特許第6242807号(P6242807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242807複合酸化物、その製造方法、および排ガス精製用の触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242807
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】複合酸化物、その製造方法、および排ガス精製用の触媒
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/24 20060101AFI20171127BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C01B33/24
   C01B33/26
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-547911(P2014-547911)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2015-506326(P2015-506326A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2012075911
(87)【国際公開番号】WO2013092560
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-279120(P2011-279120)
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ロアル, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】大竹 尚孝
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/065417(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/065416(WO,A1)
【文献】 特開平07−155605(JP,A)
【文献】 特開2004−337840(JP,A)
【文献】 特表平10−509377(JP,A)
【文献】 特開平09−206598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20−39/54
B01J23/00−23/96
JSTPlus(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物の観点から50〜98質量%のセリウム含有元素であって、酸化物の観点から質量で85:15〜100:0でセリウムとセリウム以外の希土類金属元素、ジルコニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素とからなるセリウム含有元素と、
酸化物の観点から1〜30質量%のアルカリ土類金属元素と、
SiOの観点から1〜20質量%のケイ素と
を含む複合酸化物。
【請求項2】
セリウム以外の希土類金属元素が、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、またはこれらの2つ以上の混合物である、請求項1に記載の複合酸化物。
【請求項3】
前記複合酸化物が、2時間800℃でのか焼後にBET法によって測定されるように60m/g以上の比表面積を示し、かつ2時間800℃でのか焼後にX線回折によって測定されるように、AECeO相(ここで、AEはアルカリ土類金属元素を表す)をまったく持たず、かつ15nm以下の(111)面でのCeO結晶子サイズを持つという特性を有する、請求項1または2に記載の複合酸化物。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属元素がバリウムを含む、請求項1またはに記載の複合酸化物。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属元素の含有率が酸化物の観点から1〜20質量%である、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項6】
前記複合酸化物が、2時間800℃でのか焼後にBET法によって測定されるように80m/g以上の比表面積を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項7】
(A)そのセリウムイオンの90モル%以上が4価であるセリウム溶液を提供する工程と、
(B)工程(A)から得られた前記セリウム溶液を60℃以上まで加熱し、溶液を60℃以上において保持してセリウム懸濁液を得る工程と、
(C)工程(B)から得られた前記セリウム懸濁液にアルカリ土類金属酸化物および酸化ケイ素の少なくとも前駆体を添加して懸濁液を得る工程と、
(D)工程(C)から得られた前記懸濁液を100℃以上まで加熱し、懸濁液を100℃以上において保持する工程と、
(E)工程(D)から得られた前記懸濁液に第1沈澱剤を添加して前記アルカリ土類金属元素以外の元素を沈澱させる工程と、
(F)第2沈澱剤を添加して前記アルカリ土類金属元素を含有する沈澱物を得る工程と、
(G)工程(F)から得られた前記沈澱物をか焼する工程と
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合酸化物の製造方法。
【請求項8】
工程(C)で、セリウム以外の希土類金属元素、ジルコニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素の酸化物の前駆体が、工程(B)から得られた前記セリウム懸濁液にさらに添加される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
アルカリ土類金属酸化物の前記前駆体が、酸化バリウムの前駆体を含む、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の複合酸化物を含む排ガスを精製するための触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、機能性セラミックス、燃料電池用の固体電解質、研磨材などのために使用されてもよい複合酸化物であって、特に、NOxを還元しまたは排除し、そして優れた耐熱性を有する、車両排ガスを精製するための触媒用の共触媒材料として好適に使用されてもよい複合酸化物に関する。本発明はまた、この複合酸化物の製造方法、およびそれを使用する排ガスを精製するための触媒にも関する。
【背景技術】
【0002】
車両エンジンなどの、内燃エンジンは、化学量論的(化学量論的運転)、化学量論的と比べて燃料リッチ(リッチ運転)、または化学量論的と比べて燃料に乏しい(希薄運転)などの、燃焼室での変動する空気−燃料(A/F)比で動作する。かかる内燃エンジンにおいて燃料効率を向上させるという目的のためにより希薄な雰囲気(過剰の酸素雰囲気)下で燃料を燃焼させる、希薄燃焼エンジンおよび直噴エンジンが実用化されている。
【0003】
しかし、かかるエンジンでは、従来型の三元触媒は、酸素過剰の排ガス中でそれらのNOx排除能力を十分に示すことができない。さらに、排ガス中のNOxの放出限界は最近、ますます厳しくなっており、高温でさえも排ガスからのNOxの効果的な排除が要求されている。
【0004】
希薄条件下でNOx吸着剤によりNOxを吸着することによってNOxを排除し、化学量論的条件下でNOxをNOx吸着剤から脱着させ、そして脱着されたNOxをNとして還元し、放出するための現行方式での方法は存在する。しかし、A/F比は通常変動し、かかる還元は効果的に起こらない可能性があり、その結果還元を促進するために酸素貯蔵成分を使ってA/F比を制御することが必要とされる。
【0005】
通常、NOx吸着剤は主に、アルカリ土類金属、典型的にはバリウム化合物などの、塩基物質である。一方、酸素貯蔵成分は通常、主としてセリウムの酸化物である。
【0006】
酸素吸着−脱着効果を有するNOx排除触媒として、(特許文献1)は、Ptなどの、貴金属を担持するセリウムおよびバリウムの化合物からなる触媒を提案している。
【0007】
しかし、かかる触媒が800℃ほどに高い温度に曝されるとき、NOx吸着能力を悪化させる、複合酸化物BaCeOの形成はまた、不利にもCeO結晶子サイズを増加させ、比表面積を減少させ、それは酸素吸着に影響を及ぼし、そしてPtなどの、貴金属成分の焼結を引き起こす。その結果として、NOx吸着/還元のための活性部位は減少し、こうしてNOx排除能力は低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−21878−A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
複合酸化物が高温環境中で使用されるときでさえ大きい比表面積が維持されること、そして、2時間800℃でのか焼後でさえ、共触媒性能を低下させる、AECeO(AEはアルカリ土類金属元素を表す)相がまったく検出されず、かつ、CeO結晶子サイズの増加が妨げられることなどの、優れた耐熱性を酸化物が有する、そして、特に、排ガスを精製するための触媒の共触媒として好適である、複合酸化物およびこの複合酸化物を用いる排ガスを精製するための触媒を提供することが本発明の目的である。
【0010】
優れた耐熱性を持った本発明の上述の複合酸化物の容易な製造を可能にする、複合酸化物の製造方法を提供することが本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
酸化物の観点から50〜98質量%のセリウム含有元素であって、前記セリウム含有元素が酸化物の観点から質量で85:15〜100:0でセリウムとイットリウム、ジルコニウム、およびアルミニウムを含むセリウム以外の希土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素とからなるセリウム含有元素と;
酸化物の観点から1〜30質量%のアルカリ土類金属元素と;
SiOの観点から1〜20質量%のケイ素と
を含む複合酸化物が提供される。
【0012】
本発明によれば、
(A)そのセリウムイオンの90モル%以上が4価であるセリウム溶液を提供する工程と、
(B)工程(A)から得られた前記セリウム溶液を最高で60℃までおよび60℃以上に加熱し、保持してセリウム懸濁液を得る工程と、
(C)工程(B)から得られたセリウム懸濁液にアルカリ土類金属酸化物および酸化ケイ素の少なくとも前駆体を添加して懸濁液を得る工程と、
(D)工程(C)から得られた前記懸濁液を最高で100℃までおよび100℃以上に加熱し、保持する工程と、
(E)工程(D)から得られた前記懸濁液に第1沈澱剤を添加して前記アルカリ土類金属元素以外の元素を沈澱させる工程と、
(F)第2沈澱剤を添加して前記アルカリ土類金属元素を含有する沈澱物を得る工程と、
(G)工程(F)から得られた前記沈澱物をか焼する工程と
をまた含む、複合酸化物の製造方法が提供される。
【0013】
本発明によれば、本発明の複合酸化物を含む排ガスを精製するための触媒がまた提供される。
【0014】
本発明による複合酸化物は、セリウム、アルカリ土類金属元素、およびケイ素を特定の比で含有し、特有の特性を有し、そして優れた耐熱性を有し、その結果、本発明の複合酸化物は排ガスを精製するための触媒用の共触媒として特に有用である。本発明の複合酸化物はかかる特性を有するので、活性NOx吸着部位は、この酸化物が高温に曝されるときでさえ低減せず、その結果、高いNOx吸着は希薄条件下で維持され得る。さらに、酸素貯蔵成分、CeOは、不活性化合物AECeOを形成することなく大きい比表面積を維持し、そしてNOx吸着部位である、アルカリ土類金属元素の近くに配置されており、その結果、本発明の複合酸化物は、リッチ条件下に酸素脱着能力に優れており、そして同時に、ガス雰囲気を化学量論に変えてNOxの低減を促進する。
【0015】
工程(A)〜(G)を含む、本発明による複合酸化物の製造方法は、本発明の複合酸化物などの、複合酸化物の容易な製造を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、より詳細に今説明される。
【0017】
本発明による複合酸化物は、酸化物の観点から50〜98質量%、好ましくは65〜95質量%、より好ましくは80〜90質量%のセリウム含有元素と、酸化物の観点から1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%のアルカリ土類金属元素と、SiOの観点から1〜20質量%、好ましくは5〜18質量%、より好ましくは10〜15質量%のケイ素とを含有する。
【0018】
セリウム含有元素は、酸化物の観点から質量で85:15〜100:0で、セリウムとセリウム以外の希土類金属元素ならびにイットリウム(本明細書では以下特定の希土類金属元素と言われる)、ジルコニウム、およびアルミニウムなどからなる群から選択される少なくとも1つの元素とからなる。セリウム含有元素が特定の希土類元素、ジルコニウム、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素を必然的に含有する場合、セリウム対この元素の比は好ましくは85:15〜95:5である。
【0019】
セリウム含有元素中の酸化物の観点からのセリウムの含有率が85質量%未満である場合、耐熱性は低い可能性がある。ケイ素が含有されない場合、十分な耐熱性は達成されない。アルカリ土類金属元素の含有率が酸化物の観点から30質量%超である場合、比表面積は小さい可能性がある。
【0020】
特定の希土類金属元素は、たとえば、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、またはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。これらの中で、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、またはこれらの2つ以上の混合物が特に好ましい。
【0021】
本発明では、イットリウムはYのような、ランタンはLaのような、セリウムはCeOのような、プラセオジムはPr11のような、ネオジムはNdのような、サマリウムはSmのような、ユーロピウムはEuのような、ガドリニウムはGdのような、テルビウムはTbのような、ジスプロシウムはDyのような、ホルミウムはHoのような、エルビウムはErのような、ツリウムはTmのような、イッテルビウムはYbのような、そしてルテチウムはLuのような酸化物によって表される。
【0022】
本発明では、ジルコニウムはZrOのような、アルミニウムはAlのような、アルカリ土類金属元素、たとえば、ベリリウムはBeOのような、マグネシウムはMgOのような、カルシウムはCaOのような、ストロンチウムはSrOのような、そしてバリウムはBaOのような酸化物によって表される。
【0023】
アルカリ土類金属元素として、本発明の複合酸化物が排ガスを精製するための触媒に使用される場合には、バリウムが触媒の性能を十分に示すために好ましい。
【0024】
本発明による複合酸化物は、2時間800℃でのか焼後にBET法によって測定されるように、60m/g以上、好ましくは80m/g以上、より好ましくは85m/g以上の比表面積を示すという特性を有する。この比表面積の最大値は、特に限定されないが、約150m/gである。2時間800℃でのか焼後にBET法によって測定されるように60m/g未満の比表面積では、NOx吸着/脱着が起こる活性部位は減少し、NOx排除能力は低い。
【0025】
さらに、本発明の複合酸化物は、2時間900℃でのか焼後にBET法によって測定されるように、好ましくは30m/g以上、より好ましくは35m/g以上、最も好ましくは50m/g以上の比表面積を示すという特性を有する。この比表面積の最大値は、特に限定されないが、約80m/gである。
【0026】
本明細書で用いるところでは、比表面積は、粉末の比表面積を測定するための最も標準的な技法である、窒素ガス吸着を用いるBET法によって測定される値である。
【0027】
本発明による複合酸化物は、2時間800℃でのか焼後にX線回折によって測定されるように、AECeOをまったく持たず、かつ、15nm以下、好ましくは13nm以下の(111)相でのCeO結晶子サイズを持つという特性を有する。本発明の複合酸化物は、2時間900℃でのか焼後にX線回折によって測定されるようにAECeO相をまったく持たないことが特に好ましい。かかる特性で、優れた耐熱性が維持される。
【0028】
本明細書で用いるところでは、「AECeO相をまったく持たない」は、AECeO由来する回折ピークがX線回折によってまったく観察されないことを意味する。たとえば、BaCeO相の場合には、これは、CeOに由来するピークに干渉するピークがまったく観察されず、BaCeOが高いピーク強度を有する、2θ=51°にピークがまったく観察されないことを意味する。
【0029】
(111)面での結晶子サイズは、CuKαビームを使用するX線回折計(RIGAKU CORPORATIONにより製造されるMultiFlex)によって測定されるX線回折スペクトルの2θ=28°近くのピークからScherrer方程式で計算されてもよい。
【0030】
本発明の複合酸化物が上述されたように耐熱性の点で優れた特性を有する理由は正確には知られていない。しかし、酸化セリウム粒子の表面上へのケイ素含有層の形成、およびこの層上へのアルカリ土類金属元素のそれに続く吸着に帰せられ、その結果セリウムとアルカリ土類金属元素との間の直接接触は妨げられ、AECeO相の形成は、複合酸化物が高温に曝されるときでさえ妨げられ、大きい比表面積は維持され、そしてCeOの結晶子サイズの増加は抑えられると考えられる。かかる推定構造を有する本発明の複合酸化物は、たとえば、後で考察される本発明の製造方法における特定の沈澱工程であって、セリウム懸濁液に沈澱の前に他の元素が添加される工程、特にアルカリ土類金属元素が他の元素の後に沈澱させられる工程によって得られていたと考えられる。
【0031】
本発明の複合酸化物の製造方法は特に限定されない。効率よく上述の特性を再現するためにおよびさらにより優れた特性の複合酸化物を得るために、本発明による次の製造方法が、たとえば、好ましくは用いられてもよい。
【0032】
本発明の複合酸化物の容易な、かつ、再現性のある製造を可能にする、本発明による方法は、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価であるセリウム溶液を提供するという第1工程(A)を含む。
【0033】
工程(A)に使用されるセリウム化合物は、たとえば、硝酸セリウム溶液または硝酸セリウムアンモニウムであってもよく、前者が特に好ましい。
【0034】
工程(A)において、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価であるセリウム溶液の初期濃度は、CeO通常5〜100g/L、好ましくは5〜80g/L、より好ましくは10〜70g/Lセリウムに調整されてもよい。セリウム溶液の濃度の調整のためには、水が通常使用され、脱イオン水が特に好ましい。余りにも高い初期濃度では、後で考察される沈澱物の結晶化度が十分には高くなく、十分な細孔が形成されないであろうし、最終的に生じる複合酸化物の耐熱性は低下するであろう。余りにも低い初期濃度は、生産性を低くし、工業的に有利ではない。
【0035】
本発明の方法では、次に、工程(A)から得られたセリウム溶液を最高で60℃までおよび60℃以上に加熱し、保持してセリウム懸濁液を得るという工程(B)が行われる。工程(B)に用いられる反応容器は、密封型か開放型かのどちらかであってもよく、オートクレーブ反応器が好ましくは用いられてもよい。
【0036】
工程(B)では、加熱および保持温度は、60℃以上、好ましくは60〜200℃、より好ましくは80〜180℃、最も好ましくは90〜160℃である。加熱および保持時間は、通常10分〜48時間、好ましくは30分〜36時間、より好ましくは1時間〜24時間である。十分な加熱および保持なしでは、後で考察される沈澱物の結晶化度は十分には高くないであろうし、十分な容積を有する細孔は形成されないであろうし、最終的に生じる複合酸化物の耐熱性は十分には改善されない可能性がある。余りにも長い加熱および保持は、少しだけ耐熱性に影響を及ぼし、工業的に有利ではない。
【0037】
本発明の方法は、工程(B)から得られたセリウム懸濁液にアルカリ土類金属酸化物および酸化ケイ素の少なくとも前駆体を添加して懸濁液を得るという工程(C)を含む。
【0038】
特定の希土類金属元素、ジルコニウム、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素の酸化物が最終的に生じる複合酸化物中に含有されることになる場合には、特定の希土類金属元素、ジルコニウム、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素の酸化物の前駆体が工程(C)でセリウム懸濁液に添加されてもよい。
【0039】
アルカリ土類金属酸化物の前駆体は、たとえば、アルカリ土類金属元素の硝酸塩であってもよい。
【0040】
酸化ケイ素の前駆体は、それがか焼などの酸化処理によって酸化ケイ素に変わる限りいかなる化合物であってもよく、コロイド状シリカ、シリコネート、またはケイ酸第四級アンモニウムゾルであってもよく、コロイド状シリカが生産コストおよび環境負荷の低減の観点から好ましい。
【0041】
特定の希土類金属元素の1つの酸化物の前駆体は、それがか焼などの酸化処理によって特定の希土類金属元素の酸化物に変わる限りいかなる化合物であってもよく、たとえば、特定の希土類金属元素を含有する硝酸溶液であってもよい。
【0042】
酸化ジルコニウムの前駆体は、たとえば、オキシ硝酸ジルコニウムであってもよい。
【0043】
酸化アルミニウムの前駆体は、たとえば、硝酸アルミニウムであってもよい。
【0044】
工程(C)で使用される各前駆体の量は好適にも、生じる酸化物が本発明の複合酸化物中の含有率範囲内であるように決定されてもよい。
【0045】
工程(C)は、工程(B)から得られたセリウム懸濁液が冷却された後に行われてもよい。
【0046】
かかる冷却は通常、一般に公知の方法に従って撹拌下に実施されてもよい。大気中での冷却または冷却管での強制冷却が用いられてもよい。冷却は、通常40℃以下、好ましくは20〜30℃のほぼ室温まで実施されてもよい。
【0047】
工程(C)では、様々な前駆体を添加する前に、セリウム懸濁液の塩濃度が、母液をセリウム懸濁液から除去することによってかまたは水を加えることによって調整されてもよい。母液の除去は、たとえば、デカンテーション、ヌッチェ(Nutsche)法、遠心分離、またはフィルター圧搾によって達成されてもよい。この場合には、わずかな量のセリウムが母液と共に除去され、だから次に添加されるべき各前駆体および水の量は、セリウムのこの除去される量を考慮して、調整されてもよい。
【0048】
本発明の方法は、様々な前駆体を含有するセリウム懸濁液を最高で100℃までおよび100℃以上、好ましくは100〜200℃、より好ましくは100〜150℃に加熱し、保持するという工程(D)を含む。
【0049】
工程(D)では、加熱および保持の継続時間は、通常10分〜6時間、好ましくは20分〜5時間、より好ましくは30分〜4時間であってもよい。
【0050】
100℃よりも低い温度での、加熱および保持の工程(D)では、後で考察される沈澱物の結晶化度は、十分には高くなく、究極的な複合酸化物の不十分な耐熱性をもたらすであろう。余りにも長い期間の加熱および保持は、耐熱性にほとんど影響を及ぼさず、工業的に有利ではない。
【0051】
本発明の方法は、工程(D)から得られた懸濁液に第1沈澱剤を添加してアルカリ土類金属元素以外の元素を沈澱させるという工程(E)を含む。
【0052】
工程(E)で使用される第1沈澱剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、アンモニアガス、またはそれらの混合物なとの、塩基であってもよく、アンモニア水が特に好ましい。かかる第1沈澱剤で、アルカリ土類金属元素以外の元素は水酸化物として沈澱する。
【0053】
第1沈澱剤は、たとえば、攪拌下に工程(D)から得られた懸濁液に好適な濃度での水溶液の形態で、またはアンモニアガスの場合には、攪拌下に反応器中で懸濁液にアンモニアガスをバブリングさせることによって添加されてもよい。添加されるべき沈澱剤の量は、懸濁液のpH変化を監視することによって容易に決定され得る。通常、沈澱物がpH7〜9、好ましくはpH7.5〜8.5で懸濁液中に発生する量が十分なものである。
【0054】
工程(E)は、工程(D)から得られたセリウム懸濁液が冷却された後に実施されてもよい。かかる冷却は通常、一般に公知の方法に従って攪拌下に実施されてもよい。大気中での冷却または冷却管での強制冷却が用いられてもよい。冷却は、通常40℃以下、好ましくは20〜30℃のほぼ室温まで実施されてもよい。
【0055】
本発明の方法は、第2沈澱剤を添加してアルカリ土類金属元素を含有する沈澱物を得るという工程(F)を含む。
【0056】
工程(F)で使用される第2沈澱剤は、たとえば、重炭酸アンモニウムであってもよい。かかる第2沈澱剤で、アルカリ土類金属元素は炭酸塩として沈澱する。
【0057】
第2沈澱剤は、たとえば、攪拌下に工程(E)から得られた懸濁液に、粉末か、または好適な濃度での水溶液の形態で添加されてもよい。炭酸塩の形態で沈澱物を得るために添加されるべき第2沈澱剤の量は、完全な反応のために、アルカリ土類金属元素の全量を反応させて炭酸塩にするために必要とされる化学量論量の2倍過剰にあってもよい。
【0058】
工程(F)での沈澱反応によって、成長した結晶の酸化セリウム水和物の沈澱物を含有するスラリーが得られる。沈澱物は、たとえば、ヌッチェ法、遠心分離、またはフィルター圧搾によって分離されてもよい。沈澱物は任意選択的に、必要に応じて水で洗浄されてもよい。さらに、次工程(G)での効率を向上させるために、得られた沈澱物は任意選択的に、好適な程度まで乾燥させられるかまたはか焼されてもよい。
【0059】
かかるか焼は、通常250〜500℃、特に280〜450℃で、通常30分〜36時間、特に1時間〜24時間、より特に3〜20時間好ましくは実施されてもよい。
【0060】
本発明の方法は、工程(F)から得られた沈澱物をか焼するという工程(G)を含む。このか焼のための温度は、通常300〜700℃、好ましくは350〜600℃である。
【0061】
工程(G)でのか焼の継続時間は、か焼温度を考慮して好適にも決定されてもよく、通常1〜10時間であってもよい。
【0062】
本発明の方法によれば、工程(G)から得られた複合酸化物は、使用前にすり潰されて粉末にされてもよい。すり潰しは、所望の粉末サイズの粉末を十分に与えるために、ハンマーミルなどの、一般に用いられる粉砕機で実施されてもよい。
【0063】
本方法によって得られる複合酸化物粉末の粒度は、上述のすり潰しによって要望に応じて作られてもよく、好ましくは、排ガスを精製するための触媒用の共触媒として用いるためには1〜50μmの平均粒径であってもよい。
【0064】
本発明による排ガスを精製するための触媒は、この触媒が本発明の複合酸化物を含有する共触媒を提供されている限り特に限定されない。触媒およびその中に使用されるべき他の材料の製造方法は、たとえば、従来法であってもよい。
【実施例】
【0065】
本発明は、本発明を限定することを意図されない、実施例および比較例に関してより詳細に今説明される。
【0066】
実施例1
本実施例は、酸化物の観点から質量で90:5:5のセリウム、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0067】
CeOの観点から100gの、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価である硝酸セリウム溶液を量り取り、全容積を純水で2Lに調整した。得られた溶液を100℃に加熱し、この温度で30分間保持し、室温まで放冷して、それによってセリウム懸濁液を得た。
【0068】
こうして得られたセリウム懸濁液から母液を除去した後、8.9gの硝酸バリウム(BaOの観点から5.2g)および25.4gのコロイド状シリカ(SiOの観点から5.2g)を添加し、全容積を純水で2Lに調整した。
【0069】
次に、酸化バリウムおよび酸化ケイ素の前駆体を含有するセリウム懸濁液を、120℃で2時間保持し、放冷し、アンモニア水でpH8.5まで中和して沈澱を確認した。さらに、10.8gの重炭酸アンモニウムを添加し、その結果、沈澱物が形成された。
【0070】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で90:5:5の酸化セリウム、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0071】
この複合酸化物粉末の比表面積は、空気中2時間800℃での、または別の方法では2時間900℃でのか焼後にBET法によって測定した。さらに、か焼した複合酸化物を、40kVの管電圧、40mAの管電流、1°/分のスキャン速度、および0.01°のサンプリング間隔でX線回折にかけてBaCeO相の存在/不在を確認した。か焼した複合酸化物の(111)面でのCeO結晶子サイズは、X線回折パターンのピークの半値幅から、Scherrer方程式を用いて測定した。それらの結果を表1に示す。
【0072】
実施例2
本実施例は、酸化物の観点から質量で85:10:5のセリウム、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0073】
CeOの観点から100gの、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価である硝酸セリウム溶液を量り取り、全容積を純水で2Lに調整した。得られた溶液を100℃に加熱し、この温度で30分間保持し、室温まで放冷して、それによってセリウム懸濁液を得た。
【0074】
こうして得られたセリウム懸濁液から母液を除去した後、18.8gの硝酸バリウム(BaOの観点から11.0g)および26.9gのコロイド状シリカ(SiOの観点から5.5g)を添加し、全容積を純水で2Lに調整した。
【0075】
次に、酸化バリウムおよび酸化ケイ素の前駆体を含有するセリウム懸濁液を、120℃で2時間保持し、放冷し、アンモニア水でpH8.5まで中和して沈澱を確認した。さらに、22.8gの重炭酸アンモニウムを添加し、その結果、沈澱物が形成された。
【0076】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で85:10:5の酸化セリウム、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0077】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0078】
実施例3
本実施例は、酸化物の観点から質量で70:20:10のセリウム、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0079】
CeOの観点から100gの、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価である硝酸セリウム溶液を量り取り、全容積を純水で2Lに調整した。得られた溶液を100℃に加熱し、この温度で30分間保持し、室温まで放冷して、それによってセリウム懸濁液を得た。
【0080】
こうして得られたセリウム懸濁液から母液を除去した後、45.7gの硝酸バリウム(BaOの観点から26.7g)および65.5gのコロイド状シリカ(SiOの観点から13.4g)を添加し、全容積を純水で2Lに調整した。
【0081】
次に、酸化バリウムおよび酸化ケイ素の前駆体を含有するセリウム懸濁液を、120℃で2時間保持し、放冷し、アンモニア水でpH8.5まで中和して沈澱を確認した。さらに、55.5gの重炭酸アンモニウムを添加し、その結果、沈澱物が形成された。
【0082】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で70:20:10の酸化セリウム、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0083】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0084】
実施例4
本実施例は、酸化物の観点から質量で75:5:20のセリウム、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0085】
CeOの観点から100gの、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価である硝酸セリウム溶液を量り取り、全容積を純水で2Lに調整した。得られた溶液を100℃に加熱し、この温度で30分間保持し、室温まで放冷して、それによってセリウム懸濁液を得た。
【0086】
こうして得られたセリウム懸濁液から母液を除去した後、10.6gの硝酸バリウム(BaOの観点から6.2g)および122.0gのコロイド状シリカ(SiOの観点から25.0g)を添加し、全容積を純水で2Lに調整した。
【0087】
次に、酸化バリウムおよび酸化ケイ素の前駆体を含有するセリウム懸濁液を、120℃で2時間保持し、放冷し、アンモニア水でpH8.5まで中和して沈澱を確認した。さらに、12.9gの重炭酸アンモニウムを添加し、その結果、沈澱物が形成された。
【0088】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で75:5:20の酸化セリウム、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0089】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0090】
実施例5
本実施例は、酸化物の観点から質量で78:8:4:5:5のセリウム、ジルコニウム、ランタン、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0091】
CeOの観点から100gの、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価である硝酸セリウム溶液を量り取り、全容積を純水で2Lに調整した。得られた溶液を100℃に加熱し、この温度で30分間保持し、室温まで放冷して、それによってセリウム懸濁液を得た。
【0092】
こうして得られたセリウム懸濁液から母液を除去した後、32.4mlのオキシ硝酸ジルコニウム溶液(ZrOの観点から9.6g)、15.8mlの硝酸ランタン溶液(La)の観点から4.8g)、10.3gの硝酸バリウム(BaOの観点から6.0g)、および29.3gのコロイド状シリカ(SiOの観点から6.0g)を添加し、全容積を純水で2Lに調整した。
【0093】
次に、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化バリウム、および酸化ケイ素の前駆体を含有するセリウム懸濁液を、120℃で2時間保持し、放冷し、アンモニア水でpH8.5まで中和して沈澱を確認した。さらに、12.5gの重炭酸アンモニウムを添加し、その結果、沈澱物が形成された。
【0094】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で78:8:4:5:5の酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0095】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0096】
実施例6
本実施例は、酸化物の観点から質量で85:5:5:5のセリウム、イットリウム、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0097】
CeOの観点から100gの、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価である硝酸セリウム溶液を量り取り、全容積を純水で2Lに調整した。得られた溶液を100℃に加熱し、この温度で30分間保持し、室温まで放冷して、それによってセリウム懸濁液を得た。
【0098】
こうして得られたセリウム懸濁液から母液を除去した後、22.0mlの硝酸イットリウム溶液(Yの観点から5.5g)、9.4gの硝酸バリウム(BaOの観点から5.5g)、および26.8gのコロイド状シリカ(SiOの観点から5.5g)を添加し、全容積を純水で2Lに調整した。
【0099】
次に、酸化イットリウム、酸化バリウム、および酸化ケイ素の前駆体を含有するセリウム懸濁液を、120℃で2時間保持し、放冷し、アンモニア水でpH8.5まで中和して沈澱を確認した。さらに、11.5gの重炭酸アンモニウムを添加し、その結果、沈澱物が形成された。
【0100】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で85:5:5:5の酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0101】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0102】
実施例7
本実施例は、酸化物の観点から質量で85:5:5:5のセリウム、ランタン、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0103】
複合酸化物粉末は、硝酸イットリウム溶液を18.1mlの硝酸ランタン溶液(Laの観点から5.5g)と置き換えたことを除いては、実施例6におけると同じ方法で調製した。得られた複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で85:5:5:5の酸化セリウム、酸化ランタン、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0104】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0105】
実施例8
本実施例は、酸化物の観点から質量で85:5:5:5のセリウム、プラセオジム、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0106】
複合酸化物粉末は、硝酸イットリウム溶液を11.3mlの硝酸プラセオジム溶液(Pr11の観点から5.5g)と置き換えたことを除いては、実施例6におけると同じ方法で調製した。得られた複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で85:5:5:5の酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0107】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0108】
実施例9
本実施例は、酸化物の観点から質量で85:5:5:5のセリウム、ネオジム、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0109】
複合酸化物粉末は、硝酸イットリウム溶液を21.4mlの硝酸ネオジム溶液(Ndの観点から5.5g)と置き換えたことを除いては、実施例6におけると同じ方法で調製した。得られた複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で85:5:5:5の酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0110】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0111】
実施例10
本実施例は、酸化物の観点から質量で80:10:5:5のセリウム、バリウム、アルミニウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0112】
CeOの観点から100gの、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価である硝酸セリウム溶液を量り取り、全容積を純水で2Lに調整した。得られた溶液を100℃に加熱し、この温度で30分間保持し、室温まで放冷して、それによってセリウム懸濁液を得た。
【0113】
こうして得られたセリウム懸濁液から母液を除去した後、19.9gの硝酸バリウム(BaOの観点から11.7g)、43.8gの硝酸アルミニウム・9水和物(Alの観点から5.9g)、および28.5gのコロイド状シリカ(SiOの観点から5.9g)を添加し、全容積を純水で2Lに調整した。
【0114】
次に、酸化バリウム、酸化アルミニウム、および酸化ケイ素の前駆体を含有するセリウム懸濁液を、120℃で2時間保持し、放冷し、アンモニア水でpH8.5まで中和して沈澱を確認した。さらに、24.3gの重炭酸アンモニウムを添加し、その結果、沈澱物が形成された。
【0115】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で80:10:5:5の酸化セリウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、および酸化ケイ素であった。
【0116】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0117】
実施例11
本実施例は、実施例1とは異なる方法によって合成される、酸化物の観点から質量で90:5:5のセリウム、バリウム、およびケイ素の複合酸化物に関する。
【0118】
301.7mlの硝酸セリウム溶液(CeOの観点から45g)、4.3gの硝酸バリウム(BaOの観点から2.5g)、および12.2gのコロイド状シリカ(SiOの観点から2.5g)を純水に溶解させて500mlの水溶液を得た。
【0119】
この溶液を、pHがアンモニウム水で8.0に維持される状態で、室温で30分にわたって、沈澱剤の水溶液、すなわち、純水に溶解された64.5gの重炭酸アンモニウムに加えて全容積を500mlにし、その結果沈澱物が形成された。
【0120】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で90:5:5の酸化セリウム、酸化バリウム、および酸化ケイ素であった。
【0121】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0122】
比較例1
本比較例は、酸化物の観点から質量で95:5のセリウムおよびバリウムの複合酸化物に関する。
【0123】
CeOの観点から100gの、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価である硝酸セリウム溶液を量り取り、全容積を純水で2Lに調整した。得られた溶液を100℃に加熱し、この温度で30分間保持し、室温まで放冷して、それによってセリウム懸濁液を得た。
【0124】
こうして得られたセリウム懸濁液から母液を除去した後、8.4gの硝酸バリウム(BaOの観点から4.9g)を添加し、全容積を純水で2Lに調整した。
【0125】
次に、酸化バリウムの前駆体を含有するセリウム懸濁液を、120℃で2時間保持し、放冷し、アンモニア水でpH8.5まで中和して沈澱を確認した。さらに、10.2gの重炭酸アンモニウムを添加し、その結果、沈澱物が形成された。
【0126】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で95:5の酸化セリウムおよび酸化バリウムであった。
【0127】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0128】
比較例2
本比較例は、酸化物の観点から質量で90:10のセリウムおよびバリウムの複合酸化物に関する。
【0129】
CeOの観点から100gの、そのセリウムイオンの90モル%以上が4価である硝酸セリウム溶液を量り取り、全容積を純水で2Lに調整した。得られた溶液を100℃に加熱し、この温度で30分間保持し、室温まで放冷して、それによってセリウム懸濁液を得た。
【0130】
こうして得られたセリウム懸濁液から母液を除去した後、17.8gの硝酸バリウム(BaOの観点から10.4g)を添加し、全容積を純水で1Lに調整した。
【0131】
次に、酸化バリウムの前駆体を含有するセリウム懸濁液を、120℃で2時間保持し、放冷し、アンモニア水でpH8.5まで中和して沈澱を確認した。さらに、21.6gの重炭酸アンモニウムを添加し、その結果、沈澱物が形成された。
【0132】
得られたスラリーをヌッチェ濾過による固液分離にかけてフィルターケーキを得て、それを大気中500℃で10時間か焼して複合酸化物粉末を得た。この複合酸化物粉末をICPによる定量分析にかけてその組成を測定し、組成は、質量で90:10の酸化セリウムおよび酸化バリウムであった。
【0133】
得られた複合酸化物粉末の特性を、実施例1におけると同じ方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
【0134】
【0135】
表1の結果は、特定の比のケイ素が含有される状態の本発明の複合酸化物において、800℃以上でのか焼後の比表面積が著しく改善された、BaCeO相の形成が防がれた、CeO結晶子サイズが小さく保たれた、そして相安定性が優れていることを明らかに示す。
【0136】
さらに、本発明の製造方法によって、大きい比表面積および高い相安定性を有する複合酸化物が合成され得る。