶媒の乾燥除去(即ち、塗膜の硬化)のための加熱が制限される。加熱時間を短縮するために、高温に加熱すると、印刷が施される基体(成形品)に変形が生じてしまうからである。特に、プラスチックがポリオレフィンの如き、耐熱性に乏しい熱可塑性樹脂である場合には、この傾向が顕著である。
【0008】
従って、本発明の目的は、成形品の表面に、効率よく、インクジェット印刷画像を形成することが可能なインクジェット印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、オレフィン系樹脂製キャップの天面にインクジェット印刷により局部画像を形成する印刷方法において、
油性インクを用いてのインクジェット印刷による局部画像の形成に先立って、該局部画像に対応して、インクジェット印刷によりインク受容層を形成しておくと共に、 前記インク受容層は、湿潤型樹脂と無機微粒子とが溶剤に分散された受容層用インクを用いて
インクを用いて形成されるものであり、
前記湿潤型樹脂は、油性インクに含まれる溶剤中に、室温(25℃)で浸漬したとき、体積が増大するものであり、前記無機微粒子が、コロイダルシリカまたは層状ケイ酸塩化合物であり且つ5μm以下の体積平均粒径を有していることを特徴とするインクジェット印刷方法が提供される。
【0010】
本発明のインクジェット印刷方法においては、
(1)前記キャップの天面は、厚みが2.0mm以下、特に1.5mm以下の薄肉の頂板部に形成されていること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、インクジェット印刷像を固定するためのインク受容層を、該印刷像と同様、インクジェット方式により該印刷像に対応して形成する点に顕著な特徴を有する。例えば、インクジェット印刷像が文字や線や点のような局部画像である場合、このような局部画像が形成される部分に対応して、インクジェットによりインク受容層を形成することができる。
【0012】
このようにインクジェット方式によりインク受容層を形成する場合、その他の塗工方式によりインク受容層を形成する場合に比して、加熱乾燥による溶剤の除去を著しくマイルドな条件で行うことができるばかりか、溶剤が完全に除去されず、多少の溶剤が残存している状態であっても、次のインクジェット印刷による印刷画像の形成を行うことができるという利点がある。インクジェット印刷像が文字や線や点のような局部画像の場合、受容層の塗布量を最小限に抑制することができ、材料コストの低減を図るこという利点もある。
即ち、インクジェット方式によりインク受容層を形成するときには、インク受容層を形成するためのインク材料(受容層用インク)が噴射されるため、所謂噴霧乾燥を行いながらインク受容層が形成されることとなり、形成される未乾燥のインク受容層に含まれる溶剤量は著しく少量となっている。しかも、このインク受容層は、インクジェット印刷画像が形成される部分に選択的に形成されていればよいため、必要以上に大面積に形成する必要が無い。しかも、この受容層は、印刷画像を形成するものではないから、多少溶剤を含んでいる状態で、この受容層上にインクジェット印刷画像を形成することができる。従って、インクジェット印刷前に行われる加熱乾燥による溶剤除去を極めてマイルドな条件(具体的には、低温、短時間)で行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0013】
しかも本発明では、インクジェットによる印刷と、インク受容層との形成を、同一のラインで間を置かずに一連の流れで行うことが可能であり、従って、生産性を著しく増大させることが可能である。
【0014】
本発明のインクジェット印刷方法は各種の成型品、例えばプラスチックキャップや容器、プラスチックフィルム、その他、種々のプラスチック成形品の表面、金属製キャップ、金属缶の表面に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明により形成されるインク受容層とインク像との関係を示す図。
図2】本発明を実施する際のプロセスを説明するための図。
図3】本発明が最も好適に実施される成形品の代表例であるキャップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明のインクジェット印刷方法においては、成形品1の表面に、油性インクを用いてのインクジェット印刷により印刷像3が形成されるが、このインクジェット印刷像3は、インクジェット印刷により形成されるインク受容層5上に形成される。
【0017】
成形品1としては、特に制限されず、任意の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂により形成されていてよいが、一般的には、耐熱性の低い樹脂、例えば熱可塑性樹脂により形成されていることが、本発明の利点を最大限に活かす上で有利である。即ち、本発明では、先にも述べたように、インクジェット印刷像を固定するための受容層5を、低温、短時間での乾燥というマイルドな条件で形成することができる。即ち、成形品1が熱可塑性樹脂のように耐熱性の乏しい樹脂で形成されていた場合にも、その熱変形を有効に抑制し、インクジェット印刷を行うまでに長時間を要しないからである。
【0018】
本発明において、インクジェット印刷像3は、それ自体公知のインクジェット用の油性インクにより形成されるものであり、一色のインクにより形成されていてもよいし、各色のインクを重ね合わせたフルカラー像であってもよい。
【0019】
インクジェット用の油性インクは、各種の溶剤、各色の顔料乃至染料及び分散剤を含有しているものである。
【0020】
上記の溶剤としては、脂肪族炭化水素或いは芳香族炭化水素などの炭化水素系溶剤、アルキルアルコール系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、多価アルコール系溶剤などが代表的であり、これら溶剤の量は、インクがノズルヘッドから微粒の状態で噴出されるような粘度を有するように設定される。
【0021】
また、顔料乃至染料としては、それ自体公知の各色のもの、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などが、目的する色に応じて使用される。
【0022】
さらに、分散剤もそれ自体公知であり、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量カルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系界面活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテートなどを挙げることができる。
【0023】
さらに、上記の油性インキには、適宜、バインダーとして、熱硬化性、紫外線硬化性、或いは電子線硬化性の重合性単量体、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、或いは、これらポリマーのアクリル変性体などを形成する単量体成分を、重合開始剤と共に含有していてもよく、さらに加えてアクリレート系モノマーなどの反応希釈剤が配合されていてもよい。
【0024】
本発明において、インク受容層5は、インクジェット印刷による印刷像の色合いが損なわれない色調であることが好ましく、インクジェット印刷により形成される。即ち、かかる受容層5は、透明であってもよく、また、それ自体公知の顔料乃至染料によって印刷像の色合いが損なわれない色調に着色されたインクにより形成されてもよい。
【0025】
かかるインク受容層形成用のインクは、湿潤型樹脂が溶剤に分散されたものであり、かかるインク中には、必要により無機微粒子、分散剤、さらには顔料乃至染料が配合されていてよい。
【0026】
このようなインク受容層用インクに使用される湿潤型樹脂は、前述した油性インクに含まれる溶剤に膨潤するものであり、例えば、このような樹脂からなるシートを用いる溶剤中に室温(25℃)で浸漬したとき、該溶剤の浸透によりシート体積の増大が観察されるものである。具体的には、ポリビニルアルコール系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系などが、油性インク中に含まれる溶剤の種類に応じて使用される。即ち、インク受容層5は、このような湿潤型樹脂を含んでいるため、後から油性インクを用いてのインクジェット印刷が行われたとき、印刷像を形成する油性インクが速やかにインク受容層5内に浸透していくこととなる。このような湿潤型樹脂は、一般に、受容層用インク中の固形分当り1乃至20重量%の量で使用される。
【0027】
また、無機微粒子は、受容層5中に浸透したインクを安定に保持するために使用されるものである。このような無機微粒子は、例えばレーザ回折散乱法で測定した体積平均粒径(D50)が5μm以下のものである。一般的には、コロイダルシリカなどを使用することもできるが、層状のケイ酸塩化合物、例えばマイカ、バーミキュライト、スメクタイトなどの微粒子が好適に使用される。これら層状のケイ酸塩化合物の微粒子は、細孔を多く含む多孔質であり、受容層5中に浸透した油性インクをより安定に保持することができるからである。このような無機微粒子は、一般に、受容層用インク中の固形分当り1乃至30重量%の量で使用される。
【0028】
さらに、受容層インクに用いる溶剤としては、前述した油性インクに用いるものと同様のものを例示することができ、その量も、受容層インクがインクジェットノズルのヘッドから噴射され得るような粘度を有するように設定される。
【0029】
受容層インクに使用され得る分散剤も、前述した油性インクに使用され得るものと同じであってよく、インク中の顔料等が沈降しないように適宜の量で使用される。
尚、この受容層インクに配合し得る顔料や染料は、当然、この上に形成されるインクジェット印刷像3の色調を損なわないものであり、そのような量で配合される。
【0030】
さらには、上記の受容層インクにも、インクジェット用インクと同様、熱硬化性、紫外線硬化性或いは電子線硬化性の重合性単量体を重合開始剤、アクリル系モノマーなどの反応希釈剤と共に配合してもよい。
【0031】
上述した受容層インクを用いてのインク受容層5の形成や、引き続いて行われるインクジェット印刷像の形成は、例えば図2に示すプロセスで行われる。
【0032】
即ち、図2に示されるように、上記のプロセスを行うために、印刷を施すべき成形品を搬送する回転搬送体10が設けられており、この回転搬送体10の表面と間隔を置いて、回転方向に沿って順に、受容層用のインクジェットヘッド13及び、インクジェット印刷用のヘッド15が配置されている。インクジェット印刷用のヘッド15では、例えば、フルカラー印刷が行い得るよう、例えばシアン(青)インク用ヘッドC(15a)、赤(マゼンタ)インク用ヘッドM(15b)、イエローインク用ヘッドY(15c)、黒インク用ヘッドK(15d)、白インク用ヘッドW(15e)が回転搬送体10の回転方向に沿って適宜の順序で配置されたものである。勿論、これら5色のインクヘッドに限らず、さらに多数の色のヘッドが適宜の順序で配置され、これら色のインクの重ね合わせによりフルカラーの印刷像が形成されるようになっていてよい。
【0033】
また、受容層用のインクジェットヘッド13とインクジェット印刷用のヘッド15との間には、受容層用のインクを乾燥するためのヒータ17が配置され、さらに、インクジェット印刷用のヘッド15の回転搬送体10の回転方向下流側には、インクジェット印刷像の乾燥用ヒータ19が配置され、受容層用のインクジェットヘッド13の回転搬送体10の回転方向上流側には、回転搬送帯10の表面を冷風の吹き付けなどにより冷却するためのスポットクーラ20が配置されている。
【0034】
即ち、本発明においては、例えば、インクジェットヘッド13とスポットクーラ20との間の位置の回転搬送体10の表面に、印刷を施すべき成形品(例えばキャップ)が導入され、先ず、目的とするインクジェット印刷像の形態に応じて、該印刷像が形成される部分に、インクジェットヘッド13からの噴射により、前述した受容層用インクが噴射され、次いで、ヒータ17による加熱によって溶剤が除去され、かかるインクによるインク受容層5(図1参照)が形成されこととなる。
【0035】
このようにインク受容層5が形成された後、上述したインクジェットヘッド15により、適宜の順で各色の油性インクの噴射が行われ、目的に応じたフルカラーのインクジェット印刷像3(図1参照)が形成され、このような印刷像は、次のヒータ19により加熱乾燥され、これにより、インク受容層5に完全に固定され、回転搬送体1から排出されることとなる。
【0036】
また、上記のようにインク受容層5及びインクジェット印刷像3の形成を行う場合、回転搬送体10がヒータ17及び19により加熱され、その温度が次第に上昇していくこととなるが、このような不都合は、スポットクーラ20による冷却により、有効に防止される。
【0037】
さらに、成形品1がプラスチック製などの場合には、上記のスポットクーラ20の回転方向上流側にはインク受容層5と成形品1の密着性を向上するため、成形品1の表面に極性基を導入する表面処理装置21を配置することもできる。
即ち、この表面処理装置21により、例えばコロナ処理が行われ、成形品1のインクジェット印刷が施される部分(インク受容層5が形成される部分)を含む領域に極性基が導入され、成形品1とインク受容層5との接着性が向上される。
【0038】
尚、インク受容層5を形成するためのインクとして、紫外線硬化性或いは電子線硬化性の重合性単量体が配合されている場合には、ヒータ17による加熱が行われた後、次のインクジェット印刷が行われる前に、紫外線照射或いは電子線照射による硬化を行ってもよいが、通常は、ヒータ17による加熱(仮焼付け)が行われて溶媒が適度に除去されていれば受容層5としての機能を果たすことができるため、このような硬化は、インクジェット印刷が行われた後に行うことが望ましい。また、熱硬化性単量体が配合されている場合には、ヒータ17による硬化は、硬化条件によっては、溶媒を除去する程度の加熱に止め、インクジェット印刷が行われた後に、本加熱を行うのがよい。
さらに、インクジェット用のインクとして、熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性の重合性単量体が配合されている場合にも、ヒータ19による加熱により仮焼き付けを行って溶媒を除去した後、最後に、別工程で、本加熱、紫外線照射或いは電子線照射などにより本硬化(焼き付け)を行うことが望ましい。
【0039】
本発明においては、上記のように、インクジェット印刷像を固定するためのインク受容層5の形成を、印刷像と同様、インクジェット方式により該印刷像に対応して形成するため、インク受容層5を固定するためのヒータによる加熱(溶剤の除去)をマイルドな条件、即ち、低温、短時間での加熱により行うことができるため、引き続いてのインクジェット印刷像の形成を、回転搬送体10の搬送によって直ちに連続して行うことができるため、その生産性が著しく高められている。
【0040】
即ち、インクジェット方式によりインク受容層5を形成する場合には、この受容層5を形成するための印刷がヘッド13からの噴射により行われる為、この噴射時に受容層用のインク中の溶剤がある程度除去されることとなり(噴霧乾燥と同じである)、しかも、後から形成されるインクジェット印刷像が形成される部分に選択的に形成することができる。さらに、このインク受容層5は、若干、流れて滲んでいても、後から形成されるインクジェット印刷像3よりも大きくなることから、多少の溶剤の含有は許容される。このことから理解されるように、ヒータ17による加熱は、比較的低温(例えば120℃以下)、短時間でよく、従って、直ちに、ヘッド15によりインクジェット印刷を行うことが可能となるわけである。
【0041】
また、本発明において、インクジェット印刷により形成される印刷像は、ベタ像であってもよいが、文字像のような局部画像であることが最適である。即ち、ベタ画像の場合には、形成されるインク受容層5もベタの大面積となるが、局部画像の場合には、インク受容層5も点状の小面積となり、加熱による溶剤の除去を一層短時間で行うことが可能となるからである。
【0042】
上述した本発明では、印刷が施される成形品1は、プラスチック製、金属製、ガラス製など何れの材料により形成されていてもよいが、プラスチック製が好ましい。また、成形品1の形態、特にプラスチック製のものでは、キャップや容器など代表的であるが、キャップが最も好ましい。
【0043】
即ち、このようなプラスチックの代表的なものを簡略して示す図3において、かかるキャップ(全体として30で示す)は、フラットな表面の31と、頂板部31の周縁から降下したスカート33とからなり、スカート33の内面には、容器の口部(図示せず)の外面にキャップ30を固定するための螺子35が形成されている。また、螺子35による螺子係合によらず、旋回などにより密封構造を形成するタイプでは、螺子35に代わりに、シールを形成するためのシールリングなどが頂板部31の内面に設けられている。
【0044】
上記のようなプラスチックキャップは、一般に、ポリプロピレンやポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成され、その耐熱性が低く、しかも、熱変形を極度に嫌う螺子35(或いはシールリング)などが形成されている。即ち、溶媒除去のための乾燥をマイルドな条件で行うことが可能な本発明にしたがって、上記のようなプラスチックキャップの天面31a(頂板部31の上面)にインクジェット印刷像3を形成する場合、キャップ3の熱変形を有効に防止しながら高速で印刷像の形成を行うことができ、本発明の利点を有効に活かすことができる。
【0045】
また、上記のようなキャップは、印刷が施されるべき天面を有する頂板部の厚みが2.0mm以下の薄肉であること、特に1.5mm以下であることがさらに好ましい。即ち、材料の省資源等の観点から、キャップの厚みが薄肉となる傾向があるが、このような場合、射出成形、圧縮成形等の熱成形により形成されるキャップ30の頂板部31には反り等を生じるおそれがある。このような反りを生じると、例えばグラビア印刷のようにロールによる圧着などによる印刷の場合には、印刷像がかすれてしまうという問題があるが、本発明では、インク受容層5及び印刷像3の何れもがインクジェット方式によるインクの飛翔により形成されるため、このような不都合も完全に解消することができるからである。さらに、意匠性や搬送時の摩擦を低減する目的で、キャップの天面を梨地の表面とする場合であっても、かすれることなく、凹凸面の凹部の底にインク受容層5及び印刷像3を形成することが可能となる。
【0046】
上述した本発明では、印刷が施される部位はキャップの天面に限定されず、成型品の側面に印刷可能である。印刷範囲が成型品の周方向の広い範囲にわたる場合には、成形品を自転させて本発明の方法によって成型品の側面に印刷が可能である。
【0047】
上述した本発明によれば、成形品への印刷像の形成を、成形品の熱変形を有効に防止しつつ、しかも高速で行うことができ、極めて高い生産性を確保することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:成形品
3:インクジェット印刷像
5:インク受容層
10:回転搬送体
13:インク受容層用ヘッド
15:インクジェット印刷像用ヘッド
17、19:ヒータ
20:スポットクーラ
21:表面処理装置
30:プラスチックキャップ
31:頂板部
33:スカート
35:螺子
図1
図2
図3